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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680172 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63B
管理番号 1242742
審判番号 無効2009-800049  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-02-26 
確定日 2011-09-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第2669051号発明「ソリッドゴルフボール」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
平成 1年 5月11日 本件出願(特願平1-118460号)
平成 2年12月 7日 出願公開(特開平2-297384号)
平成 9年 7月 4日 設定登録(特許第2669051号)
平成18年 9月 5日 無効審判請求(無効2006-80172
号)
平成19年 6月 8日(起案日)訂正を認めるとともに請求不成立の
旨の審決
平成20年 3月21日 訂正審判請求(訂正2008-390031
号)
平成20年 4月30日(起案日)訂正を認める旨の審決
平成21年 2月26日 本件無効審判請求
平成21年 5月15日 答弁書
平成21年 6月25日(起案日)書面審理通知

第2 本件発明の認定
本件特許について、平成20年3月21日付けでなされた訂正審判は、平成20年4月30日付けで訂正を認める旨の審決がなされ、該審決は確定しているので、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、平成20年3月21日付け訂正審判請求書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のものと認める。

(本件発明)
「カバー材で直接もしくは中間層を介して被覆した多層構造ゴルフボールの芯球を、基材ゴムと、不飽和カルボン酸の金属塩と、ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩とを含有するゴム組成物で形成したことを特徴とするソリッドゴルフボール。」

第3 請求人の主張の概要
請求人は、「本件発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として以下の無効理由1ないし3を挙げて、本件発明の特許は特許法第123条第1項第2号に該当するので無効とすべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証?甲第22号証を提出している。
(1)[無効理由1](甲第1号証に基づく進歩性の欠如)
本件発明は、本件出願前に外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明の下位概念で表現される発明に相当し、甲1記載に記載された発明が有する効果とは異質な効果、または同質であるが際立って優れた効果を有するものでないため選択発明として成立せず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)[無効理由2](甲第4号証と甲第10号証および甲第11号証との組み合わせによる進歩性の欠如)
本件発明は、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第4号証に記載された発明と、甲第10号証および甲第11号証に記載された発明との単なる組み合わせからなる発明であり、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)[無効理由3](甲第4号証と甲第16号証の組み合わせによる進歩性の欠如)
本件発明は、甲4記載に記載された発明と、甲第16号証に記載された発明との単なる組み合わせからなる発明であり、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、[無効理由2]に関して、審判請求書3頁8?14行及び12頁17?18行には、「甲4号証」に記載された発明と「甲7号証および甲8号証」に記載された発明の組み合わせと記載されているが、審判請求書15頁6行?23頁11行には、甲第4号証に記載された発明に甲第10号証及び甲第11号証に記載された発明を組み合わせることに関して記載されており、かつ、審判請求書に示された甲第10号証及び甲第11号証の記載内容から見て、請求人が[無効理由2]として挙げているのは、甲第4号証に記載された発明と甲第10号証及び甲第11号証に記載された発明の組み合わせに関するものであると認められる。よって、審判請求書3頁8?14行及び12頁17?18行における「甲7号証および甲8号証」との記載は、「甲10号証および甲11号証」の誤記と認める。
また、[無効理由3]に関して、審判請求書3頁15?19行には、「甲1発明」に記載された発明と「甲16号証」に記載された発明の組み合わせと記載されているが、審判請求書23頁12行?28頁4行には、甲第4号証に記載された発明と甲第16号証に記載された発明との組み合わせに関して記載されており、かつ、審判請求書の上記箇所における甲第4号証の記載内容から見て、請求人が[無効理由3]として挙げているのは、甲第4号証に記載された発明と甲第16号証に記載された発明との組み合わせに関するものであると認められる。よって、審判請求書3頁15?19行に記載された「甲1発明」は「甲4発明」の誤記であり、甲第4号証に記載された発明を意味するものであると認める。
<証拠方法>

甲第1号証;米国特許第4650193号明細書

甲第2号証;社団法人日本ゴム協会編,「ゴム用語辞典」,初版,
社団法人日本ゴム協会,昭和53年7月10日,173頁

甲第3号証;大木道則(外3名)編,「化学大辞典」 ,第1版第7刷,
株式会社東京化学同人,2005年7月1日,
2357,2399,2549頁

甲第4号証;特開昭59-228868号公報

甲第5号証;本件発明にかかる特許願及び出願の願書に最初に添付した明
細書

甲第6号証;本件発明に係る出願の審査過程で提出された平成9年3月1
0付け意見書

甲第7号証;東京地方裁判所平成17年(ワ)第26473号特許権差止
等請求事件における被請求人(原告)第6準備書面19頁

甲第8号証;東京地方裁判所平成17年(ワ)第26473号特許権差止
等請求事件における被請求人(原告)第7準備書面12頁

甲第9号証;社団法人日本ゴム協会出版企画委員会編,
「ゴム用語辞典」,初版,社団法人日本ゴム協会,
1997年9月30日,202,238頁,利用の手引

甲第10号証;H.FRIES et.al.,"MASTICATION OF RUBBER"
RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGY,米国,
1981年,VOL.55,309?313頁

甲第11号証;S.NCHAKRAVARTY et.al.
"Effect of Rubber Compouding Ingredients on
the Peptization Efficiency of Activated
Pentachlorothiophenol"
KAUTSCHUK+GUMMI・KUNSTSTOFFE
独国,1976年,29巻,676?680頁

甲第12号証;斎藤恭一(外1名)著,「猫とグラフト重合」,第2刷,
丸善株式会社,平成11年12月10日,
4?5,153?154,163頁

甲第13号証;東京地方裁判所平成17年(ワ)第26473号特許権差 止等請求事件における被請求人(原告)第5準備書面9頁

甲第14号証;横山勇,「アクチベータ,リターダー,ペプタイザー」, 日本ゴム協会誌,社団法人日本ゴム協会,1977年,
第50巻,第10号,681?689頁

甲第15号証;金子東助,「素練り促進剤」,ポリマーダイジェスト,
ラバーダイジェスト社,1986年6月,78?85頁

甲第16号証;アリンジャー著,「有機化学(下)」,第1版,
株式会社東京化学同人,1976年9月1日,
868?871頁

甲第17号証;大木道則(外3名)編,「化学大辞典」 ,
第1版第7刷,株式会社東京化学同人,
2005年7月1日,1084頁

甲第18号証の1;英国特許出願公告明細書第497638号

甲第18号証の2;特許第154676号

甲第18号証の3;特公昭43-12823号公報

甲第18号証の4;特開昭46-1340号公報

甲第18号証の5;特公昭49-33111号公報

甲第18号証の6;特開昭51-124145号公報

甲第18号証の7;特開昭52-151380号公報

甲第18号証の8;特開昭52-151381号公報

甲第19号証;大津隆行,
「ジチオカルバメート系化合物を用いる高分子合成」,
日本ゴム協会誌,社団法人日本ゴム協会,1986年,
第59巻,第12号,658?666頁

甲第20号証;2008年3月18日付け実験報告書
「Comparison of Initial Velocity Of Golf Ball Cores
(ゴルフボールの芯の初速の比較)」

甲第21号証;日本ゴム協会編,「ゴム技術入門」,丸善株式会社,
平成16年3月10日,75?77頁

甲第22号証;2009年1月20日付け報告書
ロバート・エイ・ワイズ,
「アクシネット・カンパニーへの報告」

上記甲各号証のうち、甲第3号証,甲第9号証,甲第12号証,甲第17号証及び甲第21号証は、いずれも本件特許出願より後に公知となった書証であるが、いずれも、公知の書証に使用された用語の意味又は反応の内容に関して、その説明を行うために使用されているものであり、かつ、当該技術分野の技術常識を踏まえれば、これらの甲各号証に説明された用語の意味及び反応の内容は本件特許出願前に公知であった蓋然性が高いものであることから、本審決では、公知の書証に使用された用語の意味又は反応の内容は、これらの甲各号証に記載された説明に基づき解釈できるものとして扱う。

第4 被請求人の主張の概要
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、[無効理由1]?[無効理由3]は何れも理由がないと主張するとともに、証拠方法として乙第1?7号証を提出した。

<証拠方法>
乙第1号証;化学大辞典編集委員会編,「化学大辞典9」,
縮刷版第39刷,共立出版株式会社,
2006年9月15日,237頁

乙第2号証;化学大辞典編集委員会編,「化学大辞典5」,
縮刷版第39刷,共立出版株式会社,
2006年9月15日,835?836頁

乙第3号証;2009年4月23日付け実験報告書(その1)

乙第4号証;2009年4月23日付け実験報告書(その2)

