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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B |
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管理番号 | 1241839 |
審判番号 | 不服2008-18613 |
総通号数 | 142 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-07-22 |
確定日 | 2011-08-10 |
事件の表示 | 特願2004-329065「広範囲ズーム機能を備えた超広帯域紫外顕微鏡映像システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月28日出願公開、特開2005-115394〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、特願2000-506547号(原出願日平成10年8月7日、パリ条約による優先権主張1997年8月7日、米国)の一部を平成16年11月12日に新たな特許出願としたものであって、平成20年4月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月22日に審判請求がなされたものである。 その後、平成22年7月13日付けで当審による拒絶理由の通知がなされ、これに対して平成23年1月20日付けで意見書及び手続補正書が提出された。 第2 拒絶理由通知の概要 当審による拒絶理由通の概要は以下のとおり。 1.本願は、以下の理由により、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (1)本願の請求項1?8には、本願の課題を解決するための、発明の詳細な説明に記載された具体的手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することとなる。 (2)省略 2.本願は、以下の理由により、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 (1)省略 (2)省略 (3)特許請求の範囲の請求項1?8に記載の「紫外域内の複数の波長に亘って高次色収差を変えることなくズーム若しくは倍率変更を行うことができる」という事項に関して、本願明細書及び図面の記載を参酌しても、該特定事項の有する技術上の意義、特に「零ではない高次色収差を変えない」ことが、請求項1?8に記載の発明において、どのような技術的意義を有するのかが不明である。 したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法施行規則第24条の2の規定を満たしていないから、経済産業省令で定めるところにより記載されたものではない。 3.省略 第3 本願明細書等の記載 本願の特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「本願明細書等」という。)の記載は、平成23年1月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の記載を含め、願書に添付された本願明細書等に記載されているとおりであるが、特に、以下のとおり記載されている。 (1)特許請求の範囲 「 【請求項1】 紫外域内の複数の波長に亘って二次と比べて高次の色収差を変えることなくズーム若しくは倍率変更を行うことができる、遠紫外に透明な一つの屈折材料で作られたものである、互いに異なる分散を備えた少なくとも二つの屈折材料で構成される、又は回折面を有する、レンズ群を含むズーミングレンズ部と、 非ズーミングカタディオプトリック対物レンズ部とを有する、カタディオプトリック光学システム。 