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審決分類 審判 一部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  A01K
審判 一部無効 2項進歩性  A01K
管理番号 1241638
審判番号 無効2010-800189  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-10-18 
確定日 2011-07-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4064423号発明「集魚灯装置、及びその使用方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第4064423号の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする。 特許第4064423号の請求項4に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その4分の1を請求人の負担とし、4分の3を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4064423号は、平成16年8月26日(優先権主張 平成15年9月18日)を国際出願日とする出願であって、平成20年1月11日にその発明についての特許権の設定登録がなされたものである。

以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。

平成22年10月18日 本件無効審判請求
平成23年 1月 7日 答弁書提出(被請求人)
平成23年 1月 7日 訂正請求(被請求人)
平成23年 3月 4日 弁駁書提出(請求人)
平成23年 5月25日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成23年 5月26日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成23年 6月 9日 口頭審理陳述要領書(2)提出(被請求人)
平成23年 6月 9日 口頭審理

第2 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は、審判請求書において、「特許第4064423号の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求めており、平成23年3月4日付けの弁駁書、同年5月25日付けの口頭審理陳述要領書も併せると、請求人の主張は、概略次のとおりである。

(1)請求項1?3に係る発明は、下記証拠方法に示す甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する分野において通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであり、また、請求項4に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する分野において通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、いずれも、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

そして、請求人は、上記(1)の具体的理由として下記(2)ないし(7)を主張している。

(2)甲第2号証に記載の色相角調整器及びルックアップテーブルを用いて各LEDの発光量を一元的に制御し光源の全体としての色を無段階調に変化させる技術を、甲第1号証に記載の水中灯の光色光力制御装置に適用することは、当業者が容易になし得る。

(3)本件特許は、各発光ダイオードの発光量を一元的に制御して光源全体から発せられる光の見かけの発光波長を連続的に変化させる手法についての具体的な技術開示を欠くので、具体的な技術内容のレベルで本件特許の請求項1?4に係る発明と甲第2号証に記載された発明との異同を論ずる余地はなく、「発光量を一元的に制御」することで光源全体から発せられる光の色を「連続的に変化させる」、との技術事項での比較をするほかはない。そうすると、甲第2号証に記載された発明は、色相角調整器でLED群の色相角を設定すると共にルックアップテーブルから関連する彩度と明度を読み出して各LEDに投入する電気量を決定することで各々の発光量を一元的に制御し、色相角調整器の操作を行うことで発光色を無段階調に変化させる、という技術を開示するものであるから、甲第2号証のものも、「発光量を一元的に制御」することで光源全体から発せられる光の色を「連続的に変化させる」、という本件特許の請求項1?4に係る発明と同様の技術を開示するものということができる。

(4)訂正により本件発明2に付加された「光源制御部は、操業情報として漁獲対象生物が水の色の異なる領域に存在する場合、それぞれの領域の海水の色に一致するように集魚灯の発光波長を設定し得るように構成され、操業情報として漁獲対象生物が異なる深度領域に存在する場合、深度の浅い領域に漁獲対象生物が存在する場合には、集魚灯の発光波長を清澄水に対応する青色からやや緑色側に調節し、逆に、表層高濁度層より深い深度領域に漁獲対象生物が存在する場合には、発光波長を清澄水に対応する青色側に調節し得るように構成されている」との発明特定事項は、集魚灯装置の使用方法を規定する限定事項であって、該装置自体に何らの技術的限定を付すものでもない。したがって、訂正による当該限定事項の付加によって本件発明2の内容が変わるものではない。仮に、上記発明特定事項による限定を有意な技術的限定であるとみなせば、集魚灯の使用方法を規定したことになり、実質上特許請求の範囲を変更するものに該当する。

(5)甲第4号証の色相調整ダイヤルの周囲に記載された赤、紫との記載及びそれらの間の目盛は、操作者が設定しようとする色相を直感的に示すスケール部の機能を有しているものと解すべきである。そして、より直感的に設定可能とするために目盛に絵柄等を付して「図示」することは設計事項である。

(6)甲第5号証の白色発光ダイオードは、ワンタッチで白色光を照射するものであり、船上での作業用照明に用いて本件発明の請求項4に係る発明における白色光と同じ作用効果を奏するものである。また、赤、青、緑の三色の発光の合成により白色光を得ることは、例えば甲第1号証にも記載されているように、本件特許出願の優先日前に周知の技術である。さらに、スイッチのワンタッチ操作により機器を特定の状態に設定することも、本件特許出願の優先日前に周知の技術である。

(7)下記の技術1?3は、甲第6?11号証から明らかなように、いずれも周知技術である。
[技術1]目盛に数字や文字、絵柄を付す技術。
[技術2]赤、青、緑のLEDを組み込んで白色発光ダイオードを構成する技術。
[技術3]スイッチのワンタッチ操作により機器を特定の状態に設定する技術。

〈証拠方法〉
甲第1号証:特開昭61-39301号公報
甲第2号証:特開平10-208502号公報
甲第3号証:「世界大百科事典2」の『いろ(色)』の項、平凡社、19 71年
甲第4号証:米国特許第5019873号明細書
甲第4号証の2:米国特許第5019873号明細書の一部の翻訳文
甲第5号証:特開2003-134967号公報
甲第6号証:「ナショナル電磁調理器 品番KZ-1600T 取扱説明書」
甲第6号証の2:Nii(国立情報学研究所)によるデータベースのイン ターネット検索頁
甲第7号証:「ナショナル全自動電気洗濯機(家庭用) 取扱説明書 品 番NA-F42M1
甲第8号証:「三菱インバータオーブンレンジ 形名RO-LE1(家庭用)
取扱説明書/メニュー集」
甲第8号証の2:インターネット上の商品価格比較サイト「価格.com」に おけるRO-LEI のスペック・仕様表示
甲第9号証:特開平11-135838号公報
甲第10号証:「コンパクト コンポ ステレオ ロキシー ROXY M7 取扱説明書」
甲第11号証:「CELSIOR 取扱書」

なお、甲第1号証ないし甲第5号証は審判請求書とともに、甲第6号証ないし甲第11号証は平成23年5月25日付け口頭審理陳述要領書とともに、それぞれ提出されたものである。

2 被請求人の主張
被請求人は、特許請求の範囲の訂正を請求するとともに、答弁書において、「本件請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めており、平成23年5月26日付けの口頭審理陳述要領書及び同年6月9日付けの口頭審理陳述要領書(2)も併せると、被請求人の主張は、概略次のとおりである。

(1)請求項1ないし4の訂正はいずれも、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(2)訂正後の請求項1ないし請求項3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、また、訂正後の請求項4に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、いずれも、独立して特許を受けることができるものである。

そして、被請求人は、上記(2)に関して下記(3)ないし(8)を主張している。

(3)本件特許は光の波長で発光色を定義するものであり、色を色相で定義する甲第2号証と同等の技術ではない。また、甲第2号証では、色を定義するためにルックアップテーブルを用いることから、データの個数は有限であり、色を連続的に変化させることはできない。

(4)甲第2号証のLED投光器に係る発明は集魚を目的とするものとして開示されてはいないから、甲第1号証の水中灯に係る発明に適用することはできない。

(5)光源の色を海水の色に一致させて、海水自体の色や濁りによる光の吸収や散乱が少ないことにより透過し易くする、との技術思想は、甲第1、2、4、5号証のいずれにも開示されていない。

(6)甲第4号証の色相調整ダイヤルに付されたスケール部は、赤、紫との記載とそれらの間の目盛に留まり、設定しようとする色相を直感的に図示するスケール部とはいえない。また、直感的に図示するスケール部は、周知技術ではない。

(7)甲第5号証の白色発光ダイオードは、集魚灯に付設されて白色光を照射するに留まり、白色以外の色で発光している集魚灯の光を白色光に変換するものではない。また、発光色をワンタッチで白色に変換する白色光スイッチは、周知技術ではない。

(8)甲第1号証の公開特許公報に係る特許出願がなされた昭和59年(1984年)7月28日当時には青色LEDは発明されておらず、乙第10号証に示すように平成5年(1993年)3月12日に初めて公知となったものであるから、甲第1号証は青色LEDを開示するものとはいえず、甲第1号証は引用発明を構成し得ない。

被請求人は以下の証拠方法及び参考資料を提出している。

〈証拠方法〉
乙第1号証:特許第2755782号公報
乙第2号証:特許第4419940号公報
乙第3号証:特許第4550966号公報
乙第4号証:JIS Z8701、「色の表示方法-XYZ表色系及び
X_(10)Y_(10)Z_(10)表色系」
乙第5号証:JIS Z8721、「色の表示方法-三属性による表示」
乙第6号証:稲田博史、「いか釣り操業船下の水中分光放光照度について 」、東京水産大学誌、Vol.75、No.2、1998年 11月
乙第7号証:北海道経済産業局に対する補助事業実績報告書、技術開発結 果説明書、株式会社東和電機製作所、平成18年4月7日
乙第8号証:平成16・17年度新規産業創造技術開発費補助金 技術開 発概要説明書、株式会社東和電機製作所
乙第9号証:TBSテレビ、夢の扉、エピソード263、「サンマ漁に革 命!LEDで日本の漁業を救う」、2009年12月13日 放送の一部内容を示す画像写真
乙第10号証:特開平5-63236号公報

