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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1242808
審判番号 不服2010-18660  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-19 
確定日 2011-09-08 
事件の表示 特願2004-304575「デバイス管理装置、デバイス管理方法及びデバイス管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月11日出願公開、特開2006-116744〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年10月19日に出願したものであって、平成21年12月22日付けで拒絶の理由が通知され、平成22年3月5日付けで手続補正がなされ、同年5月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月19日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成22年3月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「ユーザの識別情報を受け付け、デバイスを使用するユーザの認証を行う認証手段と、
デバイスの総使用量を記憶する総使用量記憶手段と、
前記認証手段により認証されたユーザそれぞれに対応する使用量である個別使用量を記憶する個別使用量記憶手段と、
前記個別使用量記憶手段により記憶された前記個別使用量の変更の要求を受け付ける受付手段と
前記受付手段が受け付けた、前記個別使用量の変更の要求に応じて前記個別使用量を変更する変更手段と、
前記個別使用量の合計値を前記総使用量から減算した値である差分値を、何れのユーザにも対応しないパブリック使用量として記憶するパブリック使用量記憶手段と、を備え、
前記総使用量記憶手段により記憶された総使用量の変更が禁止されている
ことを特徴とするデバイス管理装置。」

3.引用例
(1)本願出願前に頒布され、平成21年12月22日付け拒絶の理由に引用された、特開2004-233558号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。(下線は審決において付した。以下同じ。)
ア.「【発明の属する技術分野】
本発明は、画像形成装置に適用され、画像形成された枚数を部門別に管理する枚数管理装置に関するものである。」(段落【0001】)
イ.「【従来の技術】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置では、所定期間内に画像が形成された枚数を、部門や顧客別に把握して管理することが行われている。
管理の目的は、部門や顧客別に画像形成枚数を把握し、制限枚数を超える枚数に対して制限をかけたり、枚数に応じて課金したりすることである。
画像形成装置において、制限枚数を設定するには、所定桁数の2進数を記憶できるメモリが用いられる。この場合、桁数が16桁あれば、0から65,535までの枚数を設定できる(2^(16)=65,536)。」 (段落【0002】)
ウ.「【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下に述べる本発明の実施形態では、電子写真方式の複写機における枚数管理装置についてのものであるが、本発明はこれに限らず、プリンタ、ファクシミリ等の各種画像形成装置にも適用できる。
図1は、複写機の断面図である。」(段落【0010】)
エ.「複写機1は、ロール紙またはカット紙を収容するための用紙収容部2、用紙を画像形成部5へと給紙するための搬送機構3、原稿を読み取るための光学系、光学系から与えられる光に基づいて画像を形成しその画像を用紙に転写するための画像形成部5、および用紙に転写された画像を定着するための定着装置6、原稿テーブル11などを備えている。
原稿テーブル11は、可動式となっていて、矢印A方向に動かせば、原稿搬送板12に接続されるようになっている。」(段落【0011】)
オ.「搬送機構3は、複写する用紙の先端を揃えるためのレジストローラ対23a,23b、用紙を画像形成部5に導くための転写前ローラ対24a,24bなどを含んでいる。
画像形成部5には、感光体ドラム7、感光体ドラム7を帯電させるためのチャージャ8、感光体ドラム7に静電潜像を形成するための露光部4、感光体ドラム7に形成された静電潜像をトナー像に現像するための現像装置9、および残留トナーを清掃するためのクリーナ10が含まれている。この画像形成部5による複写動作は、後述する複写機中央処理部により、制御管理されている。」(段落【0012】)
カ.「定着装置6は、用紙を加熱するための定着ローラ64、定着ローラ64に圧接する圧ローラ65、定着後の用紙を排出する排出ローラ67などを有している。
また、前記複写機1は、操作部及び表示部(図2参照)を備えている。
操作部においては、複写するのに先立って部門コードを数値入力することができるようになっている。ユーザは、原稿を原稿テーブル11にセットし、この部門コードを入力してから、コピーキーを押すことによって、複写動作が行える。また、操作部においては、後述するように、複写制限枚数も数値入力によって設定することができるようになっている。」(段落【0013】)
キ.「表示部においては、部門に対応した複写枚数が表示されるようになっている。当該複写枚数は、前回集計時以後にカウントされた累積枚数が表示される。また、表示部においては、後述するように、複写枚数が設定値を越えた場合に、ユーザに注意を喚起すべく、複写枚数が複写制限枚数を越えたことを知らせるための報知がなされる。この報知は、「複写枚数が複写制限枚数を越えています」というメッセージ表示でもよく、複写枚数の点滅表示や色違い表示などでもよい。」 (段落【0014】)
ク.「図2は、複写機1における本発明の枚数管理装置の機能を示すブロック図である。
枚数管理装置は、画像形成部5の複写動作のたびに一枚複写したことを表す複写信号を生成する複写機中央処理部21と、前記複写信号及び複写動作に関連して操作部27において入力された部門コード信号を受けて、前回集計後の部門ごとの累積複写枚数をカウントするカウント部22と、カウント部22によって得られた4バイトの複写枚数データ及び下に述べる2バイトの複写制限枚数データを部門別に蓄積するハードディスクなどの不揮発性の記憶装置23と、操作部27を通して入力される複写制限枚数を2バイトのサイズのデータに丸めて変換する入力処理部24と、記憶装置23に蓄積されている複写枚数と前記複写制限枚数とを比較してその結果を出力する比較部25と、比較結果に基づく処理をして表示する表示部26と、複写制限枚数などを入力する操作部27とを備えている。」(段落【0015】)
ケ.「これらのカウント部22、入力処理部24、比較部25等の機能の全部又は一部は、CD-ROMやハードディスクなど所定の媒体に記録されたプログラムを、複写機1のコンピュータが実行することにより実現される。
前記枚数管理装置の動作は、次のとおりである。画像形成部5において複写が行われるたびに、複写機中央処理部21は、複写信号を生成し、部門コード信号とともに、カウント部22に供給する。カウント部22は、前回集計後の当該部門の累積複写枚数をカウントし、記憶装置23に記憶する。」(段落【0016】)
コ.「このように、ユーザが入力したい任意の複写制限枚数を入力すると、入力処理部24がその数値に応じて自動的に丸め処理をして、記憶装置23に保存することができる。ユーザは、予め丸めた数値を把握しておく必要がないという利点がある。
最後に、比較部25における比較処理を説明する。この比較処理は、複写処理などの間に、割り込みで実行される。」(段落【0025】)
サ.「図7は、比較処理を説明するためのフローチャートである。比較部25は、カウント部22でカウントされ記憶装置23に格納されているカウント枚数と、入力処理部24を通して入力され記憶装置23に格納されている複写制限枚数とを比較する(ステップU1)。比較の結果、カウント枚数が複写制限枚数を越えていなければ、そのままこの処理から出るが、カウント枚数が複写制限枚数を越えていれば、複写動作の禁止の措置が行われ、その旨の表示がなされる(ステップU2)。」(段落【0026】)
シ.「したがって、当該部門のユーザは、コピーした累積枚数が複写制限枚数を越えたことを知ることができる。
なお、カウント枚数が複写制限枚数を越えていれば、複写動作の禁止措置をとらず、単にカウント枚数が複写制限枚数を越えていることをユーザに知らせるだけでもよい
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではない。例えば、カウント部22によってカウントされた部門別の複写枚数を全部門について合計する演算部をさらに備え、比較部25がその合計枚数と、本発明の、2バイトのメモリを用いてその2桁を指数部に、残り14桁を仮数部に割り当てて設定された基準枚数とを比較することによって、複写機1のメンテナンスに活用することもできる。この合計値は、複写機1の全複写枚数を表すので、この枚数に基づいてトナー量、感光体ドラム寿命などが推定できるので、表示部26を用いてメンテナンスの時期を知らせることができる。」(段落【0027】)
ス.「また、複写の種類ごとに枚数をカウントしてそれぞれ基準枚数と比較することもできる。「複写の種類」とは、例えば、カラーコピーか白黒コピーか、コピーかファクシミリか、パンチかステープルかといった複写動作の内容をいう。カラー/白黒、コピー/ファクシミリ、パンチ/ステープルなどごとに枚数をカウントし、例えば、パンチカス制限枚数に基づいて、パンチカスの掃除時期の表示などに活用することができる。またステープル回数に基づいてステープルの補充に活用できる。またカラー用、白黒用のトナー量、カラー用感光体ドラム寿命などが別々に推定できるので、それぞれメンテナンスの時期を知らせるのに活用することができる。」(段落【0028】)

