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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない A63F
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない A63F
管理番号 1245524
審判番号 訂正2011-390030  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2011-03-24 
確定日 2011-10-17 
事件の表示 特許第2896369号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2896369号の出願からの主立った経緯は次のとおりである。
平成10年 6月18日 特許出願(特願平10-188142号)
平成11年 3月 5日 特許の設定登録(請求項1乃至3)
平成11年11月25日 特許異議申立(申立人:粟井英一郎)
平成11年11月30日 特許異議申立(申立人:荒井俊之)
平成11年異議第74401号
平成12年 7月 7日 特許異議意見書,訂正請求書提出
平成12年 9月12日 特許異議の決定(特許維持)

平成21年 5月14日 無効審判請求(無効2009-800093号)
平成21年 8月27日 訂正請求書提出
平成21年12月15日 一次審決(訂正を認める。無効としない。)
平成22年 1月23日 審決取消訴訟の提起(平成22年(行ケ)10 024号)
平成22年10月28日 判決言渡(平成21年12月15日にした審決 を取り消す)
平成23年 1月17日 二次審決(訂正を認める。無効とする。)
平成23年 2月24日 審決取消訴訟の提起(平成23年(行ケ)10 066号)

平成23年 3月24日 本件訂正審判の請求(訂正2011-3900 30号)
平成23年 4月26日 通知書(関連無効審判請求人(日本電動式遊技 機特許株式会社)あて)
平成23年 5月25日 審判上申書(関連無効審判請求人提出)
平成23年 6月13日 訂正拒絶理由通知
平成23年 6月30日 意見書

2.訂正事項
本件は,平成23年3月24日付けで訂正審判請求書及びこれに添付した訂正明細書(以下,「本件訂正明細書」という。)が提出されたものであって,その内容は,平成12年9月12日付けの特許異議の決定で特許維持された本件特許の明細書(平成12年7月7日付けの訂正明細書,以下,「本件基準明細書」という。)を,本件訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって,次の訂正事項a?gを含むものである。
・訂正事項a
本件基準明細書の特許請求の範囲の請求項1における「表示制御基板とを有し,」の後に,「前記遊技制御基板には,制御手段が搭載され前記遊技制御基板からの信号が入力される,前記表示制御基板を含む複数の制御基板が接続され,」との記載を加入する。
・訂正事項b
本件基準明細書の特許請求の範囲の請求項1における「前記表示制御基板内に,遊技制御基板と表示制御基板との間の信号について前記遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とする信号伝達方向規制手段を実装し,」を,
「該複数の制御基板全ての各制御基板内に,前記遊技制御基板と各制御基板との間の全ての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記各制御基板への一方向に規制するために,前記遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とし,前記遊技制御基板への信号の出力を不能とする信号伝達方向規制手段を実装するとともに,該信号伝達方向規制手段と前記制御手段との間に,前記信号伝達方向規制手段から前記制御手段に向かって信号を伝達する入力ポートを設け,」と訂正する。
・訂正事項c
本件基準明細書の特許請求の範囲の請求項1における「前記遊技制御基板内に,遊技制御基板と表示制御基板との間の信号について前記表示制御基板への信号の出力のみを可能とする信号伝達方向規制手段を実装した」を,
「前記遊技制御基板内に,該遊技制御基板と前記各制御基板との間の全ての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記各制御基板への一方向に規制するために,前記各制御基板への信号の出力のみを可能とし,前記各制御基板からの信号の入力を不能とする信号伝達方向規制手段を実装するとともに,前記遊技制御手段と当該信号伝達方向規制手段との間に当該遊技制御手段から当該信号伝達方向規制手段に向かって信号を伝達する出力ポートを設けた」と訂正する。
・訂正事項d
本件基準明細書の段落【0008】の
「【課題を解決するための手段】
本発明による遊技機は,表示状態が変化可能な可変表示部を含み,変動開始の条件の成立に応じて可変表示部に表示される識別情報の変動を開始し,識別情報の表示結果があらかじめ定められた特定の表示態様となった場合に所定の遊技価値が付与可能となる遊技機であって,遊技進行を制御する遊技制御手段が搭載された遊技制御基板と,遊技制御基板からの信号にもとづいて可変表示部の表示制御を行う表示制御手段が搭載された表示制御基板とを有し,表示制御基板内に,遊技制御基板と表示制御基板との間の信号について遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とする信号伝達方向規制手段が実装され,遊技制御基板内に,遊技制御基板と表示制御基板との間の信号について表示制御基板への信号の出力のみを可能とする信号伝達方向規制手段が実装されていることを特徴とする。」を,
「【課題を解決するための手段】
本発明による遊技機は,表示状態が変化可能な可変表示部を含み,変動開始の条件の成立に応じて可変表示部に表示される識別情報の変動を開始し,識別情報の表示結果があらかじめ定められた特定の表示態様となった場合に所定の遊技価値が付与可能となる遊技機であって,遊技進行を制御する遊技制御手段が搭載された遊技制御基板と,遊技制御基板からの信号にもとづいて可変表示部の表示制御を行う表示制御手段が搭載された表示制御基板とを有し,遊技制御基板には,制御手段が搭載され遊技制御基板からの信号が入力される,表示制御基板を含む複数の制御基板が接続され,該複数の制御基板全ての各制御基板内に,遊技制御基板と各制御基板との間の全ての信号について,信号の伝達方向を遊技制御基板から各制御基板への一方向に規制するために,遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とし,遊技制御基板への信号の出力を不能とする信号伝達方向規制手段を実装するとともに,該信号伝達方向規制手段と制御手段との間に,信号伝達方向規制手段から制御手段に向かって信号を伝達する入力ポートを設け,遊技制御基板内に,該遊技制御基板と各制御基板との間の全ての信号について,信号の伝達方向を遊技制御基板から各制御基板への一方向に規制するために,各制御基板への信号の出力のみを可能とし,各制御基板からの信号の入力を不能とする信号伝達方向規制手段を実装するとともに,遊技制御手段と当該信号伝達方向規制手段との間に当該遊技制御手段から当該信号伝達方向規制手段に向かって信号を伝達する出力ポートを設けたことを特徴とする。」と訂正する。
・訂正事項e
本件基準明細書の段落【0091】の
「以上のように,本発明によれば,遊技盤の中央付近に設置される画像表示部9の制御を行う遊技制御基板,ならびに,遊技盤が組み付けられた枠側の各機構部の制御を行うランプ制御基板35,音声制御基板70,賞球基板37および発射制御基板91において,遊技制御を司るメイン基板31からの信号を受ける部分に,信号の一方向性を確実にする回路素子を設置したので,各基板からメイン基板31に信号が与えらる可能性がある信号ラインをなくすことができる。その結果,不正に大当りを発生させる行為を防止することができる。」を,
「以上のように,本発明によれば,遊技盤の中央付近に設置される画像表示部9の制御を行う表示制御基板,ならびに,遊技盤が組み付けられた枠側の各機構部の制御を行うランプ制御基板35,音声制御基板70,賞球基板37および発射制御基板91において,遊技制御を司るメイン基板31からの信号を受ける部分に,信号の一方向性を確実にする回路素子を設置したので,各基板からメイン基板31に信号が与えられる可能性がある信号ラインをなくすことができる。その結果,不正に大当りを発生させる行為を防止することができる。」と訂正する。
・訂正事項f
本件基準明細書の段落【0094】の
「【発明の効果】
以上のように,本発明によれば,遊技機を,遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とする信号伝達方向規制手段が表示制御基板に設けられている構成にしたので,表示制御基板改造による不正行為を効果的に防止して,遊技機に対する不正行為を受けにくくすることができる効果がある。」を,
「【発明の効果】
以上のように,本発明によれば,遊技機を,遊技制御基板と各制御基板との間の全ての信号について,信号の伝達方向を遊技制御基板から各制御基板への一方向に規制するために,遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とし,遊技制御基板への信号の出力を不能とする信号伝達方向規制手段が全ての各制御基板に設けられている構成にしたので,全ての各制御基板改造による不正行為を効果的に防止して,遊技機に対する不正行為を受けにくくすることができる効果がある。」と訂正する。
・訂正事項g
本件基準明細書の段落【0096】の
「遊技制御基板にも,表示制御基板への信号の出力のみを可能とする信号伝達方向規制手段が搭載されているので,表示制御基板側から遊技制御基板側に信号が入力されてしまうことがさらに確実に防止される。」を,
「遊技制御基板にも,該遊技制御基板と各制御基板との間の全ての信号について,信号の伝達方向を遊技制御基板から各制御基板への一方向に規制するために,各制御基板への信号の出力のみを可能とし,各制御基板からの信号の入力を不能とする信号伝達方向規制手段が搭載されているので,各制御基板側から遊技制御基板側に信号が入力されてしまうことがさらに確実に防止される。」と訂正する。