乙第5号証;株式会社ジオテックゴルフコンポーネント,
“Vol.5#1「反発係数を追求」”,[online]
2001年11月10日,インターネット


乙第6号証;カタログ「GOLF BALLS 2006 Titleist」,
アクシネット・ジャパン・インク

乙第7号証;高分子学会(外1名)編,「高分子辞典」,3版,
株式会社朝倉書店,昭和49年7月30日,772頁

第5 甲各号証の記載事項
1 甲第1号証
甲第1号証は英語で記載されたものであるので翻訳文を併記し、以下でする甲第1号証に記載された発明の認定は、原則、以下の(1a)?(1i)の翻訳文に基づいて行う。
なお、以下の(1e)については被請求人が提出した答弁書9頁10?18行に示された翻訳文を採用し、それ以外の部分については請求人が審判請求に際して甲第1号証に添付した翻訳文を採用した。
甲第1号証には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(1a)「This invention relates to golf balls and more particularly to an improved golf ball core useful in making two-piece balls
having superior short iron and other playability characteristics.」
(第1欄5?8行)
[本発明は、ゴルフボールに関するものであり、特に、ショートアイアンその他による競技特性に優れたツーピースボールを製造するのに有用な、改善されたゴルフボールの芯球に関する。](翻訳文4頁4?6行)
(1b)「The manufacture of two-piece ball, i.e., balls comprising
a solid, molded resilient core and a cover, has many significant
advantages over the more expensive wound balls. There is accordingly
a need for two-piece balls having short iron playability
characteristics comparable to wound, balata rubber-covered balls. A
ball having such properties which also had the "distance" of ionomer
blend covered two-piece balls would be attractive to golfers.
SUMMARY OF THE INVENTION
It has now been discoverd that a key to manufacturing a two-piece
ball having short iron and other playability characteristics similar
to balata-covered wound balls is to construct a ball having a soft,
resilient, layer beneath the cover.」(第2欄5?21行)
[ツーピースボール、即ち固形の、成型された,弾力のある芯球と被覆から構成されるボールは、より高価な糸巻きボールを超える多くの顕著な利点を有している。従って、糸巻きバラタゴム被覆ボールに匹敵する、ショートアイアン競技特性を有するツーピースボールが必要とされる。かかる性質を有するボールは、アイオノマー配合被覆ツーピースボールの「距離」も有し、ゴルファーには魅力的であろう。
発明の要約
バラタ被覆糸巻きボールに類似した特徴のショートアイアン特性および他の競技特性を有するツーピースボールを製造する鍵は、被覆真下に、柔軟で、弾力のある層を有するボールを構成することであることが、これまで見出されている。](翻訳文5頁21?23行)
(1b)「The preferred agent for modifying cross-linking is a
sulfur-bearing material such as a thiol or mercaptan, and most
preferably is elemental sulfur.」(第2欄41?43行)
[架橋を調整するための好ましい試薬は、チオールやメルカプタン等の硫黄含有物質であり、最も好ましくは元素イオウである。](翻訳文6頁3?5行)
(1c)「The currently preferred core of the invention comprises
high cis content polybutadiene blended with a zinc mono or di
acrylate or methacrylate and zinc oxide.」(第3欄16?19行)
[本発明の現在好ましい芯球は、モノまたはジアクリル酸またはメタクリル酸の亜鉛塩、および酸化亜鉛を混合した、シス含有量の高いポリブタジエンを含む。](翻訳文6頁下から6?5行)
(1d)「In its outer layer, the peroxide cross-linking is modified
by the presence of a sulfur-bearing material, resulting in a
relatively soft, elastomeric, and easily deformed core surface
layer.」(第3欄21?25行)
[外層において、過酸化物架橋は、硫黄含有物質の存在により調整され、その結果、比較的柔軟で、弾力のある、容易に変形する芯球表面層となる。](翻訳文6頁下から3?1行)
(1e)「Accordingly, it is object of the invention to provide a
golf ball having a soft layer beneath the cover and integral with
the core which imparts improved properties to two-pieceballs.
Another object is to provide a two-piece ball having short iron and
wood playability characteristics equal to or exceeding thread wound
balata-covered balls. Still another object is to provide amethod of
producing golf balls having acore central protions. Yet another
object is to construct a golf ball having the distance, durability,
and ease of manufacture of two-piece balls and the playability
characteristics of wound balls.」(第3欄41?53行)
[従って、本発明の目的は、被覆の真下にあり芯球と一体となった柔軟な層で、ツーピースボールに改良された性質を付与する層を有するゴルフボールを提供することである。別の目的は、糸巻きパラタ被覆ボールと同等またはこれを超える、シュートアイアンおよびウッド競技特性を有するツーピースボールを提供することにある。さらに、別の目的は、表面は柔軟だが、中心部分は硬く弾力のある芯球を持つゴルフボールを提供することにある。そして別の目的は、飛距離、耐久性を有し、およびツーピースボールの製造が容易な、糸巻きボールの競技特性を有するゴルフボールの構築にある。](答弁書9頁10?18行 翻訳文7頁10?17行に対応)
(1f)「Broadly, the golf ball core of the invention consists of a
spherical central portion which is hard and resilient, which may be
formed by molding conventional core formulations, and a soft,
relatively easily deformed outer layer, integal with the central portion.」(第3欄64?68行)
[一般に、本発明のゴルフボールの芯球は、硬く、弾力があり、通常の芯球調合物を型に入れることにより形成することができる球状の中心部分と、柔軟で、比較的容易に変形し、中心部分と一体となる外層からなる。](翻訳文10頁17?23行)
(1g)「For manufacturing the preferred core of the invention, a
sulfur-bearing material such as a thiol or mercaptan or, most
preferably, elemental powdered sulfur is used to alter the cure of a
composition of the type described above comprising a high cis
content polybutadiene, a metal, preferably zinc salt of mono or di
acrylate or methacrylate, most preferably zinc diacrylate , a small
amount of zinc oxide, and a free radical initiator catalyst,
preferably a peroxide. 」(第5欄50?58行)
[本発明の好ましい芯球を製造するため、チオールやメルカプタンなどのような硫黄含有物質、または最も好ましくは粉末の元素イオウを使用して、上記のタイプの組成物の硬化を変化させる。組成物は、シス含有量の高いポリブタジエン、モノ、またはジアクリル酸またはメタクリル酸の金属塩、好ましくは亜鉛塩、最も好ましくはジアクリル酸亜鉛、少量の酸化亜鉛、およびフリーラジカル開始剤触媒、好ましくは過酸化物を含む。](翻訳文9頁下から6?2行)
(1h)「While the reaction which takes place is not well
understood, it is believed that a complex network of crosslinks
between the unsaturated components of the blend are formed in the
central portion of the core which is unaffected by the cure
altering agent. A surface layer of the core interacts during cure
with the sulfur-bearing material. Either cross-linking of
unsaturated sites in the blend components is inhibited, or sulfur
cross-links are fomed instead of or in addition to the covalent,
free radical initiated cross-links, or both. In any event, a
differently cured, soft and relatively amorphous outer layer having
a relatively low stretch modulus is produced, generally of a
thickness of about 1/16 inch.](第6欄23?35行)
[起きている反応は良くわからないが、配合剤の不飽和組成物間の架橋の複合ネットワークが、硬化調整剤の影響を受けない芯球の中心部分が形成されると思われる。硬化中に芯球の表面層は硫黄含有物質と相互作用する。配合成分内の不飽和部分の架橋が抑制されるか、または硫黄架橋が共有結合のフリーラジカル反応に始まる架橋の代わりに、あるいはそれに加えて形成されるか、あるいはその両方である。いずれ場合にせよ、異なって硬化された柔軟かつ比較的非晶質で、比較的低いストレッチモジュールを有する外層が形成され、これは通常厚さ約1/16インチである。](翻訳文10頁17?23行)
(1i)「The cover molded about the cores can comprise balata,
various ionomes of the type known to those skilled in the art or
blends thereof, and various resilient composition such as are
disclosed in U.S. Pat. NO.3,359,231, 4,398,000, 4,234,184,
4,295,652, 4,248,432, 3,989516, 3,310,102, 4,337,947, 4,123,061,
and 3,490,146.」(第6欄39?44行)
[芯球の周りに成型される被覆は、バラタ、当業者に知られた多様なタイプのアイオノマー類またはその配合物、ならびに、合衆国特許3,359,231, 4,398,000, 4,234,184, 4,295,652, 4,248,432, 3,989516, 3,310,102, 4,337,947, 4,123,061, および 3,490,146に開示されているような多種の弾性組成物である。](翻訳文10頁下から7?4行)

以上より、上記(1a)?(1i)から、甲第1号証には次の発明が記載されていると認めることができる。
「被覆で成型され、該被覆の真下にあるツーピースゴルフボールの固形芯球を、シス含有量の高いポリブタジエンと、モノ、またはジアクリル酸またはメタクリル酸の金属塩、好ましくは亜鉛塩、最も好ましくはジアクリル酸亜鉛と、チオールやメルカプタンなどのような硫黄含有物質とを含有する組成物で形成したゴルフボール。」(以下「甲1発明」という。)

