• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04B
審判 全部無効 2項進歩性  H04B
管理番号 1243057
審判番号 無効2007-800175  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-27 
確定日 2010-06-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第3781474号発明「携帯電話システム及び携帯電話システムの処理方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第3781474号の請求項1、請求項2に係る発明についての出願は、平成8年3月22日に特許出願したものであって、主な手続の経緯は次のとおりである。


平成18年 1月27日 本件特許査定審決

平成18年 3月17日 本件特許の設定登録

平成19年 8月27日 本件審判の請求

平成19年12月10日 審判事件答弁書

平成20年 3月25日 審判事件弁駁書

平成20年 7月17日 口頭審理

同日 口頭審理陳述要領書(請求人、被請求人)


第2.本件特許発明

請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明1」という。)、請求項2に係る発明(以下、「本件特許発明2」という。)は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1,2に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 携帯電話機の機能を拡張する機能プログラムと、前記機能プログラムの選択を促す選択候補の項目を表示するメニュー表示画面のデータと、機能プログラムの選択を促す選択候補又は当該選択候補の項目を表示する項目表示画面のデータとを記憶し、前記機能プログラム、前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面により前記機能プログラムを選択してもらうためのプログラムメニュー及び前記項目表示画面のデータを電話回線を介して携帯電話機に送信する制御装置と、前記制御装置から前記プログラムメニュー及び前記項目表示画面のデータを受信して前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面を表示し、前記制御装置から機能プログラムを受信して記憶し、記憶した機能プログラムを起動して動作を行う携帯電話機とを有する携帯電話システムであって、
前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面は、携帯電話機用の画面であって、携帯電話機との交信を行うための画面であり、
前記制御装置から送信される機能プログラムは、前記携帯電話機の購入時に予め記憶している基本機能及び付加機能とは異なる新たな機能を有する機能プログラムであって、前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面によって選択されるものであり、
前記制御装置は、前記メニュー表示画面のデータ、前記項目表示画面のデータ、前記機能プログラムの順でツリー状に関連付けて記憶し、前記携帯電話機からの発呼を受けると、前記プログラムメニューを送信して前記ツリーに基づいた項目の入力を促し、前記携帯電話機からの前記ツリーに基づいた項目の入力に従い、入力された項目に対応した項目表示画面のデータに切り替えて前記携帯電話機に送信し前記ツリーに基づいた項目の入力又は機能プログラムの選択を促し、前記携帯電話機から機能プログラムを指定するデータを受信すると、当該データに対応した機能プログラムを送信する制御装置であり、
前記携帯電話機は、前記制御装置から前記プログラムメニュー又は前記項目表示画面のデータを受信して前記メニュー表示画面又は前記項目表示画面を表示し、メニュー表示画面又は項目表示画面から項目が入力されると、入力された項目に対応した項目表示画面のデータを前記制御装置から受信して当該項目表示画面に切り替えて表示し、項目表示画面から所望の機能プログラムが選択されると、当該機能プログラムを指定するデータを前記制御装置に送信し、前記制御装置から前記データに対応する機能プログラムを受信して記憶し、入力された指示に従って前記記憶された機能プログラムを読み出して起動し、前記機能プログラムに従って動作させる携帯電話機であることを特徴とする携帯電話システム。
【請求項2】 制御装置は、携帯電話機の機能を拡張する機能プログラムの選択を促す選択候補の項目を表示するメニュー表示画面のデータ、前記機能プログラムの選択を促す選択候補又は当該選択候補の項目を表示する項目表示画面のデータ、前記機能プログラムの順でツリー状に関連付けて記憶しており、当該メニュー表示画面及び当該項目表示画面は、携帯電話機用の画面であって、携帯電話機との交信を行うための画面であり、
前記制御装置から送信される機能プログラムは、前記携帯電話機の購入時に予め記憶している基本機能及び付加機能とは異なる新たな機能を有する機能プログラムであって、前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面によって選択されるものであり、
携帯電話機からの発呼を受けると、前記制御装置は、前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面により前記機能プログラムを選択してもらうためのプログラムメニューを前記携帯電話機に送信して前記ツリーに基づいた項目の入力を促し、
前記携帯電話機は、前記制御装置から前記プログラムメニューを受信すると、メニュー表示画面を表示し、
前記制御装置は、前記携帯電話機からの前記ツリーに基づいた項目の入力に従い、入力された項目に対応した項目表示画面のデータに切り替えて前記携帯電話機に送信し前記ツリーに基づく項目の入力又は機能プログラムの選択を促し、
前記携帯電話機は、前記制御装置から前記項目表示画面のデータを受信すると、項目表示画面を切り替えて表示し、当該項目表示画面から所望の機能プログラムが選択されると、当該機能プログラムを指定するデータを前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、前記機能プログラムを指定するデータを受信すると、記憶されている機能プログラムから当該データに対応した機能プログラムを前記携帯電話機に送信し、
前記携帯電話機は、前記制御装置からの機能プログラムを受信して記憶し、入力された指示に従って前記記憶された機能プログラムを読み出して起動し、前記機能プログラムに従って動作させることを特徴とする携帯電話システムの処理方法。」


第3 請求人の主張の概要

これに対して、請求人は、本件特許発明の特許を無効とする、との審決を求め、次のような無効理由を主張している。

3-1 無効理由1

本件特許発明1,2は、特許法36条6項2号の記載要件を満たさず、特許法第123条第1項4号に該当し、無効とするべきである。


3-2 無効理由2

本件特許発明1,2は、甲1号証および甲2号証に記載された発明に基づいて、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項2号に該当し、無効とするべきである。


3-3 無効理由3

本件特許発明1,2は、(a)甲3号証に記載された発明と技術常識に基づいて、(b)(予備的無効理由)甲3号証に記載された発明と甲2号証、甲4号証、甲5号証のいずれかに記載された発明とに基づいて、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項2号に該当し、無効とするべきである。


第4 被請求人の主張の概要

一方、被請求人は、以上の無効理由(1)?無効理由(3)に対して次のように主張している。

無効理由(1)に対して

本件特許発明1,2は、明確であり、特許法36条6項2号の記載要件を満たす。

無効理由(2)に対して

本件特許発明1,2は、甲1号証および甲2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。

無効理由(3)に対して

本件特許発明1,2は、(a)甲3号証に記載された発明と技術常識に基づいて、(b)甲3号証に記載された発明と甲2号証、甲4号証、甲5号証のいずれかに記載された発明とに基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。


第5 甲1号証及び甲3号証

(1)甲1号証(特開平7-30672号公報)には、次のような記載がある。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】 デジタル電話機を内蔵し、このデジタル電話機にてネットワークを構成することを特徴とするパーソナルコンピュータ装置。
【請求項2】 請求項1において、
上記電話機はパーソナルハンディホンであることを特徴とするパーソナルコンピュータ装置。」

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子手帳等のパーソナルコンピュータ装置に関し、特にPHP(パーソナルハンディホン)等のネットワークを用いてデータの更新を行なうための手段を有するパーソナルコンピュータ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、電子手帳等のデータベースを有するパーソナルコンピュータ装置が普及している。そして、このようなパーソナルコンピュータ装置においては、電子手帳のデータは、使用者自身が入力するか、ICの差し替えにより変更が可能であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の電子手帳においては、ネットワークへの接続が困難であったため、住所や電話番号等のデータの登録は、全てのデータの入力を使用者自身が電子手帳の入力キーを使ってデータを入力しなければならず、登録が面倒であった。しかも、住所や電話番号等の変更があっても、使用者自身が変更を確認した後、電子手帳の入力キーを使ってデータの更新を行なっていた。
【0004】また、電池交換時のミスなどにより、入力データが破壊されてしまった場合には、再度、使用者自身が電子手帳の入力キーを使ってデータを入力しなければならなかった。さらに、ICカードがなければ、辞書やプログラムの変更ができないという欠点もあった。
【0005】本発明は、データの入力や変更を容易に行える電子手帳のようなハンディなパーソナルコンピュータ装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明では、電子手帳にPHPインタフェースを設け、PHPと電子手帳を接続し、PHPによりネットワークを構成し、外部のデータベースや他のコンピュータをアクセスすることにより、各種データの新規登録または更新および辞書やプログラムのダウンロードを行なえるようにしたものである。
【0007】
【実施例】図1は、本発明の第1実施例を示すブロック図である。
【0008】この実施例におけるパーソナルコンピュータ装置は、キーボード等の入力装置101と、LCD等の表示装置102と、ROMおよびRAM等を含むマイクロコンピュータユニット(以下、マイコンという)103と、フロッピディスク等の媒体を用いた記憶装置104と、外部機器を接続するためのインタフェース回路(I/F)105と、このインタフェース回路105に接続されたPHP106とを有する。そして、PHP106は基地局107に接続され、この基地局107には、サーバ108が接続されている。そして、サーバ108には、アドレス(電話番号)データベース109が接続されている。」