3.訂正目的,新規事項の有無の検討
(1)訂正事項aについて
訂正事項aは,本件基準明細書の特許請求の範囲の請求項1における「前記遊技制御基板」について「制御手段が搭載され前記遊技制御基板からの信号が入力される,前記表示制御基板を含む複数の制御基板が接続され,」という構成要件を付加して限定するもので,特許請求の範囲の減縮を目的としている。
そして,訂正事項aは,本件基準明細書の段落【0021】,【0030】,【0063】,【0071】,【0079】,【0085】及び図4,7,16,18,20,21,23,24,25,26,28の記載から自明な事項であるから,本件基準明細書に記載した事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲を拡張,変更するものでもない。

(2)訂正事項bについて
訂正事項bは,本件基準明細書の特許請求の範囲の請求項1における「前記表示制御基板内に,遊技制御基板と表示制御基板との間の信号について前記遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とする信号伝達方向規制手段を実装し,」という概念を「該複数の制御基板全ての各制御基板内に,前記遊技制御基板と各制御基板との間の全ての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記各制御基板への一方向に規制するために,前記遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とし,前記遊技制御基板への信号の出力を不能とする信号伝達方向規制手段を実装するとともに,該信号伝達方向規制手段と前記制御手段との間に,前記信号伝達方向規制手段から前記制御手段に向かって信号を伝達する入力ポートを設け,」と限定するもので,特許請求の範囲の減縮を目的としている。
そして,訂正事項bは,本件基準明細書の段落【0030】,【0063】,【0067】,【0071】,【0075】,【0076】,【0079】,【0082】,【0083】,【0085】,【0088】,【0089】,【0091】及び図7,16,18,20,21,23?26,28の記載から自明な事項であるから,本件基準明細書に記載した事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲を拡張,変更するものでもない。
(3)訂正事項cについて
訂正事項cは,本件基準明細書の特許請求の範囲の請求項1における「前記遊技制御基板内に,遊技制御基板と表示制御基板との間の信号について前記表示制御基板への信号の出力のみを可能とする信号伝達方向規制手段を実装した」という概念を「前記遊技制御基板内に,該遊技制御基板と前記各制御基板との間の全ての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記各制御基板への一方向に規制するために,前記各制御基板への信号の出力のみを可能とし,前記各制御基板からの信号の入力を不能とする信号伝達方向規制手段を実装するとともに,前記遊技制御手段と当該信号伝達方向規制手段との間に当該遊技制御手段から当該信号伝達方向規制手段に向かって信号を伝達する出力ポートを設けた」と限定するもので,特許請求の範囲の減縮を目的としている。
そして,訂正事項cは,本件基準明細書の段落【0060】,【0069】,【0077】,【0084】,【0090】及び図16,20,23,25,28の記載から自明な事項であるから,本件基準明細書に記載した事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲を拡張,変更するものでもない。

(4)訂正事項d,f,gについて
訂正事項d,f,gは,訂正後の特許請求の範囲と明細書の発明の詳細な説明の記載が整合するように,本件基準明細書の段落【0008】,【0094】,【0096】の記載を訂正するものであって,明りようでない記載の釈明を目的とするものである。

(5)訂正事項eについて
訂正事項eは,本件基準明細書の段落【0091】の明らかな誤記(「遊技制御基板」及び「与えらる」)を修正するものであり,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

以上のとおりであるから,上記訂正事項a?gは,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明りようでない記載の釈明を目的としており,かつ,本件基準明細書(誤記の訂正に関しては,願書に最初に添付した明細書)に記載した事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲を拡張,変更するものでもない。
したがって,本件訂正は,特許法126条1項のただし書に適合し,同126条3項及び4項の規定に適合する。

4.独立特許要件についての検討
上記のとおり,訂正事項a?cは,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,訂正後の請求項1に係る発明(以下,「訂正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法126条5項の規定に適合するか)について以下において検討する。
また,訂正後の請求項2は減縮された訂正後の請求項1を引用し,訂正後の請求項3は減縮された訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2を引用している。それ故,請求項2,3については,明示的な訂正事項は存在しないが,実質的には訂正前の請求項2及び3から減縮されているから,訂正後の請求項2,3に係る発明(以下,「訂正発明2」,「訂正発明3」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法126条5項の規定に適合するか)について以下において検討する。

(1)訂正後の発明の認定
訂正発明1は,訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載により特定されるものであり,次のとおりである。
「表示状態が変化可能な可変表示部を含み,変動開始の条件の成立に応じて前記可変表示部に表示される識別情報の変動を開始し,識別情報の表示結果があらかじめ定められた特定の表示態様となった場合に所定の遊技価値が付与可能となる遊技機であって,
遊技進行を制御する遊技制御手段が搭載された遊技制御基板と,
前記遊技制御基板からの信号にもとづいて前記可変表示部の表示制御を行う表示制御手段が搭載された表示制御基板とを有し,
前記遊技制御基板には,制御手段が搭載され前記遊技制御基板からの信号が入力される,前記表示制御基板を含む複数の制御基板が接続され,
該複数の制御基板全ての各制御基板内に,前記遊技制御基板と各制御基板との間の全ての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記各制御基板への一方向に規制するために,前記遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とし,前記遊技制御基板への信号の出力を不能とする信号伝達方向規制手段を実装するとともに,該信号伝達方向規制手段と前記制御手段との間に,前記信号伝達方向規制手段から前記制御手段に向かって信号を伝達する入力ポートを設け,
前記遊技制御基板内に,該遊技制御基板と前記各制御基板との間の全ての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記各制御基板への一方向に規制するために,前記各制御基板への信号の出力のみを可能とし,前記各制御基板からの信号の入力を不能とする信号伝達方向規制手段を実装するとともに,前記遊技制御手段と当該信号伝達方向規制手段との間に当該遊技制御手段から当該信号伝達方向規制手段に向かって信号を伝達する出力ポートを設けた
ことを特徴とする遊技機。」

訂正発明2は,訂正後の特許請求の範囲の請求項2の記載により特定されるものであり,次のとおりである。
「信号伝達方向規制手段は,汎用のバッファIC回路で構成されている請求項1記載の遊技機。」

訂正発明3は,訂正後の特許請求の範囲の請求項3の記載により特定されるものであり,次のとおりである。
「バッファIC回路のイネーブル端子は,常に入出力導通状態に設定されている請求項2記載の遊技機。」

