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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1236115
審判番号 不服2009-10828  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-08 
確定日 2011-05-06 
事件の表示 特願2006-163994「コンピュータシステムの起動方法、コンピュータシステムおよびハードディスクドライブ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 9日出願公開、特開2006-309782〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成14年7月29日に出願した特願2002-220078号(優先日:2002年1月3日,大韓民国)の一部を平成18年6月13日に新たな特許出願としたものであって、
平成18年6月30日付けで審査請求がなされ、
平成19年4月12日付けで拒絶理由通知(平成19年4月17日発送)がなされ、
同年8月17日付けで意見書が提出されると共に、手続補正書が提出され、
同年9月5日付けで拒絶理由通知(同年9月11日発送)がなされ、
同年12月10日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
平成20年3月6日付けで拒絶理由通知(同年3月11日発送)がなされ、
同年6月9日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
同年10月30日付けで拒絶理由通知(同年11月4日発送)がなされ、
平成21年2月3日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
同年3月5日付けで拒絶査定(同年3月10日発送)がなされ、
同年6月8日付けで審判請求がされると共に、
同年7月8日付けで手続補正書が提出され、
同年9月18日付けで拒絶理由通知(同年9月29日発送)がなされ、
同年12月28日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1?8に係る発明は、上記平成21年12月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された通りのものであり、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」と記す。)は、以下の通りのものと認める。

「コンピュータシステムにおいて、
メインメモリと;
前記メインメモリと通信を行うハードディスクドライブと;
を含み、
前記ハードディスクドライブは、
前記コンピュータシステムのOSを保存するディスクと;
前記ディスクを駆動する駆動モーターと;
前記OSの起動プログラムを保存するフラッシュメモリーと;
前記駆動モーターが定常速度になる前は、前記フラッシュメモリーから前記OSの起動プログラムを読み出して前記メインメモリにローディングし、前記駆動モーターが定常速度になったか否かを判断し、前記駆動モーターが定常速度になった後は、前記ディスクから必要なプログラムを読み出して前記メインメモリにローディングする制御部と;
を含むことを特徴とする、コンピュータシステム。」


3.引用文献の記載内容
当審において通知した、上記平成21年9月18日付けの拒絶理由通知で引用した下記の引用文献には、それぞれ、下記の引用文献記載事項が記載されている。

<引用文献1>
特開平9-297659号公報(平成9年11月18日出願公開。)

<引用文献記載事項1-1>
「【請求項1】 単一のドライブ番号が割り当てられ、そのドライブ番号によって指定される不揮発性記憶装置において、
前記不揮発性記憶装置の全記憶領域内の第1記憶領域が割り当てられ、電気的にデータの消去および書き込みが可能な不揮発性半導体記憶装置から構成される半導体ディスク装置と、
前記不揮発性記憶装置の全記憶領域内における前記第1記憶領域以外の他の第2記憶領域が割り当てられた磁気ディスク装置とを具備し、
単一のドライブ番号で前記第1記憶領域と前記第2記憶領域を選択的にアクセスできるように構成されていることを特徴とする不揮発性記憶装置。」

<引用文献記載事項1-2>
「【請求項2】 前記第1記憶領域は、あるプログラムを構成するファイル群の中でそのプログラム起動時に使用されるファイルの格納に使用され、そのファイル以外の他のファイルの格納のために前記第2記憶領域が使用されることを特徴とする請求項1記載の不揮発性記憶装置。」

<引用文献記載事項1-3>
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はコンピュータの2次記憶として使用される不揮発性記憶装置およびその制御方法に関し、特に異なる種類のディスク装置を複合できるように改良された不揮発性記憶装置およびその制御方法に関する。」

<引用文献記載事項1-4>
「【0009】安価で容量の多いハードディスクドライブ5は、主不揮発記憶装置として用いられ、システムファイルや多くの応用ソフトが記憶される。コンピュータの起動時や応用ソフトを起動する時は、フラッシュメモリ6から行うのが速度の面からは望ましい。大きな応用ソフトの中には起動時に用いられたりあるいは使用頻度の高いのは部分的であり、使用頻度のごく少ない部分もある。この場合、起動時に用いられたり使用頻度の高い部分をフラッシュメモリ6に記憶しておき、使用頻度の少ない部分はハードディスク5に記憶しておくのが望ましい。」

<引用文献記載事項1-5>
「【0020】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。図1には、この発明の一実施形態に係る不揮発性記憶装置を使用したシステム構成例として、コンピュータ内部の中央演算処理装置1(CPU)と不揮発性記憶装置4、5、6との接続関係が模式的に示されている。ここでは、容量が少なくハードディスクドライブ5よりも速度の遅いフロッピーディスクドライブ4は独立のドライブユニットとして設けられているが、ハードディスク5とフラッシュメモリ6については互いの利点で互いの欠点を補うように1つのドライブ番号が割り当てられた統合ドライブユニット7として実現されている。
【0021】フロッピーディスクドライブ4および統合ドライブユニット7は、それぞれ例えばドライブA、Cと名づけられ、選択されたドライブユニットの記憶番地はアドレスバス2のアドレス信号によって選択される。各ドライブユニットとCPUの間のデータのやり取りはデータバス3を介して行われる。その他の制御信号線は図示を省略してある。フロッピーディスクドライブ4および統合ドライブユニット7は共にコンピュータに内蔵されている。」

