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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す。原査定の理由により拒絶すべきものである。 G21C
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 補正却下を取り消す。原査定の理由により拒絶すべきものである。 G21C
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 補正却下を取り消す。原査定の理由により拒絶すべきものである。 G21C
管理番号 1235456
審判番号 不服2009-12278  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-06 
確定日 2011-04-14 
事件の表示 特願2002-31929「燃料支持金具」拒絶査定不服審判事件〔平成15年8月22日出願公開、特開2003-232879〕について、平成21年3月27日付け補正の却下の決定を取り消し、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年2月8日に出願された特願2002-31929号であって、平成19年7月10日付け拒絶理由通知に応答してなされた同年9月14日付けの手続補正書によって補正された明細書に対して同年12月25日付けで再度拒絶理由が通知され(いわゆる最後の拒絶理由通知)、この拒絶理由に対して平成20年3月7日付けで手続補正がなされたものの、平成21年3月27日付けで前記平成20年3月7日付けの手続補正について補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされた。
本件は、前記補正の却下の決定ならびに前記拒絶査定を不服として平成21年7月6日に請求された拒絶査定不服審判事件である。

第2 平成21年3月27日付けの補正の却下の決定について
請求人は、本件審判請求書において、平成20年3月7日付けの手続補正についてなされた平成21年3月27日付けの補正の却下の決定は誤っていて取り消されるべきものである旨主張をしているので、最初に、前記補正の却下の決定について検討する。
1 平成20年3月7日付け手続補正の目的
平成19年12月25日付けの拒絶理由通知は、いわゆる最後の拒絶理由通知であるので、最初に、平成20年3月7日付け手続補正の目的について検討する。
平成20年3月7日付け手続補正は明細書を補正するものであって、その特許請求の範囲に係る補正は、補正前(平成19年9月14日付け手続補正によって補正。以下同じ。)の、
「【請求項1】 中央部に形成された制御棒が挿入される横断面十字状の貫通孔と、上部に形成された4体の燃料集合体を支持する燃料集合体支持穴と、側面下部に形成された冷却材を流入する冷却材流入孔と、前記冷却材流入孔の前面に設けられた入口オリフィスと、内部に形成された前記冷却材流入孔から流入した冷却材を前記燃料集合体の下部タイプレート内に導く冷却材流路室と、を備える燃料支持金具において、前記冷却材流入口孔に板状フィルタを設けたことを特徴とする燃料支持金具。
【請求項2】 前記板状フィルタは目皿板状フィルタであることを特徴とする請求項1記載の燃料支持金具。
【請求項3】 前記冷却材流入口孔に第1の目皿板状フィルタと第2の目皿板状フィルタを並列に設けるとともに、前記第1及び第2の目皿板状フィルタの孔は相互に重なり合わないように配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の燃料支持金具。」を、
「【請求項1】 中央部に形成された制御棒が挿入される横断面十字状の貫通孔と、上部に形成された4体の燃料集合体を支持する燃料集合体支持穴と、側面下部に形成された冷却材を流入する冷却材流入孔と、内部に形成された前記冷却材流入孔から流入した冷却材を前記燃料集合体の下部タイプレート内に導く冷却材流路室と、を備える燃料支持金具において、前記冷却材流入口孔に第1の目皿板状フィルタと第2の目皿板状フィルタを並列に設けるとともに、前記第1及び第2の目皿板状フィルタの孔は相互に重なり合わないように配置されていることを特徴とする燃料支持金具。」と補正するものである。
したがって、平成20年3月7日付け手続補正は、補正前の請求項1,2を削除し、補正前の請求項3に係る発明の発明特定事項である「前記冷却材流入孔の前面に設けられた入口オリフィスと」という事項を削除するものである。
ここで、平成19年12月25日付けの拒絶理由通知は、前記「前記冷却材流入孔の前面に設けられた入口オリフィスと」という事項について、新規事項である旨指摘しており、当該事項の削除は、発明特定事項の削除ではあるものの、拒絶の理由に示す事項についてするものであって、明りようでない記載の釈明を目的とする補正であると認められる。
そうすると、平成20年3月7日付け手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下、単に「特許法第17条の2」という。)第4項第1号に掲げる、請求項の削除ならびに同第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とする、適法な補正であるといえる。

