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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65B
管理番号 1235434
審判番号 不服2009-3239  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-12 
確定日 2011-04-14 
事件の表示 特願2002- 43799「製袋充填方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月27日出願公開、特開2003-237737〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年2月20日の出願であって、平成21年1月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成21年2月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成21年3月16日付けで手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成21年3月16日付けの手続補正の却下の決定が平成22年8月17日付けでなされるとともに、同日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成22年10月21日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、さらに、平成22年11月17日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成23年1月24日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、平成23年1月24日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「フィルムを幅方向に二つ折りする装置と、幅方向に二つ折りされた前記フィルムの幅方向の遊端部をヒートシールして筒状フィルムとする第1のヒートシール装置と、一定速度で送られる前記筒状フィルムを幅方向にわたってヒートシールして、有底の筒状フィルムとする第2のヒートシール装置と、ノズルから醤油、ソースなどの内容物を吐出して前記有底の筒状フィルムに充填する充填装置とを備えた製袋充填装置を使用する製袋充填方法であって、
前記第2のヒートシール装置は、回転軸を中心として回転可能な支持体と、該支持体上に形成された少なくとも1つのヒートシール部材とを備えた2つの回転体が、前記回転軸が互いに平行となるように配された一対のヒートシールロールを具備し、
フィルムを挟持している間、前記ヒートシール部材の外周面における周方向の速度が一定で、かつ、前記フィルムの送り速度よりも遅くなる一定の回転速度で前記回転体を回転させつつ、前記フィルムの送り方向に沿って、前記フィルムの送り速度より遅い一定の速度で前記一対のヒートシールロールを移動させ、
前記一対のヒートシールロールが、前記フィルムの送り方向に沿って下降して前記ヒートシール部材の外周面がフィルムから離れた直後の時点で移動の向きを上方に反転させ、前記フィルムの送り方向と反対の方向に下降した分だけ上昇した際に、再び移動の向きを下方へ反転させると共に、次の箇所をヒートシールするヒートシール部材が前記フィルムに当接するタイミングとなるように、前記一対のヒートシールロールの移動速度および各回転体の回転速度を調整することを特徴とする製袋充填方法。」

3.当審の拒絶理由
当審において平成22年11月17日付けで通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

[拒絶理由1]
この出願は、明細書の記載が下記の点で、特許法第36条第4項の規定する要件を満たしていない。

請求項1に「フィルムを挟持している間、前記一対のヒートシールロールは、・・・前記フィルムの送り方向に沿って、前記フィルムの送り速度より遅い一定の速度で移動可能であり」及び「前記一対のヒートシールロールは、前記フィルムの送り方向に沿って下降して前記ヒートシール部材の外周面がフィルムから離れた直後の時点で移動の向きを上方に反転し、前記フィルムの送り方向と反対の方向に下降した分だけ上昇した際に、次の箇所をヒートシールするヒートシール部材が前記フィルムに当接できるタイミングとなるようにヒートシールロールの移動速度・・・が調整可能とされている」と記載されているが、発明の詳細な説明には、そのような「一対のヒートシールロール」の移動は、どのような機構を採用すれば可能なのか記載されておらず、当業者が実施できる程度の記載が発明の詳細な説明にされていない。

[拒絶理由2]
この出願の請求項1-3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1-3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特公平3-23405号公報
2.特開平9-295624号公報
3.特開2001-225813号公報

