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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1246776
審判番号 不服2011-6306  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-23 
確定日 2011-11-07 
事件の表示 特願2010-141078「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月16日出願公開、特開2010-204694〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成16年11月19日の出願(特願2004-335298号)の分割出願(分割出願日;平成22年6月21日)であって、平成22年7月16日付けで手続補正書と上申書が提出され、平成22年9月6日付けで通知した拒絶理由に対して、同年11月8日付けで手続補正がなされたが、平成22年12月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年3月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後、当審から送付した、審査官により作成された前置報告書の内容についての平成23年5月30日付けの審尋に対して、同年8月1日付けで、当審の審尋に対する回答書が提出されたものである。

第2 平成23年3月23日付け手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年3月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1.補正後の本願発明

本件発明には、特許請求の範囲を次のように補正しようとする事項が含まれている。

(補正前)
「【請求項1】
複数色の現像剤をそれぞれ収納する複数の現像剤収納部材を、装置本体の少なくとも一部を開放してそれぞれ交換可能に備える画像形成装置において、
前記装置本体の外面に備える操作ボタン類を備える操作部に設けた前記複数の現像剤収納部材内の現像剤の容量に関する情報表示部と、前記装置本体の少なくとも一部を開放したときの前記複数の現像剤収納部材とを、前記装置本体正面側から視認可能に配置し、
前記複数の現像剤の容量に関する情報表示部にはそれぞれの現像剤の色の表示が示してあり、前記現像剤収納部材と前記情報表示部をそれぞれ複数かつ対応個数ずつ備えるとともに、
前記複数の現像剤収納部材に収納した現像剤の色の並び順序と、前記複数の現像剤の容量に関する情報表示部が示す現像剤の色の表示の並び順序が同じ順序となるとともに、
前記操作ボタン類を備える操作部を前記複数の現像剤収納部材よりも前側に配置した
ことを特徴とする画像形成装置。

【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、前記情報表示部を、前記現像剤収納部材の個数に対応させて有することを特徴とする画像形成装置。

【請求項3】
請求項1の画像形成装置において、前記現像剤収納部材と前記情報表示部をそれぞれ複数かつ対応個数ずつ備えたことを特徴とする画像形成装置。

【請求項4】
請求項1から3のいずれかの画像形成装置において、前記情報表示部が細長い矩形の表示内容部分を有することを特徴とする画像形成装置。

【請求項5】
請求項1から4のいずれかの画像形成装置において、
前記情報表示部が、前記装置本体の少なくとも一部を開放すべき旨の表示を行うための発光表示体を備えることを特徴とする画像形成装置。」(平成22年7月16日付け手続補正書、および、平成22年11月8日付け手続補正書で補正されたもの)

(補正後)
「【請求項1】
複数色の現像剤をそれぞれ収納する複数の現像剤収納部材を、装置本体の少なくとも一部を開放してそれぞれ交換可能に備える画像形成装置において、
前記装置本体の外面に備える操作ボタン類を備える操作部に設けた前記複数の現像剤収納部材内の現像剤の容量に関する情報表示部と、前記装置本体の少なくとも一部を開放したときの前記複数の現像剤収納部材とを、前記装置本体正面側から視認可能に配置し、
前記複数の現像剤の容量に関する情報表示部にはそれぞれの現像剤の色の表示が示してあり、前記現像剤収納部材と前記情報表示部をそれぞれ複数かつ対応個数ずつ備えるとともに、
前記複数の現像剤収納部材に収納した現像剤の色の並び順序と、前記複数の現像剤の容量に関する情報表示部が示す現像剤の色の表示の並び順序が同じ順序となるとともに、
前記操作ボタン類を備える操作部を前記複数の現像剤収納部材よりも前側に配置し、
前記装置本体の少なくとも一部を開放した際に、前記操作部と前記複数の現像剤収納部材とを前記装置本体正面側から同時に視認可能に配置した
ことを特徴とする画像形成装置。

【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、前記情報表示部が細長い矩形の表示内容部分を有することを特徴とする画像形成装置。

