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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  E02F
管理番号 1244107
審判番号 無効2010-800012  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-01-19 
確定日 2011-09-13 
事件の表示 上記当事者間の特許第2008978号発明「法面の加工方法および法面の加工機械」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2008978号の請求項1,4及び5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件の特許第2008978号に係る発明についての出願についての手続きの経緯は以下の通りである。
平成2年9月12日:特許出願(特願平2-241805号)
平成8年1月11日:特許の設定登録
平成22年1月19日:本件の請求項1,4及び5に係る発明についての特許に対して本件無効審判の請求
平成22年3月31日:被請求人より答弁書提出
平成22年6月1日:被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成22年6月8日:請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成22年6月22日:口頭審理
平成22年6月22日:審理終結


第2 本件発明
本件特許の請求項1,4及び5に係る発明(以下,それぞれ「本件特許発明1」,「本件特許発明4」及び「本件特許発明5」という。)は,本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1,4及び5に記載された次のとおりのものと認める。
1.本件特許発明1
「【請求項1】土砂等の切取り、掘削等の作業を行ない法面を形成する部位の上部の地面に所定間隔離間させて左右のアンカーを固定する左右のアンカー固定工程と、土砂等の切取り、掘削等の作業を行なうバックホウ等の油圧で走行したり作動される法面の加工機械本体に前記左右のアンカーにワイヤーがそれぞれ取付けられた左右のウインチあるいは前記左右のアンカーに固定された左右のウインチのワイヤーを前記法面の加工機械本体に取付ける左右のウインチ取付け工程と、前記法面の加工機械本体および前記左右のウインチを作動させて法面を形成する部位の土砂の切取り、掘削等の作業を行なう法面形成工程とを含むことを特徴とする法面の加工方法。」

2.本件特許発明4
「【請求項4】バックホウ等の油圧で走行したり作動する法面加工機械本体と、このバックホウ等の法面の加工機械本体に取付けられた左右のウインチと、この左右のウインチから伸縮されるワイヤーを固定する法面を形成する部位の上部の地面に所定間隔離間されて固定される左右のアンカーとからなることを特徴とする法面の加工機械。」

3.本件特許発明5
「【請求項5】バックホウ等の油圧で走行したり作動する法面の加工機械本体と、法面が形成される部位の上部の地面に所定間隔離間されてアンカーで固定された左右のウインチと、この左右のウインチから伸縮されるワイヤーを前記法面の加工機械本体に取付ける取付け金具とからなることを特徴とする法面の加工機械。」


第3 当事者の主張の概要
1.請求人の主張
請求人は,本件特許発明1,本件特許発明4及び本件特許発明5についての特許(以下,それぞれ「本件特許1」,「本件特許4」及び「本件特許5」という。)を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由として,次の無効理由1乃至3を主張し,証拠方法として甲第1号証乃至甲第5号証を提出している。

(1)無効理由1
本件特許発明1は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
特に,本件発明と甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明はいずれも建設機械という同じ技術分野であって,甲第1号証に記載された発明における自走しない加工機械に代え,当業者が甲第2号証に記載された発明に係る油圧で走行したり作動される作業車を適用することに困難性はない。
また,甲第1号証に記載された発明は,中央のワイヤーと左右のワイヤーとが協働して,台車を左右に移動させる作用をしているものである。一方,甲第2号証には,狭い範囲ではあるが,2台のウインチによって巻き上げられる法面作業車の向きが変えられる旨の記載があり,甲第1号証に記載された発明の左・中・右の3本のウインチおよびワイヤーに代え,当業者が甲2号証に記載された発明の左右2本のウインチ及びワイヤーを適用することに困難性はない。
そして,機械の作業内容と移動の方法とは直接関係するものではない。
よって,本件特許発明1は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。
(2)無効理由2
本件特許発明4は,甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
特に,無効理由1と同様の理由により,甲第1号証に記載された発明の自走しない加工機械に代え,甲第2号証に記載された発明の油圧で走行したり作動されるものを適用すること,甲第1号証に記載された発明の左・中・右の3本のウインチおよびワイヤーに代え,当業者が甲第2号証に記載された発明の左右2本のウインチおよびワイヤーを適用することに困難性はない。
また,ウインチを加工機械側に取り付けるか,法面が形成される地面側に取り付けるかは,本件特許発明1に択一的に記載されていることや甲第3?5号証にウインチが建設機械側に取り付けられた点が開示されていることを考慮すると,当業者が容易に選択できる設計事項にすぎず,地面側に代えて加工機械側に取り付けることに困難性はない。
よって,本件特許発明4は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。
(3)無効理由3
本件特許発明5は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
特に,無効理由1と同様の理由により,甲第1号証に記載された発明の自走しない加工機械に代え,甲第2号証に記載された発明の油圧で走行したり作動されるものを適用すること,甲第1号証に記載された発明の左・中・右の3本のウインチおよびワイヤーに代え,当業者が甲第2号証に記載された発明の左右2本のウインチおよびワイヤーを適用することに困難性はない。
よって,本件特許発明5は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開平2-144415号公報
甲第2号証:特開昭61-176703号公報
甲第3号証:実公昭46-5886号公報
甲第4号証:実公昭35-7654号公報
甲第5号証:実公昭45-32029号公報