4.当審の判断
4-1.拒絶理由1について
本願の請求項1に「フィルムを挟持している間、・・・前記フィルムの送り方向に沿って、前記フィルムの送り速度より遅い一定の速度で前記一対のヒートシールロールを移動させ、前記一対のヒートシールロールが、前記フィルムの送り方向に沿って下降して前記ヒートシール部材の外周面がフィルムから離れた直後の時点で移動の向きを上方に反転させ、・・・るように、前記一対のヒートシールロールの移動速度・・・調整する」と記載されている。すなわち、請求項1に係る発明は、「一対のヒートシールロール」を一定速度で下方に移動させ、その直後に移動の向きを上方に反転させる必要があるものである。
一方、本願明細書の発明の詳細な説明には、「一対のヒートシールロール」を移動させるための具体的な機構または方法は何ら記載されていない。
ここで、「一対のヒートシールロール」を備える横シール装置を従来周知のラック、ボールねじまたはカム機構などを用いて、一定速度で移動させることは可能であったとしても、一定速度で移動していた上記横シール装置をその直後に方向を反転させることは、発明の詳細な説明にはそのための具体的な機構または方法の記載はなく、当業者が実施可能なものとは認められない。

なお、請求人は、平成23年1月24日付け意見書において、その「2.拒絶理由1:記載要件違反について」においては、横シール装置に備えられている上下動機構についての従来から周知のラック、ボールねじ、カム機構及びクランク機構が例示されるのみであり、上記した一定速度で移動していた横シール装置をその直後に方向を反転させることについては何ら示されていない。
また、「3.拒絶理由2:進歩性について」において「ラックやボールねじ機構を用いたものは、等速運動が容易に得られますが、移動方向を切り替える度に電動機を一旦停止させて正逆運転をする必要があります。横シール装置は、例えば30Kg程度の重量を有しており、本願発明1のように短時間で方向転換して作動させるためには、急発進と急停止による大きな負荷がかかりますので、工夫が必要です。また、クランク機構も等速回転させた場合は、基本的に非等速運動となりますので、回転速度の調節で等速運動に変換するための工夫が必要です。一方、カム機構を用いたものは、任意の移動パターンを設計できますので、強制的に方向転換させるためにカムフォロアーが溝内に拘束された溝カムを用いれば、高速での等速上下動も可能であります。・・・引用発明1は、カム機構を採用するものですが、溝カムではなく、単にカムフォロアーとなる作動杆17の先端がカム18の周囲に当接するだけの板カムです。板カムにより横シール装置の慣性力を抑えて正確に上下動させるためには、移動方向を緩やかに切り替える必要がありますので、本願発明1のように短時間で方向転換して等速上下動させることはできません。」と、板カム、ラックまたはボールねじ機構では困難であるが、溝カムを用いれば横シール装置の高速での等速上下動が可能である旨の主張をしているが、上記溝カムについては、本願明細書に記載された事項ではないばかりか、等速で上下動可能なカム溝の形状は、理論的には設計できたとしても、一定速度で移動していた横シール装置をその直後に方向を反転させた場合には、横シール装置はかなりの重量があることから、上記反転の際には、ラックやボールねじ機構と同様に大きな負荷が掛かるほか、大きな衝撃が発生するため、実用的ではなく、上記方向を反転させる際には、移動方向をある程度緩やかに切り替える必要があることから、上記のような一定速度で移動していた横シール装置をその直後に方向を反転させる機構を製袋充填装置のヒートシール装置に採用できるものとは認められないことより、上記請求人の主張は採用できない。

よって、特許を受けようとする発明を当業者が実施できる程度の記載が、発明の詳細な説明に記載されているとはいえないことより、この出願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

また、仮に、上記のような横シール装置を一定速度で移動させ、該一定速度で移動していた横シール装置をその直後に方向を反転させる機構または方法を、当業者が容易に想到し得るものであり、製袋充填装置のヒートシール装置に採用できるものとするならば、以下に述べるように、本願発明には進歩性が認められない。

4-2.拒絶理由2について
4-2-1.引用例
当審で通知した拒絶理由2に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である
特公平3-23405号公報(以下、「引用例1」という。)、
特開平9-295624号公報(以下、「引用例2」という。)及び
特開2001-225813号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の各事項が記載されている。