【請求項3】
請求項1または2の画像形成装置において、前記情報表示部が、前記装置本体の少なくとも一部を開放すべき旨の表示を行うための発光表示体を備えたことを特徴とする画像形成装置。 」

この補正事項は、

(1)補正前の請求項1に対して、その構成として、「前記装置本体の少なくとも一部を開放した際に、前記操作部と前記複数の現像剤収納部材とを前記装置本体正面側から同時に視認可能に配置した」点を追加して、構成の限定を行うもの

(2)補正前の請求項2,3を削除して、補正前の請求項4,5を補正後の請求項2,3とするもの

である。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするもの、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2.引用例の記載事項

(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前(すなわち平成16年11月19日の前。以下、同様。)に頒布された特開2004-85887号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(1a)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来構成であると、交換時期や点検時期を装置利用者は知ることはできるが、装置のどの位置に対象となる部材があるのか不明である。また、表示される表示部と、交換や点検すべき部材とが離れた位置にあるので、交換や点検する際に作業者が迷ってしまうことがある。特に、カラー画像を形成する画像形成装置においては、カラー画像を形成するのに複数の色トナーを使用するので、交換部材や点検部材も使用するトナー色の数に対応して多くなり、交換や点検時に迷いが生じ易い傾向にある。また、交換部材は、装置の構成を熟知したサービスマンではなく、装置利用者であるユーザー自身が交換する機会も多く、より交換時や点検時の作業性の良さが求められている。本発明は、交換や点検作業を確実かつスムーズに実施可能な画像形成装置を提供することを目的とする。」

(1b)「【0017】
装置本体1は、図2、図3に示すように、その概観を樹脂製のケース12で構成されている。このケース12は、複数箇所に開閉可能なカバーが設けられている。装置正面側に位置する側面1Aには、用紙3のジャム処理時や転写ローラ8Aを交換する際に開閉するカバー13が開閉自在に支持されている。装置本体1の左側面1Bには、作像カートリッジ6Y,6M,6C,6Bや中間転写ベルト7の交換時に開閉するカバー14が開閉自在に支持されている。用紙3の補給は、カセット2を側面1A側から引き出すことで行われる。排紙部11を構成する装置本体1の上面1Cには、図1に示すトナーボトル12Y,12M,12C,12Bの交換時に開閉するためのカバー15が開閉自在に支持されている。装置本体1の前側上面1Dには、装置の操作部16が設けられている。」

(1c)図1は次のとおり。


(1d)図2は次のとおり。


(1e)「【0039】
制御手段50では、各種センサ51からの出力があると、発光部21を消灯、点滅あるいは点灯するように制御する。例えば、交換時期となった場合には、交換時期となった部材に対応する発光部21を点灯あるいは点滅するように制御する。発光部21を消灯するには、新たな交換部材に交換されると自動的に消灯する制御形態であっても良いし、制御手段50に操作部16を接続し、操作部16を操作することで消灯するように制御しても良い。」

(1f)「【0046】
操作部16に交換部材毎の表示手段を設けると、装置本体1の外側から交換や点検すべき部材の位置を視認できる部位が多くなるとともに、操作部16を見ただけで、どの交換や補給部材がプリンターのどのカバーを開いて交換・補給を実施するのかが一目瞭然で解り、交換や点検すべき部材の位置を容易に知ることができ、交換や点検すべき部材の位置がより一層判り易くなって交換や点検作業を確実かつスムーズに行える。」

(1g)「【0047】
操作部16の別な形態としては、図15に示すように、色トナー毎に複数個の発光部67,68,69,70を設ける。例えば、黒トナーを新品にしたときは、発光部67を構成する全てのランプ67a?67eを点灯し、プリント枚数が進むにつれて、ランプ67a側からランプ67eに向かって点滅、消灯するようにしてもよい。そして、ランプ67eが点滅を始めたら、液晶表示部63に「あと、・・枚で黒トナーが無くなります」と(点滅)表示する。このように。図や文字、発光部を増やすことで、よりきめ細かな交換部材の状態や時期を装置本体1の外部から容易に認識することができ、交換や点検すべき部材の位置が判り易くなり、交換や点検作業を確実かつスムーズに行える。」

