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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01R
管理番号 1241014
審判番号 不服2009-25008  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-17 
確定日 2011-08-04 
事件の表示 特願2004-313088号「端子金具」拒絶査定不服審判事件〔平成18年4月13日出願公開、特開2006-100233号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成16年9月29日の出願であって、平成21年10月13日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年10月15日)、これに対し、同年12月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
そして、平成23年2月16日付けで当審により拒絶理由通知がなされ、同年3月29日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年3月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「相手側端子が挿入される筒部内には、前方が自由端となったばね部が設けられており、前記ばね部は、前記筒部の内部において斜め前方へ片持ち状に延びる主ばね片と、この主ばね片の外面側において斜め前方への片持ち状をなして延出する補助ばね片とからなる端子金具において、
前記補助ばね片の基端部には、前記補助ばね片を補強するためのものであって、前記補助ばね片の板面から叩き出した膨出部からなる補強部が設けられており、
前記筒部のうち前記補助ばね片が形成された底壁には、前記主ばね片の前端部に対応する位置に、前記主ばね片が撓み変形したときに前記主ばね片の前端部との干渉を回避するための逃がし孔が開口して形成されており、
前記補助ばね片は、前記主ばね片の外面側に沿い、且つ前記主ばね片とほぼ同じ傾斜角度に配されており、前記補助ばね片の前端部は、前記主ばね片の接点部よりもやや斜め後方に位置するように設定されており、
前記主ばね片と前記補助ばね片とは、前記主ばね片と前記補助ばね片の双方が撓み変形していない自由状態のときには互いに離間しており、前記主ばね片が撓み変形すると、前記主ばね片が前記補助ばね片と当接するように設定されており、
前記補助ばね片の長さ寸法は前記主ばね片の長さ寸法よりも短く設定されており、且つ、前記補助ばね片の幅寸法は前記主ばね片の幅寸法よりも幅広に設定されていることを特徴とする端子金具。」

