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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1245288
審判番号 不服2009-25557  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-24 
確定日 2011-10-20 
事件の表示 特願2005-362433「薄型USB電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月29日出願公開、特開2006-172478〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成17年11月18日(パリ条約による優先権主張 平成16年11月19日 台湾(TW))の出願であって、平成20年12月12日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成21年3月16日付けで手続補正がなされたが、同年9月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成23年4月13日付けで前置報告に基づく審尋がなされ、同年6月20日付けで回答書が提出されたものである。


第2 平成21年12月24日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年12月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.本件補正

平成21年12月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲については、本件補正前に、

「【請求項1】
USBポートに抜き取り自在に挿入可能なUSB電子装置であって、
回路基板と前記回路基板より延伸されたコネクタとを具えた基板と、
前記コネクタに接合され、末端が前記回路基板に電気的に接続された、複数の金属ストリップと、
前記基板上に固定された少なくとも一つの集積回路と、
複数の開口を具え、前記開口を通して金属ストリップが露出して前記USBポートの対応する接点に電気的に接続されるよう形成されたハウジングと、
を具備し、
前記ハウジングの上面に配置された孔を更に具え、該穴をボルトで止めることを特徴とする、USB電子装置。
【請求項2】
請求項1記載のUSB電子装置において、前記少なくとも一つの集積回路が前記基板の同一表面上に固定されたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項3】
請求項1記載のUSB電子装置において、前記少なくとも一つの集積回路がデータ保存用のメモリを具えたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項4】
請求項3記載のUSB電子装置において、前記少なくとも一つの集積回路が更に前記メモリのデータをUSB標準と互換性のあるUSB信号に変換するか、逆に入力されたUSB信号を変換して変換後の入力USB信号を前記メモリに保存するUSBコントローラーを具えたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項5】
請求項4記載のUSB電子装置において、前記USBコントローラーが前記ハウジングと電気ループを形成することを特徴とする、USB電子装置。
【請求項6】
請求項1記載のUSB電子装置において、前記基板が実質上、ハウジング内に被包されていることを特徴とする、USB電子装置。
【請求項7】
請求項1記載のUSB電子装置において、それぞれの前記開口の幅及び隣り合う前記開口の間距がUSB標準と一致することを特徴とする、USB電子装置。
【請求項8】
請求項1記載のUSB電子装置において、前記開口が前記ハウジングの上面に配置されると共に、前記ハウジングの前端に向けて前向きに延伸されたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項9】
請求項8記載のUSB電子装置において、前記ハウジングの前端の前記開口に沿った斜面を更に具えたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項10】
請求項1記載のUSB電子装置において、前記ハウジングの両側の上面或いは底面に形成された少なくとも一つの斜面を更に具えたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項11】
請求項1記載のUSB電子装置において、前記金属ストリップが表面実装技術(SMT)により前記基板上に固定されたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項12】
USBポートに抜き取り自在に挿入可能なUSB電子装置であって、
回路基板と前記回路基板より延伸されたコネクタとを具えた基板と、
前記コネクタに接合され、前記コネクタの上方にあって相互に平行に配置され、更に、前記回路基板に電気的に接続された複数の金属膜と、
前記基板上に固定された少なくとも一つの集積回路部品と、
上部ハウジングと下部ハウジングを具えて前記基板を被包し、前記上部ハウジングが複数の開口を具え、それぞれの前記開口が前記複数の金属膜の一つに対応し、前記複数の金属膜が前記複数の開口を通って露出して前記USB電子装置の接点を形成するハウジングと、
を具備したことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項13】
請求項12記載のUSB電子装置において、前記複数の金属膜が前記回路基板より一体に延伸されたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項14】
請求項12記載のUSB電子装置において、前記コネクタを支持するために上部及び下部ハウジングに形成されたバルジセクションを更に具えたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項15】
請求項12記載のUSB電子装置において、前記集積回路部品がメモリとUSBコントローラーを具えたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項16】
請求項12記載のUSB電子装置において、前記集積回路部品が前記回路基板の下に配置されたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項17】
請求項12記載のUSB電子装置において、前記ハウジングの正面近くの各前記開口が更に斜面を形成したことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項18】
請求項12記載のUSB電子装置において、前記上部ハウジングは前記上部ハウジングの側面の上方に誤挿入防止メカニズムとしてのL形構造を形成することを特徴とする、USB電子装置。」

