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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C05G
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C05G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C05G
管理番号 1237613
審判番号 不服2008-8730  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-09 
確定日 2011-05-18 
事件の表示 平成10年特許願第507626号「新規な硝酸化成作用禁止剤、および硝酸化成作用禁止剤を含有させたポリ酸を無機肥料の処理のために使用する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月12日国際公開、WO98/05607、平成12年11月21日国内公表、特表2000-515479〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は1997年8月6日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理 1996年8月6日 ドイツ(DE)〕を国際出願日とする出願であって、平成20年1月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年4月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後、平成22年3月19日付けで審尋を発し、これに対し、平成22年6月18日に回答書の提出がなされ、さらに、平成22年8月9日付けで審尋を発し、これに対し、平成22年11月9日に回答書の提出がなされたものである。

2.平成20年4月9日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年4月9日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成20年4月9日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の請求項3の「N-ヒドロキシメチル-3,4-ジメチルピラゾール、3,4-ジメチルピラゾールの燐酸付加塩、4-クロロ-3-メチルピラゾールの燐酸付加塩、または3,4-ジメチルピラゾールのヒドロクロリドを硝酸化成作用禁止剤として使用することを特徴とする方法。」という独立形式での記載に対応して、補正後の請求項2を「3,4-ジメチルピラゾールの燐酸付加塩、4-クロロ-3-メチルピラゾールの燐酸付加塩、またはこれらの二種類もしくはそれ以上の混合物を硝酸化成作用禁止剤として使用することを特徴とする方法。」という独立形式での記載に改める補正を含むものである。

(2)補正の適否
上記補正前の請求項3の記載に対応した補正後の請求項2についての補正は、補正前の請求項3において硝酸化成作用禁止剤の選択肢として記載されていた「N-ヒドロキシメチル-3,4-ジメチルピラゾール」と「3,4-ジメチルピラゾールのヒドロクロリド」の2つの化合物名を削除するとともに、「またはこれらの二種類もしくはそれ以上の混合物」という事項を発明特定事項として追加するものである。
そして、補正前の請求項3における「硝酸化成作用禁止剤」の選択肢は、「または」という接続詞によって並列的に列挙された「化合物」の各々のみからなり、「これらの二種類もしくはそれ以上の混合物」を「硝酸化成作用禁止剤」の選択肢とすることは、補正前の請求項3に含まれていなかったのに対して、補正後の請求項2における「硝酸化成作用禁止剤」の選択肢には、「これらの二種類もしくはそれ以上の混合物」が追加されている。
してみると、当該「これらの二種類もしくはそれ以上の混合物」を追加する補正は、補正前の請求項に記載された発明特定事項の減縮を目的とするものとはいえないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しない。
また、当該「これらの二種類もしくはそれ以上の混合物」を追加する補正は、同1号に掲げる「請求項の削除」、同3号に掲げる「誤記の訂正」、ないし同4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものにも該当しない。
そうしてみると、本件補正は、目的要件違反の補正を含むものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

(3)平成22年11月9日付けの回答書について
平成22年8月9日付けの審尋において、審尋事項(い)として、本願発明の「4-クロロ-3-メチルピラゾールホスファート」の選択肢についてはサポート要件を満たさず、独立特許要件を満たし得ないことを指摘し、審尋事項(う)として、本件補正が、目的要件及び独立特許要件を満たし得ないことを指摘したところ、審判請求人は、平成22年11月9日付けの回答書において、本願請求項2の内容を「審判時補正」の内容から平成22年6月18日付けの回答書の「再補正後」の内容に補正する提案に代えて、さらに「再々補正後」の内容に補正する提案をしている。しかしながら、本件補正後の請求項1及び3?8に係る発明も「4-クロロ-3-メチルピラゾールホスファート」を発明特定事項としており、上記回答書の釈明を参酌しても、本件補正が適法なものであるとの判断はできない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成20年4月9日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明は、特許法第184条の8第1項の規定により提出された平成11年1月29日付け補正書の翻訳文、平成16年7月14日付け及び平成19年11月20日付けの手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
そして、本願請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、「請求項1の方法に記載されたピラゾール化合物またはピラゾール化合物の付加塩を、液肥または液状肥料調剤の安定化のために使用する方法。」に関するものであって、平成19年11月20日付けの意見書においては、「尚、硝酸化成作用禁止剤として使用されるのは、ご指摘のように、ピラゾール化合物とその付加塩等であり、またその付加塩とも限りませんので、特許請求の範囲ではピラゾール化合物またはピラゾール化合物の付加塩と記載致しました。」との釈明がなされているので、本願発明は、実質的に次のとおりのものと認める。
「下記一般式


