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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F16K
管理番号 1246920
審判番号 無効2011-800040  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-03-08 
確定日 2011-11-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第4247386号発明「流量調節弁」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第4247386号の請求項1ないし4に係る発明(以下、各発明を「本件特許発明1」、「本件特許発明2」、「本件特許発明3」、「本件特許発明4」という。)についての出願は、平成15年11月28日に特許出願され、平成21年1月23日にその特許の設定登録がなされ、その後、平成23年3月8日に請求人より無効審判の請求がなされ、平成23年6月6日付で被請求人より審判事件答弁書が提出され、その後、被請求人より、平成23年8月17日付で口頭審理陳述要領書が提出され、請求人より、平成23年8月18日付で口頭審理陳述要領書が提出され、平成23年9月9日に口頭審理が行われたものである。

2.本件特許発明
本件特許発明1ないし4は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
上部に設けられた弁室(3)の底面に弁座面(2)が形成され、該弁座面(2)の中心に設けられた連通口(4)に連通する第一通路(5)と、前記弁室(3)に連通する第二通路(6)を有する本体(1)と、ステム(19、27)の軸方向の進退移動により前記連通口(4)に挿入可能で、接液面の中心から垂下突設された第一弁体(11)と、前記弁座面(2)に接離可能にされ、該第一弁体(11)から径方向へ隔離した位置に形成されると共に、該弁座面に向かって突出する円環状凸条の第二弁体(12)と、これら第一弁体(11)と第二弁体(12)の間に形成された環状溝部と、該第二弁体(12)から径方向へ連続して形成された薄膜部(13)とが一体的に設けられた隔膜(10)とを具備することを特徴とする流量調節弁。
【請求項2】
上部にハンドルが固着され下部内周面に雌ネジ部と外周面に該雌ねじ部のピッチより大きいピッチを有する雄ネジ部を有する第一ステムと、
内周面に該第一ステムの雄ネジ部と螺合する雌ネジ部を有する第一ステム支持体と、
上部外周面に第一ステムの雌ネジ部に螺合される雄ネジ部を有し下端部に隔膜が接続される第二ステムと、
前記第一ステム支持体の下方に位置し該第二ステムを上下移動自在かつ回動不能に支承する隔膜押さえと、
第一ステム支持体と隔膜押さえを固定するボンネットと
を具備することを特徴とする請求項1に記載の流量調節弁。
【請求項3】
第一ステムの外周面に設けられた雄ネジ部と下部内周面に設けられた雌ネジ部のピッチの差が、雄ネジ部のピッチの20分の1から5分の1であることを特徴とする請求項2に記載の流量調節弁。
【請求項4】
隔膜がポリテトラフルオロエチレンからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の流量調節弁。」

3.審判請求人の主張
審判請求人は、本件特許発明1ないし4を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として、甲第1号証(特開平10-153268号公報)、甲第2号証(特公昭46-788号公報)、甲第3号証(大正14年実用新案出願公告第13318号公報)、甲第4号証(実公平2-5241号公報)、甲第5号証(特表平9-504077号公報)、甲第6号証(特開昭63-270966号公報)、甲第7号証(特開平5-26357号公報)、甲第8号証(実願平4-41951号(実開平6-1961号)のCD-ROM)、甲第9号証(特開平11-51217号公報)、甲第10号証(特開昭62-233578号公報)を提出し、以下の理由により、本件特許発明1ないし4は無効とすべきであると主張している。

なお、甲第3号証は、審判請求書では、「実用新案出願公告第13318号公報」と記載されているが、正確には「大正14年実用新案出願公告第13318号公報」であり、また、甲第8号証は、審判請求書では、「実開平6-1961号公報」と記載されているが、実際に証拠として提出されているのは、明細書全文である実願平4-41951号(実開平6-1961号)のCD-ROMであるので、そのように記載した。

(1)本件特許発明1は、甲第1号証の発明に甲第2?5号証のいずれかに記載された発明を適用することにより、または甲第1号証の発明に甲第2?5号証に記載された周知の技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項2号により無効とすべきである。

(2)本件特許発明2及び3は、
a.甲第1号証に記載された発明に甲第2?5号証のいずれかに記載された発明を組み合わせた発明に、甲第6号証に記載された発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項2号により無効とすべきである。
または、
b.甲第1号証に記載された発明に甲第2?5号証に記載された周知の技術を適用した発明に、甲第6号証に記載された発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項2号により無効とすべきである。
(「甲第1号証に記載された発明に甲第2?5号証に記載された周知の技術を適用した発明」には、「甲第1号証に記載された発明に、甲第2?5号証に記載された周知の弁の構造(第二弁体を円環状凸条とし環状溝部を設ける構造)を単に適用した発明」が含まれる。)

