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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  G01N
審判 全部無効 2項進歩性  G01N
管理番号 1235285
審判番号 無効2010-800170  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-09-29 
確定日 2011-04-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第3871456号発明「粒子画像分析装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3871456号の請求項1?8に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

1 出願手続経緯
本件特許第3871456号に係る出願は,平成10年12月10日に特許出願されたものであり,本件出願の手続の経緯の概要は,以下のとおりである。

平成10年12月10日 本件特許出願(特願平10-377845号)
平成18年10月27日 特許権の設定登録

2 審判手続経緯
これに対して,請求人より平成22年9月29日に本件無効審判の請求がなされたものであり,本件無効審判における手続の経緯の概要は,以下のとおりである。

平成22年 9月29日 無効審判請求(甲第1?2号証,参考資料1?6)
12月20日 答弁書
平成23年 1月26日 審尋
1月27日 書面審理通知
1月31日 意見書(被請求人)
2月 1日 回答書(請求人)


第2 本件発明
本件特許の請求項1?8に係る発明は,その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
撮像により得られた各粒子像について,少なくとも一つの特徴パラメータを算出するパラメータ算出手段と,各粒子像について粒子像と特徴パラメータとを関連づけて記憶する記憶手段と,特徴パラメータの分布図を作成する分布図作成手段と,分布図内の任意の領域を指定する指定手段と,指定手段によって指定された領域内の特徴パラメータに対応する粒子像を記憶手段から読出す読出し手段と,読出した粒子像を表示する表示手段とを備えてなる粒子画像分析装置。」(以下,「本件発明1」という。)

「【請求項2】
さらに分布図が1つの特徴パラメータに対する分布図である請求項1記載の粒子画像分析装置。」(以下,「本件発明2」という。)

「【請求項3】
さらに分布図が2つの特徴パラメータに対する分布図である請求項1記載の粒子画像分析装置。」(以下,「本件発明3」という。)

「【請求項4】
指定手段によって指定された領域内の特徴パラメータについて分布状態を解析する分布解析手段をさらに備えてなり,表示手段に解析結果を表示する請求項1記載の粒子画像分析装置。」(以下,「本件発明4」という。)

「【請求項5】
各粒子像に対して粒子の種類を表す分類情報を付加する分類手段をさらに備えてなる請
求項1記載の粒子画像分析装置。」(以下,「本件発明5」という。)

「【請求項6】
前記特徴パラメータが,円相当径および円形度である請求項1または3記載の粒子画像分析装置。」(以下,「本件発明6」という。)

「【請求項7】
前記記憶手段には,粒子像と算出された特徴パラメータとを関連づける情報が記憶される請求項1記載の粒子画像分析装置。」(以下,「本件発明7」という。)

「【請求項8】
粒子を撮像して粒子像を得,得られた粒子像について,その粒子の特徴パラメータを算出し,算出された特徴パラメータに基づく分布図を作成する粒子画像分析方法であって,分布図内の任意の領域が指定されたとき,粒子像と算出された特徴パラメータとを関連づける情報に基づいて,領域内の特徴パラメータに対応する粒子像を表示する粒子画像分析方法。」(以下,「本件発明8」という。)


第3 当事者の主張

1 請求人の主張
請求人は,審判請求書および平成23年2月1日付け回答書によれば,本件発明1?8の特許を無効とする理由として概ね次のように主張し,甲第1?2号証,および,参考資料1?6を提出している。

(無効理由1)
本件発明1?8は,本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明,および,甲第2号証に記載された発明を組み合わせて容易に想到されるものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって,その特許は特許法123条1項2号に該当し,無効とすべきである。

(無効理由2)
本件発明1?3,7?8は,本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明であるから,特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものである。また,本件発明4?6は,本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明,および,甲第1号証に記載された発明を組み合わせて容易に想到されるものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって,その特許は特許法123条1項2号に該当し,無効とすべきである。

なお,審判請求書27頁21?24行における「(4)本件特許発明8について 請求項8は,方法の発明であるが,実質的に,請求項1の発明と同様である。請求項1の発明は,甲2号証と同一であるから,請求項8の発明も,実質的に甲2号証と同一である。」の記載からみて,同請求書20頁12?17行における「本件特許請求項1,2,3,7の発明(以下本件特許発明1,2,3,7という)は甲2号証に記載された発明と同一であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。また,請求項4乃至6並びに8の発明(以下本件特許発明4乃至6並びに8という)は,甲2号証と甲1号証に基づいて,容易に想到されたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」の記載は,「本件特許請求項1,2,3,7,8の発明(以下本件特許発明1,2,3,7,8という)は甲2号証に記載された発明と同一であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。また,請求項4乃至6の発明(以下本件特許発明4乃至6という)は,甲2号証と甲1号証に基づいて,容易に想到されたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」の誤記であり,同請求書3頁17行および25頁2行における「2 本件発明4乃至6,8の進歩性欠如について」の記載は,「2 本件発明4乃至6の進歩性欠如,および,本件発明8の新規性欠如について」の誤記であることが明らかであり,請求人提出の平成23年2月1日付け回答書,および,被請求人提出の平成23年1月31日付け意見書において,両当事者も誤記であると認めているから,上記のとおり,(無効理由2)を認定した。(なお,上記において,下線は,誤記の箇所を示す。)

甲第1号証:特開平8-136439号公報
甲第2号証:C.K.Sieracki et al., "An imaging-in-flow system for automated analysis of marine microplankton", Marine Ecology Progress Series, vol.168, pp.285-296, July 9, 1998
参考資料1:東京地裁平成20年(ワ)第36814号の訴状の写し
参考資料2:上記東京地裁平成20年(ワ)第36814号において,原告が平成21年2月19日に提出した原告第1準備書面の1頁の写し
参考資料3:R.Huller(当審注:「Huller」の「u」は,ウムラウト付きのuである。), "The Macro Flow Planktometer: A New Device for Volume and Fluorescence Analysis of Macro Plankton Including Triggered Video Imaging in Flow", Cytometry, vol.17, pp.109-118, 1994
参考資料4:特開平10-302067号公報
参考資料5:顧客のために株式会社セイシン企業が作成した書類である「Julietイメージアナライザによる2種類のセメント試料の比較測定」(作成日として,1992年12月18日の日付が付されている)
参考資料6:取扱説明書「ルーゼックス450」

2 被請求人の主張
これに対して,被請求人は,答弁書および平成23年1月31日付け意見書において,上記「1 請求人の主張」の(無効理由1)および(無効理由2)について,概ね次のように主張している。

(無効理由1)
本件発明1?8は,本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
よって,その特許は特許法123条1項2号に該当し,無効とすべきである。

(無効理由2)
上記「1 請求人の主張」の(無効理由2)のとおりである。


第4 甲第1号証および甲第2号証の記載事項

1 甲第1号証について
本件特許に係る出願日である平成10年12月10日前(以下,「本件出願日前」という。)に頒布された刊行物である甲第1号証には,図面とともに,次の事項が記載されている。なお,以下において,下線は,当審にて付与したものである。
(甲1-ア)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 粒子懸濁液の流れをシース液で取り囲んだ流れに変換するシースフローセルと,変換された懸濁液流に対して光を照射する光照射手段と,照射された粒子を撮像する撮像手段と,撮像された粒子像を解析する画像解析手段と,表示手段とを備え,画像解析手段は,撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを測定し,その粒子データから粒子の粒径と円形度を算出する算出手段と,粒径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成すると共に粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成手段と,撮像された各粒子像を格納する記憶手段と,記憶手段に格納された各粒子像を表示手段に一括表示する粒子像呼出手段とからなることを特徴とする粒子画像分析装置。」

(甲1-イ)
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は液中の粒子を撮像し,その粒子像を記憶,表示するとともに,粒子像を画像解析することによって,粒子の大きさや形状に関する情報を求める粒子画像分析装置に関する。」