とあったところを、本件補正後、

「【請求項1】
USBポートに抜き取り自在に挿入可能なUSB電子装置であって、
回路基板と前記回路基板より延伸されたコネクタとを具えた基板と、
前記コネクタに接合され、末端が前記回路基板に電気的に接続された、複数の金属ストリップと、
前記基板の一方の面に固定された少なくとも一つの集積回路と、
複数の開口を具え、前記金属ストリップより高い、ハウジングであって、前記開口を通して前記金属ストリップのみが当該ハウジングから露出して前記USBポートの対応する接点に電気的に接続されるよう形成されたハウジングと、
を具備し、
前記ハウジングの側面に非対称な形状の斜面が形成されており、
前記USBポートには、当該USB電子装置の前記複数の金属ストリップの部分が抜き取り自在に挿入され、かつ、前記ハウジングの側面に非対称な形状の斜面に対応する形状の挿入穴が規定されており、当該挿入穴内に、接点と、固定部材とが設けられており、
前記ハウジングの他方の面に配置された孔を更に具え、
前記金属ストリップの部分が、前記USBポートの前記挿入穴内に挿入され、前記開口を通して前記接点が前記金属ストリップと接触し、前記固定部材が前記ハウジングの他方の面に配置された前記孔に挿入されて、当該電子装置を固定する、
ことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項2】
請求項1記載のUSB電子装置において、前記少なくとも一つの集積回路が前記基板の同一表面上に固定されたことを特徴とする、
USB電子装置。
【請求項3】
請求項1記載のUSB電子装置において、前記少なくとも一つの集積回路がデータ保存用のメモリを具えたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項4】
請求項3記載のUSB電子装置において、前記少なくとも一つの集積回路が更に前記メモリのデータをUSB標準と互換性のあるUSB信号に変換するか、逆に入力されたUSB信号を変換して変換後の入力USB信号を前記メモリに保存するUSBコントローラーを具えたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項5】
請求項4記載のUSB電子装置において、前記USBコントローラーが前記ハウジングと電気ループを形成することを特徴とする、USB電子装置。
【請求項6】
請求項1記載のUSB電子装置において、前記基板が実質上、前記ハウジング内に被包されていることを特徴とする、USB電子装置。
【請求項7】
請求項1記載のUSB電子装置において、それぞれの前記開口の幅及び隣り合う前記開口の間距がUSB標準と一致することを特徴とする、USB電子装置。
【請求項8】
請求項1記載のUSB電子装置において、前記開口が前記ハウジングの上面に配置されると共に、前記ハウジングの前端に向けて前向きに延伸されたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項9】
請求項8記載のUSB電子装置において、前記ハウジングの前端の前記開口に沿った斜面を更に具えたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項10】
請求項1記載のUSB電子装置において、前記ハウジングの両側の上面或いは底面に形成された少なくとも一つの斜面を更に具えたことを特徴とする、USB電子装置。
【請求項11】
請求項1記載のUSB電子装置において、前記金属ストリップが表面実装技術(SMT)により前記基板上に固定されたことを特徴とする、USB電子装置。」

