• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A61B
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A61B
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A61B
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する A61B
管理番号 1238554
審判番号 訂正2011-390046  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2011-04-21 
確定日 2011-06-02 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3033835号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3033835号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 請求の趣旨

本件審判の請求の趣旨は,特許第3033835号(平成2年6月13日特許出願,平成12年2月18日設定登録)に係る上記明細書を平成23年4月21日付け審判請求書に添付した訂正明細書のとおり,すなわち,下記訂正事項1および2のとおり訂正することを求めるものである。

1 訂正事項1
上記明細書の特許請求の範囲の請求項1における「予め画像種類に適合した画像の配置に関する表示形態と画像種類とを対応付けて記憶する記憶手段と」を,「予め画像種類に適合した,画面の分割/非分割に基づく画像の配置に関する表示形態と画像種類とを対応付けて記憶する記憶手段と」と訂正する。

2 訂正事項2
上記明細書の2頁3欄15?16行における「予め画像種類に適合した画像の配置に関する表示形態と画像種類とを対応付けて記憶する記憶手段と」を,「予め画像種類に適合した,画面の分割/非分割に基づく画像の配置に関する表示形態と画像種類とを対応付けて記憶する記憶手段と」と訂正する。

第2 当審の判断

1 訂正の目的等について
(1)訂正事項1
訂正事項1は,上記明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された「画像の配置に関する表示形態」を,「画面の分割/非分割に基づく画像の配置に関する表示形態」と限定しようとするものである。

これについて,上記明細書の2頁4欄14?17行には「オペレータは予め,画像の種類(撮影部位,撮影方法,撮影モダリティ等)毎に,画面の分割/非分割の別等,画像表示用モニタ1の画面上においてその画像に適合する画像の配置に関する表示形態をそれぞれ対応付けてレコード1乃至nとして記憶しておく。」と記載され,「画像の配置に関する表示形態」の具体的形態の一つとして「画面の分割/非分割の別」が例示されており,訂正事項1は,上記記載に基づくものであるといえる。

また,上記記載において「画像の配置に関する表示形態」として「画面の分割/非分割の別等」と記載されるように,訂正前の上記明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された「画像の配置に関する表示形態」は「画面の分割/非分割の別」以外のものも包含していたと解釈されるところ,本件訂正により,請求項1に記載された「画像の配置に関する表示形態」を「画面の分割/非分割に基づく画像の配置に関する表示形態」に限定することになるといえる。

さらに,願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)において,「最適表示形態」の内容は特定されず,さまざまな表示形態を含むものといえる。
ここで,医用画像の表示形態として分割表示や非分割表示という表示形態を選択することは,本願出願前における周知技術であり(下記刊行物2の摘記事項(イ-3)参照。),医用画像の表示形態に分割表示や非分割表示という表示形態が含まれることは技術常識であるといえる。
また,当初明細書等の「(従来の技術及び解決すべき課題)」欄における「従来の技術では,画像表示装置及びハードコピー装置において画像の表示形態は全てオペレータが表示する都度にマニュアルで指示する。しかし,例えば胸部のCR画像であればモニタ1台に1枚表示,頭部のCT像であれば1台のモニターに複数のスライス像を表示するなど撮影部位,撮影方法,撮影モダリティにより最適と考えられている表示形態がある。そのため,表示の都度に表示形態を指示することは操作性の悪さにつながるという欠点がある。本発明は,撮影部位(胸部,頭部等),撮影方法(管電圧,造影剤撮影,サブトラクション,シネ撮影等),撮影モダリティ (CT装置,MRI,X線装置)等の撮影の種類によって画像表示の都度最適表示形態を指示することなく自動的に最適表示を行わせることによって,,操作性を向上させた画像表示装置を提供することを目的とするものである。」との記載から(下線は当審により付記したもの。以下,同様。),従来技術における撮影部位,撮影方法,撮影モダリティに適した表示形態として,モニタ1台に1枚の画像を表示する形態や,モニタ1台に複数枚の画像を表示する形態が例示され,このような分割表示や非分割表示という表示形態が本発明における「表示形態」の一つとして想定されていることが理解される。
そうすると,当初明細書等に記載された「最適表示形態」は,分割表示や非分割表示という表示形態を含むものであるといえる。

