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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200731056 審決 特許
不服200825108 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1241843
審判番号 不服2008-23978  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-18 
確定日 2011-08-10 
事件の表示 特願2002-188981「脂肪分解促進液状食品」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月29日出願公開、特開2004- 26772〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,平成14年6月28日の出願であって,その請求項1及び2に係る発明は,平成20年10月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定されるものであり,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりである。

「【請求項1】下記一般式(1)
【化1】

(但し,式中Rは水素原子,単糖類もしくは少糖類の残基,又は炭素数2?20のアシル基である。)からなる脂肪分解促進成分,及び,下記一般式(2)
【化2】

(但し,式中Rは水素原子,単糖類もしくは少糖類の残基,又は炭素数2?20のアシル基である。)からなる脂肪分解促進成分の少なくとも一方を含有する脂肪分解促進液状食品であって,該脂肪分解促進成分が予めエタノールで溶解されたエタノール溶解物であると共に,該脂肪分解促進成分を,脂肪分解促進液状食品中,固形分換算で0.01重量%以上含有することを特徴とする脂肪分解促進液状食品。」

2.原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は,本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものであって,その理由を要すれば,
「引用文献1には,本願の請求項1における一般式(1)又は(2)に該当する化合物を,脂肪分解促進剤として液状食品に添加しうることが記載されており,食品の技術分野に限らず,脂溶性の高い成分を水に可溶化する際に,水にエタノールを添加することにより溶解度を調整すること,特に,当該成分を予めエタノールで溶解してから水で希釈することは常套手段であるから,引用文献1に記載の化合物を液剤として提供するにあたり,当該化合物を予めエタノールで溶解し,最終濃度を0.01重量%以上としてみることは,当業者が容易になし得たことである。」というものである。

3.当審の判断
(1)引用刊行物
原審で引用された,本出願前に頒布されたことが明らかな刊行物Aには,以下のことが記載されている。

刊行物A;特開2000-169325号公報(拒絶査定で引用された引用文献1)

(1-1)刊行物Aの記載事項
(A-1)特許請求の範囲の請求項1及び2
「【請求項1】 下記一般式(1)
【化1】

(但し,式中Rは水素原子,単糖類もしくは少糖類の残基,又は炭素数2?20のアシル基である。)からなる脂肪分解促進剤。
【請求項2】 下記一般式(2)
【化2】

(但し,式中Rは水素原子,単糖類もしくは少糖類の残基,又は炭素数2?20のアシル基である。)からなる脂肪分解促進剤。」
(A-2)段落番号【0003】
「【0003】一方,肥満防止作用を有する物質としてトウガラシ等に含まれるカプサイシン類は血中のアルブミンと結合し,副腎の代謝を促進するホルモンを分泌し,肝臓や脂肪細胞に作用してエネルギー代謝を活発化することが知られている(岩井和夫及び中谷延二著,香辛料成分の食品機能,97頁,1989年)。しかしながら,カプサイシン類は強い刺激を有しているために,その用途や使用量を限定される問題があった。このため,食欲抑制剤等の経口薬,食事制限及び運動等によるアプローチが種々なされているが,皮下脂肪等を抑制又は減少させる満足な効果を有する脂肪分解促進剤及び痩身用皮膚化粧料は,見出されてはいなかった。」
(A-3)段落番号【0024】
「【0024】本発明の脂肪分解促進剤は,例えば,食品,経口投与薬,皮膚化粧料等に配合することができ,・・・。」
(A-4)段落番号【0029】?【0031】
「【0029】実施例1?4,比較例1
各種脂肪分解促進剤について,上記の脂肪分解試験にて評価した結果を以下に示す。
【0030】
脂肪分解促進剤 濃度(重量%) 脂肪分解促進率(%)
実施例1 ラズベリーケトン 0.1 367.9
実施例2 ラズベリーケトン 1.0 505.5
実施例3 ジンゲロン 0.1 347.5
実施例4 ジンゲロン 1.0 445.8
比較例1 カプサイシン 0.1 200.6
比較例2 ロドデンドロール 0.1 116.4
【0031】実施例1?4の脂肪分解促進剤は,脂肪分解促進率が比較例1及び2に比べはるかに高く脂肪分解促進作用が高いことが明らかにされた。」