2 平成21年3月27日付けの補正の却下の決定の適否についてのむすび
平成20年3月7日付け手続補正の目的は上記1で検討したとおりであるのに対し、平成21年3月27日付けの補正の却下の決定は、その補正の目的を特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮とした上で、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを判断し、その要件を充足しないものとして補正の却下の決定を行ったものであるから、当該補正の却下の決定は、補正の目的を誤認した点で前提を誤っており、その決定が不適法であることは明らかである。
よって、請求人の主張内容にかかわらず、平成21年3月27日付けの補正の却下の決定は取り消されるべきものであるから、これを取り消す。

第3 当審における審理対象
原審における拒絶査定の理由は、平成19年12月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶すべきものです、というものであって、上述のとおり、平成21年3月27日付けの補正の却下の決定は取り消されたから、当審で審理すべきは、平成20年3月7日付け手続補正によって補正された明細書に基づいて、本願が平成19年12月25日付けの拒絶理由通知で通知した理由によって拒絶すべきものであるか否かである。
1 平成19年12月25日付け拒絶理由通知
平成19年12月25日付けの拒絶理由通知で通知した理由は、次の2つである。
理由1:平成19年9月14日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
理由2:本願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1,2に対して下記引用文献1
・請求項3に対して下記引用文献1,2
引用文献1:特開昭64-38691号公報
引用文献2:特開平8-240680号公報

2 理由1について
最初に、上記理由1について検討すると、平成20年3月7日付け手続補正によって、理由1で指摘のあった新規事項については、その内容を含む個所が削除されており、当該理由1は、平成20年3月7日付け手続補正によって補正された明細書については該当しない。
したがって、本願は理由1によって拒絶することはできない。

3 理由2について
次に理由2について検討すると、既に「第2」の「1」で述べたとおり、補正前の請求項1,2は削除されているから、理由2の対象となり得るのは、補正前の請求項3について明りようでない記載の釈明を目的として、平成20年3月7日付け手続補正によって補正された請求項1に係る発明についてである。
そこで、平成20年3月7日付け手続補正によって補正された請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)について、平成19年12月25日付けの拒絶理由通知で通知した理由2が該当するか否かを、以下に検討する。

第4 本願発明の進歩性についての検討
1 本願発明
本願発明は以下のとおりのものである。
「【請求項1】 中央部に形成された制御棒が挿入される横断面十字状の貫通孔と、上部に形成された4体の燃料集合体を支持する燃料集合体支持穴と、側面下部に形成された冷却材を流入する冷却材流入孔と、内部に形成された前記冷却材流入孔から流入した冷却材を前記燃料集合体の下部タイプレート内に導く冷却材流路室と、を備える燃料支持金具において、前記冷却材流入口孔に第1の目皿板状フィルタと第2の目皿板状フィルタを並列に設けるとともに、前記第1及び第2の目皿板状フィルタの孔は相互に重なり合わないように配置されていることを特徴とする燃料支持金具。」