2.被請求人の主張
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め,その理由として,次のように主張している。
(1)無効理由1及び3に対して
本件特許発明1は,雑草林のような急勾配の地形部分に新たに法面を形成する加工方法及び加工機械に関するものであるのに対し,甲第1号証に記載された発明は老朽化した既存の傾斜状法面の破壊作業を行うものであり,甲第2号証に記載された発明はアスファルトを敷均する(いわゆる法面を舗装する)ものである。したがって,本件特許発明1及び3と甲第1及び甲第2号証に記載された発明との目的(課題)・効果は,破砕という作業内容で一部重複するものの,相違しているので,甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明とを単に結合したとしても,特許法第29条第2項に規定する進歩性は否定されるものではない。
また,甲第1号証に記載された発明の左右ワイヤーは車輪の方向を変えるだけのもので,該左右ワイヤーには台車を左右方向に移動させる張力が働くものではなく,台車は自重で台車が垂直状体になるように移動し,また,台車が自走式のものでないため,特に急勾配の場合には,車輪の方向をいくら変えても方向は変わらず,左右方向への移動は不可能であるし,甲第2号証に記載された発明は,巻上機を法面の上部に配置できるような整備された場所でしか使用することができないので,甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明とを単に結合したとしても,本件特許発明1及び3のように,急勾配の地形部分でも左右のアンカーの幅寸法間にわたって法面の加工機械を上下左右方向に移動させて作業を行うということはできない。
(2)無効理由2に対して
上記無効理由1に対する主張に加え,甲第3号証に記載された発明は,法面の上部に位置させたブルドーザを左右のアンカー代わりに使用した法面を締め固める装置であり,甲第4号証に記載された発明は,法面の上部位置に植設した杭に条体を取付けて1本の条体の牽引状体で上下方向にだけ移動して傾斜面を締め固める振動ローラー機であり,甲第5号証に記載された発明は,法面の上部に位置させたブルドーザにワイヤーを取付けて1本のワイヤーの牽引状態で上下方向にだけ移動して傾斜面を転圧する装置であるから,甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明を単に結合したとしても,特許法第29条第2項に規定する進歩性は否定されるものではない。


第4 無効理由についての判断
1.証拠方法に記載された事項
(1)本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には,次の事項が記載されている。
(1a)「1.傾斜した補強面上を走行可能な台車と、この台車に取付けられ所定の振幅で駆動するハンマーで上記補強面を打撃することにより上記補強面を破砕する破砕機と、この破砕機と上記台車との間に設けられ上記破砕機の姿勢を調整する姿勢調整装置と、上記補強面の上方に設置された基台と上記台車とをワイヤーで連結し、このワイヤーの巻取機を駆動することにより上記台車を補強面上で移動させる台車移動装置とを備えた地山補強面破砕装置。」(特許請求の範囲)

(1b)「〔産業上の利用分野〕
この発明は、地山補強面の改修工事において、その新しい補強面の施工に先立ち、既存の補強面を破砕する場合に使用する地山補強面破砕装置に関するものである。」(1頁右欄6?10行)

(1c)「従来の地山補強面の破砕は、・・・作業上危険が伴うとともに、多くの人手を要し、人件費や工事期間が増大するという問題点があった。・・・
この発明は以上のような問題点を解消するためになされたもので、安全でかつ大幅な省力化と工期の短縮とが可能となる地山補強面破砕装置を得ることを目的とする。」(2頁左上欄7行?右上欄1行)

(1d)「〔課題を解決するための手段〕
この発明に係る補強面破砕装置は、補強面上を走行可能な台車と、この台車に姿勢調整装置を介して取付けられた破砕機と、上記補強面の上方に設置された基台と上記台車とをワイヤーで連結し、このワイヤーの巻取機を駆動することにより上記台車を補強面上で移動させる台・車移動装置とを備えたものである。」(2頁右上欄2?9行)

(1e)「先ず、台車移動装置の巻取機を駆動してそのワイヤーの長さを調整し、台車を工事の対象位置にまで移動させそこで停止させる。次に、台車上の破砕機を駆動してそのハンマーによりこの部分の補強面を破砕する。同時に、姿勢調整装置を駆動して破砕機の姿勢を適宜変化させ、破砕能力の維持を図る。その位置における破砕が完了すると再び台車移動装置を駆動して台車を移動させ、新たな作業位置で停止させた後、破砕作業に入る。以上の動作を順次繰り返す。
なお、台車の移動と破砕機および姿勢調整装置との駆動は併行して行うようにしてもよい。」(2頁右上欄18行?左下欄9行)

