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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) A41H
管理番号 1243089
判定請求番号 判定2011-600027  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2011-10-28 
種別 判定 
判定請求日 2011-06-13 
確定日 2011-09-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第4729355号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「衣装素材群」は、特許第4729355号の特許請求の範囲の請求項1、請求項2及び請求項3に係る発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨
判定請求書の記載からみて、本件判定の請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に示す「衣装素材群」(以下、「イ号物件」という。)は、特許第4729355号の特許請求の範囲の請求項1、請求項2及び請求項3に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明2」及び「本件特許発明3」という。)の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものと認める。

2.手続の経緯
(1)平成17年7月27日 本件特許に係る出願
(2)平成23年4月22日 特許登録(特許第4729355号)
(3)平成23年6月13日 判定請求
(4)平成23年8月 8日 答弁書提出

3.本件特許発明
本件特許発明1、本件特許発明2及び本件特許発明3は、願書に添付した明細書及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、請求項2及び請求項3に記載された以下のとおりのものと認める。
なお、その構成要件を1A)?3D)に分説して記載している(以下、「構成要件1A)」などという。)。
「 【請求項1】
1A)シート材の材料が予め筒状に形成されて、衣装を簡単に製作するために予め部分的な加工が施された筒状の衣装素材からなる衣装製作キットであって、
1B1)筒状の前記衣装素材の一部には、縮径方向の弾性復元力が付与された弾性部材を備えている帽子を形成するための衣装素材と、
1B2)筒状の衣装素材には、シャツ状衣装を製作するために、胴部の下部開口と、首部の上部開口と、両袖用の側部開口とが形成されているシャツ状衣装を形成するための衣装素材と、
1C)の組み合わせを1つのキットとしたことを特徴とする衣装製作キット。
【請求項2】
2A)シート材の材料が予め筒状に形成されて、衣装を簡単に製作するために予め部分的な加工が施された衣装素材からなる衣装製作キットであって、
2B1)筒状の前記衣装素材の一部には、縮径方向の弾性復元力が付与された弾性部材を備えている帽子を形成するための衣装素材と、
2B2)筒状の衣装素材には、シャツ状衣装を製作するために、胴部の下部開口と、首部の上部開口と、両袖用の側部開口とが形成されているシャツ状衣装を形成するための衣装素材と、
2B3)筒状の衣装素材には、ズボン状衣装を製作するために、腰部の上部筒状部と、この上部筒状部の下方に延設された両足用の一対の筒状部とが形成されているズボン状衣装を形成するための衣装素材と、
2B4)筒状の衣装素材には、大きく末広がりに形成されたほぼ円錐台状の素材に、上部には縮径方向の弾性復元力が付与された弾性部材を備え、全体的に縦のひだが形成されているマントやスカート状の衣装を形成するための衣装素材と、
2C)の組み合わせを1つのキットとしたことを特徴とする衣装製作キット。
【請求項3】
3D)前記衣装素材は不織布で形成されていることを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の衣装製作キット。」

4.イ号物件
イ号物件について、判定請求書並びにこれに添付されたイ号図面及びその説明書に基づき検討すると、イ号物件は、以下のとおりのものと認められる。
なお、その構成をa)?c)に分説して記載している(以下、「構成a)」などという。)。
「a)シート材の材料が予め筒状に形成されて、衣装を簡単に製作するために予め部分的な加工が施された筒状の衣装素材からなる衣装素材群であって、
b1)筒状の前記衣装素材の一部には、縮径方向の弾性復元力が付与された弾性部材を備えている帽子を形成するための衣装素材(1)と、
b2)筒状の衣装素材には、シャツ状衣装を製作するために、胴部の下部開口と、首部の上部開口と、両袖用の側部開口とが形成されているシャツ状衣装を形成するための衣装素材(2)と、
b3)筒状の衣装素材には、ズボン状衣装を製作するために、腰部の上部筒状部と、この上部筒状部の下方に延設された両足用の一対の筒状部とが形成されているズボン状衣装を形成するための衣装素材(3)と、
b4)筒状の衣装素材には、大きく末広がりに形成されたほぼ円錐台状の素材に、上部には縮径方向の弾性復元力が付与された弾性部材を備え、全体的に縦のひだが形成されているスカート状の衣装を形成するための衣装素材(4)と、
b5)筒状の衣装素材には、ワンピース状衣装を製作するために、スカート裾部の下部開口と、首部の上部開口と、両袖用の側部開口とが形成されているワンピース状衣装を形成するための衣装素材(5)と、
b6)筒状の衣装素材には、ベスト状衣装を製作するために、胴部の下部開口と、首部の上部開口と、両袖用の袖無しの側部開口とが形成されているベスト状衣装を形成するための衣装素材(6)と、
b7)衣装素材には、貫頭衣型のうわぎ状衣装を製作するために、中央に首部の上部開口が形成されている矩形状の生地と胴回りを縛る帯との組合せからなるうわぎ状衣装を形成するための衣装素材(7)とを備え、
b8)前記の7タイプの衣装素材(1)?(7)は、それぞれについて白色、赤色、桃色、橙色、黄色、青色、緑色及び黒色の8色の不織布からなり、7タイプ8色の合計56種類の衣装素材から構成された衣装素材群であり、
c)前記56種類の衣装素材(1)?(7)のそれぞれには、個別の56個の品番(520)?(587)が付されると共に、7タイプ衣装素材毎に価格\001?\007が設定され、個別の品番と個数を指定することで、任意の種類、色彩、個数の衣装素材が使用者の必要に応じて発注されて販売される共に、任意のものが選択されて使用されることによって、帽子、シャツ、ズボン、スカート、ワンピース、ベスト、うわぎの少なくとも1種が製作され、任意に組み合わされて衣装とされる衣装素材群。」