(甲1-ウ)
「【0012】この発明の装置の分析対象は,ファインセラミックス,顔料,化粧品用パウダーのような無機物の粉体および食品添加物のような有機物の粉体を含むものであり,予め染料や標識試薬によって染色処理された粒子であってもよい。」

(甲1-エ)
「【0021】
【実施例】・・・
【0029】1/30秒ごとの粒子撮像画面に対する画像処理の手順を図5に示す。画像信号は,画像処理装置11に取り込まれてA/D変換され,画像データとして取り込まれる(ステップS1)。・・・
【0032】・・・また,撮像されたフレームから粒子像の切り出しを行い,切り出した粒子像を画像処理装置11の画像メモリに格納する(ステップS7)。
【0033】撮像が終了すると(ステップS8),各粒子像に対して求められた総画素数,総エッジ数,斜めエッジ数から,まず下記の式によって各粒子像の投影面積Sと周囲長Lを求める。
・・・
【0035】次に,上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める(ステップS9)。・・・
【0037】各粒子像の円相当径が求められれば,次にその値をもとにして粒度頻度データを作成する(ステップS10)。・・・
【0048】上記のようにして求められた粒度頻度データ,累積粒度データ,および円相当径と円形度の2次元頻度データを用いて,さらに平均粒径,粒径の標準偏差,モード径,10%径,50%径,90%径,平均円形度,円形度標準偏差等を算出する(ステップS12)。
・・・
【0050】以上のようにして求められた頻度データおよび解析結果から,図7,図8に示すような粒度ヒストグラム,円相当径と円形度の2次元スキャッタグラム,および平均粒径や50%径等の解析結果を表示する(ステップS13)。図7では,横軸をLOG変換した円相当径,縦軸を頻度%と累積%の2つの意味に割当て,累積粒度分布曲線の表示も同時に表示している。図8に示すスキャッタグラム表示では,横軸をLOG変換した円相当径,縦軸を円形度としており,各分割点(ドット)の色を2次元頻度値に応じて変えるようにしている。」

(甲1-オ)
「【0051】この装置では,上記のように撮像した粒子像から円相当径や円形度を求めるだけでなく,撮像した粒子像を記憶しておき,測定後に大きさ別にクラス分けして図4に示すように,一括表示する機能も有している。もっとも,画像を記憶する画像メモリの容量に制限があるので,撮像された全ての粒子像を記憶,表示するわけではない。撮像された粒子像を一括表示できる機能を有しているので,粒子の形態や凝集状態を直接使用者が確認することができる。」

(甲1-カ)
「【0052】粒子どうし凝集することが重要な意味を持つような場合には,図4に示す各枠内の粒子像について,一次(単独)粒子像か,2個凝集粒子像か,3個凝集粒子像か,高次凝集塊か,あるいは対象外の粒子かを,使用者が指定しキーボード13を用いて入力する。その指定結果をもとにして,凝集している粒子の数の比率を自動的に計算することができる。もし,一括表示された粒子像の中に凝集粒子像が全く無い場合には,上記2次元スキャッタグラムでの円形度算出値は,真に粒子の円形度を表していると考えてよい。」

(甲1-キ)
「【0056】この装置では,図9の例のように円相当径と円形度による2次元スキャッタグラムにおいてある2次元領域を設定し,その領域内あるいは領域外の粒子のデータだけに限定して粒度解析,円形度解析させることもできる。このような機能を利用することによって,ごみや凝集粒子を除いての粒度分布や平均円形度を求める,あるいは凝集している粒子数の比率を推定するといったことが可能になる。このような2次元領域は,測定する試料の種類ごとに,使用者がキーボード13やマウスを使って任意に設定,変更できる。」

上記摘記事項からみて,甲第1号証には,以下の2つの発明が記載されていると認められる。

「撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを測定し,その粒子データから粒子の円相当径と円形度を算出する算出手段と,
円相当径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成すると共に円相当径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成手段と,
撮像された各粒子像を格納する記憶手段と,
前記記憶手段に格納された各粒子像を前記表示手段に一括表示する粒子像呼出手段と,
前記2次元スキャッタグラムにおいて,ある2次元領域を設定し,その領域内あるいは領域外の粒子のデータだけに限定して粒度解析,円形度解析させる手段と,
各粒子像について,一次(単独)粒子像か,2個凝集粒子像か,3個凝集粒子像か,高次凝集塊か,あるいは対象外の粒子かを,使用者が指定しキーボード13を用いて入力する手段とを備える粒子画像分析装置。」(以下,「甲1第1発明」という。)

「粒子画像分析方法であって,
撮像されたフレームから粒子像の切り出しを行い,切り出した粒子像を画像処理装置の画像メモリに格納する記憶工程と,
撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを測定し,その粒子データから粒子の円相当径と円形度を算出する算出工程と,
円相当径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成すると共に円相当径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成工程と,
前記記憶工程により画像メモリに格納された各粒子像を呼出し,前記表示手段に一括表示する表示工程と,
前記2次元スキャッタグラムにおいて,ある2次元領域を設定し,その領域内あるいは領域外の粒子のデータだけに限定して粒度解析,円形度解析させる解析工程とを有する粒子画像分析方法。」(以下,「甲1第2発明」という。)

2 甲第2号証について
本件出願日前に頒布された刊行物である甲第2号証には,図面とともに,次の事項が記載されている。
(甲2-ア)
「ABSTRACT: Present automated systems for counting and measuring marine plankton include flow cytometers and in situ plankton video recorders. Neither of these approaches are optimal for the microplankton cells which range in size from 20 to 200 μm and can be fewer than 10^(4) l^(-1). We describe here an instrument designed for rapid counting, imaging and measuring of individual cells and particles in the microplankton size range from cultures and natural populations. It uses a unique optical element to extend the depth of focus of the imaging lens, allowing a sample stream flow rate of 1 ml min^(-1). The instrument stores a digital image of each particle along with real time fluorescence and size measurements. An interactive cytogram links a dot-plot of the size and fluorescence data to the stored cell images, allowing rapid characterization of populations. We have tested the system on live phytoplankton cultures and bead standards, proving the system counting and sizing accuracy and precision. The system provides images and size distributions for cultures or natural marine samples. It has been used successfully at sea to continuously monitor particles while underway. It may prove useful in studies of plankton community structure, ocean optics and monitoring for harmful algal species.」(285頁要約欄1?13行),
当審仮訳
「要約:この自動化システムは,海中プランクトンの数を計数し測定するための自動化システムであって,フローサイトメータ,および,その場でのプランクトン・ビデオテープレコーダーを含む。これらのアプローチは,サイズの範囲が20?200μmであるマイクロプランクトン細胞に対して最適なものが存在せず,1リットルあたり10^(4)以下のものに対し使用可能なものが存在しなかった。我々は,本論文にて,培養あるいは自然に存在する集団からの細胞および微粒子であって,マイクロプランクトンサイズを有する個々の細胞および微粒子について,高速計数,イメージング,および,測定を行うために設計された装置を記述する。この装置においては,イメージングレンズの焦点深度を拡張するためにユニークな光学要素を使用し,サンプルのフローレートを,1ml/分とすることを許容する。この装置は,リアルタイムの蛍光およびサイズ測定を行うとともに,各微粒子のデジタル画像を保存する。関連したサイトグラムは,サイズデータおよび蛍光データのドットプロットと,記憶されたセル画像とをリンクし,微粒子集団の高速評価を可能とする。我々は,システムにおける計数とサイジングが正確であることを確認するために,本システムを,植物プランクトン培養体と標準ビーズに対してテストした。このシステムは,培養体あるいは自然の海洋サンプルについて,画像とサイズ分布を提供する。本システムは,航行中に,海で連続的に微粒子をモニターするために成功裡に使用された。それは,プランクトンのコミュニティーストラクチャー,海洋光学,および,有害な藻類種のモニタリングに関する研究に役立つことを証明するかもしれない。」