よって,上記訂正事項1は,特許請求の範囲の減縮を目的とし,願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないから,平成6年改正前特許法第126条第1項第1号および第2項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2

訂正事項2は,訂正事項1の訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合をとるためのものであり,特許明細書の上記「(1)」に示す記載を根拠とするものであるから,この訂正は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり,同法第126条第1項第3号および第2項の規定に適合するものである。

2 独立特許要件

(1)訂正後の発明
本件訂正により訂正された本件特許の請求項1に係る発明(以下,「訂正発明」という。)は,次のとおりのものである。

「【請求項1】種類の異なる複数の収集画像を個別的に表示する画像表示装置において,予め画像種類に適合した,画面の分割/非分割に基づく画像の配置に関する表示形態と画像種類とを対応付けて記憶する記憶手段と,表示させる画像を指定する入力手段と,この入力手段により指定された画像の画像種類に対応する前記表示形態を前記記憶手段から読み出し,これにより画像表示を制御する制御手段とを設けたことを特徴とする画像表示装置。」

(2)記載要件について

ア 訂正明細書の請求項1における「個別的」との記載について

訂正明細書の請求項1には「種類の異なる複数の収集画像を個別的に表示する画像表示装置」と記載されている。
ここで,上記「個別的に表示」は,「個別」との語が一般的に「個々別々」を意味することからして,種類の異なる個々の画像を別々に表示すること,例えばモニタ1台で1種類の画像を表示することと解釈される。
これは,上記請求項1に係る発明が,「表示させる画像を指定」し,「指定された画像の画像種類に対応する前記表示形態」により「画像表示を制御する」ものであり,特定の画像種類に属する指定された画像の表示を行うものであること,訂正明細書の発明の詳細な説明に「オペレータは予め,画像の種類(撮影部位,撮影方法,撮影モダリティ等)毎に,画面の分割/非分割の別等,画像表示用モニタ1の画面上においてその画像に適合する画像の配置に関する表示形態をそれぞれ対応付けてレコード1乃至nとして記憶しておく。・・・画像の種類が選択されるとそれに対応するレコードが読み出されるようになっている。つまりテーブルが作成されている。」と記載されるとおり,画像種類毎に表示形態が一つのレコードとして対応付けられ,指定された画像の表示に際して,画像の種類に応じた一つのレコードが読み出されることとも整合する。
そうすると,訂正明細書の請求項1における「種類の異なる複数の収集画像を個別的に表示する画像表示装置」との記載は,上記のとおりその内容を矛盾なく解釈することができるものであり,不明確であるとまではいえない。

イ 訂正明細書の請求項1における「基づく」との記載について

訂正明細書の請求項1には「画面の分割/非分割に基づく画像の配置に関する表示形態」と記載されている。
ここで,上記「基づく」との表現は「?という」という意味合いとして用いられているものであり,上記記載は「画面の分割/非分割の別という画像の配置に関する表示形態」を意味するものである,と解釈するのが自然である。
そうすると,訂正明細書の請求項1における「画面の分割/非分割に基づく画像の配置に関する表示形態」との記載が不明確であるとはいえない。

よって,本件訂正明細書の特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第4項第2号に規定した要件を満たすものである。

(3)進歩性について

ア 刊行物の記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物であり,本件訂正審判請求書において参考文献として添付された下記刊行物1,および当審の先行技術調査において発見された下記刊行物2には,次の事項が記載されている。なお,下線は当審により付記したものである。

(ア)刊行物1(特開昭63-313280号公報)の記載事項

(ア-1)「2.特許請求の範囲 (1)複数の操作者にそれぞれ対応付けた識別情報を入力する入力部と,このうちの各操作者毎に予め設定した画像処理条件を前記識別情報に対応させて記憶するとともに複数の撮影画像情報を記憶する記憶部と,この記憶部に記憶された撮影画像情報に基づく画像情報を表示する表示部とを有する画像処理装置であって,入力された識別情報により特定される画像処理条件に基づく画像処理が施された画像情報を表示することを特徴とする画像処理装置。」(1頁左欄4?14行)