【引用例1について】
(1a)「長尺の熱溶着シート材料を縦に折り返しながら側面をシールし、次いで周面に突起部を有する一対の横方向のシール用回転ローラを上下動可能なブラケツトに取付け、このブラケツトが両ローラの突起部でシート材料を圧着するシール時に下方に移送されるシート材料に追随して下降し、このとき形成されるポケツトに内容物を充填し、充填後にシール用回転ローラが上昇してポケツト上端並びに次位の下端となるべき個所をシールしつつ下降することを繰り返す包装用袋の製造方法であつて、
一対のシール用回転ローラの一方は他方に従動し、他方のローラに設けたローラと同径の歯車と駆動源に連結されシート材料の移送方向と同一方向の下方に位置して設けられたチエーンスプロケツトとの間にチエーンを掛け渡すとともに、このチエーンに複数の歯車を噛み合せ、これら複数の歯車の1つには常にチエーンを緊張させる方向に付勢力が付与され、
シート材料の移送方向に平行にシール用回転ローラに設けた歯車が下降するときチエーンが緩んで歯車の回転を遅くしてシール用回転ローラの下降時も突起部が圧着力を変えずにシート材料を圧着しつづけ、
シール用回転ローラの上昇時に複数の歯車の1つに付与された付勢力によりチエーンが再び緊張してシール用回転ローラを速く回転させることを特徴とする包装用袋の製造方法。」(特許請求の範囲参照)

(1b)「〔産業上の利用分野〕
この発明は、長尺の熱溶着シート材料を縦に折り返しながら側面をシールし、次いで横方向にシールしてポケツトを成形し、このポケツトに液体あるいは粉末等の内容物を充填し、充填後にポケツト上端をシールして連続的に一定量の内容物を包装する包装用袋の製造方法に関する。」(第2欄3-9行参照)

(1c)「〔解決しようとする問題点〕
従来のシール手段では、熱溶着シート材料を一定速度以上にして移送させると、シール時間が短くなりシールが不良となるために、柔軟性シート材料の移送速度を一定の速度以下に抑えざるを得なかつた。特に、内容物が液体である場合には、ポケツトに液体を充填する際に液体がはねて次のシール個所(すなわちポケツト上端と次位の下端)に滴が混入し、滴が混入した個所を高温(200℃?250℃)で短時間でシール(熱溶着)すると、滴が膨張してシール不良個所を生じさせる。内容物が液体である場合には、比較的低温(150℃前後)でシール時間を長くとることが、シール不良を防止する上で必要であつた。ところが、シール時間を長くするためには、シート材料を送る速度を遅くしなければならず、生産効率を低下せざるを得なかつた。
・・・
そこで、この発明は、熱溶着シート材料をより高速に移送しつつしかもシールを確実なものとし、生産効率を向上させるとともに構造も複雑にならず作動の信頼性が高い包装用袋の製造方法を提供することを目的とする。」(第2欄24行-第3欄35行参照)