(甲2-イ)
「MATERIALS AND METHODS
Instrumentation. The systems diagram (Fig l) shows the instrument configuration and the general flow of the sample and signals. The sample is drawn into the Flow CAM flow chamber where it is monitored for particles. All particles in this flow are kept in focus by a custom depth of focus enhancing optical element which prevents blurring and assures proper particle counting and sizing. Particles are counted by imaging the flow with the video camera/framegrabber either at preset intervals or when fluorescent particles pass through the field of view. The resulting digitized images and other information are then displayed, analyzed and stored by the computer. After an experiment, this data may be reviewed with the Flow CAM software user-interactive menus.
Flow. A peristaltic pump on the downstream side of the flow chamber was used to draw the sample through the instrument (Fig. 1A). The thickness of flow in this chamber generally matches the depth of focus of the imaging optics. Fluorescence triggered counts of particles are conducted with a custom 1 mm square chamber. High density cultures were counted with a 3.0 mm wide by 0.3 mm thick chamber (VitroCom Inc., Mountain Lakes, NJ, USA).」(286頁右欄7?31行),
当審仮訳
「装置および方法
装置:システムダイアグラム(図1)は,装置の設定,および,サンプルと信号の一般フローを示す。サンプルが,フローカム・フローチャンバーに導入され,そのチャンバー内で微粒子がモニターされる。このフロー中のすべての微粒子は,慣用の焦点深さ増強光学要素により焦点が維持され,当該増強光学要素は,ぼけを防止し,適切な微粒子計数とサイジングを保証する。微粒子は,予め設定された間隔,もしくは,蛍光微粒子が観測フィールドを通る際に,ビデオカメラ/フレームグラバーでフローを撮像することにより計数される。結果としてのデジタル画像および他の情報は,コンピュータにより,表示され,分析され,記憶される。実験の後,このデータは,フローカムソフトウェアのユーザー対話型のメニューを用いてレビューされてもよい。
フロー:フローチャンバーの下流側の蠕動ポンプは,装置内にサンプルを引き込むために使用された(図1A)。このチャンバー内のフローの厚さは,一般的に,撮像光学系の焦点深さに一致する。蛍光によりトリガーされる微粒子の計数は,慣用の一辺1mmの正方形チャンバーを用いて実施される。高密度の培養体は,3.0mm幅,0.3mm厚のチャンバーを用いて計数された(VitroCom Inc. Mountain Lakes, NJ, USA)。」

(甲2-ウ)
「Software-data acquisition and presentation. When the computer detects a trigger, an image is digitized by the framegrabber and a sub-image of each detected particle is extracted. The software qualifies pixels by scanning the image for pixels which are different from their immediate neighbors and distant neighbors (20 pixels away) by a user-selected brightness value. Qualified pixels within a pre-determined distance of
each other are grouped to form images of particles. The area of each particle is computed by summing the number of qualified pixels in each particle image and multiplying the result by the equivalent physical area of a pixel. When operating in fluorescence triggered mode, the software also reads the fluorescence waveform and measures the peak fluorescence. The particle area, fluorescence, time of passage, and location in the flow image is stored in an ASCII-formatted file. The sub-images of individual particles are saved in a collage file. Several of these collage files may be generated for each Flow CAM experiment. A separate list file is generated to link these sub-images with the particle size and fluorescence data.・・・
After an experiment, Flow CAM data may be reviewed in 2 modes: (1) image collage or (2)interactive scattergram. In image collage mode, the user may review a series of collage files using the computer mouse. This allows the user to examine particle morphology and visually classify particle types. In interactive scattergram mode, data is presented to the user as a fluorescence versus size dot-plot, analogous to a flow cytometer 'cytogram.' If the user selects a region of the scattergram with the computer mouse, images of particles in that region are displayed on the computer screen. This allows the user to examine images from populations with distinctive size and fluorescence properties.
The user may also review the ASCII-formatted data with commercial spreadsheet programs. This allows the user to readily generate cell counts and fluorescence and size histograms for each sample. This data also contains the location of each particle in the original image which is used to remove redundant data from particles that may have become attached to the flow chamber.」(287頁左欄下から5行?288頁左欄42行),
当審仮訳
「ソフトウェア-データ取得およびプレゼンテーション:コンピュータがトリガーを検知すると,画像は,フレームグラバーによってデジタル化され,検出された各々の微粒子のサブ画像が抽出される。ソフトウェアは,画像スキャンを行い,隣接するピクセルおよび離れたピクセル(20ピクセル)との間で,ユーザー選択によるブライト値以上のブライト値が異なるピクセルに資格を与える。互いに予め設定された距離内にあるとともに,資格を与えられたピクセルは,グループ化され,微粒子画像を形成する。各々の微粒子の面積は,各々の微粒子画像において,資格を与えられたピクセルの数を加算し,その加算値に1ピクセルに等価な実際の面積を乗ずることにより計算される。蛍光トリガーモードで作動する場合,ソフトウェアは,さらに,蛍光波形を読み取り,蛍光ピークを測定する。微粒子面積,蛍光,通過時間,および,フローイメージ中における位置は,ASCIIフォーマットファイルに保存される。個々の微粒子のサブ画像は,コラージュファイルに保存される。これらのコラージュファイルのいくつかは,各フローカム実験に対して,生成されるようにしてもよい。別個のリストファイルが,これらのサブ画像と,微粒子サイズデータおよび蛍光データとをリンクさせるために,生成される。・・・
実験の後,フローカムデータは,(1)イメージ・コラージュ,あるいは,(2)相互関連のスキャッタグラム,の2つのモードでレビューできる。イメージ・コラージュモードでは,ユーザーは,コンピュータマウスを用いて一連のコラージュファイルをレビューできる。このモードにより,ユーザーは,微粒子の形態を調査し,微粒子のタイプを視覚的に分類することができる。相互関連のスキャッタグラムモードでは,データは,蛍光対サイズのドットプロットの形式でユーザーに提供され,これは,フローサイトメータの‘サイトグラム’に類似するものである。もし,ユーザーが,コンピュータマウスを用いて,スキャッタグラムの領域を選択すると,その領域内の微粒子画像が,コンピュータスクリーンに表示される。このモードにより,ユーザーは,区分されたサイズおよび蛍光特性を有する微粒子集団についての,微粒子画像を調査することができる。
ユーザーは,さらに,商用表計算プログラムを用いて,ASCIIフォーマットデータをレビューしてもよい。これにより,ユーザーは,各サンプルについて,容易に,細胞数の計数と,蛍光およびサイズのヒストグラムを生成することができる。このデータは,さらに,オリジナル画像における各々の微粒子の位置情報を含んでおり,当該情報は,フローチャンバに付着した微粒子に起因する不要なデータを取り除くために使用される。」

(甲2-エ)
「We conducted additional tests to measure the potential blurring (i.e. enlarging) of particles in the flow stream above or below the position of optimal focus. Three different specimens were placed on a microscope slide under a coverslip: a 35 μm diameter latex bead and cells of Ceratium sp. and Alexandrium tamarense(CCMP115). For each focus setting, each single bead or cell was imaged and measured 10 times by the Flow CAM. This was repeated at 50 μm increments over a range of optimal focus ±500 μm, with and without the BOE in place.」(288頁右欄1?11行),
当審仮訳
「我々は,追加のテストを実施して,最適な焦点の位置の上方,あるいは,下方のフローにおける,微粒子のポテンシャルなぶれ(つまり,広がり)を測定した。
顕微鏡スライド上で,カバーガラスの下に,3つの異なる標本,すなわち,35μm直径のラテックス・ビーズ,セラチウム属細胞,および,アレクサンドリウム・タマレンセ細胞(CCMP115)を載置した。各焦点セッティングに対し,単一のビーズあるいは細胞が,フローカムによって10回撮像および測定された。このことは,BOEと,およびBOEなしで,最適な焦点の±500μmの範囲で,50μmの増分毎に繰り返された。」

