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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
管理番号 1239342
審判番号 不服2008-13949  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-04 
確定日 2011-06-27 
事件の表示 特願2007-291706号「低周波治療装置の電気刺激方式及びその方法。」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月 1日出願公開、特開2008-100086号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成18年4月17日(優先権主張平成17年11月7日)に出願した特願2006-113054号の一部を平成19年11月9日に新たな特許出願としたものであって、平成19年11月9日付けで手続補正書が提出され、平成20年1月28日付けで拒絶理由が通知され、同年3月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月9日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月4日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで特許請求の範囲、明細書及び図面についての手続補正がされたものであり、その後、当審において、平成20年6月4日付けの手続補正の却下の決定が平成22年6月1日付けでされるとともに、同日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成22年6月16日付けで意見書が提出されたものである。


II.本願発明について
上記のように、平成20年6月4日付けの手続補正は平成22年6月1日付けで却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成20年3月14日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「 【請求項1】
電気刺激手段を備えた低周波治療装置において、脳波誘導の周波数を用いた電気刺激方式であって、
脳波誘導の周波数は、δ波、θ波、α波、β波、γ波、から少なくともβ波とγ波を含む脳波帯域を推移して反復し、且つ、推移経路を反復毎に相違すべく成される手段、
脳波誘導の休止周期は、前記脳波帯域と対応して推移し、且つ、1/3Hz以下の呼吸周期を用いて休止時間を加味する手段、
を備えたことを特徴とした低周波治療装置の電気刺激方式。」


III.当審の拒絶理由
当審において通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

[拒絶理由1]
この出願は、特許請求の範囲及び明細書の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(略)

[拒絶理由2]
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(略)

[拒絶理由3]
この出願は、明細書の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

h.発明の詳細な説明において、「休止期間」、「休止時間」、「休止間隔」、「休止時間の間隔」、「タイムラグ」、「実施時間」、「実施間隔」、「誘導時間」、「呼吸数」、「呼吸周期」、「呼吸周波数」、「呼吸動作の間隔」等の各用語について、各用語の技術的な意味及び各用語の関係が明らかでない。
i.図面に関連する記載が明確かつ十分ではなく、各図面が何を表しているのか明らかでない。例えば、図6(審決注:願書に最初に添付した図面の図6、以下、同じ。)は、請求項1の「2つ以上の脳波帯域を推移して反復し、且つ、推移経路を反復毎に相違する」事項を示しているようにも思われるが、図6におけるどの部分が、「推移経路」と対応しているのか、また、図1の「工程a-e」及び「休止時間f」と図6の記載とがどのように関連しているのか不明である。また、図1及び図6の記載事項と図2?図4の記載事項とがどのように関連しているのも不明である。
j.請求項1ないし3の「脳波誘導の休止周期は、1/3Hz以下の呼吸周期を用いて休止時間を加味する」に関し、何をどのように「加味する」のか、発明の詳細な説明において具体的に記載されていない。例えば、段落【0014】に「休止間隔は、脳波に応じて予測される呼吸数以下が好ましく、平常時においては一般的に毎分の呼吸数が12から20であるので、複合波は1/5Hzから1/3Hz以下を用いる。」とあるが、「複合波」の意味も含め、文意不明瞭である。また、「呼吸数以下が好まし」いとする技術的な意味も明らかでない。


IV.本願明細書の記載事項
本願の平成19年11月9日付け及び平成20年3月14日付けの手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の発明の詳細な説明には、本願発明を特定するための事項である「脳波誘導の休止周期は、」「1/3Hz以下の呼吸周期を用いて休止時間を加味する手段」に関連して、次の記載がある。

記載ア:
「・生体電気刺激装置や低周波治療装置の治療効果を頭部に長時間適用できる。
・脳波誘導装置においては、実効率が長時間持続させることができる。また、睡眠状態の脳波を矯正することにより、精神と神経に関わる病気全般が治療可能になる。
・脳波誘導を脳波帯域全体に実施することによって、結果的に脳を賦活させることが可能である。
・従来の1/fゆらぎ効果の代わりとして適用することも可能である。
・サブリミナルシステムにおいて、サブリミナル効果を増幅することができる。」(段落【0011】)