とするものである。

本件補正は、本件補正前の請求項12ないし請求項18を削除するとともに、本件補正前の請求項1に記載の「基板上に」を「基板の一方の面に」とし、
金属ストリップの露出に関して、本件補正前の請求項1に記載の「複数の開口を具え、前記開口を通して金属ストリップが露出して」を、「複数の開口を具え、前記金属ストリップより高い、ハウジングであって、前記開口を通して前記金属ストリップのみが当該ハウジングから露出して」と限定し、
さらに、USBポートに挿入されるUSB電子装置の固定に関して、本件補正前の請求項1に記載の「前記ハウジングの上面に配置された孔を更に具え、該穴をボルトで止める」を、
「前記ハウジングの側面に非対称な形状の斜面が形成されており、
前記USBポートには、当該USB電子装置の前記複数の金属ストリップの部分が抜き取り自在に挿入され、かつ、前記ハウジングの側面に非対称な形状の斜面に対応する形状の挿入穴が規定されており、当該挿入穴内に、接点と、固定部材とが設けられており、
前記ハウジングの他方の面に配置された孔を更に具え、
前記金属ストリップの部分が、前記USBポートの前記挿入穴内に挿入され、前記開口を通して前記接点が前記金属ストリップと接触し、前記固定部材が前記ハウジングの他方の面に配置された前記孔に挿入されて、当該電子装置を固定する」
と限定するものである。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除、並びに同項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定する要件を満たすか)否かについて検討する。


2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2004/0145875号明細書(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は当審で付した。

ア)
「[0014] The mini-type connector of a circuit substrate of the present invention will be described herein with reference to the exploded perspective view of FIG. 2 . The mini-type connector includes a substrate 2 , a metal frame 24 , and housings 251 , 252 . The substrate 2 includes a circuit board 22 , and a connector 21 extended from the circuit board 22 . The circuit board 22 and the connector 21 are integrally formed with the substrate 2 . In this embodiment, the substrate 2 is a printed circuit board (PCB).
[0015] The connector 21 of the substrate 2 is formed with a plurality of metal joints 23 . The shapes of the metal joints 23 are based on the electronic device 3 to be inserted thereinto , for example a long strip metal joint. The two terminals 231 , 232 of each metal joint 23 are hooks. The connector 21 of the substrate 2 has a plurality of connecting holes 211 , 212 . Thereby, the terminals 231 , 232 of each metal joint 23 can be inserted into the connecting holes 211 , 212 , so that the metal joint 23 can be installed thereon. Then, the metal joint 23 is welded to the substrate 2 . Thereby, the device of this embodiment can be connected to an external device by the plurality of metal joints 23 . The mini-type connector may be pulled out and inserted into the electronic device 3 many times without failure as the metal joints 23 provide a contact superior in life span compared to the prior art connectors.
[0016] The connector 21 of the substrate 2 is extended from the circuit board 22 , and the connector 21 must bear an external force and provide a shield of the metal joint 23 . Therefore, a U-shaped metal frame 24 covers the connector 21 . An upper half of the metal frame 24 has a notch. Thereby, after the metal frame 24 surrounding the connector 21 , the metal joints 23 can expose out. One side of the lower half of the metal frame 24 has two pins 241 , 242 extending therefrom. The two pins 241 , 242 can be inserted and welded to the two corresponding inserting holes 222 , 223 of the circuit board 22 for fixing the metal frame 24 and the stress of the connector 21 can be minimized. The inserting holes 222 , 223 are connected to the ground of the substrate 2 and thus it can provide an optimum ground effect.
[0017] Referring to FIG. 3, a schematic view of the mini-type connector of the present invention is shown. The circuit board 22 of the substrate 2 is installed with at least one electronic element 221 . The arrangement of the electronic element 221 may be on the upper surface, lower surface or both of the two surfaces based on the requirement of the substrate 2 . The at least one electronic element 221 includes a flash memory and other related IC chips. A part of the connector 21 , the circuit board 22 , the metal frame 24 and the metal joints 23 are enclosed by the housings 251 and 252 . The electronic element 221 can be for example a computer. 」