(3)本件特許発明4は、甲第1号証に記載された発明に甲第2?5号証のいずれかに記載された発明または甲第2?5号証に記載された周知の技術を組み合わせまたは適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項2号により無効とすべきである。(「甲第1号証に記載された発明に甲第2?5号証に記載された周知の技術を適用した発明」には、「甲第1号証に記載された発明に、甲第2?5号証に記載された周知の弁の構造(第二弁体を円環状凸条とし環状溝部を設ける構造)を単に適用した発明」が含まれる。)

4.審判被請求人の主張
被請求人は、本件無効審判事件の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、本件特許発明1ないし4は、甲第1号証?甲第10号証の存在により、特許法第29条の規定に該当するものではなく、同法第123条第1項第2号により無効とされるべき理由はないと主張している。

5.甲各号証の記載事項
(1)甲第1号証
甲第1号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体製造装置に於いて、薬液を混合するためのコントロール弁として使用するダイヤフラム式流量調整弁に関する。」

・「【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、ストロークが大きくて流量制御範囲が大きく、流量制御にばらつきが生じることがなく、パーティクルの発生を防止できてクリーン化を達成できるダイヤフラム式流量調整弁を提供しようとするものである。」

・「【0007】
【発明の実施の形態】本発明のダイヤフラム式流量調整弁の一実施形態を図1によって説明する。図1は、左半部が弁閉状態、右半部が弁開状態を示し、1は弁箱で、一側に流体流入通路2、他側に流体流入通路3が設けられている。流体流入通路2の出口側は弁箱1内の中心に垂直に開口され、その開口周縁に突起4が形成され、その突起4の先端が小さな断面円弧状の弁座5となっている。6は弁座5に押し当てるダイヤフラムで、図2に示すように中央に弁座5に圧着する弁体6aを有し、その弁体6aの周囲に一体に形成した環状薄膜部6bを有し、その環状薄膜部6bの周囲に一体に形成した筒状保持部6cを有している。前記環状薄膜部6bは、図2に示すように断面上向き球面状に曲成され、且つ内周の付根部7は前記弁体6aの上面にほぼ垂直に接続され、外周の付根部8が前記筒状保持部6cの内周縁上縁にほぼ垂直に接続されている。そして、かかる構成のダイヤフラム6の中央の弁体6aの下面中央部に流体流入通路2に挿入されるテーパピン9を取り付けてある。図1において、10は弁箱1内の周囲の溝11内に嵌着したダイヤフラム6の筒状保持部6cを押えるダイヤフラム押えで、このダイヤフラム押え10は弁駆動部のシリンダー12のケース13の下端面に一体に設けられ、ケース13を弁箱1の開口上面に締付け固定したことにより、筒状保持部6cが溝11内に押圧固定されている。ダイヤフラム6の中央の弁体6aは、ピストン14の下側ロッド15に結合されている。シリンダー12のピストン14とキャップ16との間の上室12aにはスプリング17が装入されてピストン14が下方に付勢されている。18はシリンダー12の下室12bへのエアー導入口、19はシリンダー12の上室12aと外部とのエアー連通口である。尚、前記テーパピン9は弁体6aと一体に形成してもよい。」

なお、「流体流入通路3」は「流体流出通路3」の誤記である。

・「【0009】このように構成されたダイヤフラム式流量調整弁は、ノーマル・クローズタイプで、通常、シリンダー12の上室12aに装入されたスプリング17によりピストン14が下方に付勢されて、図1の左半部に示す如く下側ロッド15に結合されたダイヤフラム6の中央の弁体6aが弁座5に圧着されて閉弁されている。流体の流量調整を行うべくシリンダー12の下室12bへ適宜エアーを供給すると、図1の右半部に示すようにスプリング17に抗してピストン14が適宜上昇し、下側ロッド15に結合されたダイヤフラム6の中央の弁体6aが弁座5から離隔して開弁される結果、弁体6aの下面中央部に設けられたテーパピン9が弁体6aと共に上昇し、流体流入通路2の開口面積が適宜調整され、流体の流量が調整される。」

・「【0011】また、上記ダイヤフラム式流量調整弁は、弁開閉作動時、環状薄膜部6bが球面状に曲成された部分のみ弾性的に変形し、内外周の付根部7、8は図1に示されるようにほぼ垂直状態を保ったままである。従って、折り曲げ応力は生ぜず、付根部7、8は全く白化することがなく、、パーティクルの発生が防止される。しかも上記ダイヤフラム式流量調整弁は、閉弁時、テーパピン9が流体流入通路2の開口縁とこすることがなく、ダイヤフラム6の中央の弁体6aのフラットな下面が弁座5に圧着されるので、パーティクルの発生が抑制される。」