(2)引用文献の記載事項
(2-1)特開平8-224339号公報(以下「引用文献1」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
(ア)「本発明は,パチンコ機において配備されたメイン制御部及びサブ制御部において,メイン制御部からサブ制御部に対して送信される制御コマンドデータの伝送を行うパチンコ機におけるデータ伝送装置に関するものである。」(段落【0001】)
(イ)「【従来の技術】パチンコ遊技機においては,例えば,図柄表示装置を設け,その表示画面において,複雑な表示動作を行わせたり,遊技態様に応じて数種類の表示画面を切り換え動作を行わせたりすることにより,遊技者の多様な趣向を満たすようにしている。このようなパチンコ遊技機にあっては,パチンコ機のパチンコ遊技全体に関わる制御を行うためのメイン制御部のみでは,パチンコ機に配備された各駆動制御要素を全て制御することがメイン制御部の処理タイミングやメモリの記憶容量に制限があって困難であるため,駆動制御要素毎に専用のサブ制御部が配備されており,メイン制御部から制御信号並びに出力データからなる制御用のコマンドデータをサブ制御部に転送し,前記制御用のコマンドデータに応じてサブ制御部により駆動制御要素を制御駆動するようにしている。」(段落【0002】)
(ウ)「メイン制御部から転送される制御用のコマンドデータは,例えば,サブ制御部が図柄表示装置である場合には,パチンコ機における遊技状況を示すステータスデータ及び図柄表示装置に複数設定されている各図柄表示部に表示する図柄の種類並びに表示位置を示す各データ等である。」(段落【0003】)
(エ)「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,メイン制御部側のデータ転送処理における処理タイムにおいて,待ち時間の設定を必要とせず,データ転送を円滑に行うことができ,図柄表示装置の表示動作が特定の遊技状態の発生に遅れることなく起動され,かつデータ転送においてノイズの侵入を排除することが可能なパチンコ機におけるデータ伝送装置を提供することにある。」(段落【0008】)
(オ)「一方向データ転送手段により,サブ制御部からメイン制御部へのデータ信号入力が禁止されるため,図柄表示装置を介するサブ制御部からメイン制御部への不正信号の入力が防止され,入賞が成立していないにもかかわらず,入賞状態となるといったことが防止される。(段落【0011】」
(カ)「図1は,実施例におけるパチンコ機におけるデータ伝送装置の要部を示すブロック図である。パチンコ機のパチンコ遊技全体に関わる制御を行うためのメイン制御部1は,制御処理実行手段としてのメインCPU2と,メインCPU2が実行するためのパチンコ遊技全体に関わる制御プログラムが格納されているROM3と,随時読み出しおよび書き込みが可能なRAM4と,メインCPU2が周辺機器との間でデータ通信を行うための通信インタフェース5とにより構成されている。なお,メインCPU2には,メインCPU2のための電源(図示せず)やメインCPU2の処理サイクルを規定するクロック回路(図示せず)が接続されている。」(段落【0012】)
(キ)「図1に示すサブ制御部6は,パチンコ機が備えた図2に示す図柄表示装置7側に配備され,メイン制御部1からの制御信号並びにコマンドデータに応じて図柄表示装置7の各表示駆動手段を表示駆動制御する処理実行手段としてのサブCPU8と,サブCPU8が実行するための各表示駆動手段の表示駆動に関する制御プログラム並びにメイン制御部1とのデータ通信に関する制御プログラムが格納されているROM9と,随時読み出しおよび書き込みが可能なRAM10と,制御信号を出力するための出力ポート11と,各表示駆動手段の一部を構成する特別図柄表示部17を表示駆動するためのコモン1出力回路12乃至コモン4出力回路15並びにLED信号出力回路16とを備えている。なお,サブCPU8には,サブCPU8のための電源(図示せず)やサブCPU8の処理サイクルを規定するクロック回路(図示せず)が接続されている。」(段落【0013】)
(ク)「図1において,サブ制御部6のサブCPU8は,メイン制御部1の通信インタフェース5及び一方向データ転送手段40を介してメインCPU2と通信接続され,メインCPU2からサブCPU8へのみ制御信号並びにコマンドデータが転送され,サブCPU8からメインCPU2へのデータ信号の入力が禁止されるよう構成されている。なお,一方向データ転送手段40は,例えば,トランジスタアレイにより構成されている。また,データ伝送ラインは,8本の信号線で構成され,8ビットデータがパラレルに伝送される。」(段落【0014】)
(ケ)「特別図柄表示部17は,縦14行×横32列に配列されたドットマトリクスLEDにより構成され,さらに特別図柄表示部17は,左,中,右特別図柄表示部17a,17b,17cの3つに区分されている。サブ制御部6におけるサブCPU8の出力ポート11には,各コモン1出力回路12乃至コモン4出力回路15並びにLED信号出力回路16が接続されると共に,特別図柄表示部17が各コモン1出力回路12乃至コモン4出力回路15並びにLED信号出力回路16に接続され,サブCPU8からの制御出力により各コモン1出力回路12乃至コモン4出力回路15の出力並びにLED信号出力回路16の出力を切り換えることにより,左,中,右特別図柄表示部17a,17b,17cに図柄を表示駆動するよう構成されている。」(段落【0015】)
(コ)「図2は,実施例のパチンコ機に配備された遊技盤18を一部省略して示す正面図である。遊技盤面の略中央には,特別図柄表示部17を備えた図柄表示装置7が配設され,図柄表示装置7の下方には,特別図柄表示部17における図柄の変動を開始させるための始動口19を有する普通電動役物20が配設され,普通電動役物20の左右にはゲート21,22がそれぞれ配設され,遊技盤18面の下部には,ソレノイド(図示を省略)により開閉動作される大入賞口23を備えた入賞装置ユニット24が配設されている。」(段落【0016】)
(サ)「次に,図2に示す遊技盤18面におけるパチンコ遊技の概略を説明する。遊技球が始動口19に入賞すると,図柄表示装置7の特別図柄表示部17の図柄変動が開始される。なお,始動口19への遊技球の入賞があると,図3のメイン制御部1は大当たり判定用乱数の値を記憶する。特別図柄表示部17の変動中における始動口19への遊技球の入賞は最高4回迄記憶され,その記憶数が特別図柄記憶数表示LED26によって個数点灯されて表示される。」(段落【0021】)
(シ)「メイン制御部1は,各特別図柄表示部17a,17c,17bの図柄の停止表示を行う際に,大当たり判定用乱数の値が大当たりに関するものであるか否か,リーチのみに関するものであるか否か,外れであるか否かをそれぞれ判別することにより,停止表示する各特別図柄データを区分して記憶しておいた大当たり特別図柄データ,リーチ図柄データ並びに外れ特別図柄データのうちより選択する。なお,特別図柄表示部17において選択された図柄が表示される。」(段落【0024】)
(ス)「特別図柄表示部17において大当たりが発生すると,遊技者に特に有利となる特別遊技状態が付与され,図2の入賞表示ユニット24の可動扉30がソレノイドにより所定時間の間開成動作され,大入賞口23が開放される。大入賞口23に遊技球すると,大入賞口23への入賞球数が大入賞口入賞数表示LED32によって数字表示される。大入賞口23への遊技球の入賞は,所定の開放時間の間において一定個数,例えば10個迄であり,10個目の入賞を以て可動扉30が閉成動作され,大入賞口23が閉成される。」(段落【0025】)
(セ)「さらに,サブ制御部からメイン制御部へのデータ信号入力が禁止されるため,何等かの手段により,図柄表示装置を介してサブ制御部からメイン制御部へ不正信号の出力がなされたとしても,サブ制御部からのメイン制御部への不正信号の入力を防止することができ,したがって,入賞が成立していないにもかかわらず,入賞状態となるといったことが防止することができる。」(段落【0128】)