(1h)図15は次のとおり。


(1i)「【0052】
図17は、カラー画像を形成するのに必要な色のトナーである、黒,シアン,マゼンタ,イエローのトナーをそれぞれ収納したトナーボトル12B,12C,12M,12Yと、各色のトナーに対応する画像を形成する作像カートリッジ6B,6C,6M,6Y及び中間転写ベルト7を、それぞれ斜めに配置したプリンターを示す。トナーボトル12B、12C,12M,12Yは互いに並列に一直線で傾斜して排紙部11の下方に配置されている。作像カートリッジ6B,6C,6M,6Yとトナーボトル12B,12C,12M,12Yは、同一の色の順序で配列されている。
【0053】
このように構成すると、装置本体1の正面から各トナーボトルを見た時、各トナーボトルが上下方向にずれて配置されるので、重なる箇所が少なくなり、広い範囲を視認することができ、交換すべきトナーボトルを見つけることができ、交換や点検すべき部材の位置が判り易くなって交換や点検作業を確実かつスムーズに行える。」

(1j)図17は次のとおり。


これらの記載事項によれば、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「複数の色の異なるトナーを収納したトナーボトルを、装置本体のカバーを開閉してそれぞれ交換可能に備える画像形成装置において、
前記装置本体がその前側上面に備える操作部に、色トナー毎に横1列に配置されたランプからなる複数個の発光部が設けられ、
トナーボトルを新品にしたときには全てのランプが点灯し、プリント枚数が進むにつれて順にランプが点滅、消灯することにより、トナーボトルの状態や交換時期を外部から容易に認識することができ、
前記装置本体の制御手段に接続した前記操作部を操作することにより、前記制御手段による前記装置本体の制御が行われ、
前記装置本体の正面から前記操作部および各トナーボトルが視認可能であり、
前記トナーボトルと前記発光部とがそれぞれ対応する個数設けられ、
前記操作部を前記トナーボトルよりも前記装置本体の前側に配置した画像形成装置。」

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開2004-188638号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(2a)「【0022】
(実施形態1)まず図1から4は、既存の表示灯をそのまま用いた形態の実施例であり、図1は本発明の特徴を最も表すもので、ちょうどインク交換作業を行うため、メンテナンスカバーを開けた状態を示したもので、1はプリンタ本体、2はインク交換等の作業を行うために本体内部をアクセス可能にするメンテナンスカバー、3はメンテナンスカバー2を開いたときに現れるメンテナンス開口部、4はインクタンクを搭載したユニットをスムーズに移動させるためのシャフト、5は印字ヘッドとインクタンクを搭載したキャリッジユニット、6はブラックインクタンク、7はカラー印字で用いるマゼンタインクタンク、8はカラー印字で用いるイエローインクタンク、9はカラー印字で用いるシアンインクタンク、10は対抗するブラックインクタンク6のインク残量が減少して交換すべき場合に点灯し交換不要の場合に消灯するインク残量表示灯、11は前記10同様のマゼンタインクタンク7用のインク残量表示、12は前記10同様のイエローインクタンク8用のインク残量表示、13は前記10同様のシアンインクタンク9用のインク残量表示である。同図においてプリンタ本体1はメンテナンスカバー2が開かれるとインク交換であると判断しキャリッジ5を開口部3から見えない位置から見える位置まで図のように移動すると同時にプリンタ本体の状態を示していた表示灯がインク残量表示灯に切り替える。またこのメンテナンスカバー2には表示灯が隠れぬように表示灯を透過させる穴若しくはなんかしらの透過手段が表示灯10とブラックインクタンク6、表示灯11とマゼンタインクタンク、表示灯12とイエローインクタンク、表示灯13とシアンインクタンクと言うようにそれぞれ相関が取れる位置に設けてあり、インク交換者が迷わず交換すべきインクタンクを認識することが出来る。」

(2b)図1は次のとおり。


(2c)図3は次のとおり。


(3)刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開平4-180072号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(3a)「[従来の技術]
複写機は、文献名を挙げるまでもなく、周知であり、一般に画像形成部と定着部とから概略構成されている。そしてトナー、転写用の紙等を消耗品としている。
また複写機には表示装置或いは警報器が設けられており、上述のような消耗品がなくなると、例えば第3図(a),(b)に示すように、これを表示するようになっている。」(公報第1頁右欄第3行乃至第11行)

