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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効2011800113 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) H01L 審判 全部無効 1項1号公知 H01L 審判 全部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 H01L 審判 全部無効 2項進歩性 H01L 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) H01L 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 H01L |
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管理番号 | 1244971 |
審判番号 | 無効2010-800199 |
総通号数 | 144 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-12-22 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2010-10-27 |
確定日 | 2011-09-01 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4368143号発明「信号処理装置及び信号処理方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第4368143号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件特許4368143号(以下「本件特許」という。)は、富士通セミコンダクター株式会社(以下「被請求人」という。)の特許であって、平成15年5月30日に特願2003-154520号として特許出願され、平成21年9月4日に特許権の設定の登録がなされたものである。 そして、平成22年10月27日に株式会社山武(以下「請求人」という。)から、本件特許の請求項1ないし5に係る発明についての特許の無効審判の請求がなされた。 その後の手続の経緯は以下のとおりである。 平成23年 1月11日:被請求人 答弁書提出 〃 1月11日:被請求人 訂正請求書提出 〃 2月28日:請求人 弁駁書提出 〃 6月13日:請求人及び被請求人 口頭審理陳述要領書提出 〃 6月27日:口頭審理 第2.請求人の主張 請求人は、平成23年1月11日付け訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)による訂正後の本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、特許法第29条第1項第3号及び同条同項第1号に該当し、あるいは同法第29条第2項の規程により、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規程により無効とされるべきものであると主張し、証拠方法として、下記甲第1号ないし4号証(以下、甲第1号証、甲第2号証等を、「甲1」、「甲2」等という。)を提出している。 ・甲1及び訳文: (1)甲1の1及び抄訳:“DATA Analysis, a theoretical and practical approach”p.1-p.44、Tien-Wen Wang,Stephane Hubac,Martin Schellenberger,Argon Chen, John Pace (2)甲1の2:甲1の1の表紙左下部を拡大したもの ・甲2及び訳文:甲1号証の配布証明 ・甲3及び訳文:AEC/APC会議を開催した社団法人シリコンサクソニー副会長による宣誓書 ・甲4及び訳文:甲2の作成者によるさらなる宣誓書 そして、本件訂正による訂正後の本件特許の請求項1ないし5に係る発明が、特許法第29条第1項第3号及び同条同項第1号に該当し、あるいは同法第29条第2項の規程により特許を受けることができない理由として、以下の点が挙げられている。 本件訂正による訂正後の本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、その出願前に、4th European AEC/APC Conference(第4回欧州AEC/APC会議)の“Tutorial Program”(チュートリアルプログラム)において頒布された甲1に記載され、かつ、甲1に基づき発表された発明であるから、特許法第29条第1項第3号および同条同項第1号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、少なくとも甲1に記載され、甲1に基づき発表された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第3.被請求人の主張 被請求人は、本件訂正による訂正後の本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、特許法第29条第1項第3号及び同条同項第1号に該当するものでなく、また、当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、無効理由は存在しないと主張している。 なお、本件訂正が適法になされたものであることについては、両当事者間に争いはない。 第4.当審の判断 1.本件訂正についての決定 (結論) 本件特許に係る明細書を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正することを認める。 (理由) (1)本件訂正の内容 本件訂正の内容は以下のとおりである。 本件特許明細書の特許請求の範囲の 「【請求項1】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 各前記製造ステップにおける前記信号データのうち、前記製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の前記製造ステップへの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有することを特徴とする信号処理装置。 【請求項2】 前記フィルタリング部は、所定時間または所定サンプル数分の前記信号データに対し、フィルタリングすることを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。 【請求項3】 前記フィルタリングした複数の前記センサの前記信号データに対し、多変量解析を行う多変量解析部を有することを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。 【請求項4】 要約化した前記信号データに製造工程に関する情報を含むデータ管理情報を付加し、半導体製造工程における各種システムに引き渡すことを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。 【請求項5】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理方法において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得し、 各前記製造ステップにおける前記信号データのうち、前記製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の前記製造ステップへの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をフィルタリングし、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する、 ことを特徴とする信号処理方法。」を、 「【請求項1】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方を、製造ステップ毎に指定された切り替わり直後又は直前のフィルタリングの指定に従い、製造ステップ単位でカットしてフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有することを特徴とする信号処理装置。 【請求項2】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をカットしてフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有し、 前記フィルタリング部は、前記信号データのうち所定サンプル数分の前記信号データを抽出するよう、前記信号データをカットしてフィルタリングすることを特徴とする信号処理装置。 【請求項3】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をカットしてフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした複数の前記センサの前記信号データに対し、多変量解析を行う多変量解析部と、 前記多変量解析した前記信号データを要約化する要約化部と、 を有することを特徴とする信号処理装置。 【請求項4】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をカットしてフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有し、 要約化した前記信号データに、品種情報を含む製造工程に関する情報を含むデータ管理情報を付加し、半導体製造工程における各種システムに引き渡すことを特徴とする信号処理装置。 【請求項5】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理方法において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得し、 前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方を、製造ステップ毎に指定された切り替わり直後又は直前のフィルタリングの指定に従い、製造ステップ単位でカットしてフィルタリングし、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する、 ことを特徴とする信号処理方法。」と訂正するとともに、発明の詳細な説明を訂正すること。 (2)訂正内容の整理 (2-1)訂正事項1 請求項1及び5において、「フィルタリング」動作を限定する事項として、「製造ステップ毎に指定された切り替わり直後又は直前のフィルタリングの指定に従い、製造ステップ単位で」との記載を追加すること。 (2-2)訂正事項2 請求項2において、訂正前の「前記フィルタリング部は、所定時間または所定サンプル数分の前記信号データに対し、フィルタリングする」を、訂正後の「前記フィルタリング部は、前記信号データのうち所定サンプル数分の前記信号データを抽出するよう、・・・フィルタリングする」と訂正すること。また、訂正前の請求項2が請求項1の従属項であるところ、請求項1に対する訂正事項1を含めないよう、請求項2を独立項形式に書き換えること。 (2-3)訂正事項3 請求項3において、従属元である訂正前の請求項1の「フィルタリングした前記信号データを要約化する」を、「多変量解析した前記信号データを要約化する」と訂正すること。また、請求項3が請求項1の従属項であるところ、請求項1に対する訂正事項1を含めないよう、請求項3を独立項形式に書き換えること。 (2-4)訂正事項4 請求項4において、「製造工程に関する情報」を限定する事項として、「品種情報を含む」との記載を追加すること。また、訂正前の請求項4が請求項1の従属項であるところ、請求項1に対する訂正事項1を含めないよう、請求項4を独立項形式に書き換えること。 (2-5)訂正事項5 請求項1及び5、並びに独立項形式に書き換えた請求項2ないし4において、訂正前の「各前記製造ステップにおける前記信号データのうち、前記製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の前記製造ステップへの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方を」を、訂正後の「前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方を」と訂正すること。 (2-6)訂正事項6 請求項1及び独立項形式に書き換えた請求項2ないし4において、訂正前の「フィルタリングするフィルタリング部」を、訂正後の「カットしてフィルタリングするフィルタリング部」と訂正すること。さらに、独立項形式に書き換えた請求項2において、訂正前の「フィルタリングする」を、訂正後の「前記信号データをカットしてフィルタリングする」と訂正すること。同様に、請求項5において、訂正前の「フィルタリングし」を、訂正後の「カットしてフィルタリングし」と訂正すること。 (2-7)訂正事項7 明細書段落0011において、「製造ステップ毎に指定された切り替わり直後又は直前のフィルタリングの指定に従い、製造ステップ単位でカットしてフィルタリングする」と訂正すること。 (3)訂正事項についての検討 (3-1)訂正事項1について (3-1-1)目的の適否及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないか否かについて 訂正事項1は、訂正前の請求項1及び5において、「フィルタリング」動作を限定する事項として、「製造ステップ毎に指定された切り替わり直後又は直前のフィルタリングの指定に従い、製造ステップ単位で」との記載を追加するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合する。 (3-1-2)本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるか否かについて 訂正事項1により訂正された事項は、本件特許に係る明細書(以下、本件特許に係る明細書、図面を、各々「特許明細書」、「特許図面」といい、これらをまとめて「特許明細書等」という。)の 「【0045】 まず、入力された各種センサの信号データに対し、製造ステップ単位で図2?図5で示したようなフィルタリング処理を行う。(下線は、当審において付与。なお、以下、特に(強調付加)と明記しない部分についても同様である。) フィルタリング処理の際、FDCコントローラ200のユーザに、表示装置205aの画面に表示させて所望のフィルタリング範囲を設定可能なようにしてもよい。 【0046】 図8は、フィルタリング設定画面の例である。 図のように、フィルタリング設定画面700では、ある製造プロセスにおける製造ステップをStep Setting欄701で設定する。またRaw Data Count欄702には複数のウェーハ(例えば数ロット分)についてのステップ内の全サンプル数の合計が表示される。さらに、所定時間でフィルタリングするか、所定サンプリング数でフィルタリングするかをSecチェックボックス703a、Samplingチェックボックス703bのいずれかを選択することで指定する。