2 引用文献
平成19年12月25日付けの拒絶理由通知において引用された刊行物ならびに当該刊行物に記載された事項は以下のとおりである。
(1)引用文献1
引用文献1は、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭64-38691号公報であって、図面とともに以下の技術的事項の記載がある。
(1a)第1頁左下欄第4?18行
「2.特許請求の範囲
1.沸騰水型原子炉の炉心支持板の中心側に配設され、複数の燃料集合体の下端部を支持する中心部燃料支持金具であって、その下側から燃料集合体支持用の上部にわたって冷却材流路が形成されたものにおいて、前記冷却材流部中に異物捕獲部材を取り付つけたことを特徴とする中心部燃料支持金具。
2.異物捕獲部材は網または格子状に構成されることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の中心部燃料支持金具。
3.冷却材流路はオリフィスを有し、そのオリフィスの取り付け位置に異物捕獲部材を取り付けたことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の中心部燃料支持金具。」
(1b)第1頁右下欄第1?4行
「 この発明は、沸騰水型原子炉に適用される中心部燃料支持金具に係り、特に燃料集合体を異物による破損から防止するようにした中心部燃料支持金具に関する。」
(1c)第2頁左上欄第7?14行
「 燃料支持金具には中心部燃料支持金具と周辺部燃料支持金具の2種類がある。中心部燃料支持金具12は第5図に示すように、中心部に制御棒を通す十字の溝13があり、その回りは、4つの燃料集合体を保持するために4つの室に別れ、それぞれの室の頂部には燃料集合体と嵌合する燃料支持穴14がある。各室の下部の側面には冷却材の入口穴15がある。」
(1d)第3頁左上欄第12行?同左下欄第7行
「 中心部燃料支持金具27の構成を第1図および第2図に示す。中心部燃料支持金具27の冷却材人口穴28部には燃料集合体29への冷却材量が適正になるように流れを絞るオリフィス30が取りつけてある。オリフィス30には内径の異なる種類がいくつかあり、これを変えると燃料集合体29への冷却材流量を変えられるようになっている。オリフィス30の前面にあたる制御棒案内管の側穴31はオリフィス30に比べると穴径が大きく、オリフィス30が効果的に働くようになっている。またオリフィス30後の冷却材流路32の穴径についても同様に大きくなっている。
中心部燃料支持金具27のオリフィス30には、異物捕獲部材としての金網33が設置される。このような金網33が配設されたことにより、冷却材中の金属片や剥離片等の異物が冷却材とともに流入しても金網33に引掛かり捕獲されることになる。その結果、原子炉運転中に燃料棒の存在するチャンネルボックス内へ異物が流入することがなく、燃料棒のフレッティング現象による破損が防止される。そのため、燃料棒の健全性を維持することができるとともに、原子炉の安全性を向上させることができる。
なお、実施例では、オリフィス30とともに金網33を設けたが、オリフィス30を有しない構成としてもよい。この場合、冷却材の流れに対する金網33前後の圧力差がオリフィス30を設けた場合と同じになるようにすることで、燃料集合体29へ流入する冷却材が異物捕獲部材を取り付ける前と同様にすることも可能である。このようにすることで既存の中心部燃料支持金具を設計変更する必要もなく、コストの上昇も招かずに異物対策ができる。
また、実施例では、異物捕獲部材を金網としたが、格子状など、適宜のフィルタ機能の構成とすることができる。」
(1e)第1図、第2図、第5図
第1図、第2図には上記(1d)の記載に即して、中心部燃料支持金具の実施例の斜視図、断面図が図示され、第5図には、上記(1c)の記載に即して、従来の中心部燃料支持金具の斜視図が記載されている。

以上の記載ならびに図面の図示内容からして、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると言える。
「中心部に形成された制御棒を通す十字の溝と、
その回りに、4つの燃料集合体を保持するために分かれた4つの室の頂部に設けられた燃料集合体と嵌合する燃料支持穴と、
各室の下部の側面に設けられた冷却材入口穴と、
前記燃料支持穴の下方に形成された、前記燃料支持穴と前記冷却材入口穴に連通する冷却材流路を具備する中心部燃料支持金具において、
前記冷却材入口穴部に、燃料集合体への冷却材量が適正になるように流れを絞るオリフィスと異物捕獲部材としての金網、または、冷却材の流れに対する金網前後の圧力差が前記オリフィスを設けた場合と同じになるようにした異物捕獲部材としての金網を設けた中心部燃料支持金具。」