(ア-2)「(発明が解決しようとする問題点)・・・他方,複数の医者はそれぞれ個人差があり,最初に一人の医者が表示部上に表示された撮影画像に適応させて,例えば輝度,コントラスト,ウインドウ幅等を調整し,当該医者が満足するような画像処理をしたものであっても,次に操作する他の医者には,例えばコントラストが弱く感じたりあるいは明るすぎると感じたりするものである。このことは,同一の撮影方法で撮影した画像だけではなく,他の種類,例えばX線撮影像とNMR撮影像等では顕著であり,さらに,同一撮影方法においても撮影部位が異なる場合でも同様である。」(1頁右欄19行?2頁左上欄14行)

(ア-3)「(実施例)以下,本発明の一実施例画像処理装置について図面を参照して説明する。・・・詳述すると,各識別情報に対応する画像処理条件は第2図に示すようになっている。例えば符号10で示す医者Aについては,撮影方法がX線で撮影した撮影像10aであった際には,符号10aで示すウインドウ幅WW=0.1000,符号10bで示すウインドウレベルWL=50.250,符号10cで示す白黒反転表示という画像処理条件を設定しておく。また,撮影方法がMRIで撮影した撮影像12であれば,ウインドウ幅WW=50.500,ウインドウレベルWL=100.500等のように設定する。他の画像処理条件としては画像サイズ,表示位置,フィルタ処理,上下左右反転等を行うようにしている。他方,符号11で示す医者Bについても同様に,X線の場合11aと,MRIの場合11dあるいはその他の撮影方法毎に画像処理条件を設定しておく。そして,このような画像処理条件を他の操作者についてもそれぞれ設定し,前述した記憶部4を構成する光ディスク6に記憶させている。従って,制御部1はこの記憶された画像処理条件のうち指定された画像処理条件に基づき原撮影画像に画像処理を施して表示部に表示制御する。前記表示部9は2つのCRT7,8から構成されており,CRT7には主に前記画像処理が施された画像情報が表示制御され,他方,CRT8には第2図に示した画像処理メニュウ12が表示制御されるようにしている。」(2頁左下欄12行?3頁右上欄4行)

(イ)刊行物2(特開昭64-13676号公報)の記載事項

(イ-1)「2.特許請求の範囲 (1)被検体から得た診断画像データをその管理情報とともに格納する機能を有し外部との交信が可能な任意の複数種の医用診断機器と接続して用いられて,それぞれの医用診断機器に保存されている診断画像データと管理情報を読み,この管理情報を表示してこれより目的の画像情報を選択して表示するようにした診断装置において,操作指令やデータを手操作入力するための手操作入力手段と,複数の画像情報を任意の指定領域にそれぞれ格納し,任意の領域を読み出し制御可能な大容量の表示用メモリと,映像表示用のディスプレイ装置と,それぞれの医用診断機器に保存されている管理情報を読みデータベースを構築する機能,このデータベースをディスプレイに表示するとともにこれを利用して選定指令された被検体の指定画像データを取込み表示用メモリのそれぞれ指定の領域に書き込む制御指令機能,この指定画像データを取込むと始めにこの表示用メモリの全画像情報を読み出し,ディスプレイに同時に並行表示し,手操作入力手段による指令があればそれに対応した画像表示をする表示制御機能とを有する制御手段と,この制御手段により制御され上記表示用メモリの制御を行うメモリ制御手段とを具備したことを特徴とする医用画像診断装置。」(1頁左欄4行?右欄8行)

(イ-2)「〔産業上の利用分野〕本発明は近年広く利用されている画像データをディジタルデータとして得て保存することのできる各種医用診断機器に接続して利用し,これら各種医用診断機器の保存データを総括的に利用して表示できるようにした医用画像診断装置に関する。」(1頁右欄13?18行)

