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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H03H
管理番号 1237255
審判番号 不服2008-18967  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-24 
確定日 2011-05-20 
事件の表示 特願2002-306338「表面波装置及び通信機装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月 6日出願公開、特開2003-163573〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成14年10月21日の特許出願であって、特願平11-248903号(平成11年9月2日出願)の分割出願として出願されたものであり、平成20年1月11日付けで拒絶理由が通知され、同年4月2日付けで手続補正書が提出され、同年5月29日付けで拒絶査定され、これに対して同年7月24日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年8月19日付けで手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成20年8月19日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という)。

「【請求項1】
オイラー角が(0°,125°?146°,0°±5°)であるLiTaO_(3) 基板と、前記LiTaO_(3) 基板上に形成されたIDTよりなり、前記IDTは、Auを主成分とする電極材料からなり、かつ規格化膜厚H/λ=0.001?0.05にて形成されているとともに、前記LiTaO_(3) 基板のカット角と前記IDTの規格化膜厚との関係が、さらに前記IDTが短絡状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚と前記IDTが開放状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚との間の領域であることによりSH波を励振するものであることを特徴とする表面波装置。」


3.本願発明が、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-167936号公報(以下、「引用例1」という)に記載された発明であること(特許法第29条第1項第3号該当性)について

(1)引用例1
引用例1には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0034】図12は、図7(A),(B)のフィルタにおいて、様々なカット角で形成されたLiTaO_(3) のY回転-X伝搬基板11上に形成された櫛形電極の厚さを変化させた場合の伝搬損失を計算した結果を示す。図12の計算においても、先の計算と同様に、Kovacs 他の結晶定数を使った。
【0035】図12よりわかるように、カット角が38°以下の場合、損失は電極厚の増大とともに指数関数的に単調に増加するが、カット角が40°を越えると損失が電極の厚さと共に減少を始め、特性曲線に極小点が現れるのがわかる。極小点をを過ぎると損失は再び増大に転じる。特に、基板11のカット角を、先に説明した好ましい角度である40°から46°の範囲に設定した場合、このような極小点は、波長に対する電極の厚さが3%以上のところに出現する。換言すると、本実施例のフィルタにおいて、電極を、波長で規格化した厚さが3%以上になるように形成するのが好ましい。一方、電極の厚さが過大になると、電極のエッチングによるパターニングが困難になったり、基板中の音速が電極の膜厚により敏感に変化するようになるため、電極は、厚さが波長に対して15%以内になるように形成するのが好ましい。図12より、AlあるいはAl-1%Cu合金を使った電極の場合、電極の厚さが波長の15%を越えると、いずれのカット角においても伝搬損失が急増することがわかるが、これは電極からのバルク波の放射が優勢になることを示している。特にカット角が40?46°の範囲では、電極の厚さは0.07?0.15の範囲が、またカット角が40から44°の範囲では、電極の厚さは0.05?0.10の範囲であるのが好ましい。」

(イ)「【0038】以上の各実施例において、電極組成はAl-1%Cuとしたが、純粋なAlでも同様な関係が成立する。また、LiTaO_(3) 基板上に電極を他の電極材料、例えばAuで形成する場合には、電極の厚さは波長の0.4?2.1%の範囲が、さらにLiNbO_(3) 基板上にAuで電極を形成する場合には、電極の厚さは波長の0.5?1.7%の範囲に設定するのが好ましい。また、LiTaO_(3) 基板上にCuで電極を形成する場合には、波長の0.9?4.5%の範囲に設定するのが、さらにLiNbO_(3) 基板上にCuで電極を形成する場合には、波長の1.2?3.6%の範囲に設定するのが好ましい。」

(ウ)「【0041】このような構成の弾性表面波フィルタでも、基板にLiTaO_(3) を使った場合、回転角θを38°以上46°以下、より好ましくは40°以上46°以下、最も好ましくは約42°に設定することにより、また基板にLiNbO_(3) を使った場合、回転角θを66°以上74°以下、より好ましくは約68°に設定することにより、基板上の電極の付加質量効果が顕著になるような周波数帯域で使った場合にも伝搬損失を最小化することが可能になる。」