(1f)「・・・先ず、台車(1)について説明する。(2)はこの台車(1)のベース、(3)は補強面(4)上を走行するための車輪、(5)はベース(2)上に組立てられたフレーム、(6)はフレーム(5)に取付けられた金網で、台車(1)の全面を覆うことにより、補強面の破片が周囲に飛散するのを防止する。・・・(9)はベース(2)の前方端に設けられた連結具で、後述する台車移動装置のワイヤーが係止される。
次に(10)は破砕機で、圧縮空気によりそのハンマー(10a)を駆動して補強面(4)を破砕する。この実施例では、4台の破砕機を搭載している。・・・」(2頁左下欄17行?右下欄14行)

(1g)「第5図および第6図は破砕装置を現場で動作させている場合の状況を説明するそれぞれ側面図および正面図である。図において、(12a)(12b)(12c)は台車(1)を補強面(4)上で移動させるためのワイヤーで、補強面(4)の上方にそれぞれアンカーにより地面に固着された基台(13a)(13b)(13c)に取付けられたウインチに巻回されている。・・・
第7図は上記のワイヤー(12a)(12b)(12c)により台車(1)を牽引する場合の各ワイヤー(12)と台車(1)との連結構造を示す説明図である。図において、主ワイヤ-(12a)は台車(1)のベース(2)に設けられた固定連結具(9a)に係止されており主として台車(1)の重量を支え、台車(1)の昇降移動を受持つ。左ワイヤ-(12b)および右ワイヤー(12c)は台車(1)のベース(2)に軸(16)を介して回動自在に取付けられた可動連結具(9b)の先端に係止されており、台車(1)の左右方向への移動を受持つとともに、事故等により主ワイヤ-(12a)が緩んだり切れたような場合に台車(1)の落下を防止する。(17)は可動連結具(9b)の回動に応じて車輪(3)の軸を水平面内で回動させる舵取り機構である。」(3頁右上欄1行?左下欄3行)

(1h)「次に動作について説明する。・・・この準備作業が終了すると、操作盤(14)の操作ボタンを操作して、先ず台車(1)を補強面(4)の所定位置にまで移動させる。この場合、傾斜面の登坂は主ワイヤ-(12a)の牽引力により行い、左右方向への方向転換は左右両ワイヤー(12b)(12c)の張力バランスで行う。即ち、例えば右ワイヤー(12c)に比較して左ワイヤ-(12b)の張力が大きくなるようウインチモータ(18b)による巻取量をより大きくすると、第7図に示すように、可動連結具(9b)が反時計方向に回動し、舵取り機構(17)がこれに従動して車輪(3)を左へ傾動させる。
台車(1)が補強面(4)の所定位置に停止すると、破砕作業を開始する。即ち、操作盤(14)の操作ボタンを操作してエア一端末部(24)の電磁弁を開き、コンプレッサー(26)からの高圧エアーを各破砕機(10)へ供給する。このエアーの圧力に応じてハンマー(10a)が補強面(4)を所定の周波数で打撃する。操作員はこの打撃による補強面(4)の破砕の、進行具合を目視し、必要に応じて油圧端末部(22)の電磁弁を開閉操作して各油圧シリンダを駆動し、姿勢調整装置(11)を動作させることにより、ハンマー(10a)を更に下降させたり、横へ移動させたり、また傾動させ、効率のよい破砕作業を追求する。・・・
最初の位置における破砕作業が終了すると、再びウインチモータ(18a)等の操作スイッチを操作することにより、台車(1)を隣接位置にまで移動させ、その停止位置で破砕動作を再開する。以上の操作を繰り返すことにより、広大な補強面(4)の破砕を、わずかの操作員により高能率に短期間に行うことが可能となる。」(3頁右下欄9行?4頁右上欄15行)

(1i)「〔発明の効果〕
以上のように、この発明では、補強面上を走行可能な台車と、この台車に姿勢調整装置を介して取付けられた破砕機と、上記補強面の上方に設置された基台と上記台車とをワイヤーで連結し、このワイヤーの巻取機を駆動して上記台車を移動させる台車移動装置とを備えたので、作業の安定が確保されるとともに、大容量の破砕機を使用することができ、大幅な省力化と工事期間の短縮が可能となる。」(5頁左上欄14行?右上欄3行)

(1j)第6図には,巻取機が取り付けられた基台が,所定間隔離間させて,傾斜した補強面の上方の「左,中,右」の位置に設置された点が開示されている。

これらの記載によれば,甲第1号証には次の発明が記載されていると認められる。
「破砕作業を行う傾斜した補強面の上方に,所定間隔離間させて,左,中,右の位置に設置した3つの巻取機がそれぞれ取り付けられた基台をアンカーにより地面に固着し,破砕作業を行う破砕機を搭載した台車に前記巻取機のワイヤーを係止する工程と,巻取機を駆動させて破砕機を搭載した台車を所定位置まで移動させ,破砕機で破砕作業を行う工程を含む傾斜した補強面の改修方法。」(以下,「甲1発明1」という。)

