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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1244266
審判番号 不服2008-29537  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-20 
確定日 2011-09-30 
事件の表示 特願2003- 13873「ドラム缶のリサイクルシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月12日出願公開、特開2004-227252〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年1月22日の出願であって、平成20年6月4日付け拒絶理由通知に対して、同年8月18日に手続補正書、同年8月29日に意見書が提出され、これに対して、同年10月7日付けで拒絶査定がなされたところ、同年11月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月22日付けで手続補正がなされ、平成21年11月12日付けで審尋がなされたものである。

第2 平成20年12月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年12月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1及び2は、次のように補正された。なお、下線は、補正箇所を示すものとして審判請求人が付与したものを援用した。

「【請求項1】
外缶内に薄手の内缶を取り付けてなる二重ドラム缶を内容物メーカに納品し、内容物が充填された二重ドラム缶が内容物ユーザに送られて、この内容物ユーザから使用済みの二重ドラム缶を回収し、内缶を新品のものと交換して再び流通させるのに用いられ、中央コンピュータシステム装置を備えるリサイクルシステムであって、前記中央コンピュータ装置は、二重ドラム缶全ての所在とその本数、充填内容物、内容物メーカからの受注と納品、内容物ユーザからの回収等の二重ドラム缶の情報を新品、再生品にかかわらず蓄積する二重ドラム缶情報蓄積部と、二重ドラム缶の納品結果に基づく納品データを蓄積する納品データ蓄積部と、二重ドラム缶の回収依頼情報を蓄積する回収依頼情報蓄積部と、回収した使用済みの二重ドラム缶の本数、再生不能で廃棄した外缶の本数の情報を蓄積する廃棄情報蓄積部を備え、二重ドラム缶の前記内容物メーカへの納品を行ない、前記内容物ユーザから使用済みドラム缶を回収して内缶の交換を行なう再生センターに対し、内容物メーカからの二重ドラム缶の受注情報が前記二重ドラム缶情報蓄積部に蓄積されると、同二重ドラム缶情報蓄積部からの情報に基づいて納品の指示を発し、内容物ユーザからの使用済み二重ドラム缶の回収依頼が前記回収依頼情報蓄積部に蓄積されると、同回収依頼情報蓄積部からの情報に基づいて回収の指示を発するとともに、前記二重ドラム缶の納品データ蓄積部および廃棄情報蓄積部に蓄積された情報を一括集中管理するように構成してなるドラム缶のリサイクルシステム。
【請求項2】
前記中央コンピュータ装置はさらに内容物情報蓄積部を備え、内容物メーカに対して提出を義務付けた二重ドラム缶に収容する内容物に関する製品安全情報シート等の詳細情報を、前記再生センターに提供可能な状態で前記内容物情報蓄積部に蓄積して使用済み二重ドラム缶の回収および再生処理作業の安全性を確保できるようにした請求項1に記載のドラム缶のリサイクルシステム。」

3 補正の根拠についての審判請求人の主張
審判請求人は、平成21年2月24日付け手続補正書により補正された審判請求書において、「上記補正による新規事項の追加は一切ない。」としている。

4 明細書等の記載事項について
本願請求項1についての補正に関連した明細書の記載事項は、次のとおりである。

・「【0020】しかして、中央管理センター1はシステム全体に流通する二重ドラム缶全ての所在とその本数、充填物されるまたは充填された内容物、内容物メーカ4からの受注と納品、内容物ユーザ5、5からの回収というような二重ドラム缶についての全ての情報を新品、再生品の別にかかわらず一括集中管理し、その情報は逐次中央管理センターの中央コンピュータ装置1aに蓄積され、情報内容は中央管理センターのシステム管理者によって随時監視されるようになっている。」

・「【0021】前記内容物メーカ4が中央管理センター1に対して二重ドラム缶の発注を行なうと、中央管理センター1は再生センター3、3に納品指示を発し、再生センターは必要に応じて新缶メーカ2に外缶と内缶を発注して二重ドラム缶を製造し、再生センターから新品の二重ドラム缶や、再生品の二重ドラム缶(外缶は再生品であるが内缶は全て新品のもの)が内容物メーカ4に納品される。」

・「【0023】また、再生センター3から中央管理センター1へ納品報告が行なわれ、同報告に基づく納品データが中央管理センターのコンピュータ装置1aに蓄積され、所定期間ごと、例えば1か月ごとに内容物メーカ4宛の納入実績報告書が作成、送付されるようにしてある。なお、同納入実績報告書には、納品日、納品したドラム缶の種類および本数などの納品データが記載される。」

・「【0025】前記内容物メーカ4に納品された二重ドラム缶には、同メーカにおいて製品が収容され、内容物ユーザ5へ納入され、内容物ユーザ5は二重ドラム缶の内容物製品を取り出す。内容物ユーザ5は空になった使用済みの二重ドラム缶の回収依頼を中央管理センター1に指示する。」