2 甲第2号証
(2a)「チオール thiol -SH基を持つ有機化合物のこと」(173頁)

3 甲第3号証
(3a)「メルカプタン[mercaptan] チオール^(*)に同じ」(2357頁)
(3b)「遊離基開始反応[free radical initiation] 遊離ラジカルが付加重合^(*)を開始する反応のことで、開始剤の分解などによって生じたラジカルが単量体に付加し、連鎖重合^(*)のきっかけとなる素反応を指す. 」(2399頁)
(3c)「連鎖移動剤[chain transfer agent] 重合度を調節する目的で重合系に加える連鎖移動^(*)を起こしやすい物質、連鎖移動定数Csが1以上のものは移動反応がたいへん起こりやすく、したがって重合体の分子量を調節するのに有効である。(2549頁)

4 甲第4号証
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
(4a)「1)ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体を含有するゴム組成物から形成されるソリッドゴルフボール。
2)ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体をゴム成分の0.1?5重量%含有する第1項記載のゴルフボール。
3)ゴム成分がポリブタジエンゴムを全ゴム成分の90重量%以上含有する第1項記載のゴルフボール。(特許請求の範囲)
(4b)「本発明は新規なソリッドゴルフボールに関する。ソリッドゴルフボーには、1つの構成物からなるワンピースゴルフボールとソリッドコアをカバーで被覆したツーピースゴルフボールおよびソリッドコアとカバーとの間に適当な1ないし複数の中間層を有する多層構造のゴルフボールがある。」(第1頁左欄15行?右欄1行)
(4c)「これらのソリッドゴルフボールは、それ自体かなり優れた性能を有しているが、より優れた反発係数および耐久性を有するゴルフボールが要請されている。
従来、ソリッドゴルフボールの組成物に添加されるα,β-モノエチレン系不飽和カルボン酸金属塩モノマーを添加したソリッドゴルフボールは、これらのモノマーが遊離開始剤によってポリブタジエン主鎖にグラフトされ、共架橋剤として働き、これによりボールに適度の硬さ(コンプレッション 圧縮比)と耐久性を与えるものと考えられたいた。然しながら、この共架橋される際に生じるグラフト鎖が長くなると,ポリブタジエンゴムに他のポリマーを配合したのと同様の結果、即ちゴルフボールの反発性能の低下をきたす事になる。」(1頁右欄6行?2頁1行)
(4d)「本発明者らは前記α、β-エチレン系不飽和カルボン酸の共架橋に際して生ずるグラフト鎖の長さを調節する事により、適度の硬さと耐久性を付与しながら、同時に反発性能を著しく向上させる事を試みる内、DPTT及び/又はその誘導体がグラフト鎖の分子量調整剤として非常に優れた性能を有する事を見出、本発明を完成した。」(2頁左上欄2?9行)
(4e)「本発明に於て使用するα,β-モノエチレン系不飽和カルボン酸は、例えば特公昭55-19615号公報に記載されている様な、アクリル酸又はメタクリル酸等であり、特にアクリル酸が好ましい。勿論アクリル酸とメタクリル酸とを併用してもよい。上記のα、β-モノエチレン系不飽和カルボン酸の金属塩は2価の金属塩、例えば亜鉛塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ジルコニウム塩等であるが、特に亜鉛塩が好ましい。」(2頁左上欄14?右上欄3行)
(4f)「本発明の実施に用いられるゴム成分としてはポリブタジエンを単独又は天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム等をゴム成分の約10重量%以下混合して用いる。」(2頁右上欄9?12行)
(4g)「本発明で得られるソリッドゴルフボールは、前述の如く、ワンピースゴルフボール、ツーピースゴルフボール及び多層構造のゴルフボールであってもよく、いずれに於いてもα,β-エチレン系不飽和カルボン酸金属塩等のモノマーを単独で使用した場合に比べ、著しく優れた反発性能、耐久性およびフライトキャリー特性を示す。」(2頁右上欄最終行?左下欄7行)
以上より、上記甲4(4a)?(4g)から、甲第4号証には次の発明が記載されていると認めることができる。
「ソリッドコアをカバーで被覆したツーピースゴルフボールおよびソリッドコアとカバーとの間に適当な1ないし複数の中間層を有する多層構造のゴルフボールであって、前記ソリッドコアを、ゴム成分と、α,β-モノエチレン系不飽和カルボン酸の金属塩と、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体を含有するゴム組成物から形成したソリッドゴルフボール。」(以下「甲4発明」という。)

5 甲第5号証
本件発明に係る出願の願書及びその願書に最初に添付した明細書である。

6 甲第6号証
本件発明に係る出願の審査過程で被請求人より提出された意見書であって、本件発明におけるチオフェノール類、チオカルボン酸類及びそれらの金属塩から選ばれる有機硫黄化合物の技術的意義に関して記載されている。

7 甲第7号証
本件特許に基づく侵害訴訟である東京地方裁判所平成17年(ワ)第26473号特許権差止等請求事件において、平成19年11月30日に東京地方裁判所に提出された被請求人(原告)の第6準備書面の一部であって、ペンタクロロチオフェノールとペプタイザー(素練り促進剤)との技術的関係について記載されている。

8 甲第8号証
本件特許に基づく侵害訴訟である東京地方裁判所平成17年(ワ)第26473号特許権差止等請求事件において、平成20年2月14日に東京地方裁判所に提出された被請求人(原告)の第7準備書面の一部であって、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドとペンタクロロチオフェノールとの技術的な差異について記載されている。

9 甲第9号証
(9a)「ペプタイザー peptizer (別)素練促進剤,しゃく解剤 原料ゴムの可塑化を早め、素練り作業時間を短縮する目的でゴムに加える薬剤.素練りで切れた分子鎖ラジカルと反応して再結合を抑制し、可塑化を促進するもの.」(202頁)
(9b)「連鎖移動剤 れんさいどうざい chain transfer agent (別)重合調整剤,分子量調整剤」(238頁)
(9c)「各記号については、(別)は俗語・俗称を含め別名・同義語,」(利用の手引き)

10 甲第10号証
甲第10号証は英語で記載されたものであるので翻訳文を併記し、以下でする甲第10号証に記載された(10a)?(10d)に記載された事項の認定は、原則、以下の翻訳文に基づいて行う。
なお、(10a)、(10c)?(10d)の翻訳文は請求人が審判請求に際して甲第10号証に添付した抄訳から採用した。
(10a)「MASTICATION OF RUBBER」(309頁1行)
[ゴムの素練り]
(10b)「The mastication of rubber was of great importance,
especially in the earlier days, when natural rubber was the only
elastomer available.」(309頁5?6行)
[特に、天然ゴムが唯一のエラストマーとして知られていた初期の段階において、ゴムの素練りは非常に重要なものであった。]
(10c)「Long chain elastomer molecules are split by the high
shear forces encountered in the mixing equipment, i.e., internal
mixiers or rubber mills.Chain fragments are formed with terminal
free radicals. If they are not stabilized, they can recombine into
long-chain molecules. If they are stabilized, short-chain molecules
remain. The molecular weight of the rubber is lowered and
consequently the plasticity is increased.」(309頁下から4行?310頁2行)
[長い鎖を持つ高分子物質は、混合装置、つまり内部ミキサー又はゴム圧延機により高せん断力で切断される。鎖フラグメントは、その末端にフリーラジカルを備えている。フリーラジカルが安定しなければ、フリーラジカルは、再結合し、長い分子鎖となる。フリーラジカルが安定化すれば、短い分子鎖となる。ゴム分子量は低下し、その結果、可塑性が増加する。]
(10d)「In the presence or absence of oxygen,chemicals such as
thiophenols or aromatic disulfides can be used as radical acceptors
to stabilize the free radicals of the chain fragments.」(310頁20?22行)
[酸素の存在にかかわらず、チオフェノール類又は芳香族ジスルフィド類は、鎖フラグメントのフリーラジカルを安定化させるためのラジカル受容体として使用することができる。]

