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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C21B
管理番号 1246024
審判番号 不服2010-2873  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-09 
確定日 2011-11-04 
事件の表示 特願2004- 46333「高炉のステーブ配置構造」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月 8日出願公開、特開2004-190143〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年2月13日の出願である特願平10-48931号を、特許法第44条の規定に基づき平成16年2月23日に分割した出願であって、平成20年7月16日付け拒絶理由通知書が送付され、同年9月26日付け手続補正書が提出されたところ、平成21年4月20日付けで再度の拒絶理由通知書が送付されたので、これに対して、同年6月29日付け意見書が提出されたが、同年10月23日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として平成22年2月9日付けで請求されたもので、当審において、平成23年4月27日付け拒絶理由通知書が送付され、これに対し、同年7月11日付け意見書及び同日付け手続補正書が提出されている。

第2 本願発明
本願の発明は、平成23年7月11日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「炉高方向で炉下部側から順に朝顔部、切立部およびシャフト部を備え、且つ炉下端側に羽口を備え、羽口から微粉炭吹き込みを行う高炉の炉高方向において、熱負荷が小さい炉上部・中部領域(A)には鋳鉄製ステーブを配置し、それよりも下方の熱負荷の大きい炉下部領域(B)及び炉最下部領域(C)には銅または銅合金製ステーブを配置したステーブ配置構造であって、
前記炉下部領域(B)が、朝顔部の上部領域、切立部の全部領域およびシャフト部の下部領域であり、前記炉最下部領域(C)が、羽口上方における朝顔部の下部領域であることを特徴とする高炉のステーブ配置構造。」

第3 当審の拒絶理由の概要
当審の平成23年4月27日付け拒絶理由の概要は以下のとおりのものである。

「本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記の引用例1?2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1;Iron and Steel Engineer、1992.02.発行、p49-55
引用例2;特開平8-134518号公報」

第4 引用例とその記載事項
当審の拒絶理由に引用された引用例1及び引用例2には、以下の記載がある。ただし、引用例1に関する記載は翻訳したものである。

(1)引用例1;Iron and Steel Engineer、1992.02.発行、p49-55
(1a);
「1978年に、MAN GHH社とThyssen Stahl社は共同で、高炉壁の冷却を飛躍的に改善する目的のため、銅ステーブの開発計画に着手した。この開発の基本的な考えと結果が、本稿の主題である。」(第49頁左欄第28行?第32行)

(1b);
「冷却板が局所的な領域のみを冷却するのに対して、ステーブは高炉全体を冷却するのに大きな利点を有する。しかしながら、損傷した冷却板は交換が容易であるのに対して、ステーブの交換は、高炉を止めない限り実質的に不可能である。
・・・
ノジュラー鋳鉄は高炉操業条件下では摩耗を生じるとともに、過酷な熱負荷と熱変動にさらされることで亀裂が生じやすい。2層の冷却領域、隅部の冷却パイプ、一体化された耐火材等を備えた第4世代の鋳鉄ステーブでさえ、これらの欠点を完全に克服することはできないであろう。それらは、特に熱負荷が高い領域のステーブ寿命を制限する。」(第49頁右欄第2行?第50頁左欄第8行)

(1c);
「銅ステーブがクラックを生じないであろうという確信は、銅冷却板による経験と、銅ステーブを使用した日本での有望な結果に基づくものであった。特に、数年の操業後においても、日本の銅ステーブ表面は依然として滑らかであり、疲労がほとんど無く、クラックが全くなかった。」(第50頁左欄第25行?第31行)

(1d);
「しかしながら、鋳鉄と比較した銅の物理的特性に関して、他にいくつかの不安があった(表II)。銅の熱伝導性は鋳鉄より約10倍高く、その部分が機械的な力や応力にさらされる場合には温度を約250°Fより低く保たれなければならない。250°Fを超えると、銅の機械的強度は急速に落ちる。これらの2つの条件は、他のステーブ冷却システムよりも、高炉からより多くの熱が除去されることを意味している。これは、高炉の燃料消費に影響し、ノジュラー鋳鉄製のステーブよりも高い冷却水循環速度が求められるため、不利となる。
・・・
解決されるべき問題は、銅ステーブの比較的冷たい前面に安定な外皮が形成されるかということであった。以前の刊行物により、鋳鉄ステーブ表面に200mmまでの厚みを有する外皮を形成すること、この外皮が断熱層として振る舞うことが示されていた。銅ステーブにおける実用的な経験を得るために、長期間の高炉テストが必要と考えられていた。」(第50頁右欄第21行?第51頁右欄第12行)

