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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 0000
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 0000
管理番号 1234792
審判番号 不服2009-23861  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-16 
確定日 2011-03-28 
事件の表示 特願2008-292783「エイズの特効薬」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月30日出願公開、特開2010- 98926〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願の主な手続は、概略、以下のとおりである。
平成20年10月20日 特許出願
同 年12月11日 明細書についての全文補正
(以下、「補正1」いう。)
平成21年 6月15日 拒絶理由の通知(発送は、同年同月23日)
同 年 同月25日 意見書の提出
同 年10月30日 拒絶査定(発送は、同年11月10日)
同 年11月16日 本件審判請求

なお、平成21年11月16日付け審判請求書には、その【請求の趣旨】に、「エイズで苦しんでおられる、人々を助ける為に考え出しました。」と記載されているところ、審判請求書にはその【審判の種別】に「拒絶査定不服審判事件」との記載があるから、本件審判請求事件は、拒絶査定の理由となった拒絶の理由が誤りであると主張し、拒絶査定を取消すとともに、本願に係る発明を特許をすべき旨の審決を請求したものと解される。
したがって、審判請求書の全趣旨からみて、本件審判請求の請求の趣旨は、前記拒絶査定の取消しと、本願に係る発明を特許する旨の審決を請求するものと解して審理した。

2.拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、特許請求の範囲の記載及び明細書の発明の詳細な説明の記載にはいずれも不備があるから、本願は特許法第36条第6項第2号及び同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。

3.本願明細書等の記載
本願の特許請求の範囲、明細書及び図面の記載は、補正1によって補正された以下のとおりである。
(1)特許請求の範囲
「【請求項1】がんと違うのですが血液の病気です。
【請求項2】血液の原子核がウイルスになったのです。」
(2)明細書
補正1によって補正された以下のとおりである。
「【発明の名称】エイズの特効薬
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
ガンとはちょとちがいますが血液の病気ですので血液を正しい血液にすればなおります。血液の原子かがおかしいです。正しくすればなおります
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
血液をもとの血液に戻す
【課題を解決するための手段】
Puの爆発しないものをもちいて。電気分解
【発明効果】
良好
【発明を実施するための最良の形態】
AC、DCにきよつけて行うこと
【産業上の利用可能性】
大勢の人の命が助かります。
【図面の簡単な説明】
【図1】このようにして下さいという図です。
【図2】Puが原子核分裂をおこし電池(-)に結晶としてふちゃくしてエイズの特効薬となたのです。」
(3)図面
図面の記載は、以下のとおりである。

4.当審の判断
(1)特許請求の範囲の記載について
ア 請求項1について
請求項1の「がんと違うのですが血液の病気です。」との記載について検討するに、発明の名称が、「エイズ特効薬」であること、発明の詳細な説明に、「【技術分野】ガンとはちょとちがいますが血液の病気ですので血液を正しい血液にすればなおります。血液の原子かがおかしいです。正しくすればなおります」との記載があることを参酌すれば、請求項1の記載内容は、エイズの原因は、がんと違って血液にあるとの請求人のエイズに対する見解を述べたものと認められる。
ところで、一般に、発明は、物の発明、方法の発明及び物を生産する方法の発明のいずれかに大別される(特許法第2条3項)ところ、エイズの原因は、がんと違って血液にあるとの請求人の見解を述べた請求項1に記載のものは、上記いずれの範疇に属するのか、不明である。
また、エイズとは、後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome; AIDS)のことをいい、ヒト免疫不全ウイルス(一般に、「HIV」という。)が免疫細胞に感染し、免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす免疫不全症のことである。一般に、感染源となりうるだけのHIVの濃度をもっている体液は血液・精液・膣分泌液・母乳が挙げられ、感染しやすい部位としては粘膜、切創や刺創などの血管に達するような深い傷などがあるとされている。
してみると、エイズの原因は血液にあるとの上記見解は、エイズの原因はHIVにあり、血液はその感染経路の一つであるとの上記科学常識に照らして、請求人のエイズに対する独自の見解というべきものであって、その技術的意義は不明であり、ひいては発明の範囲も不明なものとなっている。