「【0016】図2は、本発明の第2実施例を示すブロック図である。
【0017】図示のように、この実施例では、上述したサーバ108およびアドレスデータベース109の代わりに、サーバ110および辞書/プログラムデータベース111を備えたものである。なお、その他は第1実施例と同様であり、同じ処理を行なうものについては、同一符号を付してある。
【0018】このような構成において、入力装置101にて辞書選択(変更)メニューを選択すると、マイコン103は、記憶装置104より辞書データベース111が接続されているサーバ110の電話番号を読み出し、インタフェース回路105より電話番号をPHP106に入力し、サーバ110に接続する。
【0019】次に、マイコン103は、サーバ110の接続を確認した後、IDコード、CPUタイプ、記憶容量などのコンピュータ環境および選択辞書コードをサーバ110に送る。
【0020】サーバ110は、マイコン103より送られてきた情報より、最適な辞書データを辞書データベース111より選択し、データをマイコン103に送り、記憶装置104に記憶し、選択辞書がダウンロードされる。
【0021】同様に、入力装置101にてプログラム選択(変更)メニューを選択すると、マイコン103は、プログラムデータベース111が接続されているサーバ110に接続し、プログラムがダウンロードされ、実行される。」

「【0082】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1?13によれば、電子手帳にPHPインタフェースを設け、PHPと電子手帳を接続し、PHPによりネットワークを構成することにより、各種データの入力や更新およびプログラムや辞書のダウンロード等が簡単に行なえるようになった。その結果、データの入力が容易になり、また、ICカードを持ち歩かなくとも、簡単に、しかもリアルタイムに機能(プログラム)の変更ができるようになった。さらに、ネットワーク化により、データに自動更新や遠隔操作によるデータの更新やデータのバックアップ等も可能になった。」

これらの記載から、甲1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が開示されていると認められる。

「電子手帳等のパーソナルコンピュータ装置であって、
入力装置101と、LCD等の表示装置102と、ROMおよびRAM等を含むマイクロコンピュータユニット(以下、マイコンという)103と、フロッピディスク等の媒体を用いた記憶装置104と、外部機器を接続するためのインタフェース回路(I/F)105と、このインタフェース回路105に接続されたPHP106とを有し、PHP106は基地局107に接続され、この基地局107には、サーバ110が接続されており、サーバ110には、プログラムデータベース111が接続されており、
入力装置101にてプログラム選択(変更)メニューを選択すると、マイコン103は、記憶装置104よりプログラムデータベース111が接続されているサーバ110の電話番号を読み出し、インタフェース回路105より電話番号をPHP106に入力し、サーバ110に接続し、
マイコン103は、サーバ110の接続を確認した後、選択コードをサーバ110に送り、
サーバ110は、マイコン103より送られてきた情報より、最適なプログラムデータをプログラムデータベース111より選択し、データをマイコン103に送り、記憶装置104に記憶し、プログラムがダウンロードされ、実行され、機能の変更ができる、
電子手帳等のパーソナルコンピュータ装置。」

(2)甲3号証(特開平6-334780号公報)には、次のような記載がある。

「【0018】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。図1は本実施例のパーソナルコミュニケータ1のブロック図、図2は本パーソナルコミュニケータ1を用いたソフト配信システムのブロック図である。図1に示すように、本配信システムは、配信センタ100、パーソナルコミュニケータ1、及び配信センタとパーソナルコミュニケータ1とを接続する通信回線としての伝送路200から構成されている。
【0019】配信センタ100は、ゲームソフトデータベース101、カラオケデータベース103、その他のデータベース(群)105と、各データベース101,103,105から情報を検索して送出するためそれぞれ対応して設けられたゲーム情報送出装置111、カラオケ情報送出装置113、他情報送出装置115、及びそれら各情報送出装置111,113,115の制御等を行う制御装置120、外部との信号の入出力を行うヘッドエンド130を備えている。
【0020】制御装置120は、伝送路200を介してパーソナルコミュニケータ1より送信されてきたリクエストデータをヘッドエンド130を介して入力する。そして、そのリクエストに対応した情報を、情報送出装置111,113,115を制御してデータベース101,103,105から取り出し、ヘッドエンド130を介して伝送路200に送出させる。
【0021】本実施例では、伝送路200は同軸ケーブルで構成されており、この伝送路200は複数のパーソナルコミュニケータ1と接続されている。次にパーソナルコミュニケータ1側の構成について説明する。図1に示すように、本パーソナルコミュニケータ1は、端末モデム3と、タイマ4と、CPU5と、入力装置6と、ROM7と、メモリ8と、ビデオ映像回路9と、音源10と、オーディオアンプ11と、スピーカ13と、映像合成回路15とモニタ16と、制御器コネクタ21と、マイクコネクタ23と、データ入出力コントローラ25と、データ入出力コネクタ27とを備えている。
【0022】端末モデム3は伝送路200と接続されており、復変調器3aと、画像のチャンネル選択をするビデオチューナ3bとから構成されている。入力装置6は、例えばキーボードやマウス等からなり、パーソナルコミュニケータ1の使用者が所望のゲームソフトの番号や演奏を希望するカラオケ曲の番号を入力したり、その他の処理指令等を入力するのに用いられる。また、制御器コネクタ21にゲーム専用の制御器31を接続することにより、制御器31を用いたゲーム専用の操作もできる。この制御器31には操作指令を与えるボタンやジョイスティック等、いわゆるテレビゲーム等に広く用いられている制御ボタンと同様のものが設けられている。
【0023】また、マイクコネクタ23にマイクロフォン33を接続することにより、カラオケを行うときに、使用者が自分の歌声をスピーカ13から出力させることができる。一方、データ入出力コネクタ27にはデータ出力ケーブル37が接続され、そのデータ出力ケーブル37にはプリンタ40あるいはパーソナルコンピュータ41等が接続される。
【0024】次に、CPU5において実行される制御について説明する。電源(図示せず)がオンされるとまずメインメニューが表示される。そのメインメニューから「配信センタ呼出」が選択され、配信センタ呼出処理が起動した時点から図3を参照して説明を続ける。
【0025】まず、利用項目の表示が行われる(S1000)。利用項目の表示は、選択を求める表示(例えば「希望の利用項目を選んで下さい」との表示)と利用項目一覧(ゲーム、カラオケ、その他の項目)とからなる。この表示の後、判断が行われて(S1010)、選択された利用項目名の個別処理画像を表示する(S1020)。個別処理画像の表示は、入力あるいは選択を求める表示と個別処理名一覧とからなる。この個別処理画像の表示の後、入力あるいは選択がされると個別処理の実行が行われる(S1030)。この個別処理の実行では、まず配信センタに接続され、配信センタとパーソナルコミュニケータ1間とで双方向通信が行われて、各個別処理内容に応じた処理がなされる。
【0026】最初に、ゲームを行う場合の制御について、その手順も含めながら説明する。上記S1000での利用項目表示においてゲームを選択すると、図4のような個別処理画像が表示される。説明すると、入力あるいは選択を求める表示301と個別処理名一覧303である。個別処理名一覧303は(1)(当審注:丸中数字の1を指す。以下、同様。)?(3)まであり、「(1):希望ゲーム番号」は、この画面においてゲーム番号入力欄305に直接ゲーム番号を入力すれば、その後該当するゲーム情報が送信されてくる処理である。また、「(2):ゲーム番号一覧」は、現在配信センタ100のゲームソフトデータベース101から配信可能なゲームの番号の一覧表示がされる処理である。「(3):料金表示」は、例えば今月の累積料金を表示したり、過去の料金を表示したりする処理である。
【0027】実際にゲームを開始したい場合には、上記(1)または(2)を選択する。例えば既に希望のゲーム番号が判っている場合には、カーソルをゲーム番号入力覧305に移動させてテンキー等で番号を入力すればよいが、判らない場合には(2)を選択する。
【0028】(2)のゲーム番号一覧処理について簡単に説明しておく。(2)を選択すると、配信センタ100からゲームの番号の一覧表示に関するデータが送信されて表示される。詳しくは、図5に示すように、入力領域311と表示覧313とに分かれており、表示覧313をスクロールさせれば未表示データも見ることができる。表示覧313には、ゲーム番号とゲーム名に加えて、「参加可能人数」と「料金」が表示される。従って、この表示を参考にして希望のゲーム番号を探し、入力領域311のゲーム番号入力欄315に入力すればよい。
【0029】なお、例えば初めて新しいゲームを行う場合等に、そのゲーム内容の概略等を知りたい場合がある。そういった場合は、入力領域311の「B:ゲーム内容説明表示」のゲーム番号入力欄317にゲーム番号を入力すると、そのゲーム内容の概略説明が表示覧313に表示される。従って、使用者はその表示を見てからゲームを選択することができる。
【0030】また、ゲーム番号一覧表示を印刷しておけば、次回から希望するゲームをすぐに選択することができる。その場合は、入力領域311の「C.印刷」を選択すれば、図1に示すデータ入出力コネクタ27、データ出力ケーブル37を介して接続されたプリンタ40より印刷できる。
【0031】上記個別処理(1)による図4の番号入力欄305、あるいは個別処理(2)による図5のゲーム番号入力欄315に希望ゲーム番号を入力した際に実行される処理について図6を参照して説明する。まず、ゲームリクエストデータが作成される(S1100)。このゲームリクエストデータは、データを送信するパーソナルコミュニケータ1のID番号、希望ゲーム番号等から構成される。作成されたゲームリクエストデータは配信センタ100に送信される(S1110)。
【0032】配信センタ100(図2)では、制御装置120が送信されてきたリクエストデータをヘッドエンド130を介して入力する。そして、そのリクエストに対応したゲーム情報を、ゲーム情報送出装置111を制御してゲームソフトデータベース101から取り出す。取り出したゲーム情報はヘッドエンド130を介して伝送路200に送出させ、該当するパーソナルコミュニケータ1に転送する。なお、この際ゲーム情報と共に、後述する第1及び第2の所定時間も送信される。
【0033】図6に戻り、パーソナルコミュニケータ1側では、そのゲーム情報を受信し(S1120)、メモリ8に格納する(S1130)。そして、メモリ8への格納が完了すると、モニタ16に受信完了表示を行い(S1140)、さらに配信センタ100に受信完了データを送信して(S1150)、本処理ルーチンを一旦終了し、次の処理を待つ。その後例えばゲーム開始の操作がされると、メモリ8内のゲーム情報に従うゲームが開始される。」

