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審決分類 審判 一部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61G
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61G
審判 一部無効 特174条1項  A61G
審判 一部無効 2項進歩性  A61G
管理番号 1241631
審判番号 無効2009-800169  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-07-30 
確定日 2011-04-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3993996号発明「車椅子」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯
(1)本件特許第3993996号の請求項1?3に係る発明についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成13年10月23日に出願され、平成19年8月3日にその発明について特許権の設定登録がされたものである。
(2)これに対し請求人は、平成21年7月30日付けで本件無効審判を請求し、証拠方法として検甲第1号証及び甲第1号証ないし甲第13号証の2を提出し、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)についての特許を無効とするとの審決を求めた。なお、この検甲第1号証についての検証申出書は後に平成22年5月14日付けで取り下げられた。また本件特許に対しては平成21年6月15日に日進医療器株式会社より別件の無効審判(無効2009-800124)が請求されているので、当審はこれを併合して審理を行うこととした。
(3)被請求人は、平成21年11月6日付けで答弁書及び証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証を提出するとともに、訂正請求書を提出して訂正を求めた。
(4)その後請求人より平成22年3月8日付けで審判請求書を補正する手続補正書が提出されるとともに証拠方法として甲第14号証ないし甲第20号証が追加された。
(5)その後被請求人より平成22年5月14日付けで口頭審理陳述要領書が提出され、請求人より同日付けで口頭審理陳述要領書が提出され、同日に当審は口頭審理を実施した。
(6)当審は、併合した無効2009-800124号事件における日進医療器株式会社の申立による証拠調べとして、平成22年5月14日に特許庁審判廷において証人小倉渉に対する証人尋問を行い、その後審理の併合を解除した。
(7)その後被請求人より平成22年5月28日付けで上申書が提出され、証拠方法として乙第7号証ないし乙第20号証が提出され、請求人より平成22年6月11日付けで上申書が提出された。

2 訂正の可否
(1)訂正の内容
平成21年11月6日付け訂正請求は、本件特許発明の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、訂正の内容は以下の訂正事項1?3のとおりである。(下線部は訂正箇所を示す。)
(ア)訂正事項1
【特許請求の範囲】の【請求項1】を、
「左右側枠を一個または二個以上のX枠で連結した構造であって、該X枠は中央で相互回動可能に結合され、下端部を該左右側枠下部に枢着した一対の回動杆からなり、該一対の回動杆の各上端には上側杆がそれぞれ取り付けられ、該上側杆は上記左右側枠に具備されている座梁部に取り付けられている杆受けにそれぞれ支持されるように設定されており、該回動杆下端部は軸を介して該左右側枠下部に取り付けられており、該左右側枠下部には、上下に配列している複数個の軸穴が設けられており、該車椅子の所望の巾に対応して該複数個の軸穴のうちの一つを選択して該軸穴に該軸を支持させることによって、該X枠の上端部は該左右側枠に対して上下位置を変えることなく、かつ該X枠の長さを変えることなく該車椅子の巾を調節可能にしたことを特徴とする車椅子。」と訂正する。
(イ)訂正事項2
明細書の段落【0004】を、
「【課題を解決するための手段】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、左右側枠(3,3) を一個または二個以上のX枠(11,12) で連結した構造であって、該X枠(11,12) は中央で相互回動可能に結合され、下端部を該左右側枠下部に枢着した一対の回動杆(11A,11A,12A,12A) からなり、該一対の回動杆(11A,11A,12A,12A)の各上端には上側杆(17,17)がそれぞれ取り付けられ、該上側杆(17,17)は上記左右側枠(3,3)に具備されている座梁部(4,4)に取り付けられている杆受け(16,16)にそれぞれ支持されるように設定されており、該回動杆下端部は軸(26)を介して該側枠下部に取り付けられており、該左右側枠下部には、上下に配列している複数個の軸穴(13A,13B,13C) が設けられており、該車椅子(1)の所望の巾に対応して該複数個の軸穴(13A,13B,13C)のうちの一つを選択して該軸穴(13A,13B,13C)に該軸(26)を支持させることによって、該X枠(11,12)の上端部は該左右側枠(3,3) に対して上下位置を変えることなく、かつ該X枠(11,12)の長さを変えることなく該車椅子(1)の巾を調節可能にした車椅子(1) を提供するものである。
該回動杆(12A,12A) の少なくとも一対の中央より上側部分と左右側枠(3,3) との間にはリンクアーム(30,30) が差し渡されており、該リンクアーム(30,30) は左右側枠側では取付け位置が上下調節可能にされていることが望ましい。
さらに該リンクアーム(30,30) は左右側枠(3,3) 側で軸(32,32) を介して取り付けられており、該軸(32,32) は該側枠(3,3) 側に設けられ上下に配列している複数個の軸穴(14A、14B、14C)のうち一つに支持されていることが望ましい。」と訂正する。
(ウ)訂正事項3
明細書の段落【0005】を、
「 【作用】
本発明では車椅子(1) の左右側枠(3,3) は前後一対のX枠(11,12) により連結され、該X枠(11,12) の回動杆(11A,11A,12A,12A) を中心Cを支点に回動させれば、図8に示すようにX枠(11,12) の巾、すなわち左右側枠(3,3) 間の巾を調節することができる。このとき該X枠(11,12) は縦巾も変化するが、該回動杆(11A,11A,12A,12A) 下端部の該左右側枠下部取付け位置が車椅子の所望の巾に対応して上下調節可能にされているので、縦巾が変化してもそれに対応して該左右側枠(3,3) を連結でき、該回動杆の上端部の上下位置、即ち座の上下位置は変化しない。」と訂正する。

(2)訂正の可否に対する判断
(i)これらの訂正事項について検討すると、上記訂正事項1は、請求項1に「該一対の回動杆(11A,11A,12A,12A)の各上端には上側杆(17,17)がそれぞれ取り付けられ、該上側杆(17,17)は上記左右側枠(3,3)に具備されている座梁部(4,4)に取り付けられている杆受け(16,16)にそれぞれ支持されるように設定されており、」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記訂正事項2は、訂正事項1に伴い特許請求の範囲と整合しなくなった発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
上記訂正事項3は、訂正前の「回動枠」が「回動杆」であるべきことは、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項からみて明らかであるから、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
そして、いずれの訂正事項も、訂正後の技術事項が願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(ii)なおこの点に関し、請求人は、訂正事項1のうち「支持されるように設定されており、」との訂正は願書に添付した明細書等に記載のない構成を含み、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲を超えてされたものであるから、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3項に違反すると主張している(請求人は「願書に最初に添付した明細書等・・・」としているが、特許法第126条第3項の規定からみて、「願書に添付した・・・」との趣旨と解した。)。すなわち、「設定」とは、つくり定めることを意味するが、上側杆が杆受けに載せられただけでは車椅子の走行中に外れてしまう恐れがあるので、これでは、上側杆が杆受けに支持されるように設定されているとは言えない。願書に添付した明細書又は図面には、リンクアームにより左右側枠と回動杆とが連結された構成が開示されているが、「杆受けに支持されるように設定される」構成としては、他に種々の構成が採用され得るのであるから、「支持されるように設定されており、」との訂正は願書に添付された明細書又は図面に記載のない種々の構成を含むものである、と主張している。
しかしながら、「設定」が「つくり定める」ことを意味するとしても、「支持されるように設定される」は脱落が一切無いことまでを意味するとはいえない。杆受けのみの構成でも通常時には支持されていると考えられるから、支持されるようにつくり定めていると言える。そして、上側杆が杆受けに支持される点は願書に添付した明細書の段落0015や図2等に記載されているし、そもそも請求項に記載された発明特定事項として採用し得るすべての構成を明細書又は図面に記載すべきものとはされていないのであるから、「支持されるように設定されており、」との訂正は願書に添付した明細書又は図面に記載のない構成を含むとはいえず、請求人の主張は採用できない。
(iii)訂正後の特許請求の範囲のうち、無効審判が請求されていない請求項2及び3に係る発明は、請求項1に係る発明を直接的又は間接的に引用するものであり、請求項1に係る発明は特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がなされているものであるから、本件訂正により、訂正後の請求項2及び3についても、実質的に特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がなされているものである。
そこで、請求項2及び3に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。
訂正後の請求項1に係る発明は、以下の7及び8において述べるとおり、請求人の主張する理由によっては特許を受けることができないとすることはできないし、他に特許を受けることができない理由を発見しないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。そして、当該請求項1に係る発明を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項2及び3に係る発明についても、他に特許を受けることができない理由を発見しないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
(iv)したがって、平成21年11月6日付けの訂正請求に係る訂正は、特許法第134条の2第1項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第134条の2第5項の規定によって準用する同法第126条第3項及び第4項の規定並びに同法第134条の2第5項の規定によって読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3 請求人の主張する無効理由
請求人は、訂正後の本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件特許発明は、本件出願前に頒布された刊行物である、甲第7号証及び甲第14号証に記載された発明に基づいて(理由1)、又は甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて(理由2)、又は甲第8号証によって公知であることが明らかな発明及び甲第1号証に記載された発明に基づいて(理由3)、又は甲第10号証によって公知であることが明らかな発明及び甲第1号証に記載された発明に基づいて(理由4)、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである点、本件特許の請求項1の記載では、本件特許発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものである点(理由5)、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法第36条第4項の規定により特許を受けることができないものである点(理由6)、平成19年4月10日付け手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の範囲を超えてされたものであるから、本件特許発明は特許法第17条の2第3項により特許を受けることができないものである点(理由7)を主張している。
なお、平成21年11月6日付け訂正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の範囲を超えたものである(理由8)との主張については、口頭審理において、「理由8は、平成21年11月6日付けでされた訂正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の範囲を超えたものであり、特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項の規定により、認めるべきでないとの趣旨である。」との陳述があったものであり、この点については、上記2(2)(ii)で既に検討した。
[証拠方法]
検甲第1号証:歩行器 ホップステップ SM-40 (株)松永製作所製 2005年製造
甲第1号証:米国特許第4593929号明細書
甲第2号証:米国特許第6227559号明細書
甲第3号証:登録実用新案第3068675号公報
甲第4号証:実開平5-41529号公報
甲第5号証:特開平11-164852号公報
甲第6号証:米国特許第4082348号明細書
甲第7号証:米国特許第4813693号明細書
甲第8号証:財団法人保健福祉広報協会発行平成12年10月4日付け出展証明書
甲第9号証:特開2002-126023号公報
甲第10号証:健康・福祉の総合情報誌フィットウェルの抜粋(2001年10月20日発行)
甲第11号証の1:検甲第1号証の写真
甲第11号証の2:検甲第1号証の図面
甲第12号証:特許技術用語集第3版(日刊工業新聞社発行)の抜粋
甲第13号証の1:本件特許の包袋の平成19年4月10日提出手続補正書
甲第13号証の2:本件特許の包袋の平成19年4月10日提出審判請求書
甲第14号証:特公昭43-27170号公報
甲第15号証:実公昭43-3460号公報
甲第16号証:特開2001-276142号公報
甲第17号証:特開2000-135246号公報
甲第18号証:特開平9-47473号公報
甲第19号証:特開平2-46845号公報
甲第20号証:実開昭53-108064号公報

