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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 特123条1項5号 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1235776
審判番号 不服2009-17145  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-14 
確定日 2011-04-20 
事件の表示 特願2003-513862「中央ノブ付き通気用ディスク」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月30日国際公開、WO03/08289、平成16年11月25日国内公表、特表2004-535341〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2002年5月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年7月16日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成21年4月27日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされたものである。

第2.原査定
原査定における拒絶の理由は3つあり,そのうちの2つは,以下のとおりのものと認める。
〔理由1〕
「この出願の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.米国特許第5499729号明細書
2.米国特許第3326242号明細書
3.国際公開第99/11218号 」
〔理由3〕
「この出願は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項が,下記の点で国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないから,特許法第49条第5号に該当する(同法第184条の18参照)。
請求項31に記載された『前記エンドキャップは,前記通気用ディスクがこのエンドキャップと前記容器とに組み合わされたとき,前記リムの前記下面の平面部分と当接する平面部分を有する』との事項,請求項45に記載された『このエンドキャップの平面部分は,この中心部を取り囲み』との事項,及び請求項46に記載された『前記エンドキャップは,リッジを前記中心部の周囲に有し,このエンドキャップの前記平面部分は,このリッジを取り囲み,このリッジは,このエンドキャップが前記容器と組み合わされたとき,前記通気用ディスクと当接する』との事項は,国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面に記載されておらず,また,国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面に記載した事項から自明であるとも認められない。」

第3.平成21年9月14日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成21年9月14日付けの手続補正(以下,「本件第二補正」という)を却下する。
〔理由〕
1.本件第二補正の概要
本件第二補正は,平成20年3月18日付けの手続補正(以下,「本件第一補正」という)により補正された特許請求の範囲及び明細書をさらに補正するもので,以下の補正事項を含む。

(1)補正事項A
補正前の請求項1に「飲料を収容するための収容部と,飲料を供給するための上端と,下側のエンドキャップにより閉成される下端とを有する飲料用の容器の下側のエンドキャップ中に配置される通気用ディスクであって,下面と,上面と,この上面から上方に延びた少なくとも1つの突出部と,中に形成された少なくとも1つの再封止可能な開口とを有する弾性の内側部分を具備し,前記エンドキャップ中に取外し可能に配置されたとき,前記少なくとも1つの再封止可能な開口によって通気され,前記収容部中が真空になったとき,前記少なくとも1つの再封止可能な開口を通して収容部中に入る空気の流れを可能にし,前記少なくとも1つの再封止可能な開口を通して収容部から出る飲料の流れを防止する通気用ディスク。」とあるのを,補正後の請求項1にあるとおり,「飲料を収容するための収容部と,下側のエンドキャップにより閉成される下端とを有する飲料用の容器の下側のエンドキャップ中に配置される通気用ディスクであって,下面と,上面と,この上面から上方に延びた少なくとも1つの突出部と,中に形成された再封止可能な複数のスリットとを有する弾性の内側部分を具備し,前記内側部分の下面には,複数の窪みが形成され,これら窪みの各々は,前記複数のスリットの各々とアラインメントされており,前記エンドキャップ中に取外し可能に配置されたとき,前記スリットと窪みとによって通気され,前記収容部中が真空になったとき,前記前記スリットと窪みを通して収容部中に入る空気の流れを可能にし,前記スリットと窪みとを通して収容部から出る飲料の流れを防止する通気用ディスク。」とする補正。

(2)補正事項B
補正前の請求項25に「飲料を収容するための収容部と,飲料を供給するための上端と,下端とを有する飲料用の容器と,この容器の下端に取り外し可能に取着されるエンドキャップと,このエンドキャップの中に取り外し可能に配置され,上面と下面とを有する弾性の内側部分と,この内側部分の上面から上方に延びた少なくとも1つの突出部と,前記内側部分に配置された少なくとも1つの再封止め可能な開口とを有する通気用ディスクとを具備し,この通気用ディスクは,真空が内側部分上で容器の収容部中に形成されたとき,前記少なくとも1つ再封止め可能な開口により通気される,容器集合体。」とあるのを,補正後の請求項6にあるとおり,「飲料を収容するための収容部と,下端とを有する飲料用の容器と,この容器の下端に取り外し可能に取着されるエンドキャップと,このエンドキャップの中に取り外し可能に配置され,上面と下面とを有する弾性の内側部分と,この内側部分の上面から上方に延びた少なくとも1つの突出部と,前記内側部分に配置された再封止可能な複数のスリットとを有する通気用ディスクとを具備し,前記内側部分の下面には,複数の窪みが形成され,これら窪みの各々は,前記複数のスリットの各々とアラインメントされており,この通気用ディスクは,真空が内側部分上で容器の収容部中に形成されたとき,前記スリットと窪みとによって通気される,容器集合体。」とする補正。