<引用文献記載事項1-6>
「【0025】この場合、例えば、1つのソフトウェアをハードデイスクドライブ5とフラッシュメモリ6とにまたがって格納する場合には、データ読み出し速度の早いフラッシュメモリ6にはそのプログラム起動時に使用されるファイルが格納され、そのファイル以外の他のファイルについては記憶容量の大きいハードデイスクドライブ5に格納される。これにより、そのプログラムの起動を高速に行うことが可能となる。また、使用頻度の多いファイルをなるべくフラッシュメモリ6に記憶しておくことにより、平均的なファイル読み出し速度などを早めることが可能となる。」

<引用文献記載事項1-7>
「【0026】図2には、統合ドライブユニット7の具体的な構成の一例が示されている。この統合ドライブユニット7は、ハードディスクドライブ5、フラッシュメモリ6、ハードディスクコントローラ8、フラッシュメモリコントローラ9、ハイブリッドコントローラ10から構成されている。
【0029】フラッシュメモリコントローラ9は、電気的にデータの消去および書き込みが可能なフラッシュEEPROMから構成されるフラッシュメモリ6を制御してそれを半導体ディスク装置として動作させるためのエミュレーションを行うものであり、ハイブリッドコントローラ10を介して受け取ったCPU1からのディスクアドレス(セクタ番号、シリンダ番号、ヘッド番号など)をフラッシュメモリ用メモリアドレスに変換するアドレス変換、CPU1からのディスクコマンド(ライト、リード)をフラッシュメモリ用コマンド(イレーズ、ライト、リード)に変換するコマンド変換等を行う。
【0030】ハードディスクコントローラ8は、ハードディスクドライブ5に設けられているディスク、モータ、ヘッドなどの機械的な機構を制御するためのものであり、このハードディスクコントローラ8は、通常、ハードディスクドライブ5の一部として設けられているものである。
【0031】ハイブリッドコントローラ10は、CPU1によって指定される単一のドライブ番号に応答してハードディスクコントローラ8とフラッシュメモリコントローラ9の双方を統合制御するものであり、ファイルシステムやディスクドライバなどのソフトウェア制御の下でCPU1から発行される物理ドライブ番号が統合ドライブユニット7に割り当てられたドライブ番号である時、それに応答してハードディスクコントローラ8とフラッシュメモリコントローラ9に選択的にCPU1からのディスクアドレス、ディスクコマンドを渡す。また、このハイブリッドコントローラ10には、ハードディスクドライブ5とフラッシュメモリ6それぞれの記憶領域の管理、各記憶領域に格納されたファイルの使用頻度の管理、記憶領域間のファイルの移動などの機能が設けられている。」

<引用文献記載事項1-8>
「【0035】例えば、前述したように、1つのソフトウェアをフラッシュメモリ領域とハードディスク領域にまたがって格納する場合には、データ読み出し速度の早いフラッシュメモリ領域にはプログラム起動時に使用される実行ファイルのみを格納し、そのファイル以外の他の全てファイルについてはハードディスク領域に格納される。また、使用頻度の高いファイルなどについてはシステム性能の向上のためにフラッシュメモリ領域に格納され、比較的使用頻度の低いファイルについては容量の大きいハードディスク領域に格納される。書き込み対象のファイルをフラッシュメモリ領域とハードディスク領域のどちらに書き込みかの選択は、ファイルシステムやディスクドライバなどの外部からの指定によって行ったり、ハイブリッドコントローラ10の制御によって統合ドライブユニット7内部で自動的に行うことができる。」

<引用文献記載事項1-9>
「【0036】図5の例では、config.sysというファイルはフラッシュメモリ領域に記憶され、application02.exe#はハードディスク領域に記憶される。また、ここでは、ファイル識別子の最後に“#”が付されたファイルは、ハードディスク領域に記憶される。“#”は書き込み対象ファイルの格納場所としてハードディスク領域を明示的に示す属性情報であり、この“#”が付されたファイル識別子を持つファイルについては、例えば、ハードディスク領域内の空き領域の中からその記憶場所が選択され、それを指示するディスクアドレスがCPU1からハイブリッドコントローラ10経由でハードディスクコントローラ8に送られる。」

<引用文献記載事項1-10>
「【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る不揮発性記憶装置を用いたコンピュータシステムの構成を示すブロック図。」


<引用文献2>
特開平10-154101号公報(平成10年6月9日出願公開。)

<引用文献記載事項2-1>
「【0020】このような方式により、電源投入時から自動的に立ち上がるOSに対して、その起動に必要な起動情報を、キャッシュシステムはHDDから読出して半導体ディスク装置1の恒久的保存領域10Aに保存することができる。従って、次にOSが起動するときには、半導体ディスク装置1の恒久的保存領域10Aから高速に起動情報をアクセスすることができる。これにより、結果的にOSの起動が高速化できるように、キャッシュ機能を有効に発揮させることができる。」

