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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1246039
審判番号 不服2010-15889  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-14 
確定日 2011-11-04 
事件の表示 特願2000-365732「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月11日出願公開、特開2002-165984〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成12年11月30日の出願であって、拒絶理由に対して平成22年3月1日付けで手続補正がなされ、その後、同年4月19日付けでなされた拒絶査定に対し、同年7月14日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正がなされたものである。
また、当審において、同年10月19日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から同年12月24日に回答書が提出されている。
さらに、審判合議体において、平成23年5月23日付けで平成22年7月14日付け手続補正が却下されるとともに、最後の拒絶理由が通知され、これに対して、平成23年7月15日付けで手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第二.平成23年7月15日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年7月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正後の本願発明
本件補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1記載の発明(以下「本願補正発明」という。)は次のとおりである。
「 遊技者にとって有利な遊技状態である特定遊技状態を生起させるか否かを決定するための第一の抽選と、前記特定遊技状態を生起させる可能性を向上させるか否かを決定するための第二の抽選と、を行う抽選手段を備え、前記第一の抽選の結果及び前記第二の抽選の結果のそれぞれを表示手段によって表示可能な遊技機において、
前記表示手段の表示領域において第一の表示領域を設定して、該第一の表示領域において前記第一の抽選の結果を表示することが可能であるとともに、前記表示手段の表示領域において第二の表示領域を設定して、該第二の表示領域において前記第二の抽選の結果を表示することが可能な表示制御手段を備え、
前記表示制御手段は、
前記第一の抽選の結果及び前記第二の抽選の結果を、互いに異なる表示態様で表示し、
前記抽選手段が行った前記第一の抽選の結果が、前記特定遊技状態を生起させることが決定されたことを示す特定の結果となった場合に、
前記表示手段の前記表示領域において前記第一の表示領域を設定して、該第一の表示領域において、それぞれのリーチゲームモードにおいて当該リーチゲームモードに対応するキャラクタが表示される複数のリーチゲームモードのうちから選択された一のリーチゲームモードを表示して、複数の図柄の組合せによって前記特定の結果を表示した後に、
該第一の表示領域を縮小するとともに、前記表示手段の前記表示領域において前記第二の表示領域を設定して、該第二の表示領域において、前記一のリーチゲームモードに対応するキャラクタと同一のキャラクタと、前記複数のリーチゲームモードのうち他のリーチゲームモードに対応するキャラクタと同一のキャラクタとの対戦に係るキャラクタアクションを表示して、該キャラクタアクションに係る対戦の結果によって前記第二の抽選の結果を表示し、
前記第一の抽選の結果が前記特定の結果となった場合における前記複数のリーチゲームモードのそれぞれが選択される確率を、該複数のリーチゲームモードで異ならせていることを特徴とする遊技機。」(下線部は補正によって追加又は変更された箇所。)

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正のうち、「第一の抽選」と「第二の抽選」とを行う構成として「抽選手段を備え」との限定を加える補正、「特定の結果を表示」する構成として「それぞれのリーチゲームモードにおいて当該リーチゲームモードに対応するキャラクタが表示される複数のリーチゲームモードのうちから選択された一のリーチゲームモードを表示して、複数の図柄の組合せによって」との限定を加える補正、及び「第二の抽選の結果を表示」する構成として「前記一のリーチゲームモードに対応するキャラクタと同一のキャラクタと、前記複数のリーチゲームモードのうち他のリーチゲームモードに対応するキャラクタと同一のキャラクタとの対戦に係るキャラクタアクションを表示して、該キャラクタアクションに係る対戦の結果によって」との限定を加える補正については、特許請求の範囲を限定的に減縮するものである。
しかし、「前記第一の抽選の結果が前記特定の結果となった場合における前記複数のリーチゲームモードのそれぞれが選択される確率を、該複数のリーチゲームモードで異ならせている」との限定を加える補正(以下「リーチゲームモード選択確率に関する補正」という。)については、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)に直接的には記載されていない。
また、段落【0029】には「リーチゲームモード1は全リーチゲームモードの内で、大当り状態となる場合の図柄変動の時に最も突入する確率を高く設定したもの」という記載はあるものの、リーチゲームモード2、3、4、5については、段落【0030】に登場するキャラクタが、それぞれ「ポセイドン」、「メデューサ」、「アテナ」、「ヘラクレス」である旨記載されているだけであり、リーチゲームモード2、3、4、5相互における大当り状態となる場合の図柄変動の時に突入する確率の高低については記載も示唆もない。
よって、リーチゲームモード選択確率に関する補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるということはできない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

