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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1238117
審判番号 不服2009-23437  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-30 
確定日 2011-06-09 
事件の表示 特願2007-141944「色変換装置、エミュレーション方法、三次元ルックアップテーブルの生成方法、画像処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月10日出願公開、特開2008- 85980〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成19年5月29日(国内優先権主張 平成18年8月31日)の出願であって、平成20年10月6日付けの拒絶理由の通知に対し、平成20年11月25日付けで手続補正がなされ、平成21年5月13日付けの最後の拒絶理由の通知に対し、平成21年6月25日付けで手続補正がなされたが、該平成21年6月25日付けの手続補正は平成21年9月2日付けで決定をもって却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月30日に審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成21年11月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年11月30日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
この手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「第1の画像処理デバイスにおいて、ターゲットデバイスとした第2の画像処理デバイスを用いた場合の色再現を行うエミュレーションのために、上記第1の画像処理デバイスで使用する画像信号の色変換を行う色変換装置において、
入力された画像信号の信号値を、1つの三次元ルックアップテーブルを用いて出力信号値に変換するとともに、
上記三次元ルックアップテーブルは、
上記第2の画像処理デバイスの入出力特性に応じて補正された入出力値を持つ三次元ルックアップテーブルに基づいて、該三次元ルックアップテーブルの各出力値を上記第1の画像処理デバイスの色域に色域変換した値に書き換え、さらに上記書き換え後の各出力値を、上記第1の画像処理デバイスの入出力特性の逆特性とされた入出力値を持つ他の三次元ルックアップテーブルを検索して検索された値に書き換えて生成されたものとすることにより、
上記三次元ルックアップテーブルにおける入出力値は、上記第2の画像処理デバイスの入出力特性を再現するための色変換処理と、上記第2の画像処理デバイスと上記第1の画像処理デバイスとの間の色域変換としての色変換処理と、上記第1の画像処理デバイスの入出力特性に応じた補正としての色変換処理の各処理がまとめて行なわれた入出力値とされている
色変換装置。」

2.補正の適否
上記の補正された請求項1において、「第2の画像処理デバイスの入出力特性に応じて補正された入出力値を持つ三次元ルックアップテーブル」と記載されているが、これは願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。すなわち、これらの記載から、第2の画像処理デバイスの入出力特性に応じて補正される前の入出力値、あるいは、補正される前の入出力値を持つ三次元ルックアップテーブルが存在し、それが入出力特性に応じて補正されたと考えられるが、そのようなことは、審判請求書で主張する明細書の「段落0023?0031,図2、4、8」、及び、明細書のその他の記載、特許請求の範囲又は図面の記載をみても全く記載されていないし記載された事項から自明であるともいえない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

なお、補正された請求項1における「第2の画像処理デバイスの入出力特性に応じて補正された入出力値を持つ三次元ルックアップテーブル」との記載が何らかの誤記であって、補正前の「第2の画像処理デバイスの入出力特性に応じた入出力値を持つ三次元ルックアップテーブル」と実質的に同じ意味であるとも考えられるが、そうであるとしても、そのような補正は、特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号に掲げる何れの事項を目的とするものではないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
以上のように、平成21年11月30日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成20年11月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「第1の画像処理デバイスにおいて、ターゲットデバイスとした第2の画像処理デバイスを用いた場合の色再現を行うエミュレーションのために、上記第1の画像処理デバイスで使用する画像信号の色変換を行う色変換装置において、
入力された画像信号の信号値を、三次元ルックアップテーブルを用いて出力信号値に変換するとともに、
上記三次元ルックアップテーブルは、
上記第2の画像処理デバイスの入出力特性に応じた入出力値を持つ三次元ルックアップテーブルの各出力値を上記第1の画像処理デバイスの色域に色域変換した値に書き換え、さらに上記書き換え後の各出力値を、上記第1の画像処理デバイスの入出力特性の逆特性とされた入出力値を持つ他の三次元ルックアップテーブルを検索して検索された値に書き換えて生成されたものとすることにより、
上記三次元ルックアップテーブルにおける入出力値は、上記第2の画像処理デバイスの入出力特性を再現するための色変換と、上記第2の画像処理デバイスと上記第1の画像処理デバイスとの間の色域変換としての色変換と、上記第1の画像処理デバイスの入出力特性に応じた補正としての色変換とをまとめて行う入出力値とされている色変換装置。」