(3b)図3(b)は次のとおり。


3.対比・判断

そこで、本願補正発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、
刊行物1記載の発明の「トナー」「トナーボトル」「装置本体」「画像形成装置」は、
それぞれ本願補正発明の「現像剤」「現像剤収納部材」「装置本体」「画像形成装置」
に相当し、
刊行物1記載の発明の「装置本体のカバーを開いて交換を実施する」ことと、本願補正発明の「装置本体の少なくとも一部を開放してそれぞれ交換可能に備える」こととは、「装置本体」に対して「装置本体の少なくとも一部を開放して」「現像材収納部材」を「交換可能」とする点で共通する。
また、刊行物1記載の発明の「操作部」を備える「装置本体」の「前側上面」とは、「装置本体」の外面であることは明らかであり、本願補正発明の「装置本体」の「外面」に相当する。
また、刊行物1記載の発明の「ランプからなる複数個の発光部」は、プリント枚数が進むにつれて、点滅、消灯することにより、「トナーボトル」の状態や交換時期を示しており、すなわち、「ランプからなる複数個の発光部」は「トナーボトル」内のトナー残量に関する情報を示していると認められ、本願補正発明の「現像剤の容量に関する情報表示部」に相当する。
そして、刊行物1記載の発明の「操作部」は、「前記装置本体の制御手段に接続」され、「操作部を操作することにより」、「前記制御手段による前記装置本体の制御が行われ」るのであるから、操作可能な操作ボタン等何らかの操作手段を備えていることは明らかであり、本願補正発明の「操作部」に共通する。
そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりと認められる。

[一致点]
「複数色の現像剤をそれぞれ収納する複数の現像剤収納部材を、装置本体の少なくとも一部を開放してそれぞれ交換可能に備える画像形成装置において、
前記装置本体の外面に備える操作ボタン類を備える操作部に設けた前記複数の現像剤収納部材内の現像剤の容量に関する情報表示部と、前記装置本体の少なくとも一部を開放したときの前記複数の現像剤収納部材とを、前記装置本体正面側から視認可能に配置し、
前記複数の現像剤の容量に関する情報表示部にはそれぞれの現像剤の色の表示が示してあり、前記現像剤収納部材と前記情報表示部をそれぞれ複数かつ対応個数ずつ備えるとともに、
前記操作ボタン類を備える操作部を前記複数の現像剤収納部材よりも前側に配置した画像形成装置。」

[相違点]
複数の現像剤収納部材内の現像剤の容量に関する情報表示部に関して、
本願補正発明では、「前記複数の現像剤収納部材内に収納した現像剤の色の並び順序と、前記複数の現像剤の容量に関する情報表示部が示す現像剤の色の表示の並び順序が同じ順序となるとともに、」「前記装置本体の少なくとも一部を開放した際に、前記操作部と前記複数の現像剤収納部材とを前記装置本体正面側から同時に視認可能に配置した」のに対して、
刊行物1記載の発明では、現像剤収納部材に収納された現像剤の色の並び順序と情報表示部をなす複数個の発光部の色トナー毎に横1列に配置されたランプの並び順序とが同じ順序ではなく、また、装置本体の正面から操作部および各トナーボトルがそれぞれ視認可能ではあるが、装置本体の少なくとも一部を開放した際に、操作部と複数の現像剤収納部材とが装置本体正面側から同時に視認可能であるかは不明である点。

相違点について検討する。

(相違点について)
刊行物2,3には、画像形成装置が備える操作部に、消耗品に関する情報を示すランプ等の表示手段を備え、前記消耗品の色に対応した前記表示手段の並び順序と、色毎に収納された前記消耗品の並び順序とが同じ順序とする技術が明示されており、当該技術は本願出願日前に周知の技術である。
そして、刊行物2には、表示灯とインクタンクとがそれぞれ相関が取れるように設けてあり、交換者が迷わず交換すべきタンクを認識することが出来ることも記載されている。
また、刊行物1の【0046】には、「操作部16を見ただけで、どの交換や補給部材がプリンターのどのカバーを開いて交換・補給を実施するのかが一目瞭然で解り、交換や点検すべき部材の位置を容易に知ることができ、交換や点検すべき部材の位置がより一層判り易くなってい交換や点検作業を確実スムーズに行える。」と記載されている。

