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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1239686
審判番号 不服2009-900  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-08 
確定日 2011-07-07 
事件の表示 特願2004- 18650「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月11日出願公開、特開2005-217523〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1 経緯
本願は、平成16年1月27日の出願であって、平成20年8月4日付けで手続補正がなされ、平成20年9月18日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成20年11月18日付けで意見書が提出されると同時に手続補正がなされたが、平成20年12月5日付け(発送日同年12月9日)で拒絶査定がなされたものである。
本件は、本願についてなされた上記拒絶査定を不服として平成21年1月8日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、平成21年2月9日付けで手続補正がなされたものである。

2 査定の概要
原査定の理由は、概略、次のとおりである。

[査定の理由]
請求項1?11に係る発明は、下記の刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2002-41276号公報
引用文献2:特開平6-152638号公報
引用文献3:特開2002-305695号公報
引用文献4:特開2002-185881号公報
引用文献5:特開2004-7144号公報

第2 補正却下の決定
平成21年2月9日付けの手続補正について次のとおり決定する。

[補正却下の決定の結論]
平成21年2月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成21年2月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項1?請求項11を補正後の請求項1?請求項9にする補正である。

補正前の請求項1?請求項11
「 【請求項1】
利用者からの操作を受け付ける操作手段と、
通信手段により取得した通信データ、および、外部から入力された映像データを表示するための表示手段と、
前記通信データの表示領域と前記映像データの表示領域とを設定する表示領域設定手段と、を備え、
前記表示手段が前記通信データの所定部分と前記映像データとを同時に表示しているときに、
前記表示領域設定手段は、
前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域とは重ならない領域に設定し、
前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて、前記映像データを表示していた表示領域を含み、前記通信データの少なくとも前記所定部分以外の部分を表示するように前記通信データの表示領域を設定する、電子機器。
【請求項2】
利用者からの操作を受け付ける操作手段と、
通信手段により取得した通信データ、および、記憶手段に記憶された映像データであって再生手段により再生された映像データを表示するための表示手段と、
前記通信データの表示領域と前記映像データの表示領域とを設定する表示領域設定手段と、を備え、
前記表示手段が前記通信データの所定部分と前記映像データとを同時に表示しているときに、
前記表示領域設定手段は、
前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域とは重ならない領域に設定し、
前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて、前記映像データを表示していた表示領域を含み、前記通信データの少なくとも前記所定部分以外の部分を表示するように前記通信データの表示領域を設定する、電子機器。
【請求項3】
利用者からの操作を受け付ける操作手段と、
通信手段により取得した通信データ、および、外部から入力された映像データを表示するための表示手段と、
前記通信データの表示領域と前記映像データの表示領域とを設定する表示領域設定手段と、を備え、
前記表示手段が前記通信データの所定部分と前記映像データとを同時に表示しているときに、
前記表示領域設定手段は、
前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域の縁に沿った領域に設定し、
前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて、前記映像データを表示していた表示領域を含み、前記通信データの少なくとも前記所定部分以外の部分を表示するように前記通信データの表示領域を設定する、電子機器。
【請求項4】
利用者からの操作を受け付ける操作手段と、
通信手段により取得した通信データ、および、記憶手段に記憶された映像データであって再生手段により再生された映像データを表示するための表示手段と、
前記通信データの表示領域と前記映像データの表示領域とを設定する表示領域設定手段と、を備え、
前記表示手段が前記通信データの所定部分と前記映像データとを同時に表示しているときに、
前記表示領域設定手段は、
前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域の縁に沿った領域に設定し、
前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて、前記映像データを表示していた表示領域を含み、前記通信データの少なくとも前記所定部分以外の部分を表示するように前記通信データの表示領域を設定する、電子機器。
【請求項5】
前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域の画面下方端の縁に沿った領域に設定することを特徴とする請求項3または4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記表示領域設定手段は、前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて表示領域を設定するときは、通信データの表示領域と映像データの表示領域とが重ならないように表示領域を設定する、請求項1?5のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記通信データは電子メールデータであり、
前記所定部分は前記電子メールデータの一部である、請求項1?6いずれか1項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記所定部分は、電子メールデータの送信者情報を含んでいる、請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記所定部分は、電子メールデータのタイトル情報を含んでいる、請求項7または8に記載の電子機器。
【請求項10】
前記所定部分は、電子メールデータの本文の冒頭部分を含んでいる、請求項7?9のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項11】
前記通信データは、マークアップ言語で示されたデータである、請求項1?6のいずれか1項に記載の電子機器。」