上記記載ア.?ス.及び図面の記載からみて、引用例1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「所定期間内に画像が形成された枚数を、部門や顧客別に画像形成枚数を把握し、制限枚数を超える枚数に対して制限をかけたり、枚数に応じて課金したりすることを目的として管理することが行われている、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に適用され、画像形成された枚数を部門別に管理する枚数管理装置であって、
複写機1は、ロール紙またはカット紙を収容するための用紙収容部2、用紙を画像形成部5へと給紙するための搬送機構3、原稿を読み取るための光学系、光学系から与えられる光に基づいて画像を形成しその画像を用紙に転写するための画像形成部5、および用紙に転写された画像を定着するための定着装置6、原稿テーブル11などを備えており、
枚数管理装置は、画像形成部5の複写動作のたびに一枚複写したことを表す複写信号を生成する複写機中央処理部21と、前記複写信号及び複写動作に関連して操作部27において入力された部門コード信号を受けて、前回集計後の部門ごとの累積複写枚数をカウントするカウント部22と、カウント部22によって得られた4バイトの複写枚数データ及び下に述べる2バイトの複写制限枚数データを部門別に蓄積するハードディスクなどの不揮発性の記憶装置23と、操作部27を通して入力される複写制限枚数を2バイトのサイズのデータに丸めて変換する入力処理部24と、記憶装置23に蓄積されている複写枚数と前記複写制限枚数とを比較してその結果を出力する比較部25と、比較結果に基づく処理をして表示する表示部26と、複写制限枚数などを入力する操作部27とを備えており、
画像形成部5において複写が行われるたびに、複写機中央処理部21は、複写信号を生成し、部門コード信号とともに、カウント部22に供給し、カウント部22は、前回集計後の当該部門の累積複写枚数をカウントし、記憶装置23に記憶し、
カウント部22によってカウントされた部門別の複写枚数を全部門について合計する演算部をさらに備え、比較部25がその合計枚数と、2バイトのメモリを用いてその2桁を指数部に、残り14桁を仮数部に割り当てて設定された基準枚数とを比較することによって、複写機1のメンテナンスに活用することもでき、この合計値は、複写機1の全複写枚数を表すので、この枚数に基づいてトナー量、感光体ドラム寿命などが推定できるので、表示部26を用いてメンテナンスの時期を知らせることができる、
枚数管理装置。」(以下「引用発明1」という。)