3.刊行物について
(1)当審による拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-132984号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
a)「【発明の属する技術分野】本発明は、雌側端子金具に関するものである。
【従来の技術】図11及び図12には、特開平8-306420号公報に開示された雌側端子金具100を示した。この雌側端子金具100の前部には、雄側端子金具の雄タブ101に接続可能な接続部102が設けられている。接続部102の内部空間には、雄タブ101に対して弾性的に接触する弾性接触片103が設けられている。この弾性接触片103の下方には、雄タブ101の挿入によって弾性接触片103が弾性変形したときに変移可能な弾性空間104が設けられている。また、弾性空間104の下方には、弾性接触片103の過度撓みを規制する過度撓み規制部105が設けられている。
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年にはコネクタおよび端子金具の一層の小型化が進行している。端子金具の小型化に伴い、従来には問題とされなかった点が、新たな問題点として浮上してくることがある。例えば、雌側端子金具の弾性接触片では、小型化によって、十分な弾性空間が確保できない事態が想定される。また、そのような小型化された雌側端子金具では、従来のように弾性空間104の内部に過度撓み規制部105を形成することも困難となってくる。本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、雌側端子金具を小型化した場合であっても、弾性接触片に対して所定の弾性空間を確保できる雌側端子金具を提供することにある。」(段落【0001】?【0003】)
b)「【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。図1には、本実施形態の雌側端子金具1を示した。雌側端子金具1は雌側のものであり、電線2の一端部に接続されてコネクタ3に組み付けられた状態で、相手側の雄側端子金具に設けられた雄タブ4と連結する(図10を参照)。この雌側端子金具1は、特に小型化して製造されるものであり、例えば後述する接続部5の正断面は、一辺が約0.6mm?約2mm程度のものである。
なお、以下の説明において、雌側端子金具1において電線2を接続する側を後側とし、その逆側(相手側の雄側端子金具に設けられた雄タブ4が組み付けられる側)を前側とする。雌側端子金具1の前部には、略角筒状の接続部5が設けられている。また、接続部5の後方には、断面が略C字状の連結部6が設けられている。さらに、連結部6の後方には、電線2の末端部分を圧着するバレル7,8が設けられている。このうち、後端側に位置するインシュレーションバレル8は、電線2の被覆を圧着する一方、それよりも前方側に位置するワイヤバレル7は、電線2内部の芯線を圧着する。
接続部5は、上下左右に四つの壁部15,15,17,23が設けられた略角筒状に形成されており、その前方は、雄タブ4が進入する雄タブ挿入孔5Aが設けられている。一方、接続部5の後方は、後方開口5Bとして開放されている。四個の壁部15,15,17,23のうち、上面側の接触用壁部17は、最外壁の上面壁部12の内側に設けられている。この接触用壁部17には、雄タブ4に接触する接触部18が打ち出し形成されている。また、下面側の底壁部23には、弾性接触片9が設けられている。この弾性接触片9は、後端側に基端9Aが設けられており、そこから前上方向に向かって自由端9Bが延出されている。弾性接触片9は、雄タブ4からの押圧力に対して下方に弾性変形可能とされており、この雄タブ4に対して弾性的に接触することができる。また、自由端9Bは僅かに下方に向けて湾曲されており、この自由端9Bから僅かに後方の位置には、雄タブ4への接触を行う第2接触部9Cが設けられている。弾性接触片9と底壁部23との間は、弾性接触片9の弾性変形を許容する弾性空間19とされている。
また、底壁部23において、弾性接触片9の自由端9Bの下方に整合する位置には、弾性変形許容孔24が開放されている。弾性接触片9が下方に弾性変形したときに、自由端9Bがこの弾性変形許容孔24に嵌まり込むことで、弾性接触片9の弾性変形の幅長を大きくしている。本実施形態の雌側端子金具1は、特に小型化を意図したものであるため、接続部5の内部における弾性接触片9の弾性変形幅が極めて限定されたものとなっている。このため、弾性変形許容孔24を設けることは、その弾性変形幅を大きくするために、極めて有効な手段となる。
また、弾性変形許容孔24の後端縁は、弾性接触片9の裏面29に当接可能な過度撓み規制部30とされている。弾性接触片9が所定の弾性空間19の高さ分だけ弾性変形すると、裏面29が過度撓み規制部30に当接することで、弾性接触片9の過度撓みが規制されるようになっている。また、裏面29と過度撓み規制部30とが当接したときには、自由端9Bは底壁部23の内側(或いは、底壁部23の外表面と同じ位置)に位置するように設定されており、自由端9Bは接続部5の外方に突出しないようになっている。ここで図2を参照しつつ、雌側端子金具1を形成するための端子形成用板材10について説明する。板材10は、一枚の伝導性板材をプレスする事によって、帯状片27に対して所定の間隔で連結された状態で形成される。次に、雌側端子金具1の製造手順を簡単に説明する。」(段落【0007】?【0011】。下線は当審にて付与。以下同様。)
c)「なお、弾性接触片9に対して、下方に過度の押圧力が作用した場合であっても、弾性接触片9の裏面29が過度撓み規制部30に当接することにより、それ以上の弾性変形を規制するようになっている。このように本実施形態によれば、雌雄両端子金具が接続するときに、雄タブ4が接続部5に進入してくる。このとき、雄タブ4が接続部5の内側に設けられた弾性接触片9を弾性変形させる。特に雌側端子金具1の小型化を図った場合には、接続部5内に十分な弾性空間19を確保することが困難となるが、本実施形態では底壁部23に弾性変形許容孔24が設けられている。このため、弾性接触片9の自由端9Bが弾性変形許容孔24に進入することで、少なくとも、その底壁部23の厚さ分の弾性空間を余分に設定できる。
また、弾性接触片9に対して過大な力が作用して、規定量以上に弾性変形しようとすると、裏面29が過度撓み規制部30に当接して過度撓みが規制される。この過度撓み規制部30は、弾性変形許容孔24の孔縁を利用して構成されているので、従来のように板材を折り曲げて過度撓み規制部105を形成していた場合に比べると、工程を少なくできる。また、特に小型化を図った雌側端子金具1の場合には、極めて小さな部分を折り曲げることが困難となってくる。このため、孔縁を過度撓み規制部30として利用できるので、そのような困難が回避できる。」(段落【0016】?【0017】)

