• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1245098
審判番号 不服2008-15270  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-17 
確定日 2011-10-11 
事件の表示 特願2002-561050「生化学反応ネットワークの進化的設計方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 8日国際公開、WO02/61115、平成16年 7月15日国内公表、特表2004-520829〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2002年(平成14年)1月31日(パリ条約による優先権主張2001年1月31日,米国;2001年8月27日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成20年2月22日付で特許請求の範囲についての手続補正がなされたが,同年3月12日付で拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月17日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同年7月17日付で特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

第2 平成20年7月17日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年7月17日付の手続補正を却下する。

[理由]
1 平成20年7月17日付の手続補正

本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,補正前の,
「【請求項1】細胞中の生化学反応ネットワークの最適な機能を達成する方法であって:
(a)最適化方法を使用して生化学反応ネットワークを表す反応のリストの最適特性を計算する段階;
(b)生化学反応ネットワークの反応のリストを変更し,かつ最適特性を再計算する段階;
(c)所望の最適な機能に達するまで段階(b)を繰り返し行う段階;
(d)段階(c)の結果生じる生化学反応が含まれるように,細胞の遺伝子構成を構築する段階;
(e)段階(d)にて構築した細胞を特定環境下の培養状態に置いて,細胞集団を得る段階;ならびに
(f)段階(e)の細胞を,十分な期間,および段階(c)で定めた所望の最適な機能にその細胞を進化させる条件下で培養する段階を含み,
生化学反応ネットワークが包括的な生化学反応ネットワークを含む方法。」から,

「【請求項1】細胞中の生化学反応ネットワークの最適な機能を達成する方法であって:
(a)流束均衡解析を含む最適化方法を使用して大腸菌の生化学反応ネットワークを表す反応のリストの最適特性を計算する段階;
(b)生化学反応ネットワークの反応のリストを変更し,かつ最適特性を再計算する段階;
(c)所望の最適な機能に達するまで段階(b)を繰り返し行う段階;
(d)段階(c)の結果生じる生化学反応が含まれるように,細胞の遺伝子構成を構築する段階;
(e)段階(d)にて構築した細胞を特定環境下の培養状態に置いて,細胞集団を得る段階;ならびに
(f)段階(e)の細胞を,十分な期間,および段階(c)で定めた所望の最適な機能にその細胞を進化させる条件下で培養する段階を含み,
生化学反応ネットワークが包括的な生化学反応ネットワークを含む方法。」に補正された。

また,本件補正後の請求項2,3,5,11及び12は,以下のとおりのものである。
「【請求項2】生化学ネットワークが代謝ネットワークである,請求項1記載の方法。」
「【請求項3】生化学ネットワークが調節ネットワークである,請求項1記載の方法。」
「【請求項5】細胞が真核細胞である,請求項1記載の方法。」
「【請求項11】請求項1段階(f)で培養された細胞を含む,請求項1記載の方法により産生される濃縮細胞集団。」
「【請求項12】請求項1段落(f)で培養された細胞により産生され,かつ生化学反応ネットワークの産生物である,請求項1記載の方法により産生される濃縮生体分子。」

本件補正は,補正前の請求項1において発明特定事項であった「最適化方法」を,「流速均衡解析を含む最適化方法」に限定するとともに,「生化学反応ネットワーク」を,「大腸菌の生化学反応ネットワーク」に限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明と,その補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一のものである。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第4項第2号(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前のもの)の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明1」という。),並びに当該発明を引用することにより同様に減縮された,本件補正後の前記請求項11及び12に記載された発明(以下,「本願補正発明11及び12」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について,以下に検討する。

