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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1241905
審判番号 不服2010-16360  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-21 
確定日 2011-08-08 
事件の表示 特願2005-278624号「バンドヒーター」拒絶査定不服審判事件〔平成19年4月5日出願公開、特開2007-87905号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年9月26日の出願であって、平成22年4月28日付け(発送日:同年5月6日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年7月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、審判請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成22年7月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年7月21日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「筒状部材の外周面に配置され該筒状部材を加熱するバンドヒーターであって、
通電により発熱する発熱体と、該発熱体に接続され電力を流す導線と、該発熱体を保持するハウジングと、該ハウジングの両端部に設けられ該ハウジングの両端部を近接して該筒状部材に締め付ける係止手段と、を有し、
該係止手段は、該ハウジングの外周で周方向に沿って配置され該ハウジングの両端部を近接させる係止部をもち、
該バンドヒーターが該筒状部材に装着された状態で、該ハウジングの両端部の間にすき間が形成され、
かつ該すき間に配置された該導線が該ハウジングおよび該係止手段の外周面より径方向内方に該すき間に沿って延設されていることを特徴とするバンドヒーター。」(下線は補正個所を示す。)

2.補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項であるハウジングについて「該バンドヒーターが該筒状部材に装着された状態で、該ハウジングの両端部の間にすき間が形成され」るものであることを限定するとともに、導線について「すき間に配置され」、「すき間に沿って延設されている」ことを限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか。)について以下に検討する。

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、実願平4-19195号(実開平5-72090号)のCD-ROM(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.段落【0001】
「【産業上の利用分野】
本考案は、コード状発熱体に関し、更に詳しくは、家電製品、住宅設備、産業機器などの立体形状の被加熱体に巻き付けて使用するコード状発熱体に関する。」(下線は当審で付与。以下、同様。)
イ.段落【0002】?【0004】
「【従来の技術】
従来、円筒形等の立体形状の被加熱体に巻き付けて使用するコード状発熱体としては、例えば図2に示すようなものが用いられていた。
即ち、図2において、コード状発熱体11は、発熱部12の一端にリード線13、13′を接続し、発熱部12の両端に絶縁モールド14、14′を施し、その絶縁モールド14、14′にフック状の発熱体固定用係止具15、15′を上向きに設けることにより形成されている。
このコード状発熱体11を被加熱体に係止固定するには、図3に示すように、被加熱体Bに発熱部12を巻き付け、両端の絶縁モールド14、14′に設けたフック状係止具15、15′にバネSを取り付け、バネの弾性を利用して、コード状発熱体11の係止固定を行っていた。」
ウ.上記イによれば、コード状発熱体11の係止固定を行う発熱体固定用係止具15、15′とバネSは係止固定手段ということができる。
エ.図3には、絶縁モールド14、14′の間にすき間が形成されること、そのすき間にリード線13、13′が配置されること、及び発熱体固定用係止具15、15′が絶縁モールド14、14′の外周で周方向に沿って配置されることが図示されている。

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「円筒形の被加熱体に巻き付けて使用するコード状発熱体であって、
発熱部12と、該発熱部12に接続され電力を流すリード線13、13′と、該発熱部12の両端部に施された絶縁モールド14、14′と、該絶縁モールド14、14′の両端部を近接して該被加熱体に締め付ける係止固定手段と、を有し、
該係止固定手段は、該絶縁モールド14、14′の外周で周方向に沿って配置され該絶縁モールド14、14′の両端部を近接させる発熱体固定用係止具15、15′をもち、
該コード状発熱体が該円筒形の被加熱体に装着された状態で、該絶縁モールド14、14′の間にすき間が形成され、
かつ該すき間に該リード線13、13′が配置されたコード状発熱体。」