・図2には、上部に設けられた弁室の底面から上方の位置に形成された突起4の先端が小さな断面円弧状の弁座5となっており、かつ、弁室に連通する流体流出通路3を有する弁箱1、及び、テーパピン9から径方向へ連続した位置に形成された下面がフラットな弁体6aが示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「上部に設けられた弁室の底面から上方の位置に形成された突起4の先端が小さな断面円弧状の弁座5となっており、出口側が弁箱1内の中心に垂直に開口された流体流入通路2と、弁室に連通する流体流出通路3を有する弁箱1と、ピストン14は、通常、スプリング17により下方に付勢され、流体の流量調整を行うときは適宜上昇し、ピストン14の下側ロッド15に結合されたダイヤフラム6の中央の弁体6aの下面中央部に一体に形成した、流体流入通路2に挿入されるテーパピン9と、前記弁座5に圧着または弁座5から離隔され、該テーパピン9から径方向へ連続した位置に形成された下面がフラットな弁体6aと、弁体6aの周囲に一体に形成した環状薄膜部6bとが一体的に設けられたダイヤフラム6とを具備するダイヤフラム式流量調節弁。」

なお、「ダイヤフラム6の中央の弁体6aの下面中央部に一体に形成した、流体流入通路2に挿入されるテーパピン9」は、段落【0007】の「尚、前記テーパピン9は弁体6aと一体に形成してもよい。」なる記載を参酌して認定した。

(2)甲第2号証
甲第2号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「図は本発明に係る弁体を装備した逆止型安全弁の中心部に於ける縦断面を示すもので、先ず図1について全体構造の概要を述べると、主胴1はこれに嵌着された案内筒2と弁座3とによつて形成される流入孔4及び排出孔15からなり、案内筒にはその内面に於いて自在に摺動する弁体6が挿着されている。」(第2欄3?9行)

・「案内筒2内を摺動する弁体6の摺動面には1乃至数条のラビリンス溝6’及び上端部に近く背圧室に通ずる透孔6’が穿設されており又、弁体下部は急速に縮径せる形状とし、その下面が弁体側摺合せ面10となって弁座側摺合せ面3’にて衝止される。尚弁体最下端部は弁座開口部に容易に挿入し得る径差を以つて突出部11を形成し、その外周に沿つて弁体側摺合せ面10との間に溝12を穿設してなるものである。」(第2欄21行?29行)

・「この降弁に際して先ず弁体突出部11が弁座開口部に挿入され流出孔側への急激な流量を制限する事によつて溝12内に強力な渦流を生ぜしめることが可能となりこの渦流によつて両摺合せ面の激突に対して瞬間的に緩衝作用を達せしめ得るのである。」(第3欄7行?13行)

・「特許請求の範囲
1 案内筒内に嵌挿された弁体の背面に於いて、随時背圧を放出せしめるパイロット弁を備えてなるリフト式逆止弁又は逆止型安全弁において、その弁体下面に弁座開口部に嵌入自在とした突出部と、該突出部の基部外縁に沿つて環設された凹溝を備えたことを特徴とする閉弁時の緩衝を目的とした弁体構造。」(第4欄9行?16行)

(3)甲第3号証
甲第3号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「本案ハ「フランヂバルブ」ニ於テ「バルブ」(2)ノ下部ニ周溝(7’)ヲ設ケ該周溝ノ上側面ヲ更に彎入セシメテ凹溝(8)トナシタル「バルブヂスク」(3)ヲ設ケ之ヲ「バルブ」ヲ閉塞シタル際該周溝ト相對向スル「バルブシート」(4)ノ内面周圍ニハ凹溝(7)ヲ設ケ通液孔(又ハ通氣孔)(5)の周壁トハ或間隔ヲ保チテ適合スヘクナシタルモノニシテ「バルブヂスク」(3)ト通液孔(通氣孔)(5)トノ間ヨリ漏洩セル蒸氣又ハ液體ハ凹溝(7)(7’)間に入リ凹溝(8)の弧面ニ衝突シテ渦動ヲナシツ、「バルブ」ノ接觸面(6)ヲ通過シ上方ニ出ツルモノトス」(實用新案ノ性質、作用及効果ノ要領 1行?5行)

・「以上ノ如ク・・・又「バルブシート」ハ「バルブ」ノ閉塞ニ當リテ「バルブヂスク」ノ周圍ヨリ漏洩渦動スル蒸氣又ハ液體ノタメニ清掃セラレ塵埃錆等ノ附着スル事無ク且ツ「バルブヂスク」ハ従來ノ三脚ト異リ如何ナル程度ニテモ流量ヲ加減スルコトヲ得ルモノナリ」(實用新案ノ性質、作用及効果ノ要領 6行?10行)