4 被請求人の主張
一方、被請求人は、乙第1?6号証を提出し、本件特許発明は、本件出願前に頒布された刊行物に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当せず、本件特許の請求項1の記載は明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定を満たし、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されており、特許法第36条第4項の規定を満たし、平成19年4月10日付け手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の範囲を超えてされたものでないから、特許法第17条の2第3項の規定を満たすものであって、請求人の主張は失当である旨主張している。
[証拠方法]
乙第1?3号証:略
乙第4号証:特開2004-8376号公報
乙第5号証:特開2008-69520号公報
乙第6号証:略

5 本件特許発明
本件特許発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
左右側枠を一個または二個以上のX枠で連結した構造であって、該X枠は中央で相互回動可能に結合され、下端部を該左右側枠下部に枢着した一対の回動杆からなり、該一対の回動杆の各上端には上側杆がそれぞれ取り付けられ、該上側杆は上記左右側枠に具備されている座梁部に取り付けられている杆受けにそれぞれ支持されるように設定されており、該回動杆下端部は軸を介して該左右側枠下部に取り付けられており、該左右側枠下部には、上下に配列している複数個の軸穴が設けられており、該車椅子の所望の巾に対応して該複数個の軸穴のうちの一つを選択して該軸穴に該軸を支持させることによって、該X枠の上端部は該左右側枠に対して上下位置を変えることなく、かつ該X枠の長さを変えることなく該車椅子の巾を調節可能にしたことを特徴とする車椅子。」

6 甲各号証の記載内容
請求人の提出した甲第1号証、甲第2号証、甲第7号証、甲第8号証、甲第9号証、甲第10号証、甲第11号証の1及び2、甲第14号証には、図面と共にそれぞれ次の事項が記載されている。
(甲第1号証)
(ア)「 As best shown in FIGS. 4 and 6, the main frame assembly of the wheelchair 10 consists of two side frames 14A and 14B interconnected with each other by means of a scissor mechanism 16. The scissor mechanism 16 illustrated has side members 18A and 18B formed integrally with or interconnected with each side frame 14A and 14B, as shown in FIG. 10. The scissor mechanism 16 further has cross members 20 (FIG. 4), each pivotally attached at one end to the upper end of one of the side members 18A or 18B and pivotally and slidably interconnected at the other end to the opposite one of the side members 18A or 18B, as shown in FIGS. 10 and 13. The two cross members 20 are also pivotally fastened to each other mid-way between their respective ends, as illustrated in FIGS. 4 and 6. The scissor mechanism 16 is, therefore, movable between a first position wherein the side frames 14A and 14B are spaced apart as shown in FIGS. 1, 3, 4, 5A and 5B, and a second position wherein the side frames are adjacent to each other, as shown in FIGS.2 and 6.」(8欄41行?60行)
『図4及び6に示されるように、車椅子10のメインフレームアセンブリは、シザーメカニズム16により連結された2つの側枠14A、14Bからなる。図示されたシザーメカニズム16は、図10に示されるように各側枠14A、14Bと一体に設けられたサイドメンバー18A、18Bを備えている。シザーメカニズム16はさらにクロスメンバー20を備えている。図10と図13に示すように、これらのクロスメンバー20の一端はサイドメンバー18Aまたは18Bの上端に回転可能に取付けられ、他端は反対側のサイドメンバー18Aまたは18Bにスライド可能に連結されている。図4、6に示されるように、これらのクロスメンバー20の中間位置で相互に回転可能に取付けられている。このため、シザーメカニズム16は側枠14A、14Bが離れた第一ポジション(図1、3、4、5A及び5B)と、側枠14A、14Bが隣接した第ニポジション(図2及び6)との間で動くことができる。』(訳文は、下記(ウ)を除き、審判請求書に記載された訳文である。以下同じ。)
(イ)「 FIGS. 69 through 73 generally illustrate an alternate collapsible arm rest 358' installed on the wheelchair 10' of the present invention. The arm rest 358' has a lower frame member 550 fastened in any appropriate manner to the seat base frame 122'. As best depicted in FIG. 69, but as also shown in FIGS. 72 and 73, the frame member 550 is a thin elongated member having a U-shaped cross-section and forming an upwardly oriented channel 552. One side of the channel 552 is provided with a series of vertical indentations or detents 554. A guide member 556 is slidably disposed in the channel 552. A button 558 is slidably interconnected with the guide member 556. The button 558 is provided with a downwardiy extending flange 560 engageable with the detents 554 to lock the guide member 556 and is positioned along the channel 552. The guide member 556 is further provided with an internal aperture accepting a spring 564 whereby, the spring 564 biases the button into engagement with the detents. The button may be manually disengaged from the detents by pressing on a button face 565.
An upper frame member 550' similar to the lower frame member 550 is also provided. A guide member 556' is also provided in the channel of the upper frame member 550' having a similar button 558' and spring 564'. An arm rest cushion 563 is fastened by any appropriate means to the upper side of the upper frame member 550'.
As shown in FIGS. 69, 70A, and 70B, two elongated arm rest cross members 566A and 566B are provided between the upper and lower frame members. Each of the cross members 566A and 566B are pivotally fastened at one end of its ends to one of the frame members 550 or 550', and pivotally fastened at the other of its ends to the guide member 556' or 556 associated with the opposite frame member and the two supports are pivotally fastened together at their respective midpoints by a pin 561 to form a collapsible support for the upper frame member.」(27欄18行?57行)
『図69から73は、本発明における車いす10’に取付けられた、他の折畳みアームレスト358'の概略図である。アームレスト358'は、任意の適切な方法でシートベースフレーム122'に固定された下側フレーム部550を有している。図69に最もよく図示され、図72及び73においても示されるように、フレーム部550は薄くて細長い部材であり、U字型の断面をしており、上向きのチャネル552を形成している。チャネル552の片側には、一続きの垂直インデンテイション、つまりデテント554が設けられている。ガイド部556がチャネル552にスライド自在に配置される。ボタン558とガイド部556とはスライド自在に相互に連結される。ボタン558には、デテント554と係合してガイド部556をロックする下向きに延びたフランジ560が設けられており、ボタン558はチャネル552に沿って位置されている。ガイド部には更に、スプリング564に対応する開口が設けられており、これによりスプリング564がボタン558を付勢してボタンがデテントと係合する。ボタン表面565を押すことにより、手動でボタンがデテントから離されてもよい。
さらに、下側フレーム部と同様の上側フレーム部550'が設けられている。上側フレーム部550'にもガイド部556'が設けられており、ガイド部556'は同様のボタン558'とスプリング564'とを有している。アームレストクッション563が適切な手段により上側フレーム部550'の表側に取付けられている。
図69、70A及び70Bにおいて示されるように、2本の細長いアームレストクロスメンバー566A及び566Bが上下フレーム部の間に設けられている。各クロスメンバー566A及び566Bは、その一端がフレームメンバー550又は550’の一方に回動可能に取付けられており、その他端がガイド部556'又は556に回動可能に取付けられている。これに付随して、対向するフレーム部と2本のサポートがそれぞれの中点においてピン561により互いに回動可能に取付けられており、上側フレーム部のための折畳みサポートが形成される。』
上記記載事項からみて、甲第1号証には次の発明が記載されている。
「シザーメカニズム16により連結された2つの側枠14A、14Bからなり、シザーメカニズム16は、各側枠14A、14Bと一体に設けられたサイドメンバー18A、18Bを備え、シザーメカニズム16はさらにクロスメンバー20を備え、これらのクロスメンバー20の一端はサイドメンバー18Aまたは18Bの上端に回転可能に取付けられ、他端は反対側のサイドメンバー18Aまたは18Bにスライド可能に連結されており、これらのクロスメンバー20の中間位置で相互に回転可能に取付けられ、シザーメカニズム16は側枠14A、14Bが離れた第一ポジション(図1、3、4、5A及び5B)と、側枠14A、14Bが隣接した第ニポジション(図2及び6)との間で動くことができる車椅子10。」

