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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C03B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C03B |
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管理番号 | 1235788 |
審判番号 | 不服2008-5411 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-05 |
確定日 | 2011-04-21 |
事件の表示 | 特願2002-114799「ガラス分断方法とその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月6日出願公開、特開2003-313036〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、平成14年4月17日の出願であって、平成19年10月12日付けで拒絶理由が通知され、同年12月12日付けで意見書および手続補正書が提出されたが、平成20年2月1日付けで拒絶査定されたため、これに対して同年3月5日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同年3月7日付けで手続補正書により明細書が補正され、平成22年9月9日に特許法第164条3項に基づく報告書を引用した審尋がなされ、同年10月21日に回答書が提出されたものである。 第2 平成20年3月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年3月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正前及び補正後の本願発明 本件補正は、特許請求の範囲についてするものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する補正は、「ガラス基板2枚を貼り合わせてなるパネル」について、「ガラス種の異なる」という限定を付すものである。これは、発明特定事項を限定するものであることは明らかである。 したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかを、請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について検討する。 本願補正発明は、次のとおりのものである。 「ガラス種の異なるガラス基板2枚を貼り合わせてなるパネルを両面分断するガラス分断装置において、前記パネルの一方の面を分断する第1の分断刃と、前記パネルをはさんで前記第1の分断刃の対向側に設けられ、前記パネルを支える第1の機構と、前記パネルの他方の面を分断する第2の分断刃と、前記パネルをはさんで前記第2の分断刃の対向側に設けられ、前記パネルを支える第2の機構と、を備え、前記第1の分断刃と前記第1の機構とにより前記パネルの一方の面を分断する時の条件と、前記第2の分断刃と前記第2の機構とにより前記パネルの他方を分断する時の条件とをそれぞれ別に設定できるようにしたことを特徴とするガラス分断装置。」 2.刊行物に記載された発明及び周知技術 (1)引用例1について (i)記載事項 これに対し、本願出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された実願平2-120763号(実開平4-78227号公報)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という)には、次の事項が図面と共に記載されている。 (ア)「 ガラス板を保持して板面に平行な一方向に該ガラス板を移動させる走行手段と、前記ガラス板の一方の板面に接触する状態で位置決め固定される第一筋入れ工具と、前記ガラス板の他方の板面に接触する状態で前記第一筋入れ工具と該板面に平行な方向の同位置に位置決め固定される第二筋入れ工具とからなることを特徴とするガラス板の筋入れ装置。」(実用新案登録請求の範囲 第2項) (イ)「本考案は、ガラス板に切断のための筋入れを行うガラス板の筋入れ装置に関する。」(第2頁3?4行) (ウ)「・・・上ローラ26と下ローラ27が設けられ、上ローラ26はガラス板21の上面21aに転接し、下ローラ27はガラス板21の下面21bに転接するようになっている。ガラス板21を挟んで上ローラ26に対向する位置にはガラス板21の下面21b(一方の板面)に接触する状態で第一筋入れ工具28が固定支持されている。また、ガラス板21を挟んで下ローラ27に対向する位置にはガラス板の上面21a(他方の板面)に接触する状態で第二筋入れ工具29が固定支持されている。