2 特許法第36条第6項第1号及び第36条第4項について
(1)本願明細書の記載
本願明細書には,以下の(ア)?(シ)の事項が記載されている。

(ア)「従来,進化過程の終点を予測することは,それらが偶発的事象から選択された結果であると予測されるため,不可能であった。本発明は定義された環境における代謝ネットワークの進化終点の演繹的計算を可能とする方法を開示する。」(段落【0007】)
(イ)「本発明は生細胞中の生化学反応ネットワークの最適な機能を達成する方法に関する。生化学反応ネットワークは包括的な生化学反応ネットワーク,実質的に全ての生化学反応ネットワーク,または全ての生化学反応ネットワークで有り得る。方法は細胞の生化学反応ネットワークの再構築を用いて,インシリコで実施できる。方法はさらに,実験室におけるインシリコ段階を用いてなされた決定を確認するおよび事に依っては拡張する培養段階,並びに最適な機能を備えた培養細胞,または細胞集団を産生する培養段階を含むことができる。」(段落【0008】)
(ウ)「方法はネットワーク中の生化学反応をリストにしてコンピュータに表示することにより,例えばネットワーク中の生化学反応データベースを提供する;最適化方法を使用してネットワークの最適特性を計算する;ネットワーク中の反応リストを変更し,かつ最適特性を再計算する;および所望の性能に達するまで前述の工程を繰り返し行うことにより,実施できる。方法にはさらに最適化手順の結果生じる生化学反応が含まれるように,細胞の遺伝子構成を構築する段階;その条件の下で構築した細胞を,特定環境下の培養状態に置く段階;および細胞を,十分な期間,定めた所望の性能に細胞を進化させる条件下で培養する段階を含んでもよい。」(段落【0009】)
(エ)「遺伝子構成が構築される細胞は原核細胞または真核細胞;例えば大腸菌,出芽酵母,チャイニーズハムスター卵母細胞などで有り得る。さらに,細胞の遺伝子構成は,細胞中の1つまたはそれ以上の遺伝子を改変することにより,例えば付加もしくは欠失により,またはその調節成分(例えば,プロモーター,転写因子結合部位など)を介して遺伝子調節を改変することにより構築できる。」(段落【0010】)
(オ)「一連の特定環境下の包括的な,実質的に全ての,または全ての生化学反応ネットワークの最適特性は,最適化方法として知られるコンピュータによる方法を用いて決定できる。最適化方法は当技術分野において周知である・・・。本発明の方法で使用される最適化方法では,例えば,限定することを意図するものではないが,下記にてさらに詳細に記載される,流束均衡解析(FBA),相空間解析(PhPP)を組合せて,および最適線(LO)の決定を利用することができる。」(段落【0026】)
(カ)「再構築された代謝ネットワークの代謝能は,流束均衡解析(FBA)・・・の確立された方法を用いて評価できる。FBAは,ネットワーク中の個々の反応の定常状態および能力制約(その反応を介した最大代謝流)にある代謝ネットワークの質量保存に基づいている。さらに,実験的に決定した菌株特異的なパラメータ,バイオマス組成(・・・「大腸菌物質代謝の化学量論的モデル」・・・)および維持エネルギー量(・・・)もまた必要とされる。これらの因子は次に,再構築された代謝ネットワークを介して流束分布を計算するために使用される。
より具体的には,これらの因子の定義により,全ての実施可能な解が存する方程式に対する閉じた解空間(closed solution space)に数学的に至る。従って,その課題に対して多数の可能な解(流束分布)がある。全許容解のセットの中で「最良」または最適解は次いで,最適化手順および規定の目的を用いて決定できる。使用される最適化手順は線形計画法であり,その目的は全てのバイオマス成分を同時に産生するための生化学反応ネットワークの最適使用である。これらの最適化手順が確立され,公表されている・・・。最適増殖を目的として計算された挙動の実験データとの比較は,大部分の場合において好適である・・・。換言すると,これらの解の制約および最適化手順により,細胞増殖を補助するおよび進化前の菌株に対し実際の生化学機能を望ましく推定するための,生化学反応ネットワークの最適使用の予測に繋がる。・・・
上記のように,全ての定常状態代謝流束分布は,規定の再構築された代謝ネットワークに対して定義される解空間(その解空間における各解はそのネットワークを介した特定の代謝流分布または特定の代謝表現型に相当する)に数学的に制約される・・・。単一の指定増殖条件の下,コーン(錐状)のその最適代謝流束分布は線形計画法(LP)またはかかる課題の最適解を計算する他の関連手法を用いて決定できる。その制約が変化すれば,コーンの形は変化し,最適流束ベクトルは質的に変化するかもしれない。表現型相空間(PhPP)解析は2つまたはそれ以上の制約環境変数における全ての変動可能性を考慮する。本方法をここに開示する。」(段落【0028】?【0032】)
(キ)「2栄養素の取込速度(炭素基質および酸素のような)は(x,y)空間上の2軸として定義でき,前述の手順を用い,その最適流束分布はこの空間中の全点に対して計算できる。生物学的に現実的な,再構築された代謝ネットワークに対してこの手順を実施する場合,かかる空間に存在する,有限数の質的に異なる最適代謝流束地図,または代謝表現型があることが判る。その相空間の境界は線形最適化の限界価値(shadow price)・・・を用いて定義できる。記載の方法により,代謝ネットワークの最適使用が質的に異なる(x,y)空間中の異なる領域,または「相」の定義に繋がる。各相はPnx,y,として指定でき,ここでPは特定の表現型または流束分布を表し,nはこの表現型に対する区画領域に任意に割り当てられた数であり,およびその2つの取込速度がその空間軸を形成する。