・「【0027】回収依頼を受けた中央管理センター1は、内容物ユーザ5の最寄の再生センター3に回収の支持を出すとともに回収情報を中央コンピュータ装置1aに蓄積し、再生センターは内容物ユーザから使用済み二重ドラム缶の回収を行なう。内容物ユーザには、使用済み二重ドラム缶に内容物を残さないこと、また内容物が毒劇物である場合にはその無害化処理を行なうことが義務付けられ、回収の際にこれらが再生センターの回収作業員によって厳密にチェックされる。」

・「【0028】再生センター3は回収後の使用済み二重ドラム缶の外缶と内缶を分離して、外缶を再利用できるか否かを確認し、回収した使用済み二重ドラム缶の本数、再生不能で廃棄した外缶の本数を中央管理センター1に報告し、この報告に基づいて中央管理センターは中央コンピュータ装置1aに同報告の内容を蓄積する。また、中央管理センターは中央コンピュータ装置から内容物ユーザ4宛の回収実績報告書を出力し、同報告書を内容物ユーザへ送る。」

5 新規事項についての判断
請求項1についての補正事項が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものか否かについて検討する。

(ア)「前記中央コンピュータ装置は、二重ドラム缶全ての所在とその本数、充填内容物、内容物メーカからの受注と納品、内容物ユーザからの回収等の二重ドラム缶の情報を新品、再生品にかかわらず蓄積する二重ドラム缶情報蓄積部」との補正事項については、本願明細書【0020】段落に記載されている。

(イ)「二重ドラム缶の納品結果に基づく納品データを蓄積する納品データ蓄積部」との補正事項については、本願明細書【0023】段落の記載から自明な事項である。

(ウ)「二重ドラム缶の回収依頼情報を蓄積する回収依頼情報蓄積部」との補正事項については、本願明細書【0025】、【0027】段落の記載から自明な事項である。

(エ)「回収した使用済みの二重ドラム缶の本数、再生不能で廃棄した外缶の本数の情報を蓄積する廃棄情報蓄積部」との補正事項については、本願明細書【0028】段落の記載から自明な事項である。

(オ)「前記中央コンピュータ装置は」、「内容物メーカからの二重ドラム缶の受注情報が前記二重ドラム缶情報蓄積部に蓄積されると、同二重ドラム缶情報蓄積部からの情報に基づいて納品の指示を発し」との補正事項は、本願明細書における「前記内容物メーカ4が中央管理センター1に対して二重ドラム缶の発注を行なうと、中央管理センター1は再生センター3、3に納品指示を発し」(本願明細書【0021】段落)との記載に関連している。
ところで、本願明細書【0021】段落には、「中央管理センター1は再生センター3、3に納品指示を発し」ていることが記載されているものの、「中央コンピュータ装置」については、「内容物メーカからの二重ドラム缶の受注情報が前記二重ドラム缶情報蓄積部に蓄積される」(明細書【0020】段落)ことが記載されているにとどまっている。
したがって、「中央コンピュータ装置」が、「内容物メーカからの二重ドラム缶の受注情報が前記二重ドラム缶情報蓄積部に蓄積されると、同二重ドラム缶情報蓄積部からの情報に基づいて納品の指示を発し」との補正事項は、上記明細書【0021】段落にも、明細書全体及び図面にも記載されておらず、また、これらの記載から自明な事項とも認められない。

(カ)「前記中央コンピュータ装置は」、「内容物ユーザからの使用済み二重ドラム缶の回収依頼が前記回収依頼情報蓄積部に蓄積されると、同回収依頼情報蓄積部からの情報に基づいて回収の指示を発する」との補正事項は、本願明細書における「内容物ユーザ5は空になった使用済みの二重ドラム缶の回収依頼を中央管理センター1に指示する。」(明細書【0025】段落)、「回収依頼を受けた中央管理センター1は、内容物ユーザ5の最寄の再生センター3に回収の支持を出す」(明細書【0027】段落)との記載に関連している。
ところで、明細書【0027】段落には、「中央管理センター1」が再生センター3に対して回収の指示を出すことが記載されているものの、「中央コンピュータ装置」については、「内容物ユーザからの使用済み二重ドラム缶の回収依頼が前記回収依頼情報蓄積部に蓄積される」(明細書【0027】段落)ことが記載されているにとどまっている。
そうすると、「中央コンピュータ装置」が、「内容物ユーザからの使用済み二重ドラム缶の回収依頼が前記回収依頼情報蓄積部に蓄積されると、同回収依頼情報蓄積部からの情報に基づいて回収の指示を発する」との補正事項は、上記明細書【0025】、【0027】段落にも、明細書全体及び図面にも記載されておらず、また、これらの記載から自明な事項とも認められない。

(キ)「前記中央コンピュータ装置は」、「前記二重ドラム缶の納品データ蓄積部および廃棄情報蓄積部に蓄積された情報を一括集中管理する」との補正事項は、上記(イ)(エ)にて示したとおり、本願明細書【0023】段落及び【0028】段落の記載から自明の事項である。