11 甲第11号証
甲第11号証は英語で記載されたものであるので翻訳文を併記し、以下でする甲第11号証に記載された(11a)?(11d)に記載された事項の認定は、原則、以下の翻訳文に基づいて行う。
なお、(11a)、(11c)?(11d)の翻訳文は請求人が審判請求に際して甲第11号証に添付した抄訳を採用した。
(11a)「Effect of Rubber Compounding Ingredients on the
Peptization Efficiency of Activated Pentachlorothiophenol^(*)」(676頁1?3行)
[活性ペンタクロロチオフェノールの素練り効率におけるゴム構成要素の効果]
(11b)「Natural rubber, which was an initial high Mooney
Viscosity, needs mastication before compounding.」(676頁左段2?5行)
[天然ゴムは、当初のムーニー粘度が高いものであるので、混練りを行う前に素練りを行う必要がある。]
(11c)「During mastication the mechanical shear forces literally
tear the rubber molecule chains apart. However, if a rubber molecule
is broken the ends of the chain would remain active as the valency
bonds at the newly generated ends are now free. If these active
sites, known as free radicals, are not stabilized by some means
these ends recombine to reform the original long chain molecule. If
the free radicals are stabilized then the breakage becomes permanent
and the molecular weight of the rubber comes down i.e. the rubber
becomes plastic.」(676頁中段13?27行)
[素練り中、機械的せん断によって文字どおりゴム分子を切断する。しかしながら、ゴム分子が切断された場合、鎖の末端は新しく生成され、その自由な末端が原子価結合として活性になる。活性したこれらの場所は、フリーラジカルとして知られており、何らかの手段により安定化されなければ、再結合により元の長い分子鎖となる。フリーラジカルが安定化した場合には、当該破損箇所が固定化され、ゴム分子の分子量が低下する。すなわち、ゴム分子は柔らかくなる。]
(11d)「PCTP functions as a radical acceptor at low temperature
mastication in absence of oxygen.」(676頁右欄11?13行)
[PCTPは、酸素のない低温素練りにおいて、ラジカルアクセプターとして機能する。]

12 甲第12号証
(12a)「グラフト鎖(graft chain)
枝ポリマー(branch polymer)とも呼ぶ、グラフト重合(法)を見よ.」(153頁下から8行?下から7行)
(12b)「グラフト重合(法)(graft polymerization, grafting)
グラフト(graft)とは,園芸用語で「接ぎ木(つぎき)」,医学用語で「移植」のことをいう。幹(trunk)に枝(branch)を取り付けること.取り付けるには接ぎめが必要となる.幹ポリマーに接ぎめ(ラジカル)をつくるのに,放射線(ガンマ線や電子線),プラズマ,光,薬品を使う.そして放射線グラフト重合法(radiation-induced graft polymerization),プラズマグラフト重合法(plasma-induced graft polymerization)などと呼ぶ.また,接ぎめから伸びた枝ポリマーはグラフト鎖(graft chain)と呼ばれる.グラフト重合法でつくた材料の利点は,幹と枝とが役割を分担していることである.どっしり構えた幹(主鎖、main chain)とせっせと動き回る枝(側鎖,side chain)とからなる.」(153頁下から6行?153頁4行)
(12c)「ラジカル(radical)」-4,7,8
共有結合を切ってつくる.グラフト重合の接ぎめとなるので,これがないと話が始まらない.ラジカルというと寿命が短いというのは間違い.冷蔵庫に入れておけばジーとしていて,出番を待っている.」(163頁4?7行)

13 甲第13号証
本件特許に基づく侵害訴訟である東京地方裁判所平成17年(ワ)第26473号特許権差止等請求事件において、平成19年6月29日に東京地方裁判所に提出された被請求人(原告)の第5準備書面の一部であって、ペンタクロロチオフェノール等の特定の物質とペプタイザー(素練り促進剤)としてのラジカル捕獲能との技術的関係について記載されている。

14 甲第14号証
(14a)「 4.ペプタイザー
4.1現状と問題点
ペプタイザーには、芳香族メルカプタン類、ジスルフィド類並びにそれらの亜鉛塩などがある.商品別に分類したアメリカの例^(1))では、ペプタイザーの項目には11種類しかないが、その他可塑剤の項にも若干ある。化合物数からいうと15ぐらいになり^(2))、その主なものを挙げると次のようになる.
芳香族メルカプタン類にはキシレンチオール、ペンタクロロチオフェノール(以下,PCTPと略記する)などがあり、ジスルフィド類としては,混合ジキシリルジスルフィド,ジ(o-ベンズアミドフェニル)ジスルフィド(以下,BADSと略記する)などが、また,亜鉛塩としてはPCTPの亜鉛塩,2-ベンズアミドチオフェノールの亜鉛塩などがある.
芳香族メルカプタン類は、PCTP以外は液体で特有臭があり使用上問題があるが,ジスルフィドや亜鉛塩はこの点が改良されている.これらのうち現在主として使用されているものはPCTP,BADS及びこれらの亜鉛塩を主成分とするものと思われる.」(687頁右欄下から23行?下から4行)

15 甲第15号証
(15a)「素練り促進剤の毒性については、とくに重大な報告には出会っていない。しかし、メルカプタン類は特有の臭気があり、液状(低沸点)のものは臭気が強いため、素練り作用が大きいにもかかわらず敬遠されている。」(84頁下段右端より12?16行)

16 甲第16号証
(16a)「チオール^(1))RSH」(868頁下から2行)
(16b)「チオールからRS・の形成は容易であり,チオールとアルケンの遊離基付加は円滑でかつ有用な反応である.チオールは非常に有効な連鎖移動剤であり、このような反応では高分子化はほとんど、あるいは全然起こらない.」(870頁8?10行)

17 甲第17号証
(17a)「重合調節剤」[polymerization regulator] 重合調整剤[polymerization modifier]ともいい、重合体の分子量を調整する目的で重合系に添加する物質、たとえば,連鎖重合反応の場合,反応速度をあまり変化させずに,重合体の分子量を任意の大きさに調節し、または重合体の枝分かれや橋かけを防止するために加える.代表的なものには、チオール類,ジスルフィド類,ハロゲン化合物などがある.(1084頁)

18 甲第18号証の1?甲第18号証の8
18の1 甲第18号証の1
甲第18号証の1は英語で記載されたものであるので翻訳文を併記し、以下でする甲第18号証の1に記載された(18の1a)?(18の1c)の事項の認定は、原則、以下の翻訳文に基づいて行う。
なお、上記(18の1a)?(18の1b)の翻訳文は請求人が審判請求に際して甲第18号証の1に添付した翻訳文を採用した。
(18の1a)「Method of Polymerising a Halogen-2-Butadiene-1,3」(1頁6行)
[ハロゲン-2-ブタジエン-1,3の重合方法](翻訳文1頁6行)
(18の1b)「The preferred modifying agents are aromatic
mercapto compounds and mercapto carboxylic acids. Examples of
suitable aromatic mercaptans are thiophenol and its homologs and
substitution products such as the thiocresols, nitrothiophenols and
chlorothiophenols; thionaphthols and compounds in which the mercapto
group is contained in a hydrocarbon side chain, such as
benzylmercaptan, may also be used. A particularly suitable mercapto
carboxylic acid is thioglycolic acid, although use may be made of
thiolactic,thiomalic,thiosalicylic and esters of these acids, such
as ethylthioglycolate.」(2頁左欄8?23行)
[好ましい重合調整剤は、芳香族メルカプト化合物およびメルカプトカルボン酸類である。適した芳香族メルカプタンの例は、チオフェノールおよびその同族体、およびチオクレゾール類、ニトロチオフェノール類およびクロロチオフェノール類などの置換生成物である;チオナフトール類および例えばベンジルメルカプタンのようなメルカプト基が炭化水素の側鎖に含まれる化合物も使用可能である。特に適したメルカプトカルボン酸はチオグリコール酸であるが、チオ乳酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、およびエチルチオグリコール酸塩のようなこれらの酸のエステルが使用できる。](翻訳文2頁下から6行?3頁1行)

18の2 甲第18号証の2
(18の2a)「クロール(2)ブタヂエン(1)・(3)」ヨリ耐久性大ナル「ゴム」状物質ヲ製造スル方法 」(1頁上段右端より8?10行)
(18の2b)「本発明ハ「クロール(2)ブタジエン(1)・(3)」ヲ重合シテ「ゴム」状物質ヲ製造スルニ當リ「クロロプレン」ニ「チオール」化合物ノ鹽類又ハ其酸化型化合物及「チオフエノール」、「チオナフトール」等ノ重合調整剤ノ存在ノ下ニ金属板ヲ押入シテ重合スルコトヲ特徴トシ其目的トスル處ハ新規ナル重合方法ニ依リ重合速度ヲ促進シ然モ均質ニシテ炭化ノ憂ナク工業的ニ耐久性ニ富ム「ゴム」状物質ヲ高収率ニ得ントスルニアリ」(1頁上段右端より9?17行)
(18-2c)「調整剤トシテハ「ヂチオカルバミン」酸、「キサントゲン」酸、「ツリチオ」酸、「チアゾール」等ノ「チオール」化合物ノ酸化型化合物「モノサルフアイド」、「ヂサルフアイド」、「テトラサルフアイド」等其他「チオール」化合物ノ鹽類等最モ有效ニシテ「チオフエノール」、「チオナフトール」等モ用ヒ得ベシ」(1頁下段右端より8?14行)