相空間は2-パラメータ空間の全体にわたって限界価値を計算することにより構築でき,一定の限界価値の領域を区別するために直線を描く。限界価値により,目的関数に対する各代謝産物の実態価値が定義される・・・。xおよびy軸に相当する取込速度の特定数値により表されるように,限界価値は既定の環境条件下での最適増殖に対する代謝産物の価値に依存して,マイナス,ゼロまたはプラスのどちらかとなる。限界価値がゼロとなる場合,取込速度値が変更されるように最適代謝地図の質的転換が起こる。この基準によりPhPPにおける直線が定義される。」(段落【0033】?【0034】)
(ク)「最適線(LO)はPhPPの軸に相当する2つの取込流束間の最適な相関を表す直線と定義される。好気性に関して,この直線は最大バイオマス産生を支えるための基質の完全酸化に対する最適な酸素取り込みと解釈できる。」(段落【0035】)
(ケ)「代謝再構築および表現型相空間解析手順を,次いで,望ましい代謝挙動,例えば最大取込速度が最適となると思われる条件を予測するために使用する。換言すれば,最適性能を決定するために代謝再構築およびPhPPを使用する。最大取込速度により,相空間における有限の長方形領域の定義に繋がる。この長方形内の最適増殖条件は次いで,規定の制約内での進化過程の予測結果になると思われる。」(段落【0036】)
(コ)「実施例3 規定条件の下での大腸菌の最適挙動
本実施例は,使用菌株が最初の基質として酢酸塩およびコハク酸塩を用い,適応性進化なしに最適な好気性増殖を示したことを明らかにする。
大腸菌K-12 M1655で起こる代謝反応リストが構築された・・・。このリストを基に,化学量論行列を定式化した。酸素(y軸上)および炭素基質(x軸上)に対する最大取込速度を用い,上述の手順を利用して表現型相空間を計算した。具体的には,2つの炭素源,酢酸塩およびコハク酸塩を用いた。次いで,最適増殖条件を決定するために計算した相空間を使用し,それから一連の増殖実験を実施した。計算(即ち,インシリコ)および実験結果を次に,比較した。
酢酸塩
酢酸塩に関する最適増殖性能をインシリコで調べ,それから作成したその予測を実験データと比較した。インシリコ研究は大腸菌物質代謝能を示す流束コーンの二次元投射の軸として定義した,酢酸塩および酸素取込速度に関する表現型相空間(PhPP)解析から開始した(図1)。・・・
測定および計算した増殖速度を酢酸塩-酸素PhPP上の三次元としてプロットした(図2)。・・・各点に対して予測したおよび観測した代謝流束(基質および酸素取込速度並びに増殖速度)を直接比較し,そしてそのインシリコ予測では全体の平均誤差が5.8%であった。・・・
コハク酸塩
コハク酸塩-酸素PhPP(図5)は酢酸塩-酸素PhPPよりもっと複雑であった。コハク酸塩-酸素PhPP(図5)には,質的に異なる最適代謝ネットワーク利用からなる4つの別領域があった。・・・
区分線形モデルに基づき,コハク酸取込速度は酸素取込速度および増殖速度を予測するために使用され,並びにその他2つの順列もまた考慮した。この解析から,インシリコ予測および実験データ間の全体の平均誤差は10.7%となった。
本実施例は,使用した菌株が,主な基質として酢酸塩およびコハク酸塩を用いて最適な好気性増殖を示したことを明らかにしている。この最適性能を達成するために適応性進化は必要とされなかった。」(段落【0082】?【0094】)
(サ)「実施例4 準最適性大腸菌菌株の最適性への進化
本実施例は,大腸菌が準最適増殖状態からインシリコ決定の最適状態まで幾つかの表現型適応を受けられることを実証する。
グルコース
グルコース-酸素PhPPには異なる6領域が含まれる(図8)。・・・三次元において,測定した増殖速度はLOに相当する縁近傍の解空間の表面上に位置しているが,そこに密集はしていない(図9)。本発明者らはこのように一定の増殖条件の下で代謝表現型が進化するかどうか決定するため,連続移入を用いて40日間に渡り(約750世代)その菌株を対数増殖(16)状態に維持した(図10および11)。LOと平行した実験点の移動によって示されるように,適合性は確かに増加したが,表現型に質的な変化はなかった。」(段落【0095】?【0098】)
(シ)「実施例5 準最適性大腸菌菌株の最適性への進化
本実施例は,大腸菌が準最適増殖状態からインシリコ決定の最適状態まで幾つかの表現型適応を受けられることを実証する。
グリセロール
グリセロール-酸素PhPPは,酢酸塩,コハク酸塩およびグルコースに対するPhPPで見られるのと似た特徴を伴う5つの領域からなる。・・・各種グリセロール濃度にわたる増殖性能を,すでに述べたように,実験的に決定した。しかし,リンゴ酸塩またはグルコースにおける増殖とはかなり異なって,増殖の実験データはLO(図12)および最適性表面(図13)からかけ離れた,相1の全体にわたり分散していた。調べた他の基質と異なり,グリセロールは従って,大腸菌K-12の準最適増殖のみを補助する。
すでに述べたように,本発明者らは従って,今度は唯一の炭素源としてグリセロールを用い,長期の適応性増殖実験を実施した。・・・
40日間の進化経路(E1)は相1中に描かれ,最終的にはLOに収束した(図14)。この間,増殖速度は0.23/時間から0.55/時間へと倍以上に増えた(図15)。結果として生じた進化菌株(凍結保存されていた)をさらに調べたところ,比増殖速度およびバイオマス産生が親菌株よりも高いことが明らかとなった。得られた全データはLO上または近傍に移動し,進化菌株が長期培養の最終日にそのデータを示した(図16および17)ことより,その進化菌株がインシリコ予測と一致する,グリセロールにおける最適増殖性能に到達していたことを示している。2回目の別個の適応性実験は似ているが,同一でない進化軌道(E2)を示し,同じ終点近くに収束した。大腸菌は従って,準最適増殖状態からインシリコ決定の最適状態への有効な表現型適応を受けられる。」(段落【0099】?【0103】)