なお、本件補正が特許法第17条の2第3項の規定に違反しないとしても、「特定の結果を表示」する構成として本件補正により付加された「リーチゲームモード」に関して、同補正で限定を重ねることは、特許請求の範囲を限定的に減縮するものということはできないので、本件補正は平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反する。
さらに、本件補正が上記改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしてみても、以下の理由により本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、本件補正を却下すべきものであることに変わりはない。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用された文献の記載事項
審判合議体が通知した拒絶理由に引用された特開2000-61079号公報(以下「引用文献A」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

【0012】【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。先ず、図1を参照して実施形態に係る遊技機(図示ではパチンコ遊技機)の遊技盤1の構成について説明する。・・・
【0016】しかして、上記のように構成される特別可変入賞球装置9は、以下のように作動する。即ち、打玉が普通可変入賞球装置5に入賞して始動玉検出器8をONさせると特別可変表示装置30が変動を開始し、一定時間が経過すると、特別図柄が確定され、その確定された図柄の組み合せが所定の大当り組合せ(同一図柄のゾロ目)となったときに特定遊技状態となる。・・・
【0023】次に、図5乃至図16を参照して、特別可変表示装置30の画像表示部60に表示される特別図柄について説明する。先ず、特別図柄に係るランダム数としては、図5に示すように、7種類のランダム数が使用されている。これらのランダム数は、大当り決定用のC_RND1と、リーチ動作用のC_RND2と、飾りLED61a・61bの点灯制御用のC_RND3と、大当り図柄配列用のC_RND_LINEと、上第1図柄表示用のC_RND_ZU1と、上第2図柄表示用のC_RND_ZU2と、上第3図柄表示用のC_RND_ZU3と、から構成されている。
【0025】そして、図6(A)に示すように、C_RND1(0?358)から抽出された値が「1」となり大当りが判定されると、C_RND_LINE(0?95)の抽出値により大当りとなる図柄配列を決定して、この大当り図柄を画像表示部60に表示する。C_RND_LINEは、後で詳述するように特別図柄の大当り組合せと確変判定LED62a・62bのいずれか一方の点灯を決定するようになっている。・・・
【0026】一方、C_RND1で「1」以外の値が抽出されてハズレと判定されると、C_RND_ZU1?3からの各抽出値に対応する図柄をハズレ図柄として画像表示部60に表示する。なお、C_RND_ZU1?3からの各抽出値が偶然にも大当り図柄と一致した場合には、C_RND_ZU1?C_RND_ZU3のいずれかの値に「1」を加算してハズレ図柄にして表示する。・・・
【0027】画像表示部60に表示される特別図柄は、図6(B)に示すように、上段の可変表示部列(可変表示部60a?60c)に表示される上段3図柄と、中段の可変表示部列(可変表示部60d・60e)に表示される中段2図柄と、下段の可変表示部列(可変表示部60f?60h)に表示される下段3図柄と、の計8図柄から構成されている。・・・
【0034】次に、特別図柄の変動動作について説明する。先ず、特別図柄の変動は、図10(A)の一覧表図に示すパターンに基づいて行われる。変動パターンAは、1周を2.0秒間で回転する速度で変動するパターンであり、変動パターンBは、1周を3.2秒間で回転する速度で変動するパターンであり、変動パターンCは、1周を4.0秒間で回転する速度で変動するパターンである。特別図柄のリーチ種類は、図10(B)に示すように、ノーマルリーチとシスコリーチに大別され、さらにその中でも変動時間からショートリーチとロングリーチに分かれる。ノーマルリーチは、リーチ変動となる変動パターンCをそのまま行い、常にショートリーチとなる(以下、これをリーチ1ともいう)。一方、シスコリーチは、変動パターンCを行う場合、大当りを決定する当り図柄で一旦減速するパターンで行う。そして、このようなシスコリーチは、先ず、リーチ変動時に画像表示部60に追加表示されるキャラクタの種類によって「女王蜂」と「妖精」に分かれる。・・・