2.刊行物の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2004-349838号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面(特に、図4-7、12-14)とともに次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】 画像と画像データとを媒介するデバイスに依存したデバイス色空間の座標とデバイスに非依存の非依存色空間の座標との対応を、第1のデバイスおよび第2のデバイスそれぞれについて定義した第1の色変換定義および第2の色変換定義を結合して、該第1のデバイスに依存した第1のデバイス色空間の座標と該第2のデバイスに依存した第2のデバイス色空間の座標との対応を定義した結合色変換定義を作成する色変換定義結合装置において、
前記第1の色変換定義および前記第2の色変換定義は、デバイスが再現可能な色を表した色再現領域について前記デバイス色空間における座標と前記非依存色空間における座標との対応を定義した空間変換部と、該色再現領域内の座標とデバイスに非依存な結合領域内の座標との対応を前記非依存色空間上で定義した領域変換部とを有するものであって、
前記第1の色変換定義および前記第2の色変換定義それぞれにおける2つの結合領域が互いに同等な領域であるか否かを判定する領域判定部と、
前記領域判定部によって、2つの結合領域は互いに同等な領域であると判定された場合には、前記第1の色変換定義の空間変換部、該第1の色変換定義の領域変換部、前記第2の色変換定義の領域変換部、および該第2の色変換定義の空間変換部それぞれが定義した対応関係を順次に結合して結合色変換定義を作成し、前記領域判定部によって、2つの結合領域は異なる領域であると判定された場合には、前記第1の色変換定義の空間変換部と前記第2の色変換定義の空間変換部とのそれぞれが定義した対応関係を、2つの色再現領域の一方から他方へ座標を変換する変換アルゴリズムに基づいて結合して結合色変換定義を作成する定義結合部とを備えたことを特徴とする色変換定義結合装置。」