(2)当審の判断
(a)「流束均衡解析(FBA)を含む最適化方法」について
本願補正発明が解決しようとする課題は,代謝ネットワークの進化終点を演繹的に計算し,細胞中の生化学反応ネットワークの最適な機能を達成する方法を提供することである(上記(ア)(イ))。このような課題が解決されたことは,実施例5において,グリセロールを唯一の炭素源として用いた場合に,当初はインシリコ(コンピューター)で予測した最適線(LO)と一致しないが,40日間培養すると,該最適線(LO)と一致するようになり,進化菌株における実測値とインシリコの予測値とが一致することによって示されている(上記(シ))。
ここで,代謝ネットワークの進化の終点を演繹的に計算するためには,最適化方法を使用して,生化学反応ネットワークの最適特性を繰り返し計算することが必要となるが(上記(ウ)),該最適化方法として本願明細書に詳細に記載されているのは,流束均衡解析(FBA)及び表現型相空間解析(PhPP)を組合せて用いることのみであって(上記(オ)),実施例においても,これら方法を組合せて用いた場合しか記載されていない(上記(コ)?(シ))。
一方,本願明細書には,コンピューターによる最適化方法は周知であり,流束均衡解析(FBA)及び表現型相空間解析(PhPP)を組合せるものに限定されない旨の記載は一応あるが(上記(オ)),これらの方法に代わり得る解析方法として具体的にどのようなものがあるか,また,それらを用いても同様に,進化の終点を演繹的に計算できることは何ら具体的に記載されていない。
また,流束均衡解析(FBA)は,生化学反応ネットワークの1つである代謝ネットワークについて(請求項2参照),その能力を質量保存に基づいて,化学量論的に計算するものであるが,実現可能な解(流速分布)は多数得られるものであって,これにより最適解が直ちに得られるものではない(上記(カ))。表現型相空間解析(PhPP)は,FBAにより得られた多数の解を,例えば2栄養素の取込速度(炭素基質及び酸素)に基づいて(X,Y)空間に表現するものであり,得られる相空間の境界は線形最適化の限界価値を示すものである(上記(キ))。そして,最適線(LO)は,最大バイオマス産生を支えるための基質の完全酸化に対する最適な酸素取り込みと定義され,PhPPにより表現された相空間の境界(限界価値)から導き出されるものである(上記(ク))。
そうすると,本願明細書の記載及び出願時の技術常識を参酌しても,流束均衡解析(FBA)によって得られた多数の解から,最適解(最適特性)を導出するためのプロセスは必要不可欠であり,FBAと表現型相空間解析(PhPP)の組合せ以外のいかなる方法で進化の終点と一致する最適線(LO)を導出できるかは不明である。
これに関して,請求人は,平成20年11月27日付手続補正書において,「表現型相空間解析が2以上の制約環境変数における全ての変動可能性を考慮する場合にのみ,適用できる方法であることを指摘させていただきます(明細書段落[0032]第7?8行をご参照ください)。加えて,表現型相空間は,流束均衡解析の代わりとして使用することができる最適化方法でもあります(例えば,明細書段落[0026]をご参照ください)。したがいまして請求人は,本願特許請求の範囲に記載の最適化方法が,流束均衡解析と表現型相空間,両方の解析方法を含むとすることは,本願発明の実施に必須ではなく,かつ本願発明に包含される態様を不必要に矮小化することに繋がるものと,思量いたします。」と主張している。
しかし,本願明細書の段落【0032】(上記(カ))をみても,表現型相空間解析(PhPP)が2以上の制約環境変数における全ての変動可能性を考慮する場合にのみ適用できる方法であるとは記載されておらず,仮にそのように解したとしても,単一増殖条件下における最適な機能の計算は非常に限定的であり,多数の増殖条件を分析するための手段が必要とされるのが普通であるから(段落【0031】),2以上の制約環境変数(増殖条件)を考慮する表現型相空間解析(PhPP)が最適な機能の計算に必要であることが,本願明細書の記載から理解されることである。
また,本願明細書の段落【0026】(上記(オ))をみても,表現型相空間解析(PhPP)が流束均衡解析(FBA)の代わりに使用できるものであるとは記載されておらず,両者を組み合わせて利用することが記載されているのみであり,本願出願時の技術常識を考慮しても,流束均衡解析(FBA)は再構築された代謝ネットワーク能を計算するために必須なものであり,表現型相空間解析(PhPP)のみで生化学反応ネットワークの最適特性を計算できるとはいえない。
したがって,請求人の上記主張は採用できない。