(2)対比
刊行物Aには,ラズベリーケトンやジンゲロンのような一般式(1)又は(2)で示される化合物には脂肪分解促進作用が認められることに基づく,該化合物からなる脂肪分解促進剤が記載されている(A-1,A-4)。
また,刊行物Aには,上記脂肪分解促進剤を食品や経口投与薬といった経口摂取製品に配合できることも記載されている(A-3)。ところで,刊行物Aには,上記脂肪分解促進剤が配合された痩身用皮膚化粧料については実施例等において具体的な記載がなされており,一方,食品のような経口摂取製品についてはその具体的な記載はなされていないものの,刊行物Aにおける「従来の技術」の項には肥満防止のために食欲抑制剤を経口摂取することによるアプローチがなされていることが記載されており(A-2),さらに,実施例において一般式(1)又は(2)で示される化合物の脂肪分解促進作用を評価する際に,トウガラシ等の食物中に含まれる成分として広く知られ,肥満防止作用を有する物質であるカプサイシンが比較例とされている(A-4)といった点に加え,例えば,本出願前に公知であった文献「FRAGRANCE JOURNAL, 2002.04.15, Vol.30, No.4, pp.65-66」の第65頁左欄下から2?1行に記載されているとおり,一般式(1)で示される化合物においてRが水素であるラズベリーケトンは食品用香料として汎用されていたものであって,上記カプサイシン同様,食経験があることも勘案すれば,食品に係る具体的な記載がなくとも,上記(A-3)に摘示事項した「本発明の脂肪分解促進剤は,例えば,食品,経口投与薬,皮膚化粧料等に配合することができ」の記載に基づいて,刊行物Aには上記脂肪分解促進剤が配合された食品が,当該刊行物の記載から実施できる発明として記載されていることを,当業者は理解できる。
してみると,刊行物Aには,
「一般式(1)

(但し,式中Rは水素原子,単糖類もしくは少糖類の残基,又は炭素数2?20のアシル基である。)からなる脂肪分解促進成分,及び,一般式(2)

(但し,式中Rは水素原子,単糖類もしくは少糖類の残基,又は炭素数2?20のアシル基である。)からなる脂肪分解促進剤の少なくとも一方が配合された食品。」(以下,「引用発明」という。)が記載されていると言うことができる。
ここで,本願発明と引用発明とを対比すると,引用発明における「脂肪分解促進剤」は本願発明における「脂肪分解促進成分」に相当し,そして,引用発明における上記脂肪分解促進剤が配合された食品は,脂肪分解促進を目的とする,あるいは,脂肪分解促進作用を有する食品である,脂肪分解促進食品と言うことができるから,両者は,
「一般式(1)

(但し,式中Rは水素原子,単糖類もしくは少糖類の残基,又は炭素数2?20のアシル基である。)からなる脂肪分解促進成分,及び,一般式(2)

(但し,式中Rは水素原子,単糖類もしくは少糖類の残基,又は炭素数2?20のアシル基である。)からなる脂肪分解促進成分の少なくとも一方を含有する脂肪分解促進食品。」である点で一致し,次の(i)?(iii)の点で相違している。
[相違点]
(i)本願発明では,食品は液状のものであるのに対し,引用発明ではそのようなことが特定されていない点。
(ii)本願発明では,食品に含まれる上記脂肪分解促進成分は予めエタノールで溶解されたエタノール溶解物であるのに対し,引用発明ではそのようなことが特定されていない点。
(iii)本願発明では,食品に含まれる上記脂肪分解促進成分は食品中,固形分換算で0.01重量%以上含有するのに対し,引用発明ではそのようなことが特定されていない点。

(3)判断
以下,上記相違点(i)?(iii)について検討する。
(3-1)相違点(i)について
ジュースやスポーツドリンクといった飲料等の水性媒体が主体である液状食品は,固体状態の食品に比べその摂取時に咀嚼の必要もなく,嚥下も容易であり,さらに,水分補給を要する際の水分の摂取と同時にそこに配合された栄養成分や薬理効果が期待される成分も簡便に摂取される製品形態のものであることは,本願出願日前において既に当業者には広く認識されており,経口摂取による薬理効果が期待される成分を配合した食品を提供する際に汎用されていた。例えば,特開2000-189121号公報の特許請求の範囲や国際公開第00/41579号の実施例1には,刊行物Aにおいて比較例1に用いられたカプサイシンを有効成分とする飲料が記載されている。一方,刊行物Aには,食品が飲料等の液状食品を含まないことは何ら記載されていないし,また,上記のとおり食品用香料として汎用されていたラズベリーケトンのような上記一般式(1)又は(2)で示される化合物が飲料等の液状食品には使用できないとする技術水準の存在も何ら認められない。
してみると,引用発明の食品を飲料等の水性媒体が主体である液状食品とすることは,摂取の簡便性等に鑑みた当業者の単なる設計事項にすぎず,刊行物Aにこの点明示がなくとも何ら困難はない。