記載イ:
「図1では、知覚に関係するための時間間隔を要するシステム等において用いた例である。各工程a-eと休止時間fにおいて、脳波を賦活させるために徐徐に間隔を広げていることが示されている。」(段落【0013】)

記載ウ:
「また、休止間隔は、脳波に応じて予測される呼吸数以下が好ましく、平常時においては一般的に毎分の呼吸数が12から20であるので、複合波は1/5Hzから1/3Hz以下を用いる。」(段落【0014】)

記載エ:
「つまり、脳波誘導のための周波数に、推移変化と呼吸周期に基づく休止間隔を加味することにより人体への親和性が保たれ、反復毎時にもその推移経路が相違変化することにより脳波誘導効果を長時間持続することができるだけでなく、使用者の脳波を賦活して誘導させるので、低周波治療装置の電気刺激手段として適用することで生体の実施部位に脳波の賦活効果と合致した効果を期待できる。」(段落【0014】)

記載オ:
「そこで、脳波周波数に対して関係性を有する呼吸数の近似値以下の周波数を複合することで、脳波誘導の休止間隔を決定する。脳波誘導の実施時間は、脳波のための周波数が高くなるほど疲労しやすくなるため、実施間隔は前述の呼吸周期以下という条件に加えて、連続的な刺激にならないように決定すべきである。」(段落【0023】)

記載カ:
「図3は、実際に睡眠中の脳波を誘導するための優勢脳波と、休止間隔の推移であり、休止間隔の帯域は約0.01-0.3Hzが用いられている。」(段落【0028】)

記載キ:
「図5は、脳波が約47.8Hz-7.4Hz、呼吸数のための周波数が約0.4-0.1Hzで推移することで、脳波を賦活させるための実施間隔である。」(段落【0038】)

記載ク:
「脳波誘導の周波数は、図2及び図6のように少なくともβ波とγ波を含む脳波帯域を推移して反復し、且つ、推移経路を反復毎に相違すべく成され、且つ、脳波誘導の休止周期は、前記脳波帯域と対応した1/3Hz以下の呼吸周期を用いて休止時間を加味するのである。
ここで、休止周期は、脳波に応じて予測される呼吸数以下が好ましく、脳波帯域と対応した1/5Hzから1/3Hz以下を用いる。」(段落【0049】)

記載ケ:
「【図1】脳波誘導に対して呼吸周期を用いた休止時間の間隔を示す図である。
【図2】脳波周波数と呼吸周波数の複合波形図である。
【図3】睡眠時の脳波と、複合波による休止間隔の推移図である。
【図4】睡眠時脳波誘導算出方法を示した折れ線図である。
【図5】脳波を賦活させるための実施間隔である。」(段落【0055】)


V.当審の判断
本願発明を特定するための事項である「脳波誘導の休止周期は、」「1/3Hz以下の呼吸周期を用いて休止時間を加味する手段」に関し、本願明細書の発明の詳細な説明は、本願発明の実施ができる程度に明確かつ十分に記載されているかについて検討するに、発明の詳細な説明は、少なくとも次の(1)?(3)の各点で不明確であり、本願発明の実施ができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

(1)「脳波誘導の休止周期は、」の「休止周期」と、本願明細書の「休止間隔」(記載ウ、記載エ、記載オ、記載カ)及び「実施間隔」(記載オ、記載キ)とがどのように対応するのか、発明の詳細な説明に記載されておらず、「脳波誘導の休止周期」が、どの時点からどの時点までの期間ないし時間を意味しているのか、不明確である。

(2)「1/3Hz以下の呼吸周期」と本願明細書の「呼吸数以下」(記載ウ、記載ク)、「呼吸数の近似値以下の周波数」(記載オ)及び「呼吸数のための周波数」(記載キ)との関係が、発明の詳細な説明に記載されておらず、「1/3Hz以下の呼吸周期」とは、特定の範囲の周波数を意味しているのか、特定の範囲の期間ないし時間を意味しているのか、不明確である。