2.目的要件
補正事項A及び補正事項Bは,いずれも,飲料用の容器が「飲料を供給するための上端」を有するとの限定を外すものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。また,この限定を外すことが,誤記の訂正や明りょうでない記載の釈明を目的とするものでないことは明らかである。
したがって,本件第二補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.付言(独立特許要件)
仮に,本件第二補正が,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても,本件第二補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下,「本願補正発明」という)は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反し,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであると判断されるので,以下に付言する。

(1)刊行物記載事項
a)原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許第5499729号明細書(以下,「引用例1」という)には,図面とともに,次の事項が記載されている(和訳は当審による)。
a1)「Referring to FIGS.1-3, there is shown one embodiment 20 of an infant feeding bottle structure of this invention. The bottle structure 20 incorporates a continuously extending walled housing 21 that defines therein a cavity 22 and that is axially (or longitudinally) elongated; however, the housing can have any convenient or desired configuration. Walled housing 21 has an opening 23 and 24 defined at each of a pair of opposed housing ends.」(第3欄第37-44行)
「図1-3を参照すると,本発明の哺乳瓶の実施例20が示されている。瓶20は長く延びるハウジング21を含み,その内側に空洞22が区画されて,軸方向(長手方向)に延びるが,ハウジングは適宜の形状とすることができる。ハウジング21は両端に開口部23及び24を有する。」
a2)「The infant feeding bottle structure 20 employs two cap members 28 and 29.」(第3欄第49-50行)
「哺乳瓶20は二つのキャップ28及び29を備える。」
a3)「The bottle structure 20 incorporates a thickened elastomeric diaphragm member 42 having a plurality of apertures 43 that extend therethrough.」(第4欄第23-25行)
「瓶20は,複数の貫通穴43が形成された厚い弾性ダイヤフラム42を備える。」
a4)「An alternative diaphragm member 67 adapted for use in bottle structure 20 is shown in FIGS. 4 and 5. Diaphragm member 67 has a domed central portion 69 and apertures 68 that have a slit-like configuration.」(第4欄第47-50行)
「瓶20に適用される別のダイヤフラム67が図4及び5に示されている。ダイヤフラム67は,ドーム形状の中央部分69とスリット形状の穴68を有する。」
a5)「the liquid does not pass through the apertures 43 (and similarly for diaphragm 67). However, when the bottle 20 is reoriented so that the nipple 39 is bottommost, an air space (not shown) that exists in the bottle 20 is adjacent to the diaphragm member 42. As the liquid is withdrawn from the bottle 20 through the nipple 39, the diaphragm member 42 expands slightly into the cavity 22 and concurrently the apertures 43 open so that the outside air passes through the apertures 43 and equalizes the air pressure in the interior air space compared to the pressure of the outside air (and similarly for diaphragm 67).」(第5欄第15-25行)