(3-2)相違点(ii)について
本願発明に係る上記一般式(1)又は(2)で示される化合物,このうち上記一般式(1)においてRが水素であるラズベリーケトンや上記一般式(2)においてRが水素であるジンゲロンのような,配糖体化合物ではないものは特に,水に難溶であるがエタノールには可溶であることは,当業者には周知の技術的事項である(例えば,「化学大辞典」第1版第5刷(1998年6月1日発行)第1153頁の「ジンゲロン」の項を参照。)。
ところで,引用発明の食品を飲料等の水性媒体が主体である液状のものとすることが,当業者の単なる設計事項にすぎないことは上記(3-1)に記載したとおりであるが,上記のとおりラズベリーケトンやジンゲロンのような上記一般式(1)又は(2)で示される化合物は水に難溶性であるのだから,飲料等の水性媒体が主体である液状食品とする際,水性媒体に対しそのような水難溶性物質を単純に添加するだけでは,均一で安定した溶解が望めないことは技術的に明らかである。さらに,例えば,「岡野定輔 編著,新・薬剤学総論,1987年,改訂第3版」の第254頁の本文第4?5行や図9.5に記載されているように,体内に吸収されて薬理効果が期待される,経口摂取された成分が,胃や腸といった消化管内において吸収されるには,該成分が吸収部位において溶液状態で存在しなければならないことは,当業者の技術常識である。以上の事項を勘案すれば,上記一般式(1)又は(2)で示される化合物を配合した液状食品の提供に際しては,当業者は当然に,水難溶性物質である該化合物の均一かつ安定な溶解をもたらす措置を講ずることになる。
ここで,拒絶査定で引用された引用文献6「特開平11-35489号公報」の段落番号【0019】記載の実施例3において,経口摂取製品である内服液剤に含まれる水に難溶性の物質として知られるl-メントールは,その100mgをあらかじめエタノール1mlに溶解した上で,精製水を加えて全量100mlとなるように調整することが記載されているように,液剤や飲料といった水性媒体が主体である液状の経口摂取製品において水に難溶性の物質を配合する際,該物質が可溶であって,かつ,多量に摂取しなければ毒性の点でも問題のないエタノールのような溶媒の少量に該物質をあらかじめ溶解せしめ,その溶解物を多量の水性媒体に添加すれば分離等するすることなく,溶解度が改善された安定な状態のものが得られることは,本願出願日前に当業者において広く知られたごく一般的な手法にすぎない。このことは,例えば,特開平4-36172号公報の第2頁左下欄下から5?2行には,飲料製造の際,水への溶解性に乏しいことで知られるフラボノイド類をあらかじめ少量のエタノールに溶かしておき,これを他の飲料成分と混合すると容易に安定な溶解状態にできることが記載されており,また,飲料等の食品に使用できるアスタキサンチン含有組成物を記載する特開平9-124470号公報の第5頁左欄第31?33行には,脂溶性物質として知られる上記アスタキサンチンはエタノールに溶解し,水で希釈した後に使用できることが記載されていることによっても裏付けられる。
してみると,上記のとおりエタノールには可溶であるラズベリーケトンやジンゲロンのような上記一般式(1)又は(2)で示される水難溶性の化合物を配合した飲料等の水性媒体が主体である液状食品を提供する場合,その配合に際し,該化合物の均一かつ安定な溶解を図り,消化管における効率的な吸収が損なわれないように,該化合物をあらかじめ,該化合物が可溶である少量のエタノールで溶解し,得られたエタノール溶解物を水性媒体が主体である液状食品に加えるという,本願出願日前に当業者において広く知られたごく一般的な手法を採用することは,当業者が容易に想到し得たものにすぎない。

(3-3)相違点(iii)について
刊行物Aには,上記一般式(1)又は(2)で示される化合物は脂肪分解促進作用を有することが記載されているのであるから,それを含有する食品を摂取した際に,脂肪分解促進効果を奏するのに必要な含有割合を決定することは当業者が格別の創意工夫を要することなくなし得ることである。