【0038】また、場外全回転で大当りする場合を除き特別図柄の表示結果が大当りとなるときは、図4(B)に示すように、一旦「7」以外の大当り図柄(仮の大当り図柄)を導出し、その後再変動によって最終的な大当り図柄を導出するようになっている。そして、その最終的な大当り図柄が「7」の大当り図柄のときは、その時点で確変が確定する。一方、最終的な大当り図柄が「7」以外の大当り図柄のときは、大当り中(特定遊技状態中)に確変判定ゲームを画像表示部60に表示するようになっている。なお、確変判定ゲームの結果、言い換えれば確変制御の有無は、再変動後の大当り図柄が確変図柄であるか否かによって事前に決定されている。但し、「7」以外の大当り図柄は、前述したように一見しただけでは確変図柄か否かが判別できないため、確変判定ゲームの結果によって確変制御の有無が決定したように遊技者に思わせることができる。・・・
【0039】次に、上記した確変判定ゲームを図14に示す表示画面を例に挙げて説明する。確変判定ゲームの表示画面は、図14に示すように、確変決定ルーレットを動かす2匹の女王蜂65a・65b(同図中には、キャラA1・A2と記載)を表示するキャラクタ表示部67と、大当りを決定した図柄種類68(図14中には、「6」図柄を例示)、現在のラウンド回数69、及び各ラウンド毎の入賞玉数70(図14中には、各ラウンドとも5個の入賞を例示)、をそれぞれ表示する情報表示部71と、から構成されている。先ず、1Rの開始時点では、図14(A)に示すように、確変判定ゲームが開始される旨を報知する「お待ちかね、確変決定ルーレット、スタート」の言葉を女王蜂65aが発する表示になる。2Rでは、図14(B)に示すように、キャラクタ表示部67にルーレット66が表示され、該ルーレット66を女王蜂65bが操作することでルーレット66に表示される「ラッキー」と「はずれ」の文字が変動を開始する。3Rでは、図14(C)に示すように、ルーレット66が変動を続けると共に「さあ回りはじめました」の言葉を女王蜂65aが発する表示になる。4Rでは、図14(D)に示すように、女王蜂65aが「そろそろ止りますよ」の言葉を発すると共に女王蜂65bが「何が出るかな」の言葉を発する表示になり、ルーレット66の変動が低速になる。
【0040】5Rでは、ルーレット66の変動が停止して確変判定ゲームの結果が導出される。当りの場合は、図14(E)に示すように、ルーレット66の表示結果として中央に「ラッキー」の文字が停止表示され、女王蜂65aが「おめでとう確変です」の言葉を発する表示になる。一方、ハズレの場合は、図示しないが、ルーレット66の表示結果として中央に「はずれ」の文字が停止表示され、女王蜂65aが「確変、ざんねんでした」の言葉を発する表示になる。その後、6R?15Rでは、確変判定ゲームに関係しないキャラクタ(女王蜂65a・65b)の動画表示が行われる。そして、最終ラウンドとなる16Rでは、当りの場合、図14(F)に示すように、確変が決定した旨を報知する「確変獲得だよ」「おめでとう」の言葉をそれぞれ女王蜂65a・65bが発する表示になる。一方、ハズレの場合は、図示しないが、確変が決定しなかった旨を報知する「ざんねんでした」「次がんばってね」の言葉をそれぞれ女王蜂65a・65bが発する表示になる。また、確変判定ゲームを行う場合、その表示画面に表示される文字に合った音声がスピーカ26から発生される。また、実施形態中では、確変判定ゲームのキャラクタを女王蜂としているが、これに限らず、大当りを決定したリーチ変動の種類に応じてキャラクタを変えるようにしてもよい。例えば、「女王蜂」リーチで大当りした場合は、確変判定ゲームのキャラクタを女王蜂にする一方、「妖精」リーチで大当りした場合は、確変判定ゲームのキャラクタを妖精にするようにしてもよい。
【0046】図15に示す「リーチ2-2」を例に挙げて具体的な計算を説明すると、
A=(7/50)×(1/359)×(1/2)≒0.000195
B=(6/50)×(1/359)×(1/2)≒0.000167
C=(2/50)×(358/359)×(1/10.256)≒0.003889
となる。このため、「リーチ2-2」の大当り信頼度は、前記(1)の計算式より8.52%となる。同様にして、「リーチ1」は0.11%、「リーチ2-1」は1.97%、「リーチ3-1」は27.14%、「リーチ3-2-1」は34.03%、「リーチ3-2-2」は100%、「リーチ以外」は12.53%、となる。言い換えれば、リーチ選択テーブルにおけるC_RND2の振り分けにより、リーチ1(ノーマルリーチ)、リーチ2(女王蜂リーチ)、リーチ3(妖精リーチ)の順で大当り信頼度を高く設定し、然もショートリーチとロングリーチではロングリーチの方を大当り信頼度が高くなるように設定している。また、妖精のロングリーチで妖精が金色服で再登場したとき(リーチ3-2-2のとき)は、必ず確変で大当りするようになっている。このように本実施形態では、リーチ変動中のキャラクタ表示の有無、キャラクタの種類(実施形態では、女王蜂又は妖精)、及びリーチ変動の時間(キャラクタの動作)によって大当り信頼度が異なるため、キャラクタの重要性を高めることができ、リーチ変動中のキャラクタ表示の面白さを演出することができる。