(甲第2号証)
(ウ)「 A sling (not shown) may be supported by the seat rails 16. The length and height of the sling may vary.」(3欄2行?4行)
『吊り布(図示せず)がシートレール16に支持されうる。吊り布の長さや高さは変えられる。』(訳文は当審による仮訳である。)
(エ)「 The crass-brace 14, as shown in FIG. 3, is a folding mechanism including two members, generally indicated at 38, connected by a pivot 40. The upper and lower ends 52, 46 of each cross-brace member 38 are connected to corresponding upper and lower side rails 28,30 by corresponding upper and lower grow-tabs 72,58.
A pair of lower grow-tabs 58 (FIG.4) each has a first end 64 connected to a lower side rail 30, A plurality of laterally spaced apertures 68 extends to a second end 66 of each lower grow-tab 58. Although only three apertures are shown, any suitable number of apertures may be provided. The apertures 68 in the lower grow-tabs 58 are adapted to co-align. The lower grow-tabs 58 are longitudinally spaced to provide a channel 62 therebetween. The channel 62 is adapted to receive the lower end 46 of a cross-brace member 38. An aperture 69 provided in the lower end 46 of a cross-brace member 38 is adapted to co-align with one of the co-aligning apertures 68 in the lower grow-tabs 58. The co-aligning pair of apertures 68,69 are adapted to receive a fastener 70 for pivotally connecting the lower end 46 of the cross-brace member 38 to the lower grow-tabs 58. The spacing between the lower side rails 30 may be varied by varying the position of the lower end 46 of each cross-brace member 38 relative to the lower grow-tabs 58, as shown in FIGS. 6 and 7. The tab apertures 68 may be uniformly spaced to permit the spacing between the lower side rails 30 to be uniformly and incrementally adiusted.」(3欄13行?39行)
『図3に示されるように、クロスブレース14は折畳機構であり、符号38でその全体が示されている2つの部材がピボット40で連結してなる。各クロスブレースメンバー38の上端52及び下端46は、対応する上下各グロウタブ72、58により対応する上下各サイドレール28、30に連結されている。
一対の下側グロウクブ58(図4)のそれぞれが、下側サイドレール30に連結している第一の端64を有している。複数の孔68が、各下側グロウタブ58の第二の端66まで横方向に間隔を開けて延在している。3個の孔しか図示されていないが、好適な任意の数の孔が設けられてもよい。各下側グロウタブ58の孔68は、一列に並んでいる。各下側グロウタブ58の間には前後方向の間隔があり、溝62が設けられている。この溝62はクロスブレースメンバー38の下端46を受けるようになっている。クロスブレースメンバー38の下端46に設けられた孔69は、下側グロウタブ58に設けられた一列に並ぶ孔68のいずれかと一列に並ぶようになっている。一列に並んだ一対の孔68、69は、クロスブレースメンバー38の下端46と下側グロウタブ58とを回動可能に連結するためにファスナー70を受ける。下側サイドレール30間の間隔は、図6及び図7で示すように、各クロスブレースメンバー38の下端46の位置を下側グロウタブ58に対して変えることにより変動させることができる。下側サイドレール30間の間隔を一定かつ漸増的に調節可能とするよう、タブの孔68の間隔を一定間隔としてもよい。』
上記記載事項からみて、甲第2号証には次の技術的事項が記載されている。
「折畳機構であるクロスブレース14は、2つのクロスブレースメンバー38がピボット40で連結してなり、各クロスブレースメンバー38の上端52及び下端46は、対応する上下各グロウタブ72、58により対応する上下各サイドレール28、30に連結されることにより、下側サイドレール30間の間隔を変動させるものであって、クロスブレースメンバー38の下端は下グロウタブ58に横方向に並ぶ複数の孔68にファスナー70を介して取り付けられるもの。」