「【0050】なお、カラオケの場合は、上記ゲームの場合のゲーム情報自動消去処理(図7)のような制御は不要である。このように、本パーソナルコミュニケータ1を用いたカラオケ配信システムによれば、使用者がパーソナルコミュニケータ1より配信センタ100に対して所望のカラオケリクエストを送出すれば、配信センタ100より対応するカラオケ情報が返信されてくるため、使用者はビデオディスク等のカラオケデータ媒体を有することなく所望のカラオケを行うことができる。また、その送出された曲データ及び歌詞データはパーソナルコミュニケータ1のメモリ8に一時記憶されるため、一度送ってしまえば、別のパーソナルコミュニケータ1からの同じカラオケのリクエストにも対応でき、パーソナルコミュニケータ1を持つ大勢の端末使用者に対応できる。
【0051】以上本発明はこの様な実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。例えば、上記実施例では、図1に示すように、パーソナルコミュニケータ1自体が内部にモニタ16及びスピーカ13を有するように説明したが、これに限らず、外部のモニタやスピーカに接続して用いるような構成でもよい。例えば、テレビ受像器に接続して、テレビ受像器から画像及び音声を出力させるようにしてもよい。なお、その場合、パーソナルコミュニケータ1には小さなディスプレイを設け、図4、図5に示すような選択画面はそのディスプレイに表示させるようにしてもよい。
【0052】また、伝送路200は既設のケーブルテレビシステムの同軸ケーブル等を援用しても良く、図2に示す他のデータベースとして衛星テレビ番組やビデオディスクによるビデオ番組、あるいはラジオ番組等も含めて、マルチメディア双方向通信システムとして構築できる。この配信システムにおけるパーソナルコミュニケータ1は、各家庭に配置したり、あるいはホテルの各部屋に配置したり、種々の適用が可能である。
【0053】
【発明の効果】以上詳述したように本コミュニケータを用いたソフト配信システムによれば、使用者がコミュニケータより配信センタに対して所望のゲームあるいはカラオケリクエストを送出すれば、配信センタより対応するゲーム情報あるいはカラオケ情報が返信されてくるため、使用者は、ゲームの場合はゲームカセット、カラオケの場合はビデオディスク等のデータ媒体を有することなく所望のゲームあるいはカラオケを行うことができる。また、その送出されたゲームあるいはカラオケ情報はコミュニケータの入力データ一時記憶手段に一時記憶されるため、一度送ってしまえば、別のコミュニケータからの同じゲームあるいはカラオケのリクエストにも対応でき、コミュニケータを持つ大勢の端末使用者に対応できる。」

これらの記載から、甲3号証には、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が開示されていると認められる。

「配信システムは、配信センタ100、パーソナルコミュニケータ1、及び配信センタとパーソナルコミュニケータ1とを接続する通信回線としての伝送路200から構成され、
配信センタ100は、ゲームソフトデータベース101、その他のデータベース(群)105を備え、
パーソナルコミュニケータ1は、メインメニューから「配信センタ呼出」が選択され、配信センタ呼出処理が起動し、まず、利用項目の表示が行われ、利用項目の表示は、選択を求める表示(例えば「希望の利用項目を選んで下さい」との表示)と利用項目一覧(ゲーム、カラオケ、その他の項目)とからなり、この表示の後、選択された利用項目名の個別処理画像を表示し、個別処理画像の表示は、入力あるいは選択を求める表示と個別処理名一覧とからなり、この後、入力あるいは選択がされると、配信センタに接続され、配信センタとパーソナルコミュニケータ1間とで双方向通信が行われて、各個別処理内容に応じた処理がなされ、ゲームを行う場合の制御については、
利用項目表示においてゲームを選択すると、個別処理画像が表示され、入力あるいは選択を求める表示301を含む画面においてゲーム番号入力欄305に直接ゲーム番号を入力すれば、その後該当するゲーム情報が送信されてき、また、「(2)ゲーム番号一覧」を選択すると、配信センタ100からゲームの番号の一覧表示に関するデータが送信されて表示され、詳しくは、入力領域311と表示覧313とに分かれており、表示覧313には、ゲーム番号とゲーム名が表示され、この表示を参考にして希望のゲーム番号を探し、入力領域311のゲーム番号入力欄315に入力すればよく、
ゲーム番号入力欄315に希望ゲーム番号を入力した際、パーソナルコミュニケータ1のID番号、希望ゲーム番号等から構成されるゲームリクエストデータが配信センタ100に送信され、配信センタ100では、制御装置120が送信されてきたリクエストデータを入力し、そのリクエストに対応したゲーム情報を、ゲームソフトデータベース101から取り出し、取り出したゲーム情報は伝送路200に送出させ、該当するパーソナルコミュニケータ1に転送し、
パーソナルコミュニケータ1側では、そのゲーム情報を受信し、メモリ8に格納し、その後例えばゲーム開始の操作がされると、メモリ8内のゲーム情報に従うゲームが開始される
配信システム。」