さらに、Start_t欄704でステップ切り替わり直後のサンプル数(または時間範囲)、Main_t欄705で抽出するサンプル数(または時間範囲)、End_t欄706で次ステップの切り替わり直前のサンプル数(または時間範囲)を指定する。図では切り替わり直後の12サンプル、次ステップの切り替わり直前の5サンプルでフィルタリングするような指定を行っている。切り替わり直後と、次ステップの切り替わり直前の両方を指定する場合は、Main_t欄705は“0”となる。」及び特許図面の図8等に記載されているものと認められる。 したがって、訂正事項1は、特許明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3項の規定に適合する。 (3-2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項2において、「フィルタリング」動作を、「前記信号データのうち所定サンプル数分の前記信号データを抽出する」動作に限定するものである。すなわち、訂正前においては「所定時間または所定サンプル数分の前記信号データに対し、フィルタリングする」との記載であり、「所定時間」及び「所定サンプル数」の両方を含んでおり、また「所定時間又は所定サンプル数」をカットするのか抽出するのかも特定されていないのに対し、訂正後においては、「所定サンプル数分」を「抽出する」との技術内容に限定するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、訂正事項2が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、訂正事項2は、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合する。 そして、当該訂正事項2の「前記信号データのうち所定サンプル数分の前記信号データを抽出するよう、・・・フィルタリングする」については、特許明細書の段落【0017】の「・・・、フィルタリング部12は、取得した各製造ステップにおける信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の信号データと、次の製造ステップへの切り替わり直前の信号データの少なくとも一方をフィルタリングする。」、段落【0019】の「図3は、フィルタリングの第2の例である。 製造ステップの切り替わり(Step1からStep2への切り替わり)直後のサンプル数N個分をカットしたフィルタリングの例である。この場合、抽出するサンプル数を、M個分などと設定することでサマリーの算出に使用するサンプル数を一定にすることができる。」及び特許図面の図3等に記載されているものと認められる。 したがって、訂正事項2は、特許明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3項の規定に適合する。 (3-3)訂正事項3について 訂正事項3は、請求項3において、「要約化」動作の対象を「多変量解析した前記信号データ」に限定するものである。すなわち、訂正前においては、「フィルタリングした前記信号データを要約化する」との記載であり、要約化の対象としては、フィルタリングした直後の信号データ、及び、フィルタリングし更に多変量解析した後の信号データ、の両方を含むのに対し、訂正後においては、「要約化」動作の対象を「多変量解析した前記信号データ」に限定するものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、訂正事項3が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、訂正事項3は、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合する。 そして、当該訂正事項3の「多変量解析した前記信号データを要約化する」については、特許明細書の段落【0024】の「また、フィルタリングした各センサ30-1、30-2、…、30-mの信号データを、多変量解析部14に入力して多変量解析を行うようにしてもよい。多変量解析を行うことにより、半導体製造装置20の異常をより総合的に検出することができる。多変量解析処理した結果は、サマリー化部13に入力されて、製造ステップ単位で同様にサマリー化される。」等に記載されているものと認められる。 したがって、訂正事項3は、特許明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3項の規定に適合する。 (3-4)訂正事項4について 訂正事項4は、請求項4において、「製造工程に関する情報」を「品種情報を含む」情報に限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、訂正事項4が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、訂正事項4は、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合する。 そして、当該訂正事項4の「品種情報を含む」については、特許明細書の段落【0053】の「また、サマリー化したデータをFDCサーバ210のデータベースにキー情報とともに登録し、引き渡す際にもこのキー情報を付加する。 キー情報とは、品種、工程、装置、レシピ、ロット、ウェーハ、ステップ、ロット処理開始または終了時間など、データを管理、識別する上で必要な情報のことを意味している。」、段落【0054】の「MES100は半導体製造にかかわる様々なデータベースをもつため、これらキー情報を全て管理している。一方、FDCシステムのデータ収集装置400は、半導体製造装置500のみとデータのやりとりを行うため、半導体製造装置が管理している情報(装置、レシピ、ロット、ウェーハ、ステップ、ロット処理開始又は終了時間など)は収集することができるが、MES100でしか管理していない情報(品種、工程など)については直接収集することができない。FDCシステムのデータをAPCシステム120など他のシステムで利用するためには、FDCシステムはMES100のデータベースに直接リンクし、これら不足している情報を入手する必要がある。」及び段落【0055】の「具体的なリンクの方法としては、FDCシステムが半導体製造装置から収集できるキー情報の項目を用いてMES100のデータベースを検索することにより、不足している情報を補うようにする。例えば、ロット処理開始時間を用いて、その時間にロット処理が開始されたロットの情報をMES100から検索する。MES100ではロット処理開始時間情報と共に、その他の各種キー情報も管理しているので、そこから品種、工程などのキー情報を抽出することができる。FDCシステムで収集したデータをFDCサーバ210のデータベースに登録する際にこれらのキー情報の項目を付加する。」等に記載されているものと認められる。 したがって、訂正事項4は、特許明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3項の規定に適合する。 (3-5)訂正事項5について 訂正事項5は、請求項1及び5、並びに独立項形式に書き換えた請求項2ないし4において、「製造ステップ」についての記載をより明確にするものである。すなわち、訂正前においては、「各前記製造ステップにおける前記信号データのうち、前記製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の前記製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方を」となっており、「前記製造ステップ」との記載により本来は1つの製造ステップに着目して前後関係を説明すべきところ、「各前記製造ステップ」や「次の前記製造ステップ」等の記載のために「前記製造ステップ」が複数の製造ステップ全てを意味することとなり、製造ステップ間の前後関係の把握を若干困難にしているのに対し、当該訂正により、製造ステップ間の前後関係がより明確になっているから、訂正事項5は、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、訂正事項5が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと、及び特許明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであることは明らかであるから、訂正事項5は、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第4項の規定及び特許法第126条第3項の規定に適合する。 (3-6)訂正事項6について 訂正事項6は、請求項1及び5、並びに独立項形式に書き換えた請求項2ないし4において、「フィルタリング」動作の技術内容をより明確にするものである。すなわち、訂正前の各請求項では単に「フィルタリングする」や「フィルタリングし」と記載されているのみであり、各フィルタリング動作が、その動作の対象を残すものであるのか、或いはその動作の対象をカットするものであるのかが、明示的には特定されていないのに対し、当該訂正により、当該「フィルタリング」動作により、その動作の対象をカットすることがより明確になっているから、訂正事項6は、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、訂正事項6が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、訂正事項6は、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合する。 そして、当該訂正事項6の「カット」することについては、特許明細書の段落【0018】の「図2は、フィルタリングの第1の例である。 製造ステップの切り替わり(Step1からStep2への切り替わり)直後のサンプル数N個分と、次の製造ステップ(Step3)への切り替わり直前のサンプル数M個分をカットしたフィルタリングの例である。・・・」、段落【0019】の「図3は、フィルタリングの第2の例である。 製造ステップの切り替わり(Step1からStep2への切り替わり)直後のサンプル数N個分をカットしたフィルタリングの例である。・・・」、段落【0020】の「図4は、フィルタリングの第3の例である。 製造ステップの切り替わり(Step1からStep2への切り替わり)直後のN秒間と、次の製造ステップ(Step3)への切り替わり直前のM秒間のデータをカットしたフィルタリングの例である。・・・」、段落【0021】の「図5は、フィルタリングの第4の例である。 製造ステップの切り替わり(Step1からStep2への切り替わり)直後のN秒間のデータをカットしたフィルタリングの例である。・・・」及び特許図面の図2ないし5に記載されているものと認められる。 したがって、訂正事項6は、特許明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3項の規定に適合する。 (3-7)訂正事項7について 訂正事項7は、請求項1の訂正に合わせて、【課題を解決する手段】の記載を請求項1に対応するよう訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、訂正事項7が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと、及び特許明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであることは明らかであるから、訂正事項7は、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第4項の規定及び特許法第126条第3項の規定に適合する。 (4)本件訂正についてのむすび 以上検討したとおり、本件訂正における訂正事項は、すべて特許法第134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものに該当し、特許明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、かつ、事実上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書並びに特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。 よって、本件訂正を認める。 2.無効理由についての判断 (1)検討の前提 上記1.で検討したとおり、本件訂正は認められたので、無効理由(本件訂正による訂正後の本件特許の請求項1ないし5に係る発明が、特許法第29条第1項第3号及び同条同項第1号に該当し、あるいは同法第29条第2項の規程により、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規程により無効とされるべきものである。)について検討する。 なお、本件訂正による訂正後の本件特許の請求項1ないし5に係る発明を、各々以下「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」・・・「本件訂正発明5」という。 (2)証拠の成立性について (2-1)検討の前提 請求人が提出した甲1ないし4は、以下のとおりである。 なお、甲各号証の内容を参照する場合には、必要に応じて、原文と訳文を併記、あるいは訳文のみを記載する。 (2-1-1)甲1について 甲1の1は、全44ページからなり、表紙に“Tutorial Part 1”(チュートリアル・パート1)、第2ページに“DATA Analysis, a theoretical and practical approach”(データ分析、論理的かつ実践的アプローチ)と記載されるとともに、各ページの左下部(甲1の2は、当該部分を拡大したものである。)には、“4th European AEC/APC Conference”(第4回欧州AEC/APC会議)と記載されたものである。 (2-1-2)甲2について 甲2には、以下の記述がなされている。 「2010年9月30日 エルランゲン 関係各位 私、マルティン・シェレンベルガー(工学修士)は、以下の通り述べる。 1.私は、ドイツ国エルランゲン91058,ショットキー通り10に所在する「フラウンフォーファー・集積システム・デバイス技術研究所」にて、装置及び高度プロセス制御部門のグループマネージャーを務めている。私は、添付のチュートリアルプレゼンテーションの文書(印刷物)である「チュートリアル・パート1-データ分析一理論的かつ実践的アプローチ」の公知性の詳細について照会を受けている。印刷物の第2ページに示されているように、私はチュートリアルの執筆者の一人である。 2.チュートリアル・パート1は、2003年3月26日から28日にかけてフランス、グルノーブルにて開催された、第4回欧州・高度装置制御/高度プロセス制御(AEC/APC)会議において、2003年3月26日に同僚であるエスアイ・オートメーションのジョン・ペース氏によって発表された。チュートリアルは、約70名の聴講者に対して提供された。 3.チュートリアルの提供時、全44ページの印刷物が各聴講者に配布された。聴講者は、チュートリアルの内容及び印刷物を通じて得られる情報について、守秘義務を負うこととはされていなかった。 4.配布された印刷物に加えて、第4回AEC/APC会議の聴講者は、コンパクトディスク(CD)の形態でプレゼンテーションの電子コピーを受け取っている。このCDを通じて得られる情報についても、本件チュートリアルの聴講者が守秘義務を負うものとはされていなかった。 [直筆署名] マルティン・シェレンベルガー(工学修士) 同封物: 「チュートリアル・パート1」のプレゼンテーションの印刷物(44ページ)」 (2-1-3)甲3について 甲3には、以下の記述がなされている。 「関係各位 私、ギッタ・ハウポルドは、以下の通り述べる。 1.私は、ドイツ国ドレスデン01099、マンフレッド・フォン・アルデンヌリング20に所在する社団法人シリコンサクソニーのマネージングディレクター(CEO)兼副会長の役職を2000年12月から努めている。私は、2003年3月26日から28日にかけてフランス、グルノーブルにて開催された、第4回欧州・高度装置制御/高度プロセス制御(AEC/APC)会議の参加者に配布された資料に関する情報を提供するように求められた。 2.社団法人(登録された団体)シリコンサクソニーは、欧州における半導体、エレクトロニクスおよびマイクロシステム産業の支部団体である。社団法人シリコンサクソニーは、ここ数年間、上記2003年のグルノーブルにおける第4回AEC/APC会議を含むAEC/APC会議を開催している。 3.第4回AEC/APC会議の開催時、チュートリアル「チュートリアル・パート1-データ分析-理論的かつ実践的アプローチ」は、2003年3月26日に発表された。私は、ここに、チュートリアルが行われた際、44ページのプレゼンテーション全体の印刷物が各参加者に配布されたことを確認する。この配布物のコピーを本宣誓書に添付する。さらに、第4回AEC/APC会議のチュートリアル参加者は、コンパクトディスク(CD)の形態でプレゼンテーションの電子コピーを受け取っている。 2011年2月22日 ドレスデン [直筆署名] ギッタ・ハウポルド 社団法人シリコンサクソニー 副会長 同封物: プレゼンテーション「チュートリアル・パート1」(全44ページ)の配布物 2004年からの(チュートリアルを含む)すべてのプレゼンテーションを網羅した2005年のCD」 (2-1-4)甲4について 甲4には、以下の記述がなされている。 「2011年2月15日 エルランゲン 関係各位 私、マルティン・シェレンベルガー(工学修士)は、以下の通り述べる。 1.私は、特にエスアイ・オートメーションのジョン・ペース氏と私を含んだ共著物であるチュートリアルプレゼンテーション「チュートリアル・パート1-データ分析-理論的かつ実践的アプローチ」に関する2010年9月30日付の最初の供述書に署名した本人である。 2.私は、ここに、2003年3月26日から28日にかけてフランス、グルノーブルにて開催された、第4回欧州・高度装置制御/高度プロセス制御(AEC/APC)会議に私自身が出席したことを確認する。私は、2003年3月26日に、特にジョン・ペース氏によって行われた上記チュートリアルプレゼンテーションにも出席した。 [直筆署名] マルティン・シェレンベルガー(工学修士)」 (2-2)被請求人の主張 被請求人は、平成23年1月11日付け答弁書において、甲1の実質的証拠能力に関して、「甲第1号証がグルノーブルで2003年3月26-28日に開催された会議用に用意されたスライドであることについては認めるが、それ以上の事実については、更なる証拠により立証されない限り、現時点では認めることができない。」と主張し、その理由として、以下のように主張している。 「請求人は、「甲第1号証の1(以下、「甲1」と略称することがある。)は、第4回欧州AEC/APC会議のチュートリアル・プログラムにおいて、本件特許の出願日(平成15年5月30日)前である平成15年3月26日に頒布され、その内容が発表された刊行物である。なお、甲第1号証の2は、甲第1号証の1の表紙左下部を拡大したものであるが、枠内に図柄と共に記載された「AEC/APC 2003 26-28 march GRENOBLE」という記載から、グルノーブルで2003年3月26-28日に開催された会議での配布物であることが明らかである。」と主張している。 しかしながら、「AEC/APC 2003 26-28 march GRENOBLE」という記載からは、グルノーブルで2003年3月26-28日に開催された会議用に用意されたスライドであることが分かるのみであり、実際に2003年3月26-28日に発表されたという事実を示すものではなく、また発表されたとしても全スライドの内容が説明されたという事実を示すものもなく、更には、発表の場或いは当該会議の開催中にそのコピーが配布されたという事実を示すものでもない。 請求人は更に、「また、第4回欧州AEC/APC会議が開催され、そのチュートリアル・プログラムにおいて、甲第1号証が文書として、及び、電子的にも頒布され、また、甲第1号証に基づく発表が行われ、甲第1号証の受領者、聴取者が秘密保持義務を負っていなかった事実は、甲第1号証の共著者の証明書(甲第2号証)によっても明らかである。」と主張している。 しかしながら、当該証明書(甲第2号証)には、共著者が会議での当該発表の場に同席したとは記載されてなく、共著者が如何にして発表の場における種々の詳細を知り得たのかが不明である。単に発表者或いは他の同僚から伝え聞いたことに過ぎないのか、或いは共著者自身が直接に見聞きしたことであるのか、明確でない。 また甲第2号証には、発表において全スライド(全頁)の内容が説明されたのか否かに関して何ら記載がない。発表用資料の全体が本件特許発明の無効の証拠となり得るようなものであれば、全頁の内容が説明されたのか否かはそれ程重要な問題ではないが、甲第1号証のうちで本件特許発明の無効の証拠として用いられている頁は数頁にすぎず、これらの頁の内容が実際に発表の場において説明されたのか否かは、本件特許発明の新規性・進歩性の判断において明らかにしておくべき重要な事項である。 また発表の場において発表用資料の全44頁のプリントアウトが出席者に配布されたと甲第2号証に記載されているが、仮に共著者が発表の場に同席していたとしても、これは単に共著者の記憶に基づくものであるとしか見受けられない。会議における発表の事実自体を明確に記憶していることは自然であるとしても、7年以上も前に開催された会議において、発表用資料のプリントアウトが発表の場で配布されたか否かについて明確な記憶があることは当然のこととしては受入れ難い。この点に関して更なる立証を求める。 またチュートリアル出席者が発表用資料の電子コピーをCDで受け取ったと甲第2号証に記載されているが、発表の場で受け取ったのか後日受け取ったのかが不明である。またこれについても、単に共著者の記憶に基づくものであるとしか見受けられない。この点に関して更なる立証を求める。」 (2-3)請求人の主張 これに対して、請求人は、平成23年2月28日付け弁駁書において、甲3及び甲4を提出するとともに、以下のように主張している。 「被請求人は、甲1が、本件特許出願前の、2003年3月26-28日に開催された第4回欧州AEC/APC会議の資料であることは認めつつも、全頁の説明があったか、及び、資料の配付時期については不明である旨主張している。 しかしながら、甲1のようなパワーポイント資料は、会議において全頁配布されることが通常であり、また、実際に甲1は、会議時に配布されている。この点、甲2において、甲1を含むチュートリアルの共著者であるマルティン・シェレンバルガー氏が陳述しているところであり、また、開催事務局においても確認している(甲3)。更に、甲1の資料が全頁収納されたCDが配布されたことも確認されている(甲1及び甲3)。なお、チュートリアルの発表者の1人であるマルティン・シェレンバルガー氏は、実際に、甲1の発表時にも出席していたものである(甲4)。」 (2-4)当審の判断 (2-4-1)被請求人の主張の整理 (主張1) 甲1の1の「AEC/APC 2003 26-28 march GRENOBLE」という記載は、甲1の1の印刷物が、実際に2003年3月26-28日に発表されたという事実を示すものではない。 (主張2) 甲1の1の「AEC/APC 2003 26-28 march GRENOBLE」という記載は、甲1の1の印刷物が発表されたとしても全スライドの内容が説明されたという事実を示すものでない。 (主張3) 甲1の1の「AEC/APC 2003 26-28 march GRENOBLE」という記載は、甲1の1の印刷物が、発表の場或いは当該会議の開催中にそのコピーが配布されたという事実を示すものでもない。 (主張4) 甲2には、共著者が会議での当該発表の場に同席したとは記載されてなく、共著者が如何にして発表の場における種々の詳細を知り得たのかが不明である。単に発表者或いは他の同僚から伝え聞いたことに過ぎないのか、或いは共著者自身が直接に見聞きしたことであるのか、明確でない。 (主張5)甲2には、発表において、甲1の1の全スライド(全ページ)の内容が説明されたのか否かに関して何ら記載がない。 (主張6)甲2には、発表の場において発表用資料の全44ページのプリントアウトが出席者に配布されたと記載されているが、仮に共著者が発表の場に同席していたとしても、これは単に共著者の記憶に基づくものであるとしか見受けられない。会議における発表の事実自体を明確に記憶していることは自然であるとしても、7年以上も前に開催された会議において、発表用資料のプリントアウトが発表の場で配布されたか否かについて明確な記憶があることは当然のこととしては受入れ難い。 (主張7)甲2には、チュートリアル出席者が発表用資料の電子コピーをCDで受け取ったと記載されているが、発表の場で受け取ったのか後日受け取ったのかが不明である。またこれについても、単に共著者の記憶に基づくものであるとしか見受けられない。 (2-4-2)検討 (主張4について) 甲1を含むチュートリアルの共著者であるマルティン・シェレンバルガー氏による甲4の「2.私は、ここに、2003年3月26日から28日にかけてフランス、グルノーブルにて開催された、第4回欧州・高度装置制御/高度プロセス制御(AEC/APC)会議に私自身が出席したことを確認する。私は、2003年3月26日に、特にジョン・ペース氏によって行われた上記チュートリアルプレゼンテーションにも出席した。」という記載から、同氏が、上記会議の上記チュートリアルプレゼンテーションに出席したことは明らかである。 よって、被請求人の上記主張4は、採用できない。 (主張1について) 第4回欧州AEC/APC会議に出席した上記マルティン・シェレンバルガー氏による甲2の「2.チュートリアル・パート1は、2003年3月26日から28日にかけてフランス、グルノーブルにて開催された、第4回欧州・高度装置制御/高度プロセス制御(AEC/APC)会議において、2003年3月26日に同僚であるエスアイ・オートメーションのジョン・ペース氏によって発表された。」という記載から、甲1の1の印刷物が、グルノーブルで2003年3月26-28日に開催された「第4回欧州AEC/APC会議のチュートリアル・プログラム」において発表されたことは明らかである。 そして、このことは、第4回AEC/APC会議を開催した社団法人シリコンサクソニー副会長による甲3の「3.第4回AEC/APC会議の開催時、チュートリアル「チュートリアル・パート1-データ分析-理論的かつ実践的アプローチ」は、2003年3月26日に発表された。私は、ここに、チュートリアルが行われた際、44ページのプレゼンテーション全体の印刷物が各参加者に配布されたことを確認する。」という記載によっても裏付けられている。 よって、被請求人の上記主張1は、採用できない。 (主張3及び6について) 第4回欧州AEC/APC会議に出席した上記マルティン・シェレンバルガー氏による甲2の「3.チュートリアルの提供時、全44ページの印刷物が各聴講者に配布された。」という記載から、甲1の1の印刷物が、第4回欧州AEC/APC会議の場或いは当該会議の開催中に配布されたことは明らかである。 そして、このことは、前記社団法人シリコンサクソニー副会長による甲3:「3.・・・私は、ここに、チュートリアルが行われた際、44ページのプレゼンテーション全体の印刷物が各参加者に配布されたことを確認する。」という記載によっても裏付けられている。 よって、被請求人の上記主張3及び6は、採用できない。 (主張2及び5について) このような会議において配布される甲1の1のような印刷物については、通常、全部の内容が説明されるものである。 よって、被請求人の上記主張2及び5は、採用できない。 (主張7について) 第4回欧州AEC/APC会議に出席した上記マルティン・シェレンバルガー氏による甲2の「4.配布された印刷物に加えて、第4回AEC/APC会議の聴講者は、コンパクトディスク(CD)の形態でプレゼンテーションの電子コピーを受け取っている。」という記載から、チュートリアル出席者が、CDの形態で甲1の1の電子コピーを受け取ったことは明らかである。 そして、このことは、前記社団法人シリコンサクソニー副会長による甲3の「3.・・・第4回AEC/APC会議のチュートリアル参加者は、ゴンパクトディスク(CD)の形態でプレゼンテーションの電子コピーを受け取っている。」という記載によっても裏付けられている。 よって、被請求人の上記主張7は、採用できない。 (3-4-3)結論 以上検討したとおり、被請求人の上記主張はいずれも採用できず、甲1の1は、第4回欧州AEC/APC会議のチュートリアル・プログラムにおいて、本件特許の出願日(平成15年5月30日)前である平成15年3月26日に頒布され、その内容が発表された刊行物であると認められる。 (4)本件訂正発明1と甲1の1に記載された発明との対比・判断 (4-1)本件訂正発明1 本件訂正発明1は、本件訂正により訂正された明細書及び図面(以下これらをまとめて「本件訂正明細書」という。)の記載からみて、本件訂正明細書の特許請求の範囲請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方を、製造ステップ毎に指定された切り替わり直後又は直前のフィルタリングの指定に従い、製造ステップ単位でカットしてフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有することを特徴とする信号処理装置。」 (4-2)甲1の1に記載された事項及び発明 (4-2-1)甲1の1の第7ページ右上部には、「FDC-Background」すなわち「FDC-背景」(以下においては、日本語訳のみを記載する。)と記載され、1行目には「FDC-障害検出、分類は使用される」と記載されている。また、同8ページ右上部には「FDCの利点」と記載されている。よって、甲1の1にはFDCに関する記載がなされている。 また、同12ページにおいて、「半導体製造装置」の直下には、「外部センサ」(複数形)と記載されたボックスが示され、上記「半導体製造装置」と直線で結ばれて上記「半導体製造装置」と接続されていることが示されている。 この「外部センサ」は、同11ページ下から4行目にも記載されている。上記したように、甲1の1は「FDC」に関するものであり、「FDC」は、半導体製造装置の装置状態を示す信号を収集するものであるから、甲1の1に記載された「外部センサ」(複数形)は、「半導体製造装置」の装置状態を検出する「複数のセンサ」に該当する。 また、甲1の1の第12ページ下段中央左には「センサからのデータ」と記載されている。上記したとおり「FDC」においては半導体製造装置の装置状態を示す信号を取得し、プロセス障害の検出などを処理するのであるから、「外部センサ」によって得られるデータは、半導体製造装置の装置状態を示す信号に他ならない。そして、当該「センサからのデータ」は、同12ページ中段中央右に記載されているように「統合され同期がとられた信頼できるデータ収集」がなされ、「FDC」において処理される。 