以上のとおりであるから,流束均衡解析(FBA)のみを含む最適化方法を使用して,生化学反応ネットワークの最適特性を計算することができるとはいえず,本願補正発明1について,発明の詳細な説明においてその発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されたものではないから,本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また同様に,表現型相空間解析(PhPP)を併用しなくも,生化学反応ネットワークの最適特性を計算することができるとはいえず,本願の発明の詳細な説明は,本願補正発明1について,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載しておらず,本願は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

(b)「大腸菌の生化学反応ネットワーク」について
本願補正発明1は,大腸菌の生化学反応ネットワークを表す反応リストの最適特性を計算して,原核細胞だけでなく,真核細胞中の生化学反応ネットワークの最適な機能を達成するというものである(請求項1を引用してさらに限定している請求項5参照)。
ここで,生化学反応ネットワークは代謝ネットワークを含むものであるが(請求項2参照),代謝とは生物の生命活動を支えるものであり,代謝の流れは複数の連続した酵素反応により成り立っている。しかも,原核細胞に比べて,真核細胞では遺伝子の数が多く,細胞内小器官も存在しているから,代謝の流れは複雑かつ高度であると予測され,真核細胞の包括的な生化学反応ネットワークは原核細胞のそれとは全く異なるものである。
さらに,代謝以外の例えば調節ネットワーク(請求項3参照)においても,原核細胞と真核細胞とでは,基本的な代謝に比べてより大きく異なることは明らかであり,生物種が異なり,かつ栄養要求性,エネルギー源,酸素要求性等が異なる原核細胞と真核細胞とで同じ生化学反応ネットワークが保有されているとは考えられない。(社団法人日本生化学会編,「細胞機能と代謝マップ I.細胞の代謝・物質の動態」,株式会社東京化学同人,1997年,1-3頁参照)。
してみると,大腸菌の生化学反応ネットワークの反応リストを用いて,真核細胞の生化学反応ネットワークの最適な機能を達成することができるとは考えられないから,いかなる細胞中の生化学反応ネットワークの最適な機能を達成する本願補正発明1の方法を当業者は実施することができず,本願の発明の詳細な説明には,本願補正発明1について,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず,本願は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
また同様に,大腸菌の生化学反応ネットワークを利用して,真核細胞における進化の終点を演繹的に計算したり,生化学反応ネットワークの最適な機能を達成することはできないから,本願補正発明1は,本願発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えており,発明の詳細な説明に記載されたものでもなく,本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
い。