(甲第7号証)
(オ)「 With particular reference to FIG. 3 and continuing reference to FIGS. 1 and 2, the adjustable cross brace folding mechanism B includes a first, multi-piece cross brace member 30 and a second multi-piece cross brace member 32 which are interconnected by a pivot assembly 34. The first cross brace member 30 is connected at a lower end 36 to a first pivot means 38 which is pivotally received on the lower side frame portion 16. The position of the first pivot means 38 on the side frame is fixed at the rear by abutting the rear lower side frame horizontal member 20 and at the front by a collar 40 which is clamped to the forward side frame portion lower tubular member 16.
The first cross brace member 30 further includes a first upper portion 42 which is interconnected with a first seat supporting member 44. The seat supporting member has regularly spaced apertures therealong through which the seat may be connected with sheet metal screws or the like. First lower and upper length adjusting means 46,48 are provided in the lower and upper portions 36,42, respectively. The first lower cross brace member adjusting means 46 includes a lower pair of telescopically received tubular portions 50, 52. The upper length adjusting means 48 includes an upper pair of telescopically received tubular portions 54, 56. Apertures 58 are disposed along one of the upper and lower portions at regular intervals.
A first link 60 is pivotally connected at one end with the first cross brace member 30 and is pivotally mounted on the forward upper horizontal frame portion 14. One end of the rear side frame upper horizontal portion 18 and a clamp 62 fix the relative position of the first link 60 on the side frame. A first link length adjusting means 64,such as two telescopically received link members having a plurality of apertures therein enable the length of the first link to be adjusted. The spacing of the apertures of the link adjustment means are coordinated with the intervals between the apertures 58 of the cross brace member length adjusting means.
The second cross brace member 32 is connected at a lower end 70 to a second pivot means 72 which is pivotally received on the lower side frame portion 16. The position of the second pivot means 72 on the side frame is fixed at the rear by abutting the rear lower side frame horizontal member 20 and at the front by a collar 40 which is clamped to the forward side frame portion ower tubular member 16.
The second cross brace member 32 further includes a second upper portion 74 which is interconnected with a second seat supporting member 76. The seat supporting member has regularly spaced apertures therealong through which the seat may be connected with sheet metal screws or the like. Second lower and upper length adjusting means 78,80 are provided in the lower and upper portions 70,74, respectively. The second lower cross brace member adjusting means 78 includes a lower pair of telescopically received tubular portions 82,84. The upper length adjusting means 80 includes an upper pair of telescopically received tubular portions 86,88. Apertures 90 are disposed along one of the upper portions and one of the lower portions at regular intervals. The intervals are selected such that adjusting the degree of telescopic receipt of the first and second, upper and lower pairs by one interval widens the chair in the open position by one inch, without adjusting the height of the seat.
A second link 92 is pivotally connected at one end with the second cross brace member 32 and is pivotally mounted on the forward upper horizontal frame portion 14. One end of the rear side frame upper horizontal portion 18 and a clamp 62 fix the relative position of the second link 92 on the side frame. A second link length adjusting means 94, such as two telescopically received link members having a plurality of apertures therein, enable the length of the second link to be adjusted. The spacing of the apertures of the link adjustment means is coordinated with the intervals between the apertures 58 and 90 of the cross brace member length adjusting means.
With continuing reference to FIGS. 1, 2, and 3, the seat C includes a lower seat portion 100 which is mounted at its edges to the first and second seat mounting members 44 and 76. When the seat is to be widened, the lower seat 100 is removed and replaced with a seat that has the appropriate additional width. Alternately,a wider seat section may be folded under for narrow widths and unfolded for wider widths. Commonly, widths are one inch intervals between 10 and 14 inches are provided.」(4欄25行?5欄45行)
『特に図3、並びに引き続き図1及び2によると、調整可能なクロスブレ-ス折たたみ機構Bは、ピボットアサンブリー34を介して相互連結される第一マルチピースクロスブレース部材30と第二マルチピースクロスブレース部材32とからなっている。上記第一クロスブレース部材30は、下端36において、第一ピボットを介して下側サイドフレーム部材16に嵌められている第一ピボット手段38に相互連結している。サイドフレーム上の第一ピポット手段38の位置は、後方下側サイドフレーム水平部材20に当接することで後方に、また、前方サイドフレーム部下側筒状部材16にクランプされているカラー40により前方に固定されている。
第一クロスブレース部材30は、第一シート支持部材44に相互連結している第一上部42をさらに備えている。上記第一シー卜支持部材には一定間隔で開口が設けられており、この開口を通してタッピンねじ等によりシートを連結することが出来る。第一上下長さ調整手段46、48が、下部36及び上部42にそれぞれ設けられている。第一下側クロスブレース部材調整手段46は、伸縮自在に嵌められている一対の下側筒状部50、52からなる。上側長さ調整手段48は、伸縮自在に嵌められている一対の上側筒状部54、56からなる。上部・下部のいずれか一方に沿って開口58が一定間隔で設けられている。
第一リンク60は、ピボットを介して一端において第一クロスブレース部材30と連結されると同時に、ピボットを介して前方上側水平フレーム部14に取り付けられている。リアサイドフレーム上側水平部18の一端及びクランプ62がサイドフレーム上の第一リンク60の相対位置を固定している。複数の開口を備える伸縮自在に嵌め込まれた2個のリンク部材といった第一リンク長さ調整手段64により、第一リンクの長さの調整が可能となっている。リンク調整手段の開口の間隔は、クロスブレース部材長さ調整手段の開口58間の間隔と合わされている。
上記第二クロスブレース部材32は、下端70において、第二ピボットを介して下側サイドフレーム部材16に嵌められている第一ピボット手段72に相互連結している。サイドフレーム上の第二ピボット手段72の位置は、後方下側サイドフレーム水平部材20に当接することで後方に、また、前方サイドフレーム部下側筒状部材16にクランプされているカラー40により前方に固定されている。
第二クロスブレース部材32は、第二シー卜支持部材76に相互連結している第二上部74をさらに備えている。上記第二シート支持部材には一定間隔で開口が設けられており、この開口を通してタッピンねじ等によりシートを連結することが出来る。第二上下長さ調整手段78、80が、下部70及び上部74にそれぞれ設けられている。第二下側クロスブレース部材調整手段78は、伸縮自在に嵌められている一対の下側筒状部82、84からなる。上側長さ調整手段80は、伸縮自在に嵌められている一対の上側筒状部76、88からなる。上部・下部のいずれか一方に沿って開口90が一定間隔で設けられている。かかる間隔は、第一・第二及び上側・下側対の伸縮自在な嵌入を1間隔ずつ調整することで、オープンポジションにおいて、シートの高さを調整することなく1インチずついすが広がるよう選択される。
第二リンク92は、ピボットを介して一端において第二クロスブレース部材32と連結されると同時に、ピボットを介して前方上側水平フレーム部14に取り付けられている。リアサイドフレーム上側水平部18の一端及びクランプ62がサイドフレーム上の第二リンク92の相対位置を固定している。
複数の開口を備える伸縮自在に嵌め込まれた2個のリンク部材といった第一リンク長さ調整手段94により、第一リンクの長さの調整が可能となっている。リンク調整手段の開口の間隔は、クロスブレース部材長さ調整手段の開口58及び90間の間隔と合わされている。
引き続き図1、2及び3によると、シートCはそのエッジが第一及び第二シート取り付け部材44及び76に取り付けられた下側シート部100を備えている。シートを広げる場合には、下側シート100を取り外し、幅が適切に広げられたシートと取り替える。或いは、シートを狭くする時はシート伸長部分を折りたたみ、シートを広げる時にはかかる伸長部分を広げるようにしてもよい。通常、幅は1インチ間隔で10-14インチ設けられる。』
(カ)「 1. An adjustable wheelchair which is adjustable inwidth while retaining a constant height, the wheelchair comprising:
a pair of side frames;
a plurality of wheels operatively connected with the side frames;
a seat assembly operatively supported by the side frames at a preselected length;
a cross brace means including first and second cross brace members that are pivotally interconnected by a central pivot means, each of the cross brace members being pivotally connected adjacent a lower end with one of the side frames and being connected adjacent an opposite upper end with a seat supporting member to which the seat assembly is operatively connected, the first and second cross members being adjustable in length, such that the side frames are foldably interconnected for movement between folded and open positions, and being selectively adjustable to adjust the distance between the side frames in the open position without adjusting the preselected seat height; and, at least one link pivotally connected between one of the cross brace members and one of the wheelchair side frames, the link including a length adjusting means for adjusting a length thereof.」(8欄58行?9欄15行、クレーム1)
『1.高さを一定に保ったままで幅を調節できる、調節可能な車椅子であり、
一対のサイドフレームと、
このサイドフレームと動作可能に連結された複数の車輪と、
予め設定された長さのサイドフレームにより操作可能に支持されるシートアセンブリと、
中心ピボット手段によりピボットを介して相互連結された第一及び第二クロスブレース部材を含み、この第一及び第ニクロスブレース部材が、それぞれ下端付近において一方のサイドフレームに連結し、且つ、反対の上端付近においてシートアセンブリが動作可能に連結されているシート支持部材に連結しており、長さを調整可能であり、サイドフレームが折り畳みポジションからオープンポジションまで動くよう折り畳み可能に相互結合しており、オープンポジションにおいてシートの高さを調整することなくサイドフレーム間の距離を調整するための選択的な調整が可能である、クロスブレース手段と、一方のクロスブレース部材と一方の車いすサイドフレームとの間をピボットを介して連結しており、その長さを調整するための長さ調整手段を含む少なくとも1つのリンクとを備えた車いす。』
(キ)図1、図2からみて、シート支持部材を構成する第一シート支持部材44及び第ニシー卜支持部材76が266の符号の付いた部材(以下、部材266という。)に支持されており、部材266はサイドフレームを構成する前方上側水平フレーム部14に取り付けられているものと理解できる。
上記記載事項からみて、甲第7号証には次の発明が記載されている。
「一対のサイドフレームと、中心ピボット手段によりピボットを介して相互連結された第一及び第二クロスブレース部材を含み、この第一及び第ニクロスブレース部材が、それぞれ下端付近において一方のサイドフレームに連結し、且つ、反対の上端付近において第一シート支持部材44及び第ニシー卜支持部材76に連結しており、長さを調整可能であり、サイドフレームが折り畳みポジションからオープンポジションまで動くよう折り畳み可能に相互結合しており、オープンポジションにおいてシートの高さを調整することなくサイドフレーム間の距離を調整するための選択的な調整が可能である、クロスブレース手段と、サイドフレームに取り付けられた部材266とを備え、第一シート支持部材44及び第ニシー卜支持部材76が部材266に支持される車いす。」

(甲第8号証)
(ク)甲第8号証は、甲第9号証の出願に係る発明について特許法第30条第3項の適用を受けるために提出された出展証明書であり、「1.出展製品名」として「六輪式歩行器」、「3.発明考案の技術的特徴」として「X字状のパイプの回転により、歩行器の幅を調節することができる」、「7.展示会の名称」として「第27回国際福祉機器展H.C.R.2000」、「8.開催年月日」として「平成12年9月12日から14日」との記載がある。また別紙として添付写真1?5が添付されている。

(甲第9号証)
(ケ)「歩行器100の前部に設けられたクロスバー16は、2本のバーが互いに重なり、クロスバー軸止部17で軸動可能に軸止されている。この2本のクロスバー16は一方のバーが他方のバーの動きを阻害しないことが必要である。2本のバーの各末端の上端は幅調節ケース20のクロスバー上部枢着部21に枢着され、下端は下部フレーム13のクロスバー下部枢着部18に枢着されている。当該クロスバー16の凸形状はその機能を有する限り角状でも半円状でもよいが、丸みのある形状が望ましい。」(段落【0013】)
(コ)「また、本発明の左右の横幅を調節するための方法は、図1あるいは図3に示すように前部の軸動可能なクロスバー16のクロスバー上部枢着部21の上部に設けられた左右の幅調節用レバー24を倒して、軸動可能なクロスバー16を開閉調節することによって歩行器200の幅を調整した後、左右の幅調節用レバー24を起こすことにより、当該レバー24の内部に付勢されたピンが幅調節パイプ19に付勢された孔25に嵌入して、望ましい幅で固定される。さらに、上部フレーム12の前に付勢されている幅調節プレート22の溝に沿わせて、幅調節の固定ネジ23で強固に固定する。クロスバー16による幅調節機構は、クロスバー16を開閉して幅を調節後固定される方法であれば、上記方法に限定されるものではない。例えば、幅調節ケースを直接垂直フレームに嵌入する方法、あるいは、クロスバーの上端部を軸動可能に固定し、下端部を摺動可能にして固定する方法等、クロスバーを開閉して歩行器の幅を調節し、固定できる方法であればいずれの方法でも良い。
本発明の別体の歩行器200は図3の斜視図に示すように、下部フレーム13の前部に回動可能な前部回動キャスター31と中間部に回動不能な固定キャスター32及び後部回動キャスター33を有し、前部に軸動可能なクロスバー16を凸型に設けている。側面より示すと図4のように、上部に手や肘で体を支えるための馬蹄クッション11があり、その下の上部フレーム12前部にグリップ52,ブレーキレバー53,上部フレーム12の下に垂直パイプ14,15が配設されている。垂直パイプ14,15には高さ調節後の固定ネジ26,27と、前部の垂直パイプ14の前方に幅調節パイプ19が固着されており、その幅調節パイプ19には幅調節ケース20が上下動ができるように遊嵌されている。
幅調節ケース20は下に軸動可能なクロスバー16の上部末端がクロスバー上端枢着部21に枢着されている。幅調節ケース20の上の幅調節レバー24を起こして、クロスバー16を開閉して幅を調節し、幅調節レバー24を倒して幅調節ケース19の内部に設けられたピンを幅調節パイプ上の孔25に嵌入すると望ましい幅で調節固定される。クロスバー16の下部は下部フレーム13の前部垂直パイプ14の前に設けられたクロスバー下端枢着部18に枢着されている。」(段落【0016】?【0018】)
(サ)図3には、左右の下部フレームから左右の垂直パイプが立設され、幅調節パイプ(19)の上部に上下に配列している複数個の孔を設けた6輪式歩行器が記載されている。
上記記載事項からみて、甲第9号証には次の発明が記載されている。
「左右の下部フレームから立設された左右の垂直パイプに幅調節パイプ、幅調節ケースを介してクロスバーの上部末端が枢着され、左右の下部フレームにクロスバー下端枢着部を介してクロスバーの下部が枢着されており、クロスバーは2本のバーが互いに重なり、クロスバー軸止部で軸動可能に軸止され、幅調節パイプの上部に上下に配列している複数個の孔を設け、幅調節ケースの内部に設けられたピンを幅調節パイプの孔に嵌入すると望ましい幅で調節固定される6輪式歩行器。」