(2)本願出願前に頒布され、平成21年12月22日付け拒絶の理由に引用された、特開平4-29161号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。(なお丸数字は適宜括弧付き数字に審決にて置き換えた。)
ア.「第1図は本発明に係る記録装置管理システムの1実施例構成を示す図、第2図はホストコンピュータと中継装置、手入力ターミナルの間、中継装置と管理装置との間のデータ転送の概要を説明するための図、第3図は管理データの構成例を示す図である。」(第3頁左上欄18行?右上欄3行)
イ.「第1図において、記録装置4-1?4-Nは、複写機やプリンタ等の用紙に文書や画像、写真等を複写/印刷出力する例えば複写機であり、管理装置3-1?3-Nは、先に説明したようなカード等の記録媒体の部門情報等の登録No.(登録コード)を読み取って記録装置4-1?4-Nを使用可能にし、その使用情報を登録No.毎に分類集計して記憶するものである。使用情報としては、例えば記録装置が複写機の場合には、(1)モノクロ、単色カラー、フルカラー、モノクロトレーシングペーパー、印刷、印刷単色カラー、プレーンカラーのいずれか等、コピーモードの種類、(2)用紙サイズ、(3)両面/多重、印刷機製版、縮小使用コピー、拡大使用コピー、編集・合成使用コピー等、オプション機能に関する使用量を計数したデータがあり、さらには、ビリングメータ値、トナー補給回数やアラーム発生回数、ジャム発生回数、日毎の使用開始時間、使用終了時間、動作回数、1ジョブ毎の使用内容等がある。これらは、勿論管理目的に応じてどのような情報を必要とするかにより選択されるが、管理装置3-1?3-Nのデータ記憶容量によっても制限される。
中継装置2は、通信機能やデータ収集、演算機能、時計機能を備え、ホストコンピュータ1に接続され、配下の複数の管理装置3-1?3-Nとの間で管理データの中継を行うものである。この中継装置2では、予め設定された時間に、或いは指示された時にポーリング信号等を発行して通信回線を接続し順次それぞれの管理装置3-1?3-Nから集計データを収集し保持してホストコンピュータ1に転送する。管理装置3-1?3-Nは、それぞれが端末No.を有し、また、それぞれの管理装置3-1?3-Nで先に説明したように登録No.毎に集計データを記憶しているため、中継装置2では、各端末No.別、さらに登録No.別の収集データがある。しかし、中継装置2としては、通常、各管理装置3-1?3-N毎に集計した端末No.単位のデータと、各端末No.のデータについて同じ登録No.のデータを集計した登録No.単位のデータを保持すればよい。すなわち、このシステムでは、1つの記録媒体でそれぞれの管理装置3-1?3-Nにアクセスでき、しかも、各管理装置3-1?3-Nのデータが中継装置2で登録No.別に集計される。」(第3頁右上欄4行?右下欄7行)
ウ.「また、キー入力部19と修正入力処理部20は、月次データ処理部22で修正処理する必要のあるデータを入力し処理するものであり、例えば管理装置では、機械的、自動的に使用にしたがって管理データが修正されるので、メンテナンスやトラブル、特別の使用等の場合に、それを帳簿等に記録しておいて月末集計の際に修正しようとするのに利用される。」(第5頁右下欄13行?20行)
エ.「コピー枚数修正機能は、集計したコピー枚数を修正(コピー枚数ファイルの枚数データを変更)する機能であり、この機能の処理の流れを示したのが第8図(b)である。まず、メッセージ「カードNo.を入力して下さい」を表示してその入力を促し、キーボードによるカードNo.の入力を行う。該当するカードNo.がコピー枚数ファイルにない場合には再度メッセージを表示する。次に、第6図(c)に示すコピー枚数修正画面でコピー枚数ファイルのデータを表示する。そしてコピー枚数の修正を行う。ここでは、逐次繰り返してコピー枚数の修正を行うサイズ名の番号をキー入力することによってカーソルをその位置に移動させ、キーボードよりコピー枚数の修正(上書き)を行う。その後、登録、メニューのいずれかにファンクションキーにより分岐する。登録では、入力したコピー枚数をコピー枚数入力ファイルに登録し、メニューでは、第6図(a)に示すメニュー画面に戻る。
コピー枚数削除(カードNo.別)機能は、集計したコピー枚数をカードNo.毎に削除(コピー枚数ファイルより該当カードNo.のデータを削除)する機能であり、この機能の処理を示したのが第8図(c)である。まず、メッセージ「パスワードを入力して下さい」を表示してその入力を促し、キーボードによるパスワードの入力を行う。入力されたパスワードをチェックして正しくない場合には処理を次に進めない。続けてメッセージ「カードNo.を入力して下さい」を表示してその入力を促し、キーボードによるカードNo.の入力を行う。該当するカードNo.がコピー枚数ファイルにない場合には再度メッセージを表示する。次にメッセージ「コピー枚数をクリアします。よろしいですか?(Y/N)」を表示して応答を促し、「Y」押下時にはコピー枚数ファイルの該当カードNo.のデータを削除する。「N」押下時にはカードNo.入力に戻る。上記の処理をカードNo.毎に繰り返し行う。メニューでは、第6図(a)に示すメニュー画面に戻る。」(第6頁右下欄1行?第7頁左上欄17行)