これらの記載及び図面からみて,引用文献1には,
「パチンコ機のパチンコ遊技全体に関わる制御を行うためのメイン制御部1は,制御処理実行手段としてのメインCPU2を含み,
パチンコ機が備えた図柄表示装置7側に配備されるサブ制御部6は,メイン制御部1からの制御信号並びにコマンドデータに応じて図柄表示装置7の各表示駆動手段を表示駆動制御する処理実行手段としてのサブCPU8を備え,
遊技盤面の略中央には,左,中,右特別図柄表示部17a,17b,17cの3つに区分される特別図柄表示部17を備えた図柄表示装置7が配設され,図柄表示装置7の下方には,特別図柄表示部17における図柄の変動を開始させるための始動口19を有する普通電動役物20が配設され,遊技球が始動口19に入賞すると,図柄表示装置7の特別図柄表示部17の図柄変動が開始され,
メイン制御部1は,始動口19への遊技球の入賞があると,大当たり判定用乱数の値を記憶し,各特別図柄表示部17a,17c,17bの図柄の停止表示を行う際に,大当たり判定用乱数の値が大当たりに関するものであるか否か,リーチのみに関するものであるか否か,外れであるか否かをそれぞれ判別することにより,停止表示する各特別図柄データを区分して記憶しておいた大当たり特別図柄データ,リーチ図柄データ並びに外れ特別図柄データのうちより選択し,
特別図柄表示部17において選択された図柄が表示され,大当たりが発生すると,遊技者に特に有利となる特別遊技状態が付与されるパチンコ機であって,
サブ制御部6のサブCPU8は,メイン制御部1の通信インタフェース5及び一方向データ転送手段40を介してメインCPU2と通信接続され,メインCPU2からサブCPU8へのみ制御信号並びにコマンドデータが転送され,サブCPU8からメインCPU2へのデータ信号の入力が禁止されるよう構成されているパチンコ機。」の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。