以上のように、本件補正により、補正後の請求項1に記載された「中央コンピュータ装置」が「同二重ドラム缶情報蓄積部からの情報に基づいて納品の指示を発し」(上記(オ))たり、「同回収依頼情報蓄積部からの情報に基づいて回収の指示を発する」(上記(カ))という、新たな技術的事項を導入することになった。

したがって、本件補正は、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであって、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものということはできない。

5 まとめ
本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成20年12月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成20年8月18日付け手続補正書に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「外缶内に薄手の内缶を取り付けてなる二重ドラム缶を内容物メーカに納品し、内容物が充填された二重ドラム缶が内容物ユーザに送られて、この内容物ユーザから使用済みの二重ドラム缶を回収し、内缶を新品のものと交換して再び流通させるのに用いられるリサイクルシステムであって、
二重ドラム缶の前記内容物メーカへの納品を行ない、前記内容物ユーザから使用済みドラム缶を回収して内缶の交換を行なう再生センターに対し、
内容物メーカからの二重ドラム缶の受注、内容物ユーザからの使用済み二重ドラム缶の回収依頼を受け付けると、納品や回収の指示を発するとともに、
二重ドラム缶の所在やその本数および二重ドラム缶に収容される内容物等の二重ドラム缶の流通に関する情報を一括集中管理する中央コンピュータ装置を中央管理センターに備えてなるドラム缶のリサイクルシステム。」

1 原査定の拒絶の理由2について

(1)原査定の拒絶の理由2の概要
原査定の拒絶の理由2の概要は、次のとおりである。

「(理由2)
この出願の請求項に係る発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。

請求項の記載は、依然として、再生センターと中央管理センターの役割についての取り決めを、特定したにすぎないものである。
よって、請求項の記載全体から特定されるものは、人為的な取り決めに基づくものであるから、全体として、自然法則を利用した技術的思想の創作ではない。
もし、仮に、請求項に記載のシステムが、コンピュータ・システムであると解釈した場合であっても、ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されているとは、認められないから、自然法則を利用した技術的思想の創作ではない。」

(2)上記理由2についての当審の判断
特許法2条1項には、「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と規定され、同法29条1項柱書には、「産業上利用することができる発明をしたものは、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」と規定されている。
したがって、請求項に係る発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」でないときは、その発明は特許法29条1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。例えば、請求項に係る発明が、自然法則以外の法則(例えば、経済法則)、人為的な取決め、人間の精神活動に当たるとき、あるいはこれらのみを利用しているときは、その発明は、自然法則を利用したものとはいえず、「発明」に該当しない。

まず、本願発明を、便宜上、以下のように分説して検討する。

「(a)外缶内に薄手の内缶を取り付けてなる二重ドラム缶を内容物メーカに納品し、内容物が充填された二重ドラム缶が内容物ユーザに送られて、この内容物ユーザから使用済みの二重ドラム缶を回収し、内缶を新品のものと交換して再び流通させるのに用いられるリサイクルシステムであって、
(b)二重ドラム缶の前記内容物メーカへの納品を行ない、前記内容物ユーザから使用済みドラム缶を回収して内缶の交換を行なう再生センターに対し、
(c) 内容物メーカからの二重ドラム缶の受注、内容物ユーザからの使用済み二重ドラム缶の回収依頼を受け付けると、納品や回収の指示を発するとともに、
(d)二重ドラム缶の所在やその本数および二重ドラム缶に収容される内容物等の二重ドラム缶の流通に関する情報を一括集中管理する中央コンピュータ装置を中央管理センターに備えてなる
(e)ドラム缶のリサイクルシステム。」

上記事項(a)は、「外缶内に薄手の内缶を取り付けてなる二重ドラム缶」が、内容物メーカに納品され、内容物ユーザに送られ、この内容物ユーザから使用済みの二重ドラム缶が回収され、内缶を新品の物と交換して再び流通させるというリサイクルを特定するものであるが、このようなリサイクルは、ドラム缶の取引や流通に関する実態、規則等に基づいて決められる人為的な取決めであり、さらに、こういった人為的な取決めを支援したり、また、これに置き換わるような技術的手段を提供しているということもできない。
なお、本願発明では、「外缶内に薄手の内缶を取り付けてなる二重ドラム缶」に対して、「内缶を新品の物と交換」するという再生処理が行われているが、このような再生処理は、「二重ドラム缶」自体にそもそも予定されたものであって、このような再生処理を特定したことによって、何らかの創作性を付加したということはできない。
さらに、「二重ドラム缶」自体に「内缶を新品の物と交換」できるという技術的手段が提供されていたとしても、請求項に記載された内容を全体として考察すると、本願発明は「二重ドラム缶」のリサイクルを一括管理することに向けられていることから(本願明細書【0014】段落、【目的】の項参照)、上記技術的手段の提供によって、本願発明が自然法則を利用しているということはできない。
したがって、上記事項(a)には、自然法則が利用されているということはできない。