を、次のとおり補正後の請求項1?請求項9に補正するものである。

「 【請求項1】
利用者からの操作を受け付ける操作手段と、
通信手段により取得した通信データ、および、外部から入力された映像データを表示するための表示手段と、
前記通信データの表示領域と前記映像データの表示領域とを設定する表示領域設定手段と、を備え、
前記表示手段が前記通信データの所定部分と前記映像データとを同時に表示しているときに、
前記表示領域設定手段は、
前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域を維持しつつ、前記映像データを表示する領域の縁に沿った領域に設定し、
前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて、前記映像データを表示していた表示領域を含み、前記通信データの少なくとも前記所定部分以外の部分を表示するように前記通信データの表示領域を設定する、電子機器。
【請求項2】
利用者からの操作を受け付ける操作手段と、
通信手段により取得した通信データ、および、記憶手段に記憶された映像データであって再生手段により再生された映像データを表示するための表示手段と、
前記通信データの表示領域と前記映像データの表示領域とを設定する表示領域設定手段と、を備え、
前記表示手段が前記通信データの所定部分と前記映像データとを同時に表示しているときに、
前記表示領域設定手段は、
前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域を維持しつつ、前記映像データを表示する領域の縁に沿った領域に設定し、
前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて、前記映像データを表示していた表示領域を含み、前記通信データの少なくとも前記所定部分以外の部分を表示するように前記通信データの表示領域を設定する、電子機器。
【請求項3】
前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域の画面下方端の縁に沿った領域に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記表示領域設定手段は、前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて表示領域を設定するときは、通信データの表示領域と映像データの表示領域とが重ならないように表示領域を設定する、請求項1?3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記通信データは電子メールデータであり、
前記所定部分は前記電子メールデータの一部である、請求項1?4いずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記所定部分は、電子メールデータの送信者情報を含んでいる、請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記所定部分は、電子メールデータのタイトル情報を含んでいる、請求項5または6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記所定部分は、電子メールデータの本文の冒頭部分を含んでいる、請求項5?7のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記通信データは、マークアップ言語で示されたデータである、請求項1?4のいずれか1項に記載の電子機器。」

2 補正の適合性
(1)補正の目的
本件補正は、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
詳細は以下のとおりである。

ア 請求項の削除
本件補正は、補正前の請求項1及び2を削除するものであるから、請求項の削除を目的とするものである。

イ 請求項1
補正前の請求項3の「前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域の縁に沿った領域に設定し、」に「前記映像データを表示する領域を維持しつつ」を加え、補正後の請求項1の「前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域を維持しつつ、前記映像データを表示する領域の縁に沿った領域に設定し、」とする補正は、特許請求の範囲の減縮に相当する。

ウ 請求項2
補正前の請求項4の「前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域の縁に沿った領域に設定し、」に「前記映像データを表示する領域を維持しつつ」を加え、補正後の請求項2の「前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域を維持しつつ、前記映像データを表示する領域の縁に沿った領域に設定し、」とする補正は、特許請求の範囲の減縮に相当する。

エ 請求項3?請求項9
請求項3?請求項9は、請求項の削除に伴い、引用する請求項を補正するものであり、直接又は間接的に特許請求の範囲の減縮に相当する請求項1、請求項2を引用するものであるので、請求項3?9の補正は、特許請求の範囲の減縮に相当する。

(2)独立特許要件
上記のとおり本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的としているので、本件補正後における発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを、以下に検討する。

(3)補正後発明
補正後の請求項1?請求項9に係る発明のうち請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「利用者からの操作を受け付ける操作手段と、
通信手段により取得した通信データ、および、外部から入力された映像データを表示するための表示手段と、
前記通信データの表示領域と前記映像データの表示領域とを設定する表示領域設定手段と、を備え、
前記表示手段が前記通信データの所定部分と前記映像データとを同時に表示しているときに、
前記表示領域設定手段は、
前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域を維持しつつ、前記映像データを表示する領域の縁に沿った領域に設定し、
前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて、前記映像データを表示していた表示領域を含み、前記通信データの少なくとも前記所定部分以外の部分を表示するように前記通信データの表示領域を設定する、電子機器。」

(4)刊行物1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-41276号公報(上記引用文献1、以下「刊行物1」という。)には、「対話型操作支援システム及び対話型操作支援方法、並びに記憶媒体」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、テレビ受像機などの家電機器や情報機器に対するユーザ・コマンド入力を支援する操作支援システム及び操作支援方法に係り、特に、各種の接続機器に対するユーザ・コマンド入力を対話式に行う対話型操作支援システム及び対話型操作支援方法に関する。」

「 【0058】
【作用】
本発明に係る操作支援システム及び方法によれば、音声合成やアニメーションによるリアクションを行なう擬人化されたアシスタントと呼ばれるキャラクタのアニメーションをユーザ・インターフェースとすることにより、ユーザに対して親しみを持たせると同時に複雑な命令への対応やサービスへの入り口を提供することができる。また、自然言語に近い感じの命令体系を備えているので、ユーザは、通常の会話と同じ感覚で機器の操作を容易に行なうことができる。」