(2-2)特開平9-173564号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
(ソ)「本発明は,たとえば,パチンコ遊技機やコイン遊技機等で代表される弾球遊技機に関し,詳しくは,打玉を遊技領域に打込んで遊技が行なわれる弾球遊技機に関する。」(段落【0001】)
(タ)「また,この種の従来の弾球遊技機においては,弾球遊技機の遊技状態を制御する遊技制御手段と,玉を払出す玉払出装置を制御する払出動作制御手段とを有しており,前記入賞玉検出手段の検出出力が前記払出動作制御手段に入力され,払出動作制御手段から前記遊技制御手段に対し入賞玉が検出されたことを表わす入賞玉検出信号が送信され,その信号を受けた遊技制御手段は,その入賞玉に対して払出すべき景品玉の個数を特定する払出個数情報を前記払出動作制御手段に返信するように構成されていた。そしてその払出動作制御手段は,払出個数情報に従った個数だけの景品玉の払出を前記玉払出装置に行なわせる制御を行なう。」(段落【0003】)
(チ)「【発明が解決しようとする課題】一方,この種の従来の弾球遊技機においては,前記遊技制御手段が弾球遊技機の遊技状態を制御するものであるために,たとえば賭博性の高い遊技動作が行なわれるように改造するべく前記遊技制御手段が不正改造される不都合があった。特に,前記遊技制御手段は,前記払出動作制御手段から入賞玉検出信号が入力されるため,その信号の入力ポートから不正なデータを入力して遊技制御手段を通常の正常な動作とは異なった動作をするように不正改造するおそれがあった。」(段落【0004】)
(ツ)「また,入賞玉が短期間のうちに大量に発生した場合には,前記入賞玉処理手段による入賞玉の処理動作速度を速めて迅速に入賞玉の処理を行ないたいというニーズもあった。」(段落【0005】)
(テ)「本発明は,係る実情に鑑み考え出されたものであり,その目的は,前述した遊技制御手段の不正改造を極力防止するとともに,入賞玉の処理動作速度を速めることのできる弾球遊技機を提供することである。」(段落【0006】)
(ト)「請求項1に記載の本発明は,打玉を遊技領域に打込んで遊技が行なわれる弾球遊技機であって,弾球遊技機の遊技状態を制御する遊技制御手段と,前記遊技領域に設けられ,打玉が入賞可能な入賞領域と,該入賞領域に入賞した入賞玉に基づいて景品玉の払出動作を行なうために該入賞玉を処理する入賞玉処理装置と,玉を払出す玉払出装置と,該玉払出装置と前記入賞玉処理装置とを制御する払出動作制御手段とを含み,前記入賞玉処理装置は,前記入賞玉を保持する入賞玉保持手段と,該入賞玉保持手段により保持されている入賞玉を検出してその検出出力を前記遊技制御手段に出力する入賞玉検出手段と,前記入賞玉保持手段により保持されている入賞玉を排出する入賞玉排出手段とを含み,前記遊技制御手段は,前記入賞玉検出手段からの検出出力が入力されることを条件として,該入賞玉に対応して払出すべき景品玉の個数を特定する払出個数情報を前記払出動作制御手段に出力し,前記払出動作制御手段は,前記払出個数情報が入力されたことを条件として,その入力された払出個数情報に従った個数の景品玉を前記玉払出装置から払出す制御を行なうとともに,該払出制御に伴う景品玉の払出の終了を待たずに前記入賞玉排出手段による入賞玉の排出動作を開始する制御を行ない,前記遊技制御手段と前記払出動作制御手段との間での情報通信は,前記遊技制御手段から,前記払出動作制御手段への一方向通信としたことを特徴とする。」(段落【0007】)
(ナ)「カードユニット制御基板210aには,RAM,ROM,CPU,I/Oポート等を含むカードユニット制御用マイクロコンピュータ210と,スイッチからの検出信号をカードユニット制御用マイクロコンピュータ210に入力するためのスイッチ回路211と,カードユニット制御用マイクロコンピュータ210からの表示制御信号を各種表示器に出力するための表示回路212と,カードユニット制御用マイクロコンピュータ210と払出制御回路基板152の払出制御用マイクロコンピュータ220との間で信号のやり取りを行なうためのフォトカプラで構成される信号回路214と,電源回路215とが設けられている。このように両マイクロコンピュータ210,220間での信号のやり取りをフォトカプラを介して一旦光信号に変換して行なっているために,両マイクロコンピュータ210,220間が電気的に遮断された状態となり,一方の故障等に起因した異常高電圧等が他方のマイクロコンピュータにまで伝送されないために,一方の故障が他方にまで悪影響を及ぼすことを防止できる。さらに,このカードユニット制御基板210aには,前記スイッチ回路211に接続された端数表示スイッチ52と玉貸額設定スイッチ213とが設けられ,さらに,前記表示回路212に接続された,ユニット使用可表示器51とカード挿入表示器54と連結方向表示器53とが設けられている。また,図2の57は,インターフェイス基板138のコネクタ138aと接続されるコネクタである。」 (段落【0055】)
(ニ)「払出制御回路基板152には,フォトカプラで構成される信号回路216が設けられており,カードユニット制御用マイクロコンピュータ210と払出制御用マイクロコンピュータ220との間で,前記信号回路214,216を介して,ユニット接続信号(VL),ユニット動作信号(B RDY),玉貸要求信号(BRQ),玉貸完了信号(EXS),P機動作信号(P RDY)の各信号が送受信される。すなわち,カードユニット制御用マイクロコンピュータ210と払出制御用マイクロコンピュータ220とが接続されている場合には,カードユニット制御用マイクロコンピュータ210から払出制御用マイクロコンピュータ220に対しユニット接続信号(VL)が伝送される。このユニット接続信号(VL)の入力があることを条件として,パチンコ遊技機が打球発射可能な状態となるとともに,入賞玉に基づいた景品玉の払出制御が可能な状態となる。」(段落【0057】)
(ヌ)「遊技制御基板199には,ワンチップ化された遊技制御用マイクロコンピュータ202が設けられている。この遊技制御用マイクロコンピュータ202には,CPU203,RAM205,I/Oポート206,セキュリティ回路204等が設けられている。そして,ワンチップ化された遊技制御用マイクロコンピュータ202の外部にROM207と,アドレスデコード回路208とが設けられている。アドレスデコード回路208は,遊技制御用マイクロコンピュータ202からのアドレスデータをデコードし,遊技制御用マイクロコンピュータ202内のRAM205,I/Oポート206,あるいは前記ROM207にそれぞれチップセレクト信号を与える。」(段落【0060】)
(ネ)「前記ROM207には,打玉がどの入賞領域に入賞したかに応じて払出すべき景品玉の数である賞球個数データが記憶されている。そして,入賞玉検出器122(図7参照)が入賞玉を検出してその検出信号がスイッチ回路229を介して遊技制御用マイクロコンピュータ202に入力されてくれば,遊技制御用マイクロコンピュータ202は,打玉が入賞した入賞領域に対応する賞球個数データをROM207から読出して,信号回路209,217(ともにフォトカプラで構成されている)を介して払出制御用マイクロコンピュータ220に返信する。本実施例では,賞球個数信号は,図示するように4本の信号線からなる4ビットデータ(D0?D3)の形で払出制御用マイクロコンピュータ220に伝送される。」(段落【0062】)
(ノ)「払出制御回路基板(賞球玉貸制御基板)152には,コネクタ153aを介して,入賞玉排出ソレノイド127,玉払出検出器(賞球センサ)187,玉切れスイッチ87a,87bがさらに接続されている。そして,払出モータ(賞球モータ)189の回転に伴って玉払出検出器(賞球センサ)187が切欠部192を検出すれば,その検出信号が払出制御回路基板(賞球玉貸制御基板)152に入力される。また,玉切れスイッチ87a,87bの検出信号がコネクタ153aを介して払出制御回路基板(賞球玉貸制御基板)152に入力される。払出制御回路基板(賞球玉貸制御基板)152は,コネクタ153aを介して入賞玉排出ソレノイド127を励磁制御し,入賞玉を下方に通過させて落下させる制御を行なう。」(段落【0070】)
(ハ)「払出制御回路基板(賞球玉貸制御基板)152は,前記玉払出検出器(賞球センサ)187からの検出信号に基づいて,コネクタ153b,199bを介して遊技制御基板199に入賞信号を出力し,遊技制御基板199は,その入賞信号に基づいて前述した賞球個数信号をコネクタ199b,153bを介して払出制御回路基板(賞球玉貸制御基板)152に返信する。」(段落【0071】)
(ヒ)「【課題を解決するための手段の具体例】前記遊技制御基板199により,前記遊技機の遊技状態を制御する遊技制御手段が構成されている。前記始動入賞口34,可変入賞球装置35,通常の入賞口42a,42bにより,前記遊技領域に設けられ,打玉が入賞可能な入賞領域が構成されている。入賞玉処理装置115により,前記入賞領域に入賞した入賞玉に基づいて景品玉の払出動作を行なうために該入賞玉を処理する入賞玉処理装置が構成されている。玉払出装置97により,玉を払出す玉払出装置が構成されている。払出制御回路基板152により,前記玉払出装置と前記入賞玉処理装置とを制御する払出動作制御手段が構成されている。」(段落【0132】)
(フ)「前記入賞玉処理装置は,入賞玉を保持する入賞玉保持手段(第2玉係止部130)と,該入賞玉保持手段により保持されている入賞玉を検出してその検出出力を前記遊技制御手段に出力する入賞玉検出手段(入賞玉検出器122)と,前記入賞玉保持手段により保持されている入賞玉を排出する入賞玉排出手段(ソレノイド127,第1玉係止部124)とを含んでいる。そして,前記遊技制御手段は,前記入賞玉検出手段からの検出出力が入力されたことを条件として,該入賞玉に対応して払出すべき景品玉の個数を特定する払出個数情報を前記払出動作制御手段に出力する。また払出動作制御手段は,前記払出個数情報が入力されたことを条件として,その入力された払出個数情報に従った個数の景品玉を前記玉払出装置から払出す制御を行なうとともに,該払出制御に伴う景品玉の払出の終了を待たずに前記入賞玉排出手段による入賞玉の排出動作を開始する制御を行なう。また,前述したように,入賞玉の排出時期は景品玉払出開始と同時でなくてもよい。そして,前記遊技制御手段と前記払出動作制御手段との間での情報通信は,前記遊技制御手段から,前記払出動作制御手段への一方向通信となっている。」(段落【0133】)
(ヘ)「【課題を解決するための手段の具体例の効果】請求項1に関しては,入賞玉が発生した場合には,その入賞玉に対応して払出すべき景品玉の個数を特定する払出個数情報が遊技制御手段から払出動作制御手段に出力され,その払出動作制御手段がその入力された払出個数情報に従った個数の景品玉を払出す制御を行なうために,入賞玉に基づいた払出動作を行なうに際し,前記払出動作制御手段から前記遊技制御手段への情報の送信を何ら行なうことなく払出動作が可能となり,払出動作制御手段から遊技制御手段へ入力される情報の入力部を利用した不正なデータの入力による不正改造等を極力防止し得ることができる。しかも,景品玉の払出動作の終了を待たずに入賞玉の排出動作が開始されるために,入賞玉の処理を迅速に行なうことができる。」(段落【0136】)
また,引用文献2の【図12】より「遊技制御基板199」内及び「払出制御回路基板152」内各々に,「信号回路209」及び「信号回路217」が設けられていることが分かる。

これらの記載及び図面からみて,引用文献2には,以下の技術事項が記載されていると認めることができる。
・「弾球遊技機において,遊技制御基板199と払出制御回路基板152との間での情報通信は,遊技制御基板199から,払出制御回路基板152への一方向通信とした」
・「遊技制御基板199には遊技制御用マイクロコンピュータ202が設けられ,入賞玉検出器122が入賞玉を検出してその検出信号が遊技制御用マイクロコンピュータ202に入力されると,遊技制御用マイクロコンピュータ202は,打玉が入賞した入賞領域に対応する賞球個数データをROM207から読み出し,この賞球個数信号を,遊技制御基板199内に設けられるフォトカプラ構成の信号回路209,及び,払出制御回路基板152内に設けられるフォトカプラ構成の信号回路217を介して払出制御用マイクロコンピュータ220に伝送する」