第6 各無効理由に対する当審の判断

6-1 無効理由1

6-1-1 本件特許発明1及び2について
請求人は、「本件特許の請求項1および2に係る発明は、特許請求の範囲に記載された「メニュー表示画面」「項目表示画面」「プログラムメニュー」の関係が不明確である。また「携帯電話機との交信を行うための画面」の技術的意義が不明確である。従って、請求項1および2に係る発明は、特許法第36条6項2号の記載要件を満た」していないとして次の様に主張している。
(a)「「項目表示画面」の説明において、「選択候補」と「当該選択候補の項目」はどのような違いがあるか不明であるため、「項目表示画面」と「メニュー表示画面」との相違が明らかではない。仮に、「選択候補」と「当該選択候補の項目」とに違いがあるとしても、「項目表示画面」の規定では、「選択候補」と「当該選択候補の項目」とが「又は」で接続された択一的な関係にあり、「項目表示画面」と「メニュー表示画面」の内容が重複している。従って、選択候補の項目を表示する画面が「メニュー表示画面」と「項目表示画面」のいずれに該当するのか、あるいは両方に該当することがあり得るかなど明らかではなく、権利範囲を確定することができない。また、構成要件の名称から見ても、「メニュー表示画面」と「項目表示画面」とには相違がない。すなわち、「メニュー」とは、一般的には、「用意されている項目や内容」。また、その一覧。『コンピューターの一画面』」(広辞苑第5版)という意味であるから、「メニュー表示画面」は用意された項目を表示する画面であって、「項目表示画面」と同義である。」
(b)「「メニュー表示画面」「項目表示画面」「プログラムメニュー」の関係は不明確であり、」
(c)「「携帯電話機との交信を行うための画面」をメニュー画面と解すると、「前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面は、・・・携帯電話機との交信を行うための画面(=メニュー画面)であり」となり、構成要件Dの「携帯電話機と交信を行うための画面」の要件は、同義反復で意味がない。また、本件特許は、他の構成要件に示されるとおり、携帯電話システムを対象としているから、メニュー表示画面及び項目表示画面が「携帯電話機用の画面」であることは当然である。従って、構成要件Dは、構成要件としての意味がない。」
と主張している。

被請求人は、口頭審理陳述要領書において、
(a)(b)明細書及び図4の記載に基づいて、「選択候補」には、「ゲームA」、「ゲームB」が対応し(【0034】)、「選択候補の項目」には、「ゲーム」、「情報」等の各項目が対応し(【0032】)、機能プログラム」は、例えば「ゲームA」、「ゲームB」に対応するプログラムであり(【0034】)、「メニュー表示画面」は、「ゲーム」、「情報」、「時間」、「天気」等の各項目をメニューとして表示する画面であり(【0032】)、「メニュー表示画面のデータ」は、上記「メニュー表示画面」を構成するデータであり、「項目表示画面」は、例えば、「メニュー表示画面」の下にある「ゲーム」の項目の表示画面であって、「ゲームA」、「ゲームB」等を表示する「ゲーム」の表示画面であり(【0032】、【0034】)、「項目表示画面のデータ」は、上記「項目表示画面」を構成するデータであり、「プログラムメニュー」は、「プログラムメニュー」が「メニュー表示画面のデータ」を包含するとともに、「メニュー表示画面」及び「項目表示画面」により「機能プログラム」を選択してもらうという機能を果たすデータを意味する(【0032】、【0034】)、と主張している(第3,4頁)。
(c)「請求項1には、「前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面は、携帯電話機用の画面であって、携帯電話機との交信を行うための画面であり、」と記載されており、また、「メニュー表示画面」「項目表示画面」は、制御装置から送られたデータに基づき携帯電話機に表示され、当該画面から項目が入力され、制御装置に送信されると、制御装置から対応した項目表示画面のデータが送信されて携帯電話機で表示されることも、請求項1の記載から明らかである。そうすると、請求項1の記載からみて、上記画面は、「制御装置と携帯電話機との交信を行うために用いられる携帯電話機用の画面」であって、その画面が果たす機能も請求項1に明瞭に記載されているのであるから、その技術的意義は明らかであり、請求人が指摘するような読解を生じる余地はない。」、と主張している(第4頁)。

そこで、検討すると、【0032】の記載「「メニュー表示」画面(のプログラム)の下に、「ゲーム」、「情報」、「時間」、「天気」等の各項目の表示画面(のプログラム)があり、「メニュー表示」においては、携帯電話機1では上記各項目が選択候補として表示される。」、【0033】の記載「「メニュー表示」プログラムの起動中に携帯電話機1から「1」が入力されると、供給元コンピュータ3の制御部32は、「ゲーム」の表示画面のデータを選択して携帯電話機1に送出する。」、【0034】の記載、「「ゲーム」の表示画面においては、携帯電話機1で、次の選択候補である「ゲームA」、「ゲームB」等が表示され、供給元コンピュータ3の制御部32は、携帯電話機1から入力されたデータに対応したプログラムを記憶部33から読み出して、携帯電話機1に送出するものである。」から、
・請求項1,2に記載された「項目」は、「ゲーム」、「情報」、「時間」、「天気」等であり、
・「「メニュー表示」においては、・・・上記各項目が選択候補として表示される。」とともに、「「メニュー表示」画面(のプログラム)の下に、「ゲーム」、「情報」、「時間」、「天気」等の各項目の表示画面(のプログラム)があ」るから、請求項1,2に記載された「メニュー表示画面」は、「ゲーム」、「情報」、「時間」、「天気」等の各項目をメニューとして表示する画面であり、
・「「ゲーム」、「情報」、「時間」、「天気」等の各項目の表示画面(のプログラム)があ」るとともに、「「ゲーム」の表示画面においては、・・・次の選択候補である「ゲームA」、「ゲームB」等が表示され」るから、請求項1,2に記載された「項目表示画面」は、例えば、「メニュー表示画面」の下にある「ゲーム」の項目の表示画面であって、「ゲームA」、「ゲームB」等を表示する「ゲーム」の表示画面であり、
また、【0023】の記載「供給元コンピュータ3の制御部32は、携帯電話機1からの電話を受けると、・・・利用者に送信すべきプログラムを選択してもらうためのプログラムメニューを携帯電話機1に送信する」、【0024】の記載「携帯電話機1のCPU16は、受信したプログラムメニューを表示部19に表示する(104)。利用者は、表示部19に表示されたメニューを見てプログラムを選択し、入力部18から入力を行い、CPU16は、入力されたプログラム指定のデータを送受信部11から電話回線2を介して供給元コンピュータ3に送信する(106)。」から、
・請求項1,2に記載された「プログラムメニュー」は、「メニュー表示画面のデータ」、及び(「メニュー表示画面」及び「項目表示画面」により)「機能プログラム」を選択してもらうという機能を果たすデータを意味するものであり、
さらに、上記【0023】?【0034】、【0024】の記載、請求項1,2の記載「前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面は、携帯電話機用の画面であって、携帯電話機との交信を行うための画面であり、」、から、
・「メニュー表示画面」「項目表示画面」は、「制御装置から送られたデータに基づき携帯電話機に表示され、当該画面から項目が入力され、制御装置に送信されると、制御装置から対応した項目表示画面のデータが送信されて携帯電話機で表示される」ものであるとともに、「制御装置と携帯電話機との交信を行うために用いられる携帯電話機用の画面」の意味である。
以上のことから、「メニュー表示画面」、「項目表示画面」、「プログラムメニュー」の関係は明確であるとともに、「携帯電話機との交信を行うための画面」の技術的意義は明確である。

したがって、本件特許発明1,2は、特許を受けようとする発明が明確でない、とすることはできない。

したがって、本件特許発明1,2についての特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである、という請求人の上記主張は採用できない。