〈発明の実施の形態〉
「 【0061】
図1には、本発明の実施に供される対話型操作支援システム1のハードウェア構成を模式的に示している。該システムは、例えば、セットトップボックス(STB)のようなテレビ受像機用の受信装置として構成され、テレビ受像機に接続されている。対話型操作支援システム1は、後述する「アシスタント」を媒介としてユーザとの対話を行ない、且つこの対話に基づきユーザの明示的又は潜在的な意図を解釈して、選局や録画・再生などのユーザ操作の支援サービスを提供することができる。以下、図1を参照しながら各部について説明する。
【0062】
中央制御部11は、所定の制御プログラムに従って対話型操作支援システム1内の動作を統括的にコントロールする演算制御ユニットであり、例えば、ユーザのパートナーとしてのアシスタントの生成並びにアシスタントの行動パターンの発現と、音声及び画像の入出力をベースとしたユーザとアシスタントとの対話の管理などを行う。
【0063】
中央制御部11において実行される制御プログラムには、例えば以下に示す機能が含まれる。すなわち、
(1)マイク22を介した音声入力及び音声認識により得られた入力コマンドに従って、システム1内の各部の動作制御。
(2)入出力インターフェース17を介して接続された各種外部機器の制御
(3)チューナ15の制御
(4)アシスタントに関するキャラクタ・コントロール(音声認識で得られた入力コマンドに対応するアニメーションの生成)
(5)音声合成(キャラクタが発する音声データの音声信号への変換。但し、キャラクタの口の動きなどのアニメーションと音声が同期するようにする)
(6)通信インターフェース18を介した外部ネットワークとの接続などの制御
(7)EPG(Electric Programming Guide)やその他のデータ放送用データの制御
(8)スピーカ21を介した音声出力のコントロール
(9)モニタ25を介した画面出力のコントロール。
(10)リモコン(図示しない)を介した入力コマンドによるコントロール
(11)電子メール、EPG、広域ネットワーク上で使用されるテキスト・データの処理
(12)ユーザ・プロファイルに基づくテキスト・データの変換(例えば、お子様向けに[漢字]→[ひらがな]への変換)
(13)ビデオ信号を伴うデータを基にした画像計測(野球やサッカーなどのスポーツ番組上の得点経過や、画面表示からの時刻データの抽出)、画像認識に基づく各種サービス(得点経過の通知や時刻合わせなど)
(14)テキスト・データを基にフォント・データベースで選ばれたフォントを使用したビットマップ変換
(15)テクスチャ・データベースで選ばれたテクスチャと、フォントのビットマップとの合成
(16)システムの基本設定(画面の輝度、音量、各種入出力など)
【0064】
チューナ15は、中央制御部11からの指示により、所定チャンネルの放送波のチューニングすなわち選局を行う。受信された放送波は、映像データ部分と音響データ部分に分離される。映像データは、画像処理部16を介してモニタ25に画面出力される。また、音響データは、音声合成部14を介してスピーカ21に音響出力される(あるいは、ライン出力であってもよい)。」

「 【0079】
また、アシスタントの動きは、3Dキャラクタ情報及びアニメーション情報を参照して、画像処理部14にて画像合成される。このとき、場合によってはキャラクタ・ルーム情報を参照して背景(シーン)を切り換えるようにしてもよい。また、アシスタントのイメージや、アシスタントが居るキャラクタ・ルームをオンエア中の1以上の番組映像と重畳表示するようにしてもよい(この点の詳細については後述に譲る)。」

「 【0197】
(6)メール
図1に示すように、本実施例に係る操作支援システム1は、通信インターフェース18経由で外部のネットワークに接続されており、該ネットワーク上のメール・サーバを利用してメール送受信を行なうことができる。
【0198】
また、本実施例に係る操作支援システム1は、擬人化されたアシスタントを仲介として音声ベースのインタラクションにより、メールの送受信を行なうことができる。以下では、アシスタントによる音声ベースでの支援によりメールを受信する場合について説明する。
【0199】
番組受信中にメールが届くと、メールが来ていることを知らせる封筒アイコンが、番組の映像上にひらひらと舞い降りてくる(図27を参照のこと)。
【0200】
そして、封筒アイコンがモニタ画面の下端まで降りてしまうと、封筒アイコンは消滅し、代わって、何通のメールが受信されたかを示すメール受信アイコンが画面右上に出現する。図28に示す例では、1通のメールが受信されている。
【0201】
ユーザは、例えば、「よしお、メール見せて」などのように自然言語形式でアシスタントに問い掛けることで、メール・ボックスを開く旨の指示を与えることができる。すなわち、ユーザからの音声入力は、音声認識部13において音声認識され、コマンドとして解釈される。そして、アシスタントとしてのよしおは、メールをオープンする。さらに、アシスタントは、メール内に記述されたテキストを解釈して音声合成し、読み上げるようにしてもよい。
【0202】
なお、メールをモニタ画面に表示する際、元のテキスト・データから、漢字→ひらがな変換を行ない、お子様向けに読めるようにしてもよい。また、近視力の衰えた老人向けに、音声コントロールによりボタンのシルク印刷の文字を探すよりも簡単な操作環境を提供することができる。」