〈参考資料〉
検乙第1号証:TBSテレビ、夢の扉、エピソード263、「サンマ漁に 革命!LEDで日本の漁業を救う」、2009年12月1 3日放送の記録媒体(DVD)

なお、乙第1号証ないし乙第3号証は答弁書とともに、乙第4号証ないし乙第9号証及び検乙第1号証は平成23年5月26日付け口頭審理陳述要領書とともに、乙第10号証は同年6月9日付け口頭審理陳述要領書(2)とともに、それぞれ提出されたものである。

第3 訂正について
1 訂正の内容
平成23年1月7日になされた訂正請求(以下、「本件訂正」という)は、特許第4064423号の特許時の特許請求の範囲(以下、「本件特許請求の範囲」という)を、平成23年1月7日付け訂正請求書に添付した特許請求の範囲(以下、「訂正特許請求の範囲」という)のとおりに訂正しようとする次のとおりのものである。

[本件特許請求の範囲]
「【請求項1】
発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードを集合させた発光ダイオード集合体を形成し、この発光ダイオード集合体を複数用いた光源を有する集魚灯と、前記光源の発光波長を設定する発光波長ボリューム部を有し、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光波長ボリューム部で前記光源の発光波長を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源の全体としての調色を行うことで、前記発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードの発光の合成として前記光源全体から発せらせる見かけの発光波長を変化させる光源制御部とを備えてなる集魚灯装置。
【請求項2】
請求項1記載の集魚灯装置において、前記光源制御部は、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源全体としての調色を行うことで、前記発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードの発光の合成として前記光源全体から発せらせる見かけの発光波長を連続的に変化させることを特徴とする集魚灯装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の集魚灯装置において、前記光源制御部は、前記光源の発光強度を設定する発光強度ボリューム部を有し、海域の状況や漁獲対象種等の操業情報に応じて、前記発光強度ボリューム部で前記光源の発光強度を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源全体としての調光を行うことで、前記光源全体から発せられる発光強度を変化させる機能を更に有することを特徴とする集魚灯装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の集魚灯装置において、前記光源制御部が、前記光源の発光波長を設定する発光波長ボリューム部と、前記ボリューム部の設定位置対応する発光状態を直感的に図示する波長スケール部と、光源の発光色をワンタッチで白色に変換する白色光スイッチとを備えたことを特徴とする集魚灯装置。」

[訂正特許請求の範囲](アンダーラインは訂正請求書による)
「【請求項1】
発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードを集合させた発光ダイオード集合体を形成し、この発光ダイオード集合体を複数用いた光源を有する集魚灯と、前記光源の発光波長を設定する発光波長ボリューム部を有し、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光波長ボリューム部で前記光源の発光波長を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源の全体としての調色を行うことで、前記発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードの発光の合成として前記光源全体から発せられる見かけの発光波長を連続的に変化させる光源制御部とを備えてなる集魚灯装置。
【請求項2】
発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードを集合させた発光ダイオード集合体を形成し、この発光ダイオード集合体を複数用いた光源を有する集魚灯と、前記光源の発光波長を設定する発光波長ボリューム部を有し、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光波長ボリューム部で前記光源の発光波長を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源の全体としての調色を行うことで、前記発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードの発光の合成として前記光源全体から発せられる見かけの発光波長を連続的に変化させる光源制御部とを備えてなり、
光源制御部は、
操業情報として漁獲対象生物が水の色の異なる領域に存在する場合、それぞれの領域の海水の色に一致するように集魚灯の発光波長を設定し得るように構成され、
操業情報として漁獲対象生物が異なる深度領域に存在する場合、深度の浅い領域に漁獲対象生物が存在する場合には、集魚灯の発光波長を清澄水に対応する青色からやや緑色側に調節し、逆に、表層高濁度層より深い深度領域に漁獲対象生物が存在する場合には、発光波長を清澄水に対応する青色側に調節し得るように構成されていることを特徴とする集魚灯装置。
【請求項3】
発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードを集合させた発光ダイオード集合体を形成し、この発光ダイオード集合体を複数用いた光源を有する集魚灯と、前記光源の発光波長を設定する発光波長ボリューム部を有し、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光波長ボリューム部で前記光源の発光波長を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源の全体としての調色を行うことで、前記発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードの発光の合成として前記光源全体から発せられる見かけの発光波長を連続的に変化させる光源制御部とを備えてなり、
前記光源制御部は、前記光源の発光強度を設定する発光強度ボリューム部を有し、海域の状況や漁獲対象種等の操業情報に応じて、前記発光強度ボリューム部で前記光源の発光強度を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源全体としての調光を行うことで、前記光源全体から発せられる発光強度を変化させる機能を更に有することを特徴とする集魚灯装置。
【請求項4】
発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードを集合させた発光ダイオード集合体を形成し、この発光ダイオード集合体を複数用いた光源を有する集魚灯と、前記光源の発光波長を設定する発光波長ボリューム部を有し、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光波長ボリューム部で前記光源の発光波長を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源の全体としての調色を行うことで、前記発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードの発光の合成として前記光源全体から発せられる見かけの発光波長を連続的に変化させる光源制御部とを備えてなり、
前記光源制御部が、前記光源の発光波長を設定する前記発光波長ボリューム部と、前記ボリューム部の設定位置に対応する発光状態を直感的に図示する波長スケール部と、光源の発光色をワンタッチで白色に変換する白色光スイッチとを備えたことを特徴とする集魚灯装置。」

以下、本件特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に係る発明を「本件発明1」ないし「本件発明4」といい、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に係る発明を「訂正発明1」ないし「訂正発明4」という。また、特許時の明細書及び図面を「本件明細書等」という。

2 訂正の適否についての検討
(1)目的要件
請求項1についての訂正は、「連続的に」との発明特定事項を追加するとともに、「発せらせる」との記載を「発せられる」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものに該当する。
請求項2についての訂正は、訂正前に請求項1を引用して記載していたのを独立形式に書き換えた上で、「光源制御部は、操業情報として漁獲対象生物が水の色の異なる領域に存在する場合、それぞれの領域の海水の色に一致するように集魚灯の発光波長を設定し得るように構成され、操業情報として漁獲対象生物が異なる深度領域に存在する場合、深度の浅い領域に漁獲対象生物が存在する場合には、集魚灯の発光波長を清澄水に対応する青色からやや緑色側に調節し、逆に、表層高濁度層より深い深度領域に漁獲対象生物が存在する場合には、発光波長を清澄水に対応する青色側に調節し得るように構成されている」との発明特定事項を追加するとともに、「発せらせる」との記載を「発せられる」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものに該当する。
請求項3についての訂正は、訂正前に請求項1または2を引用して記載していたところ、請求項1の引用について独立形式に書き換えた上で、請求項1の訂正と同様に、「連続的に」との発明特定事項を追加するとともに「発せらせる」との記載を「発せられる」と訂正するものということができるから、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものに該当する。
請求項4についての訂正は、訂正前に請求項1乃至3を引用して記載していたところ、請求項1の引用について独立形式に書き換えた上で、請求項1の訂正と同様に、「連続的に」との発明特定事項を追加し「発せらせる」との記載を「発せられる」と訂正するとともに、さらに「設定位置対応する」との記載を「設定位置に対応する」と訂正するものということができるから、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものに該当する。
したがって、本件訂正は、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものである。

(2)新規事項の有無
本件明細書等には、以下の事項が記載されている。
(イ)「【0016】
上記構成によれば、スケール部の表示を確認しつつボリュームを設定することで、速やかに所望の発光状態が得られる。また、発光状態を連続的に微調整できる。」
(ロ)「【0029】
以下、上記集魚灯2の発光状態を、様々な操業情報に応じて制御する方法について具体的に述べる。
まず、操業情報として漁場海域の水色を利用する場合について説明する。図1は、イカが水の色の異なる領域a1と、領域a2に存在する場合について示している。それぞれの領域a1、a2の海水の色に一致するように集魚灯2の発光波長を設定することで、海水中の光の透過率を高め、集魚効果を向上させることができる。」
(ハ)「【0034】
また、図2では、イカが異なる深度領域d1、d2に存在する場合について併せて示している。海の深度により、プランクトン、浮遊物質、溶存・懸濁物質等の密度が異なる。深度の浅い領域d1にイカが存在する場合には、プランクトンや懸濁物質の密度が高いため、光の透過率が低く、透過極大が長波長側に移動することが一般的である。したがって、集魚灯2の発光波長を清澄水に対応する青色からやや緑色側に調節し、発光強度を大きくする。逆に、表層高濁度層より深い深度領域d2にイカが存在する場合には、発光波長を清澄水に対応する青色側に調節し、比較的小さい発光強度に設定すればよい。」
(ニ)「【0042】
操作部10には、光源20の発光状態を変化させるボリューム部12と、そのボリューム部12の設定位置に対応するスケール部11とが設けられている。
具体的には、図4に示すように、操作部10は、例えば箱型に形成された操作パネルから構成され、光源10の発光波長を変化させる発光波長ボリューム12aと、発光強度を変化させる発光強度ボリューム部12bとを有し、それぞれのボリューム部はつまみ120をスライドさせることで発光波長及び強度を連続的に変化させ得るように構成されている。」