で表され、かつR^(1)が水素原子、ハロゲン原子またはC_(1-4)アルキル基を、R^(2)がC_(1-4)アルキル基を、R^(3)がHまたは基-CH_(2)OHをそれぞれ意味する場合の化合物またはその燐酸付加塩(R^(3)がHである場合)(ただし、4-クロロ-3-メチルピラゾール、4-フルオロ-3-メチルピラゾール、3-メチルピラゾールホスファート、1-ヒドロキシメチル-3-メチルピラゾールおよび3-メチルピラゾールを除く)、または3,4-ジメチルピラゾールのヒドロクロリドである、ピラゾール化合物またはピラゾール化合物の付加塩を、液肥または液状肥料調剤の安定化のために使用する方法。」

(2)原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
理由Iとして、『この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?10に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。』という理由、及び
理由IIとして、『この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?10に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。』という理由も含むものである。
そして、平成19年8月15日付けの拒絶理由通知書においては、補正前の請求項10に記載された発明が引用文献1及び7?9と同一である旨の指摘がなされ、ここで、当該補正前の請求項10は、平成19年11月20日付けの手続補正による補正後の請求項9に対応するところ、平成20年1月7日付けの拒絶査定の備考欄においては、
理由Iに関し、『引用文献1には本願の請求項1に記載された硝酸化成作用禁止剤と重複する化学構造を有する置換ピラゾールが、土壌中でアンモニア態窒素が亜硝酸態窒素に変化するのを抑制する顕著な作用を有する化合物であることが記載されており、当該化合物を硝化抑制の有効成分として、肥料及び液状担体とともに用いることができることも記載されているから、実質的に本願の請求項9に係る発明が記載されている。』との指摘がなされており、
理由IIに関し、「請求項1?10」について、『また、引用文献1、7に記載された化合物の化学構造に基づいて、アルキル基の炭素数やハロゲンの種類を変更したり、置換位置を変更したりすることも、当業者が通常の創作能力を発揮することにより容易になし得ることである。』との指摘がなされている。

(3)引用文献1及び7について
ア.引用文献7及びその記載事項
原査定において「引用文献7」として引用されている米国特許第3635690号明細書には、和訳にして、次の記載がある。

摘記7a:第1欄第13?48行
「本発明は作物栽培に有用な方法及び組成物に関するものであり、特にアンモニウム窒素の硝化を抑制することによって土壌中の窒素を保存するための新しい農業用の物質及び組成物に関するものである。そのような方法のために採用される組成物の活性物質は、ピラゾールそれ自体、置換されたピラゾール、又はこれらの化合物の鉱物酸付加塩としてのピラゾール化合物類である。ここで、「置換されたピラゾール類」とは、ピラゾール環上に2を超える置換基を有しない化合物を意味し、環上窒素の置換基類はニトロ基、又は脂肪族炭化水素残基であり、環上炭素の置換基類はハロゲン、ニトロ基又はアルキル残基であり、当該脂肪族及びアルキル残基は各々3を超えない炭素数を有するものである。用語「ハロゲン」は通常の意味を有し、塩化物、臭化物、及び沃化物を含み、「アルキル」はメチル、エチル、プロピル及びイソプロピルを含み、そして「脂肪族」は後者のアルキル残基と同様にビニル基、アリル基、エチニル基及びプロピニル基を含む。記載の簡便化のために、前記定義の範囲内にある当該化合物群を、ここでは「ピラゾール類」ないし「ピラゾール化合物類」と称する。
代表的なピラゾール化合物類は、本発明に適するものとして、ピラゾール、3-ブロモピラゾール、4-ヨードピラゾール、4-クロロピラゾール、3,4-ジヨードピラゾール、3,4-ジブロモピラゾール、3-クロロ-4-ニトロピラゾール、3-メチルピラゾール、1-ニトロピラゾール、3-ニトロピラゾール、4-ニトロピラゾール、4-ブロモ-1-ニトロピラゾール、1,4-ジニトロピラゾール、5-クロロ-3-メチルピラゾール、4-ブロモ-3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、1,3-ジメチルピラゾール、3-メチル-1-ニトロピラゾール、3-メチル-4-ニトロピラゾール、3-プロピル-1-ニトロピラゾール、4-クロロ-1-メチルピラゾール、1-エチルピラゾール、1-アリルピラゾール、1-プロピニルピラゾール、4-ブロモ-1-アリルピラゾール、1-プロピルピラゾール、4-ブロモピラゾール臭化水素、及び硫酸、硝酸及び燐酸、同様に沃化水素を含む他の鉱物酸と前記化合物類との塩を採用できる。」