「液体は穴43を通過しない(ダイヤフラム67も同様)。しかし,乳首39が最も下方に位置するように瓶20の向きが直されると,瓶20内に存在する(図示しない)空気部分がダイヤフラム42に隣接する。乳首39を通して瓶20から液体が吸引されると,ダイヤフラム42が僅かに空洞22内に膨らむとともに,穴43が開き,外部の空気が穴43を通過することにより,内部空間の空気圧が外部の空気圧と釣り合うようになる(ダイヤフラム67も同様)。」
a6)「Thus, the diaphragm member 67 and the slit apertures 68 cooperate like check valves allowing one-way movement of gas through diaphragm member 67 for normalizing air pressure in the bottle 20 without loss of liquid from the bottle 10 interior through diaphragm member 67 when the bottle is oriented in an upright position with liquid contacting interior surface portions of the diaphragm member 67.」(第6欄第45-51行)
「このように,ダイヤフラム67とスリット穴68は,ダイヤフラム67を介した空気の移動を一方向のみに限定するチェック弁として機能し,瓶を直立姿勢に変えて液体がダイヤフラム67の内側表面に接したときに瓶10内の液体がダイヤフラム67を通じて漏れることがないようにした上で,瓶20内の空気圧を標準化させる。」
a7)「FIGS. 14-18 show another embodiment 71 of an infant feeding bottle structure of this invention. Components of bottle structure 71 which are similar in structure and function to corresponding components of bottle structure 20 are similarly numbered, but with the addition of double prime marks thereto for identification purposes. Bottle structure 71 employs an elastic apertured diaphragm 72 in which the individual apertures 73 are illustratively arranged in a square array. Each aperture 73 is a point in configuration when diaphragm 72 is relaxed. Circumferentially about the axis of each aperture 73 a dish-like (preferably hemispherical) recess 74 is located on the concave surface 76 of the domed region 77 of the diaphragm 72.」(第8欄第32-44行)
「図14-18には,本発明の哺乳瓶の別の実施例71が示されている。哺乳瓶20の対応する構成部材と構造上及び機能上類似する哺乳瓶71の構成部材には,同様な番号を付してあるが,認識し易くするために二重のプライムマークを付した。瓶71は,図示するように各穴73が正方形に配列された弾性ダイヤフラム72を備える。ダイヤフラム72に圧力が加わらないとき,各穴73は点に見える。各穴73の軸を取り巻くように,皿状(好ましくは半球状)の窪み74が,ダイヤフラム72のドーム領域77の凹面76上に設けられる。」
a8)「Each aperture 73 is formed by straight pin puncture through the diaphragm 72 in the apex region of each hemispherical recess 74.」(第8欄第57-59行)
「各穴73は,各半球状の窪み73の頂点においてダイヤフラム72を貫通する真っ直ぐなピン穴として形成される。」
a9)図18を参照すると,ダイヤフラム72は,ハウジング21”の端壁とキャップ29”との間に挟まれるようにして,キャップ29”の内側に配置されることが看取できる。