(イ-3)「オペレータがモード選択すると上述のデータベースに基づいて第5図に示す如く,患者名,ID,モダリティ名,画像枚数等が検索され,その-覧が表示される。この中からオペレータが患者名,あるいはIDなどデータ検索の手掛りとなるデータをインデックス用のキーワードとして入力することで,現在の選択モードに応じ,コントローラ12はモダリティ側または自己の大容量記憶装置19側から該当キーワードを持つ画像データを読み出す。そして,コントローラ12はアドレスコントローラ14を制御して表示用メモリ13のCRTディスプレイ18b,18c対応の表示領域に対してこの読み出し画像データを書込む。どのモダリティの画像を表示用メモリ13のCRTディスプレイ18b,18c対応の表示領域にどのように書込むかは予め設定されており,コントローラ12はこの設定に従って書き込み領域をコントロールする。CRTディスプレイ18b,18cにおける表示例は第3図の如くで,CRTディスプレイ18bには例えばCTの第1画面,核医学診断装置の第1画面,・・・のマルチ表示,CRTディスプレイ18cにはX線装置の第1画像の全面表示と言った具合に表示を行う。この表示の第1画面は予め設定しておき,画像データにその識別情報を付加することで,自動選択する。また,CRTディスプレイへの上述のようなマルチ表示や全面表示の設定も予め行ってあり,コントローラ12の制御の下でこれを実現する。」(5頁左上欄7行?右上欄15行)

イ 対比・判断

(ア)刊行物1について
刊行物1には,複数の操作者にそれぞれ対応付けた識別情報を入力する入力部と,このうちの各操作者毎に予め設定した画像処理条件を前記識別情報に対応させて記憶するとともに複数の撮影画像情報を記憶する記憶部と,この記憶部に記憶された撮影画像情報に基づく画像情報を表示する表示部とを有する画像処理装置であって,入力された識別情報により特定される画像処理条件に基づく画像処理が施された画像情報を表示する画像処理装置において,画像処理条件として,撮影方法に応じたウインドウ幅,ウインドウレベル,白黒反転表示という条件や,画像サイズ,表示位置,フィルタ処理,上下左右反転等の条件を設定可能とすること,表示部9は2つのCRT7,8から構成されており,CRT7には主に前記画像処理が施された画像情報が表示制御されること,について記載されている。
上記画像処理装置において,対応させて記憶されるのは,複数の操作者に対応付けた識別情報と,各操作者毎に予め設定した画像処理条件とである。そして,上記画像処理条件は撮影方法に応じて設定されるものであり,それは,摘記事項(ア-3)に,医者ごとに撮影方法がX線の場合とMRIの場合のそれぞれについて異なる画像処理条件を設定することが記載されているとおりである。
そうすると,上記画像処理装置は,複数の操作者および撮影方法と,各操作者および撮影方法に対して予め設定した画像処理条件とを対応させて記憶するものであるといえる。

しかしながら,上記画像処理装置において入力されるのは複数の操作者に対応付けた識別情報であり,摘記事項(ア-2)に記載されるように,上記画像処理装置は,操作者である医師の個人差に適応させた画像処理条件を記憶させることを目的とするものである。 そうすると,刊行物1には,訂正発明の有する「表示させる画像を指定する入力手段」について記載されておらず,上記「入力手段」が本願出願前に公知であるとしても,これを刊行物1に記載された上記画像処理装置に対して適用する動機付けが存在するとはいえない。

さらに,上記画像処理装置において画像処理条件として想定されているのは,ウインドウ幅,ウインドウレベル,白黒反転表示,画像サイズ,表示位置,フィルタ処理,上下左右反転等の条件であり,摘記事項(ア-2)の「発明が解決しようとする問題点」において例示されるのも,輝度,コントラスト,ウインドウ幅等の条件であり,刊行物1の第4図に例示された非分割の表示画像からみても,刊行物1に,画面の分割/非分割といった画像配置に関する画像処理条件について,記載または示唆されているということはできない。
そうすると,刊行物1には,訂正発明の有する本件訂正事項である「画面の分割/非分割に基づく画像の配置に関する表示形態」について記載されておらず,上記「表示形態」が本願出願前に公知であるとしても,これを刊行物1に記載された上記画像処理装置に対して適用することが,当業者にとって容易であるとはいえない。