・・・第一筋入れ工具28及び第二筋入れ工具29によって、上面21a及び下面21bの同位置に筋入れが行われる。」(第8頁4行?19行) (エ)「第一筋入れ工具28及び第2筋入れ工具29は、エアシリンダ30、31によって押付力が調整されるようになっている。」(第8頁20行?第9頁2行) (オ)第1図を参照すると、第1および第2筋入れ工具には、それぞれ別々にエアシリンダが設けられていることを確認することができる。 (ii)記載された発明 摘記事項(ア)および(イ)より、引用例1には、ガラス板を切断するための筋入れ装置が記載されている。そして、同(ウ)によれば、ガラス板21を挟んで上ローラ26に対向する位置には第一筋入れ工具28が、下ローラ27に対向する位置には第二筋入れ工具29が固定支持されている。また、同(エ)および(オ)によれば、これら第一及び第二の筋入れ工具は、それぞれに設けられたエアシリンダにより押付力が調整可能となっている。 以上より、引用例1には次の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されているとすることができる。 「ガラス板を挟んで、第1筋入れ工具とこれに対向する位置に設けられた上ローラ、第2筋入れ工具とこれに対向する位置に設けられた下ローラからなり、第一及び第二の筋入れ工具は、それぞれに設けられたエアシリンダにより押付力が調整可能となっている、ガラス板切断用筋入れ装置。」 3.対比と判断 (1)対比 本願補正発明と引用例1発明とを比較する。 引用例1発明における「第1及び第2筋入れ工具」は、具体的な形態が明らかではない。しかし、ガラスに筋を入れる工具としてダイヤモンドホイール等が使われるのが通常であり、このため、本願補正発明における「第1及び第2の分断刃」に相当する。 また、当該「第1及び第2筋入れ工具」は、それぞれに設けられたエアシリンダにより押付力が調整可能であるので、ガラス板への筋入れの際の条件を、それぞれ独立に調整可能であるといえる。すなわち、ガラス板の一方の面を分断する時の条件と他方の面を分断する時の条件とを、それぞれ別に設定できるように設計されている。このため、この点で本願補正発明における「第1および第2の切断刃」と共通の機能を有するものである。 さらに、引用例1発明における「上下のローラ」については、その機能は必ずしも明確ではない。しかし、第1及び第2の筋入れ工具に対向する位置に設置され、当該筋入れ工具はガラス板の移動によりガラス板に筋入れを行うので、ガラス板を支える役割を有していると認められる。このため、この点で本願補正発明における「パネルを支える第1および第2の機構」と共通する機能を有するものである。 したがって、両者の一致点と相違点は次のとおりとなる。 (i)一致点 「ガラス基板を両面分断するガラス分断装置において、前記ガラス基板の一方の面を分断する第1の分断刃と、前記ガラス基板をはさんで前記第1の分断刃の対向側に設けられ、前記ガラス基板を支える第1の機構と、前記ガラス基板の他方の面を分断する第2の分断刃と、前記ガラス基板をはさんで前記第2の分断刃の対向側に設けられ、前記ガラス基板を支える第2の機構と、を備え、前記第1の分断刃と前記第1の機構とにより前記ガラス基板の一方の面を分断する時の条件と、前記第2の分断刃と前記第2の機構とにより前記ガラス基板の他方の面を分断する時の条件とをそれぞれ別に設定できるようにしたことを特徴とするガラス分断装置。」 (ii)相違点 本願補正発明が処理対象とするガラス基板が、「ガラス種の異なるガラス基板2枚を貼り合わせてなるパネル」であるのに対し、引用例1発明では「ガラス板」としており、合わせガラスを含むことについては具体的な記載がない点。 (2)判断 (i)周知例 ・周知例1 本願出願日前に頒布された特開平8-119654号公報(以下「周知例1」という)には、次の事項が記載されている。 (カ)「ガラス板を保持する保持手段と、前記保持手段を搬送する搬送手段と、前記保持手段により保持されたガラス板に切断線を切削する切削手段と、前記切断線が切削されたガラス板にひねりを加えて該ガラス板を前記切断線で切断する切断手段と、から構成されることを特徴とするガラス板の切断装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】) (キ)前記切削手段は、ガラス板の両側の対向位置を同時に切削することを特徴とする請求項1、2又は3に記載のガラス板の切断装置。(【特許請求の範囲】の【請求項4】) (ク)「ガラス基板31は・・・2枚のガラス基板を・・・接合したものである。」(【0011】段落) (ケ)「カッター移動ガイド43からそれぞれ水平方向にホイールカッター41が突出し、ガラス基板31の両面に当接する。このホイールカッター41が、カッター移動ガイド43に沿って、垂直方向に移動し、ガラス基板31の両面に切断線を切削する。」(【0013】段落) 以上の摘記事項より、周知例1には、ガラス板の切断装置が記載されており(摘記事項(カ))、2枚のガラス基板を接合したものを(同(ク))、ホイールカッターにより(同(ケ))、両面の対向位置を同時に切削すること(同(キ))が記載されている。 ・周知例2 同じく、特開昭63-69728号公報(以下「周知例2」という)には、次の事項が記載されている。 (サ)「中間にフィルムが介入接着された合わせガラス板を切断面を限定する位置において支持固定し、該位置に先ず上下V溝入れ用ダイヤモンドホイールの回転送りを与えることによつて対応する上下面のV溝条を研削し、続いてカッティングブレードで該位置において切断することを特徴とする合わせガラス板の切断方法。」(特許請求の範囲) 以上より、周知例2には、合わせガラスを切断するに当たり、上下V溝入れ用ダイヤモンドホイールの回転送りを与えることによつて対応する上下面のV溝条を研削することからなる切断方法が記載されている。 (ii)本願出願前の周知技術 以上の周知例1及び2から明らかなように、次の技術は、当該技術分野においては本願出願前に既に当業者にとっては周知の技術であったといえる。 「ガラス基板2枚を貼り合わせてなる合わせガラスを切断するに当たり、ホイールカッターやダイヤモンドホイール等の切断刃を用い、当該合わせガラスの両面の対向する位置に同時に切断線を形成し、切断すること。」 (iii)本願補正発明の容易想到性 引用例1発明はガラス板の切断装置であって、ガラス種の異なるガラス基板2枚を貼り合わせてなる合わせガラスを切断することは、引用例1には明記されていないし、これを明確に示唆をする記載もない。 しかし、上記したように、合わせガラスを切断刃で切断するに当たり、上下面から同時に切断線を形成することは周知の技術である。このため、引用例1発明に係るガラス板の切断装置を、合わせガラスの切断に転用してみようとすることは、当業者であれば容易に想到するところである。その効果も、合わせガラスの切断ができるという以上の格別のものではない。 また、合わせガラスの切断を行うに当たり、合わせガラスの一方の面と他方の面の切断線の形成、すなわち筋入れの条件を、それぞれ別に設定できるようにすることは、貼り合わせたガラス板の切削特性等を考慮して、当業者が当然に考慮するところである。この点について必要であれば、次の刊行物の記載を参照することができる(特開平6-102480号公報、特開平11-305181号公報)。 したがって、本願補正発明は、引用例1発明に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易になしえたものである。 4.本件補正についての結び 以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成20年3月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成19年12月12日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。 「ガラス基板2枚を貼り合わせてなるパネルを両面分断するガラス分断装置において、前記パネルの一方の面を分断する第1の分断刃と、前記パネルをはさんで前記第1の分断刃の対向側に設けられ、前記パネルを支える第1の機構と、前記パネルの他方の面を分断する第2の分断刃と、前記パネルをはさんで前記第2の分断刃の対向側に設けられ、前記パネルを支える第2の機構と、を備え、前記第1の分断刃と前記第1の機構とにより前記パネルの一方の面を分断する時の条件と、前記第2の分断刃と前記第2の機構とにより前記パネルの他方を分断する時の条件とをそれぞれ別に設定できるようにしたことを特徴とするガラス分断装置。」 2.進歩性欠如の判断 本願発明は、上記第2[理由]で検討した本願補正発明の「ガラス基板2枚を貼り合わせてなるパネル」について、「ガラス種の異なる」との特定事項を削除したものに相当する。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2の[理由]3.(2)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-09 |
結審通知日 | 2011-02-15 |
審決日 | 2011-03-04 |
出願番号 | 特願2002-114799(P2002-114799) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(C03B)
P 1 8・ 121- Z (C03B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小柳 健悟 |
特許庁審判長 |
真々田 忠博 |
特許庁審判官 |
深草 祐一 斉藤 信人 |
発明の名称 | ガラス分断方法とその装置 |
代理人 | 酒井 將行 |
代理人 | 深見 久郎 |
代理人 | 仲村 義平 |
代理人 | 荒川 伸夫 |
代理人 | 野田 久登 |
代理人 | 堀井 豊 |
代理人 | 森田 俊雄 |