上記記載ア.?エ.及び図面の記載からみて、引用例2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「複写機やプリンタ等の用紙に文書や画像、写真等を複写/印刷出力する例えば複写機である記録装置4-1?4-N、カード等の記録媒体の部門情報等の登録No.(登録コード)を読み取って記録装置4-1?4-Nを使用可能にし、その使用情報を登録No.毎に分類集計して記憶するものである管理装置3-1?3-N、通信機能やデータ収集、演算機能、時計機能を備え、ホストコンピュータ1に接続され、配下の複数の管理装置3-1?3-Nとの間で管理データの中継を行うものである中継装置2を備える記録装置管理システムであって、
キー入力部19と修正入力処理部20は、月次データ処理部22で修正処理する必要のあるデータを入力し処理するものであって、月末集計の際に修正しようとするのに利用されるものであり、
コピー枚数修正機能は、集計したコピー枚数を修正(コピー枚数ファイルの枚数データを変更)する機能であり、この機能の処理は、まず、メッセージ「カードNo.を入力して下さい」を表示してその入力を促し、キーボードによるカードNo.の入力を行い、コピー枚数修正画面でコピー枚数ファイルのデータを表示してコピー枚数の修正を行うものであり、
コピー枚数削除(カードNo.別)機能は、集計したコピー枚数をカードNo.毎に削除(コピー枚数ファイルより該当カードNo.のデータを削除)する機能であり、この機能の処理は、まず、メッセージ「パスワードを入力して下さい」を表示してその入力を促し、キーボードによるパスワードの入力を行い、入力されたパスワードをチェックして正しくない場合には処理を次に進めないものであって、続けてメッセージ「カードNo.を入力して下さい」を表示してその入力を促し、キーボードによるカードNo.の入力を行い、該当するカードNo.がコピー枚数ファイルにない場合には再度メッセージを表示し、次にメッセージ「コピー枚数をクリアします。よろしいですか?(Y/N)」を表示して応答を促し、「Y」押下時にはコピー枚数ファイルの該当カードNo.のデータを削除する、
記録装置管理システム。」(以下「引用発明2」という。)

4.対比・判断
本願発明と引用発明1とを対比する。
ア.引用発明1の「複写機1」が本願発明の「デバイス」に、以下同様に「枚数管理装置」が「デバイス管理装置」に、「部門」が「ユーザ」に、「部門コード信号」が「識別情報」に、「『カウントされた部門別の複写枚数を全部門について合計』した『合計枚数』」が「デバイスの総使用量」に、「部門ごとの累積複写枚数」が「ユーザそれぞれに対応する使用量である個別使用量」に、「カウント部22によって得られた4バイトの複写枚数データ及び下に述べる2バイトの複写制限枚数データを部門別に蓄積するハードディスクなどの不揮発性の記憶装置23」が「個別使用量を記憶する個別使用量記憶手段」に、それぞれ相当している。
イ.引用発明1の「デバイス(複写機1)」が備える「デバイス管理装置(枚数管理装置)」は、「所定期間内に画像が形成された枚数を、部門や顧客別に画像形成枚数を把握し、制限枚数を超える枚数に対して制限をかけたり、枚数に応じて課金したりすることを目的として管理することが行われている、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に適用され、画像形成された枚数を部門別に管理する」ものであって、「画像形成部5の複写動作のたびに一枚複写したことを表す複写信号を生成する複写機中央処理部21と、前記複写信号及び複写動作に関連して操作部27において入力された部門コード信号を受けて、前回集計後の部門ごとの累積複写枚数をカウントするカウント部22と、カウント部22によって得られた4バイトの複写枚数データ及び下に述べる2バイトの複写制限枚数データを部門別に蓄積するハードディスクなどの不揮発性の記憶装置23と、操作部27を通して入力される複写制限枚数を2バイトのサイズのデータに丸めて変換する入力処理部24と、記憶装置23に蓄積されている複写枚数と前記複写制限枚数とを比較してその結果を出力する比較部25と、比較結果に基づく処理をして表示する表示部26と、複写制限枚数などを入力する操作部27とを備えて」いるから、引用発明1の「デバイス管理装置(枚数管理装置)」は、「ユーザ(部門)の識別情報(部門コード信号)を受け付け、デバイス(複写機1)を使用するユーザ(部門)の認証を行う認証手段」を有することは当業者に明らかである。
ウ.引用発明1の「デバイスの総使用量(『カウントされた部門別の複写枚数を全部門について合計』した『合計枚数』)」は、「比較部25がその合計枚数と、2バイトのメモリを用いてその2桁を指数部に、残り14桁を仮数部に割り当てて設定された基準枚数とを比較することによって、複写機1のメンテナンスに活用することもでき」るものであるから、引用発明1の「デバイス管理装置(枚数管理装置)」が、「デバイスの総使用量(『カウントされた部門別の複写枚数を全部門について合計』した『合計枚数』)を記憶する総使用量記憶手段」を有することは、当業者に明らかである。

上記ア.?ウ.から、本願発明は、引用発明1の「デバイス管理装置(枚数管理装置)」と、以下の点で一致している。
「ユーザの識別情報を受け付け、デバイスを使用するユーザの認証を行う認証手段と、
デバイスの総使用量を記憶する総使用量記憶手段と、
前記認証手段により認証されたユーザそれぞれに対応する使用量である個別使用量を記憶する個別使用量記憶手段と、
を備えたデバイス管理装置。」

そして、以下の点で相違している。
(相違点1)本願発明が、「前記個別使用量記憶手段により記憶された前記個別使用量の変更の要求を受け付ける受付手段」及び「前記受付手段が受け付けた、前記個別使用量の変更の要求に応じて前記個別使用量を変更する変更手段」を備えるのに対し、引用発明1は、「受付手段」及び「変更手段」を備えているのか詳らかでない点。
(相違点2)本願発明が、「前記総使用量記憶手段により記憶された総使用量の変更が禁止されている」のに対し、引用発明1では、総使用量の変更が禁止されているか否かが詳らかでない点。
(相違点3)本願発明が、「前記個別使用量の合計値を前記総使用量から減算した値である差分値を、何れのユーザにも対応しないパブリック使用量として記憶するパブリック使用量記憶手段」を備えるのに対し、引用発明1は、「パブリック使用量記憶手段」を備えていない点。