請求項1、3、4についての訂正における「連続的に」との発明特定事項は、上記記載事項(イ)および(ニ)から明らかなように、本件明細書等に記載されていたものであり、請求項2についての訂正における「光源制御部は、操業情報として漁獲対象生物が水の色の異なる領域に存在する場合、それぞれの領域の海水の色に一致するように集魚灯の発光波長を設定し得るように構成され、操業情報として漁獲対象生物が異なる深度領域に存在する場合、深度の浅い領域に漁獲対象生物が存在する場合には、集魚灯の発光波長を清澄水に対応する青色からやや緑色側に調節し、逆に、表層高濁度層より深い深度領域に漁獲対象生物が存在する場合には、発光波長を清澄水に対応する青色側に調節し得るように構成されている」との発明特定事項は、上記記載事項(ロ)および(ハ)から明らかなように、本件明細書等に記載されていたものといえる。また、請求項1、2、4についての誤記の訂正を目的とする訂正が本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
したがって、本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
本件発明1、3、4は、「光源制御部」との要件を備えた集魚灯装置に係る発明であって、訂正発明1、3、4の「連続的に」との発明特定事項は、本件発明1、3、4における光源制御部の構成を具体化したものといえる。
また、本件発明2は、「海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報」との発明特定事項を備えた集魚灯装置に係る発明であって、訂正発明2の「光源制御部は、操業情報として漁獲対象生物が水の色の異なる領域に存在する場合、それぞれの領域の海水の色に一致するように集魚灯の発光波長を設定し得るように構成され、操業情報として漁獲対象生物が異なる深度領域に存在する場合、深度の浅い領域に漁獲対象生物が存在する場合には、集魚灯の発光波長を清澄水に対応する青色からやや緑色側に調節し、逆に、表層高濁度層より深い深度領域に漁獲対象生物が存在する場合には、発光波長を清澄水に対応する青色側に調節し得るように構成されている」との発明特定事項は、本件発明2における操業情報の構成を具体化したものといえる。そして、任意の色の光を発する設定を行い得るよう本来的に構成されている光源制御部の発光波長ボリューム部が、発せられる光の色を海水の色に一致させる設定を行い得るようにも構成されている旨限定したものであり、単に、設定可能な任意の色のうちのある一色に設定し得るよう構成されたとの限定を行ったもの、と理解することができる。
したがって、本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3 訂正の許否の結論
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号及び第2号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第5項で準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。
したがって、本件訂正を認めることとする。

第4 本件特許に係る発明
訂正発明1ないし訂正発明4は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードを集合させた発光ダイオード集合体を形成し、この発光ダイオード集合体を複数用いた光源を有する集魚灯と、前記光源の発光波長を設定する発光波長ボリューム部を有し、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光波長ボリューム部で前記光源の発光波長を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源の全体としての調色を行うことで、前記発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードの発光の合成として前記光源全体から発せられる見かけの発光波長を連続的に変化させる光源制御部とを備えてなる集魚灯装置。
【請求項2】
発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードを集合させた発光ダイオード集合体を形成し、この発光ダイオード集合体を複数用いた光源を有する集魚灯と、前記光源の発光波長を設定する発光波長ボリューム部を有し、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光波長ボリューム部で前記光源の発光波長を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源の全体としての調色を行うことで、前記発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードの発光の合成として前記光源全体から発せられる見かけの発光波長を連続的に変化させる光源制御部とを備えてなり、
光源制御部は、
操業情報として漁獲対象生物が水の色の異なる領域に存在する場合、それぞれの領域の海水の色に一致するように集魚灯の発光波長を設定し得るように構成され、
操業情報として漁獲対象生物が異なる深度領域に存在する場合、深度の浅い領域に漁獲対象生物が存在する場合には、集魚灯の発光波長を清澄水に対応する青色からやや緑色側に調節し、逆に、表層高濁度層より深い深度領域に漁獲対象生物が存在する場合には、発光波長を清澄水に対応する青色側に調節し得るように構成されていることを特徴とする集魚灯装置。
【請求項3】
発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードを集合させた発光ダイオード集合体を形成し、この発光ダイオード集合体を複数用いた光源を有する集魚灯と、前記光源の発光波長を設定する発光波長ボリューム部を有し、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光波長ボリューム部で前記光源の発光波長を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源の全体としての調色を行うことで、前記発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードの発光の合成として前記光源全体から発せられる見かけの発光波長を連続的に変化させる光源制御部とを備えてなり、
前記光源制御部は、前記光源の発光強度を設定する発光強度ボリューム部を有し、海域の状況や漁獲対象種等の操業情報に応じて、前記発光強度ボリューム部で前記光源の発光強度を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源全体としての調光を行うことで、前記光源全体から発せられる発光強度を変化させる機能を更に有することを特徴とする集魚灯装置。
【請求項4】
発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードを集合させた発光ダイオード集合体を形成し、この発光ダイオード集合体を複数用いた光源を有する集魚灯と、前記光源の発光波長を設定する発光波長ボリューム部を有し、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光波長ボリューム部で前記光源の発光波長を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源の全体としての調色を行うことで、前記発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードの発光の合成として前記光源全体から発せられる見かけの発光波長を連続的に変化させる光源制御部とを備えてなり、
前記光源制御部が、前記光源の発光波長を設定する前記発光波長ボリューム部と、前記ボリューム部の設定位置に対応する発光状態を直感的に図示する波長スケール部と、光源の発光色をワンタッチで白色に変換する白色光スイッチとを備えたことを特徴とする集魚灯装置。」

第5 進歩性(特許法第29条第2項)
1 刊行物及び刊行物に記載された発明
(1)甲第1号証
請求人が甲第1号証として提出した、本願の優先日よりも前に頒布された刊行物である、特開昭61-39301号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1-a)「本発明は此の点に着目し従来の火光漁業の光源が一種類の光色によつて単に光力を増減することにより魚類の集合、滞留を図つていたのとは異なり光色、光力を魚類の有する嗜好性と対光刺激への慣れを考慮して可変光色プログラムにより制御せる水中灯により魚類をより多く集合させ、より長時間滞留せしめんとするものである。
作用
本発明は魚類の有する光色、光力、に対する嗜好性と対光刺激への慣れを考慮して予じめ設定された順序により電球に通電する電流を調整し所期の目的を達せんとするものである。
即ち操業開始時には先ず魚類の集合を図るため、赤、青、緑の各電球に通電し、それにより合成される白色光の光力を大として魚類を集合せしめ、次に例えばイカ釣漁業の場合には光源を漁業者の間で広く知られておるイカの好む光色即ち、青緑色に調整するために三原色の電球の内の赤色灯の光力を弱めイカの群の滞留時間を長くすることが可能でありやがてイカが此の青緑色に慣れて離散し始めた時には再び赤色光を強めて白色光を合成しイカ群の集合をうながすと言つた過程を繰り返すことにより、結果的に漁獲効率を高めることとなるものである。」(2頁右上欄1行?左下欄5行)
(1-b)「実施例
図面は本発明に係わる水中灯の構成を示す全体図である。1は電球であつて青色、赤色、及び緑色を発する直流用電球であつて各々1個計3ヶが耐圧性を有しかつ防水構造の透明若しくは半透明の硝子製容器2に封入されている。此の場合容器は硝子製に限定することなく場合によつては合成樹脂製のものであつても良い。
3は送電ケーブルであつて1の電球と船上に設置される電球の光色、光力、を制御する制御装置4に接続されておる。5は笠であつて容器2を保護すると共に2から発せられる光を効果的に拡散させる目的を有しておるものである。
本発明は以上の如く構成されておるが1の電球は直流用交流用を問わず更に螢光管、LED、ネオン等の如く赤、青、緑の三原色を発光するものであればその発光方式は問わない。又4の光色光力制御装置は電球の発光方式に対応した調光回路を有するものであつて、予じめ各色の光度を設定する記憶装置を有し漁獲状況によつて水中灯の総光力、色調を自動的に変化せしめる機能を保持せしめることも可能である。」(2頁左下欄6行?右下欄8行)
(1-c)「効果
本発明は以上の構成によつて三原色の各光力を任意に調整出来るものでありこれらの三色光が透明又は半透明の耐圧性及び耐水性を有する容器2内で反射混合して該容器は三原色の各色の光力の割合で決定される色光を発するものである。・・・
本発明による水中灯はこのように任意の色光と光力を発光出来るものであるから漁獲対象魚種の最も好む色光と光力を得ることが可能で且つその光力も光色光力制御装置によつて変化させることが可能である」(2頁右下欄9?3頁左上欄4行)

以上のことを総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「青色、赤色、及び緑色を発するLEDであって各々1個計3ヶの一組を封入して光源とした容器と、予め設定された順序により各LEDに通電する電流を調整し、光源全体から発せられる光の色を変化させることによって、漁獲状況に応じて該LED集合体の色調を変化せしめる光色光力制御装置を備えた水中灯。」