(1d)「〔実施例〕
以下にこの発明の好適な実施例を図面を参照しつつ説明する。
フレーム1に長尺の熱溶着シート材料2を縦に折り返すための折り返し手段3と、シート材料2が縦に折り返されたものを下方に移送しかつ側面をシールする手段を備えた移送手段4と、移送手段4により側面がシールされて下方に移送されてきたシール材料2の横方向にシールを施こすためのシール手段5とを設けてある。シール手段5の個所で底部をシールされたポケツトに内容物を供給するための供給管6から内容物を充填した後に当該ポケツトの上端をシールする。内容物を充填した包装用袋10は連続して成形されるので、一つのポケツトの上端は次位のポケツトの下端となる。長尺のシート材料2の側面のシール手段は移送手段4に設けたが、シール手段5に至る前であればどの個所に設けても良い。
前記シール手段5は、第2図に示すように、一対のシール用回転ローラ51,52を備え、これら一対のシール用回転ローラ51,52ばブラケツト7に回転可能に取付けてある。一対のシール用回転ローラ51,52はそれぞれシールするため突起部51A,51B,52A,52Bを有していて、これらの突起部51Aと52Aあるいは51Bと52Bとが接触した時にその間に圧着挟持されたシート材料2が横方向にシールされる。シール幅は15mm程度である。ブラケツト7には一対のシール用回転ローラ51,52の間隔を調節するための調節部材71が設けてある。このブラケツト7はフレーム1の背板11に上下動可能に取付けてある。この背板11の裏側にはスライドレール12が設けてあり、背板11に形成された長孔14から突出するアーム15に固定したスライダー13がスライドレール12をスライドするようになつている。・・・
シール機構5を構成する一方のシール用回転ローラ52にはローラ52と同径の歯車20が設けてあり、この歯車20にチエーン21が掛け渡してある。チエーン21は駆動源に減速機構等を介して連結されたチエーンスプロケツト22に掛け渡され、このチエーンスプロケツト22と歯車20との間に複数の歯車20A,20Bが噛み合つている。歯車20Aは揺動板23に回転可能に取付けてあり、この揺動板23の先端はばね24により常にチエーン21を引張させる方向に引つぱつてある。ブラケツト7が下降するとき、歯車20に掛け渡されたチエーン21は緩み、そのためにローラ52の回転速度は遅くなる。この遅くなつたときは、突起部51Aと52A(又は51Bと52B)とが対向しているときなので、シール時間を長くとれることとなる。緩んだチエーン21は、ばね24により引つ張られて再び歯車20に緊張した状態で掛け渡された状態となるが、このときはブラケツト7が下降し終つて上昇しつつあるときとなるようにばね24の引張力を設計するのが良い。ばね24の存在によりチエーン21が歯車20から外れてしまうことはないが、ブラケツト7の下降時に歯車20を回転させるチエーン21の力が緩んでローラ52の回転を一瞬止めるかあるいは速度を遅らせることが必要である。ローラ52(従動ローラとなるローラ51も同様)は、例えば1秒間に1回転するものとして1回転するあいだの突起部51A,51B,52A,52Bが対向するときにのみ速度を落してやるように、すなわち周波数が異なるように設計する。すなわち、突起部51Aと52A、51Bと52Bとが対向しシール可能である状態のときのローラ52の回転速度は、他の状態はのときのローラ52のそれよりも遅くすれば良い。」(第4欄19行-第6欄12行参照)

以上の記載からすると、引用例1には、
「フレームに長尺の熱溶着シート材料を縦に折り返すための折り返し手段と、シート材料が縦に折り返されたものを下方に移送しかつ側面をシールする手段を備えた移送手段と、移送手段により側面がシールされて下方に移送されてきたシート材料の横方向にシールを施こすためのシール手段と、該シール手段の個所で底部をシールされたポケツトに内容物を供給するための供給管とを備え、
上記シート材料の横方向にシールを施こすためのシール手段は、周面に突起部を有する一対の横方向のシール用回転ローラを備え、該シール用回転ローラは上下動可能なブラケツトに取付けられ、このブラケツトが両ローラの突起部でシート材料を圧着するシール時に下方に移送されるシート材料に追随して下降し、このとき形成されるポケツトに上記供給管により内容物を充填し、充填後にシール用回転ローラが上昇してポケツト上端並びに次位の下端となるべき個所をシールしつつ下降することを繰り返す包装用袋の製造方法であって、
上記シート材料の移送方向に上記シール用回転ローラが下降するとき、上記シール用回転ローラの回転速度を遅くして上記シート材料をシールし、
上記シール用回転ローラの上昇するとき、上記シール用回転ローラを速く回転させる包装用袋の製造方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

【引用例2について】
(2a)「被包装物を内包して長手方向に搬送される筒状フィルムの所定部位を一対の回転式シーラー先端面間に挟んで横方向にシール並びに切断するエンドシール装置において、
該一対の回転式シーラーを支持するフレームを、該フィルムの搬送方向に沿って往復移動する移動体に取り付け、該移動体を該フィルムのシール時に該搬送方向に向けて前進させ、該シーラー先端の周速度と該移動体の前進速度との和を該フィルムの搬送速度に実質的に一致させたことを特徴とするエンドシール装置。」(【特許請求の範囲】参照)