仮訳:
ア)
「[0014] 本発明の回路基板の小型コネクタは、図2の分解斜視図に示される。小型コネクタは基板2、金属フレーム24、ハウジング251、252を含んでいる。基板2は回路基板22、および回路基板22から延伸されたコネクタ21を含んでいる。回路基板22およびコネクタ21が、基板2が一体的に形成される。この実施態様では、基板2はプリント回路板(PCB)である。
[0015] 基板2のコネクタ21には複数の金属接合部23が形成される。この金属接合部23の形状は、その中へ挿入される電子機器3に基づき、例えば、ロングストリップ金属接合部である。各金属接合部23の2つのターミナル231および232は、フックである。基板2のコネクタ21には多くの接続穴211および212がある。そして、各金属接合部23のターミナル231および232は接続穴211、212に挿入され、その結果、金属接合部23はその上に取り付けることができる。そして、金属接合部23は基板2に溶接される。こうして、この実施態様の装置では、複数の金属接合部23によって外部装置に接続することができる。小型コネクタは電子機器3に何度も失敗することなく引き抜かれ、また挿入され、先行技術コネクタと比較して、金属接合部23は寿命に優れた接触を提供する。
[0016] 基板2のコネクタ21は回路基板22から延伸されている。また、コネクタ21は外力に耐え、金属接合部23の保護を提供する必要がある。このため、U字型の金属フレーム24がコネクタ21を覆う。金属フレーム24の上部の半分には切り込みがある。そのため、金属フレーム24がコネクタ21を囲んだ後も、金属接合部23は外部に露出する。金属フレーム24の下部の1つの側にはそこから伸びる2本のピン241および242がある。2本のピン241および242は金属フレーム24の固定のために回路基板22の2つの対応する挿入穴222および223に挿入され溶接され、また、コネクタ21の応力は最小化される。挿入穴222および223は、基板2の地面(ground)に接続されることにより、最適の地面効果(ground effect)を提供する。
[0017] 図3に、本発明の小型コネクタの概略図が示される。基板2の回路基板22には少なくとも一つの電子素子221が取り付けられる。電子素子221の配置は、基板の要件に基づいて、上面、下面、あるいは両面となりうる。少なくとも一つの電子素子221はフラッシュ・メモリーおよび他の関連するICチップを含んでいる。コネクタ21、回路基板22、金属フレーム24および金属接合部23の部品は、ハウジング251および252によって包み込まれる。電子素子221は例えばコンピューターになりえる。」

イ)
図2、図3には、ハウジング251がロングストリップ金属接合部23より高くなっており、ロングストリップ金属接合部23とコネクタ21がハウジング251から外部に露出している小型コネクタが図示されている。

前掲ア)及びイ)の記載事項及び図面からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「小型コネクタであって、基板、ハウジングを含み、
基板は回路基板、および回路基板から延伸されたコネクタを含み、
コネクタには複数の金属接合部が形成され、この金属接合部の形状は、その中へ挿入される電子機器に基づいたロングストリップ金属接合部であり、このロングストリップ金属接合部は基板に溶接されることにより電子機器に何度も失敗することなく引き抜かれ、また挿入されて接続することができるものであって、
ハウジングがロングストリップ金属接合部より高くなっており、ロングストリップ金属接合部とコネクタがハウジングから外部に露出しており、
回路基板には少なくとも一つの電子素子が取り付けられ、この少なくとも1つの電子素子はフラッシュ・メモリーおよび他の関連するICチップを含む小型コネクタ。」


同じく、原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平10-334206号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は当審で付した。

ウ)
「【0015】上記カード型メモリ1においては、その長辺方向の一端側に、カード型メモリ1の相対向する主面のうちの一方の主面1aに臨んで開口する複数の凹部3が形成されており、この凹部3の底面に露呈するように外部端子2が形成されている。」

エ)
「【0020】さらにまた、カード型メモリ1の外部端子2が形成される一端側の側端部には、挿入方向である長辺方向に対して斜めに切り欠かれた切欠部6が形成され、カード型メモリ1の誤挿入が防止されるようになされている。」


同じく、原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2003-167646号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は当審で付した。

オ)
「【0005】USBインタフェースは、多くのコンピュータ周辺インタフェースの中で、コンピュータとカードリーダの間のデータ伝送に、最も広く適用されているため、本発明の目的は、USBインタフェースカードリーダの機能を持つメモリカードを提供することである。すなわち、メモリカードは、USBインタフェースカードリーダを必要とすることなく、信号の変更およびコンピュータとの接続を実行するために、USBスロットソケットに挿入されることができる。」