「破砕機を搭載した台車と,傾斜した補強面の上方にアンカーにより地面に固着された基台に取り付けられ,左,中,右の位置に所定間隔離間させて設置された3つの巻取機と,この巻取機に巻回されているワイヤーが係止される前記台車の連結具とを備えた地山補強面破砕装置。」(以下,「甲1発明2」という。)

(2)本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には,次の事項が記載されている。
(2a)「1.舵取り手段を有する処理用作業車を法面に沿って巻上げ巻下げする2台の同型のウインチを巻上機上の左右に搭載し、各ウインチに巻かれるワイヤロープを前記作業車の前部の牽引フレームの左右の端部にそれぞれ接続し、前記各ウインチの駆動用油圧モータの油圧回路には、両油圧モータに供給する作動油の流量を等流量とする分流装置を設けると共に、該分流装置と前記油圧モータとの間の各油圧モータ対応の回路間に、両回路間を連通、遮断する2位置切換弁を設けたことを特徴とする法面処理用作業車の巻上装置。
2.前記油圧モータは可変容量形モータでなり、かつ該油圧モータの油圧源となる油圧ポンプを複数台並列に設置してその駆動台数が選択できるように構構成したことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の法面処理用作業車の巻上装置。」(特許請求の範囲)

(2b)「・・・すなわち本発明の巻上装置においては、左右のウインチを巻上げ方向に作動させる場合には、前記2位置切換弁を左右のウインチモータへの回路が連通する位置にすることにより、作業車上のオペレータのハンドル操作によって、作業車の向きが変えられるようにすることにより、前記境界線に沿って作業車が移動できるようにし、・・・」(2頁右上欄3?10行)

(2c)「・・・1は舗装される法面、2は法面の一部に形成された巻上機の通路で、・・・4は法面処理用巻上機であり、該巻上機4は、クローラ式走行体5の上に旋回装置6を介して巻上機本体7を旋回自在に搭載してなる。本体7上には舵取り手段を有するアスファルトフィニッシャ8を法面1に沿ってロープ19a,19bを介して巻上げ巻下げするウインチ9A,9Bと、・・・を搭載してなる。・・・
本発明の特徴となる部分は、アスファルトフィニッシャ8の巻上装置であり、本体7上の左右に搭載されるウインチ9A,9Bは同型の油圧モータ9a,9bとドラム9c,9dをそれぞれ有するもので、各ウインチ9A,9Bにそれぞれ巻取り繰出しされるワイヤロープ19a,19bを、アスファルトフィニッシャ8の前部に設けた牽引フレーム20の左右の端部にそれぞれ接続する。」(2頁右上欄20行?右下欄11行)

(2d)「この装置において、法面1の舗装を行なう場合は、運転室18内のオペレータがウインチ9A,9B,11を運転することにより、アスファルトフィニッシャ8をゆっくりと巻上げて舗装すると共に、バギ車10をアスファルト供給車(図示せず)とアスファルトフィニッシャ8との間で往復させてアスファルトフィニッシャ8にアスファルトを供給しながら作業を行なう。この場合、運転室18のオペレータは、油圧ポンプ22A,22Bのうちの1台を作動させると同時に、油圧モータ9a,9bの制御部を低速側に切換え、方向切換弁25を右位置に切換え、かつ2位置切換弁33をa位置(連通位置)に切換える。これにより、油圧ポンプ22A,22Bのいずれかより吐出した圧油は管路31,管路31A,31Bおよびカウンタバランス弁32A,32Bのチェック弁34A,34Bをそれぞれ通って油圧モータ9a,9bに供給され、これらの油圧モータ9a,9bを出た作動油は管路30A,30Bを通り、油流量の多い方の管路30A(または30B)の油が2位置切換弁33を通して他方の管路30B(または30A)に流れ込み、その後、分流装置26、管路30、方向切換弁25を通ってタンク29に戻る。従って、油圧モータ9a,9bに流れる流量を変えることができ、アスファルトフィニッシャ8上のオペレータはアスファルトフィニッシャ8の向きを変えることができ、アスファルトの舗装ずみの領域と、未舗装領域との間の境界線に沿って上昇方向に移動させることができる。」(3頁左上欄18行?左下欄7行)

(2e)「なお、上記実施例においては,作業車がアスファルトフィニッシャである場合について示したが、舗装材料がコンクリートである場合、あるいは法面にて列ごとに処理する他の処理用作業車についても本発明を適用することができる。」(4頁左上欄8行?12行)