<引用文献記載事項2-2>
「【0021】また、OSの起動情報も前記のAPの起動情報と同様に、1個のファイルとして半導体ディスク装置1に保存することにより、ユーザにより参照または削除が可能である。これにより例えばパーソナルコンピュータの出荷時に、プリインストールされたOSがキャッシュシステムにより、半導体ディスク装置1に保存されている場合でも、ユーザの判断により削除が可能である。即ち、パーソナルコンピュータの再起動をほとんど実行せずに、BIOS28のリジューム機能によりOSを起動するユーザには、削除しても差支えない場合があるが、それを可能にすることができる。
(第1の実施形態の変形例2)第1の実施形態の変形例2は、図2に示すように、システムのBIOS28がキャッシュシステムの動作プログラム(コントローラ3の一部)を含む方式である。このような方式であれば、電源投入時に、BIOS28は半導体ディスク装置1をアクセスすることにより、HDD2を起動させることなく、システムの起動させることが可能となる。従って、HDD2を起動させるための消費電力を節約できるため、省電力モードのコンピュータに適用することができる。」


<引用文献3>
特開平7-44325号公報(平成7年2月14日出願公開。)

<引用文献記載事項3-1>
「【0002】
【従来の技術】大容量の外部記憶装置として計算機に組み込まれないしはそれに付属して用いられるディスク記憶装置は、周知のように計算機の基本的動作に関連するソフトウエアであるオペレーティングシステム等の基本プログラムを記憶しているため必ず計算機と同時に起動され、計算機側でこのOSないしDOSシステムが立ち上がった後はそのデータの読み書き動作を必ず計算機からの指令ないしは指定に基づいて開始する。よく知られていることであるが、ディスク記憶装置のかかる起動時やデータ読み書き時の動作の概要は次のとおりである。
【0003】計算機と同時に起動,つまり電源が投入されたディスク記憶装置は、まずその電子回路を自己診断した後に直ちにスピンドルモータを駆動してディスクを回転起動し、その回転数が正規の値に整定したことを確かめる。これで読み書き動作自体は開始できるようになるが、計算機と組み合わせた時にそれから指定された内容が機種や装置ごとの設定データとしてディスク面内に永久記憶されていて、これを読み込まないと実際には動作ができないのでこの設定データを装置の内蔵プロセッサに読み取った上で準備完了の旨を計算機に報告する。一方、計算機側では電源投入後そのROMからBIOSないし基本IOシステムを読み取りかつ自己診断を済ませた上で上述の準備完了報告を待機しており、その到来後直ちにディスク記憶装置にアクセスして前述のOS等の基本プログラムをそれから読み取って装荷し、これで計算機とディスク記憶装置の起動が完了する。
【0004】データの読み書き時にはまず計算機側からその指令が与えられるが、ディスク記憶装置はその記憶しているデータないしファイルごとにそのディスク内の先頭アドレス等を示すいわゆるディレクトリ情報をディスクの特定領域内に記憶しているので、読み書き指令を受けたときまずこの特定領域から指定データに関するディレクトリ情報を読み取った上で、ディスク面内のそれが示すアドレスをもつ領域に対して指定データの読み書き動作を行なう。なお、データ読み取りの場合にはディレクトリ情報を書き換える必要はないが、データ書き込みであってかつそれに関するディレクトリ情報が以前とは変わって来る場合にはその書き換えを行なう。もちろん、新しいデータを書き込む場合にはそれに関するディレクトリ情報を特定領域内に書き加えるようにする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ディスク記憶装置を上述のような要領で起動するには従来からかなり時間が掛かるので起動時間の短縮が要請されているほか、その後にデータを読み書きする際にもそのつど指令を受けてから動作が完了するまでの計算機から見たいわゆるアクセスタイムを一層短縮する要求が強まって来ている。
【0006】ディスク記憶装置の起動時間としては長い場合には10秒程度が必要であるが、とくに電源に電池を用いその寿命を極力延ばすため電源をかなり頻繁に入り切りする例えばノート形やラップトップ形の計算機では起動のつどこれだけの時間がむだになるので半分以下に短縮することが要請されている。この要求に沿うには自己診断時間やディスクの回転の立ち上げ時間を短縮するのが有効ではあるが、それだけでは起動時間の半減は困難なのが実情である。
【0007】データの読み書きについては、その回数がもちろん起動の回数よりずっと多いのでそのつど必要なアクセスタイムの一層の短縮に対する要求が強く、これにはヘッドの操作系や位置決め系の性能を高めてヘッドを目的トラックまで移動させかつその上に静定させるまでの時間を短縮するのが有効であるが、この方策にもおのずから限界があって数%程度の短縮は可能でも10%以上ないし数十%程度の短縮は非常に困難なのが実情である。
【0008】かかる現状に鑑み、本発明はホストの計算機側から見たディスク記憶装置側のむだ時間の大部分を占めるその起動時間やデータ読み書き時のアクセスタイムを短縮することを目的とする。」

<引用文献記載事項3-2>
「【0015】図1(a) に示すディスク記憶装置40の構成をまず説明する。図の左上部に示すディスク1はスピンドルモータ2により定速駆動され、その面内にサーボ情報を含む参照情報RIが周方向に分布して書き込まれ、それらの相互間にトラックTがフォーマッティング時に設定される。読み書き用ヘッド3はアクチュエータ4によってディスク1上の径方向位置が操作され、アクチュエータ4に付随して制御プロセッサ20から制御指令CDを受ける駆動回路4aが設けられている。スピンドルモータ2の駆動回路2aはクロックパルスCPを受け、スピンドルモータ2がそれで指定された回転状態になったとき起動完了信号SCを制御プロセッサ20に与える。なお、制御プロセッサ20はスピンドルモータ2の起動やヘッド3の位置制御等のためにディスク記憶装置40に組み込まれているものである。」

