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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1244414
審判番号 不服2008-19263  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-30 
確定日 2011-10-07 
事件の表示 特願2002-374126「電子メール仲介サービスシステム、端末、ダウンロードサーバ及びプログラム並びに記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月12日出願公開、特開2003-256343〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年12月25日(国内優先権主張 平成13年12月28日)の出願であって、平成20年4月1日付けで拒絶理由通知がなされ、同年6月4日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年6月27日付けで拒絶査定がなされ、同年7月30日付けで拒絶査定不服審判請求がなされ、平成23年5月2日付けで拒絶理由通知がなされたところ、同年7月5日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成23年7月5日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)によって補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、以下のものである(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】
一の利用者の端末から送信された二の利用者宛の電子メールを保存する保存手段と、
前記保存手段に前記二の利用者宛の電子メールが保存されている場合に該二の利用者の端末から出される閲覧要求に応答して該二の利用者宛の電子メールの閲覧を該二の利用者の端末に対して許容する閲覧許容手段と、
前記二の利用者宛の電子メールに保存不可条件が付加されていた場合に当該二の利用者の端末からの閲覧後に、前記二の利用者宛の電子メールを前記保存手段から消去するメッセージ消去手段と、
前記閲覧要求を出したり該閲覧要求に応答して閲覧が許容された前記電子メールを表示したりするためのプログラムを保持し、前記端末からのダウンロード要求に応答して当該プログラムを要求元の端末に転送する転送手段と、を有するダウンロードサーバを含む
ことを特徴とする電子メール仲介サービスシステム。」

第3 引用例に記載の発明
これに対して、平成23年5月2日付けで当審から通知された拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の主張の基礎となる出願(平成13年12月28日出願)前に頒布された刊行物である平成13年9月22日に頒布された下記引用例1には、以下のア?クの記載がある。

引用例1:小松原健,ソースネクストが“消えるメール”閲覧できる時間や回数を指定,日経インターネットテクノロジー,日経BP社,第51号,p.23

ア 上段左欄第1行?第4行
「ソースネクストは,閲覧できる期限や回数を指定できるツール「MailMax」を9月7日に発売した。期限が過ぎたりすると、そのメールが読めなくなる。」
イ 上段左欄第5行?第8行
「動作環境はWindouw98/Me/2000で,価格は8800円。メール・ソフトとしてOutlookやOutlookExpressが使える。」
ウ 上段左欄第8行?第10行
「このツールを持っていないユーザーに対してもこのメールを送れるように,受信用のフリーウエアを提供する。」
エ 上段左欄第11行?第13行
「メールの閲覧条件として,(1)メールを開く回数,(2)期限(送信後の時間,または日時)が設定できる(写真1右)。」
オ 上段左欄第14行?中欄第4行
「メールの送信は,Outlookなどを使って,いつも通りに操作すればよい。
MailMaxを使ったメールは,ソースネクスト側が用意するサーバーを介する。」
カ 上段中欄第4行?第8行
「受信者側のOutlookなどには,MailMaxを使ったメールが届いた旨のみが伝えられ(写真1左上),ボタンをクリックするとメールの内容が専用ビューアに表示される(写真1左下)。」
キ 上段中欄第8行?第11行
「送信側で設定した制限を超えると,ボタンをクリックしてもメールは見られなくなる。」
ク 上段中欄第11行?第13行
「専用ビューアに表示されるメールの内容は,コピーや転送などができない(画面キャプチャは可能)。」

上記ア?ク及び、関連する図の記載によれば、次のことがいえる。

・上記ア及びイの記載から、「MailMax」は、メール・ソフトを使ったツールであるといえる。
・上記オの記載から、「MailMaxを使ったメールは、ソースネクスト側が用意するサーバーを介する」ものであるといえる。
・上記カの記載から、「受信者側」のメール・ソフトには、「MailMaxを使ったメールが届いた旨のみが伝えられ」、受信者が「ボタンをクリックするとメールの内容が専用ビューアに表示される」ものであるといえる。
・上記クの記載から、「MailMax」を使った「メールの内容」は、「コピー」ができないものであるといえる。
・上記ア、エ、キの記載から、「MailMax」は、送信者側で「閲覧条件」として「メールを開く回数」や「期限」などを設定することができ、「送信側で設定した制限を超えると、」受信者は「メール」が見られなくなるツールであるといえる。
・上記ウの記載から、受信者側で動作する受信用のフリーウエアが提供されるものであるといえる。

したがって、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「MailMaxは、メール・ソフトを使ったツールであって、
MailMaxを使ったメールは、ソースネクスト側が用意するサーバーを介し、
受信者側のメール・ソフトには、MailMaxを使ったメールが届いた旨のみが伝えられ、受信者がボタンをクリックすると、メールの内容が専用ビューアに表示され、
MailMaxを使ったメールの内容は、コピーができず、
MailMaxは、送信者側で閲覧条件としてメールを開く回数や期限などを設定することができ、送信側で設定した制限を超えると、受信者はメールが見られなくなり、
受信用のフリーウエアが提供されるツール。」