よって,本件訂正発明は,刊行物1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(イ)刊行物2について

刊行物2には,被検体から得た診断画像データをその管理情報とともに格納する機能を有し外部との交信が可能な任意の複数種の医用診断機器と接続して用いられて,それぞれの医用診断機器に保存されている診断画像データと管理情報を読み,この管理情報を表示してこれより目的の画像情報を選択して表示するようにした医用画像診断装置であり,オペレータが患者名,あるいはIDなどデータ検索の手掛りとなるデータをインデックス用のキーワードとして入力する手段と,該当キーワードを持つ画像データを読み出し,表示用メモリ13のCRTディスプレイ18b,18c対応の表示領域に対してこの読み出し画像データを書込むコントローラ12と,表示手段として,マルチ表示用のCRTディスプレイ18bと,全面表示用のCRTディスプレイ18cとを備えた医用画像診断装置において,どのモダリティの画像を表示用メモリ13のCRTディスプレイ18b,18c対応の表示領域にどのように書込むかは予め設定されており,コントローラ12はこの設定に従って書き込み領域をコントロールし,CRTディスプレイへのマルチ表示や全面表示の設定も予め行ってあり,コントローラ12の制御の下でこれを実現することについて記載されている。
上記医用画像診断装置は,様々なモダリティの画像を,モダリティに応じて予め設定されたマルチ表示または全面表示,すなわち画面の分割/非分割という画像配置形態で表示するものであり,上記「設定」を記憶手段により行うことは技術常識であるから,予め画像種類に適合した,画面の分割/非分割に基づく画像の配置に関する表示形態と画像種類とを対応付けて記憶する記憶手段を備えるものであるといえる。

しかしながら,上記医用画像診断装置において,オペレータにより入力されるのは,患者名,あるいはIDなどのインデックス用のキーワードであり,入力されたキーワードを持つ画像データが読み出されるのであるから,表示させる画像を指定して入力することについては意図されていない。
そうすると,刊行物2には,訂正発明の有する「表示させる画像を指定する入力手段」について記載されておらず,上記「入力手段」が本願出願前に公知であるとしても,これを刊行物2に記載された上記医用画像診断装置に対して適用する動機付けが存在するとはいえない。

さらに,上記医用画像診断装置は,摘記事項(イ-2)に記載されるとおり,各種医用診断機器の保存データを総括的に利用して表示できるようにしたものであり,様々なモダリティの画像を,モダリティに応じてマルチ表示用CRTディスプレイ18bと全面表示用CRTディスプレイ18cとのそれぞれに振り分けて表示するものであるから,複数の表示手段に複数種類の画像を表示することが前提とされている。
そうすると,刊行物2には,訂正発明の「種類の異なる複数の収集画像を個別的に表示する」構成について記載されておらず,上記構成が本願出願前に公知であるとしても,これを刊行物2に記載された上記医用画像診断装置に対して適用する動機付けが存在するとはいえない。