(2-3)特開平5-277247号公報(以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
(ホ)「なお,本実施例では,ゲーム制御用マイクロコンピュータと払出制御用マイクロコンピュータとを共通の1枚の基板に実装するようにしたが,共通の収容体に収容されるものであれば,別々の基板に実装して収容するようにしてもよい。」(段落【0050】)
(マ)「遊技制御・払出制御回路には払出制御用マイクロコンピュータ350およびゲーム制御用マイクロコンピュータ370が設けられている。この払出制御用マイクロコンピュータ350は,図7のカード処理器制御用マイクロコンピュータ300と同様に,CPU351,ROM352,RAM353,パワーオンリセット回路355,クロック発生回路356,定期リセット回路357,アドレスデコード回路358,I/Oポート354を含んでおり,ここでは説明の繰返しを省略する。なお,この払出制御用マイクロコンピュータ350は,前述した各種回路がワンチップ化されたワンチップマイクロコンピュータで構成されている。」(段落【0069】)
(ミ)「同様にゲーム制御用マイクロコンピュータ370も,CPU371,ROM372,RAM373,初期リセット回路375,クロック発生回路376,定期リセット回路377,アドレスデコード回路378,I/Oポート374,サウンドジェネレータ379を含んでおり,ここでは説明の繰返しを省略する。なお,サウンドジェネレータ379は,CPU371の制御に従って,大当り時などに,音回路386を介してスピーカ129を駆動して大当り音などの効果音を発生する。」(段落【0070】)
(ム)「図10は,払出制御用マイクロコンピュータ350のI/Oポート354とゲーム制御用マイクロコンピュータ370のI/Oポート374との間で,景品玉の払出個数データの送受信を行なうための回路を示す図である。」(段落【0081】)
(メ)「パチンコ遊技機60とカード処理機62とがコネクタ139(図2参照)を介して接続された段階でフォトカプラ852にVL(+18V)の電圧が与えられ,ゲーム制御・払出制御基板148に設けられているカード接続情報入力回路367を介してゲーム制御用マイクロコンピュータ370に信号が入力される。このカード接続情報入力回路367を介して払出制御用マイクロコンピュータ370に信号が入力されて初めてパチンコ遊技機60が作動可能となる。ゲーム制御・払出制御基板148のゲーム制御用マイクロコンピュータ370には,パチンコ玉の入賞態様に応じて払出すべき景品玉の個数,すなわち,n(7個),m(10個),k(15個)が記憶されている。ゲーム制御・払出制御基板148のI/Oポート374は,D0,D1,D2,D3,D4の5つの出力ポートを有しており,D0?D3の4つの出力ポートにより4ビットの賞球個数信号(景品玉払出個数信号)を出力することができるように構成されている。I/Oポート374が4ビットからなる賞球個数信号の出力ポートを有するために,1個?15個の15種類の賞球個数信号を出力することができる。I/Oポート374の出力ポートD4は,後述するセンサ種別信号を出力するためのものであり,入賞玉センサA(170a)の検出信号に基づく景品玉の払出か入賞玉センサB(170b)の検出信号に基づく景品玉の払出かを識別するための信号がこの出力ポートD4から出力される。」(段落【0082】)
(モ)「払出制御用マイクロコンピュータ350のI/Oポート354には,5つの入力ポートが設けられており,それぞれの入力ポートに,前述したゲーム制御用マイクロコンピュータ370のI/Oポート374のそれぞれのポートD0?D4からの信号が入力されるように構成されている。」(段落【0083】)
(ヤ)「I/Oポート374から出力された賞球個数信号はI/Oポート354に入力され,払出制御用マイクロコンピュータ350に入力される。そして払出制御用マイクロコンピュータ350では,入力された賞球個数に相当する個数だけの景品玉を払出制御する。」(段落【0085】)

上記記載事項(ホ)に記載された「ゲーム制御用マイクロコンピュータと払出制御用マイクロコンピュータとを・・別々の基板に実装」することを採用すると,上記各記載及び図面からみて,引用文献3には,以下の技術事項が記載されていると認めることができる。
・「ゲーム制御用マイクロコンピュータ370を実装した基板に,ゲーム制御用マイクロコンピュータ370からの信号を出力する出力ポートD0?D4(I/Oポート374)を設け,払出制御用コンピュータ350に実装した他の基板に,出力ポートD0?D4からの信号を受け払出制御用コンピュータ350に向かって伝達する5つの入力ポート(I/Oポート354)を設ける」

(2-4)「株式会社日立製作所発行のデータブック「日立Bi-CMOS/CMOSロジック HD74BC/AC/HC/UHシリーズ」平成8年9月,株式会社日立製作所発行」(以下,「引用文献4」という。)には,本件基準明細書において例示されている日立製の型番「74HC244」に関して,その特長,機能等とともに,「8ヶのバッファで構成され」,「ドライバは4ヶづつ組になっており,各組は“L”レベルのときに出力がイネーブルになる」(第472?473頁参照)との記載がある。

(3)引用発明と訂正発明1との一致点及び相違点の認定
訂正発明1は,「各制御基板」の一つとして「表示制御基板」を含むものであり,「制御手段」の一つとして「表示制御手段」を含むものであるから,引用発明と訂正発明1は,「表示制御基板」及び「表示制御手段」を具備する点で共通している。

引用発明と訂正発明1とを対比すると,引用発明の「図柄」は訂正発明1の「識別情報」に相当し,以下同様に,「メインCPU2」は「遊技制御手段」に,「サブCPU8」は「表示制御手段」に,「パチンコ機」は「遊技機」に,それぞれ相当する。
そして,引用発明について次のことがいえる。
a.引用発明における「特別図柄表示部17」では,3つに区分される「左,中,右特別図柄表示部17a,17b,17c」に「図柄」を「表示駆動」させて「変動」が生じるのであるから,該「特別図柄表示部17」は,訂正発明1における「表示状態が変化可能な可変表示部」に相当する。
b.引用発明における「遊技球が始動口19に入賞する」ことは,「図柄変動が開始される」ための条件といえるため,引用発明の「遊技球が始動口19に入賞すると,図柄表示装置7の特別図柄表示部17の図柄変動が開始され」は,訂正発明1における「変動開始の条件の成立に応じて前記可変表示部に表示される識別情報の変動を開始し」に相当するといえる。
c.引用発明は「大当たり判定用乱数の値が大当たりに関するものであるか」を「判別することにより」「記憶しておいた大当たり特別図柄データ」を選択して「各特別図柄表示部17a,17c,17bの図柄の停止表示を行う」ものであり,ここで,「記憶しておいた大当たり特別図柄データ」による「図柄の停止表示を行う」ことは,訂正発明1における「識別情報の表示結果が予め定められた特定の表示態様とな」ることに実質的に相当する。また,引用発明では,「大当たりが発生すると,遊技者に特に有利となる特別遊技状態が付与され」るのであって,ここで「特別遊技状態が付与され」れば,所定の遊技価値が付与可能となることは,パチンコ機の分野において技術常識であるので,引用発明は,訂正発明1における「識別情報の表示結果があらかじめ定められた特定の表示態様となった場合に所定の遊技価値が付与可能となる」構成を備えることは明らかである。
d.引用発明の「メイン制御部1」を基板上に形成すること,及び,「メインCPU2」を該「メイン制御部1」に搭載することは,パチンコ機の分野における技術常識に属し,また,「メインCPU2」が「パチンコ遊技全体に関わる制御を行う」ための「制御処理実行手段」であるから,引用発明は,訂正発明1における「遊技進行を制御する遊技制御手段が搭載された遊技制御基板」に相当する構成を備えているといえる。
e.引用発明の「サブ制御部6」を基板上に形成すること,及び,「サブCPU8」を該「サブ制御部6」に搭載することは,パチンコ機の分野における技術常識に属し,また,引用発明における「サブ制御部6」は,「メイン制御部1からの制御信号並びにコマンドデータに応じて」つまり「メイン制御部1」からの信号にもとづいて,「図柄表示装置7の各表示駆動手段を表示駆動制御する」ものであり,ここで「図柄表示装置7の各表示制御手段を表示駆動制御」することで「特別図柄表示部17」の表示制御が行われることは自明である。よって,引用発明は,訂正発明1における「前記遊技制御基板からの信号にもとづいて前記可変表示部の表示制御を行う表示制御手段が搭載された表示制御基板」に相当する構成を備えるといえる。
f.引用発明における「一方向データ転送手段40」は,引用文献1の上記(ク)の記載あるいは図1の記載より「メイン制御部1」及び「サブ制御部6」の間に設けられ,この「一方向データ転送手段40」により,「メインCPU2からサブCPU8へのみ制御信号並びにコマンドデータが転送され,サブCPU8からメインCPU2へのデータ信号の入力が禁止されるよう構成されて」いるのだから,上記「一方向データ転送手段40」は,「メイン制御部1」と「サブ制御部6」の間の信号について,信号の伝達方向を「メイン制御部1」から「サブ制御部6」への一方向に規制するための信号伝達方向規制手段であることは明らかである。