(1e);
「テュッセン ハンボルン 4番高炉-2つの試験銅ステーブが、ハンボルンのテュッセン4番高炉のE列(シャフト部中央)に設けられた。
・・・
微粉炭吹き込みが行われた。
・・・
活動終了時の1988年に4番高炉は止められ、銅ステーブが調査された(図6)。近傍の鋳鉄ステーブは、疲労、亀裂や冷却管の露出の痕跡が認められたのに対して、銅ステーブは鋭い隅部を有し、まるで未使用の外観であった。」(第51頁右欄第31行?第52頁左欄第24行)

(1f);
「テュッセン ルーロルト 6番高炉-ハンボルン4番高炉での第1試験が進行中である一方で、2つの銅ステーブを用いた第2試験は1988年初めから開始された。まだ継続している、この第2試験には、さらに2つの目的があった。
・より簡素で安価な設計の評価
・シャフト部の下部領域に設置したステーブの評価
・・・
より高い熱負荷が見込まれる、シャフト部の下部領域の位置を図11に示す。
・・・
銅ステーブとその周囲は、活動開始の約1年後と、1991年4月に再度、目視調査した。操業環境により、銅ステーブ付近の鋳鉄ステーブはかなりの疲労と冷却管の露出が認められた一方、銅ステーブは新品同様であった。
・・・
第2セットのステーブの実績は、温度、保護層の形成、抜熱に関して、第1セットと若干異なった(図13)。ステーブの日平均温度は160?175°Fであった。このことから、当初の耐火物のいくらかは銅ステーブの全面に残存したか、あるいはその代わりに、同等の断熱効果を有する安定な外皮が形成されたと推測される。これらの試験結果から、断熱層は銅ステーブ前面に恒久的に残存するであろう。」(第53頁左欄第1行?右欄第14行)

(1g);


図11-2番目の2つの実験銅ステーブ位置が設定されたテュッセン ルーロルト 6番高炉の断面図」

(1h);
「技術比較-表VIIに以下の冷却方式の代表的な設計及び操業条件をまとめた。
・高密度に実装された銅冷却板・・・
・冷却突起を有するノジュラー鋳鉄ステーブ
・銅冷却ステーブ(シャフト下部及び切立部)と、他の炉殻領域におけるノジュラー鋳鉄ステーブ

技術比較の主な結果
・・・
・切立部/シャフト下部に3列の銅ステーブを有し、残りの領域に鋳鉄ステーブを有する銅ステーブ方式において、抜熱速度や冷却水循環速度は、銅冷却板方式と同等である。
・・・
・銅ステーブの前面に安定な外皮が形成されるので、一定の時間の経過後に外皮に置き換わるであろう高価な耐火材を設置する必要はない。
・・・
表VII 異なる高炉壁冷却方式の代表的な設計及び操業条件」(第54頁左欄第2行?第55頁左欄上表題)

(1i);
「13年間の開発段階が首尾良く完了し、銅ステーブの適用は、実現可能な商業上の高炉冷却方式と考えられる。
・・・
銅ステーブはまもなく、最も高い熱負荷を有する炉の領域へ広範に適用されるであろう。現在建設中の最大級の高炉の朝顔部に、1列の銅ステーブが設置される予定である・・・」(第55頁左欄第12行?右欄第17行)

(2)引用例2;特開平8-134518号公報
(2a);
「【0002】
【従来の技術】高炉への微粉炭吹込みは、高価な高炉燃料であるコークスの代替材料として微粉炭を用いることによりコスト低減を図る技術である。
・・・
【0003】・・・上記方法により実際に高炉操業を行った場合、微粉炭を多量に吹込むと高炉下部の熱負荷(炉壁ステーブ温度)が著しく増加するという現象が見出され、図1に示す様に高炉の炉況が不安定となることがあり改善の余地を残していた。」