(5)対比
ア 刊行物1に記載された発明
刊行物1に開示されている技術は、テレビ受像機などの家電機器や情報機器に対するユーザ・コマンド入力を支援する操作支援システム、各種の接続機器に対するユーザ・コマンド入力を対話式に行う対話型操作支援システムであり(段落【0001】)、対話型操作支援システム1のハードウェア構成が図1に示され、対話型操作支援システム1の中央制御部11は、マイク22を介した音声入力及び音声認識により得られた入力コマンドに従って、システム1内の各部の動作制御、チューナ15の制御、通信インターフェース18を介した外部ネットワークとの接続などの制御、モニタ25を介した画面出力のコントロール、電子メール、EPG、広域ネットワーク上で使用されるテキスト・データの処理等を行うものである(段落【0063】)。
チューナ15で受信された放送波の映像データは、画像処理部16を介してモニタ25に画面出力される(段落【0064】)。
番組受信中にメールが届くと、メール受信アイコンが画面右上に出現し(段落【0199】?【0200】、図28)、メールボックスを開く旨の指示を与えると、メールをオープンする(段落【0201】、図29)。
以上より、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「テレビ受像機などの家電機器や情報機器に対するユーザ・コマンド入力を対話式に行う対話型操作支援システムであって、
中央制御部11は、マイク22を介した音声入力及び音声認識により得られた入力コマンドに従って、システム1内の各部の動作制御、チューナ15の制御、通信インターフェース18を介した外部ネットワークとの接続などの制御、モニタ25を介した画面出力のコントロール、電子メール、EPG、広域ネットワーク上で使用されるテキスト・データの処理を行うものであり、
チューナ15で受信された放送波の映像データは、画像処理部16を介してモニタ25に画面出力され、
番組受信中にメールが届くと、メール受信アイコンが画面右上に出現し、メールボックスを開く旨の指示を与えると、メールをオープンする
対話型操作支援システム。」

イ 補正後発明と刊行物1発明との対比
(ア)「利用者からの操作を受け付ける操作手段」
刊行物1発明は、「テレビ受像機などの家電機器や情報機器に対するユーザ・コマンド入力を対話式に行う対話型操作支援システムであって、
中央制御部11は、マイク22を介した音声入力及び音声認識により得られた入力コマンドに従って、システム1内の各部の動作制御・・・行うものであり、」「メールボックスを開く旨の指示を与えると、メールをオープンする」ものである。刊行物1発明は、ユーザからの音声入力及び音声認識により得られた入力コマンドにより、対話型操作支援システムを動作させるものであり、ユーザからの音声入力及び音声認識を行う手段は、「利用者からの操作を受け付ける操作手段」といえる。

(イ)「通信手段により取得した通信データ、および、外部から入力された映像データを表示するための表示手段」
刊行物1発明は、「番組受信中にメールが届くと、メール受信アイコンが画面右上に出現し、メールボックスを開く旨の指示を与えると、メールをオープンする」ものであり、モニタ25を有しているから、モニタ25は、「通信手段により取得した通信データ、および、外部から入力された映像データを表示するための表示手段」といえる。

(ウ)「前記通信データの表示領域と前記映像データの表示領域とを設定する表示領域設定手段」
刊行物1発明は、「番組受信中にメールが届くと、メール受信アイコンが画面右上に出現(し、)」するものであり、刊行物1の図28のように、番組映像の外側で、番組映像の右上にメール受信アイコンが表示されるものである。また、刊行物1の図6は、モニタ25の電源投入直後の表示画面例であるが、この表示画面は全面に表示がなされていることから、刊行物1の図28の表示は、番組映像の表示領域とメール受信アイコンの表示領域があることが理解できる。
刊行物1発明は、中央制御部11、画像処理部16により、モニタ25に表示させるものであり、刊行物1の図28のように、番組映像の表示領域とメール受信アイコンの表示領域を有する表示をすることができるものであり、このような表示をするために、中央制御部11と画像処理部16は、映像データの表示領域とメール受信アイコンの表示領域を設定しているといえる。
そして、メール受信アイコンの表示領域は、映像データでないデータの表示領域といえるから、刊行物1発明の中央制御部11と画像処理部16は、映像データの表示領域と映像データでないデータの表示領域とを設定する表示領域設定手段といえる。
もっとも、映像データでないデータは、補正後発明においては「前記通信データ」であり、刊行物1発明においては「メール受信アイコン」である点で相違する。