(甲第10号証)
(シ)甲第10号証は、健康・福祉の総合情報誌フィットウェルの抜粋であり、その58頁に写真が掲載され、表題として「日本家屋でのリハビリ用につくられた在宅向け6輪歩行器「ホップステップ」」と記載されている。

(甲第11号証の1,2)
(ス)甲第11号証の1には、6輪歩行器の写真が掲載されている。
(セ)甲第11号証の2には、6輪歩行器の図面が掲載されている。

(甲第14号証)
(ソ)「横筋かい9はその中央の点において接続されておりそこでピボットボルト12に交わりその両端および下端において棒4および7のまわりに回転することができる。」(2頁左欄4行?7行)
(タ)「横筋かい9はその下端において棒4とピボット接続をしており座席8のための側面棒7にその上端において同じ仕方で接続されている。」(2頁左欄17行?19行))
(チ)「横筋かい9は直立材2および3の間において座席の側面棒7および底棒4と下端においてピボット接続している。このピボット接続はさまざまな方法で得られるが、たとえば棒4および7に回転可能なスリーブ29を取りつけ、これらのスリーブを棒9の端にしっかり固定してそしてこのスリーブを支えている棒にそってスリープが動かないようストップ30を棒7にもたせることによっても得られる。もちろん他の仕方のピボット接続を用いてもよい。」(2頁左欄35行?44行)
(ツ)「クランク26が回転すると足21の上のストリップ22を支えている側面棒は明らかに引き上げられ、そしてこの運動につづいて筋かい9の折りたたみ運動および側面骨組が相互に接近する運動がつづく。いすの幅がこのようにして小さくなるといすは狭い出入口あるいは他の狭いすき間を通ることができる。この結果は乗り手が単にクランク26を回転することによって得られる。狭い出入口を通過した後クランクを反対方向にまわせば側面骨組は開きそしていすはもとの全幅を回復する。
このようにしていすは乗り手により容易に調節可能となりしかも通常の構造に何ら変更を加える必要はない。」(2頁右欄43行?3頁左欄9行)
(テ)「クランク26がその真下にある座席の側面にある棒7をあげるよう回転する時はこの棒7に接続した筋かい9の接近した端はやはりあげられ、そしてピボット12のまわりに回転する。したがってこの棒9と底棒4とのピボット接続は他の側の側面骨組をこの付属品17を持つ骨組に向ってひき寄せ、そして他の筋かい9をひきあげてもう1つの側面棒7をもひきあげる。それゆえこの2つの側面骨組は互いにひき寄せられる。」(3頁左欄15行?23行)
上記記載事項からみて甲第14号証には、横筋かいで側面骨組が連結された車いすにおいて、横筋かいの上端及び下端が回転でき、長さをかえることなく、また下端は上下位置を変えずに上端が上下にスライドして車いすの幅調整可能とする技術事項が記載されている。

7 当審の判断
(1)理由1(甲第7、14号証から容易)について
(i)対比
本件特許発明と甲第7号証に記載された発明(以下、「甲7発明」という。)とを対比すると、後者の「一対のサイドフレーム」は前者の「左右側枠」に相当し、以下同様に、「クロスブレース手段」は「X枠」に、「第一及び第二クロスブレース部材」は「一対の回動杆」に、「第一シート支持部材44及び第二シート支持部材76」は「上側杆」に、「部材266」は「杆受け」に、「車いす」は「車椅子」に、それぞれ相当する。また、後者の「第一及び第二クロスブレース部材」が連結するのは「サイドフレーム」の下部であることは甲第7号証の図2等からみて明らかであり、その連結態様は記載事項(オ)等から具体的にはピボット手段を用いたものであって枢着といえる。また後者の「部材266」が取り付けられる「サイドフレーム」の部分は、「部材266」を介して「第一シート支持部材44及び第二シート支持部材76」を支持するから、「座梁部」ということができる。さらに後者の「シートの高さを調整することなくサイドフレーム間の距離を調整するための選択的な調整が可能である」は「X枠の上端部は該左右側枠に対して上下位置を変えることなく、車椅子の巾を調節可能にした」に相当する。
そうすると、本件特許発明と甲7発明とは、本件特許発明の用語を用いて記載すると次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「左右側枠を一個または二個以上のX枠で連結した構造であって、該X枠は中央で相互回動可能に結合され、下端部を該左右側枠下部に枢着した一対の回動杆からなり、該一対の回動杆の各上端には上側杆がそれぞれ取り付けられ、該上側杆は上記左右側枠に具備されている座梁部に取り付けられている杆受けにそれぞれ支持されるように設定されており、該回動杆下端部は該左右側枠下部に取り付けられており、該X枠の上端部は該左右側枠に対して上下位置を変えることなく、該車椅子の巾を調節可能にしたことを特徴とする車椅子。」
(相違点1)
回動杆下端部の左右側枠下部に対する取り付けが、本件特許発明においては「軸を介して」取り付けられているが、甲7発明においてはそのような特定がない点。
(相違点2)
本件特許発明においては「左右側枠下部には、上下に配列している複数個の軸穴が設けられており、車椅子の所望の巾に対応して該複数個の軸穴のうちの一つを選択して該軸穴に軸を支持させることによって」「X枠の長さを変えることなく」車椅子の巾を調節可能としているが、甲7発明においてはX枠の「長さを調整可能」とすることにより車椅子の巾を調節可能としている点。

(ii)判断
(相違点1について)
上記のとおり、甲7発明の回動杆下端部も左右側枠下部に具体的にはピボット手段を用いて枢着されたものであり、これを「軸を介して」取り付けることは当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。
(相違点2について)
上記のとおり、甲第14号証には、横筋かいで側面骨組が連結された車いすにおいて、横筋かいの上端及び下端が回転でき、長さをかえることなく、また下端は上下位置を変えずに上端が上下にスライドして車いすの幅調整可能とする技術事項が記載されている。しかしながら、甲第14号証に記載された技術事項を甲7発明の巾調節機構に適用したとすれば、下端は上下位置を変えずに上端が上下にスライドするものとなる。そうすると甲7発明の、「X枠の上端部は該左右側枠に対して上下位置を変えることなく」との技術事項が維持できなくなる。
請求人は、甲第7号証の車いすに甲第14号証のX枠を適用する際に、座面を構成するX枠の上端を上下位置を一定にして、X枠の下端を上下にスライド可能とさせることは、当業者にとって容易に想到される、また、甲第1号証に、X枠の上端が上下位置を変えることなく回動可能にされ、X枠の下端が上下方向にスライド可能にされた車椅子が開示され、甲第9号証に、X枠の上端が上下位置を変えることなく、下端が上下スライド可能にされて巾調整がされてもよいことが記載されていることからも、容易といえると主張している。
しかしながら、甲第9号証は本件出願前に公知となった文献でないから、当該文献に基づく主張は採用できない。また、甲第14号証にも甲第1号証にも上端下端の配置を逆転させることを示唆する記載はない。また甲第1号証の車椅子は上記記載事項に示すとおり側枠が離れた第一ポジションすなわち使用位置と側枠が隣接した第二ポジションすなわち折りたたみ位置との間で動くことはできるが、使用時の幅調整が可能なものではないから、甲7発明と課題が共通しない上に、甲7発明に甲第14号証に記載された技術事項を適用する際にさらに甲第1号証の技術事項を考慮することが容易とも言い難い。さらに、甲第14号証の横筋かいの下端は底棒4に回転可能に取り付けられていて(記載事項(タ)参照)、それ以上下方向に移動できない構造であるから、この部分をスライド可能にすることには困難性があるといわざるをえない。
そうすると、請求人が別途主張するように甲第7号証、甲第2号証、甲第16号証及び甲第17号証から複数の軸穴と軸によって高さや巾を調整する構造が周知であるとしても、甲7発明に甲第14号証に記載された技術事項を適用して、相違点2に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たこととはいえない。