したがって、甲1の1には、「半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理するFDC」が記載されている。 (4-2-2)甲1の1の第11ページ右上端には、「データ収集」と記載され、同11ページ中段には、「収集するパラメータを選択する」と記載され、その選択肢の一つ(3つ目)に「外部センサ」が記載され、同12ページ中段中央右には、「・・・データ収集」と記載されている。すなわち、甲1の1には、「半導体製造装置」からの信号データを収集して取得する手段すなわちセンサ情報取得部が記載されている。 また、甲1の1の第11ページ下から3行目及び同18ページ第2項目にはそれぞれ「サンプリング・レート」と記載されている。「サンプリング・レート」は、データ収集の時間間隔を規定するから、甲1の1には、信号データを所定の時間間隔で取得することが記載されている。 さらに、同11ページ最終行には、「ステップ番号」と記載され、同18ページ第5項目には、「データ収集トリガ」として「レシピ・ステップ」が記載されている。そして、ここでいう「ステップ」は、「半導体製造装置」における「製造ステップ」に他ならない。 したがって、甲1の1には、「半導体製造装置における各製造ステップの信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部」が記載されている。 (4-2-3)甲1の1の、右上部に「データ収集」の記載のある第11ページの下から2行目に、「データ収集をトリガする開始イベントおよび停止イベントを定義する(レシピ名、ステップ番号・・・)」の記載があり、甲1の1には、センサによるデータ収集(取得)が製造ステップの変更すなわち切り替わりに応じてトリガされることが記載されていると解される。 次に、甲1の1の第23ページ右上のグラフ中には、「時間的データ」と記載され、同グラフから右下の「インジケータ」と記載されたグラフに至る矢印上に、「ステップ1:時間的フィルタ」と記載されている。また、同23ページ左部の下から5行目ないし下から3行目には「時間的情報を減らすための時間的フィルタ」と記載されており、同24ページ第1文には「時間的フィルタ」の説明として「このフィルタは時間的情報の減少を可能にする。・・・」と記載されている。すなわち、「時間的データ」は、「ステップ1:時間的フィルタ」に入力され、当該時間的フィルタにおいて時間的情報を減らす処理すなわちフィルタリングされることが記載されているのであるから、甲1の1には、「信号データをフィルタリングするフィルタリング部」が記載されており、さらに、同24ページ第2文には、「当該データ収集に応じて、当該時間的フィルタはウィンドウ処理や切り捨て処理であってもよい」と記載され、同26及び27ページの第2文には、「このフィルタは、時間的データのどの部分をシステムが処理フィルタに対してアクティブとするかを、ユーザが指定することを可能にする。」と記載されている。 そして、同26及び27ページに記載のグラフ中には、時間経過に応じて変化するデータの曲線が記載されている。そして、当該データ曲線は、2本の点線で時間的に区分けされた3つの区分「安定化」、「アクティブ・プロセス」及び「アクティブ・プロセスの終了」からなっており、さらに同27ページには、破線で描かれた2つの四角形のそれぞれの網掛け部分、すなわち「安定化」及び「アクティブ・プロセスの終了」と記載された区分についてデータがフィルタリングされる様子が記載されている。 したがって、甲1の1には、「ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングするフィルタリング部」が記載されているものと認められる。 (4-2-4)甲1の1の第23ページ右側には、上部の「時間的データ」と記載された図から、下部の「インジケータ」と記載された図に向けて矢印が引かれ、その間に「ステップ1:時間的フィルタ」に続けて「ステップ2:要約化フィルタ」が記載され、フィルタリングされた時間的データを更に、要約化フィルタに通すことが記載されている。なお、同30ページには、「要約化」として、「このフィルタは単変量データと呼ばれる1つのまたは幾つかのインジケータに時間的データを要約化することを可能にする」と記載されており、同31ページには、「要約化式の例」が、及び34ページには、「要約化」により得たグラフの例が記載されている。 ここで、上記「要約化式の例」の例として、同30ページ第2文には、「変数の時間的挙動に応じて、この要約化は平均値、範囲、標準偏差等であってよく、・・・」と記載されており、また、同31ページには、「最大」と表わされた「データの最大値」(第1項目)、「最小」と表わされた「データの最小値」(第2項目)、「時間的平均」と表わされた「1時間的母集団の平均値」(第5項目)、及び「時間的標準偏差」と表わされた「1時間的母集団の偏差を表わす」(最終項目)等が記載されている。 したがって、甲1の1には、「フィルタリングした信号データを要約化する要約化部」が記載されている。 (4-2-5)以上をまとめると、甲1の1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理するFDCにおいて、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有するFDC。」 (4-3)対比 (4-3-1)「FDC」においては半導体製造装置の装置状態を示す信号を取得し、プロセス障害の検出などの処理するのであるから、甲1発明の「FDC」は、本件訂正発明1の「信号処理装置」に相当する。 (4-3-2)甲1発明の「ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングするフィルタリング部」と、本件訂正発明1の「前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方を、製造ステップ毎に指定された切り替わり直後又は直前のフィルタリングの指定に従い、製造ステップ単位でカットしてフィルタリングするフィルタリング部」は、「信号データ」を「フィルタリングする」「フィルタリング部」という点で共通する。 (4-3-3)そうすると、本件訂正発明1と甲1発明とは、 「半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記信号データをフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有することを特徴とする信号処理装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 「前記信号データをフィルタリングするフィルタリング部」が、本件訂正発明1では、「各製造ステップにおける」「信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方を、製造ステップ毎に指定された切り替わり直後又は直前のフィルタリングの指定に従い、製造ステップ単位でカットしてフィルタリングする」のに対して、甲1発明では、「ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングする」点。 (4-4)当審の判断 (4-4-1)甲1の1の第11ページにおける「データ収集をトリガする開始イベント及び停止イベントを定義する(レシピ名、ステップ番号...)」という記載は、データ収集をトリガする開始/終了イベントを、製造ステップ番号を用いて定義できることを教示したものであると解される。 また、一般に、1つの製造ステップを実行する場合、ステップの開始直後と終了直前に処理条件が不安定になることは、当業者にとっては、技術常識とも云えるものであり、甲1の1の第26ページのグラフに示されるデータ曲線は、そのことを示したものであって、複数の製造ステップのうちの1つの製造ステップにおいて収集されたデータの曲線であると認められる。 (4-4-2)したがって、甲1発明の「時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした」「ある製造プロセス」は、本件訂正発明1の「各製造ステップ」に相当し、甲1発明の「安定化」及び「アクティブ・プロセスの終了」における「信号データ」は、各々本件訂正発明1の「製造ステップの切り替わり直後の前記信号データ」及び「次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データ」に相当する。 (4-4-3)そして、甲1の1の第26及び27ページの第2文には、「このフィルタは、時間的データのどの部分をシステムが処理フィルタに対してアクティブとするかを、ユーザが指定することを可能にする。」と記載されていることを勘案すると、同27ページのグラフには、同26ページにグラフに示されたデータ曲線に対して、破線で描かれた2つの四角形のそれぞれの網掛け部分、すなわち「安定化」及び「アクティブ・プロセスの終了」と記載された区分についてのデータがフィルタリングされる様子が記載されているものと認められる。 (4-4-4)そうすると、甲1発明の「安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングする」ことは、本件訂正発明1の「製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方を、」「製造ステップ単位でカットしてフィルタリングする」ことに相当する。 (4-4-5)そして、甲1発明の「安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングする」動作を実現するにあたっては、当然に、本件訂正発明1の「各製造ステップ」に相当する甲1発明の「ある製造プロセス」のうちのいずれをフィルタリングの対象とするかを指定する必要があるから、甲1発明においても、本件訂正発明1のように「製造ステップ毎に指定された切り替わり直後又は直前のフィルタリングの指定に従い」、「フィルタリングする」という構成を備えていることが明らかである。 したがって、相違点1は、実質的なものでない。 (4-4-6)なお、これに関連して被請求人は、口頭審理において、平成23年6月13日に提出された口頭審理陳述要領書の(2-1)(イ)に記載されたとおり、以下のように陳述している。 「甲第1号証の第26頁及び第27頁に示される曲線は、最初の部分がStabilization、中央の部分がActive Process、そして最後の部分がEnd of active processと記載されている。Stabilizationは、半導体製造装置の状態を安定した状態に持っていき、スムーズにActive processに移行するための、装置側の能動的な行為又はその行為の結果を示す用語である。このStabilizationという能動的な準備行為は、Active processという能動的な処理行為とはその目的・機能が異なるものであり、必然的にその処理内容(装置に対する命令、設定、パラメータのセット)も異なる。つまり、StabilizationとActive processとは、処理内容が異なる別個のステップである。 参考資料1乃至参考資料3は、半導体製造工程におけるStabilizationが1つのステップを示す用語であることを示す文献の例である。・・・参考資料1のFIG.2Bには、基板を処理する際に実行される複数のステップとしてSTABILIZATION 252、IGNITION 254、MAIN ETCH 256が示されている(コラム4の第4行?第43行参照)。また参考資料2のFIG.2Bには、デポジションプロセスが、STABILIZATION STEP 250、DEPOSITION STEP 260、TERMINATION STEP 270、PUMPING-OFF STEP 280の4つのステップからなることが示されている(コラム11の第63行?コラム12の第12行参照)。また参考資料3のFIG.2には熱処理方法がload、stabilization、film-formation、purge、unloadの各ステップからなることが示されている(段落0056、0057、0064、0065参照)。これら何れの参考資料においても、Stabilizationステップは、ガスを導入して所望の圧力(や温度)に安定させるステップであり、レシピを構成する複数のステップの1つに相当する。 従って、甲第1号証の第26頁及び第27頁に示される曲線において、Stabilization、Active Process、End of active processと記載される各部分が、それぞれ処理内容の異なる個別のステップに対応することは、当該技術分野の当業者にとっては明白なことである。それにもかかわらず請求人は、これらのStabilization、Active Process、End of active processを纏めた全体が、1つの製造ステップにおいて収集されたデータの曲線であると主張している。そのような主張は、処理内容の異なる複数のステップからなる参考資料1のFIG.2Bの曲線全体が1つのステップであると主張したり、処理内容の異なる複数のステップからなる参考資料3のFIG.2の曲線全体が1つのステップであると主張したりするのと同じことであり、妥当ではない。」 「半導体製造装置によるプロセス技術においては、エッチングや、デポジション、膜形成等の処理プロセスステップの前ステップにおいて、圧力や温度等を安定化させる安定化ステップ(stabilization step)が実行されるのが通常であり、処理プロセスステップの開始時には既に処理条件が許容可能な程度に安定状態になっている、というのが当該技術分野の常識(特に本件特許の出願時における常識)である。 この常識に基づけば、甲第1号証の第26頁及び第27頁に示される曲線は、複数の製造ステップから成ると考えるのが妥当であり、複数の製造ステップのうちの1つの製造ステップにおいて収集されたデータの曲線であると解釈すべきではない。」 (4-4-7)しかしながら、甲1の1の第28及び29ページの第2文には、「このフィルタは時間的ウィンドウ処理フィルタと同じであるが、ウィンドウの開始および終了基準は、プロセス情報(ステップ、またはDCプランの任意の変数)に基づく」と記載され、同29ページの図には、「ステップ1」(「安定化」)及び「ステップ3」(「アクティブ・プロセスの終了」)についてデータがフィルタリングされる様子が記載されている。また、甲1の1の第26及び27ページの第2文には、「このフィルタは、時間的データのどの部分をシステムが処理フィルタに対してアクティブとするかを、ユーザが指定することを可能にする。」と記載され、「アクティブ・プロセス」の開始時間前(「安定化」)及び「アクティブ・プロセス」の終了時間後(「アクティブ・プロセスの終了」)についてのデータがフィルタリングされる様子が記載されている。したがって、これらの記載を総合すると、甲1の1の第26ページに記載された「安定化」、「アクティブ・プロセス」、「アクティブ・プロセスの終了」の区分分けは、1つの半導体製造段階(ステップ)において、フィルタリングの開始・終了時間を指定した結果、「安定化」の区間、「アクティブ・プロセス」の区間、「アクティブ・プロセスの終了」の区間に分けらていることを示したものと解するのが自然であり、「安定化」、「アクティブ・プロセス」、「アクティブ・プロセスの終了」が、「ステップ1」ないし「ステップ3」という3つの別個のステップであるという意味ではないことは明らかである。 