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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1246043
審判番号 不服2010-19318  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-26 
確定日 2011-11-04 
事件の表示 特願2004-234352「ポリカーボネート樹脂製直下型バックライト用光拡散板」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 2日出願公開、特開2005-234521〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1. 経緯
本願は、平成16年8月11日の出願(国内優先権主張 平成16年1月20日)であって、平成19年5月11日付けて刊行物提出書が提出された後に、平成21年10月21日付けで拒絶理由が通知され、それに対して、同年12月22日付けで意見書および手続補正書が提出され、その後、平成22年5月25日付けで拒絶査定がなされ、それに対して同年8月26日付けで審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正書が提出され、平成23年5月17日付けで審尋送付、同年7月19日に回答書が提出されたものである。


第2.平成22年8月26日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成22年8月26日付け手続補正を却下する。

[理由]
1. 補正内容及び補正後の本願発明
平成22年8月26日付けでなされた補正(以下「本件補正」という。)には、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正しようとする事項が含まれている。

(補正前)
「【請求項1】
ポリカーボネート樹脂99.8?80重量部および平均粒径0.1?50μmの(メタ)アクリル樹脂またはシリコーン樹脂からなる有機微粒子状の光拡散剤0.2?20重量部の合計100重量部からなる厚み0.5?8mmのポリカーボネート樹脂製シートの少なくとも一方の面に下記(i)または(ii)の紫外線吸収剤含有樹脂被覆層を積層したことを特徴とするポリカーボネート樹脂製直下型バックライト用光拡散板。
(i)(A)アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂またはシリコン樹脂(a成分)および(B)紫外線吸収剤(b成分)からなる厚さ1?20μmの層であって、a成分100重量部に対してb成分0.5?30重量部である
(ii)(C)アクリル系モノマー(c-1成分)と紫外線吸収剤残基を有するアクリル系モノマー(c-2成分)とのアクリル系共重合体からなる厚さ1?20μmの層であって、c-1成分とc-2成分との割合がモル比で95:5?50:50である」


(補正後)
「【請求項1】
ポリカーボネート樹脂99.8?80重量部および平均粒径0.1?50μmの(メタ)アクリル樹脂またはシリコーン樹脂からなる有機微粒子状の光拡散剤0.2?20重量部の合計100重量部からなる厚み0.5?8mmのポリカーボネート樹脂製シートの少なくとも一方の面に下記(ii)の紫外線吸収剤含有樹脂被覆層を積層したことを特徴とするポリカーボネート樹脂製直下型バックライト用光拡散板。
(ii)(C)アクリル系モノマー(c-1成分)と紫外線吸収剤残基を有するアクリル系モノマー(c-2成分)とのアクリル系共重合体からなる厚さ1?20μmの層であって、c-1成分とc-2成分との割合がモル比で95:5?50:50である」


(補正の目的の検討)
上記補正事項は、
補正前の請求項1に係る発明で選択的に記載されていた紫外線吸収剤含有樹脂被覆層の材料(i)、(ii)のうち、(i)に関する記載である「(i)(A)アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂またはシリコン樹脂(a成分)および(B)紫外線吸収剤(b成分)からなる厚さ1?20μmの層であって、a成分100重量部に対してb成分0.5?30重量部である」点を削除し、
上記削除に合わせて、補正前の「下記(i)または(ii)」の記載を「下記(i)」と変更するものである。

上記補正事項は補正前の請求項1において、選択的に記載された構成の一部を削除するものであり、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。

2. 独立特許要件ついて
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(前記「1.」「(補正後)」参照。以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(1)刊行物1
本願の優先日前に日本又は外国で頒布された特開平03-236958号公報(平成21年10月21日付け拒絶理由通知における引用例5。以下、「刊行物1」という。)には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