したがって、本件特許発明は、甲7発明及び甲第14号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)理由2(甲第1、2号証から容易)について
(i)対比
本件特許発明と甲第1号証に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)とを対比すると、後者の「2つの側枠」は前者の「左右側枠」に相当し、以下同様に、「シザーメカニズム」は「X枠」に、「中間位置」は「中央」に、「他端」は「下端部」に、「一端」は「上端」にそれぞれ相当する。
また、甲第1号証の図4及び図10からみて後者の「クロスメンバー」の他端は「側枠」の下部に「サイドメンバー」を介してスライド可能に連結されており、同じく「クロスメンバー」の一端は「2つの側枠」に対して上下位置を変えることはないし、「クロスメンバー」の長さを変えることもない。
そして、前者の「枢着した」と後者の「スライド可能に連結され」とは「取り付けられている」点で共通する。
また、上記理由(1)についてで述べたとおり、甲1発明において「第一ポジションと第二ポジションとの間で動くことができる」とは折りたたみが可能なだけで使用時の幅調整可能なものではないのに対し、本件特許発明において「車椅子の巾を調節可能にした」とは発明の詳細な説明を参酌すれば単に折りたたみ可能にすることを意図したものでなく、使用時の車椅子の巾を調節するものであるから、この点で甲1発明とは相違している。
そうすると、本件特許発明と甲1発明とは、本件特許発明の用語を用いて記載すると次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「左右側枠を一個または二個以上のX枠で連結した構造であって、該X枠は中央で相互回動可能に結合され、下端部を該左右側枠下部に取り付けられている一対の回動杆からなり、該回動杆下端部は該左右側枠下部に取り付けられており、該X枠の上端部は該左右側枠に対して上下位置を変えることなく、かつ該X枠の長さを変えることのない車椅子。」
(相違点1)
回動杆下端部の左右側枠下部への取り付けが、本件特許発明では「軸を介して」「枢着した」のに対し、甲1発明では「スライド可能に連結されて」いるとともに、本件特許発明では「左右側枠下部には、上下に配列している複数個の軸穴が設けられており、車椅子の所望の巾に対応して該複数個の軸穴のうちの一つを選択して該軸穴に軸を支持させる」のに対し、甲1発明ではそのような特定事項を備えていない点。
(相違点2)
本件特許発明では「一対の回動杆の各上端には上側杆がそれぞれ取り付けられ、該上側杆は左右側枠に具備されている座梁部に取り付けられている杆受けにそれぞれ支持されるように設定されて」いるのに対し、甲1発明ではそのような特定事項を備えていない点。
(相違点3)
本件特許発明では「車椅子の巾を調節可能にした」のに対し、甲1発明では「折りたたみが可能」であるにとどまる点。

(ii)判断
(相違点1及び3について)
上記のとおり、甲第2号証には、「折畳機構であるクロスブレース14は、2つのクロスブレースメンバー38がピボット40で連結してなり、各クロスブレースメンバー38の上端52及び下端46は、対応する上下各グロウタブ72、58により対応する上下各サイドレール28、30に連結されることにより、下側サイドレール30間の間隔を変動させるものであって、クロスブレースメンバー38の下端は下グロウタブ58に横方向に並ぶ複数の孔68にファスナー70を介して取り付けられるもの。」との技術事項が記載されている。
しかしながら、そもそも車椅子の巾を調節可能にするとの課題を有していない甲1発明に甲第2号証の車椅子の巾を調節可能にするための技術事項を適用するに至る動機がなく、適用が容易とは言えない。また、甲第2号証において、下グロウタブ58に横方向に並ぶ複数の孔68の選択によって下側サイドレール30間の間隔を変動させる機構については、図1?図3によればクロスブレースメンバー38の上端と上サイドレール28との連結部分についても同様と解されるから、結局甲第2号証に記載された上下各サイドレール28、30の間隔変動は上下各グロウタブ72、58の横方向に並ぶ複数の孔の選択によるものである。そうすると、仮に甲第2号証に記載された技術事項を甲1発明に適用できたとしても、適用の結果、甲1発明の左右側枠上下部に横方向に並ぶ複数の孔を設けることとなり、相違点1に係る本件特許発明の発明特定事項とは異なるものとなる。
また請求人は、甲第1号証に記載されたアームレストの高さ調節機構(記載事項(イ)参照)を甲1発明に適用する旨の主張も行っているが、アームレストの高さ調節と車椅子自体の巾調節とではその対象が大きく異なり、また調節の方向も異なるものであって、当業者といえども適用が容易とは言えない。
また、甲第6号証及び甲第7号証に記載されるように、上下方向に並ぶ複数の軸穴から任意の軸穴を選択することで、部材の高さを任意に設定することが周知慣用技術であるとしても、甲1発明における左右側枠を連結するX枠の下端部の取り付け構造として該周知慣用技術を適用する動機付けがない。

したがって、甲1発明及び甲第2号証に記載された技術事項さらには周知慣用技術を考慮しても、相違点1及び3に係る本件特許発明の発明特定事項に想到することは当業者が容易になし得たことではない。
よって、相違点2の検討をするまでもなく、本件特許発明は、甲1発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)理由3(甲第8、1号証から容易)について
(i)甲第8号証により本件出願前に公知であることが明らかな発明
甲第8号証により本件出願前に公知であることが明らかな発明(以下、「甲8発明」という。)は、記載事項(ク)より、「X字状のパイプの回転により、歩行器の幅を調節することができる六輪歩行器」であるといえるが、さらに[1]甲第8号証が甲第9号証に記載された発明について特許法第30条第3項の適用を受けるために提出されたものであること、[2]甲第8号証の別紙の添付写真1?5からみて、添付写真1は第27回国際福祉機器展H.C.R2000出品時の写真と推認できるが、添付写真1に撮影されている六輪歩行器は外観上甲第9号証の図3に記載されたものと相違が見られないこと、[3]証人小倉渉による甲第9号証に記載された歩行器が上記国際福祉機器展に展示されていたとの証言に特段疑わしい点がないこと、を総合判断すれば、甲8発明は甲第9号証に記載された発明と同じものと推認される。
そこで、甲8発明は上記甲第9号証に関する記載事項からみて、
「左右の下部フレームから立設された左右の垂直パイプに幅調節パイプ、幅調節ケースを介してクロスバーの上部末端が枢着され、左右の下部フレームにクロスバー下端枢着部を介してクロスバーの下部が枢着されており、クロスバーは2本のバーが互いに重なり、クロスバー軸止部で軸動可能に軸止され、幅調節パイプの上部に上下に配列している複数個の孔を設け、幅調節ケースの内部に設けられたピンを幅調節パイプの孔に嵌入すると望ましい幅で調節固定される6輪式歩行器。」であると言える。

(ii)対比
本件特許発明と甲8発明とを対比すると、後者の「左右の下部フレーム」と「左右の垂直パイプ」とが前者の「左右側枠」に相当し、以下同様に「クロスバー」は「X枠」に、「2本のバー」は「一対の回動杆」にそれぞれ相当する。
また、後者の「クロスバー軸止部で軸動可能に軸止され」は前者の「X枠は中央で相互回動可能に結合され」に相当する。
さらに後者の「左右の垂直パイプに幅調節パイプ、幅調節ケースを介してクロスバーの上部末端が枢着され、」「幅調節パイプの上部に上下に配列している複数個の孔を設け、幅調節ケースの内部に設けられたピンを幅調節パイプの孔に嵌入すると望ましい幅で調節固定される」ことは、前者の「X枠は」「下端部を該左右側枠下部に枢着した一対の回動杆からなり、」該一対の回動杆の各上端には上側杆がそれぞれ取り付けられ、該上側杆は上記左右側枠に具備されている座梁部に取り付けられている杆受けにそれぞれ支持されるように設定されており、「該回動杆下端部は軸を介して該左右側枠下部に取り付けられており、該左右側枠下部には、上下に配列している複数個の軸穴が設けられており、」該車椅子の「所望の巾に対応して該複数個の軸穴のうちの一つを選択して該軸穴に該軸を支持させることによって、」該X枠の上端部は該左右側枠に対して上下位置を変えることなく、かつ該X枠の長さを変えることなく該車椅子の「巾を調節可能にした」ことと、「X枠は」「端部を該左右側枠端部に枢着した一対の回動杆からなり、」「該回動杆端部は軸を介して該左右側枠端部に取り付けられており、該左右側枠端部には、上下に配列している複数個の軸穴が設けられており、」「所望の巾に対応して該複数個の軸穴のうちの一つを選択して該軸穴に該軸を支持させることによって、」「巾を調節可能にした」点で共通している。
また後者のクロスバーの下部は左右の垂直パイプに対して上下位置を変えることなく、かつクロスバーの長さを変えることもないから、前者と「X枠の端部は該左右側枠に対して上下位置を変えることなく、かつ該X枠の長さを変えることなく」で共通している。
そうすると、本件特許発明と甲8発明とは、本件特許発明の用語を用いて記載すると次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「左右側枠を一個または二個以上のX枠で連結した構造であって、該X枠は中央で相互回動可能に結合され、端部を該左右側枠端部に枢着した一対の回動杆からなり、該回動杆端部は軸を介して該左右側枠端部に取り付けられており、該左右側枠端部には、上下に配列している複数個の軸穴が設けられており、所望の巾に対応して該複数個の軸穴のうちの一つを選択して該軸穴に該軸を支持させることによって、該X枠の端部は該左右側枠に対して上下位置を変えることなく、かつ該X枠の長さを変えることなく巾を調節可能にしたこと。」
(相違点1)
本件特許発明は「車椅子」であるが、甲8発明は「歩行器」である点。
(相違点2)
上下に配列している複数個の軸穴が設けられている端部は、本件特許発明では下部であるのに対し、甲8発明では上部であり、左右側枠に対して上下位置を変えないX枠の端部は本件特許発明では上端部であるのに対し、甲8発明では下部である点。
(相違点3)
本件特許発明では「該一対の回動杆の各上端には上側杆がそれぞれ取り付けられ、該上側杆は上記左右側枠に具備されている座梁部に取り付けられている杆受けにそれぞれ支持されるように設定されて」いるのに対し、甲8発明ではそのような特定事項を備えていない点。
(iii)判断
(相違点1、2について)
甲8発明には使用者が腰をかける座がない。仮に甲第9号証に記載された馬蹄クッション11(記載事項(コ))が座に相当するものと仮定しても、馬蹄クッション11は上部フレーム12に支持されていて、その高さ調整は垂直パイプ14,15に設けた固定ネジ26,27で行うものであって、クロスバーの動作によって馬蹄クッション11の高さが変わるものではない。そうすると、座とX枠の上端の動作とが関連する場合に生じる、X枠による巾調整に伴う座位置の変化を補償するとの技術課題が甲8発明には生じないから、左右側枠に対して上下位置を変えないX枠の端部を下部から上端部に変更する動機が生じることもない。
そして、このように技術課題も異なる歩行器の発明を車椅子に転用することにも困難性があるものと言わざるを得ない。
また、甲1発明も車椅子の巾を調整するものではないから、座位置の変化を補償するとの技術課題は生じないものであって、甲1発明を甲8発明に適用して相違点1、2に係る本件特許発明の発明特定事項に至らせるに足る動機付けがない。さらに甲第9号証は本件出願前公知の文献ではないから、本件出願前の技術水準を知る上での前提とすることはできない。
そうすると、甲8発明及び甲1発明に基づいて、当業者が相違点1、2に係る本件特許発明の発明特定事項に想到することは容易になし得たことでない。
よって、相違点3の検討をするまでもなく、本件特許発明は、甲8発明及び甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)理由4(甲第10、1号証から容易)について
甲第10号証の記載と写真からは歩行器の巾調節のためのX枠の機構は明らかでない。また甲第11号証の1及び2に記載された6輪歩行器と、甲第10号証に記載された6輪歩行器との関係が明らかでないので、甲第11号証の1及び2に記載された6輪歩行器の機構を甲第10号証に記載された6輪歩行器のものということもできない。
請求人は、結局甲第10号証の歩行器の構成は甲8発明と同様であると主張しているが、仮に同じとしても、甲8発明及び甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないことは(3)理由3についてに記載したとおりであるから、本件特許発明は、甲第10号証によって公知であることが明らかな発明及び甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)理由5(明確性要件)について
訂正により本件特許発明は上側杆が杆受けに支持されていることが明らかとなった。この点について請求人は、X枠の上端部(上側杆)が杆受けに載せられただけでは、走行中に外れてしまう恐れがあり、課題を解決できず、作用効果を得ることができないと主張しているが、上側杆が左右側枠に連結されていないことにより、多少の操作性の問題はあったとしても、上側杆が杆受けに支持されていることにより、請求項1に記載された、「X枠の上端部は左右側枠に対して上下位置を変えることなく・・・車椅子の巾を調節可能」であるとの作用効果を得ることができ、車椅子の巾を調節可能とすることによって車輪操作容易性の課題を解決するものであるから、本件特許の請求項1の記載では本件特許発明が明確でないとは言えない。