18の3 甲第18号証の3
(18の3a)「今回本発明者らは、上記の連鎖移動剤以外の特定の連鎖移動剤、即ちメルカプト基と共に、アミノ基、ヒドロキシル基、クロル基およびカルボキシル基からなる群から選ばれた少くとも1種の官能基を有する脂肪族あるいは芳香族化合物の存在下にスチレンとブタジエンを乳化共重合させることにより、加硫した場合優れた性質を有するSBRを製造することができることを見い出した。
本発明におけるこれら特定の連鎖移動剤の例としては、アミノチオフエノール、アミノアルキルメルカプタン、4-メルカプトベンジルクロライド、4-メルカプトフエノール、4-メルカプト安息香酸、p一クロルメチルチオフエノール、3-メルカプトプロパノール等が挙げられる。」(1頁右欄30?最下行)
(18の3b)「連鎖移動剤として4-アミノチオフエノールの代りに4-メルカプト安息香酸、p-クロルチオフエノールまたは3-メルカプトプロパノールを同様な条件で使用してもほとんど同様の結果が得られた。」(2頁右欄28?32行)

18の4 甲第18号証の4
(18の4a)「本発明に於て「連鎖移動剤」、「重合体分子量調節剤」、「重合体連鎖調節剤」、及び「調節剤」と称するは同様な意味を有する。」(3頁左上欄12?14行)
(18の4b)「本発明に有用な他の連鎖移動剤としては次のものがある。:
ナフタリン
アセトン
1,1,3,3-テトラメチル-1-ブタンチオール
1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチル-1-テトラデカンチオール
1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1-ヘキサンチオールジチオ-ジアセテイツクアシドジエチルエステル
3-メルカプト-アセトフエノン
p,p'-ジチオジアニソール
4-プロムベンゼンチオール
ピス-(p-プロムフエニル)ジスルフイド
ピス-(p-クロルフエニル)ジスルフイド
ピス-(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフイド
ピス-(o-ニトロフエニル)ジスルフイド
2-ナフタリンチオール
フエニルジスルフイド
2-メチルプロパンチオール
硫黄
m-トルエンチオール
p-トリルジスルフイド
0,0'-ジチオピス-アニリン
4,4'-ジチオピス-アントラニル酸
2-ベンズイミダゾールチオール
0-メルカプト安息香酸
2,2'-ジチオピス-ベンゾチアゾール
2-ベンゾチアゾールチオール
ベンゾイルジスルフイド
p,p' -ジチオピス-ベンジルアルコール
ベンジルジセレニド
プチルジスルフイド
ジチオ炭酸
2,2'-ジチオレピジン
4,4'-ジチオモルフオリン
5-メルカプト-プロピオン酸
2,2'-ジチオジキニジン
硫化水素
アセチルジスルフイド
1-オクサ-4,5-ジチオシクロヘプタン
キユメン
エリスリツト
キサントゲンジスルフイド」(3頁右上欄8行?右下欄12行)

18の5 甲第18号証の5
(18の5a)「さて我々は、交互共重合触媒の存在化に分子量調節剤として(I)メルカプタン化合物類、(II)スルフイド化合物、(III)臭素又は沃素を必須成分とするポリハロゲン化炭素化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物を加えた場合ただし本発明は、触媒系(A)を用い、かつ分子調節剤(III)を使用する場合を除外する交互共重合触媒系のみによる重合の場合に比べて、生成共重合体の交互性を実質的に阻害することなしにより低い分子量を持つ重合体が得られることを見出し、本発明に到達した。」
(18の5b)「(I)メルカプタン化合物類としてはメルカプト基を持つ化合物一般である。その具体例としては、メタンチオール、エタンチオール、1-プロパンチオール、2-プロパンチオール、1-ブタンチオール、2-ブタンチオール、2-メチル-1-プロパンチオール、2-メチル-2-プロパンチオール、1-ペンタンチオール、2-ペンタンチオール、3-ペンタンチオール、2-メチル-2-ブタンチオール、イソペンタンチオール、1-ヘキサンチオール、tert-ヘキシルメルカプタン、1-ヘプタンチオール、tert-ヘプチルメルカプタン、1-オクタンチオール、tert-オクタンチオール、tert-ノニルメルカプタン、1-デカンチオール、1-ドデカンチオール、tert-ドデカンチオール、1-テトラデカンチオール、tert-テトラデカンチオール、n-ヘキサデカンチオール、tert-ヘキサデカンチオール、n-オクタデカンチオール、エタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、ドデカンジチオール、3-エトキシプロパンチオール、2-エトキシプロパンチオール、アリルメルカプタン、チオ酢酸、チオ安息香酸、チオフエノール、エチルチオグリコラート、ベンジルメルカプタン、p-エトキシチオフエノール、α-トルエンチオール、m-トルエンチオール、o-トルエンチオール、p-トルエンチオール、チオキシレノール、β-ナフタレンチオール、p-tert-プチルチオフエノール、ドデシルベンジルメルカプタン、トルエン-3、4-ジチオール、2-メルカプトベンゾチアゾール等及びこれらの混合物がある。
又、メルカプト基と共にアミノ基、ヒドロキシル基、クロル基、カルボキシル基が入つたもの、例えば4-アミノチオフエノール、4-メルカプトベンジルクロリド、4-メルカプトフエノール、4-メルカプト安息香酸、p-クロルメチルチオフエノール、3-メルカプトプロパノール、アミノアルキルメルカプタン等及びこれらの混合物も用いられる。
(II)スルフイド化合物に関しては、モノスルフイド、ポリスルフイドがあげられるが、特にジスルフイド化合物が好ましい。ジスルフイド化合物はジスルフイド結合を持つ化合物一般であつて、例えばジアルキル、ジアシル、チウラム及びザントゲンジスルフイド等が有る。その具体例としては、ジメチルジスルフイド、ジエチルジスルフイド、ジ-n-プロピルジスルフイド、ジ-iso-プロピルジスルフイド、ジアリルジスルフイド、ジ-n-プチルジスルフイド、ジイソプチルジスルフイド、ジ-sec-プチルジスルフイド、ジ-tert-プチルジスルフイド、ジ-n-ペンチルジスルフイド、ジイソペンチルジスルフイド、ジ-tert-ペンチルジスルフイド、ジ-tert-ヘキシルジスルフイド、ジ-tert-オクチルジスルフイド、ジ-tert-ドデシルジスルフイド、ジオクタデシルジスルフイド、ジ-tert-テトラデシルジスルフイド、ジアセチルジスルフイド、ジフエニルジスルフイド、o-トリルジスルフイド、p-トリルジスルフイド、2,3,5,6-テトラメチルフエニルジスルフイド、p-エトキシフエニルジスルフイド、p-アニシルジスルフイド、p-カルボキシフエニルジスルフイド、ベンジルシスルフイド、ベンゾイルジスルフイド、p-クロロベンジルジスルフイド、2-ナフチルジスルフイド、ベンゾチアゾイルジスルフイド、テトラメチルチウラムジスルフイド、テトラエチルチウラムジスルフイド、ジイソプロピルザントゲンジスルフイド、ジベンゾチアジルジサルフアイド等及びこれらの混合物がある。」(5欄41行?7欄21行)

18の6 甲第18号証の6
(18の6a)「メルカプタン化合物は重合調節剤として用いられ、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、チオフエノール、チオキシレノール等の芳香族メルカプタン或いはベンジルメルカプタンなどが使用できる。」(2頁右上欄18行?左下欄3行)

18の7 甲第18号証の7
(18の7a)「アルフイン触媒による共役ジオレフインまたは共役ジオレフインとビニル芳香族炭化水素の(共)重合において、分子量調節剤として
(A)ジヒドロ芳香族炭化水素から選ばれた少くとも1種の化合物、
(B)不飽和エーテルおよび環状エーテルから選ばれた少なくとも1種の化合物、および
(C)アルリベンゼンおよびその誘導体、ホスフイン化合物、メルカプタン類および不飽和ハロゲン化炭化水素よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物
の混合物を反応系に存在させることを特徴とする共役ジオレフイン系重合体の製造方法。」(特許請求の範囲)
(18の7b)「メルカプタン類とは、一般式
R-SH
(Rはアルキル基、シクロアルキル基、フエニル基、置換フエニル基などの炭化水素残基を示す)
で表される化合物であり、その具体例としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n-プロピルメルカプタン、n-プチルメルカプタン、sec-プチルメルカプタン、t-プチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ペンタデカメルカプタン、t-ペンタデカメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、フエニルメルカプタン(チオフエノール)などが挙げられる。」(3頁右下欄20行?4頁左上欄14行)