(2)甲第2号証
請求人が甲第2号証として提出した、本願の優先日よりも前に頒布された刊行物である、特開平10-208502号公報には、フルカラーLED投光器に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
(2-a)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、赤色、緑色、青色のLED(発光ダイオード)を用いてフルカラー投光器を得る場合、次のような課題があることが判った。すなわち、 単色発光や白色発光のLED投光器にあっては、被照射物に対して照度ムラや色ムラ等はあまり考慮する必要がないが、フルカラー発光させる場合、該照度ムラや色ムラを少なくする必要があり、そのコントロールが難しい。
すなわち、色相角調整は、赤緑青の3つの設定を夫々個々に調整、変化させて得たい色相角度、すなわち希望する色を、求めることは困難である。
色を変化させる時、赤緑青の色相角度を夫々独立に設定しないと、希望する色は得られない。
等の課題がある。」
(2-b)「【0020】すなわち、このルックアップテーブルは、LED群6を構成するそれぞれのLED群6から投光される色に対応するLED6a,6b,6cの彩度、明度、色相角度と電流値等の電気量との関係をテーブル化したものである。従って、希望する色(フルカラー)や明るさを投光する場合、そのLED群6a,6b,6cの彩度S(Saturation)、色相角度H(Hue Angle)、明度L(Lightness)に対応する電気量により照明コントローラ10を制御することができる。このルックアップテーブルは、使用するLED群6によって異なる。すなわち、赤・青・緑のLED群6の配置位置や組み合わせによって異なるため、使用するLED群6に対応するルックアップテーブルを作成しておくことが肝要である。図6に示しているルックアップテーブルでは、例えば、色が紫の場合、色相角度Hが226、彩度Sが0.49、明度Lが0.49で、これに対応する変換値(mA)が、赤色R:0.25、緑色G:0.36、青色B:0.73である。
【0021】照明ドライバ11は、プリセットコントローラ10で算出された指令値を、電流、電圧等の電気量に変換して、赤色LED群6a、緑色LED群6b、青色LED群6cに夫々出力することによって投光部1を制御するためのドライバである。また色相角調整器12、光量調整器13は、赤色LED群6a、緑色LED群6b、青色LED群6cの色相角、あるいは光量をプリセットコントローラ10を介して調整するための調整器である。また自動・手動切替えセレクタ14は、この色相角や光量の調整を自動調整あるいは手動調整するかを選択するためののセレクタである。セレクタ14で自動調整を選択した場合は、この調整器12、13を介して各種プログラムによる制御を設定するようにしている。ここで、自動時の各種プログラムとしては、ランダム発光や、交通誘導の場合の青、黄、赤が順番に発光するシーケンシャル発光、すなわち、赤からある時間間隔で、黄、青、そして赤へと戻り、同じ動作をサイクリックに行う、シーケンシャル動作などが挙げられる。」
(2-c)「【0022】ところで、光量を一定にすれば、光量調整器(ボリューム)13は、固定または、半固定とすることもできる構成としている。この場合は、色相角調整器12の調整で所望の色を発光させることができる。なお、手動調整時おいては、色相角調整器12により、色相角を赤(0度)から、黄、緑、青、紫、赤紫となり360度でふたたび赤になるように調整することで、無段階調によるフルカラー発光ができ、また白色発光もできる。乱数発生器15は、セレクタ14の自動時のプログラム中の1つで、ランダムで色を変化させたい時や、点燈、点滅する時に使用する。
【0023】そして、本実施形態のフルカラーLED投光器は、予め、投光部1に用いられているLED群6に対応するルックアップテーブルを作製しておき、このルックアップテーブルを照明コントローラ2に記憶させ、次に、被照射物に応じて、投光部1を投光部フレーム4に対して所定角度に設定し、またLED保持基板5の右部基板5aと左部基板5cを、中央部基板5bに対して所定角度に折り曲げて、被照射物に対して良好な投光ができるように設定しておく。そして、照明コントローラ2の色相角調整器12、光量調整器13、自動・手動切替えセレクタ14を操作すると、これらから入力されたそれぞれの信号、およびセレクタ設定値が、プリセットコントローラ10に入力されて、それぞれ演算され、ルックアップテーブルに対応したLED発光用信号が算出される。このLED発光用信号は照明ドライバ11に供給され、それぞれの電気量が投光部1に入力され、LED群6が制御、発光する。これにより、光の三原色である赤、緑、青のLEDを用いたフルカラー投光部を、色相角調整器によって指定された色の制御発光を簡単に得ることができ、任意のカラーを被照射物に投光・照射することができる。」
(2-d)図3によれば、赤色、緑色、青色のLEDを集合させたLED集合体を複数用いた光源が看取できる。

(3)甲第4号証
請求人が甲第4号証として提出した、本願の優先日よりも前に頒布された刊行物である、米国特許第5019873号明細書には、COLOR TONE ADJUSTABLE IMAGE RECORDING APPARATUSに関し、図面とともに次の事項が記載されている。
(3-a)「The density of the reproduced color image is determined depending on the amounts of three primary colors including yellow(Y), magenta(M), and cyan(C),・・・In the conventional color image recording apparatuses, density adjusting dials are provided which can individually adjust the amounts or densities of the three colors. With such dials, the user adjusts the respective densities of the colors prior to making color copies. However, it is difficult to obtain color copies of intended density and tone in the case where the respective densities of the primary colors are separately adjusted.・・・The present invention has been made in view of the foregoing, and it is an object of the invention, to provide a color image recording apparatus in which the density and hue of the image to be reproduced can be readily adjusted.」(第1欄22?61行;再生される色画像の濃度は、黄色(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)からなる三つの主色の量に応じて決定される。・・・従来のカラー画像記録装置においては、三色の量ないし濃度を個別に調整し得る濃度調整ダイヤルが設けられていた。このようなダイヤルでは、ユーザはカラーコピーをする前に夫々の色の濃度を調整する。しかしながら、主色の夫々の濃度を別々に調整する場合、意図する濃度及び色調のカラーコピーを得ることが困難であった。・・・本発明は、前記した点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、再生されるべき画像の濃度及び色相が容易に調整され得るカラー画像記録装置を提供することにある。)
(3-b)「In the above-described color copying machine 10, in order to adjust the density and hue of the color image to be copied on the developer sheet 62, there is provided in the upper frame 16a a density adjusting dial 80 and a hue adjusting dial 82 such as shown in FIG. 2. These dials are calibrated to indicate adjustable ranges of the density and the hue, and are connected to the control unit 34 to output the selected density and hue. Once a user selects desired density and hue, the color copying machine of the present invention can automatically perform color copying in conformity with the selected density and hue.・・・When the user selects desired density and hue by turning knobs of the corresponding dials, relevant exposure amount for each of red, green and blue to be applied to the microcapsule sheet 28 is computed by the arithmetic circuit 90 based on the information stored in the table memory 88. Based on the results of computation, the exposure amount control circuit 86 controls the shutter driver 30 and the stepper motor 32 so that the microcapsule sheet 28 is exposed to each of the lights for a period of time corresponding to the exposure, amount determined with respect to each of three colors.」(第5欄8?46行;上述のカラー複写装置10においては、図2に示したように、現像シート62上に複写されるべきカラー画像の濃度及び色相を調整するために、上側フレーム16aに、濃度調整ダイヤル80と、色相調整ダイヤル82とが設けられている。これらのダイヤルは、濃度及び色相の調整可能な範囲を示すように、較正されており、選択された濃度及び色相を出力すべく制御ユニット34に接続されている。ユーザが一旦所望の濃度及び色相を選択すると、本発明のカラー複写装置は、選択された濃度及び色相に従って自動的にカラー複写を行う。・・・ユーザが対応するダイヤルのノブを回して所望の濃度及び色相を選択すると、マイクロカプセルシート28の赤色、緑色及び青色の各色に対する露光量が表メモリ88に格納された情報に基づいて演算回路90によって計算される。計算結果に基づいて、露光量制御回路86が、シャッタ駆動装置30及びステップモータ32を制御し、三色の各々について決定された露光量に対応する時間の間、マイクロカプセルシート32を、夫々の光にさらす。)
(3-c)FIG2によれば、色相調整ダイヤル82の周囲に、「紫」及び「赤」のダイヤル位置を示す記載、及びそれらの間に付された目盛が看取できる。

(4)甲第5号証
請求人が甲第5号証として提出した、本願の優先日よりも前に頒布された刊行物である、特開2003-134967号公報には、集魚灯に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
(4-a)「【0013】図1?図2に示すように、本発明の集魚灯Aを構成する面状光源ユニット1は、左右2枚の海面照射用(集魚用)のLED面状光源10と作業用面状光源20を備え、これらが適宜のフレームに取り付けられ、さらに外周を防水ケース30で覆われ、フレームの上部には取付用金具35が取付けられている。左右のLED面状光源10は、いずれも基板11上に青色系発光ダイオード12を多数個マトリックス状に配置したもので、集魚用に用いるものである。なお、その詳細は後述する。作業用面状光源20は、左右のLED面状光源10、10の間に設けられたもので、基板21上に甲板を照らすための白色発光ダイオード22を多数個マトリックス状に配置したものである。」