【請求項2】 カタディオプトリック光学システムであって、 レンズ表面が光学システムの光路に沿って第1の所定位置に配置され、光学システム内で紫外線を中間像に集光させ、同時に、光学システムの残りの部分と組み合わされて、紫外線域内の波長帯域に亘り像収差及び収差の色変動の両方を補正するよう曲率及び上記位置が選択された、遠紫外に透明な屈折材料で作られた複数のレンズ部品を有する焦点レンズ群と、 上記中間像の付近で上記光路に沿って並べられ正味の正の度数を備え、分散が異なり、レンズ表面が第2の所定位置に配置され、上記波長帯域に亘って上記光学システムの少なくとも2次縦方向色と1次及び2次横方向色を含む色収差を実質的に補正するように曲率が選択された複数のレンズ部品を有する視野レンズ群と、 第3の所定位置に配置された少なくとも2枚の反射面及び少なくとも1枚の屈折面を有し、上記中間像の実像を形成するよう選択された曲率を有し、上記焦点レンズ群と組み合わされて、上記波長帯域に亘り光学システムの1次縦方向色を実質的に補正するカタディオプトリックリレーレンズ群と、 光学システムの光路に沿って第4の所定位置に配置されたレンズ表面を備え、上記波長帯域に亘って、二次と比べて高次の色収差を変えることなくズーム若しくは倍率変更を行うことができるズーミングレンズ群とを含み、 前記ズーミングレンズ群は、一つの屈折材料で構成される、互いに異なる分散を備えた少なくとも二つの屈折材料で構成される、又は回折面を有すると共に、 少なくとも一つのズーミングしないレンズ群は、上記波長帯域に亘って、上記ズーミングレンズ群の二次と比べて高次の色収差を実質的に補償する、光学システム。 【請求項3】 カタディオプトリック光学システムであって、 光学システム内で紫外線を中間像に集光させ、同時に、光学システムの残りの部分と組み合わされて、紫外線域内の波長帯域に亘り像収差及び収差の色変動の両方を補正するよう曲率及び位置が選択された屈折面を備えた複数のレンズ部品を有する焦点レンズ群と、 上記中間像の付近で上記光路に沿って並べられ正味の正の度数を有し、上記波長帯域に亘って上記光学システムの少なくとも2次縦方向色と1次及び2次横方向色を含む色収差を実質的に補正するように曲率が選択された屈折面を備えた、遠紫外に透明な屈折材料で作られた複数のレンズ部品を有する視野レンズ群と、 上記中間像の実像を形成するよう選択された曲率を有する少なくとも2枚の反射面及び少なくとも1枚の屈折面を備え、上記焦点レンズ群と組み合わされて、上記波長帯域に亘り光学システムの1次縦方向色を実質的に補正するカタディオプトリックリレーレンズ群と、 上記波長帯域に亘って、二次と比べて高次の色収差を変えることなくズーム若しくは倍率変更を行うことができ、屈折面を備えたズーミングレンズ群とを含み、 前記ズーミングレンズ群は、一つの屈折材料で構成される、互いに異なる分散を備えた少なくとも二つの屈折材料で構成される、又は回折面を有すると共に、 少なくとも一つのズーミングしないレンズ群は、上記波長帯域に亘って、上記ズーミングレンズ群の二次と比べて高次の色収差を実質的に補償する、光学システム。 【請求項4】 紫外波長域に亘る像を受容し得る検出器アレイと、 紫外波長帯域を生ずる広帯域紫外放射線源と、 カタディオプトリック光学システムとを含む、高解像度の広帯域紫外映像システムであって、 上記カタディオプトリック光学システムは、 光学システム内で紫外線を中間像に集光させ、同時に、光学システムの残りの部分と組み合わされて、紫外線域内の波長帯域に亘り像収差及び収差の色変動の両方を補正するよう曲率及び位置が選択された屈折面を備えた、遠紫外に透明な屈折材料で作られた複数のレンズ部品を有する焦点レンズ群と、 上記中間像の付近に設けられ、上記波長帯域に亘って上記光学システムの少なくとも2次縦方向色と1次及び2次横方向色を含む色収差を実質的に補正するように曲率が選択された屈折面を備えた複数のレンズ部品を有する視野レンズ群と、 上記中間像の実像を形成するよう選択された曲率を有する少なくとも2枚の反射面及び少なくとも1枚の屈折面の組み合わせを備え、上記焦点レンズ群と組み合わされて、上記波長帯域に亘り光学システムの1次縦方向色を実質的に補正するカタディオプトリックリレーレンズ群と、 上記波長帯域に亘って、二次と比べて高次の色収差を変えることなくズーム若しくは倍率変更を行うことができ、複数の屈折面を備えたズーミングレンズ群とを含み、 前記ズーミングレンズ群は、一つの屈折材料で構成される、互いに異なる分散を備えた少なくとも二つの屈折材料で構成される、又は回折面を有すると共に、 少なくとも一つのズーミングしないレンズ群は、上記波長帯域に亘って、上記ズーミングレンズ群の二次と比べて高次の色収差を実質的に補償する、映像システム。 