(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像と画像データとを媒介するデバイスに依存したデバイス色空間の座標とデバイスに非依存の非依存色空間の座標との対応を、第1のデバイスおよび第2のデバイスそれぞれについて定義した第1の色変換定義および第2の色変換定義を結合して、該第1のデバイスに依存した第1のデバイス色空間の座標と該第2のデバイスに依存した第2のデバイス色空間の座標との対応を定義した結合色変換定義を作成する色変換定義結合装置、およびコンピュータシステムに組み込まれ、そのコンピュータシステムによって結合色変換定義を作成する色変換定義結合プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、記録された画像を読み取って画像データを得るカラースキャナや、固体撮像素子上に被写体の画像を結像して読み取ることにより画像データを得るDSC(ディジタルスチールカメラ)等、画像を入力して画像データを得る、様々なタイプの入力デバイスが知られている。これらの入力デバイスでは、画像データは、例えばR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の3色についてそれぞれ例えば0?255等の決まった範囲のデータで表わされる。これらR、G、B3色についてそれぞれ決まった範囲内の数値で表現することのできる色には自ずと限界がある。このため、元々の画像の色が極めて豊かな表現を持っていたとしても、一旦入力デバイスを用いて画像データに変換すると、その画像データによって表わされる画像は、その入力デバイスに応じた色表現領域内の色に制限されることになる。
【0003】また、画像データに基づいて画像を出力する出力デバイスについても、例えば、印画紙上をレーザ光で露光してその印画紙を現像することにより印画紙上に画像を記録する写真プリンタ、電子写真方式やインクジェット方式などの方式で用紙上に画像を記録するプリンタ、輪転機を回して多量の印刷物を作成する印刷機、画像データに基づいて表示画面上に光を発光させて画像を表示するCRTディスプレイやプラズマディスプレイ等といった発光型の表示デバイス等、様々なタイプの出力デバイスが知られているが、これらの出力デバイスについても上述の入力デバイスと同様、各出力デバイスに応じた色表現領域が存在する。すなわち、出力デバイスは、例えばR、G、B3色を表現する画像データやC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(墨)の4色を表現する画像データに基づいて様々な色を表現することができるが、その表現できる色は、出力デバイス色空間(例えばRGB空間、CMYK空間等)のある色表現領域内(例えばR、G、Bそれぞれについて0?255の範囲の数値で表わされる色表現領域内等)に制限される。このような入力デバイスや出力デバイスにおける色表現領域はカラーガマット(Color Gamut)と称される。
【0004】ところで、近年では、種々の入力デバイスおよび出力デバイスの相互間で画像データを転用することが増えてきており、画像データの転用に際して画像の色を等色に保つ方法も知られている。例えば、典型的には、デバイスに依存したデバイス色空間の座標と、デバイスには依存しない非依存色空間(Device Independent Dataの空間:例えばL*a*b*色空間)の座標との対応関係を、プロファイルと称される対応表によって定義して、入力デバイスや出力デバイスの種類毎に用意し、画像データを転用する各デバイスそれぞれのプロファイルを結合した結合プロファイルを使って画像データの変換を行うという方法が知られている。
【0005】しかし、上述したように色表現領域は各デバイスによって異なるため、画像の色を等色に保つ方法で画像データを転用すると、色表現領域が不一致の部分で色表現の欠落を生じる場合がある。このような欠落が大きいと、転用された画像データが表す画像が不自然な画像となってしまう。
【0006】一方で、色表現領域が相違しているにも係わらず、元々は同一の画像を種々のデバイスそれぞれにおいて人の目に自然な画像として表現可能であるということが経験的に知られている。これら種々のデバイスそれぞれによって表現された自然な画像は、デバイスの色表現領域の違いに応じた互いに多少異なる色で表現されているが、人間の目の順応性が高いために、どのデバイスで表現された画像であっても自然な印象を受けることとなる。
【0007】そこで、画像データの転用に際して画像の自然な印象を保つように画像の色を変換する色変換が求められる。このような色変換は、あるデバイスの色表現領域(カラーガマット)内の各色を他のデバイスの色表現領域(カラーガマット)内の各色に過不足なく対応づけるような色変換であることが望ましく、この色変換をガマットマッピング(Gamut Mapping)と称する。
【0008】従来から、色変換(ガマットマッピング)として、非依存色空間上でガマットマッピングを行なう種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3参照)。
【0009】また、ICC(International Color Consortium)では、デバイスに依存した色再現領域とデバイスに非依存の結合領域(Profile Connection Space:PCS)との相互間における座標変換を非依存色空間上で定義した変換定義部を上述したプロファイルに組み込むフォーマットが提案されている。このようなフォーマットのプロファイルを結合した結合プロファイルを使って画像データの変換を行うことにより、結果的にガマットマッピングが実現されることとなる。
・・(中略)・・
【発明が解決しようとする課題】しかし、ICCによる提案では、結合領域の厳密な規定が存在しないため、異なる結合領域を前提とした複数種類のプロファイルが併存する可能性が高い。そして、異なる種類のプロファイルを従来のように結合した場合には、結合領域の相違に起因してガマットマッピングに不具合が生じてしまう。
【0012】本発明は、上記事情に鑑み、異なる結合領域を前提とした複数種類のプロファイル(色変換定義)が併存している場合であっても色変換定義を適切に結合することができる色変換定義結合装置および色変換定義結合プログラムを提供することを目的とする。」

(3)「【0038】図4と図5を参照して説明した入力プロファイル41と出力プロファイル42を結合することによって、カラースキャナで得られたRGBの画像データをカラープリンタ用のRGBの画像データに変換する結合プロファイル43を得ることができる。この結合プロファイル43は、カラースキャナで得られたRGBの画像データを入力プロファイル41によって一旦L*a*b*色空間上の画像データに変換し、そのL*a*b*色空間上の画像データを、出力プロファイル42によってカラープリンタ用のRGBの画像データに変換するという一連の処理と同等な結果を1回の変換で得ることができる。
【0039】図7は、図4?図6に示す概念のプロファイルを前提としてプロファイルの結合と色変換とを行う色変換装置を示す図である。
【0040】この図に示す色変換装置1は、単純結合部2で、図4と図5を参照して説明した入力プロファイル41と出力プロファイル42を結合し、図6を参照して説明した結合プロファイル43を作成する。また、色変換装置1は、色変換部3でこの結合プロファイル43を使い、カラースキャナで得られた画像データ(RGBデータ)をカラープリンタ用の画像データ(R’G’B’データ)に変換する。このように得られたRGBの画像データを、図1に示すカラープリンタ30に入力することにより、カラープリンタ30では、原稿画像11の色表現を再現したプリント画像31が得られる。」