(1a)
「[産業上の利用分野]
本発明は、内照式看板、誘導灯、ディスプレイ、照明器具あるいは液晶表示装置等に用いる面光源装置の照光面に適した合成樹脂拡散シートおよびその製造方法に関するものである。
[従来の技術]
光源を内蔵する面光源装置は、内照式看板や液晶式ディスプレイあるいは照明器具等に広く利用されている。このような装置は、ボックスの底面に反射層を備え、蛍光灯などの光源を内蔵しかつ正面に拡散板を配置したものが一般的に使用されている。ところが、このような装置の奥行が十分に大きいときはあまり問題にならないものの、奥行を小さくして薄型にすると光源である蛍光灯などのイメージが目視され全体として均一な光量を有する照明器具はえられ難い。
このような欠点を解消するためには、拡散板の拡散性能を向上させることが考えられるが、このようにすると必然的に光の透過率が低下してしまい、面全体が暗くなる憾みがある。」(第2頁左上欄第4行-右上欄第3行)

(1b)
「 [課題を解決するための手段]
すなわち、本発明の要旨とするところは、
光拡散剤を配合した合成樹脂基板の少なくとも一面に、光の拡散性ないしは透過性に分布をもたせた合成樹脂フィルムを積層し一体化したことを特徴とする合成樹脂拡散シートを第1番目の発明とし、
前記合成樹脂基板と、合成樹脂フィルムを積層するに当り両者を熱接着、溶剤接着、あるいは重合接着により一体化する方法を第2番目の発明とし、
さらにアクリル系樹脂フィルムを用い、これをアクリル系合成樹脂基板を構成するアクリル系樹脂の原料である単量体または部分重合体によって一部膨潤ないし溶解させて一体化する方法を第3番目の発明とすることにある。
本発明において使用される合成樹脂基板を構成するポリマーとしては、たとえば、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂およびポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましく使用される。」(第2頁左下欄第2行-右下欄第1行)

(1c)
「 本発明における前記合成樹脂基板としては、光拡散剤を配合し、シートないし板状体に成形したときの全光線透過率が15ないし50%、輝度分布の形状係数が0.6以上の熱可塑性樹脂から成形されたシートないし板状体が好ましく使用される。 すなわち、本発明における合成樹脂基板とは、通常シートとして認識される薄い厚みの板状体から、5mm程度の厚みを有する板状体までを広く意味するものである。
光拡散剤としては、該合成樹脂と屈折率が異なる無機および/または有機の透明微粒子が好ましく使用される。 光拡散剤として使用される透明微粒子としては、たとえば、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子、または透明な合成樹脂製の微粒子、たとえば、スチレンやスチレンとメタクリル酸メチルを架橋モノマーの存在下に共重合させたポリマービーズなどを一例として挙げることができる。」(第2頁右下欄第2行-第3頁左上欄第3行)

(1d)
「本発明の拡散シートの積層構造の一例を示す第1図において、(a)は合成樹脂基板(2)の片面に積層一体化された合成樹脂フィルム(1)の内面に、光の拡散性ないしは透過性に分布をもたせるための光拡散層(3)が形成された拡散シートを表わす。該フィルム(1)は基板の片面だけでなく両面に形成することができ、さらに、光拡散層(3)もフィルム(1)の内面だけでなく、外面あるいは両面にも形成することができる」(第5頁右下欄第2-10行)

(1e)
「参考例
光の拡散性ないし透過性に分布を有する光拡散層が形成されているアクリル系樹脂フィルム メチルメタクリレート60重量%と、ブチルアクリレート39重量%と、紫外線吸収剤として2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール1重量%からなる透明な共重合体フィルム(厚さ74μ)に、酸化チタン微粒子を主成分とする白色インキを用い、グラビア印刷を行って、第2図(a)および(b)に示す如き直線状または輪状で中央が濃くその側方が徐々に薄くなるようにぼかし状のパターンを印刷した。得られたフィルムのXY断面での全光線透過率を測定したところ、第3図(a)および(b)に示す如き結果が得られた。」(第6頁左上欄第16行-同頁右上欄第10行)

(1f)
「実施例2
ポリカーボネート樹脂板(三菱レイヨン製、2mm厚)および実施例1で使用した塩化ビニル樹脂板に、それぞれ参考例で得られたアクリル系樹脂フィルムを載置し、鏡面研磨した金属板の間に重ね合わせ、金属板の温度180℃、プレス圧12kg/cm^(2)の条件下で加熱プレスを行い、一体化して拡散シートを製造した。」(第6頁左下欄第1-8行)