そして,本願明細書の表1には,本願発明に係る液状食品は,上記一般式(1)又は(2)で示される化合物であるラズベリーケトン又はジンゲロンをあらかじめエタノールに溶解せずに配合して得られる比較例1のものに比べて,ざらつきを生じないため風味が良好であり,均一に分散された状態のものが得られ,かつ,体脂肪減少作用に優れるという効果を奏することが記載されているが,水難溶性のものをあらかじめエタノールに溶解してエタノール溶解物として,これを水性媒体を主体とする液状食品への配合に用いれば,直接に配合する場合よりも均一に分散された状態のものが得られ,また,それにより消化管における吸収性が改善されて薬理作用の発揮が向上することは,上記(3-2)に記載したとおり当業者の技術常識であり,そして,溶解状態のものとなれば不溶物の存在がもたらす経口摂取時のざらつきが解消され,その結果,液状食品の風味が良好なものとなることも自明の効果と言えるから,本願発明により格別予想外の効果が奏されたものとすることもできない。

(4)請求人の主張
請求人は,平成20年7月22日付けの意見書,及び,審判請求書における請求の理由に係る同年12月4日付けの手続補正書(方式)において,本願発明が進歩性を有することにつき,要するに,以下の主張をしている。
(a)原審で引用された引用文献2?8においては,脂溶性成分の溶解のためにエタノールを用いる記載があるが,それは製剤(液剤)における物質自体の溶解性の知見にすぎず,これら引用文献におけるエタノールを用いる目的は,エタノールを,脂肪分解促進成分の体内における作用効率向上のために用い,併せて,脂溶性成分の溶解のため,かつ,風味の良好化のために用いる本願発明とは異なり,また,通常,当業者において,引用文献のような皮膚外用品や製剤としての液剤の場合,効能は考慮されるものの,風味まで考慮することはなく,風味は食品固有の検討項目であり,重要な改良課題であるため,このような食品固有の課題のない引用文献2?8を,本願発明が属する食品の分野において,当業者が引用することは想起しないものである。
(b)原審で引用された引用文献1は,食品への調製方法や食品固有の課題が考慮されておらず,引用文献1記載のものは本願明細書の比較例1に相当するものであるが,本願明細書の表1に記載のとおり,本願発明はそれに比して風味の良好化が実現されており,そして,本願発明は,有効成分が体内で最大限に引き出されるための「エタノール自体の濃度」,「溶解させる脂肪分解促進成分の濃度」,「液状食品中における脂肪分解成分の含有量」を見出したものである。

まず,上記主張(a)については,平成20年5月8日付け拒絶理由通知において,「食品分野に限らず,・・・ことは常套手段であるから(要すれば引用文献2?8参照)」と記載されているように,引用文献2?8は,水難溶性物質を食品や医薬品といった水性媒体を主体とする液状の製品に配合する際にあらかじめエタノールに溶解することが常套手段であることの裏付けとして挙げられたにすぎないものと言え,引用文献1に対し,引用文献2?8の何れか特定のものを組み合わせて本願発明と成し得るとしているものではなく,そして,水難溶性物質をあらかじめエタノールに溶解する手法が,食品分野においても本願出願日前に当業者において広く知られたごく一般的な手法であること,該手法を採用すれば,溶解性及び体内作用効率が改善され,さらに,溶解性の向上に伴い液状食品の風味に係るざらつきも解消することは,上記(3)で判断したとおりである。なお,食品に限らず,拒絶査定で引用された引用文献6「特開平11-35489号公報」の段落番号【0019】記載の実施例3における内服液剤のようなものであっても,例えば,特開平8-67623号公報の段落番号【0005】や特開昭63-208526号公報の第3頁右下欄第4?7行に記載されているように,摂取の際のざらつき感等の風味は考慮すべき事項として当業者に認識されていたと認められるから,液剤の場合には,効能は考慮されるものの,当業者が風味まで考慮することはなく,風味は食品固有の検討項目であり,重要な改良課題である,との請求人の主張の根拠は全く見出せない。
また,上記主張(b)については,液状食品の風味に係るざらつき解消の効果が予想外のものではないこと,また,液状食品中における脂肪分解成分の含有量につき,脂肪分解促進効果を奏するのに必要なそれを決定することが当業者において格別の創意工夫を要することなくなし得ることは,上記(3)における判断のとおりであり,そして,本願の請求項1には,エタノール自体の濃度や該エタノールに溶解させる脂肪分解促進成分の濃度といったものは何ら規定されていないのであるから,本願発明は有効成分が体内で最大限に引き出されるための「エタノール自体の濃度」,「溶解させる脂肪分解促進成分の濃度」を見出したものであるという請求人の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものと言わざるをえない。
したがって,請求人の上記主張はいずれも採用できない。