6-2 無効理由2

6-2-1 本件特許発明1について

6-2-1-1 対比

本件特許発明1と甲1発明とを比較する。
甲1発明の「電子手帳等のパーソナルコンピュータ装置」は、本件特許発明1の「携帯電話機」とは、「携帯端末」である点で一致する。
甲1発明の「サーバ110」及びこれに接続された「プログラムデータベース111」は、本件特許発明1の「制御装置」とは、「装置」である点で一致する。
甲1発明の「サーバ110」と「電子手帳等のパーソナルコンピュータ装置」は、本件特許発明1の「制御装置」と「携帯電話機とを有する携帯電話システム」とは、「装置と携帯端末とを有するシステム」である点で一致する。
甲1発明の「プログラム」は、本件特許発明1の「機能プログラム」に相当する。
甲1発明の電子手帳等のパーソナルコンピュータ装置は、「プログラム選択(変更)において、サーバ110からデータを送られ、記憶装置104に記憶し、プログラムがダウンロードされ、実行される」、から、本件特許発明1の「制御装置から機能プログラムを受信して記憶し、記憶した機能プログラムを起動して動作を行う」携帯電話機とは、「装置から機能プログラムを受信して記憶し、記憶した機能プログラムを起動して動作を行う」携帯端末である点で一致する。また、甲1発明では、電子手帳等のパーソナルコンピュータ装置はインターフェース回路105を介してPHP106に、電話番号を入力し、サーバ110に接続しており、電子手帳等のパーソナルコンピュータ装置とサーバ110の接続は電話回線を介して行われることは明らかであるから、甲1発明の「最適なプログラムデータをプログラムデータベース111より選択し、データをマイコン103に送」るサーバ110は、本件特許発明1の「携帯電話機の機能を拡張する機能プログラムと、前記機能プログラムの選択を促す選択候補の項目を表示するメニュー表示画面のデータと、機能プログラムの選択を促す選択候補又は当該選択候補の項目を表示する項目表示画面のデータとを記憶し、前記機能プログラム、前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面により前記機能プログラムを選択してもらうためのプログラムメニュー及び前記項目表示画面のデータを電話回線を介して携帯電話機に送信する」制御装置とは、「携帯端末の機能プログラム、を記憶し、前記機能プログラム、のデータを電話回線を介して携帯端末に送信する」装置である点で一致する。
甲1発明の電子手帳等のパーソナルコンピュータ装置は、プログラムのダウンロードにあたって、入力装置101にてプログラム選択(変更)メニューを選択するから、甲1発明の「プログラム選択(変更)メニュー」は、本件特許発明1の「機能プログラムを選択してもらうためのプログラムメニュー」に相当する。また、甲1発明の「プログラム選択(変更)」は、「プログラム選択(変更)メニュー」の表示によって行われていることは明らかであるから、本件特許発明1の「前記制御装置から送信される機能プログラムは、前記携帯電話機の購入時に予め記憶している基本機能及び付加機能とは異なる新たな機能を有する機能プログラムであって、前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面によって選択されるものであり、」とは、「装置から送信される機能プログラムは、メニュー表示画面によって選択されるもの」である点で一致する。
甲1発明の「電子手帳等のパーソナルコンピュータ装置」は、プログラムのダウンロードにあたって、選択コードをサーバ110に送り、サーバ110は、送られてきた情報より、最適なプログラムデータをプログラムデータベース111より選択し、データをマイコン103に送り、記憶装置104に記憶し、プログラムがダウンロードされ、実行される、から、甲1発明の「選択コード」は、本件特許発明1の「機能プログラムを指定するデータ」に相当し、また、甲1発明のサーバ110は、電子手帳等のパーソナルコンピュータ装置から選択コードを送られると、送られてきた情報より最適なプログラムデータをプログラムデータベース111より選択し、データをマイコン103に送っているから、本件特許発明1の「前記制御装置は、前記メニュー表示画面のデータ、前記項目表示画面のデータ、前記機能プログラムの順でツリー状に関連付けて記憶し、前記携帯電話機からの発呼を受けると、前記プログラムメニューを送信して前記ツリーに基づいた項目の入力を促し、前記携帯電話機からの前記ツリーに基づいた項目の入力に従い、入力された項目に対応した項目表示画面のデータに切り替えて前記携帯電話機に送信し前記ツリーに基づいた項目の入力又は機能プログラムの選択を促し、前記携帯電話機から機能プログラムを指定するデータを受信すると、当該データに対応した機能プログラムを送信する制御装置であり、」とは、「装置は、携帯端末から機能プログラムを指定するデータを受信すると、当該データに対応した機能プログラムを送信する装置であり、」である点で一致する。また、甲1発明の「電子手帳等のパーソナルコンピュータ装置」は、入力装置101にてプログラム選択(変更)メニューを選択すると、マイコン103は、選択コードをサーバ110に送り、サーバ110から送られた最適なプログラムデータを記憶装置104に記憶し、プログラムがダウンロードされ、実行される、ものであるから、本件特許発明1の「前記携帯電話機は、前記制御装置から前記プログラムメニュー又は前記項目表示画面のデータを受信して前記メニュー表示画面又は前記項目表示画面を表示し、メニュー表示画面又は項目表示画面から項目が入力されると、入力された項目に対応した項目表示画面のデータを前記制御装置から受信して当該項目表示画面に切り替えて表示し、項目表示画面から所望の機能プログラムが選択されると、当該機能プログラムを指定するデータを前記制御装置に送信し、前記制御装置から前記データに対応する機能プログラムを受信して記憶し、入力された指示に従って前記記憶された機能プログラムを読み出して起動し、前記機能プログラムに従って動作させる携帯電話機」とは、「携帯端末は、メニュー表示画面を表示し、所望の機能プログラムが選択されると、当該機能プログラムを指定するデータを前記装置に送信し、前記装置から前記データに対応する機能プログラムを受信して記憶し、前記記憶された機能プログラムを起動し、前記機能プログラムに従って動作させる携帯端末」である点で一致する。

したがって、本件特許発明1と甲1発明との一致点は以下のとおりである。

[一致点]
「携帯端末の機能プログラム、を記憶し、前記機能プログラム、のデータを電話回線を介して携帯端末に送信する装置と、メニュー表示画面を表示し、装置から機能プログラムを受信して記憶し、記憶した機能プログラムを起動して動作を行う携帯端末とを有するシステムであって、
メニュー表示画面は、携帯端末用の画面であって、
装置は、携帯端末から機能プログラムを指定するデータを受信すると、当該データに対応した機能プログラムを送信する装置であり、
携帯端末は、メニュー表示画面を表示し、所望の機能プログラムが選択されると、当該機能プログラムを指定するデータを前記装置に送信し、前記装置から前記データに対応する機能プログラムを受信して記憶し、前記記憶された機能プログラムを起動し、前記機能プログラムに従って動作させる携帯端末であるシステム。」