上記事項(b)は、二重ドラム缶の納品、回収、交換といった機能を行う「再生センター」について特定するものであるが、「再生センター」にどのような機能を持たせるかは、二重ドラム缶の取引や流通に関する実態、規則等に基づいて決められる人為的な取決めにすぎない。
したがって、上記事項(b)には、自然法則が利用されているということはできない。

上記事項(c)は、二重ドラム缶の受注や使用済み二重ドラム缶の回収依頼を受け付けると、再生センターに納品や回収の指示を発することを特定しているが、二重ドラム缶の受注、回収をどのように行うかは、二重ドラム缶の取引や流通に関する実態、規則等に基づいて決められる人為的な取決めであり、さらに、こういった人為的な取決めを支援したり、また、これに置き換わるような技術的手段を提供しているということもできない。
したがって、上記事項(c)には、自然法則が利用されているということはできない。

上記事項(d)は、二重ドラム缶の流通に関する情報を一括集中管理する中央コンピュータ装置を中央管理センターに備えることを特定しているが、「中央コンピュータ装置」は、「二重ドラム缶の流通に関する情報」を一括集中管理できるように蓄積するという程度の技術的意義を有するにすぎない。
したがって、上記事項(d)は、二重ドラム缶の流通に関する情報を蓄積した中央コンピュータを中央管理センタに備えるとしただけであって、「自然法則を利用した技術的思想」といえるような創作性を見出すことはできない。

上記(e)の事項は、本願発明が「ドラム缶のリサイクルシステム」であることを特定するものである。
ここで、「システム」に関する発明は、通常、「物」のカテゴリーを意味する用語として扱うこととしているが、本願発明には、二重ドラム缶の内容物メーカへの納品や内容物ユーザからの回収(上記事項(a))、内容物メーカからの二重ドラム缶の受注や内容物ユーザからの回収依頼(上記事項(c))など、「物」を特定するための事項とはいえないものが含まれていることから、「複数の要素が有機的に関係しあい、全体としてまとまった機能を発揮している要素の集合体。組織。系統。仕組み。」(「広辞苑」第五版)として解することができる。
そうすると、本願発明の「ドラム缶のリサイクルシステム」は、上記事項(a)?(e)によって特定される複数の要素が有機的に関係し合い、全体としてドラム缶のリサイクルシステムとしてのまとまった機能を発揮している要素の集合体、ということになる。
ところで、上述したように、上記事項(a)?(e)の各々は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」といえるような創作性を見出すことができず、上記事項(a)?(e)によって特定されるような複数の要素が有機的に関係し合ったとしても、全体として、「自然法則を利用した技術的思想」ということはできない。
したがって、上記事項(e)には、自然法則が利用されているということはできない。

以上のように、本願発明は、事項(a)?(e)の各々は、二重ドラム缶の取引や流通に関する実態、規則等に基づいて決められる自然法則に基づかない人為的な取決めであり、さらに、こういった人為的な取決めを支援したり、また、これに置き換わるような技術的手段を提供しているということもできない。
また、「二重ドラム缶」や「中央コンピュータ装置」という技術的手段が特定されているが、請求項に記載された内容を全体として考察しても、本願発明が自然法則を利用した技術的思想の創作に該当するということはできない。

ところで、本願発明では、「二重ドラム缶の流通に関する情報を一括集通管理する中央コンピュータ装置」が特定されており、コンピュータ・ソフトウエアとしての創作性が見いだせる場合には、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であると評価できる余地も考えられる。
しかしながら、本願発明における「中央コンピュータ装置」は、上記事項(d)において示したように、二重ドラム缶の流通に関する情報を蓄積するものであって、「(蓄積された)情報内容は中央管理センターのシステム管理者によって随時監視されるようになっている」(本願明細書【0020】段落)ことから、上記「中央コンピュータ装置」には、リサイクルを支援したり、これに置き換わるような技術的手段を提供するコンピュータ・ソフトウエアを有するということはできない。
したがって、本願発明には、コンピュータ・ソフトウエアとしての創作性を見出すことができない。

以上のとおり、本願発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものということができない。

よって、本願発明は、特許法上の「発明」に該当しないので、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないものといわざるを得ない。

2 原査定の拒絶の理由1について

(1)原査定の拒絶の理由1の概要
上記理由2のとおり、本願発明は、特許法上の「発明」に該当しないものであるが、仮に特許法上の「発明」に該当するものとした場合についても、以下に検討する。