なお,請求人は,平成23年4月27日付けの回答書において特許請求の範囲に係る補正案を示しているので,該補正案における以下に示す請求項1に係る発明についても念のため,その特許性について以下検討する。
「【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(但し,式中Rは水素原子,単糖類もしくは少糖類の残基,又は炭素数2?20のアシル基である。)からなる脂肪分解促進成分,及び,下記一般式(2)
【化2】

(但し,式中Rは水素原子,単糖類もしくは少糖類の残基,又は炭素数2?20のアシル基である。)からなる脂肪分解促進成分の少なくとも一方を含有する脂肪分解促進液状食品であって,該脂肪分解促進成分が予めエタノールで溶解され,該脂肪分解促進成分をエタノール中30?40重量%含有するエタノール溶解物であると共に,該脂肪分解促進成分を,脂肪分解促進液状食品中,固形分換算で0.01重量%以上含有することを特徴とする脂肪分解促進液状食品。」

請求人は上記回答書において,補正案における請求項1に係る発明は,あらかじめエタノールで溶解される脂肪分解促進成分のエタノール中の含有割合を30?40重量%と特定するものであるが,このような含有割合の数値限定により,良好な溶解性及び脂肪分解促進効果を得ることが可能となり,そして,あらかじめエタノールに溶解する化合物の濃度は,溶解させる化合物自体の物性,化合物の体内での吸収効率,最終組成物(食品,外用剤等)における当該化合物の濃度等に基づいて,対象の化合物及び当該化合物を含有する最終組成物ごとに設定されるものであるから,当業者において化合物をあらかじめエタノールに溶解させることが周知であったとしても,エタノールを用いて上記一般式(1)又は(2)からなる脂肪分解促進成分を,どの範囲で好適な溶解物とすることができるかは,単に化合物をエタノールに溶解すればよいというような単なる設計事項ではなく,該脂肪分解促進成分における適切なエタノール含有濃度を,各引用文献から想到することは困難であり,上記補正案に係る発明は進歩性を有すると主張する。
しかしながら,請求人が言う,水難溶性の薬理効果が期待される化合物をあらかじめエタノールに溶解して用いる際,該化合物のエタノール中の濃度が,その物性や所望する薬理効果の発揮等に鑑みて該化合物及びそれが配合された最終組成物ごとに設定しなければならないことは,当業者にとって至極当然のことであって,それゆえ適切に設定・調製を行うことは何ら特別なことではなく,そして,上記(3-2)に記載したとおり,脂肪分解促進成分であるラズベリーケトンやジンゲロンのような上記一般式(1)又は(2)で示される化合物がエタノールに可溶であることは,当業者には周知の技術的事項であるから,該脂肪分解促進成分をあらかじめエタノールに溶解する際のエタノール中の含有割合を30?40重量%という特定の数値範囲のものとすることに,当業者が格別の創意工夫を要するとは認められず,また,脂肪分解促進成分のエタノール中の含有割合のみが変わることで,すなわち,脂肪分解促進成分のエタノール中の含有割合を30?40重量%よりも低いものとし,しかしながら,液状食品中に含まれる脂肪分解促進成分の含有割合は同じとする場合には,該脂肪分解促進成分の液状食品における溶解性や体内吸収効率,液状食品の風味に係るざらつきといったものが改善されず,所望のものが得られないことが示されているわけでもないから,エタノール中の含有割合を30?40重量%に特定することに格別の技術的意義も見出せない。
してみると,補正案における請求項1に係る発明にしても,本願発明と同様に進歩性を有さないと言わざるをえない。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,本出願前に頒布された刊行物Aに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,他の請求項に係る発明については検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-09 
結審通知日 2011-06-13 
審決日 2011-06-27 
出願番号 特願2002-188981(P2002-188981)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清野 千秋  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 森井 隆信
渕野 留香
発明の名称 脂肪分解促進液状食品  

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