(甲2-オ)
「Size distributions
The size distributions for 6 phytoplankton cultures are shown in Fig. 8.」(291頁左欄1?3行),
当審仮訳
「サイズ分布
図8に,6種類の植物プランクトン培養体のサイズ分布を示す。」

(甲2-カ)
「Fig. 1. Block diagram of the Bigelow flow cytometer and microscope (Flow CAM) showing (A) the major components and (B) the epi-fluorescence and imaging optics. The sample is drawn into the flow chamber where it is illuminated with Hg arc lamp excitation. When a fluorescing particle passes the imaged area of the chamber, the photomultiplier tube (PMT) signal triggers the framegrabber and light-emitting diode (LED), capturing a transmitted light image on the computer.」(287頁の図1についての説明文),
当審仮訳
「図1は,ビガロ・フローサイトメータおよび顕微鏡(フローカム)のブロック図において,(A)に主要な構成要素,(B)に落射蛍光と撮像の光学系を示したものである。サンプルは,フローチャンバーに導入され,そこで,水銀アークランプ励起を用いて照明される。蛍光を発する微粒子がチャンバの撮像エリアを通過すると,光電子増倍管(PMT)信号が,フレームグラバーおよび発光ダイオード(LED)をトリガーし,コンピュータが,伝達された光のイメージを取得する。」

(甲2-キ)
「Fig. 8. Size distributions as measured by the Flow CAM for (A)Alexandrium tamarense, (B)Biddulphia sp., (C)Cyclotella meneghiniana, (D)Gambierdiscus, (E)Nitzschia ovalis and (F)Navicula sp. Vertical lines show average manual sizes.
Size information combined with images of the cells may be used to discriminate different cell populations. Bar=20μm」(292頁の図8についての説明文),
当審仮訳,
「図8は,フローカムにより測定されたサイズの分布であり,(A)は,アレクサンドリウム・タマレンセ,(B)は,ビドゥルフィア属,(C)は,キクロテラ・メネギニアーナ,(D)は,ガンビエールディスカス,(E)は,ニッチア・オバリス,(F)は,ナビキュラ属のサイズ分布である。垂直線は,平均のマニュアルサイズである。
細胞画像と組み合わせられたサイズ情報は,異なる細胞集団を区別するために使用されるかもしれない。バー目盛り=20μm。」

上記摘記事項からみて,甲第2号証には,以下の2つの発明が記載されていると認められる。

「微粒子の数を計数し測定するための自動化システムであって,
検出された各々の微粒子のサブ画像を抽出する抽出手段と,
前記各々の微粒子の面積を計算する計算手段と,
前記各々の微粒子の蛍光ピークを測定する測定手段と,
前記各々の微粒子の面積,および,前記各々の微粒子の蛍光をASCIIフォーマットファイルに保存し,前記各々の微粒子のサブ画像をコラージュファイルに保存し,前記サブ画像と,微粒子サイズデータおよび蛍光データとをリンクさせるためにリストファイルを生成する手段と,
蛍光対サイズのドットプロットの形式でユーザーにスキャッタグラムを提供する手段と,
コンピュータマウスを用いて,前記スキャッタグラムの領域を選択する選択手段と,
選択手段によって選択された領域内の微粒子画像を,コンピュータスクリーンに表示する表示手段とを備える自動化システム。」(以下,「甲2第1発明」という。)

「微粒子の数を計数し測定する方法であって,
検出された各々の微粒子のサブ画像を抽出する抽出工程と,
各々の微粒子の面積を計算するとともに,蛍光ピークを測定する工程と,
前記各々の微粒子の面積,および,前記各々の微粒子の蛍光をASCIIフォーマットファイルに保存し,各々の微粒子のサブ画像をコラージュファイルに保存し,前記サブ画像と,微粒子サイズデータおよび蛍光データとをリンクさせるためにリストファイルを生成する工程と,
蛍光対サイズのドットプロットの形式でユーザーにスキャッタグラムを提供する工程と,
コンピュータマウスを用いて,前記スキャッタグラムの領域を選択する工程と,
選択された領域内の微粒子画像を,コンピュータスクリーンに表示する工程とを有する方法。」(以下,「甲2第2発明」という。)


第5 当審の判断

1 無効理由1について
(1)本件発明1について

ア 対比
本件発明1と甲1第1発明とを対比する。

(ア)甲1第1発明の「円相当径および円形度」は,本件発明1の「特徴パラメータ」に相当する。
してみると,甲1第1発明の「撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを測定し,その粒子データから粒子の円相当径と円形度を算出する算出手段」が,本件発明1の「撮像により得られた各粒子像について,少なくとも一つの特徴パラメータを算出するパラメータ算出手段」に相当することは明らかである。

(イ)甲1第1発明の「撮像された各粒子像を格納する記憶手段」と,本件発明1の「各粒子像について粒子像と特徴パラメータとを関連づけて記憶する記憶手段」とは,「各粒子像について記憶する記憶手段」である点で共通する。

(ウ)甲1第1発明の「ヒストグラムおよび2次元スキャッタグラム」は,本件発明1の「分布図」に相当する。
してみると,甲1第1発明の「円相当径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成すると共に円相当径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成手段」は,本件発明1の「特徴パラメータの分布図を作成する分布図作成手段」に相当する。

(エ)甲第1号証の摘記事項(甲1-キ)における「【0056】この装置では,図9の例のように円相当径と円形度による2次元スキャッタグラムにおいてある2次元領域を設定し,その領域内あるいは領域外の粒子のデータだけに限定して粒度解析,円形度解析させることもできる。・・・このような2次元領域は,測定する試料の種類ごとに,使用者がキーボード13やマウスを使って任意に設定,変更できる。」の記載からみて,甲1第1発明の「前記2次元スキャッタグラムにおいて,ある2次元領域を設定」する手段を備える点は,本件発明1の「分布図内の任意の領域を指定する指定手段」を備える点に相当する。

(オ)甲1第1発明の「前記記憶手段に格納された各粒子像を前記表示手段に一括表示する粒子像呼出手段」を備える点と,本件発明1の「指定手段によって指定された領域内の特徴パラメータに対応する粒子像を記憶手段から読出す読出し手段と,読出した粒子像を表示する表示手段と」を備える点とは,「粒子像を記憶手段から読出す読出し手段と,読出した粒子像を表示する表示手段と」を備える点で共通する。

してみると,両者は,

(一致点)
「撮像により得られた各粒子像について,少なくとも一つの特徴パラメータを算出するパラメータ算出手段と,各粒子像について記憶する記憶手段と,特徴パラメータの分布図を作成する分布図作成手段と,分布図内の任意の領域を指定する指定手段と,粒子像を記憶手段から読出す読出し手段と,読出した粒子像を表示する表示手段とを備えてなる粒子画像分析装置。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)各粒子像について記憶する記憶手段が,本件発明1では,各粒子像について「粒子像と特徴パラメータとを関連づけて」記憶する記憶手段であるのに対し,甲1第1発明では,粒子像と特徴パラメータとを関連づけて記憶しているか否かが不明である点。

(相違点2)粒子像を記憶手段から読出す読出し手段,および,読出した粒子像を表示する表示手段が,本件発明1では,「分布図内の任意の領域を指定する」「指定手段によって指定された領域内の特徴パラメータに対応する」粒子像を記憶手段から読出す読出し手段,および,当該読出した粒子像を表示する表示手段であるのに対し,甲1第1発明では,前記記憶手段に格納された各粒子像を前記表示手段に一括表示する粒子像呼出手段である点。