2 対比・判断
(1)訂正発明1について
訂正発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「LED」、「容器」、「光色光力制御装置」及び「水中灯」は、それぞれ訂正発明1の「発光ダイオード」、「集魚灯」、「光源制御部」及び「集魚灯装置」に相当する。
甲1発明の「漁獲状況」は、操業情報のひとつと解することができるから、訂正発明1の「海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報」に相当する。
また、訂正発明1は、見かけの発光波長を変化させることによって光源の調色を行うものであるから、甲1発明の「色調を」「変化せしめる」ことは、訂正発明1の「見かけの発光波長を」「変化させる」ことに相当する。
したがって、訂正発明1と甲1発明は、訂正発明1の表記にしたがえば、
「発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードを集合させた発光ダイオード集合体を形成し、この発光ダイオード集合体を用いた光源を有する集魚灯と、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光ダイオードの各々の発光量を制御し、前記光源の全体としての調色を行うことで、前記発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードの発光の合成として前記光源全体から発せられる光の色を変化させる光源制御部とを備えてなる集魚灯装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
訂正発明1では、発光ダイオードの集合体が複数あるのに対して、甲1発明では、LEDの集合体が一組である点。

[相違点2]
訂正発明1は、光源の発光波長を設定する発光波長ボリューム部を有し、該発光波長ボリューム部で光源の発光波長を設定すると発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御して、光源全体から発せられる見かけの発光波長を連続的に変化させるよう構成されているのに対し、甲1発明は、予め設定された順序により各LEDに通電する電流を調整し、容器から発せられる光の色を変化させるものであって、訂正発明1の「発光波長ボリューム部」に相当する構成を持たず、光源からの光の色を変化させる制御が一元的に行われるものではない点。

まず、上記相違点1について検討する。
甲第2号証には、光源として赤色、緑色、青色の発光ダイオードの集合体を複数備えたものを用いるフルカラーLED投光器が記載されている(記載事項(2-d)参照)。甲1発明の水中灯において、甲第2号証の赤色、緑色、青色の発光ダイオードの集合体を複数備える点を参酌し上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
次に、上記相違点2について検討する。
甲第2号証には、LED投光器において従来は赤緑青の3つの色相角の設定をそれぞれ個々に調整、変化させて得たい色を求めていたのを、色相角調整器12の操作及びルックアップテーブルの参照により一元的に、かつ無段階調に変化させることができるようにした点が記載されている(記載事項(2-a)、(2-c)参照)。この色相角調整器は、訂正発明1の「発光波長ボリューム部」に相当するものであり、甲第2号証記載のものにおいても、赤色、緑色、青色の3つの光の光量を調整することにより、見かけの発光波長を変化させているといえる。
そうすると、水中灯の光源としてLEDを用いる甲1発明において、上記甲第2号証の記載事項を参照することにより、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことというべきである。
したがって、訂正発明1は、甲1発明及び甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

(2)訂正発明2について
訂正発明2と甲1発明とを対比すると、両者は、前記相違点1ないし相違点2で相違するほか、以下の点で相違する。

[相違点3]
訂正発明2では、光源制御部が、操業情報として漁獲対象生物が水の色の異なる領域に存在する場合、それぞれの領域の海水の色に一致するように集魚灯の発光波長を設定し得るように構成され、また、操業情報として漁獲対象生物が異なる深度領域に存在する場合、深度の浅い領域に漁獲対象生物が存在する場合には、集魚灯の発光波長を清澄水に対応する青色からやや緑色側に調節し、逆に、表層高濁度層より深い深度領域に漁獲対象生物が存在する場合には、発光波長を清澄水に対応する青色側に調節し得るように構成されているのに対し、甲1発明では、光色光力制御装置が調色し得る光の色についてそのような具体的な設定がない点。

上記相違点3について検討する。
集魚灯装置の発明である訂正発明2において、上記相違点3に係る構成の限定により、光源制御部が設定可能とされる範囲内の一の発光波長に設定し得る点が実質的に特定されているものと認められる。一方、甲1発明の光色光力制御装置は、水中灯の三原色の各光力を任意に調整することで各色の光力の割合で決定される任意の色光を発するように構成されている(記載事項(1-c)参照)のであるから、調整可能とされる範囲内のすべての色の光を発し得るよう構成されていると解される。訂正発明2にいう「海水の色」が甲1発明の上記範囲内に含まれる色であると考えられることに鑑みると、甲1発明は、上記相違点3に係る構成を実質的に備えているものということができる。
したがって、訂正発明2は、甲1発明及び甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

(3)訂正発明3について
訂正発明3と甲1発明とを対比すると、両者は、前記相違点1ないし相違点2で相違するほか、以下の点で相違する。

[相違点4]
訂正発明3は、光源制御部が、光源の発光強度を設定する発光強度ボリューム部を有し、海域の状況や漁獲対象種等の操業情報に応じて、発光強度ボリューム部で光源の発光強度を設定すると、発行ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、光源全体としての調光を行うことで、光源全体から発せられる発光強度を変化させる機能を有する構成であるのに対し、甲1発明は、訂正発明3の「発光強度ボリューム部」に相当する構成がなく、LEDの各々の発光量を一元的に制御して光源全体から発せられる発光強度を変化させるものではない点。

上記相違点4について検討する。
甲第2号証には、光量調整器によりLEDフルカラー投光器の光量を調節することが記載されている(記載事項(2-b)参照)。そうすると、甲1発明において、上記甲第2号証の記載事項を参照することにより、上記相違点4に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことというべきである。
したがって、訂正発明3は、甲1発明及び甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

(4)訂正発明4について
訂正発明4と甲1発明とを対比すると、両者は、前記相違点1ないし相違点2で相違するほか、以下の点で相違する。

[相違点5]
訂正発明4は、光源制御部が、発光波長ボリューム部の設定位置に対応する発光状態を直感的に図示する波長スケール部と、光源の発光色をワンタッチで白色に変換する白色光スイッチとを備えているのに対し、甲1発明は、これらの構成を有していない点。

上記相違点5について検討する。
甲第4号証には、色相調整ダイヤルがその周囲に赤、紫との記載及びそれらの間の目盛を有する点(記載事項(3-c)参照)が記載されている。
本件明細書の段落【0042】の「発光波長スケール部11aは、例えば可視光域のスペクトルを模した帯状の表示部材からなり、つまみ120の位置に対応する光源20の発光波長が直感的に認識できるようになっている。」との記載によれば、訂正発明4の「発光状態を直感的に図示する波長スケール部」は、例えば、ボリューム部のつまみの位置に対応した色合いを表示するような表示部材を意味している。そして、このような表示部材の付設によって、発光波長ボリューム部において設定しようとする発光波長を直感的に認識できるようになっているものと解される。これに対して、甲第4号証のものは、色相調整ダイヤルの周囲に記載された赤、紫との記載及びそれらの間の目盛のみであるから、該色相調整ダイヤルの指し示す位置に対する色相が直感的に認識できるように図示されているものとはいえない。
よって、訂正発明4における「発光状態を直感的に図示するスケール部」は、甲第4号証に記載されたものではなく、また、同号証から当業者が容易に想到し得たものでもない。
また、甲第5号証には、白色発光ダイオード(記載事項(4-a)参照)が記載されている。しかし、当該白色発光ダイオードは青色発光ダイオードに併設されて常時白色に発光するものであり、白色以外の色に発光している発光ダイオードの色をワンタッチで白色に変換するものではないから、訂正発明4の「光源の発光色をワンタッチで白色に変換する白色光スイッチ」には相当しない。
よって、訂正発明4における「光源の発光色をワンタッチで白色に変換する白色光スイッチ」は、甲第5号証に記載されたものではなく、また、同号証から当業者が容易に想到し得たものでもない。
したがって、上記相違点5に係る構成については、甲第4、5号証に記載されておらず、また、甲第4、5号証に記載の発明から当業者が容易になし得たものともいえない。さらに、甲第1、2号証にも記載されていないことは明らかであるから、訂正発明4が甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載の発明に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

3 請求人の主張に対して
請求人は、訂正発明4の「ワンタッチで白色に変換する白色光スイッチ」は、甲第5号証の白色発光ダイオード及び周知技術に基づいて、当業者であれば容易に甲第1号証の水中灯に適用し得る旨主張する。しかし、甲第5号証の白色発光ダイオードは、単に白色光を照射するだけのものであるから、この白色発光ダイオードを甲第1号証の水中灯に適用しても、白色以外の色に発光している光源の色を白色に変換する構成は得られない。
また、請求人は、スケール部としての目盛に絵柄等を付す技術や、赤、緑、青のLEDを組み込んで白色発光ダイオードを構成する技術、スイッチのワンタッチ操作により機器を特定の状態に設定する技術は周知技術であるとして、甲第6?11号証を挙げている。しかし、審判請求書においては、「請求項4に係る特許発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する分野において通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができた」(5頁16?19行、45頁4?7行)としており、容易想到性の根拠として周知技術を挙げてはいなかった。しかも、「発光状態を直感的に図示する波長スケール部」と「光源の発光色をワンタッチで白色に変換する白色光スイッチ」は、本件訂正後に追加された発明特定事項ではない。したがって、甲第6?11号証に基づく請求人の主張は、請求の理由を変更するものであって、その要旨を変更するものであり(特許法第131条の2第1項)、かつ、訂正請求によって必要が生じたものでもない(同条第2項第1号)から、これを採用することはできない。
なお、仮に、甲第6?11号証を考慮に入れたとしても、これらの証拠方法に係る物品の属する技術分野は本件特許発明に係る集魚灯装置の技術分野と相違するものであるから、本件特許発明をなすにあたって参酌し得た証拠ということはできない。