上記相違点1及び上記相違点2について検討する。
引用例2には、
「複写機やプリンタ等の用紙に文書や画像、写真等を複写/印刷出力する例えば複写機である記録装置4-1?4-N、カード等の記録媒体の部門情報等の登録No.(登録コード)を読み取って記録装置4-1?4-Nを使用可能にし、その使用情報を登録No.毎に分類集計して記憶するものである管理装置3-1?3-N、通信機能やデータ収集、演算機能、時計機能を備え、ホストコンピュータ1に接続され、配下の複数の管理装置3-1?3-Nとの間で管理データの中継を行うものである中継装置2を備える記録装置管理システムであって、
キー入力部19と修正入力処理部20は、月次データ処理部22で修正処理する必要のあるデータを入力し処理するものであって、月末集計の際に修正しようとするのに利用されるものであり、
コピー枚数修正機能は、集計したコピー枚数を修正(コピー枚数ファイルの枚数データを変更)する機能であり、この機能の処理は、まず、メッセージ「カードNo.を入力して下さい」を表示してその入力を促し、キーボードによるカードNo.の入力を行い、コピー枚数修正画面でコピー枚数ファイルのデータを表示してコピー枚数の修正を行うものであり、
コピー枚数削除(カードNo.別)機能は、集計したコピー枚数をカードNo.毎に削除(コピー枚数ファイルより該当カードNo.のデータを削除)する機能であり、この機能の処理は、まず、メッセージ「パスワードを入力して下さい」を表示してその入力を促し、キーボードによるパスワードの入力を行い、入力されたパスワードをチェックして正しくない場合には処理を次に進めないものであって、続けてメッセージ「カードNo.を入力して下さい」を表示してその入力を促し、キーボードによるカードNo.の入力を行い、該当するカードNo.がコピー枚数ファイルにない場合には再度メッセージを表示し、次にメッセージ「コピー枚数をクリアします。よろしいですか?(Y/N)」を表示して応答を促し、「Y」押下時にはコピー枚数ファイルの該当カードNo.のデータを削除する、
記録装置管理システム。」
が引用発明2として記載されている。(上記3.(2)参照。)
引用発明1は、「カウント部22によって得られた4バイトの複写枚数データ及び下に述べる2バイトの複写制限枚数データを部門別に蓄積するハードディスクなどの不揮発性の記憶装置23」を有するものである。
ここで、月末集計の際のように部門別の複写枚数データを修正処理する必要がある場合に、カード等の記録媒体の部門情報等の登録No.に基づいて部門毎のコピー枚数の変更要求を受け付けて、部門毎のコピー枚数を変更するようになすことは、引用発明2に基づき、当業者が容易になし得たことである。
そして、引用発明1は、「デバイスの総使用量(『カウントされた部門別の複写枚数を全部門について合計』した『合計枚数』)」に基づいて、「トナー量、感光体ドラム寿命など」を「推定できる」ことにより、「表示部26を用いてメンテナンスの時期を知らせることができる」ものであるから、そのようなメンテナンスのために記憶されているデバイスの総使用量の変更を行えるようにすると、「トナー量、感光体ドラム寿命など」の「推定」に困難をきたし、結果としてメンテナンスに悪影響があることは当業者に自明であって、そのような場合にデバイスの総使用量の変更を禁止することは、当業者が当然に採用し得る程度の事項にすぎない。
以上のとおり、上記相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明1及び引用発明2から当業者が容易になし得る程度のことである。

5.本願発明の特徴的構成
上記相違点1及び上記相違点2は、当業者が容易になし得る程度のことであるから、本願発明の進歩性判断を行うにあたり、最も重要な相違点は、上記相違点3である。
すなわち、本願発明の特徴的構成は、「前記個別使用量の合計値を前記総使用量から減算した値である差分値を、何れのユーザにも対応しないパブリック使用量として記憶するパブリック使用量記憶手段」を備える点である。

6.原査定における拒絶理由
平成21年12月22日付けで通知した原審における拒絶理由1の内容は以下のとおりである。
「理由1.
この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


発明の詳細な説明には、ユーザID毎の印刷枚数の累積をユーザID毎の使用量として記憶するとともに、プリンタの印刷枚数を総使用量として記憶しておき、印刷処理が完了した場合には、印刷処理を要求したユーザIDの使用量に印刷処理による印刷枚数を加算してユーザID毎の使用量を記憶し、かつ、デバイスの総使用量にも印刷枚数を加算して総使用量を記憶するプリンタにおいて、ユーザIDの削除や使用量のリストアを行う際、総使用量と全ユーザIDの使用量の合計との差分をパブリックの使用量として記憶することが記載されている。
ここで、総使用量はユーザID毎の使用量とは別個に累積演算されて記憶されているから、ユーザID毎の使用量を変更しても総使用量は変更されないと考えられる。また、ユーザID毎の使用量と総使用量とが何らかの関連を有していることに関する記載や示唆もない。
そうすると、このパブリックの使用量がどのように用いられるのか、なぜパブリックの使用量を記憶するのかが不明であるから、総使用量と、全ユーザIDの使用量の合計との差分をパブリックの使用量として記憶することの技術上の意義が不明である。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、請求項1?8に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものではない。」