(2b);
「【0007】
【作用】まず本発明者らは、微粉炭吹込み量が100kg/銑鉄t以上、特に150kg/銑鉄t以上という比較的多量に微粉炭を吹き込んだ場合に、高炉炉下部の熱損失が著しく増大し、炉況不調を生じることを問題として取り上げ、研究を行った。
【0008】尚、高炉炉下部に熱負荷が増大する現象は、図2に例示する様な羽口前レースウェイ内におけるガス組成分布と強い相関があり、ガス組成の中でも特に炭酸ガスの濃度が最高となる位置(以下、炭酸ガス最高濃度位置という)がレースウェイ内の最高温度位置となることから、高炉炉下部の炉壁温度と上記炭酸ガス最高濃度位置との関係について調べた。その結果、図3のグラフに示す様に、炭酸ガス濃度が最高値を示す位置が羽口先端から270mm未満に形成された場合には、高炉炉下部の熱負荷が急上昇することを突き止めた。」

(2c);
「【図面の簡単な説明】
・・・
【図3】レースウェイにおいて炭酸ガス最高濃度位置と、炉下部の炉壁温度との関係を示すグラフである。」

(2d);
「【図3】



第5 当審の判断
1 引用例1に記載された発明
ア 引用例1の(1a)、(1b)には、高炉を冷却するステーブの交換が困難である一方で、熱負荷が高い領域の鋳鉄ステーブ寿命が短いという技術背景に基づき、銅ステーブの開発に着手したことが記載され、銅ステーブの実用的な経験を得るため、(1e)では2枚の試験銅ステーブを高炉のシャフト部中央に設けた試験が、(1f)、(1g)ではさらに高い熱負荷が見込まれるシャフト部の下部領域に2枚の試験銅ステーブを設けた第2試験がそれぞれ記載されているとともに、いずれの試験においても銅ステーブが未使用の状態を維持していた試験結果が記載されている。

イ そして、引用例の(1h)には、上記試験結果を踏まえ、冷却方式の技術比較を行うための一態様として、切立部/シャフト下部に3列の銅ステーブを有し、残りの領域に鋳鉄ステーブを有する高炉のステーブ配置構造が記載されている。

ウ ここで、(1g)にも記載されるように、高炉が炉高方向で炉下部側から順に朝顔部、切立部およびシャフト部を備え、且つ炉下端側に羽口を備えることは、当業者にとって自明の事項である。

エ また、(1f)に記載された「より高い熱負荷が見込まれる、シャフト部の下部領域」は、(1g)の斜線が施された銅ステーブの位置によれば、シャフト下部及び切立部を指しているものと認められるから、(1f)、(1g)には、シャフト下部及び切立部が、より高い熱負荷が見込まれる領域であることが記載されているといえる。

オ 以上の記載を、本願発明の記載ぶりに沿って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「炉高方向で炉下部側から順に朝顔部、切立部およびシャフト部を備え、且つ炉下端側に羽口を備え、高炉の炉高方向において、熱負荷の大きい切立部及びシャフト下部に3列の銅製ステーブを有し、残りの領域に鋳鉄製ステーブを有する高炉のステーブ配置構造。」

2 本願発明と引用発明との対比
ア 引用発明における「切立部およびシャフト部」は、本願発明の「炉下部領域(B)」から「朝顔部の上部領域」を除いたものに相当する。

イ また、引用発明における「残りの領域」とは、高炉における「切立部及びシャフト下部」を除く部分である、シャフト上部、シャフト中部(すなわち炉上部、中部)、及び朝顔部を含むことは明らかであり、また、上記シャフト上部、シャフト中部(炉上部、中部)が相対的に熱負荷が小さい領域であることについても、当業者における技術常識である。
したがって、引用発明の「残りの領域」は、本願発明の「熱負荷が小さい炉上部・中部領域(A)」及び「朝顔部」に相当する。

ウ 以上によると、本願発明と引用発明との対比において、両者は以下の点で一致する。

<一致点>
「炉高方向で炉下部側から順に朝顔部、切立部およびシャフト部を備え、且つ炉下端側に羽口を備え、高炉の炉高方向において、熱負荷が小さい炉上部・中部領域(A)には鋳鉄製ステーブを配置し、それよりも下方の熱負荷の大きい切立部の全部領域およびシャフト部の下部領域には銅製ステーブを配置したステーブ配置構造。」