これらの記載によれば,甲第2号証には次の発明が記載されていると認められる。
「アスファルトフィニッシャ等の処理用作業車を法面に沿って巻上げ巻下げする2台の同型のウインチを巻上機上の左右に搭載し,各ウインチに巻かれるワイヤロープを前記作業車の前部の牽引フレームの左右の端部にそれぞれ接続し,前記各ウインチの駆動用油圧モータの油圧回路には,両油圧モータに供給する作動油の流量を等流量とする分流装置を設けると共に,該分流装置と前記油圧モータとの間の各油圧モータ対応の回路間に,両回路間を連通,遮断する2位置切換弁を設け,左右のウインチを巻上げ方向に作動させる場合には,前記2位置切換弁を左右のウインチモータへの回路が連通する位置にすることにより,作業車上のオペレータのハンドル操作によって,作業車の向きが変えられるようにすることにより,アスファルトの舗装ずみの領域と未舗装領域との間の境界線に沿って作業車が移動できるようにした法面処理用作業車の巻上装置。」(以下,「甲2発明」という。)

(3)本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には,次の事項が記載されている。
(3a)「7は締固め機械1に取付けた巻取り用減速機でVベルト8を介して原動機3と連結されており、減速機7の出力は、出力軸の減速機鎖車9、ローラチェーン10、ドラム軸鎖車11を経て、振動締固め機械1の一側面の前後に各1個宛設けられた軸受12に支承されたドラム軸13に伝達される。ドラム軸13の両端には、ワイヤロープ14を巻取り巻戻すワイヤ用ドラム15を備えてあるもちろんワイヤロープ14の一端はワイヤドラム15に繋着しており、ドラムには充分なワイヤロープが巻かれている。
16は保持用機械で、この例ではブルドーザである。ブルドーザ16と締固め機械1とはワイヤロープ接手17を介してワイヤロープ14により繋着されている。
この装置により法面19を転圧するには、ブルドーザ16を道路等18上に置き、ワイヤロープで繋留した締固め機械1を法面に配置すれば、転圧輪は自動的に法面に接地するから、法面縦断長手方向は両機械を並行移動運転すればよいし、締固め軌跡の拡幅は法面横断上下方向へ繋留ワイヤロープを巻取り巻戻しすることにより、任意の場所の転圧が可能となり、法面の横断上下幅及び縦断方向の長さに制限されることなく、広範囲に縦横自在の転圧施工が可能となる。」(2欄13?37行)

(3b)「第2図に示すように両機械を配置した後、締固め機械1と保持用機械(ブルドーザ16)を法面縦断方向に並行往復運転させ、同時に転圧輪5を起振させることにより、法面はよく締固められる締固め機械1を縦断方向締固め後の軌跡の拡幅を行うため法面の幅方向(第2図では上下)に移動させたい時は、ワイヤロープ巻取装置の操作用スイツチ27を用いて、巻取装置を駆動、解放、停止させることにより、締固め機械をそれぞれ法面を上昇、降下、任意の位置に保持させることができ、更に図示していないがワイヤロープの片方を他方よりも長くあるいは短くさせて斜め平行移動の操作により変化のある締固めをさせることも可能である。」(3欄36行?4欄12行)

(3c)「道路、堰堤等の法面に配置して、原動機により駆動されるワイヤロープ巻取装置のドラムを一側面の前後に設けた自走振動式締固め機械と、道路、堰堤等の上面に配置した保持用機械とをワイヤロープにより連結し、両機械を道路、堰堤等に沿つて縦断並行移動させると共に軌跡の広幅を該巻取装置の遠隔操作により、該法面の横断上下方向に幅寄せできるようにさせ、駆動時は上昇、解放時は降下、停止時は任意位置に保持を可能ならしめ、更に該ワイヤロープの片方を他方よりも長くあるいは短くさせることにより縦横自在に操縦転圧し得るようにしたことを特徴とする道路、堰堤等の法面締固め装置。」(実用新案登録請求の範囲)

(4)本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には,次の事項が記載されている。
「・・・輾圧機に於て機枠3上に原動機2を利用して廻転する捲取機4を設け傾斜地面の傾斜上位部に一端を固定させた条体5の他端を捲取機4のドラム6に捲き付け機枠3の前端下部に条体5の滑車9を設け機枠3の後部に枠杆16を設け之れに枠杆16の傾斜方向調整ハンドル17及機枠操作ハンドル18を設けてなる傾斜地面輾圧用振動ローラー機の構造。」(登録請求の範囲)

(5)本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には,次の事項が記載されている。
(5a)「この考案は傾斜地面例えば道路、堰堤の法面を転圧する装置に関するもので、・・・」(1欄17?18行)