(3)小括
以上のとおりであるから,本願は,本願補正発明1について,特許法第36条第6項第1号及び第36条第4項に規定する要件を満たしておらず,本願補正発明1は特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 特許法第29条第1項第3号について
(1)本願補正発明11及び12(製造方法で特定された物)について
本願補正発明11は,本願補正発明1の方法により産生された「濃縮細胞集団」という物の発明であり,また,本願補正発明12は,本願補正発明1の方法により産生され,かつ生化学反応ネットワークの産生物である「濃縮生体分子」という物の発明である。
このように製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合,請求項に記載された製造方法とは異なる方法によっても同一の生産物が製造でき,その生産物が公知であるときは,当該請求項に係る発明の新規性は否定される。例えば,「製造方法Pにより生産されるタンパク質」において,製造方法Qにより製造される公知のタンパク質Zが,製造方法Pにより製造されるタンパク質と同一である場合には,方法Pが新規であるか否かにかかわらず,新規性が否定される(「特許・実用新案審査基準」第II部第2章新規性進歩性1.5.2(3)参照)。

(2)引用刊行物の記載
本願優先日前に頒布された刊行物である,PNAS, 2000, Vol.97, No.10, pp.5528-5533(以下「引用例」という。)には,以下の事項が記載されている。

(A)「大腸菌MG1655のゲノムは,完全に配列決定された。注釈配列,生化学情報,その他の情報が大腸菌の代謝マップを再構築するために使用された。大腸菌の各代謝酵素に関する化学量論的係数がゲノムに特異的な化学量論マトリックスを構築するために集められた。大腸菌の化学量論マトリックスはシステムの特徴や大腸菌の代謝能を定義するために使用された。中央代謝経路におけるインシリコの成長を支える代謝ネットワーク能に関する遺伝子欠損の影響が評価され,インシリコの予測が実験観測と比較された。化学量論と容量制約に基づき,インシリコ分析は実験した86%のケースにおいて変異株の成長能力を定量的に予測することができた。その中で,ゲノム,生化学,菌株特異的情報に基づくインシリコでの代謝遺伝型の合成は可能であり,このシステム分析の方法は,代謝表現型を分析し解釈するために利用可能である。」(要約)

(B)「インシリコの冗長な結果は変異体のデータに一致するか?
インシリコでの遺伝子欠損の研究結果は公知の変異体から得られる成長データと比較された。異なる炭素源を用いた種々の大腸菌変異体の成長特徴が試験され,インシリコ欠損の結果と比較された(表2)。この分析から,86%(79のケースのうち68)のインシリコ予測が実験観測と一致した。」(5531頁左欄本文17?23行)

(C)「無機リン酸,アンモニア,二酸化炭素,硫黄,カリウム及びナトリウムの輸送流束は抑制されなかった(αi=-∞,βi=∞)。他の代謝物の輸送流束は,インシリコ培地が利用可能である場合,ゼロと最大レベルの間で抑制された(0<vi<vi max)。しかし,代謝物が培地中で利用可能でない場合,代謝物の輸送流束はゼロに抑制された。代謝ネットワーク(すなわち酢酸,エタノール,ラクトース,コハク酸,ギ酸,ピルビン酸)を放出する能力を持つ代謝物のための輸送流束は外側に向けて常に抑制されなかった。」(5530頁左欄本文下から5行?右欄本文6行)

(3)対比・判断
引用例には,インシリコでの遺伝子欠損の結果を公知の変異体から得られる成長データと比較し,86%の確率でインシリコ予測が実験観測と一致したことが記載されている(上記(A)(B))。このことはインシリコで評価した変異体と同じ性質を有する大腸菌の変異体が作製されたことを意味する。
また,引用例には,酢酸やエタノール等を放出する代謝ネットワークが記載されている(上記(C))。これは大腸菌を生育させるにあたって,酢酸やエタノール等の代謝副産物(生体分子に相当)が生じることを意味する。
ここで,本願補正発明1の「所望の最適な機能」とは,実験者が任意に設定できるものであり,所定の遺伝子欠失を有することも,当該機能を達成する「細胞の遺伝子構成」に当たるから(上記(エ)),引用例には,最適な機能を達成するように構築された遺伝子構成(遺伝子欠失)を有する大腸菌の変異株が記載されており,このような変異株は,本願補正発明1のごとき製造方法では得られていないが,そのような方法で得られるものと比較して,物としては区別ができないものである。
なお,「濃縮細胞集団」といっても「濃縮」の程度は明らかでないし,引用例でも培養は当然に行われており,そうして得られた培養物も特定の細胞が増殖した「濃縮細胞集団」に当たるという点で変わりがないものである。
また同様に,本願補正発明12の「濃縮生体分子」は,引用例に記載された大腸菌の変異体によって産生される代謝副産物等と,物として区別することができない。
したがって,本願補正発明11及び12は,引用例に記載された発明であり,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