そして、少なくとも次の点で相違している。

[相違点]
「装置と、携帯端末とを有するシステム」が、本件特許発明1では「制御装置と、携帯電話機とを有する携帯電話システム」であるのに対して、甲1発明では、「サーバ110と、電子手帳等のパーソナルコンピュータ装置とを有するシステム」であり、
「装置」は、本件特許発明1では「機能プログラムの選択を促す選択候補の項目を表示するメニュー表示画面のデータと、機能プログラムの選択を促す選択候補又は当該選択候補の項目を表示する項目表示画面のデータとを記憶し」、「前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面により前記機能プログラムを選択してもらうためのプログラムメニュー及び前記項目表示画面のデータを電話回線を介して携帯電話機に送信」するとともに、「前記メニュー表示画面のデータ、前記項目表示画面のデータ、前記機能プログラムの順でツリー状に関連付けて記憶し、前記携帯電話機からの発呼を受けると、前記プログラムメニューを送信して前記ツリーに基づいた項目の入力を促し、前記携帯電話機からの前記ツリーに基づいた項目の入力に従い、入力された項目に対応した項目表示画面のデータに切り替えて前記携帯電話機に送信し前記ツリーに基づいた項目の入力又は機能プログラムの選択を促」す「制御装置」であるのに対して、甲1発明では、サーバ110は、電子手帳等のパーソナルコンピュータ装置の表示画面のデータを記憶し、送信する点が記載されておらず、
また、本件特許発明1の「前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面は、携帯電話機用の画面であって、携帯電話機との交信を行うための画面であり、」については、甲1発明には「項目表示画面」、「携帯電話機用の画面」、「携帯電話機との交信を行うための画面」について記載はなく、
「機能プログラム」が、本件特許発明1では「携帯電話機の機能を拡張する」ものであり、かつ「携帯電話機の購入時に予め記憶している基本機能及び付加機能とは異なる新たな機能を有する」とともに「メニュー表示画面及び前記項目表示画面によって選択されるものであ」るのに対して、甲1発明では、「プログラム選択(変更)」との記載しかなく、
「携帯端末」は、本件特許発明1では「前記制御装置から前記プログラムメニュー又は前記項目表示画面のデータを受信して前記メニュー表示画面又は前記項目表示画面を表示し、メニュー表示画面又は項目表示画面から項目が入力されると、入力された項目に対応した項目表示画面のデータを前記制御装置から受信して当該項目表示画面に切り替えて表示」する「携帯電話機」であるのに対して、甲1発明では、「電子手帳等のパーソナルコンピュータ装置」であり、サーバから表示画面のデータを受信して表示する点が記載されていない点。


6-2-1-2 判断

[相違点]について
甲1号証には、「携帯電話機」が、発呼し、「制御装置」から、表示画面のデータを受信し、機能プログラムの選択を促され、「携帯電話機の機能を拡張する機能プログラム」を受信し、起動し、動作させる点は、記載も示唆もされていない。

また、甲2号証は、情報検索端末における情報獲得に係る発明が記載されているにすぎず、上記相違点についての記載も示唆もない。

なお、請求人は、審判請求書において、
(a)「甲第1号証の第5?第12実施例においては、パーソナルコンピュータ装置に代えてPHP(パーソナルハンディホン)本体を用いた例が記載されている。従って、ウ パーソナルコンピュータ装置に代えてPHP(パーソナルハンディホン)本体を用いることができる。」(第14頁)、
(b)「ICカードを持ち歩かなくとも、簡単に、しかもリアルタイムに機能(プログラム)の変更ができるようになった。(甲1、7頁左欄24-26行)この記載から、甲1発明は、従来ICカードで行っていた機能の変更をプログラムのダウンロードによって行えるようにしたものである。ICカードによって変更可能な機能は、パーソナルコンピュータ装置に予め記憶されている機能とは異なる。従って、エ ダウンロードされるプログラムは、パーソナルコンピュータ装置が予め記憶している機能とは異なる新たな機能を有するプログラムである。」(第14,15頁)、
と主張しているが、
(a)甲1号証の第5?12実施例は、PHP本体が、音声化されたディジタル信号(第5実施例、【0051】段落)、音声情報かディスプレイ情報(第6実施例、【0056】段落)、音声情報(第7実施例、【0061】段落、【0062】段落)、音声情報とディスプレイ情報(第8実施例、【0065】段落)、電話番号の文字(数字)データ(第9実施例、【0072】段落)、電話番号の文字データ(第10実施例、【0074】段落)、電話番号データ(第11実施例、【0077】段落、第12実施例、【0080】段落)をそれぞれ受信するものであり、PHP本体が「機能プログラム」を受信すること、及び、機能プログラムの選択を促す表示画面のデータを受信すること、については、記載も示唆もされていないから、請求人の当該主張も採用できない。
(b)甲1号証の【0082】段落には、「【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1?13によれば、電子手帳にPHPインタフェースを設け、PHPと電子手帳を接続し、PHPによりネットワークを構成することにより、各種データの入力や更新およびプログラムや辞書のダウンロード等が簡単に行なえるようになった。」と記載されており、プログラムが「新たな機能を有するプログラム」であるとしても、そのダウンロードは、電子手帳に行うと記載されているのであって、携帯電話機に行うものではない。


6-2-1-3 結論
よって、本件特許発明1は、甲1号証に記載された発明及び甲2号証に記載されて発明から容易になし得たということはできないから、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。


6-2-2 本件特許発明2について

6-2-2-1 対比、判断

本件特許発明1について、上記「6-2-1 本件特許発明1について」「6-2-1-2 判断」「[相違点]について」で述べたと同様に、本件特許発明2も、「携帯電話機」が、発呼し、「制御装置」から、表示画面のデータを受信し、機能プログラムの選択を促され、「携帯電話機の機能を拡張する機能プログラム」を受信し、起動し、動作させることを特徴とする発明であるが、この点は、甲1号証、甲2号証には、記載も示唆もされていない。

6-2-2-2 結論
よって、本件特許発明2は、甲1号証に記載された発明及び甲2号証に記載された発明から容易になし得たということはできないから、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。

6-3 無効理由3(a)