(エ)「前記表示手段が前記通信データの所定部分と前記映像データとを同時に表示しているときに、
前記表示領域設定手段は、
前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域を維持しつつ、前記映像データを表示する領域の縁に沿った領域に設定し、
前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて、前記映像データを表示していた表示領域を含み、前記通信データの少なくとも前記所定部分以外の部分を表示するように前記通信データの表示領域を設定する」

刊行物1発明は、刊行物1の図28のように、番組映像の表示領域とメール受信アイコンの表示領域を有する表示をすることができるものである。刊行物1の図28の表示をしているときは、モニタに映像データを映像データでないデータを表示しているときといえる。刊行物1の図28の表示は、番組映像の表示領域の右上にメール受信アイコンの表示領域があり、メール受信アイコンの表示領域は、番組映像の表示領域の縁に沿った領域といえる。また、刊行物1の図28の表示は、刊行物1発明の中央制御部11、画像処理部16により行われるものであり、中央制御部11と画像処理部16が表示設定手段といえることは上記(ウ)のとおりである。
したがって、刊行物1発明は、
「前記表示手段が前記映像データと前記映像データでないデータとを同時に表示しているときに、
前記表示領域設定手段は、
前記映像データでないデータを表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域を維持しつつ、前記映像データを表示する領域の縁に沿った領域に設定(し、)」するものといえる。
もっとも、「前記映像データでないデータ」が、補正後発明においては、「前記通信データの所定部分」であるのに対し、刊行物1発明においては、「メール受信アイコン」である点で相違する。

刊行物1発明は、「メールボックスを開く旨の指示を与えると、メールをオープンする」ものであり、「メールボックスを開く旨の指示」は、「ユーザからの音声入力及び音声認識により得られた入力コマンドにより」行われるものであり、上記(ア)のとおり、ユーザからの音声入力及び音声認識を行う手段は、「利用者からの操作を受け付ける操作手段」といえるから、「メールボックスを開く旨の指示を与える」ことは、「前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて、」といえる。
そして、「メールをオープンする」ことは、刊行物1の図29のように、受信中の番組映像に代えてメールを表示することであるから、中央制御部11と画像処理部16、すなわち表示設定手段(上記(ウ))が「前記映像データを表示していた表示領域を含み、前記通信データを表示するように前記通信データの表示領域を設定する」ことといえる。
したがって、刊行物1発明は、「前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて、前記映像データを表示していた表示領域を含み、前記通信データを表示するように前記通信データの表示領域を設定する」ものといえる。
もっとも、「前記通信データ」が、補正後発明においては「前記通信データの少なくとも前記所定部分以外の部分」であるのに対し、刊行物1発明においては「前記通信データの少なくとも前記所定部分以外の部分」ではない点で相違する。

(オ)「電子機器」
刊行物1発明の「対話型操作支援システム」は、「電子機器」といい得るものである。

ウ 一致点、相違点
そうすると、補正後発明と刊行物1発明の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
利用者からの操作を受け付ける操作手段と、
通信手段により取得した通信データ、および、外部から入力された映像データを表示するための表示手段と、
映像データの表示領域と映像データでないデータの表示領域とを設定する表示領域設定手段と、を備え、
前記表示手段が前記映像データと前記映像データでないデータとを同時に表示しているときに、
前記表示領域設定手段は、
前記映像データでないデータを表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域を維持しつつ、前記映像データを表示する領域の縁に沿った領域に設定し、
前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて、前記映像データを表示していた表示領域を含み、前記通信データを表示するように前記通信データの表示領域を設定する、電子機器。

[相違点1]
「映像データでないデータの表示領域」が、補正後発明においては「前記通信データの表示領域」であるのに対し、刊行物1発明においては「メール受信アイコンの表示領域」である点

[相違点2]
「前記表示手段が前記映像データと前記映像データでないデータとを同時に表示しているとき」の「前記映像データでないデータ」が、補正後発明においては「前記通信データの所定部分」であるのに対し、刊行物1発明においては「メール受信アイコン」であり、
「前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて、」表示する「前記通信データ」が、補正後発明においては「前記通信データの少なくとも前記所定部分以外の部分」であるのに対し、刊行物1発明においては「前記通信データの少なくとも前記所定部分以外の部分」ではない点