<引用文献記載事項3-3>
「【0022】一方、ディスク記憶装置40側では最初のステップS41で上と同様な自己診断を済ませた後、ステップS42でディスク1を起動しかつステップS43で起動完了を待つ動作と, ステップS44で設定データPDを読み込む動作とを並行して進める。図1(a) からわかるようにステップS42およびS43の動作は制御プロセッサ20がスピンドルモータ2の駆動回路2aとともに進め、ステップS44の動作ではデータプロセッサ10が不揮発性メモリ30から設定データPDを読み込むが、後者の動作の方が前者より短時間内に済むので、駆動回路2aから起動完了信号SCが発せられたとき起動完了の状態となり直ちに準備完了報告を計算機50に出力できる。これを受けた計算機50の動作はステップS53からステップS54に移り、例えばイニシャライジングプログラムやDOSプログラム等の基本プログラムOSをディスク記憶装置40から読み込んで装荷することにより計算機50の起動が完了する。」


<引用文献4>
特開平8-137622号公報(平成8年5月31日出願公開。)

<引用文献記載事項4-1>
「【0011】したがって、従来ディスク・メディアに書き込んで保存していた部分、例えば起動プログラム或いはオペレーティングシステム(以下、OSと称する)等を不揮発性メモリに書き込むことで、従来問題となっていたディスク装置における機械的なトラブルに起因する誤書き込みやデータ破壊から、システムにとって重要な情報(システムプログラム)を保護することが可能となる。これに対し従来は、ディスク・メディアが全ての記録領域として割り当てられていたため、メディア上の異常等により重要な情報が失われる虞があった。
【0012】しかも、上記のように、システム起動時に毎回同じ記録領域に対して読み出し命令が発行されるようなシステムプログラムの部分(起動プログラム)を不揮発性メモリに割り当てることで、該当アドレスの読み出し処理が、従来のディスク・メディアからの読み出しよりも高速となる。」


<引用文献5>
特開2000-285590号公報(平成12年10月13日出願公開。)

<引用文献記載事項5-1>
「【0043】ここで例えば記録の動作モードより再生の動作モードに動作を切り換えたような場合、電源が立ち上げられた後の初めの再生等にあっては、否定結果が得られ、ハードディスク制御回路6は、ステップSP24からステップSP25に移る。ここでハードディスク制御回路6は、ハードディスク3が記録再生可能な定常状態の回転速度に立ち上がったか否か判断する。
【0044】ここで否定結果が得られると、ハードディスク制御回路6は、ステップSP25を繰り返し、ハードディスク3の回転速度が定常の回転速度に立ち上がるのを待ち受ける。これに対してハードディスク3の回転速度が定常の回転速度に立ち上がると、ハードディスク制御回路6は、ステップSP26に移り、システムエントリーエリアの記録に従って対応するAVデータの読み出しを開始する。」

<引用文献記載事項5-2>
「【0049】すなわちこのようにして先読みのデータをバッファ5に保持した状態で、再生の開始の指示が入力されると、ハードディスク制御回路6は、ステップSP24において肯定結果が得られ、ステップSP24からステップSP33に移る。ここでハードディスク制御回路6は、バッファメモリ5に保持してなる先読みしたAVデータの出力を開始した後、ステップSP34に移り、ハードディスク3が記録再生可能な定常状態の回転速度に立ち上がったか否か判断する。
【0050】ここで否定結果が得られると、ハードディスク制御回路6は、ステップSP34を繰り返し、ハードディスク3の回転速度が定常の回転速度に立ち上がるのを待ち受ける。これに対してハードディスク3の回転速度が定常の回転速度に立ち上がると、ハードディスク制御回路6は、ステップSP35に移り、システムエントリーエリアの記録に従って対応するAVデータの読み出しを開始した後、ステップSP28に移る。なおこの場合、ハードディスク装置1では、読み出しを開始するまでの間、バッファメモリ5に保持された先読みしたAVデータがAV機器2に送出されることにより、ハードディスク制御回路6は、このステップSP35において、この先読みの完了したクラスタに続くクラスタをFATエリアより検出し、この検出したクラスタより再生を開始するようにサーボ回路7の動作を制御することになる。」

<引用文献記載事項5-3>
「【0028】サーボ回路7は、ハードディスク制御回路6の制御によりモータ(M)8を駆動し、これによりハードディスク3を所定の回転速度により回転駆動する。またサーボ回路7は、同様にしてモータ(M)9を駆動することにより磁気ヘッドをシークさせ、さらにトラッキング制御する。」