(5b)「1は傾斜地面転圧用ローラ機のフレームでその上に原動機2、変速機3、捲取機4が取付けてあり、変速機3は原動機2の出力軸5よりベルト6をへて駆動され、捲取機4は変速機3の出力軸7よりチエーン8、中間軸9、チエーン10をへて駆動される。・・・28は法面でその上に以上説明したローラ機が第1図のように配置してあり、法面28上端の平坦な頂面29にアンカ・・・としてのブルドーザ30が配置され、ブルドーザ30と捲取機4がワイヤ31を介して連結してある。・・・」(1欄23行?2欄5行)

(5c)「法面28を締固める場合アンカとしてのブルドーザ30(これは杭のような支持部材であつてもよい)よりワイヤ31を介してローラ機を法面28上にセツトし、原動機2を始動してリモートコントロールにより変速機3を中立より前進位置に切替え、ローラ11,12を駆動すると共に捲取機4をローラ11,12と同一周速度で駆動すると、ローラ機を法面28に沿つて上方(左方)に引き上げることができる。その時ローラ11,12により法面28を転圧することができ、一方排土板22,23を操作して法面を所定の角度に成形しかつ整地することができる。・・・」(2欄15?26行)

2.無効理由1について
2-1.対比
本件特許発明1と甲1発明1を対比すると,甲1発明1の「傾斜した補強面」及び「巻取機」が本件特許発明1の「法面」及び「ウインチ」にそれぞれ相当する。
また,本件特許発明1の「土砂等の切取り、掘削等の作業を行ない法面を形成する」ことと,甲1発明1の傾斜した補強面の改修方法において「破砕作業を行う」ことは,「法面を形成する」ことで共通し,本件特許発明1の「砂等の切取り、掘削等の作業を行なうバックホウ等の油圧で走行したり作動される法面の加工機械本体」と,甲1発明1の「破砕作業を行う破砕機を搭載した台車」とは,「法面の加工機械本体」である点で共通している。
さらに,甲1発明1の「破砕作業を行う傾斜した補強面の上方に,所定間隔離間させて,左,中,右の位置に設置した3つの巻取機がそれぞれ取り付けられた基台をアンカーにより地面に固着し,破砕作業を行う破砕機を搭載した台車に前記巻取機のワイヤーを係止する工程」も,傾斜した補強面の上方(法面を形成する部位の上部)に基台を介して巻取機を地面にアンカーで固着し,破砕機を搭載した台車(法面の加工機械本体)に巻取機のワイヤーを係止している工程であることから,本件特許発明1の「左右のアンカー固定工程」及び「左右のウインチ取付け工程」とは,「アンカー固定工程」及び「ウインチ取付け工程」である点で共通している。
そして,甲1発明1の「傾斜した補強面の改修方法」が,本件特許発明1の「法面の加工方法」にそれぞれ相当する。

したがって両者は,
「法面を形成する部位の上部の地面に所定間隔離間させてアンカーを固定するアンカー固定工程と、法面の加工機械本体に,前記のアンカーに固定されたウインチのワイヤーを取付けるウインチ取付け工程と、前記法面の加工機械本体および前記ウインチを作動させて法面を形成する作業を行なう法面形成工程とを含む法面の加工方法。」
である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
法面を形成する作業及び法面の加工機械本体について,本件特許発明1は,土砂等の切取り,掘削等の作業を行うバックホウ等の油圧で走行したり作動されるものであるのに対し,甲1発明1は,傾斜した補強面上を走行可能で,破砕作業を行うものであり,破砕機が油圧で作動されるものであるものの,油圧で走行するか不明な台車である点。

(相違点2)
アンカー及びウインチについて,本件特許発明1は,法面及び加工機械本体の「左右」,すなわち2つ設けられているのに対し,甲1発明1では,補強面及び台車の「左,中,右」,すなわち3つ設けられている点。

(相違点3)
ウインチ取付け工程について,本件特許発明1は,法面の加工機械本体にウインチを取り付けるか,あるいはアンカーに固定されたウインチのワイヤーを法面の加工機械本体に取付けるか,の二者択一となっているのに対し,甲1発明1は,巻取機に巻回されているワイヤーを台車に係止したものである点。

2-2.判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
本件特許発明1の「土砂等の切取り,掘削等の作業」について,「土砂等の切取り,掘削」以外にどのような作業が含まれるのか検討するために本件特許公報の発明の詳細な説明を参酌すると,「本発明の実施例」として,7欄7?14行には,「第23図の実施例において、前記本発明の実施例と主に異なる点は、回動ブーム12のリンク12aの先端部に油圧モーター36と、この油圧モーター36によって回転駆動される回動爪37とからなる破砕切断装置38を設置した点で、このようにリンク12aの先端部に破砕切断装置38を設置した法面の加工機械28Eにすることによって、法面を形成する部位の地面の土砂等の切取りによる除去を効率よく行う事ができる。」と記載され,「土砂等の切取り,掘削等の作業」には,破砕作業が含まれていると解される。
してみると,甲1発明1の「破砕作業」は,本件特許発明1の「土砂等の切取り,掘削等の作業」に相当し,また,甲1発明1の「破砕機を搭載した台車」は,本件特許発明1の「土砂等の切取り,掘削等の作業を行う法面の加工機械本体」に相当する。
一方,法面の加工機械として,油圧で走行したり作動されるものは,例えば,甲2発明のアスファルトフィニッシャ,甲第3号証に記載された自走振動式締固め機械,甲第5号証に記載された傾斜地面転圧用ローラ機等があるように,慣用されている。また,バックホウも法面形成を行うために,一般的に使用されているものである。
そして,本件特許発明1のバックホウ,甲1発明1の破砕機を搭載した台車,上記慣用されている油圧で走行したり作動される車両は,いずれも建設機械という同じ技術分野に属するものであるので,甲1発明1の破砕機を搭載した台車に代えて,バックホウ等の油圧で走行したり作動される台車とすることに,当業者であれば格別の困難性はない。