原査定の拒絶の理由1の概要は、次のとおりである。

「(理由1)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2002-226044号公報
2.“アップコーポレーション、ドラム缶リサイクル新システム構築へ”,化学工業日報,化学工業日報社,2002年2月14日,P.5,[online],[平成20年6月2日検索],インターネット<URL:http://db.g-search.or.jp>
3.“アップコーポレーション、西日本でも拠点確保、ドラム再生システム”,化学工業日報,化学工業日報社,2002年9月9日,P.9,[online],[平成20年6月2日検索],インターネット<URL:http://db.g-search.or.jp>
4.“アップコーポレーション、MPドラムのストレート缶を投入”,化学工業日報,化学工業日報社,2002年12月16日,P.9,[online],[平成20年6月2日検索],インターネット<URL:http://db.g-search.or.jp>
5.特開2002-259553号公報」

(2)引用文献について

(ア)上記引用文献1(特開2002-226044号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、使用済みのドラム缶の再利用を確実に行なうためのリサイクル管理システムに関する。

・「【0009】
【実施例】以下、本発明に係るリサイクル管理システムの実施例を添付図1?3に示す具体例に基づいて詳細に説明する。ドラム缶は、図1のように使用済みドラム缶の洗浄や修復を行なう再生施設1と、内容物メーカー2と、ユーザー3との間をこの順に循環して使用され、この循環経路における上記再生施設1と内容物メーカー2との間およびユーザー3と再生施設1との間のドラム缶の流れは、リサイクル管理者4によって管理される。
【0010】このリサイクル管理者4は、使用済みドラム缶のリサイクルの可否や、新しいドラム缶(以下、新缶と称する)の補充等のチェックおよびデータ管理を行なう者としてあり、後述する管理演算装置5へのデータの入出力も行なう。リサイクル管理者はドラム缶の再生処理に関する専門的知識や技術および経験を要するので、再生施設とともに再生業者6の管轄下におかれる。なお、同図において、符号7は廃棄される使用済みドラム缶の資源材料化を行なう処分施設、8はドラム缶の製造メーカーをそれぞれ示す。
【0011】前記管理演算装置5は、図2に示すように演算処理手段たる中央処理装置9と、この中央処理装置に接続されたチェック結果データ蓄積手段10、納品データ蓄積手段11および在庫データ蓄積手段12を備え、また、演算結果を画面や印字出力するディスプレイ装置やプリンタよりなる出力装置13を備えていて、管理演算装置にはパソコン等の情報処理装置を利用することができる。
【0012】前記チェック結果データ蓄積手段10は、ユーザー3からの使用済みドラム缶に対して再利用可能かどうかをチェックする1次チェックと、再生施設1にて再生処理が行なわれた後のドラム缶の品質の良否をチェックする2次チェックのチェック結果データが中央処理装置9を介して記録されるものとしてあり、1次チェックと2次チェックにおいてそれぞれ再利用可能と判断されたドラム缶と、廃棄されるドラム缶の数量がドラム缶の規格ごとにチェック結果データとして記録される。
【0013】前記納品データ蓄積手段11は、内容物メーカー2に納品された再生ドラムと新缶の数量よりなるドラム缶の規格ごとの納品データが中央処理装置9を介して記録されるものとしてある。
【0014】また、前記在庫データ蓄積手段12は、前記チェック結果データと納品データに基づいて中央処理装置9で演算された在庫データが記録されるものとしてあり、この在庫データは新たなチェック結果データおよび納品データが入力される度に逐次更新される。
【0015】さらに、内容物メーカー2からのドラム缶の発注があると、受注したドラム缶の数量がリサイクル管理者4によって再生ドラムと新缶および規格ごとに受注データとして前記中央処理装置9に入力され、中央処置装置は受注データを前記在庫データ蓄積手段に記録されている在庫データに照会し、在庫量が不足している場合には新缶の発注データを出力装置13から出力する。」

・「【0016】次ぎに、本発明に係るリサイクル管理システムによる使用済みドラム缶の再生処理の流れを図3に示す流れ図に基づいて説明する。ユーザー3からの使用済みドラム缶は、再生業者6によって回収される(S1)が、この回収の際、リサイクル管理者4が使用済みドラム缶に対する1次チェック(S2)を行なう。」

・「【0023】清浄化および修復が可能であると判断された使用済みドラム缶は、再生施設1において清浄化および修復処理よりなる再生処理が施され(S6)、その後リサイクル管理者4によって2次チェック(S7)に付される。なお、再生処理において、清浄化の前に修復処理を行なう場合もあり、また、使用済みドラム缶を洗浄によって清浄化するかあるいは焼却によって清浄化するかを再生施設1においてチェックし、より適正な清浄化を行なうようにする場合もある。」