よって、上記(ア)乃至(ウ)及び関連図面から、引用例1には、
「カット角が40?46°の範囲でY回転-X伝搬のLiTaO_(3) 基板と、前記LiTaO_(3) 基板上に形成された櫛形電極よりなり、前記櫛形電極は、Auによる電極材料からなり、かつ電極の厚さは波長の0.4?2.1%の範囲で形成して伝搬損失を最小化する弾性表面波装置。」
の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されている。

(2)対比・判断
本願発明と引用発明1を対比すると、以下のことがいえる。

(2-1)引用発明1の「櫛形電極」、「弾性表面波装置」、「Auによる電極材料」は、本願発明の「IDT」、「表面波装置」、「Auを主成分とする電極材料」に相当している。

(2-2)カット角θのY回転-X伝搬のLiTaO_(3) 基板は(0°,θ+90°,0°)とオイラー角表示されるので、引用発明1のLiTaO_(3) 基板は(0°,130°?136°,0°)とオイラー角表示され、また、引用発明1の電極の厚さは「波長の0.4?2.1%の範囲」であるから、規格化膜厚で表示すると0.004?0.021の範囲となる。

したがって、引用発明1のLiTaO_(3) 基板のカット角の範囲は、本願発明のLiTaO_(3) 基板のカット角の範囲内のものであり、引用発明1の櫛形電極(IDT)の規格化膜厚も、本願発明のIDTの規格化膜厚の範囲内のものである。

また、以下の事情を勘案すると、引用発明1は、それが具現化された場合における具体的な物として、「LiTaO_(3) 基板のカット角と櫛形電極(IDT)の規格化膜厚との関係が、前記櫛形電極(IDT)が短絡状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚と前記櫛形電極(IDT)が開放状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚との間の領域であることによりSH波を励振するもの」を当然に含んでいると認められる。

a.平成20年4月2日付け意見書において請求人が本願発明と引用発明1との比較として示した【参考図1】にも示されているように、引用発明1のLiTaO_(3) 基板のカット角の範囲と規格化膜厚の範囲とから規定される領域は、上記「LiTaO_(3) 基板のカット角と櫛形電極(IDT)の規格化膜厚との関係が、前記櫛形電極(IDT)が短絡状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚と前記櫛形電極(IDT)が開放状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚との間の領域」を、その中心的領域として含んでいる。

b.引用例1の上記(ア)の記載事項から明らかなように、引用発明1においても、伝搬損失が極小点を有するようにカット角と電極の厚さが決定されていることが想定されており、その指向するところは本願発明と同じであるから、そのようにして決定されるカット角と電極の厚さの関係を示す点は、当然に、上記【参考図1】の斜線が施された領域にも存在すると考えられる。

c.上記a.、b.の事情は、引用発明1が、それが具現化された場合における具体的な物として、「本願請求項1に規定される範囲の物理的構成(基板の材質、カット角、電極の材質、規格化膜厚)を具備し、伝搬損失が小さい波を励振する表面波装置」を含んでいることを示しているが、そこで励振される「伝搬損失が小さい波」は、本願発明と同一の物理的構成を有する装置において励振される波であって、本願発明でいう「SH波」と同様に伝搬損失が小さい波であるから、当該「SH波」に相当するものと考えられる。

(3)小括1
よって、本願発明は、引用例1に記載された発明である。


4.本願発明が、平成20年1月11日付けの拒絶理由通知に引用された特開昭61-6919号公報(以下、「引用例2」という)に記載された発明であること(特許法第29条第1項第3号該当性)について