6-3-1 本件特許発明1について

6-3-1-1 対比

本件特許発明1と甲3発明とを比較する。

甲3発明の「パーソナルコミュニケータ1」は、本件特許発明1の「携帯電話機」とは、「端末」である点で一致する。
甲3発明の「配信センタ100」は、本件特許発明1の「制御装置」とは、「装置」である点で一致する。
甲3発明の「パーソナルコミュニケータ1」と「配信センタ100」は、本件特許発明1の「携帯電話システム」とは、「システム」である点で一致する。
甲3発明の「ゲーム情報」は、「パーソナルコミュニケータ1側では、そのゲーム情報を受信し、メモリ8に格納し、その後例えばゲーム開始の操作がされると、メモリ8内のゲーム情報に従うゲームが開始される」ことから、本件特許発明1の「機能プログラム」、に相当するとともに、本件特許発明1の「携帯電話機の機能を拡張する機能プログラム」とは、「端末の機能を拡張する機能プログラム」である点で一致し、また、本件特許発明1の「携帯電話機の購入時に予め記憶している基本機能及び付加機能とは異なる新たな機能を有する機能プログラム」とは、「端末の購入時に予め記憶している基本機能及び付加機能とは異なる新たな機能を有する機能プログラム」である点で一致する。
甲3発明の「パーソナルコミュニケータ1」は、配信センタ100では、リクエストに対応したゲーム情報を、ゲームソフトデータベース101から取り出し、該当するパーソナルコミュニケータ1に転送し、パーソナルコミュニケータ1側では、そのゲーム情報を受信し、メモリ8に格納し、その後例えばゲーム開始の操作がされると、メモリ8内のゲーム情報に従うゲームが開始されるから、本件特許発明1の「制御装置から機能プログラムを受信して記憶し、記憶した機能プログラムを起動して動作を行う携帯電話機」とは、「装置から機能プログラムを受信して記憶し、記憶した機能プログラムを起動して動作を行う端末」である点で一致する。また、甲3発明では、配信センタ100では、そのリクエストに対応したゲーム情報を取り出し、伝送路200に送出させ、該当するパーソナルコミュニケータ1に転送するから、本件特許発明1の「携帯電話機の機能を拡張する機能プログラムと、前記機能プログラムの選択を促す選択候補の項目を表示するメニュー表示画面のデータと、機能プログラムの選択を促す選択候補又は当該選択候補の項目を表示する項目表示画面のデータとを記憶し、前記機能プログラム、前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面により前記機能プログラムを選択してもらうためのプログラムメニュー及び前記項目表示画面のデータを電話回線を介して携帯電話機に送信する制御装置」とは、「端末の機能プログラム、を記憶し、前記機能プログラム、のデータを電話回線を介して端末に送信する装置」である点で一致する。
甲3発明の「利用項目の表示が行われ」は、「利用項目の表示は、選択を求める表示(例えば「希望の利用項目を選んで下さい」との表示)と利用項目一覧(ゲーム、カラオケ、その他の項目)とからな」るから、本件特許発明1の「メニュー表示画面を表示」、することに相当する。
甲3発明では、「個別処理画像が表示され、・・・「(2)ゲーム番号一覧」を選択すると、配信センタ100からゲームの番号の一覧表示に関するデータが送信されて表示され、詳しくは、入力領域311と表示覧313とに分かれており、表示覧313には、ゲーム番号とゲーム名が表示され、この表示を参考にして希望のゲーム番号を探し、入力領域311のゲーム番号入力欄315に入力すればよ」いから、甲3発明では、「(2)ゲーム番号一覧」を選択すると表示されたものは、本件特許発明1の「項目表示画面」に相当する。また、甲3発明は、本件特許発明1の「メニュー表示画面及び前記項目表示画面は、携帯電話機用の画面であって、」とは、「メニュー表示画面及び前記項目表示画面は、端末用の画面であって、」である点で一致する。
甲3発明では、「利用項目の表示」、「(2)ゲーム番号一覧」を選択した時の表示、を用いて、ゲームを選択するから、甲3発明は、本件特許発明1の「機能プログラムを選択してもらうためのプログラムメニュー」に相当するものを備えていることは明らかである。また、甲3発明の「利用項目」及び「(2)ゲーム番号一覧」が選択された時に表示される画面、を表示することは、本件特許発明1の「制御装置から前記プログラムメニュー及び前記項目表示画面のデータを受信して前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面を表示し、」とは、「メニュー表示画面及び項目表示画面を表示し、」である点で一致する。
甲3発明は、ゲーム番号入力欄305,315に希望のゲーム番号を入力すれば、その後該当するゲーム情報が送信されてくるから、本件特許発明1の「前記制御装置から送信される機能プログラムは、前記携帯電話機の購入時に予め記憶している基本機能及び付加機能とは異なる新たな機能を有する機能プログラムであって、前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面によって選択されるものであり、」とは、「装置から送信される機能プログラムは、前記端末の購入時に予め記憶している基本機能及び付加機能とは異なる新たな機能を有する機能プログラムであって、メニュー表示画面及び項目表示画面によって選択されるものであり、」である点で一致する。
甲3発明の「パーソナルコミュニケータ1」では、「ゲーム番号入力欄315に希望ゲーム番号を入力した際、パーソナルコミュニケータ1のID番号、希望ゲーム番号等から構成されるゲームリクエストデータが配信センタ100に送信され、配信センタ100では、制御装置120が送信されてきたリクエストデータを入力し、そのリクエストに対応したゲーム情報を、ゲームソフトデータベース101から取り出し、取り出したゲーム情報は伝送路200に送出させ、該当するパーソナルコミュニケータ1に転送」するから、甲3発明の「希望ゲーム番号」は、本件特許発明1の「機能プログラムを指定するデータ」に相当し、甲3発明の配信センタ100が、パーソナルコミュニケータ1から希望ゲーム番号等から構成されるリクエストデータが送信されると、そのリクエストに対応したゲーム情報をパーソナルコミュニケータ1に転送することは、本件特許発明1の「前記制御装置は、前記メニュー表示画面のデータ、前記項目表示画面のデータ、前記機能プログラムの順でツリー状に関連付けて記憶し、前記携帯電話機からの発呼を受けると、前記プログラムメニューを送信して前記ツリーに基づいた項目の入力を促し、前記携帯電話機からの前記ツリーに基づいた項目の入力に従い、入力された項目に対応した項目表示画面のデータに切り替えて前記携帯電話機に送信し前記ツリーに基づいた項目の入力又は機能プログラムの選択を促し、前記携帯電話機から機能プログラムを指定するデータを受信すると、当該データに対応した機能プログラムを送信する制御装置であり、」とは、「装置は、端末から機能プログラムを指定するデータを受信すると、当該データに対応した機能プログラムを送信する装置であり、」である点で一致する。また、甲3発明の「パーソナルコミュニケータ1」は、本件特許発明1の「前記携帯電話機は、前記制御装置から前記プログラムメニュー又は前記項目表示画面のデータを受信して前記メニュー表示画面又は前記項目表示画面を表示し、メニュー表示画面又は項目表示画面から項目が入力されると、入力された項目に対応した項目表示画面のデータを前記制御装置から受信して当該項目表示画面に切り替えて表示し、項目表示画面から所望の機能プログラムが選択されると、当該機能プログラムを指定するデータを前記制御装置に送信し、前記制御装置から前記データに対応する機能プログラムを受信して記憶し、入力された指示に従って前記記憶された機能プログラムを読み出して起動し、前記機能プログラムに従って動作させる携帯電話機」とは、「端末は、メニュー表示画面を表示し、所望の機能プログラムが選択されると、当該機能プログラムを指定するデータを前記装置に送信し、前記装置から前記データに対応する機能プログラムを受信して記憶し、前記記憶された機能プログラムを起動し、前記機能プログラムに従って動作させる端末」である点で一致する。

したがって、本件特許発明1と甲3発明との一致点は以下のとおりである。

[一致点]
「端末の機能を拡張する機能プログラム、を記憶し、前記機能プログラム、のデータを電話回線を介して端末に送信する装置と、メニュー表示画面及び項目表示画面を表示し、装置から機能プログラムを受信して記憶し、記憶した機能プログラムを起動して動作を行う端末とを有するシステムであって、
メニュー表示画面及び前記項目表示画面は、端末用の画面であって、
装置から送信される機能プログラムは、前記端末の購入時に予め記憶している基本機能及び付加機能とは異なる新たな機能を有する機能プログラムであって、メニュー表示画面及び項目表示画面によって選択されるものであり、
装置は、端末から機能プログラムを指定するデータを受信すると、当該データに対応した機能プログラムを送信する装置であり、
端末は、メニュー表示画面を表示し、所望の機能プログラムが選択されると、当該機能プログラムを指定するデータを前記装置に送信し、前記装置から前記データに対応する機能プログラムを受信して記憶し、前記記憶された機能プログラムを起動し、前記機能プログラムに従って動作させる端末であるシステム。」

そして、少なくとも次の点で相違している。

[相違点]
「装置と、端末とを有するシステム」が、本件特許発明1では「制御装置と、携帯電話機とを有する携帯電話システム」であるのに対して、甲3発明では、「配信センタ100と、パーソナルコミュニケータ1とを有するシステム」であり、
「装置」は、本件特許発明1では「機能プログラムの選択を促す選択候補の項目を表示するメニュー表示画面のデータと、機能プログラムの選択を促す選択候補又は当該選択候補の項目を表示する項目表示画面のデータとを記憶し」、「前記メニュー表示画面及び前記項目表示画面により前記機能プログラムを選択してもらうためのプログラムメニュー及び前記項目表示画面のデータを電話回線を介して携帯電話機に送信」するのに対して、甲3発明では、配信センタ100は、パーソナルコミュニケータ1の表示画面のデータを記憶し、送信する点が記載されておらず、
また、「メニュー表示画面及び前記項目表示画面は、端末用の画面であって、」は、本件特許発明1が「携帯電話機との交信を行うための画面であり、」に対して、甲3発明には「利用項目の表示」において、パーソナルコミュニケータ1が配信センタ100と交信を行うことは記載されておらず、
「装置」は、本件特許発明1では「前記メニュー表示画面のデータ、前記項目表示画面のデータ、前記機能プログラムの順でツリー状に関連付けて記憶し、前記携帯電話機からの発呼を受けると、前記プログラムメニューを送信して前記ツリーに基づいた項目の入力を促し、前記携帯電話機からの前記ツリーに基づいた項目の入力に従い、入力された項目に対応した項目表示画面のデータに切り替えて前記携帯電話機に送信し前記ツリーに基づいた項目の入力又は機能プログラムの選択を促」す「制御装置」であるのに対して、甲3発明では、配信センタ100は、パーソナルコミュニケータ1の表示画面のデータを記憶し、送信する点が記載されておらず、
「端末」は、本件特許発明1では「携帯電話機」であって、「前記制御装置から前記プログラムメニュー又は前記項目表示画面のデータを受信して前記メニュー表示画面又は前記項目表示画面を表示し、メニュー表示画面又は項目表示画面から項目が入力されると、入力された項目に対応した項目表示画面のデータを前記制御装置から受信して当該項目表示画面に切り替えて表示」するのに対して、甲3発明では、パーソナルコミュニケータ1であって、配信センタ100から、(ゲーム番号の一覧表示に関するデータが送信されて表示されるものの)表示画面のデータを受信して表示する点が記載されていない点。