上記記載事項a5及びa6における,ダイヤフラム42に形成された穴43及びダイヤフラム67に形成されたスリット穴68の作用は,ダイヤフラム72に形成された穴73についてもあてはまることは明らかである。
以上を総合すると,引用例1には,次の発明が記載されているといえる(以下,「引用発明」という)。
「長手方向両端に開口部を有するハウジング21”,ハウジング21”の一方の開口部23”に取り付けられる乳首39”,ハウジング21”の他方の開口部24”に取り付けられるキャップ29”及びドーム形状のダイヤフラム72等からなる哺乳瓶であって,ダイヤフラム72はハウジング21”の端壁とキャップ29”との間に挟まれるようにしてキャップ29”の内側に配置され,ダイヤフラム72の凹面76上には多数の窪み74が設けられ,各窪み74の頂点においてダイヤフラム72を貫通するピン穴73が形成されており,瓶内の液体はピン穴73を通過せず,乳首39”を通して瓶から液体が吸引されたときは,ピン穴73が開いて外部の空気を瓶内に通過させ,瓶内の空気圧と外部の空気圧とが釣り合うようにした哺乳瓶。」

b)同じく原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許第3326242号明細書(以下,「引用例2」という)には,図面とともに,次の事項が記載されている(和訳は当審による)。
b1)「Referring to the drawings, there is shown in FIGS. 1 and 2 a flow control device 10 applicable for use in a fluid flow system, as for example, in a water closet or the like where it is desired to provide relatively very little restriction to the flow at low inlet pressure, and to restrict the flow to a substantially constant level at medium and high pressure.」(第2欄第54-60行)
「図面を参照すると,図1及び図2には,例えば水洗トイレ等の流体フローシステムに適用され,低い入口圧力の下では流量をほとんど制限せず,中間及び高い圧力の下では実質的に一定のレベルに流量を制限する流量制御装置10が示されている。」
b2)「The flow restrictor or washer 15 comprises essentially of a disc shaped member 17 formed of a resilient material such as for example, rubber or the like, having a hardness which will permit it to flex under the action of fluid pressure acting thereon in accordance with a predetermined ratio.」(第3欄第6-12行)
「流量制御部材もしくはワッシャ15は,例えばゴム等の弾性材料から形成される実質的にディスク形状の部材17からなり,設定された所定の流体圧力の作用の下で変形する硬さを有する。」
b3)「If desired, the flow restrictor 15 may be provided with an integrally formed stem or handle 20 by which it may be grasped to facilitate the handling and positioning of the same within the seat member.」(第3欄第44-47行)
「必要であれば,流量制御部材15は,取扱い及びシート(座)部材への取付けを容易にするために,ステムもしくはハンドル20を一体に形成することができる。」

(2)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ハウジング21”」,「キャップ29”」,「他方の開口部24”」,「哺乳瓶」,「窪み74」及び「ダイヤフラム72」は,それぞれ本願補正発明の「収容部」,「下側のエンドキャップ」,「下端」,「飲料用の容器」,「窪み」及び「通気用ディスク」に相当する。
引用発明の「ピン穴73」も本願補正発明の「スリット」も微小な隙間である点では共通する。
引用発明のダイヤフラム72が下面と上面を有することは明らかである。
したがって,本願補正発明と引用発明は,本願補正発明の表記にできるだけしたがえば,
「飲料を収容するための収容部と,下側のエンドキャップにより閉成される下端とを有する飲料用の容器の下側のエンドキャップ中に配置される通気用ディスクであって,下面と,上面と,中に形成された再封止可能な複数の微小な隙間とを有する弾性の内側部分を具備し,前記内側部分の下面には,複数の窪みが形成され,これら窪みの各々は,前記複数の微小な隙間の各々とアラインメントされており,前記エンドキャップ中に取外し可能に配置されたとき,前記微小な隙間と窪みとによって通気され,前記収容部中が真空になったとき,前記微小な隙間と窪みを通して収容部中に入る空気の流れを可能にし,前記微小な隙間と窪みとを通して収容部から出る飲料の流れを防止する通気用ディスク。」の点で一致し,次の点で相違する。
[相違点1]
本願補正発明の通気用ディスクは,上面から上方に延びた少なくとも1つの突出部を有するのに対して,引用発明のダイヤフラム72は,そのような突出部を備えていない点。
[相違点2]
本願補正発明の通気用ディスクに設けられる微小な隙間は,スリットであるのに対して,引用発明のダイヤフラム72に設けられる微小な隙間は,ピン穴である点。
相違点1について検討する。引用例2には,弾性を有するディスク形状の流量制御部材に取付けを容易にするためのステムを一体形成することが記載されている。引用発明のダイヤフラム72も,流量を制御する部材の一種であり,キャップ29”の内側への取付けを容易にすることは当然の課題といえるから,引用発明のダイヤフラム72にステムを一体に形成すること,すなわち相違点1は,引用例2を参酌することにより当業者が容易に想到し得たことである。
相違点2について検討する。引用例1には,瓶内の液体は通過させず,瓶から液体が吸引されたときは,外部の空気を瓶内に通過させるようにする穴(微小な隙間)として,スリットを設ける実施例も記載されている(記載事項a4?a6参照)。引用発明のピン穴をスリットに変更することは,引用例1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
以上のことから,本願補正発明は,引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