したがって、相違点1は実質的なものではなく、請求人の主張は採用できない。 また、仮に、同26及び27ページの「安定化」、「アクティブ・プロセス」、「アクティブ・プロセスの終了」が、別個のステップであったとしても、1つの製造ステップを実行する場合におけるステップの開始直後と終了直前に処理条件が不安定になる区間を、別個の「ステップ」と称するかどうかは、単なる呼称の相違にすぎないから、相違点1が実質的なものではないという結論に変わりはない。 よって、被請求人の主張は採用できない。 (4-5)小括 以上の通り、上記相違点1は、実質的なものでないから、本件訂正発明1は、甲1の1に記載された発明であり、甲1の1により公然知られた発明である。 したがって、本件訂正発明1は、特許法第29条第1項第3号及び同条同項第1号に該当し、特許を受けることができないものである。 (5)本件訂正発明2と甲1の1に記載された発明との対比・判断 (5-1)本件訂正発明2 本件訂正発明2は、本件訂正明細書の記載からみて、本件訂正明細書の特許請求の範囲請求項2に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項2】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をカットしてフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有し、 前記フィルタリング部は、前記信号データのうち所定サンプル数分の前記信号データを抽出するよう、前記信号データをカットしてフィルタリングすることを特徴とする信号処理装置。」 (5-2)甲1の1に記載された事項及び発明 (5-2-1)上記(4-2-1)に記載したように、甲1の1には、「半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理するFDC」が記載されている。 (5-2-2)上記(4-2-2)に記載したように、甲1の1には、「半導体製造装置における各製造ステップの信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部」が記載されている。 (5-2-3)上記(4-2-3)に記載したように、甲1の1には、「ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングするフィルタリング部」が記載されている。 (5-2-4)上記(4-2-4)に記載したように、甲1の1には、「フィルタリングした信号データを要約化する要約化部」が記載されている。 (5-2-5)甲1の1の第25ページ第1文には、「フィルタ」の1つとして、「時間的ウィンドウ処理」が記載されている。また、同25ページ第2文には、「時間的フィルタはユーザからのパラメータ(開始時間、停止時間、パーセント、・・・)を必要とする」との記載があり、ユーザによる所定時間の設定が記載されている。 そして、甲1の1の第11ページ下から3行目及び同18ページ第2項目にそれぞれ「サンプリング・レート」と記載されており、「サンプリング・レート」が、単位時間あたりに取得するサンプル数を表わすことは、当業者の技術常識である。また、甲1の1の第27ページには、破線で描かれた2つの四角形のそれぞれの網掛け部分、すなわち「安定化」及び「アクティブ・プロセスの終了」と記載された一定の区分(時間)についてデータがフィルタリングされる様子が記載されている。そうすると、フィルータリングされない区分については、「サンプリング・レート」に応じた所定サンプル数分のデータが取得すなわち抽出されていることは明らかである。 したがって、甲1の1には、「フィルタリング部は、信号データのうち所定サンプル数分の前記信号データを抽出するよう、前記信号データをカットしてフィルタリングする」ことが記載されているものと認められる。 (5-2-6)以上をまとめると、甲1の1には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 「半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理するFDCにおいて、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有し、 前記フィルタリング部は、前記信号データのうち所定サンプル数分の前記信号データを抽出するよう、前記信号データをカットしてフィルタリングする、 FDC。」 (5-3)対比 (5-3-1)「FDC」においては半導体製造装置の装置状態を示す信号を取得し、プロセス障害の検出などの処理するのであるから、甲2発明の「FDC」は、本件訂正発明2の「信号処理装置」に相当する。 (5-3-2)甲2発明の「ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングするフィルタリング部」と、本件訂正発明2の「前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をカットしてフィルタリングするフィルタリング部」は、「信号データ」を「フィルタリングする」「フィルタリング部」という点で共通する。 (5-3-3)そうすると、本件訂正発明2と甲2発明とは、 「半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記信号データをフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有し、 前記フィルタリング部は、前記信号データのうち所定サンプル数分の前記信号データを抽出するよう、前記信号データをカットしてフィルタリングすることを特徴とする信号処理装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点2) 「前記信号データをフィルタリングするフィルタリング部」が、本件訂正発明2では、「各製造ステップにおける」「信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をカットしてフィルタリングする」のに対して、甲2発明では、「ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングする」点。 (5-4)当審の判断 (5-4-1)甲1の1の第11ページにおける「データ収集をトリガする開始イベント及び停止イベントを定義する(レシピ名、ステップ番号...)」という記載は、データ収集をトリガする開始/終了イベントを、製造ステップ番号を用いて定義できることを教示したものであると解される。 また、一般に、1つの製造ステップを実行する場合、ステップの開始直後と終了直前に処理条件が不安定になることは、当業者にとっては、技術常識とも云えるものであり、甲1の1の第26ページのグラフに示されるデータ曲線は、そのことを示したものであって、複数の製造ステップのうちの1つの製造ステップにおいて収集されたデータの曲線であると認められる。 (5-4-2)したがって、甲2発明の「時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした」「ある製造プロセス」は、本件訂正発明2の「各製造ステップ」に相当し、甲2発明の「安定化」及び「アクティブ・プロセスの終了」における「信号データ」は、各々本件訂正発明2の「製造ステップの切り替わり直後の前記信号データ」及び「次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データ」に相当する。 (5-4-3)そして、甲1の1の第26及び27ページの第2文には、「このフィルタは、時間的データのどの部分をシステムが処理フィルタに対してアクティブとするかを、ユーザが指定することを可能にする。」と記載されていることを勘案すると、同27ページのグラフは、同26ページにグラフに示されたデータ曲線に対して、破線で描かれた2つの四角形のそれぞれの網掛け部分、すなわち「安定化」及び「アクティブ・プロセスの終了」と記載された区分についてのデータがフィルタリングされる様子が記載されているものと認められる。 (5-4-4)そうすると、甲2発明の「安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングする」ことは、本件訂正発明2の「製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方を、」「製造ステップ単位でカットしてフィルタリングする」ことに相当する。 したがって、相違点2は、実質的なものでない。 (5-4-5)なお、これに関連する被請求人の主張については、上記(4-4-6)及び(4-4-7)に記載したとおり、採用できない。 (5-5)小括 以上の通り、上記相違点2は、実質的なものでないから、本件訂正発明2は、甲1の1に記載された発明であり、甲1の1により公然知られた発明である。 したがって、本件訂正発明2は、特許法第29条第1項第3号及び同条同項第1号に該当し、特許を受けることができないものである。 (6)本件訂正発明3と甲1の1に記載された発明との対比・判断 (6-1)本件訂正発明3 本件訂正発明3は、本件訂正明細書の記載からみて、本件訂正明細書の特許請求の範囲請求項3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項3】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をカットしてフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした複数の前記センサの前記信号データに対し、多変量解析を行う多変量解析部と、 前記多変量解析した前記信号データを要約化する要約化部と、 を有することを特徴とする信号処理装置。」 (6-2)甲1の1に記載された事項及び発明 (6-2-1)上記(4-2-1)に記載したように、甲1の1には、「半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理するFDC」が記載されている。 (6-2-2)上記(4-2-2)に記載したように、甲1の1には、「半導体製造装置における各製造ステップの信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部」が記載されている。 (6-2-3)上記(4-2-3)に記載したように、甲1の1には、「ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングするフィルタリング部」が記載されている。 (6-2-4)甲1の1の第36ページ第3文には、「この章では以下の障害検出方法を提示する」との記載があり、当該結果検出方法の1つに「ホテリングT^(2)」が挙げられている。そして、甲1の1の、右上部に「多変量解析」の記載のある第42ページに、「ホテリングT^(2)」に関する説明がなされている。すなわち、「ホテリングT^(2)」は「多変量解析」の一つであり、当該「多変量解析」がFDCの1つに挙げられているのであるから、「多変量解析」は、フィルタリングした複数のセンサの信号データに対し、適用される。 したがって、甲1の1には、「フィルタリングした複数のセンサの信号データに対し、多変量解折を行う多変量解析部」が記載されている。 (6-2-5)上記(4-2-4)に記載したように、甲1の1には、「フィルタリングした信号データを要約化する要約化部」が記載されている。 (6-2-6)以上をまとめると、甲1の1には、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。 「半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理するFDCにおいて、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした複数の前記センサの前記信号データに対し、多変量解折を行う多変量解析部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有するFDC。」 (6-3)対比 (6-3-1)「FDC」においては半導体製造装置の装置状態を示す信号を取得し、プロセス障害の検出などの処理するのであるから、甲3発明の「FDC」は、本件訂正発明3の「信号処理装置」に相当する。 (6-3-2)甲3発明の「ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングするフィルタリング部」と、本件訂正発明3の「前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をカットしてフィルタリングするフィルタリング部」は、「信号データ」を「フィルタリングする」「フィルタリング部」という点で共通する。 (6-3-3)甲3発明の「前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部」と、本件訂正発明3の「前記多変量解析した前記信号データを要約化する要約化部」は、「前記信号データを要約化する要約化部」という点で共通する。 (6-3-4)そうすると、本件訂正発明3と甲3発明とは、 「半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記信号データをフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした複数の前記センサの前記信号データに対し、多変量解析を行う多変量解析部と、 前記信号データを要約化する要約化部と、 を有することを特徴とする信号処理装置。」である点で一致し、次の2点で相違する。 (相違点3) 「前記信号データをフィルタリングするフィルタリング部」が、本件訂正発明3では、「各製造ステップにおける」「信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をカットしてフィルタリングする」のに対して、甲3発明では、「ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングする」点。 (相違点4) 「前記信号データを要約化する要約化部」が、本件訂正発明3では、「多変量解析した」「信号データを要約化する」のに対して、甲3発明では、「フィルタリングした」「信号データを要約化する」点。 (6-4)当審の判断 (6-4-1)相違点3について 相違点3は、相違点2と同じであるから、上記(5-4)で検討したとおり、実質的なものでない。 (6-4-2)相違点4について 本件訂正発明3の「多変量解析した」「信号データを要約化する」点に関して、本件特許明細書には、段落0024に、「また、フィルタリングした各センサ30-1、30-2、…、30-mの信号データを、多変量解析部14に入力して多変量解析を行うようにしてもよい。多変量解析を行うことにより、半導体製造装置20の異常をより総合的に検出することができる。多変量解析処理した結果は、サマリー化部13に入力されて、製造ステップ単位で同様にサマリー化される。」と記載されているのみで、多変量解析したデータをどのようにして要約化するのかについての具体的な記載はなく、その効果についても記載されていない。さらにいえば、「多変量解析」自体が、複数の変数に関連した多数のデータから変数間の関係性を抽出するという、一種の要約的機能をも有することを勘案すると、適用されるプロセス並びに多変量解析及び要約化の内容が具体的に限定されていれば別として、多変量解析の後に要約化するということの技術的意義自体も不明である。 