【請求項5】 カタディオプトリック光学システムであって、 光学システム内で紫外線を中間像に集光させ、同時に、光学システムの残りの部分と組み合わされて、紫外線域内の波長帯域に亘り像収差及び収差の色変動の両方を補正するよう配置された屈折面を備えた、遠紫外に透明な屈折材料で作られた複数のレンズ部品を有する焦点レンズ群と、 正味の正の度数を有し、上記波長帯域に亘って上記光学システムの少なくとも2次縦方向色と1次及び2次横方向色を含む色収差を実質的に補正するように曲率が選択された屈折面を備えた複数のレンズ部品を有する視野レンズ群と、 上記波長帯域に亘って、二次と比べて高次の色収差を変えることなくズーム若しくは倍率変更を行うことができ、複数の屈折面を備えたズーミングレンズ部と、 前記ズーミングレンズ群は、一つの屈折材料で構成される、互いに異なる分散を備えた少なくとも二つの屈折材料で構成される、又は回折面を有すると共に、 上記ズーミングレンズ群の二次と比べて高次の色収差を実質的に補償する手段を構成する非ズーミングカタディオプトリック対物レンズ部とを含む、光学システム。 【請求項6】 屈折面が光学システムの光路に沿って第1の所定位置に配置され、光学システム内で紫外線を中間像に集光させ、同時に、光学システムの残りの部分と組み合わされて、紫外線域内の波長帯域に亘り像収差及び収差の色変動の両方を補正するよう曲率及び上記位置が選択された複数のレンズ部品を有する焦点レンズ群を設ける段階と、 上記中間像の付近で上記光路に沿って並べられ正味の正の度数を備え、屈折面が第2の所定位置に配置され、上記波長帯域に亘って上記光学システムの少なくとも2次縦方向色と1次及び2次横方向色を含む色収差を実質的に補正するように曲率が選択された、異なる分散を備えた少なくとも二つの異なる遠紫外に透明な屈折材料から形成された複数のレンズ部品を有する視野レンズ群を設ける段階と、 第3の所定位置に配置され上記中間像の実像を形成するよう選択された曲率を有する少なくとも2枚の反射面及び少なくとも1枚の屈折面の組み合わせを備え、上記焦点レンズ群と組み合わされて、上記波長帯域に亘り光学システムの1次縦方向色を実質的に補正するカタディオプトリックリレーレンズ群を用いて実像を形成する段階と、 光学システムの光路に沿って第4の所定位置に配置されたレンズ表面を備え、上記波長帯域に亘って、二次と比べて高次の色収差を変えることなくズーム若しくは倍率変更を行うことができるズーミングレンズ群を用いてズーミングする段階とを含み、 前記ズーミングレンズ群は、一つの屈折材料で構成される、互いに異なる分散を備えた少なくとも二つの屈折材料で構成される、又は回折面を有すると共に、 少なくとも一つのズーミングしないレンズ群は、上記波長帯域に亘って、上記ズーミングレンズ群の二次と比べて高次の色収差を実質的に補償する、カタディオプトリック光学システムを製作する方法。 【請求項7】 カタディオプトリック光学システムを用いて対象を映像化する方法であって、 複数の紫外波長に亘って少なくとも色収差の一部分を変えることなく、ズーム若しくは倍率変更を行い得るズーミングレンズ群を用いてズーミングする段階と、 上記ズーミングレンズ群の二次と比べて高次の色収差を実質的に補償する、遠紫外に透明な屈折材料で作られたレンズ群を含む非ズーミングカタディオプトリック対物レンズ部を用いて上記対象を映像化する段階とを含むと共に、 前記ズーミングレンズ群は、一つの屈折材料で構成される、互いに異なる分散を備えた少なくとも二つの屈折材料で構成される、又は回折面を有する、 方法。 【請求項8】 複数の紫外波長に亘って少なくとも色収差の一部分を変えることなく、ズーム若しくは倍率変更を行い得る、遠紫外に透明な一つの屈折材料で作られたものである、互いに異なる分散を備えた少なくとも二つの屈折材料で構成される、又は回折面を有する、ズーミングレンズ群と、 上記ズーミングレンズ群の二次と比べて高次の色収差を実質的に補償する非ズーミングカタディオプトリック対物レンズ部とを含む、カタディオプトリック光学システム。」 (2)「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明の目的は、像収差、像収差の色変動、縦方向(軸方向)色及び横方向色を補正し、かつ、近紫外及び極紫外スペクトル帯域(0.2乃至0.4ミクロン)の超広スペクトル域に亘って残りの(2次及びより高次の)横方向色補正を含む、カタディオプトリック映像システムを提供することである。 