イ 上記相違点1について
甲第1号証の摘記事項(甲1-オ)には「【0051】この装置では,・・・撮像した粒子像を記憶しておき,測定後に大きさ別にクラス分けして図4に示すように,一括表示する機能も有している。」と記載されており,粒子像を測定後に大きさ別にクラス分けして一括表示するためには,予め,「粒子像」と,「大きさ」すなわち「円相当径」とを関連づけて記憶しておくことが不可欠である。
してみると,甲1第1発明では,各粒子像について粒子像と特徴パラメータとを関連づけて記憶しているといえるから,上記相違点1は,本件発明1と甲1第1発明との実質的な相違点ではない。
仮に,上記相違点1が,本件発明1と甲1第1発明との実質的な相違点であったとしても,各粒子像について粒子像と特徴パラメータとを関連づけて記憶することは,例えば,甲第2号証の摘記事項(甲2-ウ)に「・・・微粒子面積,蛍光・・・は,ASCIIフォーマットファイルに保存される。個々の微粒子のサブ画像は,コラージュファイルに保存される。・・・別個のリストファイルが,これらのサブ画像と,微粒子サイズデータおよび蛍光データとをリンクさせるために,生成される。・・・」と記載され,上記参考資料3の118頁10?12行に「However, since the measured data are stored together with the image data, the images are indexed to the size and fluorescence data.(当審仮訳:しかし,測定データは画像データと共に保存されるので,画像は,サイズおよび蛍光データに対して索引付けされる。)」と記載されているように,本件出願日前に周知であり,甲1第1発明に当該周知技術を適用し,上記相違点1における本件発明1のようにすることは,当業者であれば,何ら困難性はなく,容易に想到し得る事項であるといえる。

ウ 上記相違点2について
甲第2号証の摘記事項(甲2-ウ)における「・・・個々の微粒子のサブ画像は,コラージュファイルに保存される。・・・別個のリストファイルが,これらのサブ画像と,微粒子サイズデータおよび蛍光データとをリンクさせるために,生成される。・・・相互関連のスキャッタグラムモードでは,データは,蛍光対サイズのドットプロットの形式でユーザーに提供され,・・・ユーザーが,コンピュータマウスを用いて,スキャッタグラムの領域を選択すると,その領域内の微粒子画像が,コンピュータスクリーンに表示される。・・・」の記載からみて,甲第2号証では,各微粒子のサブ画像をコラージュファイルに記憶すると共に,これらのサブ画像と,微粒子サイズデータおよび蛍光データとのリンク情報をリストファイルに記憶しておき,蛍光対サイズのドットプロットの形式のスキャッタグラム内の領域が選択されると,その領域内の微粒子画像が表示されるものといえる。
そうすると,甲第2号証には,上記相違点2に係る本件発明1の技術的事項,すなわち,分布図内の任意の領域を指定する指定手段によって指定された領域内の特徴パラメータに対応する粒子像を記憶手段から読出す読出し手段と,当該読出した粒子像を表示する表示手段とを備えるという技術的事項が記載されているといえる。
そして,甲1第1発明も,甲第2号証に記載の上記技術的事項も,共に,粒子分析装置という同一の技術分野に属するものであり,両者は,スキャッタグラム内の任意の領域を指定する指定手段,および,粒子像を表示する表示手段を有する点で共通している。また,甲1第1発明では,指定領域内の粒子のみに着目して解析を行っており,甲第2号証に記載の上記技術的事項では,指定領域内の粒子のみ粒子像を表示しており,両者は,指定領域内の粒子のみに着目する点でも共通している。
してみると,甲1第1発明に,甲第2号証に記載の上記技術的事項を適用し,上記相違点2における本件発明1のようにすることは,当業者であれば,何ら困難性はなく,容易に想到し得る事項であるといえる。

そして,本件特許明細書に記載された本件発明1の効果も,甲第1号証および甲第2号証の記載から容易に予測し得る範囲のものであり,格別顕著なものとはいえない。

したがって,本件発明1は,甲1第1発明,および,甲第2号証に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

(2)本件発明2について
甲1第1発明の「ヒストグラム」は,円相当径による粒度頻度データに基づいて作成されるものであるから,「円相当径」すなわち「1つの特徴パラメータ」に対する分布図であるといえる。
してみると,本件発明2と甲1第1発明とは,上記「(1)本件発明1について ア 対比」の(一致点)に加え,「さらに分布図が1つの特徴パラメータに対する分布図である」点でも一致し,上記「(1)本件発明1について ア」の(相違点1)および(相違点2)で相違する。
そして,上記(相違点1)および(相違点2)については,上記「(1)本件発明1について」の「イ」および「ウ」にて検討のとおりである。

したがって,本件発明2は,甲1第1発明,および,甲第2号証に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

(3)本件発明3について
甲1第1発明の「2次元スキャッタグラム」は,円相当径と円形度とに対応する2つのパラメータに基づいて作成されるものであるから,「2つの特徴パラメータ」に対する分布図であるといえる。
してみると,本件発明3と甲1第1発明とは,上記「(1)本件発明1について ア 対比」の(一致点)に加え,「さらに分布図が2つの特徴パラメータに対する分布図である」点でも一致し,上記「(1)本件発明1について ア」の(相違点1)および(相違点2)で相違する。
そして,上記(相違点1)および(相違点2)については,上記「(1)本件発明1について」の「イ」および「ウ」にて検討のとおりである。

したがって,本件発明3は,甲1第1発明,および,甲第2号証に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

(4)本件発明4について
甲1第1発明の「前記2次元スキャッタグラムにおいて,ある2次元領域を設定し,その領域内あるいは領域外の粒子のデータだけに限定して粒度解析,円形度解析させる手段」は,本件発明4の「指定手段によって指定された領域内の特徴パラメータについて分布状態を解析する分布解析手段」に相当する。
また,甲第1号証の摘記事項(甲1-エ)に「【0050】・・・解析結果を表示する・・・」と記載されているように,甲1第1発明は,分布解析手段による解析結果を表示手段に表示するものであることが明らかである。
してみると,本件発明4と甲1第1発明とは,上記「(1)本件発明1について ア 対比」の(一致点)に加え,「指定手段によって指定された領域内の特徴パラメータについて分布状態を解析する分布解析手段をさらに備えてなり,表示手段に解析結果を表示する」点でも一致し,上記「(1)本件発明1について ア」の(相違点1)および(相違点2)で相違する。
そして,上記(相違点1)および(相違点2)については,上記「(1)本件発明1について」の「イ」および「ウ」にて検討のとおりである。

したがって,本件発明4は,甲1第1発明,および,甲第2号証に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

(5)本件発明5について
甲1第1発明の「各粒子像について,一次(単独)粒子像か,2個凝集粒子像か,3個凝集粒子像か,高次凝集塊か,あるいは対象外の粒子かを,使用者が指定しキーボード13を用いて入力する手段」は,粒子の種類を表す分類情報を付加するものであるから,本件発明5の「各粒子像に対して粒子の種類を表す分類情報を付加する分類手段」に相当する。
してみると,本件発明5と甲1第1発明とは,上記「(1)本件発明1について ア 対比」の(一致点)に加え,「各粒子像に対して粒子の種類を表す分類情報を付加する分類手段をさらに備えてなる」点でも一致し,上記「(1)本件発明1について ア」の(相違点1)および(相違点2)で相違する。
そして,上記(相違点1)および(相違点2)については,上記「(1)本件発明1について」の「イ」および「ウ」にて検討のとおりである。

したがって,本件発明5は,甲1第1発明,および,甲第2号証に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

(6)本件発明6について
甲1第1発明の「円相当径および円形度」は,本件発明6の「円相当径および円形度である」「特徴パラメータ」に相当する。
してみると,本件発明6と甲1第1発明とは,上記「(1)本件発明1について ア 対比」の(一致点)に加え,「前記特徴パラメータが,円相当径および円形度である」点でも一致し,上記「(1)本件発明1について ア」の(相違点1)および(相違点2)で相違する。
そして,上記(相違点1)および(相違点2)については,上記「(1)本件発明1について」の「イ」および「ウ」にて検討のとおりである。

したがって,本件発明6は,甲1第1発明,および,甲第2号証に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

(7)本件発明7について
本件発明7と甲1第1発明とを対比すると,両者は,上記「(1)本件発明1について ア 対比」の(一致点)で一致し,上記「(1)本件発明1について ア」の(相違点1),(相違点2)に加え,次の点にて相違する。