18の8 甲第18号証の8
(18の8a)「アルフイン触媒による共役ジオレフインまたは共役ジオレフインとビニル芳香族炭化水素の(共)重合において、分子量調節剤として
(A)ジヒドロ芳香族炭化水素から選ばれた少なくとも1種の化合物、
(B)核置換ハロゲン化芳香族炭化水素から選ばれた少なくとも1種の化合物、および
(C)不飽和エーテル、環状エーテル、アリルベンゼンおよびその誘導体、およびメルカプタン類よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物
の混合物を反応系に存在させることを特徴とする共役ジオレフイン系重合体の製造法。」(特許請求の範囲)
(18の8b)「メルカプタン類としては一般式R-SH(Rはアルキル基、シクロアルキル基、フエニル基、置換フエニル基などの炭化水素残基)が好ましい。具体的にはメチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n-プロピルメルカプタン、n-プチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ペンタデカメルカプタン、t-ペンタデカメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、フエニルメルカプタンなどが挙げられる。これらのうち好ましいものとしては、t-ドデシルメルカプタン、n-ペンタデカメルカプタンが挙げられる。」(3頁左下欄16行?右下欄8行)

19 甲第19号証
(19a)「メルカプトベンツチアゾールやテトラアルキルチウラムジスルファイドなどの硫黄化合物は,ゴムの加硫促進剤などのゴム薬品として広く用いられている.それは,これらチオール及びジスルフィド類が容易にラジカル分解し、ゴム分子の開裂などの反応に寄与するためである.一般に,これら硫黄化合物が比較的高温あるいは光照射下で容易にラジカル開裂することは古くより知られており,ビニルやジエンモノマーの重合開始剤,連鎖移動剤及び停止剤として用いられてきた」(658頁左欄2?10行)

20 甲第20号証
甲第20号証はゴルフボールの芯の初速に関する実験成績証明書であり、以下の事項が記載されている。(甲第20号証に添付された翻訳文にて示す。)
ゴルフボールの芯の初速の比較
ア テスト番号1
(ア)実験
本件特許の第1表のコアNo.1にかかる条件で作成し以下に記載の硫黄化合物1?5含有させるか又は硫黄化合物を含有させないコアについてそれぞれ実験番号1?6として各コアの初速の比較を行った。
硫黄化合物1 ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)
甲4発明
硫黄化合物2 2-(4-モルフオリニルジチオ)ベンゾチアゾール
硫黄化合物3 4,4’-ジチオ-ビスモルフオリン
硫黄化合物4 ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩(ZnPCTP)
本件発明
硫黄化合物5 ペンタクロロチオフェノール(PCTP)本件発明
(イ)実験結果
実験番号1 実験番号4に対し-6.8(m/s)の初速度減
実験番号2 実験番号4に対し-5.4(m/s)の初速度減
実験番号3 実験番号4に対し0(m/s)の初速度変化なし
実験番号5 実験番号4に対し0(m/s)の初速度変化なし
実験番号6 実験番号4に対し-5.4(m/s)の初速度減

イ テスト番号2
(ア)実験
本件特許の第1表のコアNo.1にかかる条件のうち基材ゴム(シス1,4-ポリブタジエン)100重量部に対するジクミルパーオキサイド(共架橋開始剤)の重量部について、「1.5重量部」を「2.5重量部」に変更した以外は同じ条件で作成し、上記硫黄化合物1?5含有させるか又は硫黄化合物を含有させないコアについてそれぞれ実験番号1?6として各コアの初速の比較を行った。
(イ)実験結果
実験番号1 実験番号4に対し0.09(m/s)の初速度増
実験番号2 実験番号4に対し0.23(m/s)の初速度増
実験番号3 失敗
実験番号5 失敗
実験番号6 失敗

21 甲第21号証
(21a)「8.3.2 過酸化物架橋
パーオキサイド架橋ともよばれ,硫黄架橋についで多く採用されています.図8.7に示すように架橋剤の有機過酸化物がゴム中で熱分解し,生じたラジカル(化学的に活性な遊離基)がゴムの炭化水素を脱水素し,ラジカル化されたゴム分子どうしが結合し架橋が形成されます^(6)).」(76頁下から5行?最下行)

22 甲第22号証
甲第22号証には、特許第2669051号(本件特許)の請求項1に係る発明における「ペンタクロロチオフェノールまたはその金属塩」と、米国特許第4650193号明細書(甲第1号証)に記載された「チオールやメルカプタンなどのような硫黄含有物質」について、それぞれの機能(ラジカル捕獲剤,分子量の調整)、分子構造及び作用効果からみた有識者からの検討が記載されている。

なお、以下本審決においては「甲第k号証」及び「甲第m号証のn」をそれぞれ「甲k」及び「甲mのn」として略記する。

第6 当審の判断
1 [無効理由1]についての判断
(1)対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「被覆」、「ツーピースゴルフボール」及び「組成物」は、それぞれ本件発明の「カバー材」、「多層構造ゴルフボール」及び「ゴム組成物」に相当する。
イ 甲1発明の「被覆で成型され、該被覆の真下にあるツーピースゴルフボールの固形の芯球」は、「被覆」が「ツーピースゴルフボール」の「芯球」を直接覆うものであるから、本件発明の「カバー材で直接もしくは中間層を介して被覆した多層構造ゴルフボールの芯球」に相当する。
ウ 甲1発明の「ゴルフボール」は「固形の芯球」と「カバー材」よりなるものであるから、本件発明の「ソリッドゴルフボール」に相当する。
エ 甲1発明の「シス含有量の高いポリブタジエン」は、本件発明の「基材ゴム」に相当する。
オ 甲1発明の「モノ、またはジアクリル酸またはメタクリル酸の金属塩、好ましくは亜鉛塩、最も好ましくはジアクリル酸亜鉛」は、本件発明の「不飽和カルボン酸の金属塩」に相当する。
カ したがって、本件発明と甲1発明とは、
「カバー材で直接もしくは中間層を介して被覆した多層構造ゴルフボールの芯球を、基材ゴムと、不飽和カルボン酸の金属塩とを含有するゴム組成物で形成したソリッドゴルフボール。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:ゴム組成物に関し、本件発明では、「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を含有するのに対し、甲1発明では、「チオールやメルカプタンなどのような硫黄含有物質」を含有している点。

(2)判断
上記相違点1について検討する。
ア 甲1発明の「チオールやメルカプタンなどのような硫黄含有物質」は、基材ゴムと不飽和カルボン酸の金属塩よりなる芯球の組成物の「過酸化物架橋」を「調整」する(上記「第5 1(1d)」,「同(1f)」及び「同(1h)」参照。)ために含有されるものである。
また、甲2及び甲3の記載から、「チオールやメルカプタンなどのような硫黄含有物質」は、「一般式R-SHで表される化合物等の硫黄含有物質」であり、ペンタクロロチオフェノールを含むものであると認められる。
そして、甲21に記載の「過酸化物架橋」とは、ラジカルがゴムの炭化水素を脱水素し、ラジカル化されたゴム分子同士が結合し架橋を形成する反応である。
したがって、甲1発明における「チオールやメルカプタンなどのような硫黄含有物質」は、「過酸化物架橋」を「調整」する(上記「第5 1(1d)」参照。)ために含有されるものであり、「配合成分内の不飽和部分の架橋」を「抑制」する(上記「第5 1(1h)」参照。)反応を生じるもの又は「硫黄架橋が共有結合のフリーラジカル反応に始まる架橋の代わりに、あるいはそれに加えて形成されるか、あるいはその両方である」(上記「第5 1(1h)」参照。)という反応を生じるものと推測されることから、ラジカル捕獲剤として機能するものと解釈することができる。
しかしながら、「ラジカル捕獲剤」というラジカルを捕獲する機能を有する物質は、化学反応を調整もしくは抑制する物質としてごく一般的に使用されているものであり、硫黄含有物質に限定しても、数多くの物質が「ラジカル捕獲剤」として機能するものであることは、本件特許出願前に広く知られていたものである。(請求人も[無効理由2]にて、本件特許出願前に公開された甲4に開示された「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド」がラジカル捕獲剤として機能する硫黄含有物質であると述べている。)
しかしながら、甲2,甲3及び甲21のいずれにも、具体的な「ラジカル捕獲剤」として「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」は例示されていない。
してみると、公知の「チオールやメルカプタンなどのような硫黄含有物質」の中から、「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を選択することが、甲1発明、甲2、甲3及び甲21に記載された事項から当業者が容易に想到することができたものであるかどうかは、本件発明において「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を含有させる技術的意義が、甲1、甲2、甲3及び甲21の何れかに記載若しくは示唆されていたものであるかを検討して判断する必要がある。
ここで、甲1発明において「チオールやメルカプタンなどのような硫黄含有物質」を含有させる技術的意義、すなわち、目的及び作用効果は、上記「第5 1(1e)」及び「同(1h)」からみて、「柔軟かつ比較的非晶質で、比較的低いストレッチモジュールを有する外層」を形成することにより「飛距離、耐久性」を有するゴルフボールを得ることであると認められる。
一方、本件発明において「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を含有させる技術的意義、すなわち、目的及び作用効果は、「コア性能(打撃初速度)が向上する」(本件特許公報5欄29?30行参照。)ことであると認められる。
しかしながら、甲1、甲2、甲3及び甲21のいずれにも、「柔軟かつ比較的非晶質で、比較的低いストレッチモジュールを有する外層」を形成することと、「コア性能(打撃初速度)が向上する」ことについての技術的関連性については記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明において「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を含有させる技術的意義と、甲1発明において「チオールやメルカプタンなどのような硫黄含有物質」を含有させる技術的意義とは、互いに異なるものであると認めざるを得ない。
よって、技術的意義が異なるものである以上、甲1発明における「チオールやメルカプタンなどのような硫黄含有物質」として多数の「チオールやメルカプタンなどのような硫黄含有物質」の中から、「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を選択することは、甲1、甲2、甲3及び甲21に記載された発明に基づいても、当業者が容易に想到することができたものとは認められない。
そして、本件発明は、「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を「ゴム組成物」に含有させるという構成を有することにより、「コア性能(打撃初速度)が向上する」という、本件特許出願前には知られていなかった格別の効果を奏するものである。
イ なお、上記効果に関して、甲20のテスト番号1には、本件発明と本件発明の「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」に替えて「4,4’-ジ-チオ-ビス-モルフィリン」を使用したゴルフボールとが、その打撃初速度において有意な差を生じるものではなかった旨示されているが、甲1発明の「チオールやメルカプタンなどのような硫黄含有物質」として「4,4’-ジ-チオ-ビス-モルフィリン」を使用することについては、甲1には何ら記載も示唆もされておらず、証拠に基づく議論ではない。
ウ 上記のとおりであるから、相違点1に係る「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を含有する点は、甲1発明並びに甲2、甲3及び甲21に記載の技術及び当該技術分野における技術常識を参酌しても、当業者が容易に想到することができたものであるとは認められず、また、相違点1に係る構成を具備する本件発明は、「コア性能(打撃初速度)が向上する」という、甲1発明並びに甲2、甲3及び甲21に記載の技術及び当該技術分野における技術常識からは期待できない格別の効果を奏するものである。