・「【0027】リサイクル管理者4は前記内容物メーカー2からの受注も行ない、リサイクル管理者は受注すると(S10)受注データを管理演算装置5に入力し(S11)、管理演算装置はこの受注データを前記在庫データ蓄積手段12に記録されている在庫データに照会し(S12)、在庫数が不足している場合や、内容物メーカーから新缶の数量指定があった場合には、ドラム缶メーカー8に対する新缶の発注データを出力する(S13)。
【0028】この際、再生処理が完了している再生ドラムの数量が不足していても、再生予定あるいは再生処理中の使用済みドラム缶の数量を1次チェック結果データから把握することができ、このような状態のドラム缶の数量も考慮に入れて発注データ出力が行なわれるようにする場合もある。
【0029】その後、リサイクル管理者4は前記発注データに基づいてドラム缶メーカーへの発注を行ない(S14)、再生ドラムまたは新缶のみ、あるいは再生ドラムに新缶を加えて内容物メーカー2に納品し(S15)、再生ドラム、新缶の納品数量がドラム缶の規格ごとに納品データとして管理演算装置5に入力される(S16)。」

そうすると、引用文献1の上記摘記事項及び図面から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「使用済みのドラム缶の再利用を確実に行なうためのリサイクル管理システムにおいて、
ドラム缶は、使用済みドラム缶の洗浄や修復を行なう再生施設1と、内容物メーカー2と、ユーザー3との間をこの順に循環して使用され、
ドラム缶の循環経路における上記再生施設1と内容物メーカー2との間およびユーザー3と再生施設1との間のドラム缶の流れは、リサイクル管理者4によって管理されており、リサイクル管理者4は、使用済みドラム缶のリサイクルの可否や、新しいドラム缶の補充等のチェックおよびデータ管理を行なう者としてあり、管理演算装置5へのデータの入出力も行ない、
ユーザー3からの使用済みドラム缶は、再生業者6によって回収され(S1)、使用済みドラム缶は、再生施設1において清浄化および修復処理よりなる再生処理が施され(S6)、
リサイクル管理者4は、前記内容物メーカー2からの受注も行ない、リサイクル管理者は受注すると(S10)、在庫数が不足している場合や、ドラム缶メーカー8に対する新缶の数量指定があった場合には、ドラム缶メーカー8に対する新缶の発注データを出力し(S13)、前記発注データに基づいてドラム缶メーカーへの発注を行ない(S14)、再生ドラムまたは新缶のみ、あるいは再生ドラムに新缶を加えて内容物メーカー2に納品し(S15)、
前記管理演算装置5は、演算処理手段たる中央処理装置9と、この中央処理装置に接続されたチェック結果データ蓄積手段10、納品データ蓄積手段11および在庫データ蓄積手段12を備えてなる使用済みドラム缶のリサイクル管理システム。」

(イ)上記引用文献2(”アップコーポレーション、ドラム缶リサイクル新システム構築へ”,化学工業日報,化学工業日報社,2002年2月14日,P.5,[online],[平成20年6月2日検索],インターネット<URL:http://db.g-search.or.jp>)には、次の事項が記載されている。

・「アップコーポレーション(東京都中央区、伊藤眞義社長)は内装缶を使ったドラム缶再生リサイクルシステムの構築に乗り出した。ドラム缶はリサイクル、リユース時に有害物質の流出や事故の危険性を持つ。」(第1段落第1行?第2行)

・「アップコーポレーションが築こうとしているドラム缶の再生リサイクルシステムは、オープンドラムのなかに〇・二三-〇・二五ミリメートルの亜鉛鋼(ブリキ)板を使った三・五キログラムほどの薄手内装缶(商品名・MPドラム)を用い、注文、出荷から使用後の回収までをシステム化して取り組むもの。」(第2段落、第1行?第3行)

・「この問題点を解決するため、完全回収を前提にMPシステムの構築に乗り出したもので、内容物が入る内装缶は内容物の除去後、減容・圧縮加工を経てスクラップ処理される。外装缶は再生缶として使用され、コストを抑えた責任体制下での回収システムを目指している。」(第4段落、第1行?第3行)

(ウ)上記引用文献5(特開2002-259553号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

・「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、廃製品の処理(再資源化処理、廃棄処理)を行なうための廃製品処理システムに関する。」

・「【0004】本発明の目的は、廃棄物量の削減と有限である化石燃料の有効活用を図るために、廃製品の処理に必要な各種情報を迅速に収集・処理・伝達し、各廃製品の適正なリサイクル処理方法を決定する製品のリサイクルシステムを提供することにある。」

・「【0042】製品仕様情報データベース35には、図7に示すように、予め製品仕様情報が記憶してある。これも企業内でメーカ別、製品種別、型式別、等で整理してデータベース化しておく。図7において、製品仕様情報は、出荷時等に製品ごとに付加されるような情報であり、例えば、基本情報として、製品の名称等を示す製品種別、メーカ名、形式名、製造番号および再生製品化可能期限年を記憶し、設計情報として、サイズ等、外形寸法、質量および消費電力を記憶し、構成部品情報として、構成部品名、材質、材料/部品メーカ、グレード、質量、数量、再使用対象品、使用履歴および部品交換年月等を記憶する。これらの製品仕様情報は、製品ごとに記憶しておいてもよいし、データベースとして一括して備えていてもよい。」

