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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) G10K
管理番号 1246289
判定請求番号 判定2011-600028  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2011-12-22 
種別 判定 
判定請求日 2011-06-16 
確定日 2011-11-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第3906345号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「書籍の表紙の画像データを配信するシステム」は、特許第3906345号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨

本件判定請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に示す「書籍の表紙の画像データを配信するシステム」(以下、「イ号物件」という。)が、特許第3906345号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 本件特許発明

本件特許発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(なお、便宜上、各構成要件に分説し、符号(1)?(4)を付した。)

(1)複数の音声データを蓄積したデータベースと、複数の映像データを蓄積したデータベースとの何れか一方または双方を具えたサーバと、ディスプレイ及び入力装置を具えて成る利用者のコンピュータとをインターネットを通じて接続し、前記サーバに蓄積されたデータを利用者のコンピュータに対して配信するデータ配信システムにおいて、

(2)個々の音声データ及び映像データにはデータが帰属する群を表す属性情報が付加されるものであり、

(3)更に群の大きさが階層的に異なるような複数の属性情報が付加されるものであり、

(4)利用者が入力したキーワードと、前記個人情報データベースに蓄積された利用者毎の過去の利用履歴の内、利用者が過去にダウンロードしたファイル名に付加された属性情報に基づいてサーバにより選定された別途のキーワードと、の双方のキーワードを属性情報として含むファイルを選出すべくデータ検索を行うようにしたことを特徴とする効果音及び映像の配信システム。

(以下、分説した各構成を「構成要件(1)」等という。)

第3 イ号物件

請求人が提出したイ号図面及びその説明書の記載からみて、イ号物件は、次のとおり特定されるものと認める。
(なお、便宜上、各構成要件に分説し、符号(a)?(d)を付した。)

(a)複数の書籍の表紙の画像データを蓄積したデータベースを具えたサーバと、ディスプレイ及び入力装置を具えて成る利用者のコンピュータとをインターネットを通じて接続し、前記サーバに蓄積された書籍の表示の画像データを利用者のコンピュータに対して配信する書籍の表紙の画像データを配信するシステムにおいて、

(b)個々の書籍の表紙の画像データには複数のカテゴリー情報が付加されており、

(c)前記複数のカテゴリー情報のカテゴリーはその大きさが階層的に異なるものであり、

(d)利用者が入力したキーワードによりデータ検索を行い、データ検索結果に対して、おすすめ商品を表示させた場合に、当該おすすめ商品の書籍の表紙の画像データと、利用者が過去におすすめ商品として表示した書籍の表紙の画像データとを併せて表示する書籍の表紙の画像データを配信するシステム。

(以下、分説した各構成を「構成(a)」等という。)