摘記した上記の記載等から、引用文献Aには、
「 C_RND1(0?358)から抽出された値が「1」となり大当りが判定されると、C_RND_LINE(0?95)の抽出値により大当りとなる図柄配列(同一図柄のゾロ目)を決定して、この大当り図柄を特別可変表示装置30に表示する一方、前記C_RND1で「1」以外の値が抽出されてハズレと判定されると、C_RND_ZU1?3からの各抽出値に対応する図柄をハズレ図柄として前記特別可変表示装置30に表示するパチンコ遊技機において、前記大当り図柄が「7」の大当り図柄のときは、その時点で確変が確定する一方、前記大当り図柄が「7」以外の大当り図柄のときは、大当り中に確変判定ゲームを前記特別可変表示装置30に表示するようになっているが、その確変判定ゲームの結果は事前に決定されており、
前記特別可変表示装置30の画像表示部60に表示される特別図柄は、上段の可変表示部列に表示される上段3図柄と、中段の可変表示部列に表示される中段2図柄と、下段の可変表示部列に表示される下段3図柄と、の計8図柄から構成され、確変判定ゲームの表示画面は、ルーレット66と、該ルーレット66を動かすキャラクタを表示するキャラクタ表示部67と、大当りを決定した図柄種類68等を表示する情報表示部71とから構成され、前記確変判定ゲームの結果が当りの場合は、前記ルーレット66の表示結果として中央に「ラッキー」の文字が停止表示される一方、ハズレの場合は、前記ルーレット66の表示結果として中央に「はずれ」の文字が停止表示され、
前記特別図柄のリーチ種類は、ノーマルリーチとシスコリーチに大別され、ノーマルリーチは常にショートリーチとなる一方、シスコリーチはリーチ変動時に画像表示部60に追加表示されるキャラクタの種類によって「女王蜂」と「妖精」に分かれ、女王蜂リーチで大当りした場合は、確変判定ゲームのキャラクタを女王蜂にする一方、妖精リーチで大当りした場合は、確変判定ゲームのキャラクタを妖精にするようにし、前記当りの場合は、前記「ラッキー」の文字が停止表示され、女王蜂又は妖精が「おめでとう確変です」の言葉を発する表示になる一方、前記ハズレの場合は、前記「はずれ」の文字が停止表示され、女王蜂又は妖精が「確変、ざんねんでした」の言葉を発する表示になり、
リーチ変動中のキャラクタの種類(女王蜂又は妖精)によって大当り信頼度が異なるパチンコ遊技機。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、段落【0040】には、女王蜂65a・65bが言葉を発する表示になる実施形態が示されているが、同段落において確変判定ゲームのキャラクタを妖精にするようにしてもよいとされていることから、「女王蜂65a・65b」を「女王蜂又は妖精」と置き換えて引用発明を認定した。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「大当たり」は、本願補正発明の「遊技者にとって有利な遊技状態である特定遊技状態」に相当し、以下同様に、
「確変」は「特定遊技状態を生起させる可能性を向上させる」に、
「特別可変表示装置30」は「表示手段」に、
「パチンコ遊技機」は「遊技機」に、
「画像表示部60」は「表示領域」に、
「ノーマルリーチ」、「女王蜂リーチ」及び「妖精リーチ」は「リーチゲームモード」に、それぞれ相当する。
さらに、引用文献Aの記載や図面等からみて、以下のことがいえる。