4.引用発明の認定

(1)引用文献1には上記引用文献記載事項1-1の通りの「単一のドライブ番号が割り当てられ、そのドライブ番号によって指定される不揮発性記憶装置において、
前記不揮発性記憶装置の全記憶領域内の第1記憶領域が割り当てられ、電気的にデータの消去および書き込みが可能な不揮発性半導体記憶装置から構成される半導体ディスク装置と、
前記不揮発性記憶装置の全記憶領域内における前記第1記憶領域以外の他の第2記憶領域が割り当てられた磁気ディスク装置とを具備し、
単一のドライブ番号で前記第1記憶領域と前記第2記憶領域を選択的にアクセスできるように構成されていることを特徴とする不揮発性記憶装置。」が記載されている。
そして、その発明の実施の形態として、上記引用文献記載事項1-5?1-9等に、前記「磁気ディスク装置」を「ハードディスクドライブ」とし、前記「不揮発性半導体記憶装置」を「フラッシュメモリー」としたものが記載されている。
従って、引用文献1には「単一のドライブ番号が割り当てられ、そのドライブ番号によって指定される不揮発性記憶装置において、
前記不揮発性記憶装置の全記憶領域内の第1記憶領域が割り当てられ、電気的にデータの消去および書き込みが可能なフラッシュメモリーから構成される半導体ディスク装置と、
前記不揮発性記憶装置の全記憶領域内における前記第1記憶領域以外の他の第2記憶領域が割り当てられたハードディスクドライブとを具備し、
単一のドライブ番号で前記第1記憶領域と前記第2記憶領域を選択的にアクセスできるように構成されている」「不揮発性記憶装置」が記載されていると言える。

(2)さらに、引用文献1には上記引用文献記載事項1-2記載の通り、前記「不揮発性記憶装置」を「前記第1記憶領域は、あるプログラムを構成するファイル群の中でそのプログラム起動時に使用されるファイルの格納に使用され、そのファイル以外の他のファイルの格納のために前記第2記憶領域が使用され」るものとすることが記載されている。
また、上記引用文献記載事項1-8には、当該「プログラム起動時に使用されるファイル」が「プログラム起動時に使用される実行ファイル」である事も示されている。
さらに、上記引用文献記載事項1-9には、「exe」を拡張子とするファイルが「ハードディスク領域」に記憶されることも記載されており、このことから前記「そのファイル以外の他のファイル」も「実行ファイル」である事も示されている。
従って、引用文献1には前記「不揮発性記憶装置」を「前記第1記憶領域は、あるプログラムを構成するファイル群の中でそのプログラム起動時に使用される実行ファイルの格納に使用され、そのファイル以外の他の実行ファイルの格納のために前記第2記憶領域が使用される」ものとすることも記載されている。

(3)上記引用文献記載事項1-7の記載等から、前記「不揮発性記憶装置」は、前記ハードディスクを制御する「ハードディスクコントローラ」と前記フラッシュメモリを制御する「フラッシュメモリコントローラ」とこれらの「双方を統合制御する」「ハイブリッドコントローラ」とを有している。

(4)さらに、上記引用文献記載事項1-3、1-5、1-10等からみて、前記「不揮発性記憶装置」は、「コンピュータシステム」の「2次記憶」として用いられるものであるから、引用文献1には前記「不揮発性記憶装置」を「2次記憶」として用いる「コンピュータシステム」が記載されていると言える。

(5)よって、引用文献1には、下記の引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「単一のドライブ番号が割り当てられ、そのドライブ番号によって指定される不揮発性記憶装置において、
前記不揮発性記憶装置の全記憶領域内の第1記憶領域が割り当てられ、電気的にデータの消去および書き込みが可能なフラッシュメモリーから構成される半導体ディスク装置と、
前記不揮発性記憶装置の全記憶領域内における前記第1記憶領域以外の他の第2記憶領域が割り当てられたハードディスクドライブとを具備し、
単一のドライブ番号で前記第1記憶領域と前記第2記憶領域を選択的にアクセスできるように構成されている不揮発性記憶装置であって、
前記第1記憶領域は、あるプログラムを構成するファイル群の中でそのプログラム起動時に使用される実行ファイルの格納に使用され、そのファイル以外の他の実行ファイルの格納のために前記第2記憶領域が使用されるものであり、
前記ハードディスクを制御するハードディスクコントローラと、前記フラッシュメモリを制御するフラッシュメモリコントローラと、これらの双方を統合制御するハイブリッドコントローラを有する不揮発性記憶装置
を、2次記憶として用いたコンピュータシステム。」


5.対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明と本願発明とはともに「コンピュータシステム」で有る点で一致する。

(2)引用発明における「不揮発性記憶装置」は、本願発明における「ハードディスクドライブ」に対応付けられるものであるところ、前者は「ハードディスクドライブ」のみならず「フラッシュメモリー」等をも具備している点で後者との間に一応の相違が認められるものの、後者も「ディスク」のみならず「フラッシュメモリー」をも含めて「ハードディスクドライブ」と称しているものであるから、該一応の相違は単に表現上の相違に過ぎないものであり、両者は本願発明で言うところの「ハードディスクドライブ」である点で一致すると言える。