(1g)
「第1図


第1図(a)?(b)は、拡散シートの積層構造を示す。図中、1は合成樹脂フィルムを、2は合成樹脂基板をそれぞれ示す。第1図(b)には、合成樹脂基板の両面に合成樹脂フィルムを形成した積層構造が示されている。

(1h)
「第5図


上記第5図は、拡散シートAを取り付けた面光源ボックスBを示す。図中のCは蛍光灯である。

これらの記載事項によれば、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ポリカーボネート樹脂および透明な合成樹脂製の微粒子からなる光拡散剤からなる厚さ2mmのポリカーボネート樹脂製の合成樹脂基板の少なくとも一方の面にメチルメタクリレートと、ブチルアクリレートと、紫外線吸収剤として2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールとからなるアクリル系樹脂フィルムを積層したポリカーボネート樹脂製直下型バックライト用光拡散板 」


(2)刊行物2
本願の優先日前に日本又は外国で頒布された特開2001-214049号公報(平成22年5月22日付け拒絶査定における周知例1。以下、「刊行物2」という。)には以下の事項が記載されている。

(2a)
「【請求項1】 (A)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)80?99.995重量%、および(B)高分子微粒子(B成分)0.005?20重量%からなるポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対し、(C)下記一般式(1)で表される化合物(c-1成分)、下記一般式(2)で表される化合物(c-2成分)、下記一般式(3)で表される化合物(c-3成分)より選ばれた少なくとも一種以上の特定のリン系安定剤(C成分)0.0001?0.05重量部、(D)トリメチルホスフェート(D成分)0.001?1.0重量部、(E)ヒンダードフェノール系化合物(E成分)0.001?1.0重量部および(F)蛍光増白剤(F成分)0?0.5重量部を含んでなる光拡散性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。……」

(2b)
「【0002】
【従来の技術】従来より各種照明カバー、透過型ディスプレイ用の光拡散板、自動車メーター用の拡散板、各種銘板などの光拡散性が要求される用途に、芳香族ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂のごとく透明性樹脂に有機物や無機物の光拡散剤を分散させた材料が広く用いられている。この様な透明性樹脂の中で特に芳香族ポリカーボネート樹脂は機械的特性、耐熱性、耐候性に優れている上、高い光線透過率を備えた樹脂として幅広く使用されている。また光拡散剤としては、架橋構造を有する有機系粒子があり、さらに詳しくは架橋アクリル系粒子、架橋シリコン系粒子や架橋スチレン系粒子などが挙げられる。さらに炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化チタン、弗化カルシウムなどの無機系粒子あるいはガラス短繊維などの無機系繊維がある。特に有機系粒子は無機系粒子に比べて成形品の表面平滑性に優れているおり高度な成形品外観を達成できるため、幅広い用途に適用可能である。」

(2c)
「【0038】本発明のB成分である高分子微粒子は、光拡散性の観点から球状であるものが好ましく、真球状に近い形態であるほどより好ましい。更に高分子微粒子としては非架橋性モノマーに架橋性モノマーを重合して得られる有機架橋粒子を挙げることができる。非架橋性モノマーとしてはアクリル系モノマー、スチレン系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、オレフィン系モノマーなどを挙げることができる。これらは単独でも2種以上を混合して使用することもできる。更にかかるモノマー以外の他の共重合可能なモノマーを使用することもできる。他の有機架橋粒子としては、シリコーン系架橋粒子を挙げることができる。一方、ポリエーテルサルホン粒子等の非晶性耐熱ポリマーの粒子も本発明の高分子微粒子として挙げることができる。かかるポリマーの粒子の場合には、A成分と加熱溶融混練した場合であっても微粒子の形態が損なわれることがないため、必ずしも架橋性モノマーを必要としない。」