平成20年7月17日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1,11及び12に係る発明(以下,「本願発明1,11及び12」という。)は,平成20年2月22日付で補正された特許請求の範囲の請求項1,11及び12に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「【請求項1】細胞中の生化学反応ネットワークの最適な機能を達成する方法であって:
(a)最適化方法を使用して生化学反応ネットワークを表す反応のリストの最適特性を計算する段階;
(b)生化学反応ネットワークの反応のリストを変更し,かつ最適特性を再計算する段階;
(c)所望の最適な機能に達するまで段階(b)を繰り返し行う段階;
(d)段階(c)の結果生じる生化学反応が含まれるように,細胞の遺伝子構成を構築する段階;
(e)段階(d)にて構築した細胞を特定環境下の培養状態に置いて,細胞集団を得る段階;ならびに
(f)段階(e)の細胞を,十分な期間,および段階(c)で定めた所望の最適な機能にその細胞を進化させる条件下で培養する段階を含み,
生化学反応ネットワークが包括的な生化学反応ネットワークを含む方法。」

「【請求項11】請求項1段階(f)で培養された細胞を含む,請求項1記載の方法により産生される濃縮細胞集団。」

「【請求項12】請求項1段落(f)で培養された細胞により産生され,かつ生化学反応ネットワークの産生物である,請求項1記載の方法により産生される濃縮生体分子。」

第4 原査定の理由

原査定の理由の1つは,本願が特許法第36条第6項第1号及び第36条第4項の規定,並びに第36条第6項第2号の規定を満たさず,特許を受けることができないというものであり,平成20年3月12日付の拒絶査定には以下のように記載されている。

1 本願が特許法第36条第6項第1号及び第36条第4項の規定を満たさない理由
「・請求項1?13・・・本願発明は,平成19年 3月 5日付け拒絶理由通知書に記載した先行技術文献5?7にあるように,比較的よく研究されている大腸菌における代謝ネットワークの再構成に関する,流速均衡解析による最適特性の計算方法及びその結果を表現型相空間へ表現する方法を含む,生化学ネットワークの最適な機能を達成する方法で得られたin silicoモデルが,実際の実験結果と合致するものであった点に本願発明の有利な効果があるものと認められる。そして,上記以外の方法で得られたin silicoモデルが実際の実験結果と合致するか否かについては実験してみなければ分からないことであり,上記以外の方法で実際の実験結果と合致するようなin silicoモデルを構築できるものとは一概には認められない。」し,「実際の実験結果と合致するようなin silicoモデルを構築できることについては明細書に具体的な記載がなく,裏付けも存在しない。」

「・請求項1?13・・・本願発明は,平成19年 3月 5日付け拒絶理由通知書に記載した先行技術文献5?7にあるように,比較的よく研究されている大腸菌における代謝ネットワークの再構成に関する,流速均衡解析による最適特性の計算方法及びその結果を表現型相空間へ表現する方法を含む,生化学ネットワークの最適な機能を達成する方法で得られたin silicoモデルが,実際の実験結果と合致するものであった点に本願発明の有利な効果があるものと認められる。そして,大腸菌以外のin silicoモデルが実際の実験結果と合致するか否かについては実験してみなければ分からないことであり,実際の実験結果と合致するようなin silicoモデルを大腸菌以外の細胞で構築できるものとは一概には認められない。」し,「大腸菌以外の細胞で構築できることについては明細書に具体的な記載がなく,裏付けも存在しない。」

2 本願が特許法第36条第6項第2号の規定を満たさない理由
「平成20年 2月22日付け意見書において本願出願人は,請求項11?12はその物の製造方法によって物自体を特定した,いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームであり,当該請求項に係る発明は十分に明確であると主張しており,該製造方法についても明確に記載されていると主張している。
しかしながら,生体分子の産生を含む最適な機能を有する細胞集団又はその生体分子の範囲が具体的な物として把握できない以上,依然として物としての発明の範囲が不明確であると言わざるを得ない。」

第5 特許法第36条第6項第1号及び第36条第4項に規定する要件についての判断

1 本願明細書の記載
上記「第2 2(1)」に記載したとおりである。

2 当審の判断
(a)「最適化方法」について
本願発明1は,上記「第2 2(2)」で検討した本願補正発明1の最適化方法から,「流束均衡解析(FBA)を含む」という発明特定事項を削除したものであり,本願補正発明1の態様を包含するものである。
そして,上記「第2 2(2)」で検討したとおり,最適化方法には,流束均衡解析(FBA)だけでなく,表現型相空間解析(PhPP)も必要不可欠であり,FBAのみを含む最適化方法を使用して,生化学反応ネットワークの最適特性を計算することはできないから,FBAを含むことすら特定されていない本願発明1についても同様に,本願は特許法第36条第6項第1号及び第36条第4項に規定する要件を満たしておらず,特許を受けることができない。