a.引用発明は、C_RND1(0?358)から抽出された値が「1」であれば大当りが判定され、「1」以外であればハズレと判定されるから、本願補正発明の「遊技者にとって有利な遊技状態である特定遊技状態を生起させるか否かを決定するための第一の抽選」を行う抽選手段に相当する手段を備えるものといえる。
また、引用発明は、大当り中に確変判定ゲームを前記特別可変表示装置30に表示するようになっているが、その確変判定ゲームの結果は事前に決定されているのであるから、本願補正発明の「前記特定遊技状態を生起させる可能性を向上させるか否かを決定するための第二の抽選」を行う抽選手段に相当する手段を備えるものといえる。
そして、引用発明の「パチンコ遊技機」は、大当りが判定されると、大当り図柄を特別可変表示装置30に表示する一方、ハズレと判定されると、ハズレ図柄を前記特別可変表示装置30に表示するとともに、前記大当り図柄が「7」以外の大当り図柄のときは、大当り中に確変判定ゲームを前記特別可変表示装置30に表示するようになっているのであるから、本願補正発明の「前記第一の抽選の結果及び前記第二の抽選の結果のそれぞれを表示手段によって表示可能な遊技機」に相当するものということができる。

b.引用発明の特別図柄は、大当り図柄又はハズレ図柄を表示するためのものであるから、特別図柄を構成する上段の可変表示部列に表示される上段3図柄と、中段の可変表示部列に表示される中段2図柄と、下段の可変表示部列に表示される下段3図柄は、本願補正発明の「第一の表示領域」に相当する。
また、引用発明の確変判定ゲームの表示画面は、確変判定ゲームの結果が当りかハズレかの文字を停止表示するためのものであるから、本願補正発明の「第二の表示領域」に相当する。
そして、引用発明において大当り図柄又はハズレ図柄を表示することは、本願補正発明において「第一の抽選の結果を表示すること」に相当し、同様に引用発明においてルーレット66の表示結果として中央に「ラッキー」の文字又は「はずれ」の文字が停止表示されることは、本願補正発明において「第二の抽選の結果を表示すること」に相当するから、引用発明は、本願補正発明の「前記表示手段の表示領域において第一の表示領域を設定して、該第一の表示領域において前記第一の抽選の結果を表示することが可能であるとともに、前記表示手段の表示領域において第二の表示領域を設定して、該第二の表示領域において前記第二の抽選の結果を表示することが可能な表示制御手段」に相当する手段を有するものといえる。

c.引用発明における、大当り図柄又はハズレ図柄を表示することと、ルーレット66の表示結果として中央に「ラッキー」の文字又は「はずれ」の文字を停止表示することとは、明らかに異なる表示態様であるから、引用発明は、本願補正発明の「前記第一の抽選の結果及び前記第二の抽選の結果を、互いに異なる表示態様で表示」する「表示制御手段」に相当する手段を有するものといえる。