・図面には、バルブ2の上部に設けられたステムが示されている。

(4)甲第4号証
甲第4号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「〔実施例〕
以下この考案によるガスバルブのガス種切替装置の一実施例を図面に基づき具体的に説明すると、第1図はこの考案のガス種切替装置をガス湯沸器に適用した場合を示し、第2図及び第3図はその要部の作動状態を示したものであつて、1はメインバーナ、2は該メインバーナ1へのガス供給路で、弁筐Bに一体形成されている。3はガス供給路2の途中に設けた弁室2a内に装備して供給ガス量を増減制御するバルブ体で、熱交換器Cへの給水路6に一次室7aを臨ませたダイヤフラム室7に張設せるダイヤフラム8と弁軸9を介して連設され、給水圧に応動してその開度が制御されることによりメインバーナ1への供給ガス量を熱交換器Cへの給水量と比例的に自動制御するようになつている。4は上記バルブ体3に設けたバルブ面で、バルブ体3の下部に截頭円錐体4aを一体に設けてテーパ状バルブ面4を形成している。」(第2欄19行?第3欄9行)

・「なお、図中・・・、15はバルブ体3の弁シート、・・・連通されている。」(第3欄31行?第4欄1行)

・第2図及び第3図には、弁シート15に向かって突出する円環状凸条の弁シート15に当接する部分と、裁頭円錐体4aと弁シート15に当接する部分の間に形成された環状溝部が記載されている。

(5)甲第5号証
甲第5号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「発明の背景
本発明は、一般的にはバルブに関し、より特定すると、ポペットの操作とは独立して外部から調整自在で、ポペットが完全に開放したときにバルブを介して流れる流体の流量(rates of fluid flow)を可変とすることができる制流子(restrictor)を内部に有するポペットバルブに関する。
この種のバルブの用途の一つとして、ボイラの清掃に使用されるすす吹き(sootblowers)がある。すす吹きは、移動ランス(moving lance)から高圧下で供給される空気、水または最も一般的にスチームの移動噴流を使用して、ボイラのチューブから燃焼堆積物を除去するようになっている。」(5頁4行?12行)

・「この分割壁14には、下端部に座ぐり(counterbore)17を有する円筒状のバルブポート開口16が中央に配設されており、座ぐり17は適宜の耐磨耗性材料から形成するのが好ましい弁座インサート18を収容するようになっている。弁座インサート18は、所定の部位に圧入され、入口室11に露出される側に平坦な環状の弁座フェース(valve seat face)19を提供している。」(9頁9行?14行)

・「バルブがすす吹きその他の装置に装備されると、バルブは、バルブステムキャップ61と係合しかつバルブヘッド51が弁座から十分に離隔してバルブの流量を最大にすることができるまで、バルブを下方へ動かすアクチュエータにより開放される。バルブが開放しているときには、スロットルリング71が出口開口24の流量が所望の流量まで低下するように下方へ充分に動かされるまで、バルブステムキャップ61を回すことによりバルブステムは回転される。」(12頁15行?20行)

・「図2および3に明瞭に示すように、バルブヘッド51は入口室11内に端面81を有し、端面は円筒状の周辺部82において終端し、この円筒周辺は、バルブが閉止位置にあるときには、弁座インサート18の周囲において水平壁14に形成された逃し孔83内に嵌着される。端面81の上方には、弁座面19とセイリング係合するようになっている環状の平坦なシール面84が短い距離に亘って設けられている。これらのシール面には円錐状のテーパはなく、バルブステム52の軸線と直交して延びる面内に全体が位置するように平坦とっている。シール面84の内側には、わずかなフレキシビリティをシール面84に提供して、弁座面に対する適合性を確保するU字状の溝86が形成されている。」(13頁3行?13行)

(6)甲第6号証
甲第6号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「2.特許請求の範囲
1.円筒状をなす操作部材の外周面及び内周面に異なるピッチをもって雄ねじ及び雌ねじをそれぞれ螺刻するとともに、前記操作部材を固定部材に内嵌螺合し、さらに操作部材には、固定部材に対し回転不能、かつ操作部材の回転操作に伴って長さ方向に移動し、係合する相手部材の位置調整をする調整部材を内嵌螺合したねじによる位置決め機構。
2.前記操作部材の雄ねじは雌ねじよりピッチが大きいものである特許請求の範囲第1項に記載のねじによる位置決め機構。」

6.本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、その作用・機能からみて、後者の「弁座5」が「弁座面」に相当するので、後者の「上部に設けられた弁室の底面から上方の位置に形成された突起4の先端が小さな断面円弧状の弁座5となって(おり)」いる態様と、前者の「上部に設けられた弁室の底面に弁座面が形成され」ている態様とは、「上部に設けられた弁室の所定位置に弁座面が形成され」ているとの概念で共通する。

また、後者の流体流入通路2の「出口側」が前者の「連通口」に相当し、以下同様に「流体流入通路2」が「第一通路」に相当するので、後者の「出口側が弁箱1内の中心に垂直に開口された流体流入通路2」が「弁座面の中心に設けられた連通口に連通する第一通路」に相当する。