4.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、機能または作用等からみて、後者の「円筒形の被加熱体」は、前者の「筒状部材」に相当し、以下同様に、「コード状発熱体」は「バンドヒーター」に、「発熱部12」は「発熱体」に、「リード線13、13′」は「導線」に、「絶縁モールド14、14′」は「ハウジング」に、「係止固定手段」は「係止手段」に、「発熱体固定用係止具15、15′」は「係止部」に、それぞれ相当する。
また、後者の「円筒形の被加熱体に巻き付けて使用する」ことは、前者の「筒状部材の外周面に配置され該筒状部材を加熱する」ことに相当し、以下同様に、「該発熱部12の両端部に施された」「絶縁モールド14、14′」は「該発熱体を保持する」「ハウジング」に、「該絶縁モールド14、14′の両端部を近接して該被加熱体に締め付ける」「係止固定手段」は「該ハウジングの両端部に設けられ該ハウジングの両端部を近接して該筒状部材に締め付ける」「係止手段」に、それぞれ相当する。
そして、後者の「発熱部12」は通電により発熱することは明らかであるから、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。

(一致点)
「筒状部材の外周面に配置され該筒状部材を加熱するバンドヒーターであって、
通電により発熱する発熱体と、該発熱体に接続され電力を流す導線と、該発熱体を保持するハウジングと、該ハウジングの両端部に設けられ該ハウジングの両端部を近接して該筒状部材に締め付ける係止手段と、を有し、
該係止手段は、該ハウジングの外周で周方向に沿って配置され該ハウジングの両端部を近接させる係止部をもち、
該バンドヒーターが該筒状部材に装着された状態で、該ハウジングの両端部の間にすき間が形成され、
かつ該すき間に該導線が配置されたバンドヒーター。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点)
すき間に配置された導線が、本願補正発明では、ハウジングおよび係止手段の外周面より径方向内方に該すき間に沿って延設されているのに対し、引用発明では、そのように延設されていない点。

5.相違点の判断
発熱体の導線の取り回し構造は、導線の引き出し部、導線周りの部材との関係、配線の効率等を考慮して、当業者が設計する事項であり、ハウジングおよび係止手段の外周面より径方向内方ですき間に沿って延設することも、例えば実願昭47-32770号(実開昭48-107331号)のマイクロフィルムに記載のように特別な導線の取り回し構造でもない以上、引用発明において、すき間に配置された導線をハウジングおよび係止手段の外周面より径方向内方にすき間に沿って延設することは、当業者が容易に想到し得たことといわざるをえない。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

なお、回答書において、バンドヒーターの係止手段について限定した補正案を提示しているが、限定された係止手段は特開2000-18473号公報に記載のように、本願出願前周知のものであり、係止手段を限定しても進歩性の判断は変わらない。

6.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「筒状部材の外周面に配置され該筒状部材を加熱するバンドヒーターであって、
通電により発熱する発熱体と、該発熱体に接続され電力を流す導線と、該発熱体を保持するハウジングと、該ハウジングの両端部にもうけられ該ハウジングの両端部を近接して該筒状部材に締め付ける係止手段と、を有し、
該係止手段は、該ハウジングの外周で周方向にそって配置され該ハウジングの両端部を近接させる係止部をもち、
かつ該導線が該ハウジングおよび該係止手段の外周面より径方向内方にもうけられたことを特徴とするバンドヒーター。」

第4 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、引用例の記載事項及び引用発明は、前記「第2 3.」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記「第2 1.」の本願補正発明から、ハウジングについて「該バンドヒーターが該筒状部材に装着された状態で、該ハウジングの両端部の間にすき間が形成され」との限定事項を省くとともに、導線について「すき間に配置され」、「すき間に沿って延設されている」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 5.」に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでのなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-13 
結審通知日 2011-06-14 
審決日 2011-06-27 
出願番号 特願2005-278624(P2005-278624)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
P 1 8・ 575- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 結城 健太郎  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 冨岡 和人
稲垣 浩司
発明の名称 バンドヒーター  
代理人 大川 宏  

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