(相違点3)本件発明7では,前記記憶手段には,「粒子像と算出された特徴パラメータとを関連づける情報が記憶される」のに対し,甲1第1発明では,そのような構成であるかが不明な点。

上記(相違点1)および(相違点2)については,上記「(1)本件発明1について」の「イ」および「ウ」にて検討のとおりである。
次に,上記相違点3を検討する。
甲1第1発明では,粒子像を記憶手段に記憶している。また,甲1第1発明では,粒子の円相当径と円形度を算出しており,算出された円相当径および円形度,すなわち,特徴パラメータは,記憶手段に記憶されることが,技術常識である。
ところで,甲第2号証の摘記事項(甲2-ウ)における「・・・別個のリストファイルが,これらのサブ画像と,微粒子サイズデータおよび蛍光データとをリンクさせるために,生成される。・・・」の記載からみて,甲第2号証では,各々のサブ画像と,微粒子サイズデータおよび蛍光データとのリンク情報をリストファイルに記憶しているといえる。
そうすると,甲第2号証には,上記相違点3に係る本件発明7の技術的事項,すなわち,「粒子像と算出された特徴パラメータとを関連づける情報が記憶される」という技術的事項が記載されているといえる。
そして,甲1第1発明も,甲第2号証に記載の上記技術的事項も,共に,粒子分析装置という同一の技術分野に属するものであり,また,両者は,粒子像,および,特徴パラメータを記憶するものである点で共通していることから,甲1第1発明に,甲第2号証に記載の上記技術的事項を適用し,上記相違点3における本件発明7のようにすることは,当業者であれば,何ら困難性はなく,容易に想到し得る事項であるといえる。

そして,本件特許明細書に記載された本件発明7の効果も,甲第1号証および甲第2号証の記載から容易に予測し得る範囲のものであり,格別顕著なものとはいえない。

したがって,本件発明7は,甲1第1発明,および,甲第2号証に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

(8)本件発明8について

ア 対比
本件発明8と甲1第2発明とを対比する。

(ア)甲1第2発明の「円相当径および円形度」は,本件発明8の「特徴パラメータ」に相当する。
また,甲第1号証の摘記事項(甲1-エ)における「【0029】・・・画像信号は,画像処理装置11に取り込まれてA/D変換され,画像データとして取り込まれる(ステップS1)。・・・【0032】・・・また,撮像されたフレームから粒子像の切り出しを行い,切り出した粒子像を画像処理装置11の画像メモリに格納する(ステップS7)。」の記載からみて,甲1第2発明では,粒子を撮像して粒子像を得ていることが明らかである。
してみると,甲1第2発明の「撮像されたフレームから粒子像の切り出しを行い,切り出した粒子像を画像処理装置の画像メモリに格納する記憶工程と,撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを測定し,その粒子データから粒子の円相当径と円形度を算出する算出工程と」を有する点は,本件発明8の「粒子を撮像して粒子像を得,得られた粒子像について,その粒子の特徴パラメータを算出」する点に相当する。

(イ)甲1第2発明の「ヒストグラムおよび2次元スキャッタグラム」は,本件発明8の「分布図」に相当する。
してみると,甲1第2発明の「円相当径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成すると共に円相当径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成工程」を有する点は,本件発明8の「算出された特徴パラメータに基づく分布図を作成する」点に相当する。

(ウ)甲1第2発明の「前記記憶工程により画像メモリに格納された各粒子像を呼出し,前記表示手段に一括表示する表示工程」を有する点と,本件発明8の「分布図内の任意の領域が指定されたとき,粒子像と算出された特徴パラメータとを関連づける情報に基づいて,領域内の特徴パラメータに対応する粒子像を表示する」点とは,「粒子像を表示する」点で共通する。

してみると,両者は,

(一致点)
「粒子を撮像して粒子像を得,得られた粒子像について,その粒子の特徴パラメータを算出し,算出された特徴パラメータに基づく分布図を作成する粒子画像分析方法であって,粒子像を表示する粒子画像分析方法。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点4)粒子像を表示することが,本件発明8では,「分布図内の任意の領域が指定されたとき,粒子像と算出された特徴パラメータとを関連づける情報に基づいて,領域内の特徴パラメータに対応する」粒子像を表示することであるのに対し,甲1第2発明では,前記記憶工程により画像メモリに格納された各粒子像を呼出し,前記表示手段に一括表示することである点。

イ 上記相違点4について
甲第2号証の摘記事項(甲2-ウ)における「・・・個々の微粒子のサブ画像は,コラージュファイルに保存される。・・・別個のリストファイルが,これらのサブ画像と,微粒子サイズデータおよび蛍光データとをリンクさせるために,生成される。・・・相互関連のスキャッタグラムモードでは,データは,蛍光対サイズのドットプロットの形式でユーザーに提供され,・・・ユーザーが,コンピュータマウスを用いて,スキャッタグラムの領域を選択すると,その領域内の微粒子画像が,コンピュータスクリーンに表示される。・・・」の記載からみて,甲第2号証では,スキャッタグラム内の領域が選択されると,その領域内の微粒子,すなわち,特徴パラメータの値がその領域内に入っている微粒子の微粒子画像を表示しており,当該表示は,微粒子画像と特徴パラメータとのリンク情報に基づいて行われていることが明らかである。
そうすると,甲第2号証には,上記相違点4に係る本件発明8の技術的事項,すなわち,分布図内の任意の領域が指定されたとき,粒子像と特徴パラメータとを関連づける情報に基づいて,領域内の特徴パラメータに対応する粒子像を表示するという技術的事項が記載されているといえる。
そして,甲1第2発明も,甲第2号証に記載の上記技術的事項も,共に,粒子分析方法という同一の技術分野に属するものであり,両者は,粒子像を表示する点で共通している。また,甲1第2発明では,指定領域内の粒子のみに着目して解析を行っており,甲第2号証に記載の上記技術的事項では,指定領域内の粒子のみ粒子像を表示しており,両者は,指定領域内の粒子のみに着目する点でも共通している。
してみると,甲1第1発明に,甲第2号証に記載の上記技術的事項を適用し,上記相違点4における本件発明8のようにすることは,当業者であれば,何ら困難性はなく,容易に想到し得る事項であるといえる。

そして,本件特許明細書に記載された本件発明8の効果も,甲第1号証および甲第2号証の記載から容易に予測し得る範囲のものであり,格別顕著なものとはいえない。

したがって,本件発明8は,甲1第2発明,および,甲第2号証に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

2 無効理由2について

(1)本件発明1について

ア 対比
本件発明1と甲2第1発明とを対比する。

(ア)甲2第1発明の「微粒子のサブ画像」,「微粒子の面積」および「スキャッタグラム」は,それぞれ,本件発明1の「粒子像」,「一つの特徴パラメータ」および「分布図」に相当する。また,甲第2号証の摘記事項(甲2-ウ)における「・・・コンピュータがトリガーを検知すると,画像は,フレームグラバーによってデジタル化され,検出された各々の微粒子のサブ画像が抽出される。・・・」の記載からみて,甲2第1発明の「微粒子のサブ画像」が撮像により得られたものであることは明らかである。
してみると,甲2第1発明の「検出された各々の微粒子のサブ画像を抽出する抽出手段と,前記各々の微粒子の面積を計算する計算手段と」を備える点は,本件発明1の「撮像により得られた各粒子像について,少なくとも一つの特徴パラメータを算出するパラメータ算出手段」を備える点に相当する。