(3)一般的に、コンピュータシステムは、メインメモリーを有し該メインメモリーに転送されたプログラムをCPUが実行すると言う構成を採るのが普通である(必要があれば特開平9-146774号公報(平成9年6月6日出願公開。特に【0004】の「図5に示すように、従来のパーソナルコンピュータシステムの起動時に、まずハードディスクHDD3aから起動用OSなどのシステムプログラムがメインメモリ2aにロードされ、その後CPU1aによって、メインメモリ2aにロードされたシステムプログラムが実行され、システムが起動される。」との記載。)や特開平4-299425号公報(平成4年10月22日出願公開。特に段落【0004】の「中央処理部31上で動作するプログラムはIPLローダー33によりメインメモリ34にロードされる。即ち、中央処理部31内のIPLローダー33はロードモジュールファイル36内のロードモジュールをロードする際、コンフィグファイル37を参照し、ロードモジュールファイル36中のロードモジュールの内、コンフィグファイル37中にロードコマンドと対になって格納されているロードモジュール名を有するロードモジュールをメインメモリ34にロードする。」との記載。)参照。)から、引用発明における「実行ファイル」も、本願発明における「起動プログラム」や「必要なプログラム」と同様に、メインメモリーに転送されるように制御されることは明らかである。
してみると、引用発明は「メインメモリ」を有しており、引用発明の「不揮発性記憶装置」は該「メインメモリ」と「通信を行う」ものであることは明らかである。
従って、引用発明も本願発明と同様に「メインメモリと」「前記メインメモリと通信を行うハードディスクドライブと」を含んでいると言える。

(4)引用発明における「あるプログラムを構成するファイル群」は、本願発明における「OS」に対応付けられるものであるところ、両者は「ソフトウエア」と言える点で共通する。

(5)引用発明における「ハードディスクドライブ」内に「ディスク」が設けられていることは明らかであり、該「ディスク」は、本願発明における「ディスク」に対応付けられるものであるところ、引用発明における「ファイル群」のうち「他の実行ファイル」は、「磁気ディスク装置」すなわち「ハードディスクドライブ」に割り当てられた「第2記憶領域」に、「格納」されるのであるから、引用発明における「ハードディスクドライブ」内の「ディスク」と、本願発明における「ディスク」とは、「前記コンピュータシステムの」ソフトウエア「を保存するディスク」と言える点で共通する。

(6)「ハードディスクドライブ」には、須くディスクを駆動する駆動モータが備えられるものである(必要があれば、引用文献3(特に上記引用文献記載事項3-2、3-3の「スピンドルモータ2」、上記引用文献記載事項5-3の「モータ(M)8」等参照。)から、引用発明における「不揮発性記憶装置」も、本願発明の「ハードディスクドライブ」と同様に、「前記ディスクを駆動する駆動モーター」を含んでいる。

(7)引用発明における「フラッシュメモリー」は本願発明における「フラッシュメモリー」に対応付けられるものであるところ、前者に割り当てられた「第1記憶領域」は「あるプログラムを構成するファイル群の中でそのプログラム起動時に使用される実行ファイルの格納に使用され」るのであるから、両者は「前記」ソフトウエア「の起動プログラムを保存するフラッシュメモリー」と言える点で共通する。

(8)引用発明における「ハードディスクコントローラ」、「フラッシュメモリコントローラ」および「ハイブリッドコントローラ」は本願発明における「制御部」に対応付けられるものであるところ、上記(3)記載のように、引用発明における「実行ファイル」も、本願発明における「起動プログラム」や「必要なプログラム」と同様に、メインメモリーに転送されるように制御されることは明らかであり、「ハードディスクコントローラ」「フラッシュメモリコントローラ」および「ハイブリッドコントローラ」がこの制御を担っていることは明らかである。
してみると、引用発明における「ハードディスクコントローラ」「フラッシュメモリコントローラ」および「ハイブリッドコントローラ」と、本願発明における「制御部」とは、「前記フラッシュメモリーから前記」ソフトウエア「の起動プログラムを読み出して前記メインメモリにローディングし、」「前記ディスクから必要なプログラムを読み出して前記メインメモリにローディングする制御部」と言える点で共通する。

(9)よって、本願発明は、下記の一致点で引用発明と一致し、下記の相違点で引用発明と相違する。

<一致点>
「コンピュータシステムにおいて、
メインメモリと;
前記メインメモリと通信を行うハードディスクドライブと;
を含み、
前記ハードディスクドライブは、
前記コンピュータシステムの」ソフトウエア「を保存するディスクと;
前記ディスクを駆動する駆動モーターと;
前記」ソフトウエア「の起動プログラムを保存するフラッシュメモリーと;
「前記フラッシュメモリーから前記」ソフトウエア「の起動プログラムを読み出して前記メインメモリにローディングし、」「前記ディスクから必要なプログラムを読み出して前記メインメモリにローディングする制御部と;
を含むことを特徴とする、コンピュータシステム」

<相違点1>
本願発明においては、格納されるソフトウエアが「OS」である点。
これに対し、引用文献1においては、引用文献記載事項1-4で、「コンピュータの起動時」は「フラッシュメモリ6から行うのが速度の面からは望ましい」旨記載され、引用文献記載事項1-9で、OS起動時に読み込まれるファイルであるところの「config.sys」等をフラッシュメモリ領域に記憶する旨の記載があるものの、格納されるファイル群が「OS」であることを直接的に明示する記載はない。