そして、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明における高炉が、羽口から微粉炭吹き込みを行うものであるのに対して、引用発明における高炉は、微粉炭吹き込みを行うか否か不明である点。

<相違点2>
本願発明は、炉下部領域(B)及び炉最下部領域(C)として朝顔部の上部領域、羽口上方における朝顔部の下部領域にも銅または銅合金製ステーブを配置しているのに対して、引用発明は、朝顔部に鋳鉄製ステーブを配置している点。

3 相違点についての判断
ア 相違点1について
高炉へ微粉炭吹き込みを行うことは、引用例1の(1e)、引用例2の(2a)に記載されているように本願出願前周知の技術であり、引用発明の高炉において微粉炭吹き込みを行うことは、当業者が容易に想到できるものである。

イ 相違点2について
引用例1の(1i)には、銅ステーブが最も高い熱負荷を有する炉の領域へ広範に適用され得ること、現在建設中の高炉の朝顔部に1列の銅ステーブが設置される予定であることが記載されており、高熱負荷領域である朝顔部に銅ステーブを設置することが示唆されているといえる。
したがって、引用発明における高炉のステーブ配置構造において、熱負荷の大きい領域への銅製ステーブの配置を、切立部の全部領域およびシャフト部の下部領域に加えて朝顔部の全部領域にまで広範に適用することは、当業者が容易になし得た設計変更といえる。

4 審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、平成23年7月11日付け意見書の「3.(i)(ウ)?(エ)」において、要するに、引用例1が開示していることは、「鋳鉄製ステーブ」を装備した既設の高炉を利用し、熱負荷が相対的に高いと思われる領域に2枚の銅製ステーブを取り付け、銅製ステーブの性能評価のための試験を実施し、その結果に基づいて「銅製ステーブ」の技術やコストの評価を行ったということだけであり、引用例1には「鋳鉄製ステーブ」を配置することの意義について何らの示唆もないから、引用例1には“貼り分け”の発明が記載されておらず、本願発明との一致点として認定された事項のうち「高炉の炉高方向において、熱負荷の小さい炉上部・中部領域(A)には鋳鉄製ステーブを配置し、それよりも下方の熱負荷の大きい炉下部領域に銅製ステーブを配置したステーブ配置構造であって、前記炉下部領域が、切立部の全部領域およびシャフト部の下部領域である高炉のステーブ配置構造。」は引用例1には記載されていない旨主張している。

上記主張について検討する。
引用例1は、(1b)、(1c)に記載された、熱負荷が高い領域の鋳鉄ステーブの問題点や銅製ステーブの有利な可能性といった背景技術に基づき、銅製ステーブの高炉壁への適用について検討が行われたものであり、(1e)?(1h)で摘示した各種の試験、技術比較、及びその結果が示されているとともに、(1i)では銅製ステーブの高熱負荷領域への適用に関する今後の動向が記載されている。
確かに、引用例1の(1e)?(1g)には、「2枚」の銅製ステーブを高炉に取り付けた2種類の試験が記載されているが、(1h)には高炉の切立部/シャフト下部に「3列」の銅製ステーブを設置し、残りの領域に鋳鉄ステーブを設置することが記載されており、ここでの「3列」の銅製ステーブは当然に全周にわたる枚数を用いて「列」を構成したものと解される。(この点についてさらに補足すれば、他方式との技術、コスト比較をする上では、切立部/シャフト下部の周囲の一部のみに銅製ステーブを取り付けたものではなく、その周囲全面を銅製ステーブとして他方式との比較を行わなければ、銅製ステーブを取り付ける効果が正確に評価できないことは明らかであることからも、(1h)に記載された銅製ステーブは、周囲の一部の2枚のみに取り付けられたものではなく、周囲全面に取り付けたものと解される。)
すなわち、(1e)?(1g)には、鋳鉄ステーブ「2枚」分という局部的な置換による試験結果が記載されているのに対し、(1h)には、当該試験結果に基づく実施態様として、切立部/シャフト下部に銅製ステーブを設置し、その他の領域に鋳鉄ステーブを配置した配置構造が記載されているといえる。
このように(1h)には高炉の領域別に銅製ステーブ、鋳鉄ステーブを設置することが明確に記載されており、そのステーブ配置構造は「貼り分け」られた配置構造に他ならないから、「貼り分け」の発明が記載されておらず、それゆえに本願発明の一致点の認定が誤りであるとする上記請求人の主張は採用できない。
なお付言すれば、引用例1には鋳鉄製ステーブを配置する意義についての記載はないが、熱負荷が高い領域に銅製ステーブを配置することの意義について記載されているといえ、引用例1においては、従来から使用されてきた鋳鉄製ステーブを用いた高炉を基本としつつ、この高熱負荷領域を鋳鉄ステーブに替えて銅製ステーブとすることで、「貼り分け」の配置構造に想到したものと解することができる。