そして、後者の「流体流出通路3」が前者の「第二通路」に相当し、以下同様に「弁箱1」が「本体」に相当する。

さらに、後者の「ピストン」及び「ピストン14の下側ロッド15」が前者の「ステム」に相当するので、後者の「ピストン14は、通常、スプリング17により下方に付勢され、流体の流量調整を行うときは適宜上昇(し)」する態様が前者の「ステムの軸方向の進退移動」する態様に相当し、以下同様に「流体流入通路2に挿入される」態様が「連通口に挿入可能」な態様に、「ダイヤフラム6の中央の弁体6aの下面中央部に一体に形成した」が「接液面の中心から垂下突設された」態様にそれぞれ相当し、ここで、テーパピン9は、「ピストン14の下側ロッド15に結合されたダイヤフラム6の中央の弁体6aの下面中央部に一体に形成し」てあることから、ピストン14の軸方向の進退移動によりテーパピン9が流体流入通路2に挿入可能となるのは明らかであるから、結局、後者の「ピストン14は、通常、スプリング17により下方に付勢され、流体の流量調整を行うときは適宜上昇し、ピストン14の下側ロッド15に結合されたダイヤフラム6の中央の弁体6aの下面中央部に一体に形成した、流体流入通路2に挿入されるテーパピン9」が前者の「ステムの軸方向の進退移動により連通口に挿入可能で、接液面の中心から垂下突設された第一弁体」に相当する。

後者の「弁座5に圧着または弁座5から離隔され」る態様が前者の「弁座面に接離可能にされ」る態様に相当し、後者の「テーパピン9から径方向へ連続した位置に形成された」態様と前者の「第一弁体から径方向へ隔離した位置に形成され(る)」た態様とは、「第一弁体から径方向の所定位置に形成され(る)」との概念で共通し、後者の「下面がフラット」と前者の「弁座面に向かって突出する円環状凸条」とは「所定形状」との概念で共通し、後者の「弁体6a」が「第二弁体」に相当するので、結局、後者の「弁座5に圧着または弁座5から離隔され、テーパピン9から径方向へ連続した位置に形成された下面がフラットな弁体6a」と前者の「弁座面に接離可能にされ、第一弁体から径方向へ隔離した位置に形成されると共に、該弁座面に向かって突出する円環状凸条の第二弁体」とは「弁座面に接離可能にされ、第一弁体から径方向の所定位置に形成されると共に、所定形状を有する第二弁体」との概念で共通する。

また、後者の「弁体6aの周囲に一体に形成した環状薄膜部6b」が前者の「第二弁体から径方向へ連続して形成された薄膜部」に相当し、以下同様に「ダイヤフラム6」が「隔膜」に相当する。

最後に、後者の「ダイヤフラム式流量調節弁」が前者の「流量調節弁」に相当する。

したがって、両者は、
「上部に設けられた弁室の所定位置に弁座面が形成され、該弁座面の中心に設けられた連通口に連通する第一通路と、前記弁室に連通する第二通路を有する本体と、ステムの軸方向の進退移動により前記連通口に挿入可能で、接液面の中心から垂下突設された第一弁体と、前記弁座面に接離可能にされ、該第一弁体から径方向の所定位置に形成されると共に、所定形状を有する第二弁体と、該第二弁体から径方向へ連続して形成された薄膜部とが一体的に設けられた隔膜とを具備する流量調節弁。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
弁座面が形成される所定位置に関し、本件特許発明1では、弁室の「底面」であるのに対し、甲1発明では、弁室の「底面から上方の位置に形成された突起4の先端」である点。
[相違点2]
第二弁体が形成される所定位置及び第二弁体が有する所定形状に関し、本件特許発明1では、第一弁体から径方向へ「隔離した位置」に形成され、その形状が「弁座面に向かって突出する円環状凸条」であるのに対し、甲1発明では、第一弁体から径方向へ「連続した位置」に形成され、その形状が「下面がフラット」である点。
[相違点3]
本件特許発明1においては、第一弁体と第二弁体の間に形成された「環状溝部」を有するのに対し、甲1発明においてはそのような構成を有していない点。

(2)判断
・相違点1について
弁座を弁室のどこに設けるかは当業者が適宜選択する設計事項に過ぎず、引用発明において、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