<相違点2>
本願発明においては、「前記駆動モーターが定常速度になる前は」前記フラッシュメモリーから前記OSの起動プログラムを読み出している点。
これに対し、引用文献1には、上記引用文献記載事項1-6に「データ読み出し速度の早いフラッシュメモリ6にはそのプログラム起動時に使用されるファイルが格納され、そのファイル以外の他のファイルについては記憶容量の大きいハードデイスクドライブ5に格納され」、「これにより、そのプログラムの起動を高速に行うことが可能となる」旨の記載はあるものの、前記「プログラム起動時に使用される実行ファイル」の読み出しが「駆動モーターが定常速度になる前」である旨の直接的な明示は引用文献1には無い。

<相違点3>
本願発明においては「前記駆動モーターが定常速度になったか否かを判断し、前記駆動モーターが定常速度になった後は」前記ディスクから必要なプログラムを読み出している点。
これに対し、引用文献1には「前記駆動モーターが定常速度になったか否かを判断」することは記載されておらず、また「他の実行ファイル」の読み出しが「前記駆動モーターが定常速度になった後」になされる旨の直接的な明示も無い。


6.判断
以下に、上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
OSを構成するファイル群を起動時にロードすることは技術常識に他ならず、該OSの起動の高速化は引用文献2(特に上記引用文献記載事項2-1等)、引用文献3(特に上記引用文献記載事項2-1等)引用文献4(特に上記引用文献記載事項3-1等)等を挙げるまでもなく、当業者にとっては周知の課題であるから、引用発明における「ファイル群」を「OS」を構成するファイル群として、その起動の高速化を図ることは、当業者であれば当然のごとく着想する事項に過ぎない。

(2)相違点2について
引用発明で採用されるフラッシュメモリーの如き、ディスクとは別に設けられた記憶装置からのデータの読み出しが、ディスクの回転に関わらず可能であることは、当業者には自明な事項であり(必要があれば引用文献2(特に上記引用文献記載事項2-2)、特開平9-128164号公報(平成9年5月16日出願公開。特に段落【0025】【0026】の「ストアメモリ8にイニシャルプログラムデータが格納された後に、ゲーム機の電源が一旦オフされて再びオンされたりリセットされた場合、トレー3を開閉せずにそのままの状態であれば、図2に示すように、キャッシュメモリ7とストアメモリ8との切替スイッチ6がシステムコントロール部1によりストアメモリ8側に切り替わる。その際、スイッチ5は開いたままである。そして、ストアメモリ8に記憶されていたイニシャルプログラムデータがストアメモリ8からゲーム機本体9に転送される。そのストアメモリ8から転送されたイニシャルプログラムデータに基づいてメニュー画面の表示が行われる。」「メニュー画面の表示処理と並行して、システムコントロール部1のメカ制御マイクロコンピュータ10により、ゲーム機のピックアップの移動、フォーカスサーチ及びディスクの回転という一連の動作が行われる。従って、電源の再投入またはリセット時に瞬時にゲーム機が立ち上がり、メニュー画面が表示されてゲームの実行が可能な状態となる。」との記載)等参照。)、引用発明においても、「プログラムの起動を高速に行う」ため「そのプログラム起動時に使用される実行ファイル」の読み出しをハードディスクの回転数に関わらず読み出すようにすることも、当業者であれば当然の如く採用する事項であり、引用発明を「前記駆動モーターが定常速度になる前は」前記フラッシュメモリーから前記OSの起動プログラムを読み出すようにすることも、引用発明における「ファイル群」をコンピュータの起動時に起動されるソフトウェアであるところのOSとした際には、当然に採用される技術常識的な事項に過ぎないものである。

(3)相違点3について
ディスクからの読み出しが、駆動モーターが定常速度になった後でなければならないことは、当業者の技術常識に他ならず、そのために該駆動モーターが定常速度になったか否かを判断することも適宜に採用されている事項である(必要があれば引用文献3(特に上記引例文献記載事項3-2、3-3)、引用文献5(特に上記引例文献記載事項5-1、5-2)参照)から、引用発明においても「前記駆動モーターが定常速度になったか否かを判断し、前記駆動モーターが定常速度になった後は」前記ディスクから必要なプログラムを読み出すようにすることも適宜に採用される技術常識的な事項に過ぎない。

(4)まとめ
以上より、本願発明の構成は引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
また、本願発明の効果は、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。

よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


7.意見書の主張について

(1)なお、請求人は、上記平成21年12月28日付け意見書(以下単に「意見書」と記す。)において
「3-2.拒絶理由2について
審判官殿は、拒絶理由通知書において相違点4として、「ハードディスクの読み出しが「駆動モーターが定常速度になった後」でなければならないことは、当業者の技術常識に他ならず、引用文献1記載のものにおいても「前記駆動モーターが定常速度になった後に」前記ディスクに保存されたプログラムを読み出すようにすることは、必然的に採用される事項に過ぎない。」と指摘されました。
確かに、ハードディスクの読み出しが「駆動モーターが定常速度になった後」でなければならないことは、当業者の技術常識です。
しかし、本願発明は、「駆動モーターが定常速度になった後」は、ハードディスクからもフラッシュメモリからもプログラムを読み出せるという状況において、フラッシュメモリでなくディスクから読み出しを行うものです。すなわち、本願発明は、フラッシュメモリからの読み出しを、駆動モーターが定常速度になったことをトリガにしてディスクからの読み出しに切り替えるものです。
このように、「駆動モーターが定常速度になった後」はフラッシュメモリでなくディスクから読み出しを行うことは、フラッシュメモリからの読み出しを継続する構成も採用し得る以上、必然的に採用される事項でないと思料いたします。
そこで、本意見書と同日付提出の手続補正書において、「駆動モーターが定常速度になった後」はフラッシュメモリでなくディスクから読み出しを行うことを明確にする補正を行いました。具体的には、駆動モーターが定常速度になったか否かを制御部によって判断し、制御部によって駆動モーターが定常速度になったと判断された後は、制御部によって、ディスクから必要なプログラムを読み出してメインメモリにローディングする、という構成を各独立項に追加いたしました。
その結果、補正後の本願発明と引用発明との差異は明確となったため、当該拒絶理由2は解消したものと確信いたします。」
と主張している。