イ また、審判請求人は上記意見書の「3.(ii)(ウ)?(エ)」において、銅製ステーブは強度が低下する温度が低いので(引用例1の50頁に「銅製ステーブは250°F(121℃)以上で機械強度が急速に落ちる」と記載されている)、銅製ステーブを適用した場合に強度が確保できるのかという懸念材料があり、引用例1では、これらの点を含め、「朝顔部」にどのようなステーブを配置するのが適当かについて、検討も試験も行っていないのであるから、朝顔部に銅製ステーブを配置することが引用例1、2の記載から示唆されることはない旨主張している。

上記主張について検討する。
銅製ステーブの強度に関して、確かに引用例1には銅製ステーブを取り付けた際の強度試験については記載がないが、引用例1の(1d)によれば、銅製ステーブの前面に断熱層として振る舞う安定な外皮が形成されるかが、銅の物理的特性を考慮した際の解決されるべき問題であったところ、(1f)や(1h)によれば、高熱負荷領域である切立部/シャフト下部に設置した銅製ステーブの前面に安定な外皮が形成される結果が得られていることから、熱負荷が高い領域での銅製ステーブの配置について、一定程度の検討が行われているといえる。そして、(1i)には、各種試験や技術比較の結果を踏まえて、最も熱負荷が高い領域や朝顔部への銅製ステーブの適用が示唆されていることや、微粉炭吹き込みを行う際に、朝顔部が高熱負荷領域となる(後記「ウ」を参照。)ことが引用例2に記載されていることを考慮すれば、朝顔部に銅製ステーブを配置することは引用例1、2の記載から示唆されることであるといえ、上記請求人の主張も採用できない。
なお付言すれば、本願においても朝顔部を含む領域への銅製ステーブの取り付けに関して、強度試験等の定量的な試験や分析が行われているとは認められない。

ウ なお、上記「3 相違点についての判断」に直接関わるものではないが、上記意見書の「3.(ii)(イ)」における、引用例2に記載された「高炉炉下部」が具体的にどこを指しているか不明である旨の審判請求人の主張について補足的に検討する。

引用例2の(2a)には、高炉への微粉炭吹き込みにおいては、高炉下部の熱負荷が著しく増加することが記載されている。ここで、引用例2の(2b)には、高炉炉下部に熱負荷が増大する現象の解析に関して、炭酸ガスの濃度が最高となる位置がレースウェイ内の最高温度位置となること、炭酸ガス濃度が最高値を示す位置が羽口先端から270mm未満に形成された場合には、高炉炉下部の熱負荷が急上昇することが記載され、引用例2の(2c)、(2d)には、炭酸ガス濃度が最高値を示す位置、すなわちレースウェイ内の最高温度位置が羽口先端に近づくほど炉下部の炉壁温度が上昇する関係図が示されている。
そうすると、(2a)に記載された高炉下部が、羽口先端に近い領域である朝顔部を含むものであることは明らかである。

5 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-22 
結審通知日 2011-08-30 
審決日 2011-09-13 
出願番号 特願2004-46333(P2004-46333)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C21B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 猛  
特許庁審判長 長者 義久
特許庁審判官 大橋 賢一
田中 則充
発明の名称 高炉のステーブ配置構造  
代理人 苫米地 正敏  
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