3.対比

本願補正発明と引用発明1とを対比する。

(1)引用発明1の「小型コネクタ」は、基板に少なくとも1つの電子素子を含むものであるから「電子装置」といえるものであり、また、電子機器に何度も失敗することなく引き抜かれ、また挿入されて接続されるものであるから、前記電子機器には前記「小型コネクタ」が挿入される「ポート」が備えられ、前記「小型コネクタ」が「ポートに抜き取り自在に挿入可能」となっていることは明らかである。
よって、引用発明1の「小型コネクタ」は、本願補正発明の「ポートに抜き取り自在に挿入可能な電子装置」に相当する。

(2)引用発明1の「基板」、「回路基板」、「回路基板から延伸されたコネクタ」は、それぞれ本願補正発明の「基板」、「回路基板」、「回路基板から延伸されたコネクタ」に相当するから、引用発明1の「回路基板、および回路基板から延伸されたコネクタを含」む「基板」は、本願補正発明の「回路基板と前記回路基板より延伸されたコネクタとを具えた基板」に相当する。

(3)引用発明1の「複数の金属接合部」は、その形状からして「複数のロングストリップ金属接合部」といえるものであって、また、コネクタに形成され基板に溶接されることにより電子機器に接続されるものであるから、回路基板とも電気的に接続されていることは明らかである。
よって、引用発明1の「複数のロングストリップ金属接合部」は、本願補正発明の「コネクタに接合され、末端が前記回路基板に電気的に接続された、複数の金属ストリップ」に相当する。

(4)引用発明1の回路基板に取り付けられる「少なくとも一つの電子素子」は、フラッシュ・メモリーおよび他の関連するICチップを含むものであるから、本願補正発明の「集積回路」に相当するといえ、本願補正発明と引用発明1とは、「基板の一方の面に固定された少なくとも一つの集積回路」を具備している点で共通している。

(5)引用発明1の「ハウジング」は、ロングストリップ金属接合部より高くなっており、また、小型コネクタが電子機器に接続される際には、ハウジングから露出しているロングストリップ金属接合部が電子機器のポートの対応する接点に電気的に接続されることは明らかである。
よって、引用発明1の「ハウジング」は、本願補正発明の「金属ストリップより高い、ハウジングであって、前記金属ストリップが当該ハウジングから露出してポートの対応する接点に電気的に接続されるよう形成されたハウジング」に相当する。

(6)引用発明1では、小型コネクタが電子機器に挿入されて接続されるものであるから、前記電子機器には小型コネクタが挿入される「ポート」が備えられていることは明らかであるところ、前記「ポート」は、小型コネクタの複数のロングストリップ金属接合部が抜き取り自在に挿入される「挿入穴」を有し、この「挿入穴」内には、ロングストリップ金属部が接触して電気的に接合するための「接点」が設けられていることも自明である。
してみると、本願補正発明と引用発明1とは、「ポートには、電子装置の複数の金属ストリップの部分が抜き取り自在に挿入され、かつ、挿入穴が規定されており、当該挿入穴内に、接点が設けられており、前記金属ストリップの部分が、前記ポートの前記挿入穴内に挿入され、前記接点が前記金属ストリップと接触」するものである点で共通している。

以上のことからすると、本願補正発明と引用発明1とは、次の点で一致する。

<一致点>
「ポートに抜き取り自在に挿入可能な電子装置であって、
回路基板と前記回路基板より延伸されたコネクタとを具えた基板と、
前記コネクタに接合され、末端が前記回路基板に電気的に接続された、複数の金属ストリップと、
前記基板の一方の面に固定された少なくとも一つの集積回路と、
前記金属ストリップより高い、ハウジングであって、前記金属ストリップが当該ハウジングから露出して前記ポートの対応する接点に電気的に接続されるよう形成されたハウジングと、
を具備し、
前記ポートには、当該電子装置の前記複数の金属ストリップの部分が抜き取り自在に挿入され、かつ、挿入穴が規定されており、当該挿入穴内に、接点が設けられており、
前記金属ストリップの部分が、前記ポートの前記挿入穴内に挿入され、前記接点が前記金属ストリップと接触する、電子装置。」