(2d)
「【0040】またかかるB成分の平均粒子径としては、0.01?50μmのものが使用され、好ましくは0.1?10μm、より好ましくは0.1?8μmのものが使用される。また粒径の分布については狭いものが好ましく、平均粒径±2μmである粒子が全体の70重量%以上の範囲である分布を有するものがより好ましい。」

(3)刊行物3
本願の優先日前に日本又は外国で頒布された特開2003-302629号公報(平成21年10月21日付け拒絶理由通知における引用例1。以下、「刊行物3」という。)には以下の事項が記載されている。

(3a)
「【請求項1】 面光源ユニットの出光面側に配設するための光拡散フィルムであって、紫外線吸収性を有する光拡散フィルム。
【請求項2】 互いに屈折率の異なる複数の樹脂で構成された光拡散層(1)と、この光拡散層の少なくとも一方の面に積層された透明樹脂層(2)とで構成され、少なくとも透明樹脂層(2)が紫外線吸収剤を含有する請求項1の紫外線吸収性光拡散フィルム。」

(3b)
「【0006】しかし、従来の液晶表示装置では、蛍光管などの管状光源から紫外線が漏洩し、面光源ユニットの構成部材(例えば、前記の拡散シート、プリズムシート、輝度向上シート(反射型偏向板ほか)、偏向板、位相差板、液晶物質やカラーフィルター)が長期にわたる使用で劣化する。」

(3c)
「【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討の結果、面光源ユニットの出光面上に、光拡散性及び紫外線吸収性を備えたフィルムを配設すると、低コストで紫外線の漏洩を確実かつ長期間に亘り高い信頼性で防止でき、漏洩する紫外線から、面光源装置及び液晶セルなどの各種構成部材を有効に保護して液晶表示装置の機能の劣化を防止できることを見いだし、本発明を完成した。
【0014】すなわち、本発明の光拡散フィルムは、面光源ユニットの出光面側に配設するための光拡散フィルムであって、この光拡散フィルムが、前記面光源ユニットから漏洩する紫外線を吸収するための紫外線吸収性を有している。このフィルムは、互いに屈折率の異なる複数の樹脂で構成された光拡散層(1)と、この光拡散層の少なくとも一方の面に積層された透明樹脂層(2)とで構成でき、紫外線吸収剤は、光拡散層及び/又は透明樹脂層に含有させることができ、通常、少なくとも透明樹脂層(2)に含有されている。このような積層フィルムのうち透明樹脂層(2)を面光源ユニットの出光面上に配置することにより、(1)光拡散層をも有効に保護してより安定に紫外線漏洩防止を達成できる。」

(3d)
「【0020】本発明の光拡散フィルムは、面光源ユニットの出光面側に配設され、かつ光拡散性と紫外線吸収性とを備えていればよい。このような光拡散フィルムは互いに屈折率の異なる複数の樹脂と紫外線吸収剤とで構成でき、少なくとも光拡散層を備えている。この光拡散層は、連続相(樹脂連続相、マトリックス樹脂)と、この連続相中に分散した分散相(粒子状、繊維状分散相などの散乱因子)と、必要により紫外線吸収剤とで構成されており、前記連続相と分散相とは、互いに屈折率が異なる。また、連続相および分散相は、通常、互いに非相溶又は難相溶であり、透明性物質で形成できる。【0021】光拡散フィルムは、光拡散層単独で形成された単層構造に限らず、光拡散層と透明層との積層体で構成してもよく、透明層としては、樹脂層に限らず種々の透明基材(例えば、ガラスなど)が使用できる。また、紫外線吸収性は、光拡散フィルムを構成する種々の層に紫外線吸収剤を含有させる形態に限らず、紫外線吸収剤を含む塗膜を形成することにより付与してもよい。」

(3e)
「【0038】光拡散フィルムを構成する樹脂(連続相及び/又は分散相を構成する樹脂)には、熱可塑性樹脂(オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ハロゲン含有樹脂(フッ素系樹脂を含む)、ビニルアルコール系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6-キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)など)、および熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂など)などが含まれる。好ましい樹脂は熱可塑性樹脂である。」