2 [無効理由2]についての判断
(1)対比
本件発明と甲4発明とを対比する。
ア 甲4発明の「カバー」及び「ソリッドコア」は本件発明の「カバー材」及び「芯球」に相当する。
イ 甲4発明の「ソリッドコアをカバーで被覆したツーピースゴルフボール」及び「ソリッドコアとカバーとの間に適当な1ないし複数の中間層を有する多層構造のゴルフボール」は、本件発明の「カバー材で直接もしくは中間層を介して被覆した多層構造ゴルフボール」に相当する。
ウ 甲4発明の「ゴム成分」は、本件発明の「基材ゴム」に相当する。
エ 甲4発明の「α,β-モノエチレン系不飽和カルボン酸の金属塩」は、本件発明の「不飽和カルボン酸の金属塩」に相当する。
オ したがって、本件発明と甲4発明とは、
「カバー材で直接もしくは中間層を介して被覆した多層構造ゴルフボールの芯球を、基材ゴムと、不飽和カルボン酸の金属塩とを含有するゴム組成物で形成したソリッドゴルフボール。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点2:ゴム組成物に関し、本件発明では、「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を含有するのに対し、甲4発明では、「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」を含有している点。

(2)判断
上記相違点2について検討する。
ア 甲4発明における「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」は、甲4の記載事項(上記「第5 4(4c)」及び「同(4d)」参照。)からみて、ポリブタジエンを主成分とするゴム分子主鎖へのグラフト鎖に対する分子量調整剤として含有されるものと認められる。
そして、「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」の分子構造、甲4における「遊離基開始剤」(上記「第5 4(4c)」参照。)及び「グラフト」(上記「第5 4(4c)」及び「同(4d)」参照。)の意味を、甲3(上記「第5 3(3b)」参照。)及び甲12(上記「第5 12(12a)」ないし「同(12c)」参照。)の記載から検討するに、甲4発明における「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」は、「ラジカル捕獲剤」として機能することにより、ポリブタジエンを主成分とするゴム分子主鎖へのグラフト鎖に対する分子量調整剤として働くものであると解釈することができるものである。
してみると、甲4発明の「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」は、α,β-モノエチレン系不飽和カルボン酸の金属塩で構成された、ポリブタジエンを主成分とするゴム分子主鎖へのグラフト鎖に対して、「ラジカル捕獲剤」として機能することにより分子量を調整するものであると捉えることができる。
一方、甲9に記載された「ペプタイザー」の意味を考慮して、甲10及び甲11の記載を解釈すると、甲9ないし甲11に記載された事項から、天然ゴムの加工工程のうち素練り工程において、「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」が天然ゴム分子の分子量を低下させるための「ラジカル捕獲剤」として機能することにより、ペプタイザーとして働くことが、ゴムの加工という技術分野においては、本件特許出願前に周知のものであったと認められる。
したがって、甲4発明の「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」と、上記周知技術である「ペプタイザー」としての「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」は、ゴム分子に対してラジカル捕獲剤として機能することにより、分子量を調節する物質であることを限度に一致する。
そこで、甲4発明における「ラジカル捕獲剤」として機能する「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」に替えて、「ペプタイザー」である「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を採用することが当業者にとって容易に想到できたものであるかを以下に検討する。
イ 上記「第6 1(2)」にても述べたように、「ラジカル捕獲剤」の機能を有する物質は、本件特許出願時において非常に数多く知られており、ゴム分子に配合される「ラジカル捕獲剤」に限定しても、甲10ないし甲11に示された素練り工程における酸素(oxygen),特開昭51-28844号公報,特開昭59-226011号公報,特開昭62-53391号公報,特開昭62-156155号公報,特開平1-54050号公報に記載された各物質等、多くの物質が周知及び公知であったと認められる。(請求人も[無効理由1]において、甲1発明の「チオールやメルカプタンなどのような硫黄含有物質」が「ラジカル化されたゴム分子同士の結合を調整する」{審判請求書第10頁下から2行参照。}ものであると述べていることから、甲1の実施例に示された「粉末の元素イオウ」{上記「第5 1(1g)」参照。}が、ゴム分子に配合されることにより「ラジカル捕獲剤」として機能するものであることを示唆している。)
してみると、甲4発明の「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」に替えて「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を採用することは、甲4発明の「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」が任意の「ラジカル捕獲剤」に置換可能であるとともに、任意の「ラジカル捕獲剤」の中から、積極的に「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を選択して採用するための動機付けがあって、初めて当業者が容易になし得た事項となるものと判断せざるを得ない。
そこで、これらについて以下に検討する。
(ア)まず甲4発明の「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」が、任意の「ラジカル捕獲剤」に置換可能であると、本件特許出願前に当業者が認識できたものであるか否かを検討する。
甲4発明において「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」を「ゴム組成物」に含有させる目的及び効果は、「より優れた反発係数および耐久性を有するゴルフボール」を得ること(上記「第5 4(4c)」参照。)であると認められる。
しかしながら、このような目的及び効果が、「ゴム組成物」に「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」以外の任意の「ラジカル捕獲剤」を含有させても達成されるものであったことを、本件特許出願前に当業者が認識していたと認めるに足る根拠は、甲各号証の何れにも記載も示唆もされていない。
さらに、甲4において上記目的及び効果を達成するために「ゴム組成物」に含有される物質は、「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」のみであり、他の「ラジカル捕獲剤」を含有させることに関する記載も示唆もない。
そして、甲4発明の「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」は、ポリブタジエンを主成分とするゴム分子主鎖を有する「ゴム組成物」において、「α,β-モノエチレン系不飽和カルボン酸の金属塩」という特定の構成を有するグラフト鎖に対して作用することにより、上記効果を生じるものであると推察される。
してみると、甲4発明において「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」を含有させることによる「より優れた反発係数および耐久性を有するゴルフボール」を得るという目的及び効果は、「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」という特定の物質によってもたらされるものと判断せざるを得ない。
よって、本件特許出願前において、当業者が、甲4発明の「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」が任意の「ラジカル捕獲剤」に置換可能であると認識していたとまでは認められない。
(イ)次に、本件特許出願前において、甲4発明における「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」に替えて、任意の「ラジカル捕獲剤」の中から、積極的に「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を選択して採用するための動機付けを、当業者が有していたか否かを以下に検討する。
上記したように、甲4発明における「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」を「ゴム組成物」に含有させる目的及び効果は、「より優れた反発係数および耐久性を有するゴルフボール」を得ることであると認められる。
しかしながら、「ペンタクロロチオフェノール」を「ゴム組成物」に含有させた際に、「より優れた反発係数および耐久性を有するゴルフボール」を得るという作用効果を有するものであるという知見が、本件特許出願前に当業者が認識していたと認めるに足る根拠は、甲各号証の何れにも記載も示唆もされていない。
上記のとおりであるから、本件特許出願前において、甲9ないし甲11の記載を参酌しても、甲4発明の「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」に替えて、任意の「ラジカル捕獲剤」の中から、積極的に「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を選択して採用することに対する動機付けは存在しない。
ウ 上記イ(ア)及び(イ)で示したとおり、本件特許出願前において、甲4発明における「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」に替えて「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を選択し、「ラジカル捕獲剤」として「ゴム組成物」に含有させようとする動機付けは存在しないから、甲4発明の「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」に替えて、ペプタイザーである「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を採用することは、甲9ないし甲11の記載を参酌しても、当業者といえども容易に想到することができたものとはいえない。
そして、甲4発明の「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」に替えてペプタイザーである「ペンタクロロチオフェノール」を採用することが、当業者が容易になし得たものでない以上、甲14及び甲15に記載された、ペプタイザーとしてのペンタクロロチオフェノールの利点に関する知見も、本件発明の進歩性を否定するものとはならない。
エ 本件発明は、「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を「ゴム組成物」に含有させるという構成を有することにより、「コア性能(打撃初速度)が向上する」という、本件特許出願前には知られていなかった格別の効果を奏するものである。
一方、甲4発明においても、「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」を「ゴム組成物」に含有させたことにより、「著しく優れた反発性能、耐久性およびフライトキャリー特性を示す」(上記「第5 4(4g)」参照。)という、本件発明と類似の効果を奏するものであるが、これは、上記イ(ア)に示したように「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」という特定の物質によりもたらされるものであり、本件発明の「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」によりもたらされる効果ではない。
よって、甲4発明の上記効果は、本件発明の進歩性を否定するものではない。
なお、本件発明と甲4発明の効果に関して、甲20には実験成績証明書として、「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」を配合したゴルフボールの芯球と、「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を配合したゴルフボールの芯球を作成し、それぞれについてゴルフボールを作成して打撃初速度を測定した結果が示されている。しかしながら、この甲20については、以下の(ア)ないし(ウ)がいえる。
(ア)甲20は、そもそも本件特許出願後において、本件発明において新たに奏される効果とした事項について実験をしたものであるから、本件発明が奏する効果を否定する根拠とはなり得ない。
(イ)甲20には、何回の試行により初速度を求めたものであるのか、幾つのボールを用いたのか、等の実験の条件について何ら開示されていないため、実験成績証明書として十分な信憑性を有するものとはいえない。
(ウ)テスト番号1において、「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を配合したゴルフボールの芯球を用いたゴルフボールの打撃初速度が、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」を配合したゴルフボールの芯球を用いたゴルフボールの打撃初速度よりも大きくなることが示されている。
上記(ア)ないし(ウ)から、甲20に示される実験結果は、本件発明において「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を含有させることによる効果を否定できるものではなく、本件発明の進歩性を否定するものではない。
オ 上記のとおりであるから、相違点2に係る「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を含有する点は、甲4発明、甲9ないし11に記載の技術、甲14ないし15に記載の技術及び当該技術分野における技術常識を参酌しても、当業者が容易に想到することができたものであるとは認められず、また、相違点2に係る構成を具備する本件発明は、それによって「コア性能(打撃初速度)が向上する」という作用効果を奏するものである。