7.記載要件についての判断
上記5.に記載したように、本願発明の特徴的構成は、「前記個別使用量の合計値を前記総使用量から減算した値である差分値を、何れのユーザにも対応しないパブリック使用量として記憶するパブリック使用量記憶手段」を備える点であって、発明の詳細な説明は、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されなければならない。
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明の記載について「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること」でなければならないと規定している。ここでいう「経済産業省令で定めるところ」とは、「特許法第三十6条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」(特許法施行規則第24条の2)との規則である。
上記規定によれば、発明の個々の構成について、その技術的意義や具体的な工程が当業者に明らかにされる必要があることはいうまでもない。もっとも、発明の構成によっては、技術的意義や具体的な工程を明示しなくとも、当業者にとって自明な場合があり、そのような場合にまで、技術的意義や具体的な工程が発明の詳細な説明に明記されていないことをもって、特許法第36条第4項第1号違反とすることは不適切であろう。しかし、本願発明の特徴的構成は、進歩性判断の際においては、最も慎重に想到容易性が検討される構成である。そして、構成の想到容易性を検討するに当たっては、同構成を採用した公知技術の有無だけでなく、同構成採用に伴う作用効果が評価され、最終的に同構成採用の想到容易性について判断されるのであるから、発明の特徴的構成についてはその技術的意義や具体的な工程を明示する必要があるというべきであり、それが皆無又は不十分な明細書に係る出願は、特許を受けるに値しないというべきである。
さて、本願発明の特徴的構成である、「前記個別使用量の合計値を前記総使用量から減算した値である差分値を、何れのユーザにも対応しないパブリック使用量として記憶するパブリック使用量記憶手段」を備える点については、本願の出願当初の明細書の、段落【0014】,【0015】,【0024】?【0029】,【0035】に記載がなされている。
しかしながら、「パブリック使用量記憶手段」に記憶された「何れのユーザにも対応しないパブリック使用量」を具体的に何にどのように本願の「デバイス管理装置、デバイス管理方法及びデバイス管理プログラム」において用いるかについては、出願当初の明細書又は図面にも、平成22年3月5日付け手続補正書で補正された明細書にも記載されておらず、また、「前記個別使用量の合計値を前記総使用量から減算した値である差分値を、何れのユーザにも対応しないパブリック使用量として記憶するパブリック使用量記憶手段」を備えたことに伴う作用効果についても、出願当初の明細書又は図面には記載されておらず、また、平成22年3月5日付け手続補正書で補正された明細書にも記載されていない。
加えて、本願の出願当初の明細書においては、本願の特許請求の範囲に記載された発明の【産業上の利用可能性】についてはその段落【0036】に
「本発明に係るデバイス管理装置は、として有用である。」
と記載されているのみであって、一体何に有用であるのかは記載されておらず、平成22年3月5日付け手続補正書において明細書の段落【0036】に記載の【産業上の利用可能性】を
「本発明は、使用者毎にデバイスの使用量を集計するデバイス管理装置、デバイス管理方法及びデバイス管理プログラムに関し、特に、当該デバイスの総使用量を正確に集計する技術に関する。」
と補正したにとどまり、「前記個別使用量の合計値を前記総使用量から減算した値である差分値を、何れのユーザにも対応しないパブリック使用量として記憶するパブリック使用量記憶手段」を備えたことに伴う産業上の利用可能性については記載がなされていない。
なお、本願の出願当初の明細書の段落【0029】には、
「更に、この後、管理端末101にバックアップした使用量をプリンタ104の使用量記憶部206にリストアすると、再び「User1」の使用量が100枚、「User2」の使用量が250枚、パブリックの使用量が0枚となる。
一方、使用量記憶部206が記憶する総使用量は当該リストアによっては書き換えられることがなく400枚のままなので、パブリックの使用量を50枚としてこれらを整合させる。」
と記載されているとおり、「パブリックの使用量」により、「総使用量」と「個別使用量の合計値」とを整合させることが記載されているが、そもそも、「パブリックの使用量」自体が、「前記個別使用量の合計値を前記総使用量から減算した値である差分値」と定義されているものであるから、「パブリックの使用量」を用いることにより、「総使用量」が「個別使用量の合計値」と「パブリックの使用量」の和として得られ、「総使用量」と「個別使用量の合計値」とが整合することは当然の事項であって、かかる記載に意義を認めることはできない。また、「パブリックの使用量」それ自体にも、「前記個別使用量の合計値を前記総使用量から減算した値である差分値」であると本願発明における定義以上の意味を見い出すことができない。

上述のとおり、本願の明細書及び図面には、「パブリック使用量記憶手段」に記憶された「何れのユーザにも対応しないパブリック使用量」を具体的に何にどのように本願の「デバイス管理装置、デバイス管理方法及びデバイス管理プログラム」において用いるかについては記載されていないから、以下、「パブリック使用量記憶手段」に記憶された「何れのユーザにも対応しないパブリック使用量」を具体的に何にどのように本願の「デバイス管理装置、デバイス管理方法及びデバイス管理プログラム」において用いるかが、当業者にとって自明であるといえるかどうかについて検討する。