(2b)「【発明が解決しようとする課題】ところで、上記エンドシール装置6において、ヒートシール性を左右する要因は、シーラー6a,6b端面のフイルム5に対する接触時間、及びフィルム5の溶融温度に対するシーラー6a,6bの温度である。つまり、接触時間を短くすると十分な熱がフィルム5に伝わらず、ヒートシール不足の原因となる。また、加熱し過ぎるとフィルム5の溶着面積を減少させるだけでなく、シール溶着部の見栄えを損なわせることになるため、適度な接触時間とともに、そのフィルム5の溶融温度に応じた適正な加熱温度に保たなくてはならない。
これ故、被包装物3の搬送速度は上記要因による制約を受けて定められており、従って、生産性や稼働効率向上を目的として被包装物3のライン搬送速度をあげることが困難であった。すなわち、搬送速度をあげると必然的にシーラー6a,6bの回転速度も同期させて速くしなければならないので、接触時間が短くなって充分な加熱が行えなくなり、ヒートシール不足を招いてしまうという欠点があった。
この発明は以上の問題を解決するものであって、その目的は、ライン搬送速度をあげても良好なヒートシール性を確保でき、もって生産稼働率の向上が図れるエンドシール装置を提供することにある。」(段落【0004】-【0006】参照)

(2c)「【発明の実施の形態】以下、この発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係るエンドシール装置を横型ピロー包装装置に適用した場合の概略構成を示す断面図であり、図2は図1中のA-A線部の矢視断面図である。
図示するように、エンドシール装置10はピロー包装装置の最終段に設けられ、搬送用コンベア1と排出用コンベア8との間に形成された隙間部分に配置されている。このエンドシール装置10は、上記コンベア1,8間を往復移動する移動体としてのスライドテーブル18と、このスライドテーブル18を往復駆動させる梃子クランク機構20、スライドテーブル18上に設けられた回転式シーラー機構26、及び上記コンベア1、8間で被包装物の搬送経路を確保するための渡りコンベア30とを備えている。」(段落【0008】-【0009】参照)

(2d)「図3はその動作状態を示すものであり、まず(a)においては、各シーラー36a,36bの送り方向の進み側の面が排出側フイルム5aの終端面を圧接し、ヒータ34の熱により終端を熱溶着する。次いで(b)に示すように、上下のシーラー36a,36bが鉛直状態になった時点で切刃38が受け刃40に圧接し、排出側フイルム5aの終端と供給側フィルム5bの始端部とを切り離す。
さらに、回転の進みにより(c)に示すようにシーラー36a,36bの送り方向遅れ側の面が供給側フィルム5bの始端部を圧接し、ヒータ34の熱により始端部を熱融着し、以後フイルム面から離れて一回転し、再び同一の動作を繰り返す。この間にスライドテーブル18は待機位置に後退し、再度前進動作をするが、この前進動作時に前記熱融着-切断-熱融着動作が行われることになる。
即ち、以上のヒートシール動作中には回転式シーラー機構26は、スライドテーブル18によりフィルム5及びこれに収納された被包装物品3の搬送方向に沿って全体的に前進移動するとともに、上下のシーラー36a,36bは軸部32a,32bを中心に回転移動している。ここで、シーラー36a,36b先端面のシール時における搬送方向の前方への移動速度は、そのシーラー36a,36b先端面の回転による周速度とスライドテーブル18の前進速度との和になり、これらの速度の和がフィルム5の搬送速度にほぼ一致されている。この際、スライドテーブル18の前進速度とシーラー36a,36b先端面の周速度とはほぼ同等にするのが好ましいが、基本的にはそれらの速度の和がフィルム5の搬送速度に実質的に等しければ良いので、そのシーラー36a,36b先端面の周速度並びにスライドテーブル18の前進速度はどちらか一方を早くし、その分他方を遅くしても良い。このようにすることにより、スライドテーブル18の前進速度の分だけシーラー36a,36b先端面の周速度つまり回転速度を遅くすることができ、もって熱融着するのに適正な回転速度で、接触時間を十分に確保しながら融着及び切断作業を行い得る。」(段落【0015】-【0017】参照)