そして、次の点で相違する。

<相違点1>
本願補正発明では、ハウジングが「複数の開口を具え」ており「前記開口を通して」金属ストリップ「のみ」がハウジングから露出するものであるのに対して、引用発明1では、ハウジングが複数の開口を備えておらず、また、金属接合部のみではなく回路基板から延伸するコネクタもハウジングから露出している点。

<相違点2>
本願補正発明では、「ハウジングの側面に非対称な形状の斜面が形成されており」、かつ、「前記ハウジングの側面に非対称な形状の斜面に対応する形状の挿入穴が規定されて」いるものであるのに対して、引用発明1では、ハウジングの側面に斜面が形成されておらず、挿入穴も斜面に対応する形状とはしていない点。

<相違点3>
本願補正発明では、ポートの挿入穴内に「固定部材」が設けられ、「ハウジングの他方の面に配置された孔を更に具え」ており、「固定部材が前記ハウジングの他方の面に配置された前記孔に挿入されて、当該電子装置を固定する」ものであるのに対し、引用発明1では、そのような「固定部材」、「孔」を有していない点。

<相違点4>
本願補正発明では、電子装置が「USB電子装置」であり「USBポート」に挿入されるものであるのに対して、引用発明1では、小型コネクタをUSBとは特定していない点。


4.当審の判断

上記相違点について検討する。

<相違点1について>
引用例2(前掲ウ)参照。)には、カード型メモリにおいて、主面(本願発明の「ハウジング」に実質相当する。)に臨んで開口する複数の凹部(同「複数の開口」に相当する。)が形成され、この凹部の底面に露呈するように外部端子(同「金属ストリップ」に相当する。)が形成されることにより、前記外部端子のみが主面に露出する構成が開示されている。引用例2に開示されている前記構成は、外部端子を保護し、外部端子の短絡を防ぐという本願発明の作用効果を有していることは明らかである。
引用発明1と引用例2に記載の発明とは、ともに端子を有するコネクタ装置という点で共通するものであり、コネクタ装置において、端子を保護したり端子の短絡を防ぐことは共通する一般的な技術課題であるから、引用発明1に、引用例2に開示された前記構成を採用し、ハウジングが「複数の開口を具え」ており「前記開口を通して」ロングストリップ金属接合部「のみ」がハウジングから露出するようにすることは、当業者であれば適宜為しうる事項である。

<相違点2について>
引用例2(前掲エ)参照。)には、カード型メモリにおいて、誤挿入を防ぐために、ハウジングの側面に斜めに切り欠かれた切欠部、すなわち非対称な形状の斜面を設けることが開示されている。
また、特開2002-190004号公報(【0013】、【0021】、図3等参照。)にも、ICカードにおいて、誤挿入を防ぐために、ハウジングの側面に非対称な形状の斜面を設け、かつ、ICカードが挿入されるポートの挿入穴を前記斜面に対応する形状とすることが開示されている。
してみると、誤挿入を防ぐために、ハウジングの側面に非対称な形状の斜面を設けることは周知技術であるといえ、また、挿入穴をかかる斜面に対応する形状とすることも、本願の優先権主張の日前に知られている技術にすぎない。
引用発明1に、ハウジングの側面に非対称な斜面を設けるとする前記周知技術、並びに、挿入穴を斜面に対応する形状とする前記技術を適用し、「ハウジングの側面に非対称な形状の斜面が形成されており」、かつ、「前記ハウジングの側面に非対称な形状の斜面に対応する形状の挿入穴が規定され」るとすることは、誤挿入を防ぐというコネクタ装置における自明な共通の課題に基づいて、当業者であれば適宜為しうる事項である。