(4)「【0075】図13は、ガマット変換部によって抽出された色空間変換テーブルを示す図である。
【0076】この図13のパート(A)には、スキャナの入力プロファイル48から抽出された色空間変換テーブル48aが示されており、この図13のパート(B)には、プリンタの出力プロファイル49から抽出された色空間変換テーブル49aが示されている。これらの色空間変換テーブル48a,49aは、図4と図5を参照して説明した入力プロファイル41と出力プロファイル42の作成方法と同様な、プロファイルのメーカによらない共通の作成方法によって作成されたものである。また、色空間変換テーブル48a,49aの出力側のデータを解析することによって、スキャナの色再現領域230とプリンタの色再現領域330を得ることができる。
【0077】図12に示すガマット変換部62は、これらの色空間変換テーブル48a,49aを、2つの色再現領域230,330の間のマッピングを介して結合する。
【0078】図14は、ガマット変換部による色空間変換テーブルの結合を表す図である。
【0079】図12に示すガマット変換部62は、例えば特開2001-103329号公報に開示された手法などを用いて、スキャナの色再現領域230とプリンタの色再現領域330との間のガマットマッピングを表す変換テーブルを作成し、その変換テーブルを挟んで、スキャナの入力プロファイルから抽出された色空間変換テーブル48aと、プリンタの出力プロファイルから抽出された色空間変換テーブル49aとを結合する。これにより、スキャナのRGB空間とプリンタのRGB空間とを過不足なく対応付ける結合プロファイルが得られることとなる。
【0080】図12に示すガマット変換部62によって得られる結合プロファイルと単純結合部63によって得られる結合プロファイルは色変換部64に送られ、それらの結合プロファイルが用いられて画像データの色変換が行われる。従って、本実施形態では、結合の対象となる2つのプロファイル48,49において結合領域が同等である場合には、各プロファイル48,49の領域変換テーブルが活用されて簡単に高精度な結合プロファイルが得られて色変換が実行され、それら2つのプロファイル48,49において結合領域が異なる場合には、結合領域の相違による不都合が回避された高精度な結合プロファイルが得られて色変換が実行される。
【0081】なお、上記説明では、本発明にいうデバイス色空間の一例としてRGB空間が示されているが、本発明にいうデバイス色空間は、CMY空間であってもよく、あるいはCMYK空間であってもよい。
【0082】また、上記説明では、本発明にいう非依存色空間の一例としてL*a*b*色空間が示されているが、本発明にいう非依存色空間は、XYZ色空間であってもよく、あるいはsRGB色空間であってもよい。
【0083】また、上記説明では、入力プロファイルと出力プロファイルが結合される例が示されているが、本発明では、入力プロファイル同士や出力プロファイル同士が結合されてもよい。」

以上の記載から、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されている。

「入力プロファイル同士や出力プロファイル同士を結合することによって、第1のデバイスの画像データを第2のデバイス用の画像データに変換する結合プロファイルを得る色変換定義結合装置であって、
第1のデバイスの色再現領域と第2のデバイスの色再現領域との間のガマットマッピングを表す変換テーブルを作成し、その変換テーブルを挟んで、第1のデバイスの入力プロファイルから抽出された色空間変換テーブルと、第2のデバイスの出力プロファイルから抽出された色空間変換テーブルとを結合するガマット変換部を備えた色変換定義結合装置。」

3.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

(1)刊行物1発明において、「入力プロファイル同士や出力プロファイル同士を結合することによって、第1のデバイスの画像データを第2のデバイス用の画像データに変換する結合プロファイルを得る」のは、例えば、第2のデバイスで再現される色を第1のデバイスで再現する色に変換するためであって、このことは、本願発明の「第1の画像処理デバイスにおいて、ターゲットデバイスとした第2の画像処理デバイスを用いた場合の色再現を行うエミュレーション」を行うことに相当するといえる。
また、刊行物1発明の「結合プロファイルを得る色変換定義結合装置」は、画像データを変換するためのものであって、本願発明の「画像信号の色変換を行う色変換装置」に相当するといえる。