4 被請求人の主張に対して
被請求人は、甲第2号証のLED投光器に係る発明は集魚を目的とするものとして開示されてはいないから、甲第1号証の水中灯に係る発明と組み合わせることはできない旨主張する。しかし、甲第1号証に記載された集魚に用いる水中灯の色調を変化させる手法として、甲第2号証記載の三原色のLEDの一元的制御を行うとの技術思想を適用する、としたものであるから、甲第2号証については集魚を目的とするか否かに拘わらず、甲第1号証記載の水中灯の各LEDの制御の手法に対して参酌し得る証拠である。したがって、被請求人の上記主張は採用しない。
また、被請求人は、甲第2号証において、色を定義するためにルックアップテーブルを用いることから、データの個数は有限であり、色を連続的に調整することはできない旨主張する。しかし、甲第2号証は、調整によって光の色を無段階調に変化させることを目的としており、そのための手法として、予め求められたデータが記載されたテーブルを用いる際には、テーブル内に相当個数のデータを保持せしめて十分に連続的(無段階調)な変化といえる程度に構成しているものと解するのが相当である。したがって、被請求人の上記主張は採用しない。
さらに、被請求人は、甲第1号証には「本発明は以上の如く構成されておるが1の電球は直流用交流用を問わず更に螢光管、LED、ネオン等の如く赤、青、緑の三原色を発光するものであればその発光方式は問わない。」との記載があるものの、甲第1号証の公開特許公報に係る特許出願がなされた昭和59年(1984年)7月28日当時には青色LEDは発明されておらず、乙第10号証に示すように平成5年(1993年)3月12日に初めて公知となったものであるから、甲第1号証は青色LEDを開示するものとはいえず、したがって、甲第1号証は引用発明を構成し得ない旨主張する。しかし、甲第1号証の公開時に上記記載に触れた当業者は、たとえその当時青色LEDが発明されていなかったとしても、LED自体は公知であったのであるから、赤色、緑色とともに青色の発光方式の一例としてLEDが想定され得るという程度の認識は持ち得たと解するのが相当である。そして、青色LEDは、本件特許出願の優先日である平成15年(2003年)9月18日までに実現されていれば足りるところ、乙第10号証に示されるように実際に、本件特許出願の優先日前である平成5年(1993年)3月12日に公開されて何人も製造可能となっている。そうすると、集魚灯装置への青色LEDの適用は、甲第1号証の上記記載事項及び乙第10号証よって示される公知技術に基づいて本件特許出願の優先日前に当業者がなし得たことと解するべきである。したがって、被請求人の上記主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、訂正発明1ないし訂正発明3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
一方、訂正発明4は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に基づいて出願前に当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。また、他に、訂正発明4が特許法第29条第2項の規定に違反してなされたとする理由も見あたらない。したがって、その特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第64条の規定により、請求人がその4分の1、被請求人が4分の3を負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
集魚灯装置、及びその使用方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漁業に用いる集魚灯装置に関する。具体的には、イカ、サンマ、アジ、サバ等の水産動物を集め、漁獲に連係するための集魚灯装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、漁業の操業においては、自船周囲のより広い海域からできるだけ多くの対象生物を漁具の操作範囲に集め、漁獲に結びつけることを目的として、集魚灯が用いられている。漁業の操業過程は、対象生物を探知する過程(探魚)、誘集する過程(集魚)、漁獲する過程(漁獲)から構成され、集魚灯の灯光は漁獲の効率を左右する重要な要素である。集魚灯漁業の主な対象生物としては、走光性のあるイカ、サンマ、アジ、サバ等が挙げられる。
【0003】
集魚灯に用いられる光源技術は、漁獲量を増加させるためには光力を増加することが有効であるという考えのもとに開発が進められてきた。集魚灯の光源は、アセチレンランプ、白熱ランプ、ハロゲンランプと変遷してきており、現在ではメタルハライドランプが主流となっている。
【0004】
メタルハライドランプは、発光管内に始動用のアルゴンと、ランプ電圧、発光管温度を調節するための水銀及び数種の金属ハロゲン化物を封入したランプであり、金属原子による発光を利用したものである。メタルハライドランプは、従来使用されていた白熱灯に比べ、同電力において4倍以上の全光束を持ち、発光効率が向上した。
【0005】
しかし、メタルハライドランプは発光効率が向上したものの、十分ではなく、発光に伴なう電力消費や放熱が大きいこと、光害による生態系への影響、寿命が短い(1,200?3,600時間)等の問題を有している。また、電源電圧の変動によるランプ特性の変化が大きく、発光波長の変化、すなわち発光色の変化を伴うという問題点がある。さらに、電源を入れた後の始動に10分程度、再点灯するにはアークチューブ内のガスを冷却する必要があるため、10?15分程度の時間を要するという問題点もある。
【0006】
そこで、最近では、上記ランプに代わり発光ダイオードを用いた集魚灯が提案されている。特許文献1及び2には、青色発光ダイオードを光源として備えた集魚灯が開示されており、少ない電力消費量で効果的に魚類を誘集できることが記載されている。
【0007】
しかしながら、これら従来の集魚灯においては、いずれも灯色が固定されていた。このため、操業海域や対象魚種の行動に応じて発光波長や発光(放射)強度を変化させる等の適切な調光を行うことができないため、漁獲効率の向上に繋がり難いという問題点があった。
【特許文献1】
特開2003-134967号公報
【特許文献2】
特開2000-125698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明では、上記従来の状況に鑑み、操業海域の水の色、照度条件、漁獲対象生物の種類、漁獲対象生物の位置・深度・行動特性等の各種の操業情報に基づき、発光状態を適切に制御し、漁獲効率の向上に繋ぐことができる集魚灯装置、及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、発光色が相異なる複数の発光ダイオードを集合させた光源を有する集魚灯と、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源全体としての調色を行うことで、前記光源全体から発せられる見かけの発光波長を変化させる光源制御部とを備えてなる集魚灯装置を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、発光色が相異なる複数の発光ダイオードを集合させた光源を有する集魚灯と、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源全体としての調色を行うことで、前記光源全体から発せられる見かけの発光波長を連続的に変化させる光源制御部とを備えてなる集魚灯装置である。
【0011】
また、本発明は、上記の集魚灯装置において、海域の状況や漁獲対象種等の操業情報に応じて、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源全体としての調光を行うことで、前記光源全体から発せられる発光強度を変化させる光源制御部とを備えてなる集魚灯装置である。
【0012】
上記構成によれば、刻々変化する操業情報に応じて、集魚灯から発せられる光の状態が最適化され、漁獲作業が効率良く進められる。なお、ここで操業情報とは、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の漁獲作業に影響する各種情報をいう。
【0013】
また、個々の発光ダイオードを制御することで、その集合体である光源全体としての調色及び調光が行われ、様々な状況に対応した漁具・漁船の操作や漁獲が可能となる。なお、ここで調色とは、個々の発光ダイオードの発光を合成した結果として、光源全体から発せられる見かけの発光波長を変化させることを意味し、調光とは光源全体の見かけの発光強度を変化させることを意味する。
【0014】
【0015】
また、本発明は、上記の集魚灯装置において、光源制御部が、光源の発光状態を変化させるボリューム部と、前記ボリューム部の設定位置に対応する発光状態を直感的に図示するスケール部とを備えたことを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、スケール部の表示を確認しつつボリュームを設定することで、速やかに所望の発光状態が得られる。また、発光状態を連続的に微調整できる。
【0017】
また、本発明は、上記の集魚灯装置において、集魚灯が、海水を通じて発光ダイオードを冷却するための貫通孔を備えたことを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、集魚灯の稼動中に海水を利用して発光ダイオードを冷却するため、発光ダイオードの発光効率が向上する。
【0019】
また、本発明は、上記の集魚灯装置の使用方法であって、光源全体としての発光波長が海域の水色と一致するように、発光ダイオードの各々の発光量を制御し、海水中の光の透過率を高めることを特徴とする集魚灯装置の使用方法である。
【0020】
上記手段によれば、集魚灯から発せられる光の波長が、その海域の海水中を透過するのに最適な値に設定され、漁獲作業の効率化が図れる。
【0021】
さらに、本発明は、上記の集魚灯装置の使用方法であって、集魚灯と漁獲対象種との距離もしくは漁獲対象種の反応行動に応じて、発光ダイオードの各々の発光量を制御し、光源全体としての発光波長もしくは発光強度を変化させることを特徴とする集魚灯装置の使用方法である。
【0022】
上記手段によれば、漁獲対象生物を遠方から徐々に当業船周辺に集め、船上に獲り込むまでの過程を通じて、発光波長(色)および強度の最適化が図れ、漁獲効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上、本発明によれば、海域の水色や漁獲対象生物の種類・反応行動等の操業情報に応じて、発光色の相異なる複数の発光ダイオードを制御するので、その場の状況に適した調色・調光を様々に行うことができ、漁獲効率の向上が図れる。