(1)引用例2
引用例2には、以下の事項が記載されている。

(エ)「第1図は本発明に係る端面反射形の圧電すべり波共振子に使用したタンタル酸リチウム(LiTaO_(3) )からなる圧電基板の切断面と弾性波の伝播方向をオイラー表示するためのオイラー角の定義を示す図である。
第一回転角φはZ軸を中心に、第二回転角θはX軸を中心に反時計方向を正として回転して切断面方位を表示し、第三回転角ψは回転後の基板内のX軸からの回転角で伝播方向を表わすもので、(φ、θ、ψ)として表示される。
使用したLiTaO_(3) 基板のオイラー角表示φ、θはそれぞれ0°,130°であり、一般には40°rot(回転)YLiTaO_(3) とも表現される。
第2図はこの40°rotYLiTaO_(3) 基板1を使用した本発明に係る端面反射形の圧電すべり波共振子を示す斜視図で、すだれ状電極体2によって表面すべり波が発生され、自由端面3,4で反射されて共振特性を得る。」(公報第2頁右下欄第12行?第3頁左上欄第9行)

(オ)「またすだれ状電極帯2eの形成は、基板1aの表面上に金接着用のニクロム(NiCr)2fを約500A程度、その上に金(Au)2gを約2500A程度の膜厚で蒸着形成し、その後フォトリソグラフィ技術でエッチングしてパターンニングされる。」(公報第3頁左下欄第10行?第14行)

(カ)「ここで使用した共振子は、基板1が40°rotYLiTaO_(3) で、該基板1の表面にすだれ状電極体2が形成され、且つ該すだれ状電極2は第2図に示す如きフィンガ長(フィンガの重なり長)W、フィンガピッチP、フィンガ本数N(両側のくし歯電極のフィンガ本数)がそれぞれ410μm,25.9μm,90本(フィンガ対数は45対)とした。
第6図から理解される通り、伝搬方向ψが1°±5°が使用可能で、1°?3°が良好であり、特に1°の時が最も高いQ値600が得られた。」(公報第3頁右下欄第4行?第13行)

よって、上記(エ)乃至(カ)及び関連図面から、引用例2には、
「オイラー角が(0°,130°,1°±5°)であるLiTaO_(3) 基板と、前記LiTaO_(3) 基板上に形成されたすだれ状電極体よりなり、前記すだれ状電極体は、ニクロム(NiCr)を約500A程度、その上に金(Au)を約2500A程度の膜厚で蒸着形成した電極材料からなり、かつフィンガピッチPを25.9μmとすることにより表面すべり波を励振する弾性波素子。」
の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されている。

(2)対比・判断
本願発明と引用発明2を対比すると、以下のことがいえる。

(2-1)引用発明2の「すだれ状電極体」、「表面すべり波」は、本願発明の「IDT」、「SH波」に相当している。
そして、本願明細書の段落【0015】には、「図1は本発明の第1の実施形態を示す表面波装置として挙げた表面波共振子の平面図である」と記載され、また、引用例2の上記(エ)には、「第2図には・・・本発明に係る端面反射形の圧電すべり波共振子を示す斜視図」と記載されているので、引用発明の「弾性波素子」は「表面波装置」と呼び得るものである。
また、引用発明の「すだれ状電極体」は、「ニクロム(NiCr)を約500A程度、その上に金(Au)を約2500A程度の膜厚で蒸着形成」されたものであるから、「Auを主成分とする電極材料からなり」と呼び得るものである。

(2-2)引用発明2のすだれ状電極体の厚さ(H)は、ニクロム(NiCr)の500Aに金(Au)の2500Aを加算した3000Aであるとされ、フィンガピッチ(P)は25.9μm、フィンガピッチ(P)と波長(λ)の関係(P=λ/2)から引用発明2の規格化膜厚を計算すると、規格化膜厚(H/λ)は0.0058となる。
そして、引用発明2のLiTaO_(3) 基板のオイラー角は(0°,130°,1°±5°)であるから、カット角130°で規格化膜厚0.0058の値を本願図面の【図9】及び【図10】に当てはめると、【図9】で規格化膜厚の値が0.0058となるAuのカット角は約128°であり、【図10】で規格化膜厚の値が0.0058となるAuのカット角は130°より大きな値となることから、該カット角130°で規格化膜厚0.0058の値は、本願発明でいう「さらに前記IDTが短絡状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚と前記IDTが開放状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚との間の領域」内となる。