(2e)「なお、以上の実施例では、横型ピロー包装装置に本発明のエンドシール装置を適用する場合を例示しているが、本発明のエンドシール装置はこの横型ピロー装置に限らず、縦型ピロー包装装置にも適用し得ることは勿論である。」(段落【0019】参照)

(2f)「【発明の効果】以上、実施例で詳細に説明したように、本発明にかかるエンドシール装置にあっては、一対の回転式シーラーを支持するフレームを、フィルムの搬送方向に沿って往復移動する移動体に取り付け、この移動体を回転式シーラーがフィルムをシールしているときにフィルムの搬送方向に向けて前進させることにより、この前進速度の分だけ回転式シーラーの回転速度を抑えることができ、もって一対のシーラー先端面間にフィルムを挟んでシールする時間を充分に確保しながら、ライン搬送速度の高速化に対応することができ、生産性や稼働効率の向上が図れるようになる。」(段落【0020】参照)

【引用例3について】
(3a)「【発明の実施の形態】図1を参照すると、連続式の縦形ピロータイプ包装機が示されており、本発明のヒートシール装置は例えば、この種の製袋充填機において包材の縦シールユニットとして実施することができる。図1に示される包装機は垂直な充填チューブ2を備えており、その上端には中継ホッパ4が一体にして形成されている。なお、中継ホッパ4の上方には図示しない製品供給機が接続されており、その上部に計量器が配置されている。包装するべき製品は計量器にて一袋分が計量された後、製品供給機から中継ホッパ4を介して充填チューブ2内に投入される。
充填チューブ2の上端部はフォーマ6により囲まれており、このフォーマ6は図示しないロールから導かれる包装フィルムFをその外面に沿って案内し、充填チューブ2の周りを囲むような円筒状に成形する。ここで、包装フィルムFには熱溶着可能な素材(シーラント)が用いられている。充填チューブ2の外周に円筒状に成形された包装フィルムFは充填チューブ2に沿って更に下方に繰り出され、この繰り出しに伴い、包装フィルムFの両側縁部は図示しないガイドの助けを借りて所望の形態で重ね合わされ、そこに縦シールされるべき継ぎ目部分Sを形成する。
充填チューブ2の両側には無端状のサクションベルト8がそれぞれ配置されている。これらサクションベルト8は充填チューブ2に近接した位置で包装フィルムFを吸着し、充填チューブ2との間に一定の隙間を存して位置決めされている。この状態にて、一対のサクションベルト8が一方向に走行されると、これらサクションベルト8は充填チューブ2に沿って包装フィルムFを一定の速度で下方に繰り出す。
上述した包装フィルムFの継ぎ目部分Sはその繰り出しに伴い、重ね合わせの状態を維持したまま充填チューブ2の近傍を縦方向、つまり、その長手方向に案内される。充填チューブ2の近傍には、継ぎ目部分Sを案内する案内経路に沿って縦シールユニット10が配置されており、この縦シールユニット10は案内経路を挟んでその両側に配置された一対のシールベルト12を有している。シールベルト12は包材Fの継ぎ目部分Sを所定のシール幅にて面シールし、包材Fの縦シールを行う。
充填チューブ2の下方には、横シールユニット13が配置されている。この横シールユニット13は縦シールされた包材Fの繰り出しに連動してボックスモーション式に動作し、その包材Fの筒を一袋分の間隔毎に横シールする。この後、横シールユニット13はその横シール域の中央から包材Fの筒を切断し、個々の包装袋を製造する。」(段落【0011】-【0015】参照)