摘記7b:第5欄第15行?第6欄第34行
「実施例1
水性媒体の100万重量部当たり500重量部の窒素及び25重量部のピラゾールを含んで成る水性アンモニウム肥料組成物が、水性の硫酸アンモニウム溶媒中にピラゾールの1%(溶媒容積当たりの重量)のアセトン溶液を分散させることによって調製された。(全ての実施例における窒素の量は、還元された形態で肥料中に存在する窒素に基づいている。)…

実施例2
実施例1で記述した作業を繰り返した。但し、ピラゾールに代えて表Iに示される一ないし他の化合物類を使用した。次の結果が得られた。
表I
ピラゾール化合物(5p.p.m.) 土壌中14日後の(NH_(4))_(2)SO_(4) 100p.p.m.
添加後の硝化百分率
無し(確認用) 100 …
4-クロロピラゾール 0 …
4-ブロモ-3-メチルピラゾール 10
5-クロロ-3-メチルピラゾール 10
3-メチルピラゾール 10
3,5-ジメチルピラゾール 10 …

実施例3
操作は、下記に列挙するピラゾール類の各々をピラゾールに代えて採用して、実施例1に記載した方法で実施した。14日経過後に得られた結論は、これらの化合物類のうちの何れか一つを含んだ肥料で処理された土壌は、実質的な硝化を受けず、一方ピラゾール化合物を含んでいない肥料組成物で処理された土壌は、完全に硝化を受けていた。
ピラゾール・ヒドロクロリド…
4-クロロ-1-メチルピラゾール…
5-クロロ-3-メチルピラゾール燐酸塩」

摘記7c:第10欄第62行?第11欄第2行
「本発明の塩生成物類の一つを窒素肥料の適用と同時に土壌に適用することが望まれる場合には、その塩生成物は、窒素肥料の調合と一緒に接合することで大概調合される。このような手順のための代表的な窒素肥料として、燐酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム及び塩化アンモニウムが特に適している。これらの手順においては、ピラゾール化合物の塩基形態が、各々の窒素肥料を形成するための反応に伴い同時に与えられた鉱物酸と反応する。この結果の生成物は与えられた窒素肥料ないし肥料類と対応する塩形態のピラゾール化合物とからなり、本発明の実施において有利に採用される。」

イ.引用文献1及びその記載事項
原査定において「引用文献1」として引用されている特公昭47-47183号公報には、次の事項が記載されている。

摘記1a:第1欄第16?18行
「本発明は、土壌中において窒素肥料分がアンモニア態窒素から亜硝酸態窒素に変化するのを抑制するために使用する硝酸化成抑制剤に関する。」

摘記1b:第2頁第1表
「第1表
略称 本発明化合物 …
A 3-メチルピラゾール …
B 3・5-ジメチルピラゾール …
C 3-メチル-4-ニトロピラゾール …
D 3・5-ジメチル-4-クロルピラゾール …
E 4-ニトロピラゾール …
F 4-ブロムピラゾール …
G 3-メチルピラゾール塩酸塩 …
H 3・5-ジメチルピラゾール塩酸塩 」

摘記1c:第3頁第2表
「第2表 抑制率(%)
No. 供試化合物 12.5ppm 50ppm …
1 A 100 100 …
2 B 78.5 90 …
3 C 100 100 …
4 D 50.5 77 …
5 E 100 100 …
6 F 100 100 …
7 G 77 91.5 …
8 H 73.5 91.5 」