・相違点2、3について
まず、本件特許発明1における「環状溝部」及び「第二弁体」を設けることの目的ないし技術的意義は、本件特許明細書の段落【0034】に「S1>S2の場合、流量調節弁の開度は全閉から微開の時であり、流量は第二流量調節部42によって、つまりS2の大小によって調節される。S1>S2の範囲内では、第一流量調節部41は、第一弁体11の直線部17と連通口4で流量を一定に調節することができ、流体は第一流量調節部41によって流量を一定にされた後、第二流量調節部42に至る前にまず環状溝部15により形成される空間部分に流れ込む。流体は環状溝部15の底面に当たり、径方向へ広がって第二弁体12の内周面に当たり、さらに流れの向きを変えて第二流量調節部42に至るため、空間部分で流体の流れが一旦停滞される。そのため流体は、空間部分で流れが抑制されて急激な流量の増加を抑えることができ、第二流量調節部42で十分制御可能な流れで第二流量調節部42に至り、第二流量調節部42で精度良く流量が調節されるため、流量調節弁が微開時の微小流量の調節が可能となる。」と記載されているように、「流量調節弁が微開時の微小流量の調節を可能とする」ものと解することができ、また、このことは、本件特許発明1の解決しようとする課題である「・・・微細な流量調節ができる・・・流量調節弁を提供することを目的とする。」(本件特許明細書の段落【0008】参照)に含まれているものと解することができる。
一方、甲第2号証ないし甲第5号証の各々の記載事項及び図示内容を総合すると、甲各号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」ないし「甲5発明」という。)が記載されているものと認められ、また、甲第2号証ないし甲第5号証の各々の記載事項及び図示内容を総合すると審判請求人が上記「3.審判請求人の主張(2)ないし(3)」で主張する以下の周知技術が抽出できるところ、各発明または周知技術の甲1発明への適用の判断は以下のとおりである。

ア.甲2発明及び甲2発明の甲1発明への適用について
・甲2発明
「軸方向の進退移動により連通口(「排出孔15」が相当。以下同様。)に挿入可能で、垂下突設された第一弁体(突出部11)と、弁座面(弁座側摺合せ面3’)に接離可能にされ、該第一弁体(突出部11)から径方向へ隔離した位置に形成されると共に、該弁座面(弁座側摺合せ面3’)に向かって突出する円環状凸条の第二弁体(弁体側摺合せ面10)と、これら第一弁体(突出部11)と第二弁体(弁体側摺合せ面10)の間に形成された環状溝部(溝12)と、を具備する逆止型安全弁。」

・甲2発明の甲1発明への適用について
まず、甲1発明の解決しようとする課題は、甲第1号証の段落【0004】に、「【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、ストロークが大きくて流量制御範囲が大きく、流量制御にばらつきが生じることがなく、パーティクルの発生を防止できてクリーン化を達成できるダイヤフラム式流量調整弁を提供しようとするものである。」と記載されているように、「(弁の)ストロークが大きくて流量制御範囲が大きく」することを含むものの、本件特許発明1の解決しようとする課題ともいえる「流量調節弁が微開時の微小流量の調節を可能とする」ことまでを含むものとはいえない。
そして、甲2発明において、環状溝部(溝12)を設けることの目的ないし技術的意義は、「この降弁に際して先ず弁体突出部11が弁座開口部に挿入され流出孔側への急激な流量を制限する事によつて溝12内に強力な渦流を生ぜしめることが可能となりこの渦流によつて両摺合せ面の激突に対して瞬間的に緩衝作用を達せしめ得るのである。」(甲第2号証の第3欄7行?13行)なる記載から、「環状溝部(溝12)に渦流を発生させ閉弁時に瞬間的に緩衝作用をなす」ことであると解することができるが、これは、本件特許発明1において、環状溝部を設けることの目的ないし技術的意義である「流量調節弁が微開時の微小流量の調節を可能とする」こととは異なるものである。
そうすると、そもそも「流量調節弁が微開時の微小流量の調節を可能とする」という解決しようとする課題を有しているとはいえない甲1発明の流量調節弁に、この課題を解決するために何らかの構成を採用することに動機づけはなく、しかも、上記のように、甲2発明の環状溝部及び第二弁体は、弁の微開時の微小流量の調節をするものであるとはいえないから、甲1発明に甲2発明を適用し、相違点2及び3に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

イ.甲3発明及び甲3発明の甲1発明への適用について
・甲3発明
「ステムの軸方向の進退移動により連通口に挿入可能で、垂下突設された第一弁体(「バルブヂスク3」が相当。以下同様。)と、弁座面(接觸面6)に接離可能にされ、該第一弁体(バルブヂスク3)から径方向へ隔離した位置に形成されると共に、該弁座面(接觸面6)に向かって突出する円環状凸条の第二弁体(凹溝8より径方向外側で接觸面6と接する箇所)と、これら第一弁体(バルブヂスク3)と第二弁体(凹溝8より径方向外側で接觸面6と接する箇所)の間に形成された環状溝部(凹溝8)と、を具備する流量調節弁(フランヂバルブ)。」