第4.本願の特許請求の範囲等
本件第二補正は上記のとおり却下されたので,本願の願書に添付した特許請求の範囲,明細書及び図面は,本件第一補正により補正されたとおりのものであるところ,その請求項1,請求項31及び請求項46の記載は次のとおりである。
「【請求項1】飲料を収容するための収容部と,飲料を供給するための上端と,下側のエンドキャップにより閉成される下端とを有する飲料用の容器の下側のエンドキャップ中に配置される通気用ディスクであって,下面と,上面と,この上面から上方に延びた少なくとも1つの突出部と,中に形成された少なくとも1つの再封止可能な開口とを有する弾性の内側部分を具備し,前記エンドキャップ中に取外し可能に配置されたとき,前記少なくとも1つの再封止可能な開口によって通気され,前記収容部中が真空になったとき,前記少なくとも1つの再封止可能な開口を通して収容部中に入る空気の流れを可能にし,前記少なくとも1つの再封止可能な開口を通して収容部から出る飲料の流れを防止する通気用ディスク。」
「【請求項31】前記エンドキャップは,前記通気用ディスクがこのエンドキャップと前記容器とに組み合わされたとき,前記リムの前記下面の平面部分と当接する上側の平面部分を有する請求項30記載の容器集合体。」
「【請求項46】前記エンドキャップは,リッジを前記中心部の周囲に有し,このエンドキャップの前記平面部分は,このリッジを取り囲み,このリッジは,このエンドキャップが前記容器と組み合わされたとき,前記通気用ディスクと当接する,請求項45記載の容器集合体。」
本件第一補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明を,以下,「本願発明」という。

第5.進歩性
1.刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物に記載された事項は,前記「第3」の「3.付言(独立特許要件)」の「(1)刊行物記載事項」に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ハウジング21”」,「乳首39”」,「キャップ29”」,「他方の開口部24”」,「哺乳瓶」及び「ダイヤフラム72」は,それぞれ本願発明の「収容部」,「飲料を供給するための上端」,「下側のエンドキャップ」,「下端」,「飲料用の容器」及び「通気用ディスク」に相当し,引用発明の「ピン穴73」及び「窪み74」は,本願補正発明の「再封止可能な開口」に相当する。
したがって,本願発明と引用発明は,本願発明の表記にしたがえば,
「飲料を収容するための収容部と,飲料を供給するための上端と,下側のエンドキャップにより閉成される下端とを有する飲料用の容器の下側のエンドキャップ中に配置される通気用ディスクであって,下面と,上面と,中に形成された少なくとも1つの再封止可能な開口とを有する弾性の内側部分を具備し,前記エンドキャップ中に取外し可能に配置されたとき,前記少なくとも1つの再封止可能な開口によって通気され,前記収容部中が真空になったとき,前記少なくとも1つの再封止可能な開口を通して収容部中に入る空気の流れを可能にし,前記少なくとも1つの再封止可能な開口を通して収容部から出る飲料の流れを防止する通気用ディスク。」の点で一致し,次の点で相違する。
[相違点]
本願発明の通気用ディスクは,上面から上方に延びた少なくとも1つの突出部を有するのに対して,引用発明のダイヤフラム72は,そのような突出部を備えていない点。
上記相違点は,本願補正発明と引用発明との相違点として挙げた相違点1と同じものであり,その容易想到性の判断は,「3.付言(独立特許要件)」の「(2)対比・判断」に記載したとおりである。
したがって,本願発明は,引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.原文新規事項
本件第一補正後の請求項31に記載された「前記エンドキャップは,前記通気用ディスクがこのエンドキャップと前記容器とに組み合わされたとき,前記リムの前記下面の平面部分と当接する上側の平面部分を有する」との事項及び本件第一補正後の請求項46に記載された「前記エンドキャップは,リッジを前記中心部の周囲に有し,このエンドキャップの前記平面部分は,このリッジを取り囲み,このリッジは,このエンドキャップが前記容器と組み合わされたとき,前記通気用ディスクと当接する」との事項は,国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面に記載されておらず,また,国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面に記載した事項から自明であるとも認められない。
したがって,本願の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項は,国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にない。
なお,請求人は,この点について何ら反論していない。

第7.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず,また,本願は,特許法第184条の18において読み替えて準用する特許法第49条第5号に該当するから,請求項1以外の請求項に係る発明について進歩性を検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-17 
結審通知日 2010-11-24 
審決日 2010-12-07 
出願番号 特願2003-513862(P2003-513862)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
P 1 8・ 54- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白川 敬寛  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 栗林 敏彦
熊倉 強
発明の名称 中央ノブ付き通気用ディスク  
代理人 福原 淑弘  
代理人 村松 貞男  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  
代理人 峰 隆司  
代理人 白根 俊郎  

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