また、可視光域の任意の色(波長)を発光させることができるので、漁獲対象種や海域の状況によって光源を交換する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態(1)に係る集魚灯装置、及びその使用方法を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態(1)に係る集魚灯装置、及びその使用方法を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態(1)に係る集魚灯装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態(1)に係る集魚灯装置の構成を示す図である。
【図5】(a)本発明の実施の形態(1)における集魚灯を示す斜視図である。(b)(a)のA-A断面図である。
【図6】本発明の実施の形態(1)における発光ダイオードの発光状態を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態(1)における発光ダイオードの発光状態を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態(1)に係る集魚灯装置の構成の別例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態(1)に係る集魚灯装置の構成の別例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態(2)における集魚灯を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
100 集魚灯装置
1 光源制御部
10 操作部
11 スケール部
11a 発光波長スケール部
11b 発光強度スケール部
12 ボリューム部
12a 発光波長ボリューム部
12b 発光強度ボリューム部
120 つまみ
13 回路部
131 CPU
132 定電流回路
2、2B 集魚灯
20 光源
21 発光ダイオード
211 赤色発光ダイオード
212 青色発光ダイオード
213 緑色発光ダイオード
22、22b 筐体
23 入出力線
24、24b 取り付け器具
25 貫通孔
26 発光ダイオード実装基板
27 防水シリコン
28 冷却用ファン
29 傘部
3 自動イカ釣り機
31 釣り糸
32 擬餌針
33 おもり
4 集魚灯水深調節装置
41 ワイヤ
S 漁船
H1、H2 発光波長
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る集魚灯装置、及びその使用方法を、各実施形態に基づき説明する。まず、本発明の実施の形態(1)を図1?9に示す。
【0027】
図1、図2は、実施の形態(1)に係る集魚灯装置をイカ釣りに使用する場合について示している。集魚灯装置100は、光源制御部1と集魚灯2とから構成されている。集魚灯2は、集魚灯水深調節装置4に接続されたワイヤ41により漁船Sから海中に投入される。集魚灯2により誘集されたイカは、自動イカ釣機3に接続された釣り糸31の擬餌針32を捕捉するので、釣り糸31を自動イカ釣機3によって巻き上げることにより、イカを釣獲することができる。
【0028】
集魚灯2の発光状態は、対象海域の水色、照度条件、イカの種類・位置・反応行動等の操業情報に応じて、光源制御部1により制御される。なお、集魚灯2には、必要に応じて、光が反射する傘部29等を設けることにより、集魚灯2から発せられる光を下向きにする等して指向性を持たせることもできる。
【0029】
以下、上記集魚灯2の発光状態を、様々な操業情報に応じて制御する方法について具体的に述べる。
まず、操業情報として漁場海域の水色を利用する場合について説明する。図1は、イカが水の色の異なる領域a1と、領域a2に存在する場合について示している。それぞれの領域a1、a2の海水の色に一致するように集魚灯2の発光波長を設定することで、海水中の光の透過率を高め、集魚効果を向上させることができる。なお、夜間に操業する場合には、集魚灯2の発光波長が日中観測した海水の色と一致するように制御し、水中用の集魚灯2を発光させる。
【0030】
なお、海水の色は、プランクトン、浮遊物、溶存・懸濁物質等によって影響を受けることが知られている。例えば、植物性プランクトンや懸濁物が少ない水塊では青色(波長430?500nm)となり、植物性プランクトンが多くなったり、懸濁物の多い海域になるにつれ、緑色(波長510?550nm)、黄色(波長560?600nm)、赤色(波長610?700nm)と変化する。漁場海域の水色を観測する方法としては、日中走航中に海水を目視により確認する方法が挙げられる。この際、フォーレル・ウーレ水色計を用いて海域の水の色を観測しても良い。フォーレル・ウーレ水色計は、水の色の違いを21段階の色で表した水色標準液のことである。日中に水面を真上から見た水の色とフォーレル・ウーレ水色計とを比較することで、海域の水の色をより正確に観測することができる。また、海色走査放射計等を用いて海の水の色を自動で求めることも可能である。
【0031】
次に、操業情報として照度条件を利用する場合について説明する。太陽高度が高く、日光の照度が強いときには、海水中は透過した日光により比較的明るくなっている。この場合には、水中集魚灯の設定深度に応じて発光波長・強度を変化させることでイカを誘集することができる。また、夜間等の照度が低い条件で操業する場合等には、海水中の光量が少ないので、集魚灯光源の発光強度を比較的小さく設定しても漁獲対象生物を誘集することが可能である。
【0032】
なお、照度条件は、季節、操業位置、天候、時間帯等に応じて変化する。照度条件を観測する方法としては、目視で確認する方法が挙げられるが、より正確に観測するために照度計等を用いても良い。
【0033】
続いて、操業情報がイカの種類である場合について説明する。図2には漁獲対象のイカの種類がアカイカ類とヤリイカ類の場合について示している。一般にイカの眼の視物質は、波長470?500nm付近の光に高感度を示すが、イカ釣り漁業の対象となるアカイカ類、ヤリイカ類は、それぞれ異なる波長で感度の極大を示すことが知られている。集魚灯2の発光波長を、それぞれの種類のイカの分光感度が極大となる波長付近に設定することで、各種イカ類の誘集を効率良く行うことができる。
【0034】
また、図2では、イカが異なる深度領域d1、d2に存在する場合について併せて示している。海の深度により、プランクトン、浮遊物質、溶存・懸濁物質等の密度が異なる。深度の浅い領域d1にイカが存在する場合には、プランクトンや懸濁物質の密度が高いため、光の透過率が低く、透過極大が長波長側に移動することが一般的である。したがって、集魚灯2の発光波長を清澄水に対応する青色からやや緑色側に調節し、発光強度を大きくする。逆に、表層高濁度層より深い深度領域d2にイカが存在する場合には、発光波長を清澄水に対応する青色側に調節し、比較的小さい発光強度に設定すればよい。イカの棲息深度や光に対する反応行動の観測方法には、魚群探知機やソナーを用いて深度や行動をモニターリングする方法が挙げられる。
【0035】
続いて、操業情報として、集魚灯2とイカとの距離やイカの反応行動特性を利用する場合について説明する。イカは、低照度環境に適応した眼を持っており、暗所から明所への急激な光環境の変化には対応できないため、眼の順応度が即座に対応できないような明るい環境に長く滞留することはないと考えられている。このような観点から、実施の形態(1)では、集魚灯2とイカとの距離に応じて集魚灯2の発光強度を変化させることで、集魚灯2付近までイカを効率的に誘集する。なお、集魚灯2とイカとの距離の測定方法としては、水中集魚灯の設定深度と魚群探知機やソナーから得られたイカの位置とから求める方法が挙げられる。
【0036】
例えば、操業開始時には、より広い範囲のイカを誘集するために、集魚灯2の発光強度を大きく設定する。そして、イカが誘集され、集魚灯2とイカとの距離が近くなると共に集魚灯2の発光強度を減じることで、誘集過程におけるイカの逃出を防ぎ、集魚灯2の近くまでイカ群が誘集されることになる。なお、発光強度を減じる方法以外にも、発光波長を、海中の透過率の低い発光波長に変化させ、その効果を魚群探知機やソナーでモニターリングする方法等も適宜採用できる。
【0037】
また、漁獲効率をあげるためには単位時間あたりの釣具ラインの降下および巻上げ回数を増やす必要がある。そのため、イカの活動深度が深い場合には、図2に示したように、イカを浅い領域まで誘集する必要がある。この実施の形態(1)では、操業開始時には、深度の深い領域に集魚灯2を降下し、発光強度を大きく設定し、より広範囲のイカを誘集する。そして、集魚灯2とイカとの距離が近くなるにしたがって、発光強度を減少させながら、集魚灯2を引き上げることにより、イカを深度の浅い領域まで誘導することができる。なお、集魚灯2の引き上げは、集魚灯水深調節装置4により、ワイヤー41を巻き取ることで行うことができる。
【0038】
以上、海水の色、照度条件、イカの種類、イカの存在する深度、集魚灯とイカとの距離やイカの反応行動特性等の各操業情報に基づき、集魚灯の発光状態を制御する方法について述べたが、前記操業情報以外にも、例えば、海水温の変化、潮流の流向および流速と釣具ラインの挙動等の操業情報に基づいて、発光波長、発光強度を制御することも可能である。
【0039】
また、上記では、一つの操業情報に基づいて集魚灯2の発光状態を制御する方法について述べたが、実際に得られた複数の操業情報を総合して、発光波長、発光強度を制御しても良い。
【0040】
さらに、上記では、イカを誘集する場合について述べたが、イカ以外にもサンマ、アジ、サバ等の各種走光性を有する水産動物に対して適用可能である。
【0041】
次に、集魚灯装置100の装置構成について説明する。この実施の形態(1)に係る集魚灯装置100は、図3に示すように、光源20を有する集魚灯2と、その光源20の発光状態を操業情報に応じて変化させる光源制御部1とを接続して概略構成されている。そして、光源制御部1は、光源20の発光状態を設定するための操作部10と、操作部10に入力された信号を光源20へ出力するための回路部13とを備えている。
【0042】
操作部10には、光源20の発光状態を変化させるボリューム部12と、そのボリューム部12の設定位置に対応するスケール部11とが設けられている。
具体的には、図4に示すように、操作部10は、例えば箱型に形成された操作パネルから構成され、光源10の発光波長を変化させる発光波長ボリューム12aと、発光強度を変化させる発光強度ボリューム部12bとを有し、それぞれのボリューム部はつまみ120をスライドさせることで発光波長及び強度を連続的に変化させ得るように構成されている。また、発光波長ボリューム部12a及び発光強度ボリューム部12bに沿うように、それぞれ発光波長スケール部11aと発光強度スケール部11bとが設けられている。発光波長スケール部11aは、例えば可視光域のスペクトルを模した帯状の表示部材からなり、つまみ120の位置に対応する光源20の発光波長が直感的に認識できるようになっている。また、発光強度スケール部11bは、例えば三角形状に構成され、つまみ120を動かすことで光源20の発光強度が変化することを直感的に認識できるようになっている。さらに発光スペクトル・スケールおよび発光強度の設定を再現するための指標として数値スケールも併装している。