そして、「多変量解析」及び「要約化」は、共に周知の統計的手法であることを考えると、甲3発明において、本件訂正発明3のように、解析の対象となるデータについて、多変量解析を行ってから要約化を行うことは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことと認めるほかない。 なお、被請求人は答弁書において、本件訂正発明3は、「要約化前に各時刻において多変量解析を行うため、要約化で埋もれてしまうようなプロセスの瞬間的な異常を見逃すことなく、精度良くプロセスの状態を判断できるという格別な効果」を奏すると主張しているが、上で述べたように、適用されるプロセスも多変量解析及び要約化の具体的内容も限定されていない本件訂正発明3においては、多変量解析の後に要約化することの技術的意義自体が不明であるから、本件訂正発明3が、被請求人が主張するような効果を奏するとは認められず、また、仮に、本件訂正発明3が何らかの効果を奏するものであったとしても、当該効果は、「多変量解析」及び「要約化」が奏する効果から当業者が予測できる程度のものである。 よって、相違点4は、当業者が容易に想到し得た範囲に含まれるものにすぎない。 (6-5)小括 以上の通り、本件訂正発明3と甲3発明との相違点は、いずれも、実質的なものでないか、当業者が容易に想到し得た範囲に含まれる程度のものにすぎず、本件訂正発明3は、甲1の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (7)本件訂正発明4と甲1の1に記載された発明との対比・判断 (7-1)本件訂正発明4 本件訂正発明4は、本件訂正明細書の記載からみて、本件訂正明細書の特許請求の範囲請求項4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項4】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をカットしてフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有し、 要約化した前記信号データに、品種情報を含む製造工程に関する情報を含むデータ管理情報を付加し、半導体製造工程における各種システムに引き渡すことを特徴とする信号処理装置。」 (7-2)甲1の1に記載された事項及び発明 (7-2-1)上記(4-2-1)に記載したように、甲1の1には、「半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理するFDC」が記載されている。 (7-2-2)上記(4-2-2)に記載したように、甲1の1には、「半導体製造装置における各製造ステップの信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部」が記載されている。 (7-2-3)上記(4-2-3)に記載したように、甲1の1には、「ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングするフィルタリング部」が記載されている。 (7-2-4)上記(4-2-4)に記載したように、甲1の1には、「フィルタリングした信号データを要約化する要約化部」が記載されている。 (7-2-5)甲1の1の第12ページ上段中央左には、「ロジスティカル・データ(レシピID、ロットID、ウェーハID、・・・)」との記載がある。 また、同ページには、上記「ロジスティカル・データ(レシピID、ロットID、ウェーハID、・・・)」が、「統合され同期がとられた信頼できるデータ収集」へ渡される様子が表わされている。さらに、同23ページには、「データ収集後、当該時間的情報はインジケータにおいて統合されなければならない」と記載されるとともに、「当該前処理アルゴリズムはこれらインジケータを構築することを目的とする」と記載され、かつ、前処理のアルゴリズムとして「ステップ1:時間的フィルタ」及び「ステップ2:要約化フィルタ」が記載されている。そうすると、甲1の1には、「FDC」において、「ロジスティカル・データ(レシピID、ロットID、ウェーハID、・・・)」が要約化した信号データに付加されることが記載されている。 また、同12ページ右上には、「APC適用(アプリケーション)」との記載があり、「統合され同期がとられた信頼できるデータ収集」から当該「APC適用(アプリケーション)」へ向かう矢印が記載されている。ここにおいて、「APC適用(アプリケーション)」が、半導体製造工程における各種システムの1つに該当することは、当業者にとって明らかである。 したがって、甲1の1には、「要約化した信号データに、ロジスティカル・データ(レシピID、ロットID、ウェーハID、・・・)を付加し、APC適用(アプリケーション)に引き渡す」ことが記載されている。 (7-2-6)以上をまとめると、甲1の1には、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものと認められる。 「半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理するFDCにおいて、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、を有し、 前記要約化した前記信号データに、ロジスティカル・データ(レシピID、ロットID、ウェーハID、・・・)を付加し、APC適用(アプリケーション)に引き渡す、 FDC。」 (7-3)対比 (7-3-1)「FDC」においては半導体製造装置の装置状態を示す信号を取得し、プロセス障害の検出などの処理するのであるから、甲4発明の「FDC」は、本件訂正発明4の「信号処理装置」に相当する。 (7-3-2)甲4発明の「ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングするフィルタリング部」と、本件訂正発明4の「前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をカットしてフィルタリングするフィルタリング部」は、「信号データ」を「フィルタリングする」「フィルタリング部」という点で共通する。 (7-3-3)甲4発明の「APC適用(アプリケーション)」は、半導体製造工程における各種システムの1つに該当することは明らかである。 (7-3-4)甲4発明の「ロジスティカル・データ(レシピID、ロットID、ウェーハID、・・・)」が、製造工程に関する情報であることは明らかであるから、甲4発明の「ロジスティカル・データ(レシピID、ロットID、ウェーハID、・・・)」と、本件訂正発明4の「品種情報を含む製造工程に関する情報を含むデータ管理情報」は、「製造工程に関する情報を含むデータ管理情報」という点で共通する。 (7-3-5)そうすると、本件訂正発明4と甲4発明とは、 「半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記信号データをフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有し、 要約化した前記信号データに、製造工程に関する情報を含むデータ管理情報を付加し、半導体製造工程における各種システムに引き渡すことを特徴とする信号処理装置。」である点で一致し、次の2点で相違する。 (相違点5) 「前記信号データをフィルタリングするフィルタリング部」が、本件訂正発明4では、「各製造ステップにおける」「信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をカットしてフィルタリングする」のに対して、甲4発明では、「ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングする」点。 (相違点6) 「製造工程に関する情報を含むデータ管理情報」が、本件訂正発明4では、「品種情報を含む」のに対して、甲4発明では、「品種情報を含む」ことが特定されていない点。 (7-4)当審の判断 (7-4-1)相違点5について 相違点5は、相違点2と同じであるから、上記(5-4)で検討したとおり、実質的なものでない。 (7-4-2)相違点6について 製造プロセスにおいて使用される各種システムにどのような管理情報を引き渡すかということは、引き渡し対象となるシステムがどのような情報を必要としているかに応じて、決定されるべきものである。そして、一般に、半導体装置の製造においては、何を作るかということ、すなわち「品種情報」が、製造工程における最も重要かつ基本的な管理情報の1つであることは、論を待たないことである。 そうすると、甲4発明において、ロジスティカル・データ(レシピID、ロットID、ウェーハID、・・・)に加えて、品種情報を付加し、APC適用(アプリケーション)に引き渡すことにより、本件訂正発明4のように、「要約化した前記信号データに、品種情報を含む製造工程に関する情報を含むデータ管理情報を付加し、半導体製造工程における各種システムに引き渡す」構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 よって、相違点6は、当業者が容易に想到し得た範囲に含まれるものにすぎない。 (7-5)小括 以上の通り、本件訂正発明4と甲4発明との相違点は、いずれも、実質的なものでないか、当業者が容易に想到し得た範囲に含まれる程度のものにすぎず、本件訂正発明4は、甲1の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (8)本件訂正発明5と甲1の1に記載された発明との対比・判断 (8-1)本件訂正発明5 本件訂正発明5は、本件訂正明細書の記載からみて、本件訂正明細書の特許請求の範囲請求項5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項5】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理方法において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得し、 前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方を、製造ステップ毎に指定された切り替わり直後又は直前のフィルタリングの指定に従い、製造ステップ単位でカットしてフィルタリングし、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する、 ことを特徴とする信号処理方法。」 (8-2)甲1の1に記載された事項及び発明 上記(4-2-1)ないし(4-2-4)の記載から、甲1の1には、以下の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認められる。 「半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する方法において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得し、 ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリングし、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する、 方法。」 (8-3)対比 (8-3-1)甲5発明の「方法」は、各種信号を処理するものであることが明らかであるから、本件訂正発明5の「信号処理方法」に相当する。 (8-3-2)甲5発明の「ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリング」することと、本件訂正発明5の「前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方を、製造ステップ毎に指定された切り替わり直後又は直前のフィルタリングの指定に従い、製造ステップ単位でカットしてフィルタリング」することは、「信号データ」を「フィルタリング」するという点で共通する。 (8-3-3)そうすると、本件訂正発明5と甲5発明とは、 「半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理方法において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得し、 前記信号データをフィルタリングし、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する、 信号処理方法。」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点7) 「前記信号データをフィルタリング」することが、本件訂正発明5では、「各製造ステップにおける」「信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップヘの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方を、製造ステップ毎に指定された切り替わり直後又は直前のフィルタリングの指定に従い、製造ステップ単位でカットしてフィルタリング」するのに対して、甲5発明では、「ある製造プロセスを、時間的にみて、安定化、アクティブ・プロセス、アクティブ・プロセスの終了の3つの区分に区分けした場合に、該安定化及びアクティブ・プロセスの終了における信号データをフィルタリング」する点。 (8-4)当審の判断 本件訂正発明5は、「装置」の発明である本件訂正発明1を、そのまま「方法」の形式に書き換えたものであり、相違点7は、上記相違点1と実質的にみて同じである。 そうすると、相違点7は、上記(5-4)で検討したのと同様、実質的なものでない。 (8-5)小括 以上の通り、上記相違点7は、実質的なものでないから、本件訂正発明5は、甲1の1に記載された発明であり、甲1の1により公然知られた発明である。 したがって、本件訂正発明5は、特許法第29条第1項第3号及び同条同項第1号に該当し、特許を受けることができないものである。 (9)無効理由についてのまとめ 以上検討したとおり、本件訂正発明1、2及び5は、特許法第29条第1項第3号及び同条同項第1号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件訂正発明3及び4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、いずれも同法第123条第1項第2号の規程により無効とされるべきものである。 第5.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正により訂正された本件特許の請求項1ないし5に係る発明についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 信号処理装置及び信号処理方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップへの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方を、製造ステップ毎に指定された切り替わり直後又は直前のフィルタリングの指定に従い、製造ステップ単位でカットしてフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有することを特徴とする信号処理装置。 