以上のことから、請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。

イ 請求項2について
請求項2の「血液の原子核がウイルスになったのです。」について検討するに、上記「ア」で説示したと同様に、発明の名称や発明の詳細な説明の記載全体を総合すると、エイズの原因は、血液の原子核がウイルスになったことによる、との請求人のエイズに対する見解を述べたものと認められる。
してみると、請求項2に記載のものが、物の発明、方法の発明及び物を生産する方法の発明の、いずれの範疇に属するのかが不明であることは、上記「ア」で説示したと同様である。
また、上記見解は、前記科学常識に照らして、やはり、請求人のエイズに対する独自の見解というべきものであって、その技術的意義も明らかでなく、ひいては、発明の範囲も不明なものとなっている。
よって、請求項2の記載も、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。

ウ 以上のとおりであるから、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。

(2)発明の詳細な説明の記載について
ア 発明の詳細な説明の記載内容は、前記「3.(2)【発明の詳細な説明】」に記載のとおりである。
また、図面の図1には、爆発しないプルトニウムと、そのマイナス極を該プルニウムに向けた電池が図示されており、また、図2及びその図面の簡単な説明によれば、該電池が該プルトニウムに近づいて該プルトニウムが原子核分裂を起こし、該電池のマイナス極に結晶が付着してエイズ特効薬が得られることが説明されている。
また、明細書には、発明の名称が「エイズの特効薬」であると記載されている。

イ 以上を総合すると、明細書及び図面の記載から、本願の概要は、エイズの特効薬を得ることを発明の目的とし、そのため、エイズの原因はガンとは違って血液にあり、血液の原子を正しくすれば治ること、血液の原子を治すには、爆発のしないプルトニウムと電池とを用いて電気分解すれば良いこと、そうするとプルトニウムが原子核分裂を起こして電池のマイナス極に結晶が付着し、こうして得られた結晶がエイズ特効薬であること、電気分解を行う際には、交流と直流に留意する必要があること、というものであると認められる。

ウ そこで検討するに、まず、プルトニウム(Pu)とは、原子番号94の元素であり、安定な同位体として^(238)Pu、^(239)Pu・・・^(244)Puが存在し、その物理的、化学的特性は同位体によって大きく異なり、このうち、特に、^(239)Puは、核分裂の起きやすさと合成の容易さのため原子炉燃料に利用され、また、^(238)Pu は半減期87年のアルファ放射体であり、原子力電池に利用されるものである。そして、プルトニウム(Pu)は、その同位体及びその化合物共に放射性であり、しかも強い化学毒性を有し、人体にとって極めて有害な物質である。また、プルトニウム単体は、室温において、固体金属(融点は639.5℃)である。

エ 以上のプルトニウム(Pu)が備える特性を踏まえて、本願明細書及び図面の記載を検討するに、まず、プルトニウムは、同位体毎にその物理的、化学的特性を大きく異にするところ、「爆発しないプルトニウム」との表現では、同位体を特定したことにはならず、プルトニウムのどの同位体を用いるのか、明細書に開示されているとはいえない。
さらに、固体のプルトニウムが電気分解により原子核分裂すること、その結果電池に結晶が付着することは、プルトニウムに関する上記科学常識に照らし、いずれも不明であり、仮にそのようにして得られた結晶がエイズ特効薬となることは、エイズに関する上記科学常識に照らし、やはり不明である。

カ 以上のとおりであるから、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

(3)請求人の主張について
ア 請求人は、請求の理由において、「朝テレビを見ていたら京都大学で爆発しないプルトニュムができたというニユ-スがながれ、これなら出来るぞと思いました。しかし、買おとして、いろいろと話をしましたが取り合ってはくれませんでした。(京都大学に原子炉があります。) 理論では成功すると確信します。」と主張し、また、証拠方法において、下記図面で説明する、としている。

イ 上記の主張を考慮しても、やはり、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえないし、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものともいえない。

5.むすび
以上のとおり、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえないから、本願は、特許法第36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
また、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないから、本願は、特許法第36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-21 
結審通知日 2011-02-01 
審決日 2011-02-15 
出願番号 特願2008-292783(P2008-292783)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (0000)
P 1 8・ 537- Z (0000)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 年彦  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 森 雅之
松浦 久夫
発明の名称 エイズの特効薬  

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