(3)「1/3Hz以下の呼吸周期を用いて休止時間を加味する」点について、本願明細書には、「休止間隔は、脳波に応じて予測される呼吸数以下が好ましく、平常時においては一般的に毎分の呼吸数が12から20であるので、複合波は1/5Hzから1/3Hz以下を用いる。」(記載ウ)、「脳波周波数に対して関係性を有する呼吸数の近似値以下の周波数を複合することで、脳波誘導の休止間隔を決定する。脳波誘導の実施時間は、脳波のための周波数が高くなるほど疲労しやすくなるため、実施間隔は前述の呼吸周期以下という条件に加えて、連続的な刺激にならないように決定すべきである。」(記載オ)、「脳波誘導の休止周期は、前記脳波帯域と対応した1/3Hz以下の呼吸周期を用いて休止時間を加味するのである。ここで、休止周期は、脳波に応じて予測される呼吸数以下が好ましく、脳波帯域と対応した1/5Hzから1/3Hz以下を用いる。」(記載ク)との記載があり、図1には、各工程a-eにそれぞれ休止時間fを付加する事項が示されてはいるが、記載オの「呼吸数の近似値以下の周波数」を何に対してどのように複合して「休止時間を加味する」のか、また、その「加味」に当たり、加味される各休止時間の長さや脳波誘導の各実施時間の長さを具体的にどのように設定すべきであるのか、については、発明の詳細な説明に明確かつ十分な記載がなく、不明確である。
また、図面の図2(脳波周波数と呼吸周波数の複合波形図)、図3(睡眠時の脳波と、複合波による休止間隔の推移図)には、それぞれ「複合波」なるものが示されているが、発明の詳細な説明には、当該「複合波」を作るための具体的な手順ないし手段についても、具体的な記載がない。

これらの点に関し、請求人は、平成22年6月16日付け意見書において、次のような主張をしている。
「2.請求項の発明特定事項について。
拒絶理由3(1)のa?bにおいて、休止周期、推移経路、休止時間が不明とあるが、当該事項は脳波誘導の実施時間を具体的に特定するものである。
すなわち、脳波誘導に休止時間を周期的に加え、当該周期を「休止周期」として記載したものであり、請求項1?3の記載には呼吸周期の複合を目的とした1/3Hz以下の数値限定範囲及び推移経路の直列的付加とを含んでいる。

・・・(中略)・・・

3.発明の詳細な説明について。
拒絶理由3(3)hについて羅列されている事項について補足する。
「誘導時間」とは、脳波誘導を行う時間である。
「実施時間」とは、脳波誘導の実施時間である。
「休止時間」とは、脳波誘導の実施時間に加える休止時間のことである。
「休止期間」とは、休止時間の開始から終了までの期間である。
「休止時間の間隔」とは、休止時間と次の休止時間の間隔である。
「休止間隔」は「休止時間の間隔」を省略したものである。
「実施間隔」とは、上記休止間隔に対する実施時間の間隔であり、数値的差異はなく技術的に実質同一である。
「タイムラグ」とは、脳波誘導におけるレム睡眠の開始段階と、実際の人体のレム睡眠の始まる時差である。なお、レム睡眠は呼吸数や脳波の検出によっても判別できるが、本願発明では本願特有の脳波誘導と呼吸周期の複合によってレム睡眠が始まるタイミングを予想可能としている。
「呼吸数」とは、医学用語であり1分間における人体の呼吸する回数である。
「呼吸周期数」とは、上記呼吸数を周波数として解釈したものである。
「呼吸動作の間隔」とは、上記呼吸周期数を間隔として解釈したものである。
「呼吸周期」とは、上記呼吸周期数を周期として解釈したものである。

iにおいて指摘されている図6の図面には、縦方向の脳波の誘導周波数と、横方向の脳波の誘導時間とが示されている。
このうち、横方向で見る内容は、脳波の誘導周波数を示す実施時間と、脳波の誘導周波数を有していない休止時間と、からなっており、交互に繰り返しを有している。
つまり、実施間隔、又は、休止間隔を有している。
この休止間隔は、脳波の誘導時間によって相違して推移しており、脳波誘導の周波数とも対応している。これは図1及び図2も同様である。また、ここで言う「推移」とは、「相違」の下位概念化したものであり、その技術的意味は異なる。
図3は、この休止間隔を周波数として示したものである。いずれも、脳波の誘導時間によって相違して推移しており、脳波誘導の周波数とも対応したものとなっている。