(6)相違点の判断
ア 刊行物2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-7144号公報(上記引用文献5、以下「刊行物2」という。)には、「通信端末」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「 【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、使用者が、携帯電話機に対して動作の指示を操作している途中に着信があると、表示部には着信があった旨を報知する着信画面が優先して表示され、機能画面が消去されてしまう問題があった。また、着信表示をする際に、操作指示の途中の情報を格納したとしても、該着信に関する通話後に改めて機能画面を表示して入力操作を行わなければならず、操作が煩雑となる問題があった。
【0006】
また、着信時において、入力操作を優先して、着信表示を行わないよう制御すると、着信があったことが分からずに、重要な相手先からの着信を見逃してしまう問題があった。
【0007】
また、着信音、光、振動等によって着信を報知しても、誰からの着信なのかが表示部に表示されないと、発信者が分からず、電話に出るべきか否かの判断が困難であった。
【0008】
このように、携帯電話機の操作中に着信があった場合でも、該操作を継続しつつ、着信情報を表示することができる携帯電話機が求められていた。本発明は、通信端末の操作中に着信があっても、現在の操作状態を変えることなく着信表示をする通信端末を提供することを目的とする。」

〈発明の実施の形態〉
「 【0025】
図1は、本実施の形態の携帯電話機の主要な構成を示すブロック図である。
【0026】
アンテナ1は送受信部2に接続されており、無線基地局からの電波を受信し、無線基地局に対し電波を送信する。送受信部2は送信部及び受信部により構成され、送信部はアンテナ1から送信する高周波信号を生成する。受信部はアンテナ1で受信した高周波信号を増幅、周波数変換等をして、ベースバンド信号としてRF制御部3に出力する。
【0027】
RF制御部3はベースバンド部及び無線制御部により構成されており、ベースバンド部は、ベースバンド部内のコーデック部にて、ベースバンド信号を音声信号に復調する。また、コーデック部では音声信号を変調し、ベースバンド信号を生成する。さらに、無線制御部では、送受信部2が送受信する周波数や、送受信タイミング、送信する電波の出力を制御する。
【0028】
また、制御部4は、主にCPUにて構成されており、RAM5及びROM6に記憶されたデータに基づいて、送受信部2、操作部7、表示インターフェース8、表示部9等の携帯電話機の各部を制御する。操作部7は、文字、数字の入力、
携帯電話機への動作の指示を受け付ける。表示インターフェース8は、制御部4からの表示データを受け、表示部9を駆動するドライバ回路である。また、携帯電話機への着信を報知する着信ランプ(図示省略)が設けられている。
【0029】
表示部9は、表示インターフェース8に駆動され、文字情報、携帯電話機の動作状態等を表示する液晶表示パネルと、液晶表示パネルを照明するバックライトとによって構成される。また、表示部9は、主表示部9aと副表示部9bとで構成されている。主表示部9aは、通信により送られてきた文字情報や、操作に関する情報として操作メニュー、入力項目や、キー入力のエコーバックを表示する。また、副表示部9bは、専ら、携帯電話機の状態(電波強度、電池残量、時刻など)又は携帯電話機の操作に関する情報を表示したり、機能キー(ファンクションキー)に現在割り当てられている機能を表示するものであり、主表示部9aより小さく、主表示部9a内の一部の表示エリアに設けられる。なお、副表示部9bを、主表示部9aとは別の表示パネルとして構成してもよい。また、主表示部9aと副表示部9bとが略同一平面上など同一方向から視認し得る位置に設けられているものであれば、主表示部9aと副表示部9bとが別の面(例えば、正面と背面等の同一方向から視認し得ない位置)に設けられているものに比べて使用者が操作中に着信の表示を認識しやすい。」