請求人は本願発明の効果として、平成22年3月5日付け意見書において、
「(3)理由1について
本願発明は、プリンタの総使用量(の総和)とユーザ毎の使用量の総和との食い違いをなくすることができるという効果を有しています。
本願明細書に添付の図1に示すプリンタシステムでは、保守に関する管理と課金に関する管理とが行なわれます。
保守に関する管理においては、出願当初明細書の第0003段落に記載しましたように、「MFPの総使用量が一定量に達する毎にトナー等の消耗品を交換するといった保守が必要」となりますので、プリンタ毎の総使用量を監視して管理を行なうこととなります。
課金に関する管理においては、出願当初明細書の第0002段落に記載しましたように、「従業者単位や部署単位で集計、課金がなされる」ため、どのプリンタが用いられたかに関わらず、ユーザID毎の使用量を監視して管理を行なうこととなります。
一方で、保守に関する管理を行なう管理者と課金に関する管理を行なう管理者とが異なることは一般的なことです。そして、それぞれの管理者が把握する使用量の値に食い違いが発生することは大きな問題となるため、避けなければなりません。
具体的には、保守に関する管理を行なう管理者が把握する全てのプリンタの総使用量の総和と、課金に関する管理を行なう管理者が把握する全てのユーザIDの使用量の総和との間に食い違いが発生することは避けなければなりません。
本願発明は、あるユーザの使用枚数が変更された場合に、全てのユーザの使用枚数の総和とデバイスの総使用枚数との差分を算出し、その差分をパブリックユーザの使用枚数として記憶することで、全てのプリンタの総使用量の総和と全てのユーザ(パブリックユーザを含む)IDの使用量の総和とを常に一致させることが可能となります。これによって、前述の問題を解決することができますので、審査官殿が指摘されました技術的な意義は明瞭です。」
と主張し、また、平成22年8月19日付け審判請求書において、本願発明が特許されるべき理由として、パブリックの使用量をどのように用いるかを含めて
「(3)本願発明が特許されるべき理由
(3-1)理由1について
審査官は、上記の理由1において、保守管理者はプリンタの使用開始時を基準として保守管理を行うのが一般的であるのに対し、課金管理者は週、月、年等を単位として課金管理を行うことが一般的であるから、保守管理者と課金管理者とが把握する総使用量を一致させることの必要性がないと指摘されました。
しかしながら、仮に、審査官が指摘されましたように、保守管理者がプリンタの使用開始時を基準として保守管理を行い、課金管理者が週、月、年等を単位として課金管理を行うとしても、以下の理由から、保守管理者と課金管理者とが把握する総使用量を一致させる必要があります。
すなわち、課金管理者が週、月、年等を単位として課金管理を行う場合に、その単位期間(例えば、1年)ごとにユーザの使用量を初期化する(0に戻す)とは限りません。例えば、プリンタ使用開始時からユーザの使用量を初期化せずに、その時点の使用量と先の単位期間終了時(例えば、1年前)の使用量との差分を計算することで、単位期間ごとの課金管理を行う方法もあります。そのような状況においては、課金管理者もプリンタの使用開始時からの総使用量に基づいて課金管理を行うこととなります。従って、仮に、保守管理者がプリンタの使用開始時を基準として保守管理を行い、課金管理者が週、月、年等を単位として課金管理を行った場合であっても、つまり保守管理者と課金管理者との管理対象の期間が違う場合であっても、保守管理者と課金管理者とが把握する総使用量を一致させる必要があることは明瞭です。
(3-2)理由2について
審査官は、上記の理由2において、保守管理はプリンタ毎の総使用量に基づいて行われるのが一般的であるのに対し、課金管理は対象となるすべてのプリンタから集めたユーザID毎の使用量に基づいて行われるから、そもそも両者の総使用量はまったく異なると指摘されました。
しかしながら、本願明細書に添付しました図1に示されるような複数台のプリンタを備えるプリンタシステムでは、プリンタシステムに含まれるすべてのプリンタを一つの販売店から購入し、すべてのプリンタについての保守を一括して購入元の販売店に依頼するのが一般的です。また、そのような場合には、プリンタシステムが備えるプリンタの台数が多いほど、一つの業者(販売店)に一括して保守を依頼する傾向があります。
そのような状況では、保守管理の対象となるすべてのプリンタの総使用量の総和と、課金管理の対象となるすべてのユーザIDの使用量の総和は、当然のことながら、同じでなくてはなりません(両者に齟齬があってはなりません)。本願発明はかかる課題の解決を目指すものです。
上述のように、審査官が指摘されましたような、保守に関する管理をプリンタ毎の総使用量に基づいてのみ行うとは限りません。したがって、かかる限定的な状況のみを想定して、保守管理の対象となる総使用量と課金管理の対象となる総使用量とがまったく異なったとしても、本願発明の実用における有効性は何ら損なわれるものではないと考えます。
また、一般的に、プリンタの保守作業(業務)に対しては、保守を行った業者から保守料金が請求されます。そして、上記のように、システムに含まれるすべてのプリンタの保守を一括して一つの販売店が行う場合には、その保守料金は、保守管理の対象となるすべてのプリンタの総使用量の総和に基づいて請求されるのが一般的です。この点においても、保守に関する管理がプリンタ毎の総使用量に基づいてのみ行われるとする審査官の想定は限定的であり、それ以外の状況を考慮しないでなされた審査官の認定は不当であると考えます。
(3-3)理由3について
審査官は、上記の理由3において、パブリックの使用量がどのように用いられるのか、なぜパブリックの使用量を記憶する必要があるのかが不明であると指摘されました。
本願発明は、プリンタの総使用量の総和とユーザ毎の使用量の総和との食い違いを無くすことを目的としており、このため、本願発明においては、個別使用量の合計値を総使用量から減算した差分値をパブリックの使用量として用います。
個別使用量は、デバイスを使用するユーザの認証を行う認証手段により認証されたユーザそれぞれに対応する使用量となっており、ユーザの要求に応じて変更され得るのに対して、総使用量は変更が禁止されており、変更によって生じる前記食い違いは、何れのユーザにも対応しないパブリック使用量によって解消されます。