【0043】
発光波長ボリューム部12a、及び発光強度ボリューム部12bは、例えば可変抵抗を備えており、設定された値に対応する電圧値がCPU131のAD端子に入力される。そしてCPU131でAD変換された後、RGBの各発光ダイオード21に対する電流値が演算される。この演算結果に基づいた電流指令値が定電流回路132に出力され、各発光ダイオードに電流を流し、それぞれの発光量を制御する。
【0044】
また、この実施の形態(1)では、操作部10に、RGBの各発光ダイオード21を点灯させることによって光源20の発光色をワンタッチで白色に変換できる白色光スイッチ14を別に設けている。上述のように、本発明は、ボリューム部12等を操作することで、操業情報に応じ発光状態を任意に制御することを特徴とするが、例えば船上で作業員が青色・緑などの単色光の下で作業をすると、目に支障をきたす補色現象や網膜炎症を起こす場合がある。そこで、白色光にワンタッチ切り替え可能な白色光スイッチ14を装備することにより、このような事態を防止することができる。すなわち、遠くにいる漁獲対象生物を漁船Sの近傍に寄せるまでは発光波長を制御した単色光を使用し、その後、単色光から白色光へスイッチで切り替えることで、近傍に集魚した対象魚を逃がさないようにしつつ、作業者に負荷の少ない光環境を作ることが可能である。
【0045】
次に、集魚灯2について説明する。図5(a)は、実施の形態(1)に係る集魚灯2の斜視図であり、図5(b)はそのA-A断面図である。この集魚灯2は、円柱状の筐体22の周面に、複数の発光ダイオード21が取り付けられ、光を全方位に出射可能となっている。また、集魚灯2には取り付け器具24が設けられ、ワイヤー41により海中に投入して用いられる。そして、集魚灯2と光源制御部1とは入出力線23で接続され、各発光ダイオード21の制御のための信号が送られる。なお、図5では便宜上、図1で示した傘部29は省略している。
【0046】
図5(b)に示すように、それぞれの発光ダイオード21は、発光ダイオード実装基板26上に配設されている。そして、発光ダイオード21の一部と発光ダイオード実装基板26の表面には防水シリコン27がコーティングされ、防水処理が施されている。
【0047】
また、集魚灯2には、海水を通じて発光ダイオード21を冷却するための貫通孔25が設けられている。具体的には、図5(b)に示すように、円柱状の筐体22の長さ方向に沿って貫通孔25が形成されており、集魚灯2を水中へ沈めた際に海水が貫通孔25内へ自然に流入することを利用して、発光ダイオード21を冷却し、発光効率を高めている。
【0048】
この実施の形態(1)では、発光ダイオード21は、図5(b)の拡大図に示すように、赤色発光ダイオード211、青色発光ダイオード212、及び緑色発光ダイオード213を内蔵している。図6及び図7に示すように、三色の発光ダイオードの発光量をそれぞれ制御することにより、それらの合成として、発光ダイオード21から発せられる見かけの発光波長を、例えば図6ではH1、図7ではH2となるように変化させたり、あるいは発光ダイオード21の発光強度を変化させることができる。その結果、光源20全体としての調色、調光を自在に行うことができる。
【0049】
光源制御部1、及び集魚灯2の回路構成は、図4の例に限定されることなく、適宜設計することができる。例えば、図8に示すように、発光ダイオード21の接続を一部並列にすることができる。
また、この実施の形態(1)では、一つの発光ダイオード21の中に、赤色発光ダイオード211、青色発光ダイオード212、緑色発光ダイオード213が内蔵されている場合について述べたが、これに限定されるものではない。例えば図9に示すように、それぞれ単色の赤色発光ダイオード211、青色発光ダイオード212、及び緑色発光ダイオード213を用い、それらを交互に敷き詰める等して配設して、光源20全体としての調色、調光を行っても良い。
【0050】
以上の実施の形態(1)は、円柱状の水中用集魚灯について述べたが、これに限定されず、球状や多角柱状等の任意の形状とすることができる。
【0051】
さらに、本発明の実施の形態(2)を図10に示す。この集魚灯2Bは、船上に設置し、海面に向かって投光するものである。集魚灯2Bは、平板状に形成された筐体22bを有し、その海面側の一面に、複数の発光ダイオード21が敷き詰められている。また、筐体22bの他方の面には、船上に固定するための取り付け器具24bが設けられ、さらに筐体22bの側面には、冷却用ファン28が備えられて筐体22bの内部から発光ダイオード21を冷却できるようになっている。
船上用の集魚灯2Bを使用することにより、サンマ等の各種の漁獲対象を効率的に集魚することができる。
船上で用いる集魚灯は、実施の形態(2)の平板状に限らず、曲面状や多角柱状等の任意の形状とすることができる。
【0052】
上記実施の形態(2)において、発光ダイオード21の構成や、光源制御部1によって発光状態を制御する方法等については上記実施の形態(1)と同様である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードを集合させた発光ダイオード集合体を形成し、この発光ダイオード集合体を複数用いた光源を有する集魚灯と、前記光源の発光波長を設定する発光波長ボリューム部を有し、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光波長ボリューム部で前記光源の発光波長を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源の全体としての調色を行うことで、前記発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードの発光の合成として前記光源全体から発せられる見かけの発光波長を連続的に変化させる光源制御部とを備えてなる集魚灯装置。
【請求項2】
発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードを集合させた発光ダイオード集合体を形成し、この発光ダイオード集合体を複数用いた光源を有する集魚灯と、前記光源の発光波長を設定する発光波長ボリューム部を有し、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光波長ボリューム部で前記光源の発光波長を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源の全体としての調色を行うことで、前記発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードの発光の合成として前記光源全体から発せられる見かけの発光波長を連続的に変化させる光源制御部とを備えてなり、
光源制御部は、
操業情報として漁獲対象生物が水の色の異なる領域に存在する場合、それぞれの領域の海水の色に一致するように集魚灯の発光波長を設定し得るように構成され、
操業情報として漁獲対象生物が異なる深度領域に存在する場合、深度の浅い領域に漁獲対象生物が存在する場合には、集魚灯の発光波長を清澄水に対応する青色からやや緑色側に調節し、逆に、表層高濁度層より深い深度領域に漁獲対象生物が存在する場合には、発光波長を清澄水に対応する青色側に調節し得るように構成されていることを特徴とする集魚灯装置。
【請求項3】
発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードを集合させた発光ダイオード集合体を形成し、この発光ダイオード集合体を複数用いた光源を有する集魚灯と、前記光源の発光波長を設定する発光波長ボリューム部を有し、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光波長ボリューム部で前記光源の発光波長を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源の全体としての調色を行うことで、前記発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードの発光の合成として前記光源全体から発せられる見かけの発光波長を連続的に変化させる光源制御部とを備えてなり、
前記光源制御部は、前記光源の発光強度を設定する発光強度ボリューム部を有し、海域の状況や漁獲対象種等の操業情報に応じて、前記発光強度ボリューム部で前記光源の発光強度を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源全体としての調光を行うことで、前記光源全体から発せられる発光強度を変化させる機能を更に有することを特徴とする集魚灯装置。
【請求項4】
発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードを集合させた発光ダイオード集合体を形成し、この発光ダイオード集合体を複数用いた光源を有する集魚灯と、前記光源の発光波長を設定する発光波長ボリューム部を有し、海域の水の色、水温、風向・風速、潮流の流向・流速、照度条件、漁獲対象生物の種類・位置・反応行動、漁具や漁船の位置や挙動等の操業情報に応じて、前記発光波長ボリューム部で前記光源の発光波長を設定すると、前記発光ダイオードの各々の発光量を一元的に制御し、前記光源の全体としての調色を行うことで、前記発光色が赤色系、青色系、緑色系の三色の発光ダイオードの発光の合成として前記光源全体から発せられる見かけの発光波長を連続的に変化させる光源制御部とを備えてなり、
前記光源制御部が、前記光源の発光波長を設定する前記発光波長ボリューム部と、前記ボリューム部の設定位置に対応する発光状態を直感的に図示する波長スケール部と、光源の発光色をワンタッチで白色に変換する白色光スイッチとを備えたことを特徴とする集魚灯装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2011-06-15 
出願番号 特願2005-514164(P2005-514164)
審決分類 P 1 123・ 832- ZD (A01K)
P 1 123・ 121- ZD (A01K)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 郡山 順  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 栗山 卓也
小関 峰夫
登録日 2008-01-11 
登録番号 特許第4064423号(P4064423)
発明の名称 集魚灯装置、及びその使用方法  
代理人 治部 卓  
代理人 吉田 芳春  
代理人 吉田 芳春  
代理人 吉田 芳春  

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