そうしてみると、刊行物1記載の発明において、操作部に、現像剤収納部材を新品にしたときには全てのランプが点灯し、プリント枚数が進むにつれて順にランプが点滅、消灯することにより、現像剤収納部材内の状態や交換時期を外部から容易に認識することができる情報表示部を備えるに際して、交換を確実かつスムーズに実施可能とする目的で、消耗品の色に対応した表示手段の並び順序と、色毎に収納された消耗品の並び順序とが同じ順序とする周知技術を採用し、本願補正発明のごとく構成をなすことは、当業者が容易になし得ることといわざるを得ず、また、上記刊行物1の記載から、操作部を見ただけで交換や点検すべき部材の位置を容易に知ることができるようにしているのであるから、交換や点検作業を確実スムーズに行えるように、交換時に装置本体の少なくとも一部を開放した際に、現像剤収納部材の並び順と同じ順序である情報表示部のそれぞれの色に対応した色トナー毎に横1列に配置されたランプからなる複数個の発光部の並び順とが同時に視認可能とすることも当業者が容易になし得ることといわざるを得ない。

そして、全体として、本願補正発明によってもたらされる効果も、刊行物1?3に記載された事項及び周知技術から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

よって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2,3に記載された発明(周知技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび

したがって、平成23年3月23日付け手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明

平成23年3月23日付け手続補正書は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明(以下、順に「本願発明1」「本願発明2」等という。)は、平成22年7月16日付け手続補正書、および、平成22年11月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
複数色の現像剤をそれぞれ収納する複数の現像剤収納部材を、装置本体の少なくとも一部を開放してそれぞれ交換可能に備える画像形成装置において、
前記装置本体の外面に備える操作ボタン類を備える操作部に設けた前記複数の現像剤収納部材内の現像剤の容量に関する情報表示部と、前記装置本体の少なくとも一部を開放したときの前記複数の現像剤収納部材とを、前記装置本体正面側から視認可能に配置し、
前記複数の現像剤の容量に関する情報表示部にはそれぞれの現像剤の色の表示が示してあり、前記現像剤収納部材と前記情報表示部をそれぞれ複数かつ対応個数ずつ備えるとともに、
前記複数の現像剤収納部材に収納した現像剤の色の並び順序と、前記複数の現像剤の容量に関する情報表示部が示す現像剤の色の表示の並び順序が同じ順序となるとともに、
前記操作ボタン類を備える操作部を前記複数の現像剤収納部材よりも前側に配置した
ことを特徴とする画像形成装置。」

2.引用刊行物の記載事項

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、
1.特開2004-85887号公報(原査定の引用文献1。上記「第2
2.(1)」で示した「刊行物1」)
2.特開2004-188638号公報(原査定の引用文献2。上記「第2 2.(2)」で示した「刊行物2」)
3.特開平4-180072号公報(原査定の引用文献3。上記「第2 2
.(3)」で示した「刊行物3」)
の記載事項は、上記「第2 2.(1)」、「第2 2.(2)」、及び、「第2 2.(3)」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明1は、本願補正発明から「前記装置本体の少なくとも一部を開放した際に、前記操作部と前記複数の現像剤収納部材とを前記装置本体正面側から同時に視認可能に配置した」という限定事項を省いたものに実質的に相当する。

そうすると、本願発明1の構成要件をすべて含み、さらに他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 3.」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び刊行物2,3に記載された発明(周知技術)に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び刊行物2,3に記載された発明(周知技術)に基づいて容易に発明することが出来たものである。

4.むすび

以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-12 
結審通知日 2011-09-13 
審決日 2011-09-27 
出願番号 特願2010-141078(P2010-141078)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 下村 輝秋  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 住田 秀弘
立澤 正樹
発明の名称 画像形成装置  
代理人 吉村 直樹  

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