(イ)甲第2号証の摘記事項(甲2-ウ)における「・・・微粒子面積,蛍光・・・は,ASCIIフォーマットファイルに保存される。個々の微粒子のサブ画像は,コラージュファイルに保存される。・・・別個のリストファイルが,これらのサブ画像と,微粒子サイズデータおよび蛍光データとをリンクさせるために,生成される。・・・」の記載からみて,甲2第1発明では,微粒子の面積,微粒子のサブ画像,および,微粒子のサブ画像と微粒子の面積とのリンク情報が,ファイルに記憶されるものといえる。
してみると,甲2第1発明の「前記各々の微粒子の面積,および,前記各々の微粒子の蛍光をASCIIフォーマットファイルに保存し,前記各々の微粒子のサブ画像をコラージュファイルに保存し,前記サブ画像と,微粒子サイズデータおよび蛍光データとをリンクさせるためにリストファイルを生成する手段」は,本件発明1の「各粒子像について粒子像と特徴パラメータとを関連づけて記憶する記憶手段」に相当する。

(ウ)甲2第1発明の「蛍光対サイズのドットプロットの形式でユーザーにスキャッタグラムを提供する手段」は,本件発明1の「特徴パラメータの分布図を作成する分布図作成手段」に相当する。

(エ)甲2第1発明の「コンピュータマウスを用いて,前記スキャッタグラムの領域を選択する選択手段」は,本件発明1の「分布図内の任意の領域を指定する指定手段」に相当する。

(オ)甲2第1発明の「選択手段によって選択された領域内の微粒子画像を,コンピュータスクリーンに表示する表示手段」が,表示に先立ち,粒子像を,「前記各々の微粒子の面積,および,前記各々の微粒子の蛍光をASCIIフォーマットファイルに保存し,前記各々の微粒子のサブ画像をコラージュファイルに保存し,前記サブ画像と,微粒子サイズデータおよび蛍光データとをリンクさせるためにリストファイルを生成する手段」すなわち「各粒子像について粒子像と特徴パラメータとを関連づけて記憶する記憶手段」から読出していることは,明らかである。
してみると,甲2第1発明の「選択手段によって選択された領域内の微粒子画像を,コンピュータスクリーンに表示する表示手段」を備える点は,本件発明1の「指定手段によって指定された領域内の特徴パラメータに対応する粒子像を記憶手段から読出す読出し手段と,読出した粒子像を表示する表示手段と」を備える点に相当する。

(カ)甲第2号証の摘記事項(甲2-ウ)における「・・・相互関連のスキャッタグラムモードでは,データは,蛍光対サイズのドットプロットの形式でユーザーに提供され,これは,フローサイトメータの‘サイトグラム’に類似するものである。もし,ユーザーが,コンピュータマウスを用いて,スキャッタグラムの領域を選択すると,その領域内の微粒子画像が,コンピュータスクリーンに表示される。このモードにより,ユーザーは,区分されたサイズおよび蛍光特性を有する微粒子集団についての,微粒子画像を調査することができる。・・・」の記載からみて,甲2第1発明が,粒子画像を分析するものであることは明らかである。
してみると,甲2第1発明の「微粒子の数を計数し測定するための自動化システム」は,本件発明1の「粒子画像分析装置」に相当する。

イ 判断
そうすると,本件発明1と甲2第1発明とに相違するところはなく,本件発明1は,甲第2号証に記載された発明であるというべきである。

(2)本件発明2について
甲第2号証の摘記事項(甲2-ウ)における「・・・ユーザーは,さらに,商用表計算プログラムを用いて,ASCIIフォーマットデータをレビューしてもよい。これにより,ユーザーは,各サンプルについて,・・・サイズのヒストグラムを生成することができる。・・・」の記載,同摘記事項(甲2-オ)における「・・・図8に,6種類の植物プランクトン培養体のサイズ分布を示す。」の記載,および,同摘記事項(甲2-キ)における「図8は,フローカムにより測定されたサイズの分布であり,・・・」の記載からみて,甲2第1発明の「微粒子の数を計数し測定するための自動化システム」は,サイズ,すなわち,1つの特徴パラメータに対する分布図を作成することを含むものであるといえる。
してみると,本件発明2と甲2第1発明とに相違するところはなく,本件発明2は,甲第2号証に記載された発明であるというべきである。

(3)本件発明3について
甲2第1発明の「微粒子の蛍光」は,本件発明3の「特徴パラメータ」に相当する。
また,甲2第1発明では,「蛍光対サイズのドットプロットの形式でユーザーにスキャッタグラム」を作成しており,当該スキャッタグラムは,蛍光およびサイズに対する分布図,すなわち,2つの特徴パラメータに対する分布図であるといえる。
してみると,本件発明3と甲2第1発明とに相違するところはなく,本件発明3は,甲第2号証に記載された発明であるというべきである。

(4)本件発明4について
上記「(1) 本件発明1について」で検討のとおり,本件発明1と甲2第1発明とは,相違点がない。そして,本件発明4は,本件発明1に対し,「指定手段によって指定された領域内の特徴パラメータについて分布状態を解析する分布解析手段をさらに備えてなり,表示手段に解析結果を表示する」との限定を付加したものである。
そうすると,本件発明4と甲2第1発明とを対比すると,両者は,以下の点で相違し,その他の点では一致する。

(相違点5)本件発明4では,「指定手段によって指定された領域内の特徴パラメータについて分布状態を解析する分布解析手段をさらに備えてなり,表示手段に解析結果を表示する」のに対し,甲2第1発明では,そのような構成ではない点。

上記相違点5について検討する。
甲第1号証の摘記事項(甲1-キ)には,「【0056】この装置では,図9の例のように円相当径と円形度による2次元スキャッタグラムにおいてある2次元領域を設定し,その領域内あるいは領域外の粒子のデータだけに限定して粒度解析,円形度解析させることもできる。・・・このような2次元領域は,測定する試料の種類ごとに,使用者がキーボード13やマウスを使って任意に設定,変更できる。」と記載されている。
そうすると,甲第1号証には,「前記2次元スキャッタグラムにおいて,ある2次元領域を設定し,その領域内あるいは領域外の粒子のデータだけに限定して粒度解析,円形度解析させる手段」という技術的事項が記載されており,当該手段は,本件発明4の「指定手段によって指定された領域内の特徴パラメータについて分布状態を解析する分布解析手段」に相当する。
また,甲第1号証の摘記事項(甲1-エ)に「【0050】・・・解析結果を表示する・・・」と記載されているように,甲第1号証に記載の上記技術的事項は,分布解析手段による解析結果を表示手段に表示することを含むものであることが明らかである。
そして,甲2第1発明も,甲第1号証に記載の上記技術的事項も,共に,粒子分析装置という同一の技術分野に属するものであり,両者は,スキャッタグラム内の任意の領域を指定する指定手段を有する点で共通する。また,甲第2号証の摘記事項(甲2-ウ)に「・・・区分されたサイズおよび蛍光特性を有する微粒子集団についての,微粒子画像を調査する・・・」と記載されているように,甲2第1発明は,指定手段によって指定された領域内の微粒子画像について調査するものであるが,当該微粒子の特徴パラメータについて,その分布状態を解析すればより詳細な調査結果が得られることは技術常識である。
してみると,甲2第1発明に,甲第1号証に記載の上記技術的事項を適用し,上記相違点5における本件発明4のようにすることは,当業者であれば,何ら困難性はなく,容易に想到し得る事項であるといえる。

そして,本件特許明細書に記載された本件発明4の効果も,甲第2号証および甲第1号証の記載から容易に予測し得る範囲のものであり,格別顕著なものとはいえない。

したがって,本件発明4は,甲2第1発明,および,甲第1号証に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

(5)本件発明5について
上記「(4) 本件発明4について」で検討したのと同様に,本件発明5と甲2第1発明とを対比すると,両者は,以下の点で相違し,その他の点では一致する。

(相違点6)本件発明5では,「各粒子像に対して粒子の種類を表す分類情報を付加する分類手段をさらに備えてなる」のに対し,甲2第1発明では,そのような構成ではない点。