<相違点3について>
原査定時に提示された特開2000-208208号公報(特に、【0021】-【0024】、図1-図3等参照。)、または、実用新案登録3091923号公報(発行日 平成15年2月21日。特に、【0016】、【0035】、図2、図3等参照。)に示されるように、ポートの挿入穴内に「固定部材」を設けるとともに、コネクタのハウジングの一面に「孔」を配置し、コネクタがポートに挿入された際に、前記「固定部材」が前記「孔」に挿入されてコネクタを固定するようにすることは周知技術である。
引用発明1に、このような周知技術を適用し、ポートの挿入穴内に「固定部材」を設け、「ハウジングの他方の面に配置された孔を更に具え」、「固定部材が前記ハウジングの他方の面に配置された前記孔に挿入されて、当該電子装置を固定する」ようにすることは、ポートに挿入されたコネクタを固定するというコネクタ装置における自明な共通の課題に基づいて、当業者であれば適宜為しうる事項である。

<相違点4について>
引用例3、並びに、前記実用新案登録3091923号公報に示されるように、USBはコンピュータにおける一般的なインターフェースとして広く用いられているものであり、外付けフラッシュ・メモリー装置のインターフェースとしても一般的に用いられているものであるから、外付けフラッシュ・メモリー装置である引用発明1の小型コネクタを、USBインターフェースを備えた「USB電子装置」とし、「USBポート」に挿入されるコネクタとすることは、当業者であれば任意に為しうるものである。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願補正発明の効果は、引用例1ないし引用例3に記載の発明及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例1ないし引用例3に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。


5.本件補正についてのむすび

以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1.本願発明

平成21年12月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし18に係る発明のうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年3月16日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
USBポートに抜き取り自在に挿入可能なUSB電子装置であって、
回路基板と前記回路基板より延伸されたコネクタとを具えた基板と、
前記コネクタに接合され、末端が前記回路基板に電気的に接続された、複数の金属ストリップと、
前記基板上に固定された少なくとも一つの集積回路と、
複数の開口を具え、前記開口を通して金属ストリップが露出して前記USBポートの対応する接点に電気的に接続されるよう形成されたハウジングと、
を具備し、
前記ハウジングの上面に配置された孔を更に具え、該穴をボルトで止めることを特徴とする、USB電子装置。」

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前掲「第2 [理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、実質的に、前掲「第2 [理由]1.」で検討した本願補正発明において、
「基板の一方の面に」を「基板上に」とし、
金属ストリップの露出に関して、「複数の開口を具え、前記金属ストリップより高い、ハウジングであって、前記開口を通して前記金属ストリップのみが当該ハウジングから露出して」との限定を削除して、「複数の開口を具え、前記開口を通して金属ストリップが露出して」とするものであって、
さらに、USBポートに挿入されるUSB電子装置の固定に関して、
「前記ハウジングの側面に非対称な形状の斜面が形成されており、
前記USBポートには、当該USB電子装置の前記複数の金属ストリップの部分が抜き取り自在に挿入され、かつ、前記ハウジングの側面に非対称な形状の斜面に対応する形状の挿入穴が規定されており、当該挿入穴内に、接点と、固定部材とが設けられており、
前記ハウジングの他方の面に配置された孔を更に具え、
前記金属ストリップの部分が、前記USBポートの前記挿入穴内に挿入され、前記開口を通して前記接点が前記金属ストリップと接触し、前記固定部材が前記ハウジングの他方の面に配置された前記孔に挿入されて、当該電子装置を固定する」
との限定を削除して、「前記ハウジングの上面に配置された孔を更に具え、該穴をボルトで止める」とするものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前掲「第2 [理由]3.4.」に記載したとおり、引用例1ないし引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1ないし引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1ないし引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-17 
結審通知日 2011-08-23 
審決日 2011-09-05 
出願番号 特願2005-362433(P2005-362433)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安島 智也  
特許庁審判長 小松 正
特許庁審判官 関谷 隆一
月野 洋一郎
発明の名称 薄型USB電子装置  
代理人 佐藤 隆久  

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