ここで,一方向に規制される信号が,「メイン制御部1」と「サブ制御部6」の間の信号の全てであるか否かについて検討する。
引用文献1記載の発明の課題及びその解決手段によれば,一方向データ転送の対象となるのは,メイン制御部から図柄表示装置のサブ制御部へ転送される制御用のコマンドデータ(パチンコ機における遊技状況を示すステータスデータ,図柄表示装置に複数設定されている各図柄表示部に表示する図柄の種類及び表示位置を示す各データ等)であり(段落【0002】,【0003】),引用文献1には上記コマンドデータ以外のデータ転送について,明示的な記載はされていない。しかし,引用文献1には,「サブ制御部からメイン制御部へのデータ信号入力が禁止されるため,何等かの手段により,図柄表示装置を介してサブ制御部からメイン制御部へ不正信号の出力がなされたとしても,サブ制御部からのメイン制御部への不正信号の入力を防止することができ,したがって,入賞が成立していないにもかかわらず,入賞状態となるといったことが防止することができる。」との効果を奏することが記載されている(段落【0011】,【0128】)。上記の効果は,サブ制御部からメイン制御部へのすべてのデータ信号入力を禁止することによりもたらされる効果であるから,引用文献1記載の発明においては,メイン制御部とサブ制御部の間のすべての信号経路に,メイン制御部への不正信号入力防止手段として,一方向データ転送手段が介在することを前提にしているものと解される。したがって,引用文献1には,一方向データ転送手段により,両制御部間のすべての信号について,サブ制御部からメイン制御部へのデータ信号入力を禁止する構成が開示されているものと認められる。
よって,訂正発明1の「複数の制御基板」には「表示制御基板」が含まれているから,訂正発明1と引用発明とは少なくとも「遊技制御基板と表示制御基板との間の全ての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記表示制御基板への一方向に規制するための信号伝達方向規制手段を設けた」点で共通する。

以上を総合すると,両者は,
「表示状態が変化可能な可変表示部を含み,変動開始の条件の成立に応じて前記可変表示部に表示される識別情報の変動を開始し,識別情報の表示結果があらかじめ定められた特定の表示態様となった場合に所定の遊技価値が付与可能となる遊技機であって,
遊技進行を制御する遊技制御手段が搭載された遊技制御基板と,前記遊技制御基板からの信号にもとづいて前記可変表示部の表示制御を行う表示制御手段が搭載された表示制御基板とを有し,
遊技制御基板と表示制御基板との間の全ての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記表示制御基板への一方向に規制するための信号伝達方向規制手段を設けた遊技機。」である点で一致し,以下の点で相違する。

<相違点1>
訂正発明1では,遊技制御基板には,制御手段が搭載され前記遊技制御基板からの信号が入力される,表示制御基板を含む複数の制御基板が接続されているのに対し,引用発明では,そのような構成か不明である点。
<相違点2>
訂正発明1では,「表示制御基板内」及び「遊技制御基板内」各々に「信号伝達方向規制手段」が「実装」され,「表示制御基板内」の「信号伝達方向規制手段」が「前記遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とし,前記遊技制御基板への信号の出力を不能」とし,「遊技制御基板内」の「信号伝達方向規制手段」が「前記表示制御基板への信号の出力のみを可能とし,前記表示制御基板からの信号の入力を不能と」するのに対し,引用発明は,「信号伝達方向規制手段」が「メイン制御部1」及び「サブ制御部6」の間に設けられている点。
<相違点3>
全ての信号を一方向に規制する構成が,訂正発明1では,「遊技制御基板」から全ての「各制御基板」への信号を対象としているのに対し,引用発明では「遊技制御基板」から「表示制御基板」への信号を対象としている点。
<相違点4>
訂正発明1では,複数の制御基板全ての各制御基板内に,信号伝達方向規制手段と制御手段との間に信号伝達方向規制手段から制御手段に向かって信号を伝達する入力ポートを設け,遊技制御基板内に,遊技制御手段と信号伝達方向規制手段との間に遊技制御手段から当該信号伝達方向規制手段に向かって信号を伝達する出力ポートを設けているのに対し,引用発明ではそのような構成でない点。

4.訂正発明1と引用発明の相違点の判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
引用文献1には,「【従来の技術】・・このようなパチンコ遊技機にあっては,・・メイン制御部のみでは・・各駆動制御要素を全て制御することが・・困難であるため,駆動制御要素毎に専用のサブ制御部が配備されており,メイン制御部から制御信号並びに出力データからなる制御用のコマンドデータをサブ制御部に転送し,前記制御用のコマンドデータに応じてサブ制御部により駆動制御要素を制御駆動するようにしている。」(上記記載事項(イ)),「メイン制御部から転送される制御用のコマンドデータは,例えば,サブ制御部が図柄表示装置である場合には,」(上記記載事項(ウ))と記載されている。
また,遊技機において,遊技制御基板に,制御手段が搭載され遊技制御基板からの信号が入力される,表示制御基板を含む複数の制御基板を接続することは,従来より,例を挙げるまでもなく周知技術と認められる。
そうすると,上記記載事項及び周知技術を斟酌すると,引用発明は,一方向データ転送の対象とする図柄表示装置7側に配備されるサブ制御部6の他に,他の駆動制御要素を制御駆動するサブ制御部を具備することは自明なことである。したがって,相違点1は実質的な相違点ではない。
仮に,上記のように認めることができないとしても,引用発明において上記周知技術を採用し,相違点1に係る訂正発明1の構成とすることは当業者にとって想到容易である。

<相違点2>について
引用文献2の段落【0007】,【0133】,【0136】によれば,引用文献2記載の技術事項は,遊技制御手段と払出動作制御手段との間での情報通信は,遊技制御手段から,払出動作制御手段への一方向通信とした構成を採用することにより,入賞玉に基づいた払出動作を行うに際し,上記払出動作制御手段から上記遊技制御手段への情報の送信を何ら行うことなく払出動作が可能となり,払出動作制御手段から遊技制御手段へ入力される情報の入力部を利用した不正なデータの入力による不正改造等を極力防止し得ることができる上,景品玉の払出動作の終了を待たずに入賞玉の排出動作が開始されるため,入賞玉の処理を迅速に行うことができるとの効果を奏するものといえる。
また,引用文献2の段落【0062】及び図12によれば,フォトカプラで構成されている信号回路209は遊技制御基板に,同じくフォトカプラで構成されている信号回路217は払出制御基板152にそれぞれ設けられていることが認められる。そして,信号の一方向伝達特性を維持するというフォトカプラの特性,画像表示等を制御するサブ基板はメイン基板への信号送信ができないとの規制の存在,賞球個数信号D0?D3は遊技制御基板199から払出動作制御基板152への一方向通信を予定した信号であると解するのが合理的であること,及び,引用文献2記載の発明が遊技制御手段から払出動作制御手段への一方向通信とした構成を採用することによって不正なデータの入力を防止することを目的としていること,等に照らすと,引用文献2の記載に接した当業者は引用文献2のフォトカプラで構成された信号回路209,217について,メイン基板である遊技機制御基板からのコマンドをサブ基板へ一方的に転送することのみを許可し,双方向通信を禁止する回路を技術常識として認識するものと解される。
そうすると,信号回路217は,訂正発明1の制御基板内に実装された「信号の伝達方向を遊技制御基板から制御基板への一方向に規制するために,前記遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とし,遊技制御基板への信号の出力を不能とする信号伝達方向規制手段」に相当し,信号回路209は,訂正発明1の遊技制御基板内に実装された「信号の伝達方向を遊技制御基板から制御基板への一方向に規制するために,制御基板への信号の出力のみを可能とし,制御基板からの信号の入力を不能とする信号伝達方向規制手段」に相当する。
引用文献2に記載された技術事項は,引用発明と同様に遊技機に関する技術分野において,不正信号の入力を防止するという目的を達成するためのものであり,引用発明においては1つであった一方向データ転送手段を,引用文献2のように入力側基板と出力側基板のそれぞれに設けることにより,より高い効果が期待できることは当然のことであるから,引用文献2記載の技術事項を引用発明に適用し,相違点2に係る訂正発明1の構成とすることは,当業者において想到容易である。