摘記1d:第7欄第27行?第8欄第28行
「本発明に係る前記有効成分は優れた硝酸化成抑制作用を呈し、…他の不活性担体、肥料…と共に土壌中に分散させたり…することによつて、硝酸化成抑制剤として広く用いることができる。…前記有効成分と共に用いることのできる不活性担体としては例えば…水…などの液状担体がある。」

摘記1e:第9欄第13行?第10欄第3行
「実施例3
3,5-ジメチル塩酸塩50重量部、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ20重量部及びジークライト30重量部を混合粉砕して水和剤とし、この水和剤300gを水200lで稀釈し尿素30Kg施肥の圃場10アールに散布し尿素の硝酸化成を防いだ。」

摘記1f:請求項1
「一般式
N???NH
? |
/\ //\
X | Z
Y
(式中X,Zはメチル基又は水素原子であり、Yはニトロ基、ハロゲン原子又は水素原子である。但しX,Y及びZが同時に水素原子である場合を除く。)で表わされる置換ピラゾール及びその塩からなる群より選択された化合物を有効成分として含有することを特徴とする硝酸化成抑制剤。」

(4)引用文献7に記載された発明との対比・判断
ア.引用文献7に記載された発明
摘記7bの「実施例1 水性媒体の100万重量部当たり500重量部の窒素及び25重量部のピラゾールを含んで成る水性アンモニウム肥料組成物が、…調製された。…実施例2 実施例1で記述した作業を繰り返した。但し、ピラゾールに代えて表Iに示される一ないし他の化合物類を使用した。」との記載、及び当該「実施例2」の表Iにおいて、「4-ブロモ-3-メチルピラゾール」及び「3-メチルピラゾール」を使用した場合の土壌中14日後の硫酸アンモニウムの硝化百分率が10%(確認用は100%)である旨の記載、並びに摘記7aの「本発明は作物栽培に有用な方法及び組成物に関するものであり、特にアンモニウム窒素の硝化を抑制することによって土壌中の窒素を保存するための新しい農業用の物質及び組成物に関するものである。」との記載からみて、引用文献7には、
『水性媒体100万重量部当たり25重量部の4-ブロモ-3-メチルピラゾール又は3-メチルピラゾールを使用して、水性アンモニウム肥料組成物の土壌中14日後の硝化百分率を10%に抑制して、土壌中の窒素を保存するための方法。』についての発明(以下、「引7発明」という。)が記載されているものと認められる。

イ.対比・判断
引7発明の「4-ブロモ-3-メチルピラゾール又は3-メチルピラゾール」のうち、
前者については、本願発明の一般式において、R^(1)がハロゲン原子(塩素原子)を、R^(2)がC_(1)アルキル基を、R^(3)がHをそれぞれ意味する場合の化合物に相当し(ただし、後者については、本願発明の一般式の定義において「ただし、…3-メチルピラゾールを除く」とされていることから本願発明のピラゾール化合物に相当せず)、
引7発明の「水性アンモニウム肥料組成物」は、本願発明の「液肥」に相当し、
引7発明の「土壌中14日後の硝化百分率を10%に抑制して、土壌中の窒素を保存する」は、本願明細書の第2頁第18?21行の「本発明の目的とするところは、硝酸化成作用禁止剤を含有しており、その含有量割合が、貯蔵、施肥の間に著しく変化せず、硝酸化成作用禁止剤が施肥後、土壌中に残留し、そこでその作用を果たすことができる無機肥料と、新規な硝酸化成作用禁止剤とを提供することである。」との記載、及び平成20年4月9日付けの審判請求書の第9頁第9行の「土壌残留安定性に優れています。」との記載からみて、本願発明の「安定化」に相当するものと解されるから、両者は、
『4-ブロモ-3-メチルピラゾールを、液肥の安定化のために使用する方法。』である点において一致し、両者に相違する点はない。
したがって、本願発明は、引用文献7に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。