(3f)
「【0051】分散相(光散乱因子)は、マトリックス樹脂に対する無機又は有機の微粒子や繊維の添加、マトリックス樹脂に対する屈折率の異なる樹脂の添加及び混練などにより形成できる。無機又は有機微粒子としては、無機酸化物(シリカ、アルミナ、酸化チタンなど)、炭酸塩(炭酸カルシウムなど)、硫酸塩(硫酸バリウムなど)、天然鉱物又はケイ酸塩(タルクなど)などの無機粒子;架橋ポリスチレンビーズなどの架橋スチレン系樹脂、架橋ポリメタクリル酸メチルなどの架橋アクリル系樹脂、架橋グアナミン系樹脂などの架橋樹脂粒子などが例示できる。繊維状分散相には、有機繊維、無機繊維などが含まれる。有機繊維は、耐熱性有機繊維、例えば、アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリイミド繊維などであってもよい。無機繊維としては、例えば、繊維状フィラー(ガラス繊維,シリカ繊維,アルミナ繊維,ジルコニア繊維などの無機繊維)、薄片状フィラー(マイカなど)などが挙げられる。」

(4)刊行物4
本願の優先日前に日本又は外国で頒布された特開2003-100127号公報(平成21年10月21日付け拒絶理由通知における引用例4。以下、「刊行物4」という。)には以下の事項が記載されている。

(4a)
「【0002】
【従来の技術】液晶表示装置は、液晶層を背面から照らして発光させるバックライト方式が普及し、液晶層の下面側にエッジライト型、直下型等のバックライトユニットが装備されている。かかるエッジライト型のバックライトユニット40は、一般的には図5に示すように、光源としての棒状のランプ41と、このランプ41に端部が沿うように配置される方形板状の導光板43と、この導光板43の表面側に積層された複数枚の光学シート42と、導光板43の裏面側に積層された反射シート46とを装備している。この光学シート42は、それぞれ、屈折、拡散等の特定の光学的性質を有するものであり、具体的には、導光板43の表面側に配設される光拡散シート44、光拡散シート44の表面側に配設されるプリズムシート45などが該当する。」

(4b)
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の反射シート46を用いたバックライトユニット40を使用すると、径時的に反射シート46に黄変等が生じ、これに伴いバックライト画面が黄色みを帯びる、輝度が低下する等の品質の低下を招来している。【0007】本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、黄変等の経時的な劣化を起こさない反射シート、及び、かかる反射シートを用いて輝度の向上及び径時的な品質低下の防止を図ることができるバックライトユニットの提供を目的とするものである。【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、前述の反射シートの黄変等の経時的な劣化は、ランプから発せられる光線に含まれる微量の紫外線がその主要因であることを見いだした。【0009】その結果、上記課題を解決するためになされた発明は、白色合成樹脂製の基材シート層を備え、光線の放散を低減するバックライトユニット用の反射シートであって、この基材シート層の表面側に紫外線吸収層を備えていることを特徴とするものである。
【0010】当該反射シートによれば、基材シート層の表面側に積層される紫外線吸収層によってランプから発せられる微量の紫外線を吸収し、上記黄変等の経時的な劣化を防止することができる。【0011】上記紫外線吸収層は、基材ポリマーと、この基材ポリマー中に含まれる紫外線吸収剤とを有するとよい。この手段によれば、紫外線吸収層が内部に含有する紫外線吸収剤によって紫外線吸収機能を有効に発揮することができる。また、紫外線吸収剤が基材ポリマー中に含有し、保護されているため、当該反射シートの保存運搬時、バックライトユニットの組み付け作業時又は使用時における紫外線吸収剤の欠落等を防止できる。
【0012】上記紫外線吸収剤の基材ポリマーに対する含有量としては0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。紫外線吸収層を構成する基材ポリマーに対して紫外線吸収剤をこの程度配合することで、反射シートの上記黄変防止作用を効果的に奏することができる。
【0013】上記紫外線吸収剤としては、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群より選択される1種又は2種以上のものを用いるとよい。これらの紫外線吸収剤は、紫外線吸収機能が高く、ポリマーとの相溶性や熱的安定性も良好であるため、当該反射シートの光劣化、特に黄変の防止に好適である。
【0014】また、上記紫外線吸収層は、分子鎖に紫外線吸収基が結合した基材ポリマーを有するとよい。この手段によれば、紫外線吸収層を構成する基材ポリマーの分子鎖に結合した紫外線吸収基によって紫外線が吸収され、上記黄変等の経時的な劣化を防止することができる。また、紫外線吸収機能を有するものが官能基として基材ポリマーの分子鎖に組み込まれていることから、紫外線吸収機能の持続性が格段に向上する。【0015】さらに、上記紫外線吸収層中に紫外線安定剤又は分子鎖に紫外線安定基が結合した基材ポリマーを有してもよい。この手段によれば、紫外線によって発生するラジカル、活性酸素等が紫外線吸収層中に有する紫外線安定剤又は紫外線安定基により不活性化(分解、捕捉等)され、紫外線吸収層ひいては当該反射シート劣化を低減することができる。」