(相違点2について)
甲1発明1の左右の巻取機及びワイヤーについて,その機能を検討すると,甲第1号証の発明の詳細な説明には次のように記載されている。
「左ワイヤ-(12b)および右ワイヤー(12c)は台車(1)のベース(2)に軸(16)を介して回動自在に取付けられた可動連結具(9b)の先端に係止されており、台車(1)の左右方向への移動を受持つとともに、事故等により主ワイヤ-(12a)が緩んだり切れたような場合に台車(1)の落下を防止する。」(上記「第4 1.(1f)」参照),
「左右方向への方向転換は左右両ワイヤー(12b)(12c)の張力バランスで行う。即ち、例えば右ワイヤー(12c)に比較して左ワイヤ-(12b)の張力が大きくなるようウインチモータ(18b)による巻取量をより大きくすると、第7図に示すように、可動連結具(9b)が反時計方向に回動し、舵取り機構(17)がこれに従動して車輪(3)を左へ傾動させる。」(上記「第4 1.(1g)」参照)。
これらの記載から,左右巻取機及びワイヤーの操作によって,台車の左右方向への移動が行われていることは明らかである。
また,主ワイヤーの機能については,「主ワイヤ-(12a)は台車(1)のベース(2)に設けられた固定連結具(9a)に係止されており主として台車(1)の重量を支え、台車(1)の昇降移動を受持つ。」(「上記「第4 1.(1f)」参照)と記載され,台車の重量は主に主ワイヤー(12a)で支え,台車を上方に引き上げる力も主ワイヤー(12a)にかかることは明らかである。
しかし,左右の巻取機及びワイヤーの操作によって台車が左右方向に移動するものである以上,左右のワイヤーにも台車の荷重がかかることは,技術常識を参酌すれば自明であり,また,左右のワイヤーが台車の重量を受け持つことができるものであることは,「事故等により主ワイヤ-(12a)が緩んだり切れたような場合に台車(1)の落下を防止する。」(上記「第4 1.(1f)」参照)という記載からも明らかである。
一方,被請求人は,ワイヤーの作用について、甲1発明1は自走式ではなく、特に急勾配の場合に台車の荷重がかかるので、現実には左右のワイヤーを牽引しても台車は移動できないものである旨主張しているが,上記「第4 1.(1f)」及び「同(1g)」に記載されているように,台車が左右方向へ移動されるものである以上,急勾配の場合であっても台車を左右方向へ移動させることが可能となるようなワイヤー及び巻取機を用いることは,当業者であれば当然に行う事項にすぎない。
また,甲2発明は,本件特許公報第9図に示されたように,法面の左右方向の広い範囲にわたって加工機械を移動させるものではないが,ウインチおよびワイヤロープの機能のみに着目すると,甲2発明は「左右のウインチを巻上げ方向に作動させる場合には、前記2位置切換弁を左右のウインチモータへの回路が連通する位置にすることにより、作業車上のオペレータのハンドル操作によって、作業車の向きが変えられるようにすることにより、アスファルトの舗装ずみの領域と未舗装領域との間の境界線に沿って作業車が移動できるようにした」,すなわち,ウインチを作動させる可変容量型油圧モータに流れる流量を変えることにより,ウインチのワイヤロープの巻き上げ量を変え,アスファルトフィニッシャの向きを左右方向に変えながら上昇方向に移動することができるものである。このことから,甲2発明は,本件特許発明1と同様に,左右のウインチを作動させ,ワイヤロープの長さを調整することにより,左右方向に移動させて作業させることができるものであるといえる。
以上により,甲1発明1の左右巻取機及びワイヤーの操作によって,台車の左右方向への移動を可能とする機能,及び甲2発明の左右のウインチを作動させ,ワイヤロープの長さを調整することにより,法面処理用作業車を左右方向に移動させる機能を考慮して,甲1発明1の3つのウインチ及びワイヤーに代えて,左右2つのウインチ及びワイヤーとすることは,当業者が容易になし得たことである。