「 【0031】
図2は、本発明の実施の形態の携帯電話機において着信待受時の動作を示すフローチャートである。
【0032】
制御部では、携帯電話機の動作を司るメインプログラムが動作している。このメインプログラムでは、操作部のキースイッチが操作されたかを、定期的にスキャンして監視している(S101)。設定スイッチが操作されたことを検出すると(S101で”有”)、機能の設定やメモリダイヤル登録や、メールの作成や、着信音の設定等の付加機能を実行する設定モードに移行し、表示部にこれらの付加機能設定のための機能画面(例えば、図3(a)に示すメニュー画面や着信音の設定画面、メール作成・閲覧画面、電話帳設定画面)を表示する(S102)。なお、この設定モードとは使用者が付加機能の設定操作を行っているモードを示し、機能モードの一部である。従って、機能モードは上述の設定モード以外にもカメラ(図示省略)から画像を取り込むカメラモードや、記憶されている画像の閲覧モード、ゲームモード、電卓モードなども含まれる。
【0033】
そして、設定モード中に携帯電話機への着信を検出すると(S103)、基地局から送信されてきた呼出信号から発信者番号等の発信者情報を抽出する。そして、発信者番号をRAM5に格納し、この着信に関する発信者番号をメモリダイヤル中から検索して、メモリダイヤルに一致する電話番号が記憶されていたら、発信者番号と共に、対応する名前をRAM5に記憶する(S104)。
【0034】
なお、この着信がメールの着信であれば、発信者メールアドレス(又は発信者電話番号)及びメールデータ(メール本文)をRAM5に格納し、この着信に関する発信者メールアドレス(又は発信者電話番号)をメモリダイヤル中から検索して、メモリダイヤルに一致する発信者メールアドレス(又は発信者電話番号)が記憶されていたら、メールデータと共に対応する名前をRAM5に記憶する(S104)。
【0035】
そして、着信ランプを点滅させ、使用者に着信があったことを報知すると共に、CPUが、設定モードを継続しているか否かを判断する(S105)。設定モードを継続している場合とは、設定モードのアプリケーションが起動している状態であり、このステップS105の判定は、着信を受けて、メモリダイヤルを検索する間にアプリケーションを終了していないか否かを判断するためのものである。そして、設定モードが継続していると判断されたならば(S105で”Yes”)、該着信に関する発信者電話番号等の情報(着信情報)の表示位置を後述の方法により決定する(S106)。
【0036】
この着信情報の表示位置としては、表示画面のピクト部を選択する方法がある。すなわち、図3にて後述するように、表示画面の上部には携帯電話機に動作状態(電池残量、電界強度等)を図形(ピクトグラム)によって表示するピクト部が設けられており、このピクト部に着信情報を表示するように表示位置を決定する。なお、着信があった旨を強調するため、ピクト部に着信表示をすると共に、機能画面の一部を使用して文字を大きく表示することも可能である。
【0037】
また、着信情報の表示位置として、現在実行中の設定モードにおける操作(特に、データの入力)を阻害しない位置を選択する方法もある。すなわち、入力操作中のカーソル位置を判断し、カーソル位置から遠い部分に着信情報を表示するように表示位置を決定する。これは、カーソル位置に近い位置に表示してしまうと、入力操作を阻害してしまうからである。なお、入力操作中のカーソル位置に加え、今後入力される項目(すなわち、この後にカーソルが移動する方向)を判断し、カーソルが移動する方向とは異なる位置に着信情報を表示するように表示位置を決定することもできる。この場合は、カーソルが移動する方向に表示してしまうと、入力が進むにつれて表示が入力操作等を阻害してしまうことを防ぐためである。
【0038】
着信情報の表示位置が決定したら、この表示位置に表示領域を設け、ステップS104でRAM5に格納した発信者番号、対応する名前(メールの着信の場合は、発信者メールアドレス、対応する名前、メールデータ)を表示部9に表示する。
【0039】
そして、通話キーが操作されたか否かを検出し(S108)、通話キーの操作を検出すると(S108で”Yes”)、基地局との間で通話チャネルを設定して、通話状態に移行する(S109)。
【0040】
一方、通話キーの操作が検出されなければ(S108で”No”)、発信者番号を表示した着信報知状態を維持したまま、設定モードを継続する(S113)。
【0041】
また、ステップS105で、設定モードの解除と判断されたら、着信情報を表示画面全面に表示する通常の着信表示をする(S111)。そして、通話キーが操作されたか否かの検出処理(S114)に移行する。」

「 【0049】
図4は、本発明の実施の形態の携帯電話機における表示部の表示内容を説明する図であり、メールの着信があった場合の表示画面を示す。
【0050】
図4(a)は、電話機の機能として着信音パターンを設定中の画面の表示を示す。画面の最上部に携帯電話機の動作状態を示す図形(ピクトグラム)が表示されるピクト部が設けられており、電池残量表示、電界強度表示、時刻表示、操作可能キー方向表示がされている。
【0051】
図4(b)は、携帯電話機にメールの着信があり、設定モードが継続された場合の表示例(図2のステップS107)を示し、着信したメールに関する情報がピクト部に表示されている。すなわち、ピクト部には、メールの着信があった旨を表示する図形と、発信者のメールアドレス等に基づいてメモリダイヤルの記憶内容を検索して読み出した発信者名を表示している。なお、発信者名ではなく発信者のメールアドレスや電話番号を表示するように構成してもよい。
【0052】
このとき、メール着信情報は、表示部の最上部(ピクト部)に着信情報を表示する表示領域を設けて表示されるので、現在実行中の機能設定画面を消去して、機能設定を中断することなく、着信前の画面(図4(a))の操作に関する表示部分を保持したまま、発信者名等のメール着信情報を表示することができる。
【0053】
図4(c)、図4(d)は、メールの本文がピクト部に表示されている状態を示す。図4(b)の状態から、ピクト部に表示されたメール着信情報が横スクロールして、メール発信者氏名の後にメール本文が左に流れるように表示される。なお、スクロール表示ではなく、メール着信情報とメール本文とを切り替えて交互に表示するように構成してもよい。なお、メール本文でなくメールの件名を表示するように構成してもよい。
【0054】
このように、メールを受信したときでも、現在実行中の機能設定画面を保持しているので、設定操作を中断することなく、着信メールに関する情報を確認することができ、さらにメール本文も確認することが可能となる。」