(3)対比
本願発明と引用発明を対比する。

引用発明における「ドラム缶」と本願発明における「外缶内に薄手の内缶を取り付けてなる二重ドラム缶」とは、いずれも「ドラム缶」という点で共通している。

引用発明における「リサイクル管理システム」と本願発明における「リサイクルシステム」とは、ドラム缶の「リサイクルシステム」であるという点で共通している。

引用発明における「内容物メーカー2」と「ユーザー3」は、本願発明における「内容物メーカ」と「内容物ユーザ」に対応している。
また、引用発明では、「再生ドラムまたは新缶のみ、あるいは再生ドラムに新缶を加えて内容物メーカー2に納品」しており、また、「内容物メーカー2」ではドラム缶に内容物が充填されることは明らかである。
そうすると、引用発明における「ドラム缶は、使用済みドラム缶の洗浄や修復を行なう再生施設1と、内容物メーカー2と、ユーザー3との間をこの順に循環して使用され」との事項は、本願発明における「ドラム缶を内容物メーカに納品し、内容物が充填されたドラム缶が内容物ユーザに送られて、この内容物ユーザから使用済みのドラム缶を回収し、再び流通させる」との事項に対応している。

引用発明における「前記内容物メーカー2からの受注も行ない、リサイクル管理者は受注すると(S10)、在庫数が不足している場合や、ドラム缶メーカー8に対する新缶の数量指定があった場合には、ドラム缶メーカー8に対する新缶の発注データを出力し(S13)、リサイクル管理者4は前記発注データに基づいてドラム缶メーカーへの発注を行ない(S14)、再生ドラムまたは新缶のみ、あるいは再生ドラムに新缶を加えて内容物メーカー2に納品し(S15)」との事項は、本願発明における「内容物メーカからのドラム缶の受注」を受け付けると、「ドラム缶の前記内容物メーカへの納品を行ない」との事項に対応している。

引用発明における「ユーザー3からの使用済みドラム缶は、再生業者6によって回収され(S1)、使用済みドラム缶は、再生施設1において清浄化および修復処理よりなる再生処理が施され(S6)」との事項において、「ユーザー3からの使用済みドラム缶」は再生業者6を経て再生施設1に送られることから、引用発明における上記事項は、本願発明における「内容物ユーザから使用済みドラム缶を回収」する「再生センター」に対応している。

引用発明における「この循環経路における上記再生施設1と内容物メーカー2との間およびユーザー3と再生施設1との間のドラム缶の流れは、リサイクル管理者4によって管理されており、リサイクル管理者4は、使用済みドラム缶のリサイクルの可否や、新しいドラム缶の補充等のチェックおよびデータ管理を行なう者としてあり、管理演算装置5へのデータの入出力も行ない」との事項において、引用発明における「リサイクル管理者4」は、「循環経路における上記再生施設1と内容物メーカー2との間およびユーザー3と再生施設1との間のドラム缶の流れ」を管理していることから、本願発明における「中央管理センター」に対応している。

引用発明における「前記管理演算装置5は、演算処理手段たる中央処理装置9と、この中央処理装置に接続されたチェック結果データ蓄積手段10、納品データ蓄積手段11および在庫データ蓄積手段12を備え」との事項において、チェック結果データ蓄積手段19には、「1次チェックと2次チェックにおいてそれぞれ再利用可能と判断されたドラム缶と、廃棄されるドラム缶の数量」(引用文献1【0012】段落)が記憶され、納品データ蓄積手段11には、「内容物メーカー2に納品された再生ドラムと新缶の数量よりなるドラム缶の規格ごとの納品データ」(引用文献1【0013】段落)が記憶され、在庫データ蓄積手段12には、「チェック結果データと納品データに基づいて中央処理装置9で演算された在庫データ」(引用文献1【0014】段落)が記憶されており、また、納品データ、在庫データはドラム缶の流通に関するデータということができるから、引用発明における「管理演算装置5」は、本願発明における「ドラム缶の所在やその本数等の二重ドラム缶の流通に関する情報を一括集中管理する中央コンピュータ装置」に対応している。

以上によれば、本願発明と引用発明の一致点と相違点は、次のとおりと認められる。

(ア)一致点
「ドラム缶を内容物メーカに納品し、内容物が充填されたドラム缶が内容物ユーザに送られて、この内容物ユーザから使用済みのドラム缶を回収し、再び流通させるのに用いられるリサイクルシステムであって、
ドラム缶の前記内容物メーカへの納品を行ない、
前記内容物ユーザから使用済みドラム缶を回収する再生センターに対し、
内容物メーカからのドラム缶の受注、内容物ユーザからの使用済みドラム缶の回収を受け付け、
ドラム缶の所在やその本数等のドラム缶の流通に関する情報を一括集中管理する中央コンピュータ装置を中央管理センターに備えてなるドラム缶のリサイクルシステム。」