・甲3発明の甲1発明への適用について
上記のように、甲1発明の解決しようとする課題は、本件特許発明1の解決しようとする課題ともいえる「流量調節弁が微開時の微小流量の調節を可能とする」ことまでを含むものとはいえない。
そして、甲3発明において、環状溝部(凹溝8)を設けることの目的ないし技術的意義は、「『バルブヂスク』(3)ト通液孔(通氣孔)(5)トノ間ヨリ漏洩セル蒸氣又ハ液體ハ凹溝(7)(7’)間に入リ凹溝(8)の弧面ニ衝突シテ渦動ヲナシツ、『バルブ』ノ接觸面(6)ヲ通過シ上方ニ出ツルモノトス」(甲第3号証の實用新案ノ性質、作用及効果ノ要領 3行?5行)及び「又『バルブシート』ハ『バルブ』ノ閉塞ニ當リテ『バルブヂスク』ノ周圍ヨリ漏洩渦動スル蒸氣又ハ液體ノタメニ清掃セラレ塵埃錆等ノ附着スル事無ク」(甲第3号証の實用新案ノ性質、作用及効果ノ要領 8行?10行)なる記載から、「環状溝部(凹溝8)に蒸気や液体に渦動を発生させ、バルブシートを清掃し、塵埃、錆等を附着させないこと」であると解することができるが、これは、本件特許発明1において、環状溝部を設けることの目的ないし技術的意義である「流量調節弁が微開時の微小流量の調節を可能とする」とは異なるものである。
そうすると、そもそも「流量調節弁が微開時の微小流量の調節を可能とする」という解決しようとする課題を有しているとはいえない甲1発明の流量調節弁に、この課題を解決するために何らかの構成を採用することに動機づけはなく、しかも、上記のように、甲3発明の環状溝部及び第二弁体は、弁の微開時の微小流量の調節をするものであるとはいえないから、甲1発明に甲3発明を適用し、相違点2及び3に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

ウ.甲4発明及び甲4発明の甲1発明への適用について
・甲4発明
「ステム(「弁軸9」が相当。以下同様。)の軸方向の進退移動により連通口に挿入可能で、垂下突設された第一弁体(裁頭円錐体4a)と、弁座面(弁シート15)に接離可能にされ、該第一弁体(裁頭円錐体4a)から径方向へ隔離した位置に形成されると共に、該弁座面(弁シート15)に向かって突出する円環状凸条の第二弁体(弁シート15に当接する部分)と、これら第一弁体(裁頭円錐体4a)と第二弁体(弁シート15に当接する部分)の間に形成された環状溝部と、を具備する流量調節弁(ガスバルブ)。」

・甲4発明の甲1発明への適用について
上記のように、甲1発明の解決しようとする課題は、本件特許発明1の解決しようとする課題ともいえる「流量調節弁が微開時の微小流量の調節を可能とする」ことまでを含むものとはいえない。
そして、甲4発明において、「環状溝部」及び「第二弁体」を設けることの目的ないし技術的意義については甲第4号証には何ら開示されていないことから、これらを設けることの目的ないし技術的意義が、本件特許発明1において、環状溝部を設けることの目的ないし技術的意義である「流量調節弁が微開時の微小流量の調節を可能とする」と同じであるか不明である。
そうすると、そもそも「流量調節弁が微開時の微小流量の調節を可能とする」という解決しようとする課題を有しているとはいえない甲1発明の流量調節弁に、この課題を解決するために何らかの構成を採用することに動機づけはなく、しかも、上記のように、甲4発明の環状溝部及び第二弁体は、弁の微開時の微小流量の調節をするものであるとはいえないから、甲1発明に甲4発明を適用し、相違点2及び3に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

エ.甲5発明及び甲5発明の甲1発明への適用について
・甲5発明
「ステム(「バルブステム52」が相当。以下同様。)の軸方向の進退移動により連通口(バルブポート開口16)に挿入可能で、垂下突設された第一弁体(バルブヘッド51)と、弁座面(弁座面19)に接離可能にされ、該第一弁体(バルブヘッド51)から径方向へ隔離した位置に形成されると共に、該弁座面(弁座面19)に向かって突出する円環状凸条の第二弁体(シール面84)と、これら第一弁体(バルブヘッド51)と第二弁体(シール面84)の間に形成された環状溝部(U字状の溝86)と、を具備する流量調節弁(ポペットバルブ)。」

・甲5発明の甲1発明への適用について
上記のように、甲1発明の解決しようとする課題は、本件特許発明1の解決しようとする課題ともいえる「流量調節弁が微開時の微小流量の調節を可能とする」ことまでを含むものとはいえない。
そして、甲5発明において、環状溝部(U字状の溝86)を設けることの目的ないし技術的意義は、「シール面84の内側には、わずかなフレキシビリティをシール面84に提供して、弁座面に対する適合性を確保するU字状の溝86が形成されている。」(甲第5号証の13頁12行?13行)なる記載から、「シール面84にフレキシビリティを提供する」ことであると解することができるが、これは、本件特許発明1において環状溝部を設けることの目的ないし技術的意義である「流量調節弁が微開時の微小流量の調節を可能とする」とは異なるものである。
そうすると、そもそも「流量調節弁が微開時の微小流量の調節を可能とする」という解決しようとする課題を有しているとはいえない甲1発明の流量調節弁に、この課題を解決するために何らかの構成を採用することに動機づけはなく、しかも、上記のように、甲5発明の環状溝部及び第二弁体は、弁の微開時の微小流量の調節をするものであるとはいえないから、甲1発明に甲5発明を適用し、相違点2及び3に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