(2)刊行物1発明の「第1のデバイスの入力プロファイル」、「第2のデバイスの入力プロファイル」、「ガマット変換部」を結合したものは、色変換テーブルからなるものであり、RGBデータなどの画像データを変換するものであるから、「入力された画像信号の信号値を、三次元ルックアップテーブルを用いて出力信号値に変換する」ものであるといえる。また、該テーブルの入出力値は、上記「第1のデバイスの入力プロファイル」、「第2のデバイスの入力プロファイル」、「ガマット変換部」による色変換が行われるためのものであるから、本願発明の「上記第2の画像処理デバイスの入出力特性を再現するための色変換処理と、上記第2の画像処理デバイスと上記第1の画像処理デバイスとの間の色域変換としての色変換処理と、上記第1の画像処理デバイスの入出力特性に応じた補正としての色変換処理の各処理がまとめて行なわれた入出力値とされている」ものに相当するといえる。

(3)以上をまとめると、本願発明と刊行物1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
第1の画像処理デバイスにおいて、ターゲットデバイスとした第2の画像処理デバイスを用いた場合の色再現を行うエミュレーションのために、上記第1の画像処理デバイスで使用する画像信号の色変換を行う色変換装置において、
入力された画像信号の信号値を、三次元ルックアップテーブルを用いて出力信号値に変換するとともに、
上記三次元ルックアップテーブルにおける入出力値は、上記第2の画像処理デバイスの入出力特性を再現するための色変換と、上記第2の画像処理デバイスと上記第1の画像処理デバイスとの間の色域変換としての色変換と、上記第1の画像処理デバイスの入出力特性に応じた補正としての色変換とをまとめて行う入出力値とされている色変換装置。

[相違点]
三次元ルックアップテーブルが、本願発明においては、「上記第2の画像処理デバイスの入出力特性に応じた入出力値を持つ三次元ルックアップテーブルの各出力値を上記第1の画像処理デバイスの色域に色域変換した値に書き換え、さらに上記書き換え後の各出力値を、上記第1の画像処理デバイスの入出力特性の逆特性とされた入出力値を持つ他の三次元ルックアップテーブルを検索して検索された値に書き換えて生成されたもの」であるのに対し、刊行物1発明では、そのように生成されたものであることについて言及されていない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
複数のルックアップテーブルを合成して合成ルックアップテーブルを生成する方法として、1つのルックアップテーブルに記憶された出力値を他のルックアップテーブルで変換した値に変更することにより合成ルックアップテーブルを生成する方法は、例えば、特開2001-128018号公報(記載内容は後述(*))に記載されているように、周知の技術であるから、刊行物1発明において、3種類の色変換テーブルを結合する場合に上記周知技術を適用して、記憶された出力値を他のルックアップテーブルで変換した値に変更することで1つのルックアップテーブルを合成することは当業者が容易に想到し得ることである。

(*)特開2001-128018号公報の【0082】には、以下の記載がある。
「先ず、初期LUTの格子点を1つ選び、格子点のRGB階調値を入力値として、画質調整用補正テーブルを参照して補正後のRGB出力階調値を得る。こうして得たRGB出力値を入力値として、初期LUTを参照してCMYK階調値を得る。ここで、格子点のRGB階調値は画質調整用補正テーブルによって変更されているので、初期LUTの格子点とは一致していない場合がある。このような場合は、初期LUTの格子点間を補正して、対応するCMYK階調値を得る。こうして得られたCMYK階調データには、画質調整用の補正テーブルの内容が反映されている。このCMYK階調値を入力値として、更にプリンタ個体差補正用テーブル、プリンタ個体差補正用テーブルの内容を次々に反映させる。こうして最終的に得られたCMYK階調データには、各補正テーブルの内容が全て反映されていることになる。そこで、初期LUTの格子点に記憶されているCMYK階調値を、最終的に得られたCMYKの階調値に変更するのである。こうして、初期LUTの全格子点を変更することによって、印刷条件の設定に対応する合成LUTを得ることができる。」

第4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-06 
結審通知日 2011-04-12 
審決日 2011-04-25 
出願番号 特願2007-141944(P2007-141944)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 好一  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 古川 哲也
千葉 輝久
発明の名称 色変換装置、エミュレーション方法、三次元ルックアップテーブルの生成方法、画像処理装置  
代理人 鈴木 伸夫  
代理人 脇 篤夫  

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