4-2-2.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「熱溶着シート材料」、「長尺の熱溶着シート材料を縦に折り返すための折り返し手段」、「側面をシールする手段」及び「シート材料の横方向にシールを施こすためのシール手段」は、それぞれ本願発明の「フィルム」、「フィルムを幅方向に二つ折りする装置」、「第1のヒートシール装置」及び「第2のヒートシール装置」に相当し、
また、引用発明の「包装用袋の製造方法」は、シール及び充填するための手段を用いてシート材料から包装用袋を製造しながら内容物を充填していくものであるから、本願発明の「製袋充填装置を使用する製袋充填方法」であるといえ、
引用発明の「シール用回転ローラ」は、本願発明の「回転体」及び「ヒートシールロール」に相当し、引用発明の該シール用回転ローラの「突起部」は、本願発明の「ヒートシール部材」に相当し、引用発明の該突起部を支持するシール用回転ローラの部分は、本願発明の「支持体」に相当し、引用発明の一対の「シール用回転ローラ」は、その回転軸が互いに平行となるように配置されていることは明らかであり、
引用発明は、底部をシールされたポケツトに内容物を供給するための供給管を備えるものであるから、本願発明の「ノズルから内容物を吐出して有底の筒状フィルムに充填する充填装置」を備え、
そして、引用発明のシール用回転ローラの突起部の周方向の速度は、シート材の送り速度よりも遅いことは明らかであるので、両者は、
「フィルムを幅方向に二つ折りする装置と、幅方向に二つ折りされた前記フィルムの幅方向の遊端部をヒートシールして筒状フィルムとする第1のヒートシール装置と、前記筒状フィルムを幅方向にわたってヒートシールして、有底の筒状フィルムとする第2のヒートシール装置と、ノズルから内容物を吐出して前記有底の筒状フィルムに充填する充填装置とを備えた製袋充填装置を使用する製袋充填方法であって、
前記第2のヒートシール装置は、回転軸を中心として回転可能な支持体と、該支持体上に形成された少なくとも1つのヒートシール部材とを備えた2つの回転体が、前記回転軸が互いに平行となるように配された一対のヒートシールロールを具備し、
フィルムを挟持している間、前記ヒートシール部材の外周面における周方向の速度が前記フィルムの送り速度よりも遅くなる回転速度で前記回転体を回転させつつ、前記フィルムの送り方向に沿って、前記一対のヒートシールロールを移動させ、
前記一対のヒートシールロールが、前記フィルムの送り方向に沿って下降して前記ヒートシール部材の外周面がフィルムから離れた後に移動の向きを上方に反転させ、前記フィルムの送り方向と反対の方向に下降した分だけ上昇した際に、再び移動の向きを下方へ反転させる製袋充填方法。」
である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1;本願発明では、筒状フィルムが一定速度で送られ、フィルムを挟持している間、ヒートシール部材の外周面における周方向の速度が一定となる一定の回転速度で回転体を回転させつつ、前記フィルムの送り方向に沿って、前記フィルムの送り速度より遅い一定の速度で前記一対のヒートシールロールを移動させ、前記一対のヒートシールロールが、前記フィルムの送り方向に沿って下降して前記ヒートシール部材の外周面がフィルムから離れた直後の時点で移動の向きを上方に反転させているのに対し、引用発明では、シート材料を移送する速度が一定か否か明確でなく、シート材料を圧着している間、一対のシール用回転ローラを下降させる速度が、シート材料を移送させる速度より遅い一定の速度であるか否か明確でなく、また、どのようなタイミングで一対のシール用回転ローラの移動の向きを上方に反転させか明確でない点。

相違点2;本願発明では、フィルムの送り方向と反対の方向に下降した分だけ上昇した際に、再び移動の向きを下方へ反転させると共に、次の箇所をヒートシールするヒートシール部材が前記フィルムに当接するタイミングとなるように、一対のヒートシールロールの移動速度および各回転体の回転速度を調整しているのに対し、引用発明では、一対のシール用回転ローラを上昇させた際に、その突起部とシート材料との関係が明確でない点。