第4 対比・判断

イ号物件が本件特許発明に係る前記分説した各構成要件(1)?(4)を充足するか否かについて、以下に対比・判断する。

1 構成要件(1)、(2)、(3)の充足性について

特許発明の「音声データ及び映像データ」の用語に関して、本件明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はWEB上での音声素材及び映像素材の配信システムに関するものであって、特にビデオ作品の素材となる効果音や動画、静止画等の映像を合理的に配信することのできる効果音及び映像の配信システムに係るものである。
【0002】
【発明の背景】
近時、IT関連機器の高機能化、低価格化及びインターネット環境の整備が進み、コンピュータ及びその周辺機器が一般家庭にも広く普及している。このような環境の下、例えば個人がデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等を用いて撮影した映像を加工、編集して出来上がった作品を、CD-R等の記録媒体に書き込んで配布したり、あるいは自身のホームページに載せてWEB上で公開するといったことも盛んに行われている。
【0003】
また、商業放送でのドラマ、CMあるいは個人による自主制作映画等の映像作品を制作するにあたっては、従来はアナログでのリニア編集が行われており、8mmフィルム、ビデオテープ、オーディオテープ等を用い、フィルムやテープの切りつなぎ、ダビング、アフレコ等の手法が用いられていた。しかし現在では映像素材、音声素材をデジタル化し、コンピュータ及び編集ソフトを用いたデジタルでのノンリニア編集が行われている。このようなノンリニア編集は、素材をパソコン等のHDDやRAM等に書き込むことにより、編集したい任意の個所を即座に読み出すことができるため、アナログでのリニア編集と比べて作業を大幅に軽減し得るものである。
【0004】
上述のように現在では、デジタル化した映像作品を制作したり公開する上でのハードウェア的な環境は確実に整いつつある一方、映像作品を制作する上でのソフトウェア的な要素、具体的には作品をよりドラマチカルに演出するための効果音(Sound Effect)等の入手に関する環境は十分なものであるとはいえない。
【0005】
前記効果音は通常編集の段階で付加されるものであり、大手制作会社、テレビ局等にあっては独自に所有するライブラリー、データベースに蓄積されたものを用いることが可能である。一方、小規模団体や個人ではこのようなライブラリーを保有することは難しく、CD等に収録された状態で市販されているものを用いることが多い。従ってある一つの素材しか必要としないのに、複数の素材が収録されたCDを購入せざるをえなかったり、あるいは必要とする素材が見つからない場合には独自に収録しなければならないといった不便さがある。更には素材が見つからず収録も不可能である場合には、類似した素材(例えば4ストロークエンジンのバイクの映像に2ストロークエンジンのバイクの音)を用いることを余儀なくされ結果的に興をそいでしまったり、そのシーンをカットする等して演出を変更しなければならず、作品が制作者の本来の意図とは異なったものに仕上がってしまうことも考えられる。
【0006】
ところで最近では、上記効果音をデータベース化して、インターネットを通じて有償または無償で配信するWEBサイトも多数存在するが、その多くはサイト制作者の嗜好で選択された素材しか用意しておらず、利用者側からすると必ずしも所望の素材が用意されているとは言えないのが実情である。
このようなWEBサイトで自分の欲しい素材を探す為には、素材に関連する言葉をキーワードとして入力して検索を行うのが一般的であるが、絞り込みが上手くいかなかった場合には検索結果が膨大なものとなってしまい、更にキーワードが不適切であった場合には検索もれとなって自分の欲しい素材を探し出すことができないといったことも起きていた。
【0007】
【開発を試みた技術的課題】
本発明はこのような背景を認識してなされたものであって、利用者の要求を満足する効果音、映像等を合理的に収集、配信することのできる新規な効果音及び映像の配信システムを開発することを技術的課題とした。」

(イ)「【0015】
前記音声データは、効果音、BGM等の音声をaiff、wav、MP3等のフォーマットで保存したデータである。
また前記映像データは、動画をMPEG1、MPEG2等のMPEG形式、M-JPEG等のフォーマットで、あるいは静止画をJPEG、GIF、BMP、PICT等のフォーマットで保存したデータである。」

(ウ)「【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、利用者の要求を満足する効果音、映像等を合理的に収集、配信することができる。このため利用者は所望の効果音及び映像を容易に入手することができるようになり、映像作品の制作を広く普及させることができる。」

上記(ア)?(ウ)の記載によれば、「音声データ及び映像データ」とは、利用者が映像作品を製作・編集する上でのソフトウェア的な要素である「音声素材及び映像素材」であると共に、データの提供者と利用者と間における取引の直接的対象物である。
それに対して、イ号物件は、「複数の書籍の表紙の画像データを蓄積したデータベースを具えたサーバと、ディスプレイ及び入力装置を具えて成る利用者のコンピュータとをインターネットを通じて接続し、前記サーバに蓄積された書籍の表示の画像データを利用者のコンピュータに対して配信する書籍の表紙の画像データを配信するシステムにおいて、」「利用者が入力したキーワードによりデータ検索を行い、データ検索結果に対して、おすすめ商品を表示させた場合に、当該おすすめ商品の書籍の表紙の画像データと、利用者が過去におすすめ商品として表示した書籍の表紙の画像データとを併せて表示する」ものであって、当該「書籍の表紙の画像データ」は、利用者が購入を希望する書籍に関する情報の入手や、書籍の選択に資する選択画面の構成要素であって、換言すれば、本件特許発明の明細書及び図面の図4(b)に記載された利用者端末のブラウザ上に表示されたファイル名に対応するものであると言え、イ号物件は、当該「書籍の表紙の画像データ」を「素材」として製作・編集を行うことを前提とするものではないと共に、データ提供者と利用者との間における取引の直接的対象物とするものでもない。
つまり、イ号物件の「書籍の表紙の画像データ」自体は、利用者による製作・編集を前提した「素材」ではなく、データ提供者と利用者との間における取引の直接的な対象物でもない。
したがって、イ号物件の「書籍の表紙の画像データ」は本件特許発明の「映像データ」に相当せず、イ号物件の構成(a)は本件特許発明の構成要件(1)を充足しない。