(相違点3)
本件特許公報の発明の詳細な説明の6欄20?30行及び第10図ないし第12図には,「本発明の異なる実施例」として,左右のウインチがアンカーにより固定された例が示された上で,「前記本発明の実施例と同様な作用効果が得られる」と記載されている。このことからもわかるように,ウインチを加工機械本体に取り付けるか,アンカーに取り付けるかは当業者が適宜選択する事項にすぎず,また,いずれを選択しても,作用効果に格別の差異はない。さらに,法面の加工機械側にウインチを取り付けることは,甲第3?5号証にも開示されている。
よって,甲1発明1の巻取機の取付け位置を加工機械本体とし,ワイヤーをアンカーに固定することは,当業者が容易になし得たことであり,また,ウインチの取付け位置を法面の加工機械本体とアンカーの二者択一とすることも,当業者にとって格別な困難性はない。

そして、本件特許発明1の効果は,甲1発明1,甲2発明及び甲第3?5号証に記載された発明,並びに慣用の技術から予測することができる程度のことである。

したがって,本件特許発明1は,甲1発明1,甲2発明及び甲第3?5号証に記載された発明,並びに慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,本件特許1は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

3.無効理由2について
3-1.対比
本件特許発明4と甲1発明2を対比すると,甲1発明2の「傾斜した補強面」が本件特許発明4の「法面」に相当し,以下,「巻取機」が「ウインチ」に,それぞれ相当する。
また,上記「第4 2.2-1.」で検討したとおり,本件特許発明4の「バックホウ等の油圧で走行したり作動される法面の加工機械本体」と,甲1発明2の「破砕機を搭載した台車」とは,「法面の加工機械本体」である点で共通している。
また,甲1発明2の「地山補強面破砕装置」も,法面の加工を行っている機械であるから,本件特許発明4の「法面の加工機械」に相当する。

したがって,両者は,
「法面の加工機械本体と、ウインチと、このウインチから伸縮されるワイヤーを固定する法面を形成する部位の上部の地面に所定間隔離間されて固定されるアンカーとからなる法面の加工機械。」
である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1′)
法面加工機械本体について,本件特許発明4はバックホウ等の油圧で走行したり作動されるものであるのに対し,甲1発明2は傾斜した補強面上を走行可能で,破砕機が油圧で作動されるものであるものの,油圧で走行するか不明な台車である点。

(相違点2′)
アンカー及びウインチについて,本件特許発明4は,法面及び加工機械本体の「左右」,すなわち2つ設けられているのに対し,甲1発明2では,補強面及び台車の「左,中,右」,すなわち3つ設けられている点。

(相違点3′)
本件特許発明4は,ウインチが法面加工機械本体に取り付けられ,ワイヤーがアンカーに固定されているのに対し,甲1発明2は,巻取機(ウインチ)がアンカーにより固着された基台に取り付けられ,ワイヤーが台車の連結具に係止されている点。

3-2.判断
上記相違点について検討する。
相違点1′乃至相違点3′については,上記「第4 2.2-2」で検討したとおりである。
そして、本件特許発明4の効果は、甲1発明2,甲2発明及び甲第3?5号証に記載された発明,並びに慣用の技術から予測することができる程度のことである。

したがって,本件特許発明4は,甲1発明2,甲2発明及び甲第3?5号証に記載された発明,並びに慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,本件特許4は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

4.無効理由3について
4-1.対比
上記「3.3-1.」の検討を踏まえて本件特許発明5と甲1発明2を対比すると,上記「3.3-1.」で挙げた点に加え,甲1発明2の「連結具」が本件特許発明5の「取付け金具」に相当する。

したがって,両者は,
「法面の加工機械本体と、法面が形成される部位の上部の地面に所定間隔離間されてアンカーで固定されたウインチと、このウインチから伸縮されるワイヤーを前記法面の加工機械本体に取付ける取付け金具とからなる法面の加工機械。」
である点で一致し,上記「第4 3.3-1.」で示した「相違点1′」及び「相違点2′」の点で相違する。

4-2.判断
相違点1′及び相違点2′については,上記「第4 3.3-2.」で検討したとおりである。
そして、本件特許発明5の効果は、甲1発明2,甲2発明及び慣用の技術から予測することができる程度のことである。

したがって,本件特許発明5は,甲1発明2及び甲2発明並びに慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,本件特許5は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。


第5 むすび
以上のとおり,本件特許1,4及び5は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり,特許法第123条第1項第1号に該当するから,無効とされるべきである。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2010-07-05 
出願番号 特願平2-241805
審決分類 P 1 123・ 121- Z (E02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川島 陵司峰 祐治太田 恒明  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 草野 顕子
伊波 猛
登録日 1996-01-11 
登録番号 特許第2008978号(P2008978)
発明の名称 法面の加工方法および法面の加工機械  
代理人 三浦 光康  
代理人 神保 欣正  
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