【0010】 本発明のもう一つの目的は、大きい開口数0.9と、少なくとも1ミリメートルの視野とを備えた顕微鏡若しくはマイクロリソグラフィー光学系として有用な紫外映像システムを提供することである。このシステムは、好ましくは、テレセントリック系である。 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明によるズーミング機能を備えた高性能、高開口数の超広域スペクトル域カタディオプトリック光学系は、1個のコリメート形共役を備え、ズーミング中に高次色収差(特に、高次の横方向色)が変化しないように構成された全屈折ズーミングチューブレンズ部と、ズーミングチューブレンズ部の補正されていない(しかし、ズーム中に安定した)高次の色収差の残りを補正する非ズーミング高開口数カタディオプトリック対物レンズ部とを有する。」 (3)「【0020】 フレキシブルな極紫外顕微鏡システムの場合、種々の倍率、開口数、視野サイズ及び色を提供することが重要である。原理的に、紫外顕微鏡システムは、数枚のカタディオプトリック対物レンズと、チューブレンズと、ズームレンズとにより構成される。しかし、完全な顕微鏡システムを設計する場合には、幾つかの問題点が生ずる。第1に、顕微鏡設計は、種々の倍率及び開口数を提供するため、多数の大型サイズのカタディオプトリック対物レンズを収容する必要がある。第2に、画質を維持するため、各チューブレンズの収差の色変動は体物レンズ自体と同程度に補正去れる必要がある。第3に、ズーミング系の収差の色変動は、ズームの全範囲に亘って補正される必要がある。」 (4)「【0025】 本発明によれば、焦点レンズ群129は多数のレンズ部品を有し、好ましくは、すべてのレンズ部品は1種類の材料から作製され、回折面の曲率及び位置は、モノクロ収差及びモノクロ収差の色変動の両方を補正し、光を中間像に集光させるように選択される。焦点レンズ群129において、低度数のレンズ130の特殊な組み合わせは、球面収差、コマ収差、及び、非点収差の色変動に対し系を補正する。 【0026】 視野レンズ群127及び低度数レンズ群130の設計上の特徴は、本発明において重要である。カタディオプトリック対物レンズ128と組み合わされたズーミングチューブレンズ139は、多数の望ましい特徴を示す。このような全屈折ズーミングレンズは、理想的には検出器アレイ140をズーミング中に静止させるが、本発明は、このような好ましい実施例の状況に制限されない。カタディオプトリック対物レンズ系128が全くズーミング機能を具備しない場合に、ズーミングチューブレンズ系139には2通りの設計上の可能性が拓かれる。 【0027】 第1に、ズーミング部139は、石英ガラスのような全く同一の屈折材料でもよく、1次縦方向及び1次横方向色がズーミング中に変化しないように設計されるべきである。これらの1次色収差は零に補正する必要はなく、1種類のガラスタイプだけが使用される場合には零に補正できないが、安定している必要があり、これは実現可能である。カタディオプトリック対物レンズ128の設計は、これらのズーミングチューブレンズの補正されていないが安定した色収差を補償するよう修正されるべきである。この修正は実行可能であるが、得られる解決策は良い画質を伴うことが必要である。画質の制限にもかかわらず、このような設計が可能であることは非常に望ましい。その理由は、結合された顕微鏡システム全体が、フッ化カルシウム、又は、色消し処理されたOffnerタイプの視野レンズ内の回折面を除いて単一の材料、すなわち、石英ガラスであることによる。 【0028】 第2に、ズーミングチューブレンズ群139は、カタディオプトリック対物レンズ128とは独立して収差を補正することができる。このため、石英ガラスとフッ化カルシウムのような異なる分散を有する少なくとも2個の屈折材料、又は、回折面を使用する必要がある。残念ながら、その結果として、チューブレンズ系は、ズーム範囲全体に亘って残留する高次の縦方向及び横方向色を避けることができないので、非常に広い紫外スペクトル域に亘って高性能を得ることができない。したがって、スペクトル域を狭小化する形、合成された系の視野サイズを縮小する形、若しくは、これらの組み合わされた形で妥協する必要がある。