よって,本件訂正発明は,刊行物2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

第3 むすび
以上のとおり,本件訂正審判の請求は,特許法第126条第1項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし,且つ同上第2項および第3項の規定に適合するものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画像表示装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】種類の異なる複数の収集画像を個別的に表示する画像表示装置において、予め画像種類に適合した、画面の分割/非分割に基づく画像の配置に関する表示形態と画像種類とを対応付けて記憶する記憶手段と、表示させる画像を指定する入力手段と、この入力手段により指定された画像の画像種類に対応する前記表示形態を前記記憶手段から読み出し、これにより画像表示を制御する制御手段とを設けたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】前記制御手段は、前記入力手段からの指示により前記記憶手段内のデータを変更できる機能を有する請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】前記制御手段は、画像表示が行われている際の前記入力手段からの指示により表示画像の配置に関する表示形態及び前記記憶手段の記憶内容を変更できる機能を有する請求項1記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
[発明の目的]
(産業上の利用分野)
本発明は医用診断装置から得られる種々の画像を表示する画像表示装置に関するものである。
(従来の技術及び解決すべき課題)
従来の技術では、画像表示装置及びハードコピー装置において画像の表示形態は全てオペレータが表示する都度にマニュアルで指示する。例えば胸部のCR画像であればモニタ1台に1枚表示、頭部のCT像であれば1台のモニタに複数のスライス像を表示するなど、撮影部位,撮影方法,撮影モダリティにより、画面の分割/非分割の別等、モニタ画面上におけるその画像に適合した画像の配置に関する表示形態(以下単に表示形態ともいう)を選択しなければならない。そのため、表示の都度に表示形態を指示することは操作性の悪さにつながるという欠点がある。
本発明は、撮影部位(胸部,頭部等),撮影方法(管電圧,造影剤撮影,サブトラクション,シネ撮影等),撮影モダリティ(CT装置,MRI,X線装置)等の撮影の種類によって画像表示の都度、画像の配置に関する表示形態を指示することなく自動的に、その画像に適合した配置で表示させることによって、操作性を向上させた画像表示装置を提供することを目的とするものである。
[発明の構成]
(課題を解決するための手段)
本発明は前記目的を達成するために、種類の異なる複数の収集画像を個別的に表示する画像表示装置において、予め画像種類に適合した、画面の分割/非分割に基づく画像の配置に関する表示形態と画像種類とを対応付けて記憶する記憶手段と、表示させる画像を指定する入力手段と、この入力手段により指定された画像の画像種類に対応する前記表示形態を前記記憶手段から読み出し、これにより画像表示を制御する制御手段とを設けたことを特徴とするものである。
(作用)
本発明は、オペレータが表示する画像を指示するだけで、システムが画像の撮影部位,撮影方法,撮影モダリティにより、その画像に適合した画像の配置に関する表示形態を自動的に選択するという手段をとる。これによって、従来よりも操作性が向上するという効果を得ることができる。なお、選択する表示形態に学習機能をつけること、及び、オペレータが事前に表示形態を登録することも可能である。
(実施例)
第1図は本発明による画像表示装置の一実施例を示すブロック図である。この図に示す画像表示装置は画像表示用モニタ1と、コンソール2と、制御部3と、ハードディスクドライブ部4と、ハードディスク5と、光ディスクドライブ部6と、光ディスク7を備えており、オペレータがコンソール2より記憶手段たるハードディスク5あるいは光ディスク7に収録されている画像の表示を指示すると画像表示用モニタ1にその画像が表示される。
画像表示用モニタ1は制御部3より出力された画像を画面表示する。
コンソール2は入力手段たるキーボード及びワーキング用ディスプレイとを備えており、キーボードから入力された内容を制御部3に入力して、この制御部3から出力された信号により前記ディスプレイや表示用モニタ1に画面表示が行われる。
ハードディスクドライブ部4は制御部3からの指令によりハードディスク5の内容を読み出したり、ハードディスク5にデータを書き込んだりする。
光ディスクドライブ部6は制御部3からの指令により光ディスク7の内容を読み出したり、光ディスク7にデータを書き込んだりする。
ここで、第2図を参照して前記記憶手段たるハードディスク5は光ディスク7に記憶されるデータの内容について説明する。
例えばハードディスク5には、画像の一覧表や後述するレコードが記憶される。画像の一覧表は、患者のID番号と、撮影部位,撮影方法、撮影モダリティ等がリストとして作成されたものであり、各画像毎のリストとしてハードディスク5に記憶されている。また、このハードディスク5には次のようなレコードデータが記憶されているが、これは予め以下のような処理によって作成される。