4-2-3.判断
上記各相違点について検討すると、
・相違点1について
引用発明において、シート材料の移送方向にシール用回転ローラが下降するとき、シール用回転ローラの回転速度を遅くしてシート材料をシールするのは、シール時間を長くすることにより熱溶着シート材料をより高速に移送しつつしかもシールを確実なものとし、生産効率を向上させるためである(上記記載事項(1c)参照)。
一方、引用例2には、被包装物を内包して長手方向に搬送される筒状フィルムの所定部位を一対の回転式シーラー先端面間に挟んで横方向にシール並びに切断するエンドシール装置において、該一対の回転式シーラーを支持するフレームを、該フィルムの搬送方向に沿って往復移動する移動体に取り付け、該移動体を該フィルムのシール時に該搬送方向に向けて前進させ、該シーラー先端の周速度と該移動体の前進速度との和を該フィルムの搬送速度に実質的に一致させたこと、また、移動体(スライドテーブル)の前進速度とシーラー先端面の周速度とをほぼ同等にする技術が記載されている(上記記載事項(2a)、(2c)及び(2d)参照)。それにより、一対のシーラー先端面間にフィルムを挟んでシールする時間を十分に確保しながら、ライン搬送速度の高速化に対応することができ、生産効率の向上が図れるようになるという効果を奏するものである(上記記載事項(2b)及び(2f)参照)。
よって、引用発明において、シール時間を長くするための方法として、引用例2に記載された技術を適用し、シール用回転ローラの移送速度及びその突起部の先端の周速度を同じとし、かつ、それらの和をシート材料の移送速度に実質的に一致させるようになすことは、当業者にとって格別な困難性は認められない。
また、引用例3には、製袋充填機のヒートシール装置において、フィルムを一定の速度で下方に繰り出すことが記載されている。また、ヒートシール装置の制御機構または制御装置の簡素化のためには、シールされるフィルムを一定の速度で移送させることが設計上好ましいことは、当業者が容易に想到しうることであるから、引用発明において、シート材料を一定の速度で移送するようになすことは、当業者が容易に想到し得る事項と認められる。
さらに、引用発明において、シール用回転ローラの突起部の外周面がシート材料から離れた直後の時点で移動の向きを上方に反転させることは、当業者が設計上適宜になす程度のことと認められる。
よって、引用発明において、引用例3に記載された事項を参酌し、シート材料を一定の速度で移送するようになし、また、引用例2に記載された技術を適用し、シール用回転ローラの移送速度及びその突起部の先端の周速度を同じとし、かつ、それらの和をシート材料の移送速度に実質的に一致させるようになすこと、すなわち、シール用回転ローラの移送速度及びその突起部の先端の周速度をそれぞれシート材料の一定の移送速度の1/2の一定の速度とし、さらに、シール用回転ローラの突起部の外周面がシート材料から離れた直後の時点で移動の向きを上方に反転させることにより、上記相違点1の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。

・相違点2について
一対のシール用回転ローラを上下動させる横シール装置を用いた包装用袋の製造方法において、包装用袋の連続的な製造をスムーズに行うために、一対のシール用回転ローラの上下動とシート材料のシールとのタイミングを合わせる必要があることは、当業者なら容易に想到しうる事項であるので、
引用発明において、シール用回転ローラの移送速度及びその回転速度を調整し、上記相違点2の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。

したがって、本願発明は、引用発明並びに引用例2及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、この出願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないことから、または、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶をすべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-14 
結審通知日 2011-02-15 
審決日 2011-02-28 
出願番号 特願2002-43799(P2002-43799)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65B)
P 1 8・ 536- WZ (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 宏之  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 熊倉 強
佐野 健治
発明の名称 製袋充填方法  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  

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