第4 対比
ここで、本願請求項1発明と引用発明とを比較する。

引用発明の「送信者」は、本願請求項1発明の「一の利用者」に相当し、以下同様に、
「受信者」は、「二の利用者」に、
「メール」は、「電子メール」に、
「送信者側」の装置は、「一の利用者の端末」に、
「受信者側」の装置は、「二の利用者の端末」に、それぞれ相当する。

引用発明において「MailMaxを使ったメールは、ソースネクスト側が用意するサーバーを介」するものである。一方で、メールサーバがメールを記憶する手段を備えていることは、技術常識である。また、MailMaxを利用したメールは、「ソースネクスト側が用意するサーバー」に備えられている記憶手段において記憶されるものであることは、技術常識を参酌すれば、引用例1に記載されているに等しい事項である。このため、「ソースネクスト側が用意するサーバー」においてメールを記憶する手段は、本願請求項1発明の「保存手段」に相当する。

引用発明の「受信者側のメール・ソフトには、MailMaxを使ったメールが届いた旨がのみが伝えられ、受信者がボタンをクリックすると、メールの内容が専用ビューアに表示され」との動作について検討する。
「受信者側のメール・ソフトには、MailMaxを利用したメールが届いた旨のみが伝えられ」との動作は、ソースネクスト側が用意するサーバーにMailMaxを使ったメールが届いた場合に、当該サーバーは当該メールを記憶し、受信者のメール・ソフトにメールが届いた旨のみを通知するものである。
また、引用発明の「受信者がボタンをクリックする」との動作は、MailMaxで送信されたメールを見る為に受信者が行う動作であるから、本願請求項1発明の「閲覧要求」に相当する。
また、引用発明の「メールの内容が専用ビューアに表示され」るとの動作は、MailMaxを使ったメールを受信者の専用ビューアに表示することであり、引用発明の「ソースネクスト側が用意するサーバー」から「メールの内容」が伝えられることにより、受信者はメールを見られるのであるから、この動作は本願請求項1発明の「該二の利用者宛の電子メールの閲覧を該二の利用者の端末に対して許容する」との動作に相当する。
したがって、引用発明の「受信者側のメール・ソフトには、MailMaxを使ったメールが届いた旨のみが伝えられ、受信者がボタンをクリックすると、メールの内容が専用ビューアに表示され」との動作を制御する構成は、
本願請求項1発明の「前記保存手段に前記二の利用者宛の電子メールが保存されている場合に該二の利用者の端末から出される閲覧要求に応答して該二の利用者宛の電子メールの閲覧を該二の利用者の端末に対して許容する閲覧許容手段」に相当する。

また、本願請求項1発明の「ダウンロードサーバ」と、引用発明の「ソースネクスト側が用意するサーバー」とは、「サーバ」である点で共通する。

また、引用発明の「ソースネクスト側が用意するサーバー」を含むシステムは、以下で相違点として挙げる点を除いて、本願請求項1発明の「電子メール仲介サービスシステム」に相当する。

よって、本願請求項1発明と引用発明は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点>で相違している。

<一致点>
「一の利用者の端末から送信された二の利用者宛の電子メールを保存する保存手段、を有するサーバと、
前記保存手段に前記二の利用者宛の電子メールが保存されている場合に該二の利用者の端末から出される閲覧要求に応答して該二の利用者宛の電子メールの閲覧を該二の利用者の端末に対して許容する閲覧許容手段と、を含む
ことを特徴とする電子メール仲介サービスシステム。」

<相違点>
[相違点1]本願請求項1発明の「ダウンロードサーバ」は、「前記二の利用者宛の電子メールに保存不可条件が付加されていた場合に当該二の利用者の端末からの閲覧後に、前記二の利用者宛の電子メールを前記保存手段から消去するメッセージ消去手段」を備えているのに対し、
引用発明では、そのようになっていない点。

[相違点2]本願請求項1発明の「ダウンロードサーバ」は、「前記閲覧要求を出したり該閲覧要求に応答して閲覧が許容された前記電子メールを表示したりするためのプログラムを保持し、前記端末からのダウンロード要求に応答して当該プログラムを要求元の端末に転送する転送手段」を備えているのに対し、
引用発明では、そのようになっていない点。

[相違点3]本願請求項1発明の「閲覧許容手段」は、「ダウンロードサーバ」に備えられているのに対し、
引用発明では、これに対応する手段の所在について明らかでない点。