オペレータは予め、画像の種類(撮影部位,撮影方法,撮影モダリティ等)毎に、画面の分割/非分割の別等、画像表示用モニタ1の画面上においてその画像に適合する画像の配置に関する表示形態をそれぞれ対応付けてレコード1乃至nとして記憶しておく。例えばレコード2のデータフォーマットDFは第2図にも示すように、画像の種類をインデックスとするエリアと、それに適合する画像の配置に関する表示形態のデータが記憶されたものであり、画像の種類が選択されるとそれに対応するレコードが読み出されるようになっている。つまりテーブルが作成されている。
光ディスク7には医用診断装置によって収集された画像データが格納されている。
上記説明はハードディスク5への記憶内容を示したが、より多くのレコードが必要な場合には同様にして光ディスク7にも記憶されることになる。また、収集画像データをハードディスク5にも格納するようにしてもよい。
次に前記装置の動作を第3図のフローチャートを用いて説明する。
オペレータは、コンソール2より表示可能な画像の一覧表の表示要求を制御部3に出す。制御部3はハードディスクドライブ部4又は光ディスクドライブ部6にそれぞれハードディスク5,光ディスク7に収録されている画像の画像情報を読み出すように指令を出す。指令を受けた各ドライブはハードディスク5あるいは光ディスク7から収録されている画像の画像情報を読み出し、制御部3に伝える。制御部3はコンソール2のディスプレイに画像の一覧表を表示する。
オペレータはディスプレイに表示された画像の一覧表より画像を選択し、キーボードより画像の表示指令を制御部3に出す。制御部3は表示する画像の画像情報から撮影部位,撮影方法,撮影モダリティを読む。その後、制御部3はハードディスクドライブ部4に指令を出し、ハードディスク5上に記憶されているテーブルをアクセスし、前記指定された画像の撮影部位,撮影方法,撮影モダリティに総て一致するレコードを探し、そのレコードに収録されている表示形態を読む。その後、制御部3は表示する画像がハードディスク5上に収録されているのならばハードディスクドライブ部4に、光ディスク7に収録されているのならば光ディスクドライブ部6に指令を出して画像データを読み、先程読んだレコード内の表示形態のデータに従って画像を画像表示用モニタに表示する。このようにして、画像の配置に関する表示形態を指示することなく、自動的にその画像に適合した配置で表示される。
ハードディスク5に登録されている画像種類ごとの表示形態を変更したいときは、第4図のフローチャートに示すようにオペレータはキーボードから画像の撮影部位,撮影方法,撮影モダリティ,表示形態とハードディスク5上のレコードの書換え要求を制御部3に出す。制御部3はハードディスクドライブ部4に指令を出し、ハードディスク5上に収録されている撮影部位,撮影方法,撮影モダリティが入力された撮影部位,撮影方法,撮影モダリティに総て一致するレコードを探す。該当レコードが見つかったら、該当レコードの表示形態を入力された表示形態に書き換える。該当レコードが見つからなかったときは、入力された撮影部位,撮影方法,撮影モダリティ,表示形態より新たにレコードをハードディスク5に登録する。
キーボードより、画像の表示画像と共に表示形態が入力されたときは、第5図のフローチャートに示すように制御部3は上記と同様にして画像の表示をした後、表示した画像の撮影部位,撮影方法,撮影モダリティより上記と同様にしてハードディスク5上の該当レコードの表示形態を入力された表示形態に書き換える。これを学習機能と称する。
[発明の効果]
本発明によれば、オペレータが表示する画像を指示するだけで、システムが画像の種別に適合した画像の配置に関する表示形態を自動的に選択することにより、従来よりも操作性が向上するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示すブロック図、第2図は記憶手段に記憶される内容を示す説明図、第3図乃至第5図は前記実施例の動作説明のためのフローチャートである。
1……表示モニタ、2……入力手段、
3……制御手段、5,7……表示手段。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2011-05-24 
出願番号 特願平2-155789
審決分類 P 1 41・ 851- Y (A61B)
P 1 41・ 854- Y (A61B)
P 1 41・ 856- Y (A61B)
P 1 41・ 853- Y (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小田倉 直人  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 後藤 時男
横井 亜矢子
登録日 2000-02-18 
登録番号 特許第3033835号(P3033835)
発明の名称 画像表示装置  
代理人 河村 修  
代理人 波多野 久  
代理人 河村 修  
代理人 波多野 久  
代理人 河村 修  
代理人 波多野 久  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