(4c)
「【0033】なお、紫外線吸収層3は、分子鎖に紫外線吸収基を有する基材ポリマー(例えば、(株)日本触媒の「ユーダブルUV」シリーズなど)から形成することも可能である。このように、紫外線吸収層3に分子鎖に紫外線吸収基を有する基材ポリマーを用いることで、紫外線吸収剤のブリードアウト等による紫外線吸収機能の劣化を防止することができる。また、この紫外線吸収基が結合された基材ポリマー中にさらに紫外線吸収剤を含有することで、紫外線吸収層3の紫外線吸収機能をより向上させることができる。」


(5)対比
本願補正発明と刊行物1記載の発明とを比較する。
刊行物1記載の発明の「透明な合成樹脂製の微粒子」、「ポリカーボネート樹脂製の合成樹脂基板」および「紫外線吸収剤を含有したアクリル系樹脂フィルム」は、本願補正発明1の「有機微粒子状の光拡散剤」、「ポリカーボネート樹脂製シート」および「紫外線吸収剤含有樹脂被覆層」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「ポリカーボネート樹脂および有機微粒子状の光拡散剤からなる厚み0.5?8mmのポリカーボネート樹脂製シートの少なくとも一方の面に紫外線吸収剤含有樹脂被覆層を積層したポリカーボネート樹脂製直下型バックライト用光拡散板」
で、一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明1では、ポリカーボネート樹脂製シートを構成するポリカーボネート樹脂が「99.8?80重量部」であり、有機微粒子状の光拡散剤が「平均粒径0.1?50μmの(メタ)アクリル樹脂またはシリコーン樹脂」で「0.2?20重量部」の割合であるのに対して、刊行物1記載の発明では、該当する構成が記載されていない点。

(相違点2)
本願補正発明1では、紫外線吸収剤含有樹脂被覆層が「(ii)(C)アクリル系モノマー(c-1成分)と紫外線吸収剤残基を有するアクリル系モノマー(c-2成分)とのアクリル系共重合体からなる厚さ1?20μmの層であって、c-1成分とc-2成分との割合がモル比で95:5?50:50である」のに対して、刊行物1記載の発明ではアクリル系モノマーであるメチルメタクリレートおよびブチルアクリレートと紫外線吸収剤とを用いることしか記載されていない点。

(6)検討
(6-1)(相違点1)について
刊行物2には、ポリカーボネート樹脂に有機微粒子状の光拡散剤を用いて透過型液晶ディスプレイ用の光拡散板を構成する際に、当該有機微粒子状の光拡散剤として、架橋アクリル系粒子、架橋シリコン系粒子を、該ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.005?20重量%用いること、当該粒子の平均粒径を0.1?50μm程度とすること、が記載されている。(上記(2a)?(2d)参照)
刊行物1記載の発明も、透過型の液晶ディスプレイに用いられるバックライト用の光拡散板であることから、当該刊行物1記載の発明において、ポリカーボネート樹脂製シートに有機微粒子状の光拡散剤を用いる際に、上記刊行物2の記載された材料や、当該記載程度の含有量や平均粒径を採用することに格別の困難性はない。そして、本願補正発明1に記載されたポリカーボネート樹脂の割合や有機微粒子状の光拡散剤に関する数値範囲に臨界的意義は見出せない。