(b)「生化学反応ネットワーク」について
本願発明1は,上記「第2 2(2)」で検討した本願補正発明1の生化学反応ネットワークから,「大腸菌の」という発明特定事項を削除したものであり,本願補正発明1の態様を包含するものである。
そこで検討すると,上記「第2 2(2)」で検討したとおり,生化学反応の1つである代謝とは生物の生命活動を支えるものであり,代謝の流れは生物種毎に異なると考えられるものである。したがって,生物種が異なれば,生化学反応ネットワークも当然に異なるし,真核細胞では原核細胞よりも複雑かつ高度になっていると予測される。
一方,本願明細書には,大腸菌の生化学反応ネットワークを用いて,大腸菌の進化の終点をインシリコで予測し得たことが記載されているのみであり(実施例5),一応,出芽酵母やチャイニーズハムスター卵母細胞も用いられる旨の記載はあるが(上記(エ)),真核生物を含む大腸菌以外の生物種においても同様にインシリコモデルを用いて,進化の終点を予測できたことは何ら具体的に記載されていないし,それができるかどうかは不明である。特に真核細胞では原核細胞よりも代謝ネットワークが複雑かつ高度になっていると予測されるから,大腸菌と同じ手法を用いて,真核細胞の進化の終点を予測できるインシリコモデルが構築できるとは考えられず,またそうすることは当業者に過度の試行錯誤を求めるものである。
さらに,生化学反応として代謝以外の反応を採用する場合には,大腸菌においてさえも実体的に実施できることが記載されておらず,他の細胞についてはなおさら実施できるか不明である。
したがって,いかなる細胞のいかなる生化学反応ネットワークを包含する本願発明1については,発明の詳細な説明に記載された内容を一般化ないし拡張することはできず,本願発明1は,発明の詳細な説明に記載されたものではなく,本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また同様に,いかなる細胞でも,生化学反応ネットワークの最適な機能を達成することはできないから,発明の詳細な説明は,本願発明1について,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載しておらず,本願は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

第6 特許法第36条第6項第2号に規定する要件の判断

製造方法による物の特定は,原則,物性等により直接的に特定することが不可能,困難あるいは不適切であるときに認められるものであり,このような特定を用いた場合には,必ずしも発明の範囲が明確であるとはいえず,当業者が,出願時の技術常識を考慮して,請求項に記載された事項から具体的な物を想定できるとか,或いは想定できなくても,当該製造方法により製造される物と出願時の技術水準との関係が理解できるときに,発明の範囲が明確として取り扱われるものである(「特許・実用新案審査基準」第I部第1章明細書及び特許請求の範囲の記載要件2.2.2.1(7)参照)。
しかしながら,本願発明11に記載された事項をみても,具体的な物を想定することはできず,また,上記「第2 3」に記載したとおり,本願発明11に記載されている「濃縮細胞集団」は,引用例に記載された公知の大腸菌の変異株と物として区別できないものである。
そして,本願発明1の製造方法により製造される濃縮細胞集団と,引用例に記載される公知の類似する濃縮細胞集団とを比較して,具体的にどういった点で異なるのか等の出願時の技術水準との関係も理解できないから,「濃縮細胞集団」という物の範囲が明確に把握できるとはいえず,本願発明11は明確でない。
この点は,本願発明12についても同様である。
したがって,本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第7 むすび

以上のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明は,特許法第36条第6項第1号及び第36条第4項に規定する要件を満たしておらず,また,本願の請求項11及び12に係る発明は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから,これらの発明は特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明については検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-17 
結審通知日 2011-05-18 
審決日 2011-05-31 
出願番号 特願2002-561050(P2002-561050)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (C12N)
P 1 8・ 536- Z (C12N)
P 1 8・ 113- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三原 健治  
特許庁審判長 鈴木 恵理子
特許庁審判官 引地 進
鵜飼 健
発明の名称 生化学反応ネットワークの進化的設計方法  
代理人 小林 智彦  
代理人 井上 隆一  
代理人 渡邉 伸一  
代理人 新見 浩一  
代理人 清水 初志  
代理人 刑部 俊  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