(6)理由6(実施可能要件)について
請求人は本件特許の請求項1に記載された「枢着」とは「凹凸部分で回動自在に取り付けること」であり、本件特許の明細書の発明の詳細な説明からは側枠下部に軸を介して回動杆下端部が回動可能に取り付けられている構成は把握できるが、回動杆下端部を左右側枠下部に枢着した構成までは把握できないと主張している。しかしながら、一般には二部材を軸を介して回動自在に取り付けることも枢着と表現される(例、乙第4,5号証参照)。そうすると本件特許の明細書の発明の詳細な説明から把握できる構成も「枢着」と言えるから、請求人の主張は採用できず、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載が、本件特許発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえない。

(7)理由7(新規事項)について
請求人は、本件特許の請求項1において「取り付けられた」を「枢着した」に変更する補正は、本件出願当初の明細書に、「枢着」の記載そのものも見当たらないし、その意味である「凹凸部分で回動自在に付けること」の記載も見当たらないことから、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲を超えてされたものであると主張する。
しかしながら願書に最初に添付した明細書の段落【0015】には、「該X枠(11,12) により該側枠(3,3) を連結するには、該X枠(11,12) の円筒状の下側杆(18)を下側杆取付部(13,13) のいずれかの軸穴(13A,13B,13C) 例えば軸穴(13A) に合わせ、軸である枢軸(26)を該軸穴(13A,13A) および円筒状の下側杆(18)の内部に挿通して支持する」こと、すなわち側枠下部に軸を介して回動杆下端部が回動可能に取り付けられている構成が記載されているということができる。そして、「枢着」については一般には二部材を軸を介して回動自在に取り付けることも枢着と表現されることは上記(6)理由6についてで述べたとおりであるから、願書に最初に添付した明細書に「枢着した」点が記載されているといえるから、請求人の主張は採用できない。