【請求項2】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップへの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をカットしてフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有し、 前記フィルタリング部は、前記信号データのうち所定サンプル数分の前記信号データを抽出するよう、前記信号データをカットしてフィルタリングすることを特徴とする信号処理装置。 【請求項3】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップへの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をカットしてフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした複数の前記センサの前記信号データに対し、多変量解析を行う多変量解析部と、 前記多変量解析した前記信号データを要約化する要約化部と、 を有することを特徴とする信号処理装置。 【請求項4】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップへの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をカットしてフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有し、 要約化した前記信号データに、品種情報を含む製造工程に関する情報を含むデータ管理情報を付加し、半導体製造工程における各種システムに引き渡すことを特徴とする信号処理装置。 【請求項5】 半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理方法において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得し、 前記各製造ステップにおける前記信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップへの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方を、製造ステップ毎に指定された切り替わり直後又は直前のフィルタリングの指定に従い、製造ステップ単位でカットしてフィルタリングし、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する、 ことを特徴とする信号処理方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、信号処理装置及び信号処理方法に関し、特に半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置及び信号処理方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 近年、半導体デバイスの製造プロセスにおいて、開発期間短縮、コスト削減などのため、製造を管理するMES(Manufacturing Execution System)、装置のオンライン自動化を行うCC(Cell Controller)システム、製造プロセス制御を行うAPC(Advanced Process Control)システム、歩留まりを管理するYMS(Yield Management System)、半導体製造装置の状態を管理するEES(Equipment Engineering System)など、コンピュータを使った様々なシステムが用いられてきている。 【0003】 FDC(Fault Detection and Classification)システムもこの1つである。 FDCシステムは、ウェーハ処理中に半導体製造装置の装置状態(圧力、温度、流量、電圧など)を検出する複数のセンサからリアルタイムの信号データを取得し、プロセス障害の検出などを行なう。 【0004】 しかし、このようなFDCシステムでは、リアルタイムに多数のセンサからのデータを取得するため、データ容量が非常に大きくなってしまう。そのため、FDCシステムで取得した信号データを前述したような他のシステムで利用する場合、ウェーハ単位またはプロセスレシピのステップなどの製造ステップごとに、信号データを最大値や最小値、平均値、標準偏差などのデータに要約化(以下サマリー化と呼ぶ)して渡す必要があった。 【0005】 しかし、この場合サマリー化する際のデータの信頼性に問題があった。 半導体製造装置による処理は、通常複数の製造ステップを用いて行われているが、製造ステップの切り替わり時にオーバーシュートが発生する場合がある。 【0006】 また、製造ステップの切り替わり時には、製造装置が処理状態を切り替えたり、上位のコンピュータにイベント情報を上げたりするため、製造装置のCPU(Central Processing Unit)の負荷が大きくなる。そのため、FDCシステムからのデータ要求に対し応答がない場合や、タイミング遅れが生じる場合があり、データの欠落やデータの取得間隔にずれが生じることがある。 【0007】 このように、製造ステップの切替時のデータは不安定なものとなる場合があり信頼性に欠けた。 従来、製造ステップの切り替わり直後のデータをフィルタリングするフィルタリング機能のあるものや、処理状態の切り替わり時に過渡変化があった場合には、そのときサンプリングされた信号を全て無効にして、過渡変化による解析データの乱れを防止するような技術があった(特許文献1参照)。 【0008】 【特許文献1】 特開平8-254447号公報(段落番号〔0030〕?〔0031〕) 【0009】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、上記の従来技術では、製造ステップ開始部分のみのフィルタリングしか行えない場合や、サンプル数や時間のいずれか一方でしかフィルタリングができない場合が多い。また、過渡状態にあると判断されたときにサンプリングされた全信号を単に無効にしてしまうものであった。つまり、装置状態を示す意味のあるデータを的確に選択して抽出することができなかった。このため、従来ではフィルタリング処理されたデータは、装置状態を必ずしも正確に表していないため、処理結果などとの相関が得られない場合が多いという問題があった。 【0010】 本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、装置状態を示す信号データを的確に抽出してサマリー化して半導体製造工程における各種システムで利用可能にする、信号処理装置及び信号処理方法を提供することを目的とする。 【0011】 【課題を解決するための手段】 本発明では上記課題を解決するために、半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、図1に示すように、半導体製造装置20における各製造ステップの信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部11と、各製造ステップにおける信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の製造ステップへの切り替わり直前の信号データの少なくとも一方を、製造ステップ毎に指定された切り替わり直後又は直前のフィルタリングの指定に従い、製造ステップ単位でカットしてフィルタリングするフィルタリング部12と、フィルタリングした信号データをサマリー化するサマリー化部13と、を有することを特徴とする信号処理装置10が提供される。 【0012】 上記の構成に拠れば、センサ情報取得部11により、半導体製造装置20における各製造ステップの信号データを、複数のセンサ30-1、30-2、…、30-mから取得する。フィルタリング部12は、取得した各製造ステップの信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の信号データと、次の製造ステップへの切り替わり直前の信号データの少なくとも一方をフィルタリングする。さらに、サマリー化部13は、フィルタリングした信号データをサマリー化する。 【0013】 【発明の実施の形態】 以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。 図1は、本発明の実施の形態の信号処理装置の原理を示す原理構成図である。 【0014】 信号処理装置10は、センサ情報取得部11と、フィルタリング部12と、サマリー化部13と、多変量解析部14と、から構成される。 センサ情報取得部11は、半導体製造装置20の装置状態(圧力、温度、流量、電圧など)を検出する複数のセンサ30-1、30-2、…、30-mから、各製造ステップの信号データを所定の時間間隔で取得する。 【0015】 フィルタリング部12は、取得した各製造ステップにおける信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の信号データと、次の製造ステップへの切り替わり直前の信号データの少なくとも一方をフィルタリングする。このとき、所定時間または所定のサンプル数で、フィルタリングする範囲を選択する。 【0016】 サマリー化部13は、フィルタリング部12でフィルタリングした信号データを、最大値、最小値、平均値、標準偏差などにサマリー化する。 多変量解析部14は、フィルタリングした複数のセンサ30-1、30-2、…、30-mの信号データに対し、多変量解析を行う。 【0017】 以下、信号処理装置10の動作を説明する。 センサ情報取得部11により、半導体製造装置20における各製造ステップにおける信号データを、複数のセンサ30-1、30-2、…、30-mから取得すると、フィルタリング部12は、取得した各製造ステップにおける信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の信号データと、次の製造ステップへの切り替わり直前の信号データの少なくとも一方をフィルタリングする。 【0018】 図2は、フィルタリングの第1の例である。 製造ステップの切り替わり(Step1からStep2への切り替わり)直後のサンプル数N個分と、次の製造ステップ(Step3)への切り替わり直前のサンプル数M個分をカットしたフィルタリングの例である。図のように、製造ステップ(Step2)のデータのうち、立ち上がりのN個と立ち下がりのM個を除いた部分が抽出される。なお、この場合、サンプリングタイムのズレにより抽出されるサンプル数は変動する。 【0019】 図3は、フィルタリングの第2の例である。 製造ステップの切り替わり(Step1からStep2への切り替わり)直後のサンプル数N個分をカットしたフィルタリングの例である。この場合、抽出するサンプル数を、M個分などと設定することでサマリーの算出に使用するサンプル数を一定にすることができる。 【0020】 図4は、フィルタリングの第3の例である。 製造ステップの切り替わり(Step1からStep2への切り替わり)直後のN秒間と、次の製造ステップ(Step3)への切り替わり直前のM秒間のデータをカットしたフィルタリングの例である。図のように、製造ステップ内のデータのうち、立ち上がりのN秒間分のデータと立ち下がりのM秒間分のデータを除いた部分が抽出される。このようなフィルタリングにより、カットするデータの範囲を固定することができる。なお、この場合サンプリングタイムのズレにより、抽出されるサンプル数が変動する。 【0021】 図5は、フィルタリングの第4の例である。 製造ステップの切り替わり(Step1からStep2への切り替わり)直後のN秒間のデータをカットしたフィルタリングの例である。この場合、抽出するデータ範囲を、M秒間分のデータなどと設定することで、サマリーの算出に使用するデータの範囲を固定することができる。 【0022】 なお、上記では図示を省略したが、次のステップへの切り替わり直前の部分のみをカットするフィルタリングを行うようにしてもよい。 このようなフィルタリングを、製造レシピやサンプリング状態の安定性に合わせて選択する。 【0023】 次に、フィルタリングした信号データを、サマリー化部13は、各センサ30-1、30-2、…、30-mについて、最大値、最小値、平均値、標準偏差などに製造ステップ単位でサマリー化する。 【0024】 また、フィルタリングした各センサ30-1、30-2、…、30-mの信号データを、多変量解析部14に入力して多変量解析を行うようにしてもよい。多変量解析を行うことにより、半導体製造装置20の異常をより総合的に検出することができる。多変量解析処理した結果は、サマリー化部13に入力されて、製造ステップ単位で同様にサマリー化される。 【0025】 このようにして、製造レシピや、サンプリング状態の安定性に合わせてフィルタリング方法を選択してフィルタリング処理を行い、サマリー化することで、信頼性が高く意味のあるデータをAPCシステム、YMS、EESなどの他のシステムに引き渡すことができる。これにより、プロセス変動の低減、歩留まりや装置稼働率の改善など、生産性を向上させることができる。 【0026】 次に、本発明の実施の形態を具体的に説明する。 以下、半導体装置の製造を管理する製造システムにおいて、本発明の実施の形態の信号処理装置を適用した場合について説明する。 【0027】 図6は、製造システムの概略の構成図である。 図のように製造システムは、LAN(Local Area Network)上に配置されるMES100、C/C(Cell Controller)システム110、APCシステム120、YMS130、EES140などの複数のシステムにより構成されている。 【0028】 MES100は、製造管理システムであり、生産ラインで流れている各製品の工程、設備、条件、作業データをコンピュータで全て管理し、分析し、品質向上、歩留まり向上、作業ミス低減などのより効率的な生産を支援するシステムである。 【0029】 C/Cシステム110は、装置オンライン自動化システムである。 APCシステム120は、SEMATECHガイドラインで提言された先進的プロセス制御を行うシステムである。ウェーハ処理中に半導体製造装置500が良好な状態からずれていないか監視し、前のウェーハまたはロットの処理結果に基づいて次のウェーハまたはロットの処理条件を決める機能を有している。 【0030】 YMS130は歩留まり管理システムである。 EES140は、半導体製造装置500の状態を監視し、メンテナンス時期の予測などを行う。 【0031】 他にも図示していないが、デバイス特性のシミュレーションを行うTCAD(Technology Computer Aided Design)システムや、温度、気圧、ガス流量、供給電圧などの装置状態を管理するファシリティシステムなどを、同一LAN上に配置してもよい。 【0032】 図1で示した本発明の実施の形態の信号処理装置10は、FDCコントローラ200として機能し、ルータ301、302を介して接続されるFDCサーバ210と、各種データを収集するデータ収集装置400と共にFDCシステムを構成している。 