(2)しかしながら、本願発明は、該意見書と同日付けで提出された手続補正書により、該補正前の請求項2に記載されていた「前記コンピュータシステムのOSと前記OSの起動プログラムを保存するディスク」を「前記コンピュータシステムのOSを保存するディスク」と補正することで、「OSの起動プログラム」が「ディスク」に記憶される旨の限定のないものとなり、しかも、本願発明の詳細な説明を参酌しても、「駆動モーターが定常速度になった後」の動作に関しては、段落【0007】【0009】【0028】に「必要なプログラム」が読み出される旨の記載があるだけで、この「必要なプログラム」が「OSの起動プログラム」である旨の記載も示唆もないのであるから、本願発明を請求人主張の如く『「駆動モーターが定常速度になった後」は、ハードディスクからもフラッシュメモリからもプログラムを読み出せるという状況において、フラッシュメモリでなくディスクから読み出しを行うもの』と認定することはできない。
従って、上記意見書における『本願発明は、「駆動モーターが定常速度になった後」は、ハードディスクからもフラッシュメモリからもプログラムを読み出せるという状況において、フラッシュメモリでなくディスクから読み出しを行うものです。すなわち、本願発明は、フラッシュメモリからの読み出しを、駆動モーターが定常速度になったことをトリガにしてディスクからの読み出しに切り替えるものです。』との説明は、本願の特許請求の範囲や明細書の記載に基づくものではなく失当である。

(3)さらに、本願明細書の段落【0024】?【0029】及び【図3】の説明によれば、本願発明の動作フローは、「フラッシュメモリに保存されたブーティングシステムをシステム本体に移送しメインメモリに入れる」ステップ50の後に、すなわち、フラッシュメモリからのプログラムの読み出しが完了した後に、「スピンドルモータは標準回転速度に達したか」の判断をするステップS60に移行し、該ステップS60においてスピンドルモータが標準回転速度に達していると判断された場合には「プログラムをディスクから読み出しシステム本体に移送する」のステップS70に移行しているのであるから、ステップS50の実行中にスピンドルモータが標準回転速度に達したらステップS50が中断され、即ステップS70に移行するようなものではなく、スピンドルモータが標準回転速度に達したか否かにかかわらず、ステップS50の実行がなされるものに他ならない。
してみると、本願特許請求の範囲における「前記駆動モーターが定常速度になる前は、前記フラッシュメモリーから前記OSの起動プログラムを読み出して前記メインメモリにローディングし、前記駆動モーターが定常速度になったか否かを判断し、前記駆動モーターが定常速度になった後は、前記ディスクから必要なプログラムを読み出して前記メインメモリにローディングする」との発明を特定するために必要な事項が、「駆動モーターが定常速度になった後」でも「フラッシュメモリからの読み出しを継続する構成」を排除するものと解釈することはできない。
従って、上記意見書における『このように、「駆動モーターが定常速度になった後」はフラッシュメモリでなくディスクから読み出しを行うことは、フラッシュメモリからの読み出しを継続する構成も採用し得る以上、必然的に採用される事項でないと思料いたします。』との主張も、『本意見書と同日付提出の手続補正書において、「駆動モーターが定常速度になった後」はフラッシュメモリでなくディスクから読み出しを行うことを明確にする補正を行いました。具体的には、駆動モーターが定常速度になったか否かを制御部によって判断し、制御部によって駆動モーターが定常速度になったと判断された後は、制御部によって、ディスクから必要なプログラムを読み出してメインメモリにローディングする、という構成を各独立項に追加いたしました。』との説明も、引用発明に対する本願発明の進歩性を認めるに足る根拠となり得るものではない。

(4)そして、上記(2)(3)記載の通りであるから、上記意見書における「補正後の本願発明と引用発明との差異は明確となったため、当該拒絶理由2は解消した」との請求人の主張も到底認めることのできないものである。


8.むすび
以上のとおり、本願請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項についての検討や他の特許要件についての検討をするまでもなく、本願は特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-01 
結審通知日 2010-02-09 
審決日 2010-02-22 
出願番号 特願2006-163994(P2006-163994)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 漆原 孝治石川 正二林 毅  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 石田 信行
冨吉 伸弥
発明の名称 コンピュータシステムの起動方法、コンピュータシステムおよびハードディスクドライブ  
代理人 アイ・ピー・ディー国際特許業務法人  
代理人 亀谷 美明  
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