<相違点3>について
引用文献1には,「このようなパチンコ遊技機にあっては,パチンコ機のパチンコ遊技全体に関わる制御を行うためのメイン制御部のみでは,パチンコ機に配備された各駆動制御要素を全て制御することがメイン制御部の処理タイミングやメモリの記憶容量に制限があって困難であるため,駆動制御要素毎に専用のサブ制御部が配備されており,メイン制御部から制御信号並びに出力データからなる制御用のコマンドデータをサブ制御部に転送し,前記制御用のコマンドデータに応じてサブ制御部により駆動制御要素を制御駆動するようにしている。」(段落【0002】)及び「メイン制御部から転送される制御用のコマンドデータは,例えば,サブ制御部が図柄表示装置である場合には,パチンコ機における遊技状況を示すステータスデータ及び図柄表示装置に複数設定されている各図柄表示部に表示する図柄の種類並びに表示位置を示す各データ等である。」(段落【0003】)を【従来技術】とした上で,【発明が解決しようとする課題】を「本発明の目的は,・・・データ転送においてノイズの侵入を排除することが可能なパチンコ機におけるデータ伝送装置を提供することにある。」(段落【0008】)とし,【作用】を「一方向データ転送手段により,サブ制御部からメイン制御部へのデータ信号入力が禁止されるため,図柄表示装置を介するサブ制御部からメイン制御部への不正信号の入力が防止され,入賞が成立していないにもかかわらず,入賞状態となるといったことが防止される。」(段落【0011】)と記載されている。
これによれば,引用文献1には,駆動制御要素毎に配備された専用のサブ制御部からメイン制御部へ不正信号が入力されて,不正に入賞状態となることを防止するとの技術事項が記載されていると認められるが,メイン制御部への不正信号の入力が不正の原因となる以上,その不正対策はサブ制御部としての「図柄表示装置」からの不正信号への対策に限る理由はないこと,全ての各サブ制御部からメイン制御部への不正信号に対して対策を講ずればより安全であることは,当業者にとって自明である。
そうすると,引用発明において,「遊技制御基板」から「表示制御基板」への全ての信号を一方向に規制する構成を,「遊技制御基板」から全ての「各制御基板」への信号において採用し,相違点3に係る訂正発明1の構成とすることは,当業者であれば想到容易である。

<相違点4>について
従来より,特開平9-299548号公報,特開平10-127879号公報に例示されるように,遊技機において,信号の出力又は入力を行うI/Oポートを制御部に設けることは,よく行われていることである。
また,引用文献3には,ゲーム制御用マイクロコンピュータ370(訂正発明1の「遊技制御手段」に相当)を実装した基板(「遊技制御基板」に相当)内に,払出制御用コンピュータ350(「制御手段」に相当)に向かって信号を伝達する出力ポートD0?D4(「出力ポート」に相当)を設け,払出制御用コンピュータ350を実装した他の基板(「制御基板」に相当)内に,ゲーム制御用マイクロコンピュータ370からの信号を受けて払出制御用コンピュータ350に向かって伝達する5つの入力ポート(「入力ポート」に相当)を設けることが記載されている。そして,引用文献3に記載された技術事項も,引用発明と同様にメイン制御部からサブ制御部へ信号を伝達するものであるから,これを引用発明に適用することに技術的困難性はない。
そうすると,引用発明において上記引用文献3に記載された技術事項を適用し,各制御基板内に入力ポートを設け,遊技制御基板内に出力ポートを設け,相違点4に係る訂正発明1の構成とすることは,当業者であれば想到容易である。なお,その適用に際し,出(入)力ポートと信号伝達方向規制手段との位置関係をどのようにするかは,その位置関係によって効果に差異が生じるものとは認められないから,設計的事項に過ぎない。
なお,請求人は,「主たる規制手段である信号伝達方向規制手段と補助的な規制手段である出力ポートとを組み合わせた相乗的な作用によって,信号伝達方向規制の強化を図り,遊技機に対する不正行為を防止できる効果をより強めています。」(平成23年6月30日意見書8頁下から7?4行)等の主張をしているが,出(入)力ポートが補助的な規制手段であって信号伝達方向規制手段との組合せによって「相乗的」な作用を奏するということは本件基準明細書には記載されておらず,その構成からみても,それぞれが個別の作用を奏するとしても,「相乗的」な作用を奏するとは認めることはできない。

以上によれば,訂正発明1は,引用発明に引用文献2,3記載の技術事項及び周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到することができるものである。

5.訂正発明2,3についての容易性の判断
訂正発明2は,訂正発明1を引用して記載された発明であり,訂正発明3は,訂正発明2を引用して記載された発明であって,前記4のとおり,訂正発明1は当業者が容易に想到し得るものである。
そして,訂正発明2は,信号伝達方向規制手段として,汎用のバッファIC回路が用いられているのに対し,引用発明ではトランジスタアレイが用いられている。しかし,汎用のバッファIC回路として本件基準明細書において例示されている「74HC244」(段落【0035】)は,引用文献4に示されており,これが信号伝達方向規制手段として機能し得ることは,当業者にとって自明のことである。したがって,信号伝達方向規制手段として,汎用のバッファIC回路を採用することは,当業者が容易になし得る。そうすると,訂正発明2は,引用発明に引用文献2?4記載の技術事項及び周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到することができるものである。
また,訂正発明3は,バッファIC回路のイネーブル端子が常に入出力導通状態に設定されているが,引用文献4によれば,汎用のバッファIC回路として本件基準明細書において例示されている「74HC244」のイネーブル端子を常に「L」レベルにしておけば,入出力導通状態となるのであり,そのような設定をすることは設計事項といえる。そうすると,訂正発明3は,引用発明に引用文献2?4記載の技術事項及び周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到することができるものである。

6.むすび
以上のとおりであるから,訂正後における特許請求の範囲請求項1?3に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなく,本件訂正は,特許法126条5項の規定に適合しないので,本件訂正は認められない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-22 
結審通知日 2011-08-25 
審決日 2011-09-06 
出願番号 特願平10-188142
審決分類 P 1 41・ 121- Z (A63F)
P 1 41・ 856- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 秋山 斉昭
吉村 尚
澤田 真治
田部 元史
登録日 1999-03-05 
登録番号 特許第2896369号(P2896369)
発明の名称 遊技機  
代理人 眞野 修二  
代理人 塩川 誠人  
代理人 岩壁 冬樹  
代理人 川村 武  

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