このように、パブリックの使用量は、ユーザ毎の使用量の総和に加算して、プリンタの総使用量の総和に一致させるのに用いられます。また、パブリックの使用量を記憶しておかなければ、ユーザ登録の変更等の後に、ユーザ毎の使用量の総和をプリンタの総使用量の総和に一致させることができません。このため、パブリックの使用量を記憶しておくことが必要になります。 」
と主張している。
しかしながら、本願において、「個別使用量記憶手段」に記憶された「認証手段により認証されたユーザそれぞれに対応する使用量である個別使用量」は、出願当初の明細書の段落【0002】に
「従来、多機能型ディジタル複写機(MFP: Multi Function Peripheral)を複数のユーザに共用させ、各ユーザの使用量に応じて課金する場合、MFP毎に使用量の集計がなされていた。しかしながら、近年、ネットワーク技術の普及に伴い、複数のMFPをまとめて管理装置で管理する技術が開発されている(特許文献1)。
このようなMFPは法人の事業所等、大規模な事業所で用いられることが多く、当該事業所に勤務する従業者単位や部署単位で集計、課金がなされる。したがって、従業者の異動や組織改編等によって課金単位が変動した場合には、管理装置に課金単位を登録し直すことによって、当該変動に合わせて集計を行うことができる。」
と記載されているように、ユーザそれぞれに対応した集計、課金を行うために用いられるものであり、また、「総使用量記憶手段」に記憶された「デバイスの総使用量」は、出願当初の明細書の段落【0003】に
「しかしながら、MFPの使用量に応じた課金は事業所内における経理処理に留まらず、MFPの運用にも影響する。なせならば、当該法人がMFPの保守契約を結んでいる場合、MFPの総使用量が一定量に達する毎にトナー等の消耗品を交換するといった保守が必要だからである。このため、MFPの管理者だけでなく保守者も総使用量を正確に把握する必要がある。このような問題はMFPに限らず、複写機やプリンタといった単機能機にも当てはまる。」
と記載されているように、「MFP、あるいは、複写機やプリンタといった単機能機の総使用量が一定量に達する毎にトナー等の消耗品を交換するといった保守」のために用いられるものである。
してみると、「総使用量記憶手段」に記憶された「デバイスの総使用量」と、「個別使用量記憶手段」に記憶された「認証手段により認証されたユーザそれぞれに対応する使用量である個別使用量」は、それぞれ使用目的が異なるものであるから、保守管理の対象となる「デバイスの総使用量」と、課金管理の対象となる「個別使用量の合計値」に齟齬があったとしても別に困ることはないうえ、そもそも「デバイスの総使用量を記憶する総使用量記憶手段」を備え、「前記総使用量記憶手段により記憶された総使用量の変更が禁止されている」本願においては、「個別使用量の合計値」に「パブリックの使用量」を加えて、保守管理のために「デバイスの総使用量」を求める必要もないから、そもそも「パブリックの使用量」を記憶しておく必要もない。
さらに、平成22年3月5日付け意見書において請求人が主張するように、「保守に関する管理を行なう管理者と課金に関する管理を行なう管理者とが異なる」ことが一般的であれば、そもそも「保守に関する管理を行なう管理者が把握する全てのプリンタの総使用量の総和」と、「課金に関する管理を行なう管理者が把握する全てのユーザIDの使用量の総和」は、その管理目的も管理者も用途も別であって、食い違いが発生したところで何か問題が生ずるというものでもなければ、当然ながら保守管理者と課金管理者との管理対象の期間が同じであろうが異なっていようが問題となることもない。
したがって、「パブリック使用量記憶手段」に記憶された「何れのユーザにも対応しないパブリック使用量」を具体的に何にどのように本願の「デバイス管理装置、デバイス管理方法及びデバイス管理プログラム」において用いるかが、当業者にとって自明であるということもできない。
してみると、本願発明の特徴的構成である「前記個別使用量の合計値を前記総使用量から減算した値である差分値を、何れのユーザにも対応しないパブリック使用量として記憶するパブリック使用量記憶手段」を備える点については、その技術的意義が本願明細書に全く記載されておらず、当業者にとって自明な事項でもないから、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号で委任されている特許法施行規則第24条の2に規定する要件を満たしていない。
なお、請求人は、平成22年8月19日付け審判請求書において、
「本願明細書に添付しました図1に示されるような複数台のプリンタを備えるプリンタシステムでは、プリンタシステムに含まれるすべてのプリンタを一つの販売店から購入し、すべてのプリンタについての保守を一括して購入元の販売店に依頼するのが一般的です。また、そのような場合には、プリンタシステムが備えるプリンタの台数が多いほど、一つの業者(販売店)に一括して保守を依頼する傾向があります。」
と述べているが、そのようなプリンタシステムにおいても、「保守に関する管理を行なう管理者が把握する全てのプリンタの総使用量の総和」と、「課金に関する管理を行なう管理者が把握する全てのユーザIDの使用量の総和」は、その管理目的も用途も別であって、食い違いが発生したところで何か問題が生ずるというものでもない点に変わりはない。加えて、本願発明の「デバイス管理装置、デバイス管理方法及びデバイス管理プログラム」がそのような「プリンタシステム」にのみ限定されることが、本願の特許請求の範囲の記載に基づいた主張であると認めることもできない。

8.むすび
以上のとおり、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合するものでないから、本願は同号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-11 
結審通知日 2011-07-12 
審決日 2011-07-26 
出願番号 特願2004-304575(P2004-304575)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大浜 登世子  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 桐畑 幸▲廣▼
鈴木 秀幹
発明の名称 デバイス管理装置、デバイス管理方法及びデバイス管理プログラム  
代理人 木村 公一  
代理人 川畑 孝二  
代理人 中島 司朗  
代理人 小林 国人  
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