上記a?cの記載事項及び図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「略角筒状に形成されている接続部5の下面側の底壁部23には、弾性接触片9と過度撓み規制部30とが設けられ、
後端側に基端9Aが設けられ、そこから前上方向に向かって自由端9Bが延出されている弾性接触片9と、弾性変形許容孔24の後端縁である過度撓み規制部30とを含む雌側端子金具1において、
過度撓み規制部30を有する底壁部23において、弾性接触片9の自由端9Bの下方に整合する位置には、弾性変形許容孔24が開放され、
弾性接触片9が所定の弾性空間19の高さ分だけ弾性変形すると、弾性接触片9の裏面29が過度撓み規制部30に当接することで、弾性接触片9の過度撓みが規制されるようになっている、
雌側端子金具1。」

(2)同じく、当審による拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-63961号公報(以下「刊行物2」という。)には、次の発明が記載されている。
a)「次に、図13に示される他の従来の雌端子1″について説明する。金属製の雌端子1″は、主に、線接触される互いに対向した2つだけの接点A″,B″と、弾性接触片3″と、雌端子天板7″と雌端子底板8″と側壁SW″に囲まれて略矩形に形成された収容室R″と、雌端子天板7″に形成された突出片4″と、雄端子挿入口IN″と、電線の導体を圧着して固定する導体接続部(図示せず)と、電線の被覆材を固定する被覆圧着片(図示せず)などから形成されている。
また、弾性接触片3″に、取付部11″と自由端先端部12″とが設けられており、さらに弾性接触片3″の下には、自由端17″、折れ部15″が形成された撓み支持片16″などからなる弾性接触片撓み支持・規制部14″が備えられている。弾性接触片3″および弾性接触片撓み支持・規制部14″は、これの復元力すなわちばねによる反発力を発生する力を潜在的に有するものである。
図13に示される雌端子1″は、弾性接触片3″の頂点A″すなわち一方の接点A″と、弾性接触片3″の根元の近傍に形成された他方の接点B″とで、雄端子(図示せず)を挟持すると共に雄端子と接触する構造の雌端子1″であり、いわゆる2点接触の状態で雄端子を挟持する構造の雌端子1″である。」(段落【0018】?【0020】)
b)上記aの記載事項及び【図13】の図示内容によると、略矩形に形成された収容室R″内に、前斜め上方向に延在する部分を有する弾性接触片3″と撓み支持片16″などからなる弾性接触片撓み支持・規制部14″とが設けられていること、弾性接触片撓み支持・規制部14″が、弾性接触片3″の下半部分とほぼ同じ傾斜角度に配されており、その自由端17″が、弾性接触片3″の頂点A″よりも斜め下方の導体接続部側に位置するように配されていることが示されている。

上記aの記載事項、上記bの認定事項及び図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。
「略矩形に形成された収容室R″内に、自由端先端部12″が設けられ、前斜め上方向に延在する部分を有する弾性接触片3″と自由端17″、折れ部15″が形成された撓み支持片16″などからなる弾性接触片3″撓み支持・規制部14″とが設けられた雌端子1において、
弾性接触片3″撓み支持・規制部14″は、弾性接触片3″の下に備えられ、且つ、弾性接触片3″の下半部分とほぼ同じ傾斜角度に配されており、その自由端17″が、弾性接触片3″の頂点A″よりも斜め下方の導体接続部側に位置するように配され、
弾性接触片3″で雄端子を挟持するとき、弾性接触片3″撓み支持・規制部14″が、撓んだ弾性接触片3″を支持し、撓み量を規制する雌端子1″。」