その結果として、カタディオプトリック対物レンズの非常に高い能力は、独立に補正されるズーミングチューブレンズを用いて2倍にすることができない。 【0029】 本発明は、上記の2種類の状況を両立させる。ズーミングチューブレンズ139は、最初に、二つの屈折材料(例えば、石英ガラスとフッ化カルシウム)を用いて、カタディオプトリック対物レンズ128とは独立に補正される。レンズ139は、次に、カタディオプトリック対物レンズ128と合成され、カタディオプトリック対物レンズは、ズーミングチューブレンズ系の残りの高次色収差を補償するように変更される。このようにできる理由は、上記のカタディオプトリック対物レンズの視野レンズ群127及び低度数レンズ群130の設計上の特徴に起因する。合成された系は、最良の性能を得るべく変更されるすべてのパラメータを用いて最適化される。 【0030】 本発明の一つの格別な特徴は、ズーミングチューブレンズの具体的な細部である。このズーミング系の高次残留色収差がズーム中に変化する場合、カタディオプトリック対物レンズは、1個所のズーム位置以外では高次残留色収差を厳密に補償できない。低次色収差がズーム中に変化せず、零に補正されるズーミングチューブレンズを設計することは簡単である。しかし、(系自体では零に補正することができない)高次色収差残留分がズーミング中に変化しないズーミングチューブレンズを見つけることは非常に困難である。 【0031】 チューブレンズ部は、ズーム中にその高次色収差が有意な量で変化しないように設計することが可能である。検出器アレイ140がズーム中に移動してもよい場合、設計上の問題はより簡単化されるが、系の残りの部分に対し像位置が固定されている場合と同じ程度には望ましくない。」 (5)「【0022】 カタディオプトリック対物レンズ部128は、紫外スペクトル域(約0.20乃至0.40ミクロン波長)で超広帯域映像化を行うため最適化される。カタディオプトリック対物レンズ部は、高い開口数及び大きい対物視野に関して優れた性能をもつ。本発明は、軸方向色及び1次横方向色を補正するためOffner視野レンズと組み合わせてSchupmann原理を使用し、より高次の横方向色を補正するため色消し処理された視野レンズ群を使用する。残りの高次色収差を除去すると、超広帯域紫外対物レンズ設計が行えなくなる。」 第4 検討・判断 1.「第2」の「1.」の拒絶理由について (1)検討 請求項1に、本願の請求項1に係る発明の課題を解決するための、発明の詳細な説明に記載された具体的手段が反映されているかどうかについて検討する。 本願の請求項1に係る発明の課題は、本願明細書等の記載(特に、上記摘記事項(2)参照)を参酌すれば、少なくとも「像収差、像収差の色変動、縦方向(軸方向)色及び横方向色を補正し、かつ、近紫外及び極紫外スペクトル帯域(0.2乃至0.4ミクロン)の超広スペクトル域に亘って残りの(2次及びより高次の)横方向色補正を含む、カタディオプトリック映像システムを提供すること」である。 この点を踏まえて請求項1の記載(上記摘記事項(1)参照)を見ると、まず、当該記載のうちの「紫外域内の複数の波長に亘って二次と比べて高次の色収差を変えることなくズーム若しくは倍率変更を行うことができる」の部分は、二次と比べて高次の色収差の補正を行っていないことから、課題を解決するための具体的手段ではない。また、「ズーミングレンズ部と、非ズーミングカタディオプトリック対物レンズ部とを有する、カタディオプトリック光学システム。」という記載は、発明の構成を示唆するものではあるが、当該構成自体は周知のものであり(原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-156030号公報、同米国特許第5031976号明細書参照)、当該構成のみで上記課題が解決できないことは本願明細書等の記載に照らしても明らかであるから、課題を解決するための具体的手段となり得ない。 次に、「遠紫外に透明な一つの屈折材料で作られたものである、互いに異なる分散を備えた少なくとも二つの屈折材料で構成される、又は回折面を有する、レンズ群を含むズーミングレンズ部」の記載について検討する。当該記載は、必ずしも明確ではないが、本願明細書等の記載(特に摘記事項(2)?(4))を参酌して、「ズーミングレンズ部」を、イ.「遠紫外に透明な一つの屈折材料で作られたもの」、ロ.「互いに異なる分散を備えた少なくとも二つの屈折材料で構成されるもの」又はハ.