次に、本願発明に、上記引7発明と一致しない態様において進歩性があるか、又は、選択発明としての進歩性があるか否かについて検討する。
本願明細書の第5頁下から6?3行には、「ことに好ましいピラゾール化合物は、3,4-ジメチルピラゾール、4-クロロ-3-メチルピラゾール、N-ヒドロキシメチル-3,4-ジメチルピラゾール、N-ヒドロキシメチル-4-クロロ-3-メチルピラゾール、ならびに3,4-ジメチルピラゾールのヒドロクロリドである。」として、引7発明の「4-ブロモ-3-メチルピラゾール又は3-メチルピラゾール」は、本願明細書の「ことに好ましいピラゾール化合物」の中に含まれていない点において、本願発明と引7発明は一応相違する。
しかしながら、本願明細書の第18頁の「表5 各種ピラゾールの硝酸化成作用禁止効果」の結果を参酌すると、引用発明の「3-メチルピラゾール」の結果が、6週間後を除く、1週間後、2週間後、4週間後、8週間後の結果において、本願発明の「N-ヒドロキシメチル-3,4-ジメチルピラゾール」の結果よりも、優れた効果を発揮しており、引用文献7には、実験の基礎的条件が本願明細書の具体例と異なるものの、「3-メチルピラゾール」と「4-ブロモ-3-メチルピラゾール」の硝化抑制作用が同等であることを示す比較実験データが具体的に示されている(摘記7b)。
そうしてみると、本願発明に、選択発明としての進歩性は認められない。

したがって、本願発明は、引用文献7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)引用文献1に記載された発明との対比・判断
ア.引用文献1に記載された発明
摘記1aの「本発明は、土壌中において窒素肥料分がアンモニア態窒素から亜硝酸態窒素に変化するのを抑制するために使用する硝酸化成抑制剤に関する。」との記載、摘記1bの「3-メチルピラゾール」及び「3・5-ジメチルピラゾール塩酸塩」との記載、摘記1dの「本発明に係る前記有効成分は…他の不活性担体、肥料…と共に土壌中に分散させたり…することによつて、硝酸化成抑制剤として広く用いることができ…不活性担体としては例えば…水…などの液状担体がある。」との記載、摘記1eの「尿素の硝酸化成を防いだ。」との記載、並びに摘記1fの「一般式
N???NH
? |
/\ //\
X | Z
Y
(式中X,Zはメチル基又は水素原子であり、Yはニトロ基、ハロゲン原子又は水素原子である。但しX,Y及びZが同時に水素原子である場合を除く。)で表される置換ピラゾール及びその塩からなる群より選択された化合物を有効成分として含有することを特徴とする硝酸化成抑制剤。」との記載からみて、引用文献1には、
『一般式
N???NH
? |
/\ //\
X | Z
Y
(式中X,Zはメチル基又は水素原子であり、Yはニトロ基、ハロゲン原子又は水素原子である。但しX,Y及びZが同時に水素原子である場合を除く。)で表わされる置換ピラゾール及びその塩からなる群より選択された化合物(例えば、3-メチルピラゾール、3・5-ジメチルピラゾール塩酸塩など。)を有効成分とし、水などの液状担体と肥料と共に土中に分散して用いる硝酸化成抑制剤の、土壌中において窒素肥料分がアンモニア態窒素から亜硝酸態窒素に変化するのを抑制するための使用。』についての発明(以下、「引1発明」という。)が記載されている。

イ.本願発明と引1発明との対比・判断
本願発明と引1発明とを対比する。
引1発明の「一般式…で表される置換ピラゾール及びその塩からなる群より選択された化合物」は、引1発明の一般式のYがハロゲン原子又は水素原子、Xがメチル基、Zが水素原子である場合に、本願発明の一般式のR^(1)が水素原子またはハロゲン原子、R^(2)がC_(1)アルキル基、R^(3)がHである場合の化合物(ただし、4-クロロ-3-メチルピラゾール、4-フルオロ-3-メチルピラゾール、1-ヒドロキシメチル-3-メチルピラゾールおよび3-メチルピラゾールを除く)と一致し、
引1発明の「3・5-ジメチルピラゾール塩酸塩」は、本願発明の「3,4-ジメチルピラゾールのヒドロクロリド」と、「ジメチルピラゾールのヒドロクロリド」である点において一致し、
引1発明の「水などの液状担体と肥料と共に土中に分散」は、本願発明の「液肥」に相当し、
引1発明の「土壌中において窒素肥料分がアンモニア態窒素から亜硝酸態窒素に変化するのを抑制するための使用」は、本願発明の「液肥…の安定化のために使用する方法。」に相当する。
してみると、本願発明と引1発明とは、『下記一般式