(2)引用文献2
引用文献2は、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-240680号公報であって、図面とともに以下の技術的事項の記載がある。
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 上側格子部及び下側本体部であって、前記上側格子部は、複数の燃料棒支持ボスを有しており、該ボスは、複数のウェブにより相互連結されて該ボスの間に流れ開口を形成しており、前記本体部は、入口ノズルと、内側に流室を画成するように底部の前記ノズルと前記上側格子部との間に延在している周壁とを含んでいる、上側格子部及び下側本体部と、
前記流室内に配置されている破片捕取装置であって、該破片捕取装置は、一対の重ね合わせた板を含んでおり、該板の各々は、実質的に同じ寸法、形状及びピッチの複数の孔を有しており、前記一対の板のうちの一方の板の前記孔は、該一対の板のうちの他方の板の前記孔からずれている、破片捕取装置とを備えた原子炉用の下部タイプレート・アセンブリ。…(中略)…
【請求項9】 それぞれの前記板の前記孔は、該孔のピッチの半分だけずれている請求項1に記載の下部タイプレート・アセンブリ。…(以下略)」
(2b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一般的には原子炉に関し、特に、沸騰水型原子炉の燃料バンドル用の下部タイプレート・アセンブリに関する。更に詳細には、本発明は、下部タイプレート・アセンブリに組み込まれた破片捕取装置に関する。この破片捕取装置は、垂直方向に相隔たった一対の比較的厚い板で構成されており、各々の板には、同様な寸法及びピッチの比較的大きな孔が形成されているが、上板の孔の配列は下板の孔の配列からずれている。この破片捕取装置は、下部タイプレート・アセンブリを通流してその下流の燃料バンドル域に流入する冷却材の圧力損失を最小にするように構成されている。」
(2c)「【0013】破片は様々な形状及び寸法で存在し得る。例えば、0.025インチほどの小さな直径の棒、小さなボルト、機械加工から生ずる螺旋巻きのもの、及び金属スラブ等が存在し得る。本発明による破片捕取装置(キャッチャ)の主目的は、このような破片ができるだけ燃料バンドルに入らないようにすることにある。この目的から先ず考えられるのは、細かい金網スクリーンの使用であろう。しかしながら、破片捕取装置は、それが破損して更なる破片を発生する危険のないように頑丈でなければならない。
【0014】破片捕取装置の設計に関する他の拘束として、冷却材からの蓄積物の層が増大して流路を閉塞してしまうことを防止する必要がある。この拘束は多孔板の孔の寸法の下限を設定する。更に他の拘束は、破片捕取装置を有していない新しい燃料バンドルをも内蔵している炉心内に、破片捕取装置を有している新しい燃料バンドルを挿入したときの圧力降下特性が同様となるように、破片捕取装置における圧力降下を制限しなければならないことである。」
(2d)「【0017】本発明によれば、破片捕取装置が下部タイプレート・アセンブリの流室内において下部タイプレート格子の上流に設けられている。好適な構成の破片捕取装置は、一対の比較的厚い板で形成されており、各々の板には、比較的大きな孔が形成されている。2つの板の孔の寸法及びピッチは同じであるが、上板の孔の配列は、2つの直交した方向の各々における孔の間隔の半分に等しい距離だけずれている。
…(中略)…
【0020】2つの破片捕取板を上述のように結合したときに、両板の間に垂直方向の間隙が存在していることに注意されたい。この間隙の大きさは、圧力降下低減の達成と、阻止される破片の寸法の制限との間の妥協によるものである。もし間隙がゼロであれば、圧力降下は非常に大きいが、間隙が増加するにつれて、垂直方向に対してある角度で通過し得る棒状破片の直径も増加する。間隙が非常に大きく、破片棒長を超えた場合には、2つの板は事実上、互いに無関係になり、そして棒は各々の板をあたかも他の板が存在しないかのように通り抜けることができる。」

3 対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「中心部に形成された制御棒を通す十字の溝と、
その回りに、4つの燃料集合体を保持するために分かれた4つの室の頂部に設けられた燃料集合体と嵌合する燃料支持穴と、
各室の下部の側面に設けられた冷却材入口穴と、
前記燃料支持穴の下方に形成された、前記燃料支持穴と前記冷却材入口穴に連通する冷却材流路を具備する中心部燃料支持金具」が、本願発明の「中央部に形成された制御棒が挿入される横断面十字状の貫通孔と、上部に形成された4体の燃料集合体を支持する燃料集合体支持穴と、側面下部に形成された冷却材を流入する冷却材流入孔と、内部に形成された前記冷却材流入孔から流入した冷却材を前記燃料集合体の下部タイプレート内に導く冷却材流路室と、を備える燃料支持金具」に相当することは、当業者に明らかである。
そして、本願発明の「第1及び第2の目皿板状フィルタ」は、冷却材中の異物を捕獲するための部材であることは明らかであるから、引用発明の「冷却材の流れに対する金網前後の圧力差が前記オリフィスを設けた場合と同じになるようにした異物捕獲部材としての金網」と、本願発明の「第1及び第2の目皿板状フィルタ」は、「フィルタ」である点で一致する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「中央部に形成された制御棒が挿入される横断面十字状の貫通孔と、上部に形成された4体の燃料集合体を支持する燃料集合体支持穴と、側面下部に形成された冷却材を流入する冷却材流入孔と、内部に形成された前記冷却材流入孔から流入した冷却材を前記燃料集合体の下部タイプレート内に導く冷却材流路室と、を備える燃料支持金具において、前記冷却材流入口孔にフィルタ設けている燃料支持金具。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉
フィルタが、本願発明は「第1の目皿板状フィルタと第2の目皿板状フィルタを並列に設けるとともに、前記第1及び第2の目皿板状フィルタの孔は相互に重なり合わないように配置されている」ものであるのに対し、引用発明は「冷却材の流れに対する金網前後の圧力差が前記オリフィスを設けた場合と同じになるようにした異物捕獲部材としての金網」である点。