(6-2)(相違点2)について
刊行物3には、液晶表示装置の面光源ユニット(本願補正発明1の「バックライト」に相当)で用いられるマトリックス樹脂中に粒子を分散させた光拡散板において、蛍光管からの紫外光により長期にわたる使用で前記光拡散板を含むバックライトの構成部材の劣化が生じる課題、および、当該課題を紫外線吸収剤を含む透明樹脂層を用いることにより解決することが記載されている。(上記(3a)?(3f)参照)
上記刊行物3の記載から刊行物1記載の発明における紫外線吸収剤含有樹脂被覆層も上記刊行物3に記載された課題を解決していることは当業者ならばすぐに気が付く程度の事項である。
そして、刊行物4には、バックライトの構成部材である反射シートにおいて、経時的に生じる黄変等の劣化を防止するために用いる紫外線吸収層において、分子鎖に紫外線吸収基を有する基材ポリマーを用いること、特に、(株)日本触媒の「ユーダブルUV」シリーズを用いることが記載されている。前置において提示された周知例である特開2002-090515号公報(特に【0030】)から、上記(株)日本触媒の「ユーダブルUV」シリーズが分子鎖に紫外線吸収基を有するアクリル系樹脂であると認められる。

刊行物1記載の発明において、上記刊行物3,4の記載に基づいて、紫外線吸収剤含有樹脂被覆層の樹脂材料として、(株)日本触媒の「ユーダブルUV」シリーズなどの分子鎖に紫外線吸収基を有するアクリル系樹脂を用いることは、それぞれが、バックライトユニットの構成部材の紫外線による劣化を防止する点で課題が共通していることから、格別の困難性はない。そして、上記樹脂材料を採用する際に、ポリカーボネート樹脂の経時劣化を防止する目的を果たすために、紫外線吸収基を有する基材ポリマーの含有量や、紫外線吸収剤含有樹脂被覆層の厚さを、使用する光源の特性に応じて変化する紫外線量に鑑みて調整することは当業者が当然行う事項にすぎず、さらに、本願補正発明1に記載された数値範囲に臨界的意義は見出せない。

(7)進歩性についてのむすび
以上の通りであるから、本願補正発明1は、刊行物1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.補正の却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
(1)本願発明
平成22年8月26日付けの手続補正は上述のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正前の平成21年12月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。(上記「第2」[理由]1.(補正前)参照)

(2)刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例5,1および4の記載事項は、前記「第2」[理由]2.(1),(3)および(4)に記載した刊行物1,3および4のとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、本願補正発明に紫外線吸収剤含有樹脂被覆層の材料(i)に関する「(i)(A)アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂またはシリコン樹脂(a成分)および(B)紫外線吸収剤(b成分)からなる厚さ1?20μmの層であって、a成分100重量部に対してb成分0.5?30重量部である」点を選択的に付加したものである。

したがって、本願発明と刊行物1記載の発明とを比較した際の相違点は、本願補正発明と同じく「第2」[理由]2.(5)の(相違点1)および(相違点2)である。
上記(相違点1)は、原査定で提示された、「第2」[理由]2.(2)に記載した特開2001-214049号公報(以下、「周知例1」という。)および特開平05-257002号公報(特に、【0007】、【0008】。以下、「周知例2」という。)から周知技術にすぎない。
上記(相違点2)は、「第2」[理由]2.(6)(6-2)で示したとおり、刊行物1,3,4に基づいて当業者が容易に想到しうるものである。

したがって、本願発明は、刊行物1,3,4および周知例1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


(4)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1,3,4および周知例1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-05 
結審通知日 2011-09-06 
審決日 2011-09-20 
出願番号 特願2004-234352(P2004-234352)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池田 周士郎  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 住田 秀弘
金高 敏康
発明の名称 ポリカーボネート樹脂製直下型バックライト用光拡散板  
代理人 為山 太郎  

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