4.対比
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「略角筒状に形成されている接続部5」は、その構成及び機能からみて、本願発明の「相手側端子が挿入される筒部」に相当し、以下同様に、
「後端側に基端9Aが設けられ、そこから前上方向に向かって自由端9Bが延出されている弾性接触片9」は「筒部の内部において斜め前方へ片持ち状に延びる主ばね片」に、
「雌側端子金具1」は「端子金具」に、
それぞれ相当する。
そして、刊行物1に記載された発明の「弾性変形許容孔24の後端縁である過度撓み規制部30」と本願発明の「主ばね片の外面側において斜め前方への片持ち状をなして延出する補助ばね片」とは、前者において、弾性接触片9が所定の弾性空間19の高さ分だけ弾性変形すると過度撓み規制部30に当接し、後者において、「補助ばね片」は、主ばね片が撓み変形するとき当接するものであるから、両者は、「主ばね片が撓み変形すると当接する部材」である点で共通し、以下同様に、
「過度撓み規制部30を有する底壁部23において、弾性接触片9の自由端9Bの下方に整合する位置には、弾性変形許容孔24が開放され」ていることと「筒部のうち補助ばね片が形成された底壁には、主ばね片の前端部に対応する位置に、主ばね片が撓み変形したときに主ばね片の前端部との干渉を回避するための逃がし孔が開口して形成されて」いることとは、「筒部のうち主ばね片が撓み変形すると当接する部材が形成された底壁には、主ばね片の前端部に対応する位置に、主ばね片が撓み変形したときに主ばね片の前端部との干渉を回避するための逃がし孔が開口して形成されて」いることで、
「弾性接触片9が所定の弾性空間19の高さ分だけ弾性変形すると、弾性接触片9の裏面29が過度撓み規制部30に当接することで、弾性接触片9の過度撓みが規制されるようになっている」ことと「主ばね片と補助ばね片とは、主ばね片と補助ばね片の双方が撓み変形していない自由状態のときには互いに離間しており、主ばね片が撓み変形すると、主ばね片が補助ばね片と当接するように設定されて」ていることとは、前者において、弾性接触片9が自由状態のとき、弾性接触片9と過度撓み規制部30とは、弾性接触片9が所定の弾性空間19の高さ分だけ弾性変形できる距離だけ離間しているといえるから、両者は、「主ばね片と主ばね片が撓み変形すると当接する部材とは、主ばね片が自由状態のときには互いに離間しており、主ばね片が撓み変形すると、主ばね片が、主ばね片が撓み変形すると当接する部材と当接するように設定され」ていることで、それぞれ共通する。

したがって、上記両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「相手側端子が挿入される筒部内には、前記筒部の内部において斜め前方へ片持ち状に延びる主ばね片と、主ばね片が撓み変形すると当接する部材とからなる端子金具において、
前記筒部のうち主ばね片が撓み変形すると当接する部材が形成された底壁には、前記主ばね片の前端部に対応する位置に、前記主ばね片が撓み変形したときに主ばね片の前端部との干渉を回避するための逃がし孔が開口して形成されており、
前記主ばね片と前記主ばね片が撓み変形すると当接する部材とは、前記主ばね片が自由状態のときには互いに離間しており、前記主ばね片が撓み変形すると、前記主ばね片が、前記主ばね片が撓み変形すると当接する部材と当接するように設定されている端子金具。」

[相違点1]
本願発明では、前方が自由端となったばね部が設けられており、ばね部は、主ばね片と、この主ばね片の外面側において斜め前方への片持ち状をなして延出する補助ばね片とからなるのに対して、刊行物1に記載された発明では、弾性接触片9と過度撓み規制部30とが設けられている点。

[相違点2]
主ばね片が撓み変形すると当接する部材が、本願発明では、補助ばね片であり、その基端部には、補助ばね片を補強するためのものであって、その板面から叩き出した膨出部からなる補強部が設けられ、主ばね片の外面側に沿い、且つ主ばね片とほぼ同じ傾斜角度に配されており、その前端部は、主ばね片の接点部よりもやや斜め後方に位置するように設定され、その長さ寸法は主ばね片の長さ寸法よりも短く設定されており、且つ、その幅寸法は主ばね片の幅寸法よりも幅広に設定され、主ばね片と補助ばね片とは、主ばね片と補助ばね片の双方が撓み変形していない自由状態のときには互いに離間しており、主ばね片が撓み変形すると、主ばね片が前記補助ばね片と当接するように設定されているのに対して、刊行物1に記載された発明では、弾性変形許容孔24の後端縁である過度撓み規制部30であり、弾性接触片9が所定の弾性空間19の高さ分だけ弾性変形すると、弾性接触片9の裏面29が過度撓み規制部30に当接することで、弾性接触片9の過度撓みが規制されるようになっている点。