4 相違点の検討
上記相違点について検討する。
引用発明の「金網」について、引用文献1には「格子状など、適宜のフィルタ機能の構成とすることができる」と記載されている(上記(1d)参照)ことに加え、原子炉内を流れる冷却材中の異物を捕獲するフィルタは、破損して更なる破片を発生する危険のないように頑丈でなければならず、冷却材の圧力降下を制限する必要があることは、引用文献2にも記載されている(上記(2c)参照)ように当業者に自明の事項である。そして、それらの異物を捕獲するフィルタに求められる要件を満たすため、金属板に貫通孔を整列配列して設けた2枚の板状体を、前記貫通孔が、その配列ピッチの半分だけずれるように、互いに間隙を設けて並列に設けることは、引用文献2に記載されているように本願出願前周知の事項にすぎず、引用文献2に記載されている前記態様、すなわち貫通孔の配列ピッチを半分だけずらして金属板を併設する態様が、貫通孔同士の重なりが最小となる態様であることは幾何学的に明らかである。
ところで、金属板に貫通孔を整列配列して設けた(異物捕獲用)フィルタにおいて、冷却材の圧力損失の大きさや捕獲可能な異物の大きさは、貫通孔の大きさや配設ピッチに依存することは明らかであるから、貫通孔の大きさや配設ピッチは、圧力損失の抑制と捕獲可能な異物の大きさの妥協点を探って決定される事項であることは明らかであると言える。
そして、フィルタの設置パラメータが妥協点を探って決定されることは、引用文献2に「この間隙の大きさは、圧力降下低減の達成と、阻止される破片の寸法の制限との間の妥協によるものである。もし間隙がゼロであれば、圧力降下は非常に大きいが、間隙が増加するにつれて、垂直方向に対してある角度で通過し得る棒状破片の直径も増加する。間隙が非常に大きく、破片棒長を超えた場合には、2つの板は事実上、互いに無関係になり、そして棒は各々の板をあたかも他の板が存在しないかのように通り抜けることができる。」と記載されている(前記(2d)参照)ことからも首肯できる事項である。なお、当該記載は孔の径(大きさ)について述べたものではないが、孔の径が小さければ通過し得る棒状破片の直径は小さくなるものの圧力降下が大きくなることは明らかであるし、2つの板の孔が互いに見通せない場合の方が、破片を阻止する能力が高いことも明らかである。
そうすると、引用発明に前記周知の事項を適用するに際し、求められる流量や許容される圧力損失と捕獲可能な異物の大きさを勘案した上で貫通孔の孔径を定め、「第1及び第2の目皿板状フィルタの孔」を「相互に重なり合わないように配置」可能であれば、そのように配置することは、まさに設計的事項と言わざるを得ない事項である。また、そのように配置することにより、引用発明ならびに引用文献2に記載されているごとき周知の事項からは想定できない格別の作用効果が得られるとも認められない。
したがって、引用発明に上記相違点の事項を付加することは、引用文献2に記載されている周知の事項に基いて当業者が何らの困難なくなし得る事項にすぎない。

5 小括
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明および引用文献2に記載されている周知の事項に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。

第5 まとめ
上記のとおり、平成21年3月27日付けでなされた平成20年3月7日付けの手続補正に関する補正の却下の決定は取り消されたものの、前記手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成19年12月25日付けの拒絶理由通知で通知した理由2により特許を受けることができない発明であるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-03 
結審通知日 2011-02-08 
審決日 2011-02-21 
出願番号 特願2002-31929(P2002-31929)
審決分類 P 1 8・ 121- ZA (G21C)
P 1 8・ 574- ZA (G21C)
P 1 8・ 571- ZA (G21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今浦 陽恵  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 今関 雅子
樋口 信宏
発明の名称 燃料支持金具  
代理人 鹿股 俊雄  

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