オ.周知技術及び周知技術の甲1発明への適用について
・周知技術
「第二弁体を円環状凸条とし環状溝部を設ける構造」

・周知技術の甲1発明への適用について
上記のように、甲1発明の解決しようとする課題は、本件特許発明1の解決しようとする課題ともいえる「流量調節弁が微開時の微小流量の調節を可能とする」ことまでを含むものとはいえない。
そして、上記ア.?エ.に記載したように、上記甲第2号証?甲第5号証において、環状溝部を設けることの目的ないし技術的意義は、本件特許発明1のものと異なるか、あるいはその目的ないし技術的意義が不明なものであるから、上記甲第2号証?甲第5号証から抽出した上記周知技術においても、環状溝部を設けることの目的ないし技術的意義は、本件特許発明1のものと異なるか、あるいはその目的ないし技術的意義が不明なものである。
そうすると、そもそも「流量調節弁が微開時の微小流量の調節を可能とする」という解決しようとする課題を有しているとはいえない甲1発明の流量調節弁に、この課題を解決するために何らかの構成を採用することに動機づけはなく、しかも、上記のように、上記周知技術の環状溝部及び第二弁体は、弁の微開時の微小流量の調節をするものであるとはいえないから、甲1発明に上記周知技術を適用し、相違点2及び3に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

なお、請求人は、口頭審理陳述要領書(4頁29行?8頁25行)及び口頭審理において、進歩性は請求項の記載事項に基づいて判断すべきである、本件特許の請求項1の記載では被請求人の主張する「広い流量範囲で且つ微細な流量調整」を行う等の作用効果を奏さないから、本件特許発明1は、単に寄せ集めの発明である旨を主張しているところ、流量調節弁のリフト量Lと流量Qの関係を示したグラフである本件特許の図12を参照すると、本件特許の請求項1に記載の発明(本件特許発明1)に含まれる実施例1(図7に示される第一弁体(テーパ形状)及び第二弁体を有する流量調節弁)及び比較例2(図9に示される第一弁体(円柱形状)及び第二弁体を有する流量調節弁)においては、微開時の微小流量の調節が可能となっている。
一方、本件特許発明1に含まれない、比較例1(図8に示される第一弁体(テーパ形状)のみを有する流量調節弁)及び比較例3(図10に示される第二弁体のみを有する流量調節弁)では、微開時の微小流量の調節(微細な流量調節)ができないものとなっている。
したがって、本件特許発明1は、第一弁体及び第二弁体の相互作用により、少なくとも微開時の流量調節(微細な流量調節)を可能としているものであるから、単なる寄せ集めの発明であるとまではいえない。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(3)小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲1発明に甲第2?5号証のいずれかに記載された発明を適用することにより、または甲1発明に甲第2?5号証に記載された周知の技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

7.本件特許発明2、3について
(1)判断
甲第6号証の記載事項及び図示内容を総合すると、甲6号証には、「ねじによる位置決め機構」に関する発明が記載されているものと認められる。
しかしながら、本件特許発明2、3はいずれも本件特許発明1を引用する発明であって、本件特許発明1に発明特定事項を付加する発明である。そして、上記6.で述べたとおり、本件特許発明1が、甲1発明に甲第2?5号証のいずれかに記載された発明を適用することにより、または甲1発明に甲第2?5号証に記載された周知の技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない以上、本件特許発明2、3もまた、甲1発明に甲第2?5号証のいずれかに記載された発明を組み合わせた発明に、甲第6号証に記載された発明を適用することにより、または、甲1発明に甲第2?5号証に記載された周知の技術を適用した発明に、甲第6号証に記載された発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

8.本件特許発明4について
(1)判断
本件特許発明4は本件特許発明1を引用する発明であって、本件特許発明1に発明特定事項を付加する発明である。そして、上記6.で述べたとおり、本件特許発明1が、甲1発明に甲第2?5号証のいずれかに記載された発明を適用することにより、または甲1発明に甲第2?5号証に記載された周知の技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない以上、本件特許発明4もまた、甲第1号証に記載された発明に甲第2?5号証のいずれかに記載された発明または甲第2?5号証に記載された周知の技術を組み合わせまたは適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

9.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては本件特許発明1ないし本件特許発明4を無効にすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2011-09-30 
出願番号 特願2003-399302(P2003-399302)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 刈間 宏信  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 神山 茂樹
堀川 一郎
登録日 2009-01-23 
登録番号 特許第4247386号(P4247386)
発明の名称 流量調節弁  
代理人 弁護士法人 衞藤法律特許事務所  
代理人 坂田 泰弘  
代理人 久保 幸雄  
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