「回折面を有するもの」のいずれかの「レンズ群」で構成したものと解釈すれば、ズーミングレンズ部としては、例えば、イ.は周知の技術(原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-90214号公報参照)である。そして、本願明細書等、特に段落【0029】(上記摘記事項(4)参照)の「本発明は、上記の2種類の状況を両立させる。ズーミングチューブレンズ139は、最初に、二つの屈折材料(例えば、石英ガラスとフッ化カルシウム)を用いて、カタディオプトリック対物レンズ128とは独立に補正される。レンズ139は、次に、カタディオプトリック対物レンズ128と合成され、カタディオプトリック対物レンズは、ズーミングチューブレンズ系の残りの高次色収差を補償するように変更される。このようにできる理由は、上記のカタディオプトリック対物レンズの視野レンズ群127及び低度数レンズ群130の設計上の特徴に起因する。合成された系は、最良の性能を得るべく変更されるすべてのパラメータを用いて最適化される。」の記載に基づけば、上記イ.ロ.又はハ.のみによっては、上記課題が解決できないことは明らかであり、上記イ.ロ.又はハ.と、請求項1のその他の記載を総合的に参酌しても、同課題を解決することはできない。 (2)小括 してみると、請求項1には、本願の請求項1に係る発明の課題を解決するための、発明の詳細な説明に記載された具体的手段が反映されているとはいえない。 したがって、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2.「第2」の「2.」の拒絶理由について (1)検討 請求項1?6の「二次と比べて高次の色収差を変えることなくズーム若しくは倍率変更を行う」及び請求項7?8の「少なくとも色収差の一部分を変えることなく、ズーム若しくは倍率変更を行い得る」の有する技術上の意義について検討する。 本願の各請求項に記載の発明(以下「本願各発明」という。)の解決すべき課題が、少なくとも「ズーミングレンズ部とカタディオプトリック対物レンズを有するカタディオプトリック光学システムにおける色収差を補正する」ことである(上記「1.」参照)以上、本願各発明において、色収差は補正される必要がある。 それにもかかわらず、本願各発明において「色収差を変えることなく」保持することの技術上の意義は、本願明細書等の記載を参酌しても、当業者にとって自明であるとすることはできない。 さらには、二次以下の色収差については、全く不問にして、高次の色収差のみを対象としていることについても、その技術上の意義は不明である。 なお、本願明細書の段落【0022】(上記摘記事項(5)参照)には、「残りの高次色収差を除去すると、超広帯域紫外対物レンズ設計が行えなくなる。」という記載があるが、当該記載事項が具体的にどのような事項を指しているのかも、当該記載事項と本願各発明との関係も、ともに、当業者にとって自明であるとはいえない。 (2)小括 してみると、本願明細書等の記載を参酌しても、「二次と比べて高次の色収差を変えない」ことが、請求項1?8に記載の発明において、どのような技術的意義を有するのかが不明である。 したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、請求項1?8に係る発明を、経済産業省令で定めるところにより、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-09 |
結審通知日 | 2011-02-15 |
審決日 | 2011-03-30 |
出願番号 | 特願2004-329065(P2004-329065) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(G02B)
P 1 8・ 536- WZ (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 瀬川 勝久 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
岡田 吉美 村田 尚英 |
発明の名称 | 広範囲ズーム機能を備えた超広帯域紫外顕微鏡映像システム |
代理人 | 特許業務法人明成国際特許事務所 |
代理人 | 伊東 忠彦 |