5.当審による判断
上記相違点1?2について検討する。
本願発明と刊行物2に記載された発明とを対比する。
刊行物2に記載された発明の「略矩形に形成された収容室R″」は、その構成及び機能からみて、本願発明の「相手側端子が挿入される筒部」に相当し、以下同様に、
「雌端子1」は「端子金具」に、
「弾性接触片3″撓み支持・規制部14″は、弾性接触片3″の下に備えられ、且つ、弾性接触片3″の下半部分とほぼ同じ傾斜角度に配されて」いることは、「補助ばね片は、主ばね片の外面側に沿い、且つ主ばね片とほぼ同じ傾斜角度に配されて」いることに、
「自由端17″、折れ部15″が形成された撓み支持片16″などからなる弾性接触片3″撓み支持・規制部14″」は「主ばね片の外面側において斜め前方への片持ち状をなして延出する補助ばね片」に、
「弾性接触片3″撓み支持・規制部14″は、」「その自由端17″が、弾性接触片3″の頂点A″よりも斜め下方の導体接続部側に位置するように配され」ていることは、「補助ばね片は、」「補助ばね片の前端部は、主ばね片の接点部よりもやや斜め後方に位置するように設定されて」いることに、
「弾性接触片3″で雄端子を挟持するとき、弾性接触片3″撓み支持・規制部14″が、撓んだ弾性接触片3″を支持し、撓み量を規制する」ことは、弾性接触片3″で雄端子を挟持しないときは、弾性接触片3″と弾性接触片3″撓み支持・規制部14″とが離間状態にあり、弾性接触片3″で雄端子を挟持するときは、弾性接触片3″は、弾性接触片3″撓み支持・規制部14″に当接して、支持されることであるから、「主ばね片と補助ばね片とは、主ばね片と補助ばね片の双方が撓み変形していない自由状態のときには互いに離間しており、主ばね片が撓み変形すると、主ばね片が補助ばね片と当接するように設定され」ることに、
それぞれ相当する。
そして、刊行物2に記載された発明の「自由端先端部12″が設けられ、前斜め上方向に延在する部分を有する弾性接触片3″」と本願発明の「筒部の内部において斜め前方へ片持ち状に延びる主ばね片」とは、「筒部の内部において斜め前方へ延びる部分を有する主ばね片」である点で共通する。
また、刊行物2に記載された発明の「弾性接触片3″」と「弾性接触片3″撓み支持・規制部14″」とは、共に、前方が自由端となっていることから、両者を併せたものは、本願発明の「前方が自由端となったばね部」に相当する。
したがって、刊行物2に記載された発明は、
「相手側端子が挿入される筒部内には、前方が自由端となったばね部が設けられており、前記ばね部は、前記筒部の内部において斜め前方へ延びる部分を有する主ばね片と、この主ばね片の外面側において斜め前方への片持ち状をなして延出する補助ばね片とからなる端子金具において、
前記補助ばね片は、前記主ばね片の外面側に沿い、且つ前記主ばね片とほぼ同じ傾斜角度に配されており、前記補助ばね片の前端部は、前記主ばね片の接点部よりもやや斜め後方に位置するように設定されており、
前記主ばね片と前記補助ばね片とは、前記主ばね片と前記補助ばね片の双方が撓み変形していない自由状態のときには互いに離間しており、前記主ばね片が撓み変形すると、前記主ばね片が前記補助ばね片と当接するように設定されている端子金具。」と言い換えることができる。
また、端子金具の技術分野において、ばね片の基端部に、ばね片を補強するために、ばね片の板面から叩き出した膨出部からなる補強部を設けることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、当審による拒絶理由通知にて提示された特開平10-233251号公報の補強ビード35(段落【0029】や、同じく、実願昭56-132937号(実開昭58-37674号)のマイクロフィルム)の突出部9を参照。)。
そして、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とは、端子金具という同一の技術分野に属し、主ばね片の過度の撓みを防止するという共通の機能を有するものである。
ゆえに、刊行物1に記載された発明の過度撓み規制部30に、刊行物2に記載された発明の主ばね片の撓みを防止する補助ばね片を適用するとともに、その際に、補助ばね片の強度向上のために、上記周知の技術事項を適用して、補助ばね片に板面から叩き出した膨出部を形成したり、補助ばね片の長さ寸法を主ばね片の長さ寸法よりも短く設定し、その幅寸法を主ばね片の幅寸法よりも幅広に設定して、主ばね片と補助ばね片とからなる前方が自由端となったばね部とすることは、当業者が容易になし得たものである。
また、本願発明の奏する効果についてみても、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
よって、本願発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1?2に記載された発明お
よび周知の技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-08 
結審通知日 2011-06-09 
審決日 2011-06-21 
出願番号 特願2004-313088(P2004-313088)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 長崎 洋一
松下 聡
発明の名称 端子金具  
代理人 特許業務法人暁合同特許事務所  

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