d.引用発明の「大当り図柄」は同一図柄のゾロ目であるから、引用発明において大当りが判定されると特別図柄がノーマルリーチ、女王蜂リーチ及び妖精リーチのいずれかを経ることは明らかであるとともに、「大当り図柄」が表示されるのはC_RND1から抽出された値が「1」となり大当りが判定された場合(本願補正発明の「前記抽選手段が行った前記第一の抽選の結果が、前記特定遊技状態を生起させることが決定されたことを示す特定の結果となった場合」に相当)であるから、上記b.で述べたことを考え合わせると、引用発明と本願補正発明は、“前記抽選手段が行った前記第一の抽選の結果が、前記特定遊技状態を生起させることが決定されたことを示す特定の結果となった場合に、前記表示手段の前記表示領域において前記第一の表示領域を設定して、該第一の表示領域において、複数のリーチゲームモードのうちから選択された一のリーチゲームモードを表示して、複数の図柄の組合せによって前記特定の結果を表示”する点で共通している。
さらに、引用発明においては、大当り図柄が「7」以外の大当り図柄のときは、大当り中に確変判定ゲームを前記特別可変表示装置30に表示するようになっており、女王蜂リーチで大当りした場合は、確変判定ゲームのキャラクタを女王蜂にする一方、妖精リーチで大当りした場合は、確変判定ゲームのキャラクタを妖精にするとともに、女王蜂又は妖精が「おめでとう確変です」や「確変、ざんねんでした」の言葉を発する表示になるようにしているから、上記a.及びb.で述べたことを考え合わせると、引用発明と本願補正発明は、“前記特定の結果を表示した後に、前記表示手段の前記表示領域において前記第二の表示領域を設定して、該第二の表示領域において、前記一のリーチゲームモードに対応するキャラクタと同一のキャラクタに係るキャラクタアクションによって前記第二の抽選の結果を表示する場合がある”点で共通している。

e.引用発明は、リーチ変動中のキャラクタの種類が女王蜂であるか妖精であるかによって大当り信頼度が異なっており、キャラクタの種類が女王蜂であるリーチとキャラクタの種類が妖精であるリーチは、本願補正発明の「複数のリーチゲームモード」に相当し、大当り信頼度が異なるということは、大当りの場合(本願補正発明の「第一の抽選の結果が前記特定の結果となった場合」に相当)に、キャラクタの種類が女王蜂であるリーチとキャラクタの種類が妖精であるリーチが選択される確率が異なるということにほかならないから、引用発明は、本願補正発明の「前記第一の抽選の結果が前記特定の結果となった場合における前記複数のリーチゲームモードのそれぞれが選択される確率を、該複数のリーチゲームモードで異ならせている」に相当する機能を有するものといえる。

以上を総合すると、両者は、
「 遊技者にとって有利な遊技状態である特定遊技状態を生起させるか否かを決定するための第一の抽選と、前記特定遊技状態を生起させる可能性を向上させるか否かを決定するための第二の抽選と、を行う抽選手段を備え、前記第一の抽選の結果及び前記第二の抽選の結果のそれぞれを表示手段によって表示可能な遊技機において、
前記表示手段の表示領域において第一の表示領域を設定して、該第一の表示領域において前記第一の抽選の結果を表示することが可能であるとともに、前記表示手段の表示領域において第二の表示領域を設定して、該第二の表示領域において前記第二の抽選の結果を表示することが可能な表示制御手段を備え、
前記表示制御手段は、
前記第一の抽選の結果及び前記第二の抽選の結果を、互いに異なる表示態様で表示し、
前記抽選手段が行った前記第一の抽選の結果が、前記特定遊技状態を生起させることが決定されたことを示す特定の結果となった場合に、
前記表示手段の前記表示領域において前記第一の表示領域を設定して、該第一の表示領域において、複数のリーチゲームモードのうちから選択された一のリーチゲームモードを表示して、複数の図柄の組合せによって前記特定の結果を表示した後に、
前記表示手段の前記表示領域において前記第二の表示領域を設定して、該第二の表示領域において、前記一のリーチゲームモードに対応するキャラクタと同一のキャラクタに係るキャラクタアクションによって前記第二の抽選の結果を表示する場合があり、
前記第一の抽選の結果が前記特定の結果となった場合における前記複数のリーチゲームモードのそれぞれが選択される確率を、該複数のリーチゲームモードで異ならせている遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明は「特定の結果を表示した後に、」「第二の抽選の結果を表示する」のに対し、引用発明は、大当り図柄が「7」以外の大当り図柄のときは、大当り中に確変判定ゲームを前記特別可変表示装置30に表示するようになっているものの、大当り図柄が「7」の大当り図柄のときは、その時点で確変が確定する、すなわち、その後の大当り中に確変判定ゲームを前記特別可変表示装置30に表示しない点。