上記相違点6について検討する。
甲第1号証の摘記事項(甲1-カ)における「【0052】粒子どうし凝集することが重要な意味を持つような場合には,図4に示す各枠内の粒子像について,一次(単独)粒子像か,2個凝集粒子像か,3個凝集粒子像か,高次凝集塊か,あるいは対象外の粒子かを,使用者が指定しキーボード13を用いて入力する。・・・」の記載からみて,甲第1号証には,「各粒子像に対して粒子の種類を表す分類情報を付加する分類手段」という技術的事項が記載されているといえる。
そして,甲2第1発明も,甲第1号証に記載の上記技術的事項も,共に,粒子分析装置という同一の技術分野に属するものであり,粒子像を表示する表示手段を有する点で共通している。また,甲第2号証の摘記事項(甲2-ウ)に「・・・微粒子画像を調査する・・・」と記載されているように,甲2第1発明は,微粒子画像について調査するものであるが,各微粒子画像について分類を付与することにより,後に行われる調査が容易になることは技術常識である。
してみると,甲2第1発明に,甲第1号証に記載の上記技術的事項を適用し,上記相違点6における本件発明5のようにすることは,当業者であれば,何ら困難性はなく,容易に想到し得る事項であるといえる。

そして,本件特許明細書に記載された本件発明5の効果も,甲第2号証および甲第1号証の記載から容易に予測し得る範囲のものであり,格別顕著なものとはいえない。

したがって,本件発明5は,甲2第1発明,および,甲第1号証に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

(6)本件発明6について
上記「(4) 本件発明4について」で検討したのと同様に,本件発明6と甲2第1発明とを対比すると,両者は,以下の点で相違し,その他の点では一致する。

(相違点7)前記特徴パラメータが,本件発明6では,「円相当径および円形度である」のに対して,甲2第1発明では,蛍光およびサイズである点。

上記相違点6について検討する。
甲第1号証の摘記事項(甲1-ウ)および(甲1-エ)に,それぞれ,「【0012】この発明の装置の分析対象は,ファインセラミックス,顔料,化粧品用パウダーのような無機物の粉体および食品添加物のような有機物の粉体を含むものであり,・・・」,および,「【0050】・・・円相当径と円形度の2次元スキャッタグラム・・・」と記載されていることからみて,甲第1号証には,粉体の粒子分析に用いる特徴パラメータとして,円相当径および円形度を使用するという技術的事項が記載されているといえる。
そして,甲2第1発明も,甲第1号証に記載の上記技術的事項も,共に,粒子分析装置という同一の技術分野に属するものである。また,粒子分析装置は様々な種類の粒子の分析に用いられるものであって,粒子分析に用いる特徴パラメータは,粒子の種類に応じて選択されるものであることは技術常識である。
してみると,甲2第1発明に,甲第1号証に記載の上記技術的事項を適用し,分析対象を粉体とするとともに,分析に用いる特徴パラメータとして,円相当径および円形度を使用すること,すなわち,上記相違点7における本件発明6のようにすることは,当業者であれば,何ら困難性はなく,容易に想到し得る事項であるといえる。

そして,本件特許明細書に記載された本件発明6の効果も,甲第2号証および甲第1号証の記載から容易に予測し得る範囲のものであり,格別顕著なものとはいえない。

したがって,本件発明6は,甲2第1発明,および,甲第1号証に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

(7)本件発明7について
甲第2号証の摘記事項(甲2-ウ)における「・・・別個のリストファイルが,これらのサブ画像と,微粒子サイズデータおよび蛍光データとをリンクさせるために,生成される。・・・」の記載からみて,甲2第1発明では,別個のリストファイルには,微粒子のサブ画像と微粒子サイズデータとのリンク情報,すなわち,粒子像と特徴パラメータとを関連づける情報が記憶されているといえる。
してみると,本件発明7と甲2第1発明とに相違するところはなく,本件発明7は,甲第2号証に記載された発明であるというべきである。

(8)本件発明8について

ア 対比
本件発明8と甲2第2発明とを対比する。

(ア)甲2第2発明の「微粒子のサブ画像」,「微粒子の面積」および「スキャッタグラム」は,それぞれ,本件発明8の「粒子像」,「一つの特徴パラメータ」および「分布図」に相当する。また,甲第2号証の摘記事項(甲2-ウ)における「・・・コンピュータがトリガーを検知すると,画像は,フレームグラバーによってデジタル化され,検出された各々の微粒子のサブ画像が抽出される。・・・」の記載からみて,甲2第2発明の「微粒子のサブ画像」が撮像により得られたものであることは明らかである。
してみると,甲2第2発明の「検出された各々の微粒子のサブ画像を抽出する抽出工程と,各々の微粒子の面積を計算するとともに,蛍光ピークを測定する工程と」を有する点は,本件発明8の「粒子を撮像して粒子像を得,得られた粒子像について,その粒子の特徴パラメータを算出」する点に相当する。

(イ)甲2第2発明の「蛍光対サイズのドットプロットの形式でユーザーにスキャッタグラムを提供する」点は,本件発明8の「算出された特徴パラメータに基づく分布図を作成する」点に相当する。

(ウ)甲第2号証の摘記事項(甲2-ウ)における「・・・相互関連のスキャッタグラムモードでは,データは,蛍光対サイズのドットプロットの形式でユーザーに提供され,これは,フローサイトメータの‘サイトグラム’に類似するものである。もし,ユーザーが,コンピュータマウスを用いて,スキャッタグラムの領域を選択すると,その領域内の微粒子画像が,コンピュータスクリーンに表示される。このモードにより,ユーザーは,区分されたサイズおよび蛍光特性を有する微粒子集団についての,微粒子画像を調査することができる。・・・」の記載からみて,甲2第2発明が,粒子画像を分析する方法であることは明らかである。

(エ)上記「(7)本件発明7について」で検討したのと同様に,甲2第2発明では,別個のリストファイルには,微粒子のサブ画像と微粒子サイズデータとのリンク情報,すなわち,粒子像と特徴パラメータとを関連づける情報が記憶されているといえる。
また,甲2第2発明では,コンピュータマウスを用いて,前記スキャッタグラムの領域を選択し,選択された領域内の微粒子画像を,コンピュータスクリーンに表示している。そして,選択された領域内の微粒子画像を,コンピュータスクリーンに表示するには,粒子像と特徴パラメータとを関連づける情報が不可欠であるから,上記表示は,粒子像と特徴パラメータとを関連づける情報に基づいて行われていることが明らかである。
してみると,甲2第2発明の「コンピュータマウスを用いて,前記スキャッタグラムの領域を選択する工程と,選択された領域内の微粒子画像を,コンピュータスクリーンに表示する工程と」を有する点は,本件発明8の「分布図内の任意の領域が指定されたとき,粒子像と算出された特徴パラメータとを関連づける情報に基づいて,領域内の特徴パラメータに対応する粒子像を表示する」点に相当する。

イ 判断
そうすると,本件発明8と甲2第2発明とに相違するところはなく,本件発明8は,甲第2号証に記載された発明であるというべきである。


第6 むすび
以上のとおり,本件発明1?8は,甲第1号証および甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定に違反し,本件特許は,同法第123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。
また,本件発明1?3,7?8は,甲第2号証に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,本件発明4?6は,甲第2号証および甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定に違反し,本件特許は,同法第123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。

審判に関する費用については,特許法169条2項において準用する民事訴訟法61条の規定により,審判費用は被請求人の負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-04 
結審通知日 2011-02-09 
審決日 2011-02-22 
出願番号 特願平10-377845
審決分類 P 1 113・ 121- Z (G01N)
P 1 113・ 113- Z (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西村 直史  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 秋月 美紀子
石川 太郎
登録日 2006-10-27 
登録番号 特許第3871456号(P3871456)
発明の名称 粒子画像分析装置  
代理人 岩谷 敏昭  
代理人 鶴田 準一  
代理人 西野 卓嗣  
代理人 奥村 茂樹  
代理人 水谷 好男  
代理人 森 啓  
代理人 青木 篤  
代理人 堀田 裕二  

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