3 [無効理由3]についての判断
(1)対比
上記「第6 2 (1)」で述べたとおりである。
(2)判断
上記相違点2について検討する。
ア 甲3(上記「第5 3(3c)」参照。)及び甲9(上記「第5 9(9b)」参照。)に示される「連鎖移動剤」,「分子量調整剤」,「重合調整剤」の意味を考慮して、甲16,甲18の1?8及び甲19の記載を解釈すると、以下(ア)ないし(ウ)の事項が、本件特許出願前に周知であったと認められる。
(ア)「チオール類」及び「ジスルフィド類」が、いずれも「分子量調整剤」として使用されること(甲18の1ないし甲18の8)
(イ)「チオール類」と「ジスルフィド類」とが、場合によっては相互に互換可能な「分子量調整剤」であること(甲18の2,甲18の4,甲18の5)
(ウ)「チオール類」のうち、「クロロチオフェノール類」が「分子量調整剤」として使用されること(甲18の1,甲18の3,甲18の5)
そして、甲4発明の「ジペンタメチレンテトラスルフィド及び/又はその誘導体」は「ジスルフィド類」に含まれることは自明であり、かつ、甲4発明における「ジペンタメチレンテトラスルフィド及び/又はその誘導体」が、ポリブタジエンを主成分とするゴム分子主鎖へのグラフト鎖に対する分子量調整剤として含有されるものであることは甲4(上記「第5 4(4c)」及び「同(4d)」参照。)に記載されているとおりである。
してみると、甲4発明における「ジペンタメチレンテトラスルフィド及び/又はその誘導体」は、ポリブタジエンを主成分とするゴム分子主鎖へのグラフト鎖に対する分子量調整剤として働く「ジスルフィド類」の一例を示すもの、との解釈も可能である。
そこで、上記(ア)ないし(ウ)に示した周知事項から、甲4発明において「ジスルフィド類」である「ジペンタメチレンテトラスルフィド及び/又はその誘導体」に替えて、「チオール類」特に「クロロチオフェノール類」とすることが、当業者にとって容易になし得たものであるかどうかを検討する。
甲4には、「ジペンタメチレンテトラスルフィド及び/又はその誘導体」以外の「ジスルフィド類」を含有させることについての記載はない。そして、「ジスルフィド類」及び「チオール類」が一般に分子量調整剤としての機能を有するものであるとしても、任意の「ジスルフィド類」及び「チオール類」が、甲4発明の「ジペンタメチレンテトラスルフィド及び/又はその誘導体」と同様に、「α,β-不飽和モノエチレン系カルボン酸の金属塩」より構成された特定のグラフト鎖の分子量を適切なものに調整できる否かについては、甲4,甲16,甲18の1?8及び甲19のいずれにも記載も示唆もない。
してみると、甲4発明と、甲16,甲18の1?8及び甲19に記載された技術に基づいても、甲4発明における「ジペンタメチレンテトラスルフィド及び/又はその誘導体」を、任意の「ジスルフィド類」又は「チオール類(特にクロロチオフェノール類)」と置換して用いようとする動機付けは希薄なものであると認めざるを得ない。
ここで甲4発明は、上記「第6 2(2)イ(イ)」で示したように、「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」という特定の物質を「ゴム組成物」に含有させることにより、「より優れた反発係数および耐久性を有するゴルフボール」を得るものであると認められる。
一方、上記「第6 2(2)イ(イ)」で示したように、「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を「ゴム組成物」に含有させた際に、「より優れた反発係数および耐久性を有するゴルフボール」を得るという作用効果を有するものであるという知見が、本件特許出願前に当業者が認識していたと認めるに足る根拠は、甲各号証の何れにも記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許出願前において、甲4発明の「ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及び/又はその誘導体」に替えて、任意の「ジスルフィド類」又は「チオール類(特にクロロチオフェノール類)」の中から、積極的に「ペンタクロロチオフェノール」を選択して採用しようとする動機付けが存在したとは認められない。
よって、相違点2に係る「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を含有する点は、甲4発明、甲16,甲18の1?8及び甲19に記載された技術に基づいても、当業者が容易に想到することができたものであるとは認められない。
そして、本件発明は、「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を「ゴム組成物」に含有させるという構成を有することにより、「コア性能(打撃初速度)が向上する」という、本件特許出願前には知られていなかった格別の効果を奏するものであり、この効果は、甲4発明の効果を考慮しても否定されるものではないことは、上記「第6 2(2)エ」に示したとおりである。
イ 上記のとおりであるから、相違点2に係る「ペンタクロロチオフェノール又はその金属塩」を含有する点は、甲4発明並びに甲3、甲9、甲16、甲18の1?8及び甲19に記載の技術及び当該技術分野における技術常識を参酌しても、当業者が容易に想到することができたものであるとは認められず、また、相違点2に係る構成を具備する本件発明は、「コア性能(打撃初速度)が向上する」という、甲4発明並びに甲3、甲9、甲16、甲18の1?8及び甲19に記載の技術及び当該技術分野における技術常識からは期待できない格別の作用効果を奏するものである。

第7 むすび
以上のとおり、本件特許は、請求人が主張する無効理由によっては無効とすることができない。

審判費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2009-08-28 
結審通知日 2009-09-01 
審決日 2009-09-14 
出願番号 特願平1-118460
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 哲  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 上田 正樹
菅野 芳男
登録日 1997-07-04 
登録番号 特許第2669051号(P2669051)
発明の名称 ソリッドゴルフボール  
代理人 石井 良夫  
代理人 松任谷 優子  
代理人 小佐野 愛  
代理人 大野 聖二  
代理人 吉見 京子  
代理人 村田 真一  
代理人 木崎 孝  
代理人 田中 玲子  
代理人 伊藤 奈月  
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