「 【0060】
図5(b)、図5(c)に示す表示状態では、着信情報として、着信があった旨を表示する「着信」の文字と、発信者の電話番号とが表示されている。なお、発信者電話番号でなく、発信者の電話番号に基づいてメモリダイヤルの記憶を検索して読み出した発信者名を表示するように構成してもよい。また、通話の着信でなくメールを受信した場合は、前述(図4)と同様に、メール発信者氏名の後にメール本文又はメールの件名を表示するように構成してもよい。」

イ 刊行物2に記載された発明
刊行物2には、メールの着信があると、着信前の画面を表示部に保持したまま、発信者名等のメール着信情報を表示する通信端末が記載され(段落【0051】?【0052】)、着信前の画面を表示部に保持したまま、メールの本文を表示することも記載されている(段落【0053】?【0054】)。
刊行物2の図4(b)?(d)は、メールの発信者名やメールの本文の一部を表示しているものと認められる。
そうすると、刊行物2には、「メールの着信があると、着信前の画面を表示部に保持したまま、メールの発信者名やメールの本文の一部を表示する通信端末」(この発明を以下「刊行物2発明」という。)が記載されている。

相違点の判断
刊行物1発明は、電子機器といえる「対話型操作支援システム」におけるメールを受信したときの動作に関するものであり、刊行物2発明もメールを受信したときの動作に関するものであるから、刊行物1発明に刊行物2発明を適用することに困難性はない。
そして、刊行物1発明に刊行物2発明を適用し、刊行物1発明における「メール受信アイコンを画面の右上に出現」させる代わりに「メールの発信者名やメールの本文の一部を表示」するようにし、
「メール受信表示領域」を「メールの発信者名やメールの本文の一部」である通信データの表示領域とし(相違点1)、
「前記表示手段が前記映像データとメール受信アイコンとを同時に表示しているとき」の「メール受信アイコン」を「前記通信データの所定部分」といえる「メールの発信者名やメールの本文の一部」とすること(相違点2)は当業者にとって容易であり、
「メール受信アイコン」を「前記通信データの所定部分」といえる「メールの発信者名やメールの本文の一部」とすることで、刊行物1発明における「前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて、」表示する「前記通信データ」は、「前記通信データの少なくとも前記所定部分以外の部分」といえる(相違点2)。

エ 効果等
以上のように、相違点1?相違点2に係る構成はいずれも当業者が容易に想到できたものである。そして、これらの相違点に係る構成を総合しても、補正後発明が奏する効果は、当業者が容易に予測できたものである。
したがって、補正後発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反している。

3 まとめ
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成21年2月9日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?請求項11に係る発明は、平成20年11月18日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?請求項11に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「利用者からの操作を受け付ける操作手段と、
通信手段により取得した通信データ、および、外部から入力された映像データを表示するための表示手段と、
前記通信データの表示領域と前記映像データの表示領域とを設定する表示領域設定手段と、を備え、
前記表示手段が前記通信データの所定部分と前記映像データとを同時に表示しているときに、
前記表示領域設定手段は、
前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域の縁に沿った領域に設定し、
前記操作手段が操作を受け付けたことに応じて、前記映像データを表示していた表示領域を含み、前記通信データの少なくとも前記所定部分以外の部分を表示するように前記通信データの表示領域を設定する、電子機器。」

2 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項は、上記第2の2(4)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、補正後発明の
「前記通信データの所定部分を表示する表示領域を、前記映像データを表示する領域を維持しつつ、前記映像データを表示する領域の縁に沿った領域に設定し、」の
「前記映像データを表示する領域を維持しつつ、」の限定をなくしたものであり、その他は補正後発明と同じである。
引用文献1に記載された発明は、上記第2の2(5)アに記載した刊行物1発明と同じである。
本願発明を限定した補正後発明は、上記第2の2(5)イ?(6)のとおり、引用文献1及び刊行物2(上記引用文献5)に記載された発明により当業者が容易に発明できたものであるから、同じの理由により本願発明は、引用文献1及びに刊行物2(上記引用文献5)に記載された発明により当業者が容易に発明できたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願の請求項3に係る発明は、引用文献1及び引用文献5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項1?請求項2、請求項4?請求項11に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-28 
結審通知日 2011-05-10 
審決日 2011-05-23 
出願番号 特願2004-18650(P2004-18650)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 矢野 光治  
特許庁審判長 奥村 元宏
特許庁審判官 梅本 達雄
小池 正彦
発明の名称 電子機器  
代理人 特許業務法人原謙三国際特許事務所  

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