で表され、かつR^(1)が水素原子またはハロゲン原子を、R^(2)がC_(1)アルキル基を、R^(3)がHをそれぞれ意味する場合の化合物(ただし、4-クロロ-3-メチルピラゾール、4-フルオロ-3-メチルピラゾール、1-ヒドロキシメチル-3-メチルピラゾールおよび3-メチルピラゾールを除く)、またはジメチルピラゾールのヒドロクロリドである、ピラゾール化合物またはピラゾール化合物の付加塩を、液肥の安定化のために使用する方法。』に関するものである点において一致し、両者に相違する点はない。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。

次に、本願発明に、上記引1発明と一致しない態様において進歩性があるか、又は、選択発明としての進歩性があるか否かについて検討するに、引用文献1に実施例レベルで具体的に記載された「置換ピラゾール及びその塩からなる群より選択された化合物」は「例えば、3-メチルピラゾール、3・5-ジメチルピラゾール塩酸塩など」であるから、
(α1)引1発明の「3-メチルピラゾール」については、本願発明において「(ただし、…3-メチルピラゾールを除く)」と規定されている点において、本願発明と相違し、或いは、
(α2)引1発明の「3・5-ジメチルピラゾール塩酸塩」については、本願発明の「3,4-ジメチルピラゾールのヒドロクロリド」と、メチル基の置換位置が4位ではなく5位である点において、本願発明と相違している。

そこで、上記相違点について検討する。
上記(α1)の点について、例えば、「4-ブロモ-3-メチルピラゾール」などのピラゾール化合物については、両者において重複するところ、当該「4-ブロモ-3-メチルピラゾール」を用いることについては、引用文献7に記載されるように知られているから(摘記7b)、引1発明のピラゾール化合物として、引1発明の化合物の定義の範囲内にあり、なおかつ、引用文献7にも記載されている「4-ブロモ-3-メチルピラゾール」のような公知化合物を採用することは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲内である。

また、上記(α2)の点について、原査定においては、『引用文献1、7に記載された化合物の化学構造に基づいて、アルキル基の炭素数やハロゲンの種類を変更したり、置換位置を変更したりすることも、当業者が通常の創作能力を発揮することにより容易になし得ることである。』との指摘がなされているところ、引1発明の「3・5-ジメチルピラゾール塩酸塩」の4位のメチル基の置換位置を4位から5位に変更して、本願発明の「3,4-ジメチルピラゾールのヒドロクロリド」にすることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲内である。

そして、本願発明の「ピラゾール化合物またはピラゾール化合物の付加塩」の各々が、引1発明に対して、選択発明としての顕著な作用効果を奏し得ているか否かについて検討するに、本願明細書の第18頁の表5に示された比較実験データを参酌するに、引1発明の「3-メチルピラゾール」の結果が、6週間後を除く、1週間後、2週間後、4週間後、8週間後の結果において、本願発明の「N-ヒドロキシメチル-3,4-ジメチルピラゾール」の結果よりも優れた効果を発揮しているので、本願発明に選択発明としての進歩性は認められない。また、本願明細書の第11頁の表Iに示された比較実験データは、液肥ないし液状肥料調剤に関するものではなく、乾燥処理された無機肥料の貯蔵安定性に関するデータではあるが、当該データを参酌するに、本願発明の「ピラゾール化合物またはピラゾール化合物の付加塩」に包含される「3,4-ジメチルピラゾール」は、引1発明の「3-メチルピラゾール」と同様に、その表Iにおいてロスが100%であることが示されているから、本願発明に格別の選択的効果があるとは認められない。

したがって、本願発明は、引用文献1及び7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上総括するに、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-07 
結審通知日 2010-12-14 
審決日 2011-01-04 
出願番号 特願平10-507626
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C05G)
P 1 8・ 572- Z (C05G)
P 1 8・ 121- Z (C05G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天野 宏樹  
特許庁審判長 中田 とし子
特許庁審判官 木村 敏康
細井 龍史
発明の名称 新規な硝酸化成作用禁止剤、および硝酸化成作用禁止剤を含有させたポリ酸を無機肥料の処理のために使用する方法  
代理人 江藤 聡明  
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