5.対比・判断
5-1.本件特許発明1について
本件特許発明1とイ号物件とを対比すると、
イ号物件の構成b1)及びb2)は、それぞれ本件特許発明1の構成要件1B1)及び1B2)を充足していることは明らかであが、
イ号物件の構成a)では、「衣装素材群」とされているのに対し、本件特許発明1の構成要件1A)では、「衣装製作キット」である点及び、
イ号物件の構成c)では、「帽子、シャツ、ズボン、スカート、ワンピース、ベスト、うわぎの少なくとも1種が製作され、任意に組み合わされて衣装とされる衣装素材群」とされているのに対し、本件特許発明1の構成要件1C)では、「組み合わせを1つのキットとしたことを特徴とする衣装製作キット」である点で相違している。

ここで、「組み合わせを1つのキットとした」ことについて検討すると、
先ず、「キット」とは、「(1)組立模型などの部品一式。(2)工具・用具一式。」(広辞苑第6版)を意味する。
また、本件特許明細書等には、構成要件1C)の構成に関連して、
(ア)「【技術分野】本発明は、演劇等において着用するための衣装を製作するためのキットに関するものである。」(段落【0001】)
(イ)「【背景技術】小学校や幼稚園などにおいて、発表会の劇に児童や園児が用いる衣装は、母親などがその都度生地を裁断して、縫製もしくは接着等して作成していた。これは、生地の素材として不織布を用いる場合でも同様であった。例えば、ピータンパン役の衣装と、魔女役の衣装を製作する場合には、それぞれの衣装のために、生地を裁断して、それぞれの形状に縫製していた。複数の、類似の衣装を製作する場合も、それぞれの衣装用に生地を裁断して、縫製することが行われていた。」(段落【0002】)
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】ところが、上述したような従来のやり方では、生地の裁断からしなければいけないので、母親などの負担が大きいという問題があった。そこで、本発明は、種々の衣装に応用できる基本的な形状を予め形成した衣装製作のためのキットを準備しておき、役柄に応じて必要な個別の形状に加工するだけで、各役柄用の衣装が容易に製作できることを目的としてなされたものである。」(段落【0003】?【0004】)
(エ)「【産業上の利用可能性】子供用に限らず、大人用の各種パーティーやイベントの衣装や、仮装用に応用することもできる。」(【0013】)
(オ)そして、段落【0010】?【0011】及び図2、3には、実施例として、帽子21と服51とを組み合わせたピーターパン用の衣装及び帽子22とベスト32とズボン42とを組み合わせたアラビアンナイト用の衣装の例が記載されている。

これらの記載からみて、「組み合わせを1つのキットとした」ことは、ピータンパン役、魔女役、アラビアンナイト役等の各役柄用の衣装が容易に製作できることを目的として、複数の衣装素材を「予め組み合わせて一式とした」ことを意味するものと認められる。

そこで、イ号物件の構成c)をみると、帽子とシャツとは「任意に組み合わされる」とされ、「帽子を形成するための衣装素材(1)」と「シャツ状衣装を形成するための衣装素材(2)」とを予め組み合わせて一式としたことが必須の構成とされておらず、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件1C)を充足しているということはできない。

また、いわゆる均等論についても検討すると、本件特許発明1において、構成要件1B1)及び1B2)の個々の衣装素材には、格別な技術的特徴があるものとはいえず、本件特許発明1は、それらを組み合わせて1つのキットとしたことに技術的特徴があるものと認められ、それらを組み合わせて1つのキットとしたことは、本件特許発明1の本質的な部分をなすものであるから、均等論は適用できない。

以上のことから、イ号物件は、少なくとも本件特許発明1の構成要件1C)を充足しているということはできない。

5-2.本件特許発明2について
「5-1.本件特許発明1について」において検討したのと同様に、イ号物件は、少なくとも本件特許発明2の構成要件2C)を充足しているということはできない。

5-3.本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1または本件特許発明2を引用するものであることから、本件特許発明1の構成要件1C)または本件特許発明2の構成要件2C)を含むものである。
よって、イ号物件は、本件特許発明3においても、少なくとも構成要件1C)または構成要件2C)を充足しているということはできない。

6.むすび
以上のとおり、イ号物件の構成は、本件特許発明1、本件特許発明2及び本件特許発明3の構成要件を充足しないから、イ号物件は、本件特許発明1、本件特許発明2及び本件特許発明3の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2011-08-30 
出願番号 特願2005-216906(P2005-216906)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (A41H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渋谷 善弘森藤 淳志久島 弘太郎  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 一ノ瀬 薫
栗林 敏彦
登録日 2011-04-22 
登録番号 特許第4729355号(P4729355)
発明の名称 衣装製作キット  
代理人 鮫島 武信  
代理人 杉本 勝徳  

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