第5 当審の判断
1 相違点の判断
上記相違点について検討する。

[相違点1]について
引用発明のMailMaxは、送信者側の装置でメールを閲覧できる回数を設定することができ、送信者側の装置で設定した制限を超えると、受信者側の装置でメールを見られなくするツールである。
一方で、コンピュータ上で動作するプログラムにおいて、不必要なデータを消去することは、慣用技術に過ぎない。
このため、見られない状態になった後に当該メールをサーバから消去する手段を備えることは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
また、引用発明は、「ソースネクスト側が用意するサーバー」におけるメールを記憶する手段においてメールを保存しているため、メールを記憶する手段が記憶しているメールをサーバから消去する手段を「ソースネクスト側が用意するサーバー」に備えることは、当業者が容易に想到しうるものである。
このため、相違点1に係る構成は、引用発明及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2]について
引用発明において、受信用に提供されるフリーウエアは、メールの内容が受信者側の専用ビューアに表示されるものである。
一方で、フリーウエアを提供する方法に関して、特定のサーバに保存されたフリーウエアを、インターネットを通じてダウンロードするという方法は、慣用技術に過ぎない。
したがって、引用発明の「受信用のフリーウエアが提供される」との動作を実現する手段として、「前記閲覧要求を出したり該閲覧要求に応答して閲覧が許容された前記電子メールを表示したりするためのプログラムを保持し、前記端末からのダウンロード要求に応答して当該プログラムを要求元の端末に転送する転送手段」を備えることは、当業者が容易になし得るものである。
さらに、ダウンロードされるフリーウエアを記憶しているサーバを、フリーウエアの提供元が用意するサーバとすることは、この方法を実施する際に適宜なし得る設計事項である。
したがって、「ソースネクストが用意するサーバー」に、この転送手段を備えることは、当業者が容易になし得るものである。
このため、相違点2に係る構成は、引用発明及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点3]について
引用発明の「受信者側のメール・ソフトには、MailMaxを使ったメールが届いた旨がのみが伝えられ、受信者がボタンをクリックすると、メールの内容が専用ビューアに表示され」との動作を制御する手段(本願請求項1発明の「閲覧許容手段」に相当。)は、その動作の内容を勘案すれば、メールを中継する装置に対して動作する手段である。
一方で、引用例1の上記オには、「MailMaxを使ったメールは,ソースネクスト側が用意するサーバーを介する」と記載されている。
したがって、この手段を「ソースネクストが用意するサーバー」に備える構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
このため、相違点3に係る構成は、引用発明及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

以上のことから、各相違点に係る構成は引用発明及び慣用技術から当業者が容易に想到しうるものであり、また、本願発明の作用・効果も、引用発明及び慣用技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願請求項1発明は、引用発明及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

2 審判請求人の意見の参酌
審判請求人は、平成23年7月5日付け意見書の「2.」において、以下の主張をしている。

「引用例1?3のうちの特に引用例1(以下、単にMailMaxといいます)は、メール添付されたファイル(消えるメール.vlz)をダブルクリックすると専用のビューアが起動し、送信者側で設定された条件(閲覧回数や経過日数など)を満たしたときに、ファイル内容の閲覧を許容するというものです(詳細は下記URL1を参照)。
URL1:http://www.sourcenext.info/download/mm_viewer.html
たしかに、MailMaxは「メール」の技術でありますが、その基本は、メールに“添付”されたファイルの閲覧制御にあります。このことは、下記URL2の「メールに添付して消すことができるファイル形式」からも明らかです。
URL2:http://www.sourcenext.com/products/max_k/system.html
本願発明(請求項1の発明)は、「(途中略(請求項1全文))」という構成を有することから理解されるように、“メールそのものに対する閲覧制御”を行うものです。
これに対して、MailMaxの技術は、前記のとおり、“添付ファイルに対する閲覧制御”を行うものであり、本願発明(請求項1の発明)の技術(メールそのものに対する閲覧制御を行うもの)とは明らかに相違します。」

しかし、上記第2で示したとおり、引用例1の上段中欄第4行?第8行(上記カ)には、「受信者側のOutlookなどには,MailMaxを使ったメールが届いた旨のみが伝えられ(写真1左上),ボタンをクリックするとメールの内容が専用ビューアに表示される(写真1左下)。」と記載されており、送信者が送ったメールの内容をこの通知に添付して送信する構成は記載されていない。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。

第6 むすび
よって、本願請求項1発明は、引用例1に記載された発明及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、請求項1以外の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-10 
結審通知日 2011-08-11 
審決日 2011-08-26 
出願番号 特願2002-374126(P2002-374126)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 義晴  
特許庁審判長 井上 正
特許庁審判官 木方 庸輔
山本 章裕
発明の名称 電子メール仲介サービスシステム、端末、ダウンロードサーバ及びプログラム並びに記録媒体  
代理人 鹿嶋 英實  

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