(3)小括2
よって、本願発明は、引用例2に記載された発明でもある。


5.本願発明が、引用例1に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であること(特許法第29条第2項該当性)について

上記「3.」で述べたように、本願発明は引用例1に記載された発明であるというべきであるが、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるともいえるので、以下、その点について説明する。

(1)引用発明1
引用発明1は、上記「3.」の「(2)」で認定したとおりのものである。

(2)対比
本願発明と引用発明1を対比すると、上記「3.」の「(2)」の「(2-1)」、「(2-2)」で認定したとおりのことがいえるから、本願発明と引用発明1は、
「オイラー角が(0°,125°?146°,0°±5°)であるLiTaO_(3) 基板と、前記LiTaO_(3) 基板上に形成されたIDTよりなり、前記IDTは、Auを主成分とする電極材料からなり、かつ規格化膜厚H/λ=0.001?0.05にて形成されている表面波装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願発明の表面波装置は、「前記LiTaO_(3) 基板のカット角と前記IDTの規格化膜厚との関係が、さらに前記IDTが短絡状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚と前記IDTが開放状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚との間の領域であることによりSH波を励振するものである」という構成を有するものであるのに対し、引用発明1の表面波装置(弾性表面波装置)は、「前記LiTaO_(3) 基板のカット角と前記IDTの規格化膜厚との関係が、さらに前記IDTが短絡状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚と前記IDTが開放状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚との間の領域であることによりSH波を励振するものである」という構成を有するとは限らない(当該構成を有するものには限定されない)点。

(3)判断
以下の事情を勘案すると、引用発明1の表面波装置(弾性表面波装置)を、「前記LiTaO_(3) 基板のカット角と前記IDTの規格化膜厚との関係が、さらに前記IDTが短絡状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚と前記IDTが開放状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚との間の領域であることによりSH波を励振するものである」という構成を有するものとすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。

(3-1)上記「3.」の「(2)」でも述べたように、引用発明1のLiTaO_(3) 基板のカット角の範囲と規格化膜厚の範囲とから規定される領域は、「LiTaO_(3) 基板のカット角と櫛形電極(IDT)の規格化膜厚との関係が、前記櫛形電極(IDT)が短絡状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚と前記櫛形電極(IDT)が開放状態で伝搬損失0が実現できるオイラー角での規格化膜厚との間の領域」(以下、「領域A」という)を、その中心的領域として含んでおり、引用発明1において当該領域Aを選択することは、当該領域Aを選択することを妨げる事情がない限り、当業者が適宜選択し得ることというべきであるが、引用発明1に当該領域Aを選択することを妨げる事情は見当たらない。

(3-2)上記「3.」の「(2)」でも述べたように、引用発明1において、上記領域Aを選択した場合に励振される「伝搬損失が小さい波」は、本願発明でいう「SH波」に相当するものと考えられる。

(3-3)一般に、公知の発明に規定された領域の中から特定の領域を選択することで、公知の発明が有する効果とは異質な効果や、同質であるが際だって優れた効果が得られるといった場合には、いわゆる選択発明として進歩性が肯定される余地があるが、引用発明1中の上記領域Aを選択することで、引用発明1と異質な効果や、同質であるが際だって優れた効果が得られることの立証はなく、そのような効果が得られるとは認められない。

(4)小括3
よって、本願発明は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび
上記「3.」及び「4.」で説示したとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明であるとともに、引用例2に記載された発明でもあるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、上記「5.」で説示したとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によっても、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-02 
結審通知日 2011-03-01 
審決日 2011-03-16 
出願番号 特願2002-306338(P2002-306338)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H03H)
P 1 8・ 121- Z (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 和志藤井 浩  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 飯田 清司
池田 聡史
発明の名称 表面波装置及び通信機装置  
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