jにおいて、請求項1ないし3の「脳波誘導の休止周期は、1/3Hz以下の呼吸周期を用いて休止時間を加味する」に関し、何をどのように加味するのか発明の詳細な説明において記載されていない、とあるが、本願は脳波誘導の休止周期に1/3Hz以下を用いており、この構成には休止時間を加味することも既に含まれている。
そして、請求項に記載されている内容は、休止時間に呼吸周期を複合するという技術的意味及び技術的目的を特定するためのものである。

・・・(中略)・・・

4.まとめ
したがって、本願発明の請求項及び発明の詳細な説明は、明確である。また、特別な技術的意味及び技術的目的を有しており、この具体的構成から従来にはないまったく新しい効果が得られるものであり、進歩性を有している。
よって、本願発明は特許されるべきものである。」

そこで、上記意見書における各用語の説明を踏まえつつ、本願発明を特定するための事項である「脳波誘導の休止周期は、」「1/3Hz以下の呼吸周期を用いて休止時間を加味する手段」について、さらに検討すると、本願発明を特定するための事項である「脳波誘導の休止周期は、」「1/3Hz以下の呼吸周期を用いて休止時間を加味する手段」とは、“脳波誘導の実施と休止を交互に繰り返し、脳波誘導の一の実施時間と当該実施時間に加えられた一の休止時間とを合わせた長さを、1/3Hz以下の呼吸周期以下、即ち、3秒以上とする手段”を、その趣旨とするものであると、一応、推測できる。
そして、この実施時間ないし休止時間に関し、本願明細書には、「図1では、各工程a-eと休止時間fにおいて、脳波を賦活させるために徐徐に間隔を広げている」(記載イ)、「脳波誘導の実施時間は、脳波のための周波数が高くなるほど疲労しやすくなるため、実施間隔は前述の呼吸周期以下という条件に加えて、連続的な刺激にならないように決定すべきである。」(記載オ)と記載され、また、図6には、種々の長さの実施時間及び休止時間を用いた「脳波を賦活させるための実施間隔」が漠然と示されてはいる。
しかしながら、発明の詳細な説明には、繰り返される脳波誘導の個々の実施時間をどのような長さに設定し、個々の実施時間に対して加えるべきそれぞれの休止時間の長さをどのように設定するかについては、何ら具体的な記載がない。
してみると、本願発明の「脳波誘導の休止周期は、」「1/3Hz以下の呼吸周期を用いて休止時間を加味する手段」を、“脳波誘導の実施と休止を交互に繰り返し、脳波誘導の一の実施時間と当該実施時間に加えられた一の休止時間とを合わせた長さを3秒以上とする手段”であると解したとしても、各実施時間及び各休止時間の長さを具体的にどのように設定すれば、本願発明の「低周波治療装置の電気刺激方式」が、記載アに示される各効果を達成できるのかについては、なお、明らかではないことから、発明の詳細な説明には、「脳波誘導の休止周期は、」「1/3Hz以下の呼吸周期を用いて休止時間を加味する手段」について、明確かつ十分に記載されているとはいえない。
また、低周波治療装置における脳波誘導の実施時間と休止時間に関し、記載アに示される各効果を達成するために必要な、各実施時間及び各休止時間の具体的長さが、この出願当時、技術常識であったともいえない。

よって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、「脳波誘導の休止周期は、」「1/3Hz以下の呼吸周期を用いて休止時間を加味する手段」を発明を特定するために必要と認められる事項として含む本願発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。


VI.むすび
以上のとおりであるから、本願は、明細書の発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-13 
結審通知日 2011-04-05 
審決日 2011-04-18 
出願番号 特願2007-291706(P2007-291706)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長屋 陽二郎  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 豊永 茂弘
関谷 一夫
発明の名称 低周波治療装置の電気刺激方式及びその方法。  
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