[相違点2]本願補正発明は「それぞれのリーチゲームモードにおいて当該リーチゲームモードに対応するキャラクタが表示され」、「第二の表示領域において、前記一のリーチゲームモードに対応するキャラクタと同一のキャラクタ」等を表示して第二の抽選の結果を表示するのに対し、引用発明は、女王蜂リーチ及び妖精リーチにおいては、それぞれ「女王蜂」及び「妖精」が追加表示され、女王蜂リーチ又は妖精リーチで大当りした場合の確変判定ゲームでは、それぞれ女王蜂又は妖精が「おめでとう確変です」や「確変、ざんねんでした」の言葉を発する表示になるものの、ノーマルリーチにおいてキャラクタが追加表示されるか明らかでなく、ノーマルリーチで大当りした場合の確変判定ゲームでキャラクタが抽選の結果を表示するのに関わっているか不明である点。

[相違点3]本願補正発明は「第一の表示領域を縮小するとともに、前記表示手段の前記表示領域において前記第二の表示領域を設定」するのに対し、引用発明の「確変判定ゲームの表示画面」には、情報表示部71に大当りを決定した図柄種類68を表示するものの、該表示は特別図柄を縮小したものではない点。

[相違点4]本願補正発明は「第二の表示領域において、前記一のリーチゲームモードに対応するキャラクタと同一のキャラクタと、前記複数のリーチゲームモードのうち他のリーチゲームモードに対応するキャラクタと同一のキャラクタとの対戦に係るキャラクタアクションを表示して、該キャラクタアクションに係る対戦の結果によって前記第二の抽選の結果を表示」するのに対し、引用発明の「確変判定ゲームの表示画面」には、女王蜂リーチで大当りした場合に、女王蜂と他のキャラクタとの対戦に係るキャラクタアクションを表示して、該キャラクタアクションに係る対戦の結果によって当りハズレを表示するものではなく、妖精リーチで大当りした場合に、妖精と他のキャラクタとの対戦に係るキャラクタアクションを表示して、該キャラクタアクションに係る対戦の結果によって当りハズレを表示するものでもない点。

(4)相違点の判断
[相違点1について]
大当り図柄では確率変動が発生するか否か分からず、その後の表示によって確率変動が発生するか否かを遊技者に知らせるようにすることは、例えば、特開平8-229223号公報(以下「引用文献B」という。特に、図37及び段落【0041】)や特開平10-33769号公報(特に、段落【0016】【0029】?【0032】)に記載されるように、遊技機の分野において従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
よって、引用発明に周知技術1を適用し、大当り図柄が「7」の大当り図柄のときも、確率変動が発生するか否か分からないようにするとともに、その後確変判定ゲームを行い確率変動が発生するか否かを遊技者に知らせるようにして、上記相違点1に係る本願補正発明のような構成とすることは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到し得る。

[相違点2について]
全てのリーチにおいてキャラクタが表示されるようにすることは、例えば、特開平8-173602号公報(特に、段落【0095】【0136】?【0140】)、特開平10-151245号公報(特に、段落【0060】)及び特開平10-216316号公報(特に、段落【0060】【0061】)に記載されるように、遊技機の分野において従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。
よって、引用発明に周知技術2を適用し、ノーマルリーチにおいてもキャラクタが追加表示されるようにするとともに、ノーマルリーチで大当りした場合の確変判定ゲームで、その追加されたキャラクタが「おめでとう確変です」や「確変、ざんねんでした」の言葉を発する表示を行うようにして、上記相違点2に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。