8 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件特許発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
車椅子
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右側枠を一個または二個以上のX枠で連結した構造であって、該X枠は中央で相互回動可能に結合され、下端部を該左右側枠下部に枢着した一対の回動杆からなり、該一対の回動杆の各上端には上側杆がそれぞれ取り付けられ、該上側杆は上記左右側枠に具備されている座梁部に取り付けられている杆受けにそれぞれ支持されるように設定されており、該回動杆下端部は軸を介して該左右側枠下部に取り付けられており、該左右側枠下部には、上下に配列している複数個の軸穴が設けられており、該車椅子の所望の巾に対応して該複数個の軸穴のうちの一つを選択して該軸穴に該軸を支持させることによって、該X枠の上端部は該左右側枠に対して上下位置を変えることなく、かつ該X枠の長さを変えることなく該車椅子の巾を調節可能にしたことを特徴とする車椅子。
【請求項2】
該回動杆の少なくとも一対の中央より上側部分と左右側枠との間にはリンクアームが差し渡されており、該リンクアームは左右側枠側では取付け位置が上下調節可能にされている請求項1に記載の車椅子。
【請求項3】
該リンクアームは左右側枠側で軸を介して取り付けられており、該軸は該側枠側に設けられ上下に配列している複数個の軸穴のうち一つに支持されている請求項2に記載の車椅子。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は巾調節できる車いすに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来巾調節可能な車椅子は提供されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図10に示すように車椅子(9)を介助者によらず使用者自身が移動させるには主車輪(91)あるいは主車輪に取り付けられたハンドリムを手で掴んで回すので、使用者の体形に応じて車椅子(9)の巾を調節しなければ、車椅子(9)に乗った人が車輪(91)を手で回す時、車輪(91)の巾が広すぎたり狭すぎたりして車輪(91)を回し易い位置に手をおくことが出来ないという問題点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、左右側枠(3,3)を一個または二個以上のX枠(11,12)で連結した構造であって、該X枠(11,12)は中央で相互回動可能に結合され、下端部を該左右側枠下部に枢着した一対の回動杆(11A,11A,12A,12A)からなり、該一対の回動杆(11A,11A,12A,12A)の各上端には上側杆(17,17)がそれぞれ取り付けられ、該上側杆(17,17)は上記左右側枠(3,3)に具備されている座梁部(4,4)に取り付けられている杆受け(16,16)にそれぞれ支持されるように設定されており、該回動杆下端部は軸(26)を介して該側枠下部に取り付けられており、該左右側枠下部には、上下に配列している複数個の軸穴(13A,13B,13C)が設けられており、該車椅子(1)の所望の巾に対応して該複数個の軸穴(13A,13B,13C)のうちの一つを選択して該軸穴(13A,13B,13C)に該軸(26)を支持させることによって、該X枠(11,12)の上端部は該左右側枠(3,3)に対して上下位置を変えることなく、かつ該X枠(11,12)の長さを変えることなく該車椅子(1)の巾を調節可能にした車椅子(1)を提供するものである。
該回動杆(12A,12A)の少なくとも一対の中央より上側部分と左右側枠(3,3)との間にはリンクアーム(30,30)が差し渡されており、該リンクアーム(30,30)は左右側枠側では取付け位置が上下調節可能にされていることが望ましい。
さらに該リンクアーム(30,30)は左右側枠(3,3)側で軸(32,32)を介して取り付けられており、該軸(32,32)は該側枠(3,3)側に設けられ上下に配列している複数個の軸穴(14A,14B,14C)のうち一つに支持されていることが望ましい。
【0005】
【作用】
本発明では車椅子(1)の左右側枠(3,3)は前後一対のX枠(11,12)により連結され、該X枠(11,12)の回動杆(11A,11A,12A,12A)を中心Cを支点に回動させれば、図8に示すようにX枠(11,12)の巾、すなわち左右側枠(3,3)間の巾を調節することができる。このとき該X枠(11,12)は縦巾も変化するが、該回動杆(11A,11A,12A,12A)下端部の該左右側枠下部取付け位置が車椅子の所望の巾に対応して上下調節可能にされているので、縦巾が変化してもそれに対応して該左右側枠(3,3)を連結でき、該回動杆の上端部の上下位置、即ち座の上下位置は変化しない。
【0006】
具体的には該回動杆(11A,11A,12A,12A)下端部は、軸(26)を介して該側枠(3,3)下部に取り付けられており、該軸(26)は該側枠(3,3)下部に設けられた上下に配列している複数個の軸穴(13A,13B,13C)のうちの一つに支持されるのであるが、該回動杆(11A,11A,12A,12A)下端部を複数個の該軸穴(13A,13B,13C)のうちの一つを選び該軸穴に合わせて該軸(26)を挿通することによって枢着して座の高さを変えることなく該側枠(3,3)間の巾すなわち車椅子(1)の巾を段階的に調節できる。
【0007】
該回動杆(11A,11A,12A,12A)の少なくとも一対の中央より上側部分と左右側枠(3,3)との間にはリンクアーム(30,30)が差し渡され、該リンクアーム(30,30)は側枠(3,3)側で取付け位置が上下調節可能にされていると、側枠(3,3)間の巾調節に応じてリンクアーム(30)の取付け位置も調節出来、X枠(11,12)を補強できる。
【0008】
該リンクアーム(30,30)は側枠側で軸(32,32)を介して取り付けられており、該軸(32)を該側枠側に設けられ上下に配列している複数個の軸穴(14A,14B,14C)のうち一つを選んで該軸穴に回動可能に支持させるとリンクアーム(30,30)の取付け位置を段階的に調節出来る。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明を図1?図8に示す一実施例によって説明すれば、図1?3に示す車椅子(1)の本体(2)は左右一対の側枠(3,3)からなり該側枠(3,3)は座梁部(4)、前後脚柱部(5,6)、アームレスト部(7)、背柱部(8)、フットレスト支持梁(9)および下梁(10)からなり、該側枠(3,3)は前後一対のX枠(11,12)によって結合されている。
【0010】
該本体(2)の側方において後脚柱部(6,6)には一対の主車輪(15,15)が取り付けられ、前脚柱部(5,5)には補助車輪(47)が取り付けられている。また座梁部(4,4)間においてX枠(11,12)の上端の一対の上側杆(17,17)には座布(19)が差し渡されて、該側枠(3,3)の背柱部(8,8)間には背布(21,21)が差し渡され、フットレスト支持梁(9)には左右一対のフットレスト(46)が横方向に跳ね上げ可能に取り付けられている。
さらにアームレスト部(7)上面にはアームレストパッド(23)が取り付けられ、背柱部(8)上端は屈曲されて把手(45)が取り付けられている。
【0011】
該座布(19,19)および該背布(21,21)は図3および図4に示すようにそれぞれ2枚の布が中央部で分割可能に面ファスナー(20,22)により張り合わされてなる。布はポリアミドやポリエステル等の丈夫な合成繊維製であることが好ましい。
【0012】
左右の側枠(3,3)を連結している前後一対のX枠(11,12)は図5に示すようにそれぞれ一対の回動杆(11A,11A)および一対の回動杆(12A,12A)からなり、該一対の回動杆(11A,11A,12A,12A)はそれぞれ中心Cを支点に相互回動可能に結合しており、該一対のX枠(11,12)の上端において一対の円筒状の上側杆(17,17)が、下端においては一対の円筒状の下側杆(18,18)が差し渡され溶接されている。
【0013】
また図6に示すように該側枠(3)下部の下梁(10)には前後一対の角柱状の下側杆取付け部(13,13)が溶接され、該下側杆取付部(13,13)には軸穴(13A,13B,13C)が複数個(3個)上下に配列して設けられている。さらに該下側杆取付部(13,13)の一方には抜止め軸孔(13D)が上面から下面にかけて貫通して設けられている。また該側枠(3)の座梁部(4)には前後一対の杆受け(16,16)が取り付けられている。
【0014】
さらに後脚柱部(6)には図7に示すように角柱状のリンクアーム取付部(14)が溶接され、該リンクアーム取付部(14)には軸穴であるネジ穴(14A,14B,14C)が回動杆(12A,12A)の回動に対応して適切な位置に複数個(3個)上下左右に配列して設けられている。
【0015】
該X枠(11,12)により該側枠(3,3)を連結するには、該X枠(11,12)の円筒状の下側杆(18)を下側杆取付部(13,13)のいずれかの軸穴(13A,13B,13C)例えば軸穴(13A)に合わせ、軸である枢軸(26)を該軸穴(13A,13A)および円筒状の下側杆(18)の内部に挿通して支持する。この時該X枠(11,12)の上側杆(17)は座梁部(4)の杆受け(16,16)に支持される。
【0016】
このようにしてX枠(11,12)を左右の側枠(3,3)に取り付けたら図6に示すように抜止め軸(27)を下側杆取付部(13)の抜止め軸孔(13D)および該枢軸(26)に設けられている抜止め軸孔(26A)に挿通する。該枢軸(26)は一端が屈曲されて把持部を形成するとともに、該枢軸(26)の過入を規制し該抜止め軸孔(26A)の位置合わせを容易にする。
【0017】
このようにして左右の側枠(3,3)をX枠(11,12)により固定したら、さらに図7に示すリンクアーム(30,30)を回動杆(12A,12A)の中央より上部と後脚柱部(6,6)のリンクアーム取付部(14,14)とに差し渡し、軸であるネジ(31,32)により適合する位置のネジ穴(14A)に固定する。該リンクアーム(30,30)により左右側枠(3,3)とX枠(11,12)は強固に連結される。
【0018】
本実施例の車椅子(1)の巾を調節するには、背布(19)および座布(21)の面ファスナー(20,22)を剥がし、抜止め軸(27)を抜止め軸孔(13D)より引き抜く。さらに枢軸(26)を下側杆(18)および軸穴(13A)より引き抜く。そしてリンクアーム(30)をリンクアーム取付部(14)に固定しているネジ(32)を外して、リンクアーム(30)と側枠(3,3)の連結を解放する。この状態で図8に示すように該X枠(11,12)の回動杆(11A,11A,12A,12A)を中心Cを支点に回動させてX枠(11,12)の巾を調節しつつ、これに合わせて側枠(3,3)を移動させて車椅子(1)の巾を調節する。
【0019】
このときX枠(11,12)の巾を狭めると、X枠(11,12)の縦巾は大きくなり、X枠(11,12)の巾を広げると、X枠(11,12)の縦巾は小さくなる。そしてX枠(11,12)の下側杆(18,18)を軸穴(13A,13B,13C)のうちの適切な軸穴を選んで位置を合わせ、該枢軸(26)を該軸穴(13A,13B,13C)および該円筒状の下側杆(18,18)の内部に挿通して該X枠(11,12)を支持させる。
【0020】
このようにして巾を調節しX枠(11,12)を側枠(3,3)に固定したら該抜止め軸(27)を下側杆取付部(13)の抜止め軸孔(13D,26A)に挿通する。
さらにリンクアーム(30,30)を回動杆(12A,12A)の中央より上部と後脚柱部(6,6)のリンクアーム取付部(14,14)とに差し渡し、回動杆(12A,12A)に設けられたネジ穴(12B)およびリンクアーム取付部(14,14)のネジ穴(14A,14B,14C)のうち適合するネジ穴を選んでネジ(31,32)にて固定する。
このようにして側枠(3,3)間の巾を調節したら、座布(19)および背布(21)の面ファスナー(20,22)を貼り直して座部および背もたれを整える。
【0021】
本実施例では軸穴およびネジ孔は3個であり、巾は3段階に調節できるが、該軸穴およびネジ孔は2個あるいは4個以上であってもよい。
またX枠は1個または3個以上であってもよい。
また軸(26,31,32)は必ずしも枢軸やネジである必要はないが、枢軸やネジであると下側杆やリンクアームが回動可能で図9に示すように車椅子を折り畳むことが出来る。
【0022】
【発明の効果】
本発明では、座の高さを変えることなく車椅子の巾を調節できるので、使用者が最も操作しやすい巾に調節できる。あるいはメーカーにとっては巾の異なる多種類の製品を製造しなくて済む。
【図面の簡単な説明】
図1?図9は本発明の実施例を示すものである。
【図1】
車椅子側面図
【図2】
車椅子正面図
【図3】
車椅子平面図
【図4】
座布説明斜視図
【図5】
X枠斜視図
【図6】
X枠の側枠への取付け状態説明斜視図
【図7】
リンクアーム取付け状態説明斜視図
【図8】
巾調節機構説明正面図
【図9】
折り畳み状態車椅子正面図
【図10】
従来例の車椅子説明正面図
【符号の説明】
1 車椅子
3 側枠
11,12 X枠
11A,11A,12A,12A 回動杆
13A,13B,13C,14A,14B,14C 軸穴
26,32 枢軸(軸)
30 リンクアーム
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2010-07-07 
結審通知日 2010-07-12 
審決日 2010-07-23 
出願番号 特願2001-325007(P2001-325007)
審決分類 P 1 123・ 537- YA (A61G)
P 1 123・ 536- YA (A61G)
P 1 123・ 55- YA (A61G)
P 1 123・ 121- YA (A61G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 洋昭  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 岩田 洋一
高木 彰
登録日 2007-08-03 
登録番号 特許第3993996号(P3993996)
発明の名称 車椅子  
代理人 宇佐見 忠男  
代理人 岡 憲吾  
代理人 乾 てい子  
代理人 乾 てい子  
代理人 黒田 愛  
代理人 久保井 聡明  
代理人 住友 教郎  
代理人 岩田 康利  
代理人 室橋 克義  
代理人 宇佐見 忠男  
代理人 岩田 康利  

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