【0033】 データ収集装置400は、外部センサ部600からの信号データを入力する入力ポート401と、LANに接続するためのLANポート402、半導体製造装置500と、C/Cシステムとの間で、SECS(SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)Equipment Communications Standard)通信プロトコルなどにより通信を行うためのCOMポート403、404を有している。COMポート403より半導体製造装置500の内部センサからの信号データを入力する。 【0034】 このようなFDCシステムは、半導体製造装置500の内部センサと共に、外部センサ部600からの信号データをリアルタイムに収集して多変量解析を行い、半導体製造装置500が良好な状態からずれていないかを監視する。 【0035】 半導体製造装置500には、ドライエッチング装置、ステッパ、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置、拡散炉、CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置、洗浄装置などがあり、COMポート501によりC/Cシステム110でオンライン制御される。 【0036】 図7は、FDCコントローラのハードウェア構成例である。 FDCコントローラ200は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203、ハードディスク204、グラフィック処理部205、入力I/F(Interface)206及び通信I/F207などによって構成され、これらはバス208を介して相互に接続されている。 【0037】 ここで、CPU201は、ハードディスク204に格納されているプログラムに応じて各部を制御する。また、上述してきた各種の計算を行う。 ROM202は、CPU201が実行する基本的なプログラムやデータを格納している。 【0038】 RAM203は、CPU201が実行途中のプログラムや、演算途中のデータを一時的に格納する。 ハードディスク204は、CPU201が実行するOSや、フィルタリングやサマリー化、多変量解析を行うアプリケーションプログラムなどが格納される。 【0039】 グラフィック処理部205には、ディスプレイなどの表示装置205aが接続されており、CPU201からの描画命令に従って、表示装置205aの画面上に画像を表示させる。 【0040】 入力I/F206には、マウス206aやキーボード206bが接続されており、例えば、FDCコントローラ200のユーザにより入力された情報を受信し、バス208を介してCPU201に送信する。 【0041】 通信I/F207は、データ収集装置400を介して、各種センサ情報をリアルタイムで取得する。 上記のような、ハードウェア構成により本発明の実施の形態の処理が実現される。 【0042】 なお、図6で示した各システムは、サーバや、データベースサーバなどとして機能する複数のコンピュータから構成されている。 以下、図6のような製造システムにおいて、半導体製造装置500の内部センサと共に外部センサ部600からの信号データを取得して他のシステムに引き渡す際の、FDCシステムの動作を説明する。 【0043】 半導体製造装置500の装置状態は内部センサと外部センサ部600によって検出され、データ収集装置400を介して、所定の時間間隔(例えば1秒間隔)でFDCコントローラ200の通信I/F207に入力される。 【0044】 入力された各種センサの信号データは、FDCコントローラ200のCPU201の制御のもとハードディスク204より取り出され実行されるプログラムにより、以下のように信号処理される。 【0045】 まず、入力された各種センサの信号データに対し、製造ステップ単位で図2?図5で示したようなフィルタリング処理を行う。 フィルタリング処理の際、FDCコントローラ200のユーザに、表示装置205aの画面に表示させて所望のフィルタリング範囲を設定可能なようにしてもよい。 【0046】 図8は、フィルタリング設定画面の例である。 図のように、フィルタリング設定画面700では、ある製造プロセスにおける製造ステップをStep Setting欄701で設定する。またRaw Data Count欄702には複数のウェーハ(例えば数ロット分)についてのステップ内の全サンプル数の合計が表示される。さらに、所定時間でフィルタリングするか、所定サンプリング数でフィルタリングするかをSecチェックボックス703a、Samplingチェックボックス703bのいずれかを選択することで指定する。さらに、Start_t欄704でステップ切り替わり直後のサンプル数(または時間範囲)、Main_t欄705で抽出するサンプル数(または時間範囲)、End_t欄706で次ステップの切り替わり直前のサンプル数(または時間範囲)を指定する。図では切り替わり直後の12サンプル、次ステップの切り替わり直前の5サンプルでフィルタリングするような指定を行っている。切り替わり直後と、次ステップの切り替わり直前の両方を指定する場合は、Main_t欄705は“0”となる。 【0047】 図9は、フィルタリングされる前の信号データの例である。 図では、同一工程の同一製造ステップでの複数のウェーハ(例えば数ロット分)について、センサからの信号データを重ね合わせてグラフ表示されている。 【0048】 ユーザは、このデータを見て、図8で示したような設定画面で、カットしたい部分と、それにあったフィルタリング方法を設定する。 図10は、フィルタリング後の信号データの例である。 【0049】 ユーザは、この図のようなフィルタリング結果を見て確認を行う。必要に応じて、図8の設定画面に戻り、フィルタリングの設定値を変更してフィルタリングをやり直す。なお、信号データのフィルタリングに際し、信号の波形に応じて、所定時間または所定サンプル数分のいずれかを対象として行うことによってサンプリング精度を向上できる。 【0050】 次に、FDCコントローラ200は、フィルタリングしたデータの最大値、最小値、平均値、標準偏差などを算出する。そして、製造ステップ単位で、センサごとにサマリー化したデータを作成する。 【0051】 また、フィルタリングした各種センサの信号データに対して多変量解析を行い、その結果をサマリー化してもよい。なお、多変量解析には、k-最近傍法、マハラノビス距離、PCA(主成分分析法)、ニューラルネットワークなどの手法がある。 【0052】 多変量解析を行うことにより、多くのセンサ間の相関関係などを的確に診断することが可能になり、装置異常などを総合的に判断することができる。 次に、CPU201の制御のもと、APCシステム120など他のシステムに引き渡す。なお、全ての製造ステップについてのサマリー化したデータを引き渡すのではなく、プロセス状態の変化に関係した重要なステップについてのデータのみ引き渡すようにしてもよい。 【0053】 また、サマリー化したデータをFDCサーバ210のデータベースにキー情報とともに登録し、引き渡す際にもこのキー情報を付加する。 キー情報とは、品種、工程、装置、レシピ、ロット、ウェーハ、ステップ、ロット処理開始または終了時間など、データを管理、識別する上で必要な情報のことを意味している。 【0054】 MES100は半導体製造にかかわる様々なデータベースをもつため、これらキー情報を全て管理している。一方、FDCシステムのデータ収集装置400は、半導体製造装置500のみとデータのやりとりを行うため、半導体製造装置が管理している情報(装置、レシピ、ロット、ウェーハ、ステップ、ロット処理開始又は終了時間など)は収集することができるが、MES100でしか管理していない情報(品種、工程など)については直接収集することができない。FDCシステムのデータをAPCシステム120など他のシステムで利用するためには、FDCシステムはMES100のデータベースに直接リンクし、これら不足している情報を入手する必要がある。 【0055】 具体的なリンクの方法としては、FDCシステムが半導体製造装置から収集できるキー情報の項目を用いてMES100のデータベースを検索することにより、不足している情報を補うようにする。例えば、ロット処理開始時間を用いて、その時間にロット処理が開始されたロットの情報をMES100から検索する。MES100ではロット処理開始時間情報と共に、その他の各種キー情報も管理しているので、そこから品種、工程などのキー情報を抽出することができる。FDCシステムで収集したデータをFDCサーバ210のデータベースに登録する際にこれらのキー情報の項目を付加する。 【0056】 最後に、上記の信号処理をフローチャートでまとめる。 図11は、本発明の実施の形態の信号処理方法の処理の流れを説明するフローチャートである。 【0057】 S1:FDCコントローラ200は、データ収集装置400を介して各種センサからの信号データを取得する。 S2:取得した信号データに対し、各製造ステップにおける信号データのうち、製造ステップの切り替わり直後の信号データと、次の製造ステップへの切り替わり直前の信号データの少なくとも一方をフィルタリングする。 【0058】 S3:フィルタリングしたデータをサマリー化する。 S4:サマリー化したデータをAPCシステムなど他のシステムに引き渡す。 なお、この際、前述の各種キー情報を付加するようにする。 【0059】 このように、フィルタリングしてサマリー化した信頼性の高いデータを、APCシステム120に引き渡すことにより、Run-to-Runでのレシピ演算に利用でき、プロセス変動を低減することができる。また、YMS130と連携することにより、装置起因による歩留まり低下を早期に発見し、短期に原因を究明することができるため、歩留まりを向上することができる。さらに、EES140と連携することにより、PM(Preventive Maintenance)のスケジューリング、パーツ交換時期の予測に利用できるため、装置稼働率を向上することができる。このように、他のシステムと連携することにより半導体製造における生産性を向上させることができる。 【0060】 (付記1)半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理装置において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得するセンサ情報取得部と、 各前記製造ステップにおける前記信号データのうち、前記製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の前記製造ステップへの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をフィルタリングするフィルタリング部と、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する要約化部と、 を有することを特徴とする信号処理装置。 【0061】 (付記2)前記フィルタリング部は、所定時間または所定サンプル数分の前記信号データに対し、フィルタリングすることを特徴とする付記1記載の信号処理装置。 【0062】 (付記3)前記フィルタリングした複数の前記センサの前記信号データに対し、多変量解析を行う多変量解析部を有することを特徴とする付記1記載の信号処理装置。 【0063】 (付記4)前記要約化部は、前記多変量解析の結果を、前記製造ステップごとに要約化することを特徴とする付記3記載の信号処理装置。 (付記5)要約化した前記信号データに製造工程に関する情報を含むデータ管理情報を付加し、半導体製造工程における各種システムに引き渡すことを特徴とする付記1記載の信号処理装置。 【0064】 (付記6)半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを処理する信号処理方法において、 前記半導体製造装置における各製造ステップの前記信号データを所定の時間間隔で取得し、各前記製造ステップにおける前記信号データのうち、前記製造ステップの切り替わり直後の前記信号データと、次の前記製造ステップへの切り替わり直前の前記信号データの少なくとも一方をフィルタリングし、 前記フィルタリングした前記信号データを要約化する、 ことを特徴とする信号処理方法。 【0065】 【発明の効果】 以上説明したように本発明では、半導体製造装置の装置状態を検出する複数のセンサからの信号データを所定の時間間隔で取得して、製造ステップの切り替わり直後の信号データと、次の製造ステップへの切り替わり直前の信号データの少なくとも一方をフィルタリングしてサマリー化するので、装置状態を示す信号データを的確に抽出してサマリー化することができる。 【0066】 このようにして、サマリー化したデータに、製造工程に関する情報を含むデータを付加し、APCシステムなどの各種システムに引き渡すことにより、半導体製造における生産性を向上させることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施の形態の信号処理装置の原理を示す原理構成図である。 【図2】フィルタリングの第1の例である。 【図3】フィルタリングの第2の例である。 【図4】フィルタリングの第3の例である。 【図5】フィルタリングの第4の例である。 【図6】製造システムの概略の構成図である。 【図7】FDCコントローラのハードウェア構成例である。 【図8】フィルタリング設定画面の例である。 【図9】フィルタリングされる前の信号データの例である。 【図10】フィルタリング後の信号データの例である。 【図11】本発明の実施の形態の信号処理方法の処理の流れを説明するフローチャートである。 【符号の説明】 10 信号処理装置 11 センサ情報取得部 12 フィルタリング部 13 サマリー化部 14 多変量解析部 20 半導体製造装置 30-1、30-2、…、30-m センサ |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2011-07-22 |
出願番号 | 特願2003-154520(P2003-154520) |
審決分類 |
P
1
113・
111-
ZA
(H01L)
P 1 113・ 832- ZA (H01L) P 1 113・ 121- ZA (H01L) P 1 113・ 854- ZA (H01L) P 1 113・ 841- ZA (H01L) P 1 113・ 113- ZA (H01L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大嶋 洋一 |
特許庁審判長 |
北島 健次 |
特許庁審判官 |
酒井 英夫 小野田 誠 |
登録日 | 2009-09-04 |
登録番号 | 特許第4368143号(P4368143) |
発明の名称 | 信号処理装置及び信号処理方法 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 山口 昭則 |
代理人 | 植木 一彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 植木 一彦 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 吉田 千秋 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 山口 昭則 |
代理人 | 岩田 茂 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 森崎 博之 |
代理人 | 吉田 千秋 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 岩田 茂 |
代理人 | 遠山 友寛 |