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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02C
管理番号 1243702
審判番号 不服2010-7  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-04 
確定日 2011-09-16 
事件の表示 特願2000-562637「準等温ブライトンサイクルエンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月10日国際公開、WO00/06876、平成14年 7月16日国内公表、特表2002-521608〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯及び本願発明
本願は、1999年7月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年7月31日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成13年1月31日付けで特許法第184条の5第1項に規定する書面が提出されるとともに同法第184条の4第1項に規定する明細書、図面、及び要約の翻訳文が提出され、平成21年1月8日付けで拒絶理由が通知され、平成21年7月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年8月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年1月4日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

そして、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年7月14日付けの手続補正書により補正された明細書並びに平成13年1月31日付けの図面の翻訳文及び国際出願日における図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「エンジンにおいて、
周囲空気を圧縮するコンプレッサと、
該圧縮した空気と燃料との混合体を燃焼させ且つ排ガスを発生させる燃焼装置と、
該燃焼装置から前記排ガスを受け取り且つ該排ガスを膨張させる膨張装置とを備え、
前記コンプレッサがジェロータコンプレッサであり、
該ジェロータコンプレッサが、内側ジェロータと外側ジェロータとを備え、前記内側ジェロータ及び外側ジェロータが互いに接触しないように駆動される、
エンジン。」

2 引用文献記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭54-58153号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

a 「本発明は燃料を酸化ガス(特に空気)中で燃焼させ燃焼ガスを機械的エネルギー発生用膨張装置に供給して熱エネルギーを機械的エネルギーに変換する方法に関するものである。さらに詳しくいえば、本発明においては酸化ガスは膨張装置によって駆動される圧縮機内で予め圧縮される。
本発明はさらに上記方法を実施するための装置にも関する。
以下の説明において、「駆動装置」は圧縮機、膨張装置、燃焼室からなる組立体であって、圧縮機は容積型である。」(第2ページ左上欄第6ないし16行)

b 「第1図を参照すると、圧縮機1の吸込側はパイプ2によりエアフィルタ3に連結され、吐出側はパイプ4によりチヤンバ5に連結され続いて分離タンク6、燃焼室7に連通し、燃焼室には噴射器8を通して燃料が噴霧状に噴射されスパークプラグ(図示しない)により始動点に点火される。燃焼室7は膨張装置9の入口に連結される。」(第3ページ左上欄第8ないし14行)

c 「圧縮機1は膨張装置9により直接継手によりまたはギヤ機構を介して回転駆動され、残留する機械エネルギーは圧縮機または膨張装置のシャフトから取出され利用機構に分配される。」(第3ページ右上欄第9ないし12行)

上記aないしc及び図面から、次のことが分かる。

d 上記a及びb並びに技術常識から、圧縮機1は空気を圧縮し、燃焼室7は圧縮した空気と燃料との混合体を燃焼させかつ排ガスを発生させ、膨張装置9は燃焼室7からの排ガスを受け取りかつ排ガスを膨張させることが分かる。

上記aないしd及び図面から、引用文献には、次の発明が記載されているといえる。

「駆動装置において、
空気を圧縮する圧縮機1と、
圧縮した空気と燃料との混合体を燃焼させかつ排ガスを発生させる燃焼室7と、
燃焼室7から排ガスを受け取りかつ排ガスを膨張させる膨張装置9とを備え、
圧縮機1が容積型の圧縮機1である、
駆動装置。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

3 対比
本願発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「駆動装置」は、その技術的意義並びに形状及び配置関係等からみて、本願発明における「エンジン」に相当し、以下同様に、「空気を圧縮する圧縮機1」は「周囲空気を圧縮するコンプレッサ」に、「圧縮した空気と燃料との混合体を燃焼させかつ排ガスを発生させる燃焼室7」は「該圧縮した空気と燃料との混合体を燃焼させ且つ排ガスを発生させる燃焼装置」に、「燃焼室7から排ガスを受け取りかつ排ガスを膨張させる膨張装置9」は「該燃焼装置から前記排ガスを受け取り且つ該排ガスを膨張させる膨張装置」に、それぞれ相当する。
また、引用文献記載の発明における「容積型の圧縮機1」は、本願発明における「ジェロータコンプレッサ」に、「容積型のコンプレッサ」という限りにおいて相当する。

よって、本願発明と引用文献記載の発明とは、
「エンジンにおいて、
周囲空気を圧縮するコンプレッサと、
該圧縮した空気と燃料との混合体を燃焼させ且つ排ガスを発生させる燃焼装置と、
該燃焼装置から前記排ガスを受け取り且つ該排ガスを膨張させる膨張装置とを備え、
前記コンプレッサが、容積型のコンプレッサである、
エンジン。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点
容積型のコンプレッサが、本願発明においては、「ジェロータコンプレッサ」であり、「該ジェロータコンプレッサが、内側ジェロータと外側ジェロータとを備え、前記内側ジェロータ及び外側ジェロータが互いに接触しないように駆動される」のに対し、
引用文献記載の発明においては、どのようなコンプレッサであるのかが明らかではない点(以下、「相違点」という。)。

4 判断
上記相違点について検討する。
容積型の流体機器として、内側ジェロータと外側ジェロータとを備えたジェロータ装置を用いることは周知技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開平2-38732号公報、特開平9-273486号公報の段落【0001】ないし【0004】及び【0027】、特公平6-103031号公報の第12欄第27ないし37行を参照。)である。
また、ジェロータ装置において、内側ジェロータ及び外側ジェロータが互いに接触しないように設計することは周知の技術課題(以下、「周知の技術課題」という。例えば、特公平6-103031号公報の第12欄第27ないし37行、特許第2818723号公報の段落【0001】、【0005】、【0024】、【0026】、【0037】、特開平2-163485号公報の第1ページ右下欄第15ないし17行、第3ページ左上欄第13ないし16行、特開昭59-20591号公報の第2ページ右上欄第2行ないし左下欄第3行、第3ページ右下欄第14ないし16行を参照。)である。
してみれば、引用文献記載の発明において、周知技術及び周知の技術課題を考慮することによって、圧縮機1に代えて周知の容積型流体機器であるジェロータ装置を採用するとともに、内側ジェロータ及び外側ジェロータが互いに接触しないように駆動するような設計を行い、該相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が格別の創意を要することなく想到できたことである。
そして、本願発明を全体としてみても、その奏する効果は、引用文献記載の発明並びに周知技術及び周知の技術課題から当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。
よって、本願発明は、引用文献記載の発明並びに周知技術及び周知の技術課題に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明並びに周知技術及び周知の技術課題に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-20 
結審通知日 2011-04-21 
審決日 2011-05-09 
出願番号 特願2000-562637(P2000-562637)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 弘  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 柳田 利夫
西山 真二
発明の名称 準等温ブライトンサイクルエンジン  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  
代理人 富田 博行  
代理人 神田 藤博  
代理人 社本 一夫  
代理人 千葉 昭男  

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