[相違点3について]
特別図柄を縮小表示して、特別図柄以外の表示領域を設定することは、例えば、引用文献B(特に、図37及び段落【0041】)及び特開2000-245918号公報(特に、段落【0046】)に記載されるように、遊技機の分野において従来周知の技術(以下「周知技術3」という。)である。
よって、引用発明に周知技術3を適用し、情報表示部71に大当りを決定した図柄種類68を表示するのに代えて、情報表示部71に大当り図柄を縮小表示して、上記相違点3に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。

[相違点4について]
パチンコ遊技機において2つのキャラクタが戦った結果によって確率変動の有無を表示することは、例えば、特開平6-190118号公報(特に、段落【0036】?【0039】)及び特開平10-99497号公報(特に、段落【0232】)に記載されるように、従来周知の技術(以下「周知技術4」という。)である。
よって、引用発明に周知技術4を適用し、引用発明の「確変判定ゲームの表示画面」に、女王蜂リーチで大当りした場合に、女王蜂と他のキャラクタとの対戦に係るキャラクタアクションを表示して、該キャラクタアクションに係る対戦の結果によって当りハズレを表示し、また、妖精リーチで大当りした場合に、妖精と他のキャラクタとの対戦に係るキャラクタアクションを表示して、該キャラクタアクションに係る対戦の結果によって当りハズレを表示するようにして、上記相違点4に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。

[相違点の判断のまとめ]
本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術1?4から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術1?4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成23年7月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年3月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 遊技者にとって有利な遊技状態である特定遊技状態を生起させるか否かを決定するための第一の抽選と、前記特定遊技状態を生起させる可能性を向上させるか否かを決定するための第二の抽選と、を行い、前記第一の抽選の結果及び前記第二の抽選の結果のそれぞれを表示手段によって表示可能な遊技機において、
前記表示手段の表示領域において第一の表示領域を設定して、該第一の表示領域において前記第一の抽選の結果を表示することが可能であるとともに、前記表示手段の表示領域において第二の表示領域を設定して、該第二の表示領域において前記第二の抽選の結果を表示することが可能な表示制御手段を備え、
前記表示制御手段は、
前記第一の抽選の結果及び前記第二の抽選の結果を、互いに異なる表示態様で表示し、
前記第一の抽選の結果が、前記特定遊技状態を生起させることが決定されたことを示す特定の結果となった場合に、
前記表示手段の前記表示領域において前記第一の表示領域を設定して、該第一の表示領域において前記特定の結果を表示した後に、
該第一の表示領域を縮小するとともに、前記表示手段の前記表示領域において前記第二の表示領域を設定して、該第二の表示領域において前記第二の抽選の結果を表示することを特徴とする遊技機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用文献記載事項
審判合議体が通知した拒絶理由における引用文献A及びその記載事項は、上記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比及び判断
本願発明は、上記「第二.」で検討した本願補正発明から、「抽選手段」を備える点、「それぞれのリーチゲームモードにおいて当該リーチゲームモードに対応するキャラクタが表示される複数のリーチゲームモードのうちから選択された一のリーチゲームモードを表示して、複数の図柄の組合せによって」特定の結果を表示する点、「前記一のリーチゲームモードに対応するキャラクタと同一のキャラクタと、前記複数のリーチゲームモードのうち他のリーチゲームモードに対応するキャラクタと同一のキャラクタとの対戦に係るキャラクタアクションを表示して、該キャラクタアクションに係る対戦の結果によって」第二の抽選の結果を表示する点、及び「前記第一の抽選の結果が前記特定の結果となった場合における前記複数のリーチゲームモードのそれぞれが選択される確率を、該複数のリーチゲームモードで異ならせている」点の構成を省いたものといえる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第二.3.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術1?4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術1、3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、相違点2及び4は、平成23年7月15日付けの手続補正によって生じたものであるから、周知技術2及び4は不要である。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1、3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第四.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項2?4)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-31 
結審通知日 2011-09-06 
審決日 2011-09-20 
出願番号 特願2000-365732(P2000-365732)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
P 1 8・ 561- WZ (A63F)
P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 572- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 納口 慶太  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 吉村 尚
澤田 真治
発明の名称 遊技機  
代理人 森 哲也  
代理人 田中 秀▲てつ▼  

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