6-3-1-2 判断

[相違点]について
甲3号証には、「携帯電話機」が、発呼し、「制御装置」は、表示画面のデータをツリー状に関連づけて記憶し、携帯電話機は入力した項目に対応した項目表示画面のデータを制御装置から受信して表示し、機能プログラムの選択を促され、「携帯電話機の機能を拡張する機能プログラム」を受信し、起動し、動作させる点は、記載も示唆もされていない。

なお、請求人は、審判請求書において、
「本件特許の請求項1およびに係る発明は、(a)甲3号証と、甲2号証、甲4号証、甲5号証に示される本願特許出願前の技術常識に基づいて、あるいは、(b)甲3号証と、甲2、甲4、甲5号証のいずれかに記載された発明とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。」(第3頁)
と主張しているが、
甲2号証は、情報検索端末に係る発明であり、携帯電話機における発明ではなく、
甲4号証は、電話機能を有するCPEユニットに係る発明であり、携帯電話機における発明ではなく、
甲5号証は、WWWにおける情報の検索の仕方に係る発明であり、携帯電話について記載も示唆もない。
したがって、請求人が審判請求書に第44頁において主張するように、これら甲2,4,5号証に示されるように「メニューをサーバに記憶しておき、端末で入力された項目に応じてサーバから端末にメニューを送信する構成は、ネットワークを用いて構成したシステムにおいて端末にメニューを提供する際の常套手段」であると言えたとしても、これらの各号証には上記相違点についての記載も示唆もないから、請求人の当該主張も採用できない。


6-3-1-3 結論
よって、本件特許発明1は、甲3号証及び甲2号証、甲4号証、甲5号証に記載された発明から容易になし得たということはできないから、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。


6-3-2 本件特許発明2について

6-3-2-1 対比、判断

本件特許発明1について、上記「6-3-1 本件特許発明1について」「6-3-1-2 判断」「[相違点]について」で述べたと同様に、本件特許発明2も、「携帯電話機」が、発呼し、「制御装置」は、表示画面のデータをツリー状に関連づけて記憶し、携帯電話機は入力した項目に対応した項目表示画面のデータを制御装置から受信して表示し、機能プログラムの選択を促され、「携帯電話機の機能を拡張する機能プログラム」を受信し、起動し、動作させることを特徴とする発明であるが、この点は、甲3号証には、少なくとも記載も示唆もされていない。

6-3-2-2 結論
よって、本件特許発明2は、甲3号証及び甲2号証、甲4号証、甲5号証に記載された発明から容易になし得たということはできないから、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。


6-4 無効理由3(b)

請求人は、審判請求書第44,45頁の「(5)予備的無効理由」、「(6)請求項2について」において、本件特許発明1,2が、「甲3号証と、甲2号証、甲4号証、甲5号証、のいずれかとの組合せに基づいて本件特許発明を容易に発明することができたものであり、進歩性を有しないことを無効理由として請求する。」としているが、上記「6-3 無効理由3(a)」で検討したとおり、本件特許発明1,2は、甲3号証及び甲2号証、甲4号証、甲5号証に記載された発明から容易になし得たということはできないから、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。


6-5 技術水準

請求人は、
(a)審判請求書の「(7)本件特許出願前における技術水準」において、「携帯電話にプログラムをダウンロードすることによって携帯電話の機能拡張を図る技術が本件特許出願前に周知であったことを示す。」(第45頁)として甲7?9号証を挙げ、
(b)審判事件弁駁書において、「本願特許出願前の技術水準を示す文献」(第14頁)として甲14?23号証を挙げ、
(c)口頭審理陳述要領書において、「本件特許出願前の技術常識を示す証拠として甲24?甲26号証をさらに提出する。」(第7頁)として甲24?26号証を挙げ、
ているが、
(a)甲7号証は、「携帯用電話機」が無線電話回線を通して送られてきたプログラムを記憶し、起動するもので、これによって、基本プログラム以外の機能を実現するものであるが、携帯用電話機が発呼し、「制御装置」から、表示画面のデータを受信し、機能プログラムの選択を促される点、について記載はなく、
甲8号証は、「複合通信端末」であって携帯電話機についての記載も示唆もなく、
甲9号証は、携帯電話装置1が(有線)電話回線を介して、グレードアップ開始を要求するデータを伝送させ、新バージョンの動作プログラムのデータを転送させるものであるが、表示画面のデータを受信し、機能プログラムの選択を促される点、について記載はなく、
(b)甲14号証は、自動車電話システムの移動局104が拡張ソフトウェアをダウンロードするものであるが、移動局が発呼し、表示画面のデータを受信し、機能プログラムの選択を促される点、について記載はなく、
甲16号証は、親子電話の子機が転送指令により指定した機能プログラムを親機から、受信するものであるが、表示画面のデータを受信する点、については記載はなく、
甲17号証は、子機が求めたアプリケーションプログラムを親機に送信させるものであるが、表示画面のデータを受信する点、について記載はなく、
甲18号証は、携帯電話機等がプログラム等を受信するものであるが、携帯電話機が発呼し、表示画面のデータを受信し、機能プログラムの選択を促される点、について記載はなく、
甲19号証は、無線電話機が発呼信号、ソフトウエア変更要求信号を送出し新ソフトウエアデータを受けとるものであるが、表示画面のデータを受信し、機能プログラムの選択を促される点、について記載はなく、
甲20号証は、ページング・システムの選択呼出受信機であって、携帯電話機についての記載も示唆もなく、
甲21号証は、無線選択呼出受信機がプログラム更新制御データを与えられてプログラムを更新するもので、携帯電話機についての記載も示唆もなく、
甲22号証は、セルラ電話器が異なるプログラムを選択しダウンロードするものであるが、表示画面のデータを受信し、機能プログラムの選択を促される点、について記載はなく、
甲23号証は、センター装置からの呼出に対して着信表示を行う無線端末装置において、ミュージック情報をダウンロードして再生するサービスに係るものであって携帯電話機についての記載も示唆もなく、
(c)甲24号証は、移動端末が情報提供サービス要求をし、提供される情報のメニューを示すメニュー情報を受信し、所定の情報(音声、画像データ)を選択するものであるが、プログラムの選択については、記載はなく、
甲25号証は、携帯用コンピュータが、アプリケーションソフトウエアプログラムを遠隔からロードするものであるが、携帯電話機についての記載も示唆もなく、
甲26号証は、個人携帯端末(PDA)が電話回線に電話してソフトウェア製品を受信、実行するものであるが、携帯電話機、表示画面のデータを受信し、機能プログラムの選択を促す点についての記載はない。

したがって、これらの文献に示される技術水準を勘案したとしても、上記「6-2-1-3 結論」、「6-2-2-2 結論」、「6-3-1-3 結論」、「6-3-2-2 結論」の結論を覆すものではない。


第7.むすび

以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1,2に係る発明の特許を無効とすることができない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2008-08-20 
出願番号 特願平8-66954
審決分類 P 1 113・ 537- Y (H04B)
P 1 113・ 121- Y (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梶尾 誠哉  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 清水 稔
坂東 博司
登録日 2006-03-17 
登録番号 特許第3781474号(P3781474)
発明の名称 携帯電話システム及び携帯電話システムの処理方法  
代理人 田村 和彦  
代理人 千葉 昭男  
代理人 須藤 浩  
代理人 上田 忠  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小林 泰  
代理人 富田 博行  
代理人 社本 一夫  
代理人 伊丹 勝  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