(イ)相違点
[相違点1]
本願発明では、「外缶内に薄手の内缶を取り付けてなる二重ドラム缶」をリサイクルの対象とし、「内缶を新品のものと交換」して再び流通させたり、「再生センター」において「内缶の交換を行」っているのに対し、引用発明では、ドラム缶の種類についての特定はなく、「再生施設1」において「洗浄化および修復処理よりなる再生処理が施され」る点。

[相違点2]
本願発明では、内容物ユーザからの使用済み二重ドラム缶の「回収依頼」を受け付けると、「回収の指示を発」しているのに対し、引用発明では、内容物ユーザから使用済みドラム缶を回収しているとしか特定されていない点。

[相違点3]
本願発明では、内容物メーカからの二重ドラム缶の受注を受け付けると、「納品の指示を発するとともに」、「再生センター」が「二重ドラム缶の前記内容物メーカへの納品を行な」っているのに対し、引用発明では、再生施設1が内容物メーカー2に納品することについては明らかではない点。

[相違点4]
本願発明では、流通に関する情報に「二重ドラム缶に収容される内容物」を含んでいるのに対し、引用発明では、そのようになっていない点。

(3)相違点に対する当審の判断

[相違点1]について
「外缶内に薄手の内缶を取り付けてなる二重ドラム缶」を、「内缶を新品のものと交換」することにより再利用するリサイクルシステムは、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(“アップコーポレーション、ドラム缶リサイクル新システム構築へ”,化学工業日報,化学工業日報社,2002年2月14日,P.5,[online],[平成20年6月2日検索],インターネット<URL:http://db.g-search.or.jp>)に記載されているように、本願出願当時、既に周知の事項である。
そうすると、引用発明において、「外缶内に薄手の内缶を取り付けてなる二重ドラム缶」をリサイクルの対象とするとともに、「内缶を新品のものと交換」することにより相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

[相違点2]について
引用発明では、再生施設1が「内容物ユーザから使用済みドラム缶を回収」しているとしか特定されていないが、ドラム缶が使用済みとなった場合に内容物ユーザが回収依頼を出そうとすることは、当業者であれば普通に着想できることである。
そして、引用発明において、「ドラム缶の循環経路における上記再生施設1と内容物メーカー2との間およびユーザー3と再生施設1との間のドラム缶の流れは、リサイクル管理者4によって管理されており、リサイクル管理者4は、使用済みドラム缶のリサイクルの可否や、新しいドラム缶の補充等のチェックおよびデータ管理を行なう者」であることから、「リサイクル管理者」が内容物ユーザからの回収依頼を受け付け、実際の回収を行う「再生センター」に対して「回収の指示を発」することは、当業者であれば適宜採択できる事項にすぎない。
したがって、引用発明において、「内容物ユーザからの使用済み二重ドラム缶の回収依頼を受け付けると、回収の指示を発」するように構成することは、何ら困難なことではない。

[相違点3]について
引用発明においては、リサイクル管理者4は、前記内容物メーカー2からの受注も行ない、在庫数が不足している場合や、新缶の数量指定があった場合には、ドラム缶メーカー8に発注を出している。
ところで、引用発明では、再生施設1において清浄化および修復処理よりなる再生処理が施されることから、在庫数が不足していなかったり、新缶の数量指定がないような場合には、再生施設1に対して納品の指示を発し、再生施設1が内容物メーカー2に納品することは、当業者であれば容易になし得ることである。
さらに、在庫数が不足している場合や、新缶の数量指定があった場合であっても、リサイクル管理者4からドラム缶メーカーへ発注を出して内容物メーカー2に納品を行う代わりに、再生施設1に納品の指示を発し、再生施設1がドラム缶の内容物メーカーへの納品を行うようにすることも、当業者が適宜採択しうる事項にすぎない。

[相違点4]について
引用文献2にも記載されているように、「ドラム缶はリサイクル、リユース時に有害物質の流出や事故の危険性を持つ」ことは、ドラム缶のリサイクルにあたって周知の事項である。
また、有害物や危険物を含む構成部品を適正にリサイクルするために、製品の構成情報をデータベースに入力させることは、例えば、引用文献5(特開2002-259553号公報、特に、【0004】段落、【0042】段落)にも開示されているように、慣用技術にすぎない。
そうすると、引用発明において、「二重ドラム缶に収容される内容物」を管理演算装置5に蓄積し、相違点4に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。

また、本願発明の全体構成により奏される効果は、引用発明、上記周知の事項及び慣用技術から予測し得る程度のものと認められる。

したがって本願発明は、引用発明、周知の事項及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明し得たものと認められる。

(4)理由1についてのむすび
以上のとおり、本願特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

7.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項柱書、または、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-11 
結審通知日 2011-07-19 
審決日 2011-08-10 
出願番号 特願2003-13873(P2003-13873)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 572- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 伸次  
特許庁審判長 井上 正
特許庁審判官 松尾 俊介
須田 勝巳
発明の名称 ドラム缶のリサイクルシステム  
代理人 加藤 恒久  

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