そして、イ号物件における「カテゴリー情報」と本件特許発明における「属性情報」は所定のデータに付加される階層構造を有する情報である点において共通するものの、上述したとおり、イ号物件の「書籍の表紙の画像データ」は、本件特許発明の「映像データ」に相当しないことから、イ号物件の構成(b)及び(c)はそれぞれ本件特許発明の構成要件(2)及び(3)を充足しない。

2 構成要件(4)の充足性について

イ号物件の構成(d)と本件特許発明の構成要件(4)とを対比すると、
両者は利用者が入力したキーワードによりデータ検索を行う点において共通するものの、上記「1 構成要件(1)、(2)、(3)の充足性について」で述べたように、本件特許発明における「音声データ及び映像データ」はイ号物件の「書籍の表紙の画像データ」と相違するものであって、イ号物件の構成(d)における「書籍の表紙の画像データ」は本件特許発明の構成(4)における「音声データ及び映像データ」を表す「ファイル」に相当せず、両者はデータ検索を行う対象を異とするものである。
したがって、イ号物件の構成(d)は本件特許発明の構成要件(4)を充足しない。

また、イ号物件は構成(d)にあるように「利用者が入力したキーワードによりデータ検索を行い、データ検索結果に対して、当該おすすめ商品の書籍の表紙の画像データと、利用者が過去におすすめ商品として表示した書籍の表紙の画像データとを併せて表示する」ものであって、「利用者が入力したキーワード」により「当該おすすめ商品の書籍の表紙の画像データ」を選出する手法を用いるものであることは明らかな事項であると言えるが、「利用者が過去におすすめ商品として表示した書籍の表紙の画像データ」を選出する際にどのような手法を用いているかは当審に顕著な事実ではなく、そのことを示す何らの証拠も提出されていないので、不明である。
仮にイ号物件が「利用者が過去におすすめ商品として表示した書籍の表紙の画像データ」を“利用者が過去に入力したキーワード”を用いて選出する手法をも併せて備えるものであったとしても、イ号物件は「利用者が入力したキーワード」とは別個に“利用者が過去に入力したキーワード”に対応するカテゴリー情報を含む「書籍の表紙の画像データ」の選出を行うデータ検索を行うものであると言え、「利用者が入力したキーワード」及び“利用者が過去に入力したキーワード”の双方を「カテゴリー情報」として含む「書籍の表紙の画像データ」の選出を行うデータ検索を行うものであるとは言えない。つまり、イ号物件は本件特許発明の「双方のキーワードを属性情報として含むファイル」を選出すべくデータ検索を行う構成を備えるものではない。
したがって、イ号物件の構成(d)は「双方のキーワードを属性情報とし
て含むファイルを選出すべくデータ検索を行う」構成を有する本件特許発明の構成要件(4)を充足しない。

第5 むすび

以上のとおり、イ号物件は本件特許発明の構成要件(1)?(4)を充足しないから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
 
判定日 2011-10-28 
出願番号 特願2001-336450(P2001-336450)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (G10K)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 溝本 安展
千葉 輝久
登録日 2007-01-26 
登録番号 特許第3906345号(P3906345)
発明の名称 効果音及び映像の配信システム  
代理人 工藤 一郎  
代理人 伊藤 信和  

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