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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1247112
審判番号 不服2007-15581  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-04 
確定日 2011-11-16 
事件の表示 特願2006-500677「モビール形状概念を基礎にした構文分析方法及びこれを用いた自然語検索方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月4日国際公開、WO2004/095310、平成18年10月26日国内公表、特表2006-524372〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2004年4月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年4月24日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成19年3月1日付けで拒絶査定され、これに対して同年6月4日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同日付けで手続補正書が提出されたが、当審において平成22年11月4日付けで拒絶理由が通知され、平成23年5月9日付けで手続補正書が提出されたものである。


2.本願特許請求の範囲の記載
本願特許請求の範囲の記載は、平成23年5月9日付け手続補正書に記載された以下のとおりのものである。なお、下線部が、平成19年6月4日付け手続補正書の記載からの補正部分である。
「 【請求項1】
入力された文章の形態素を分析する形態素辞書プログラム手段と、文法規則が格納される文法規則データベース手段と、助詞と語尾を共に統語の単位として取り扱う標識理論に基づいて用言語尾の統語的地位を認定し、語彙間の統合関係が完全に文法的に規定され得るように、文章の各構成成分の語幹及び語尾など中心語が有する下位範疇の内訳が格納される下位範疇化データベース手段と、を少なくとも具備してなるコンピュータによって構文を分析して構文の文法的機能を明示する、構文分析方法であって、
(a)前記コンピュータに分析すべき文章が入力されると、前記形態素辞書プログラム手段により各語節形態素内訳を分析し、各語節形態素分析資料のうち該当入力資料に適した形態素を選択し、前処理を実施する形態素分析段階と、
(b)前記分析された形態素を、前記文法規則データベース手段に格納された文法的規則によって文章の部分的な構造を確立し、前記下位範疇化データベース手段を用いて全体的な構造を確立し、各構造の加重値を計算して、最も適した最適例を確定して出力する構文分析段階と、
からなることを特徴とする、ツリー形状に解析を行う構文分析方法。」


3.当審において通知した拒絶理由
当審において、平成22年11月4日付け拒絶理由通知書の内、「2)」で明細書及び特許請求の範囲の記載要件に対して通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、以下のとおりである。
「本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。

1.請求項1における「入力された文章の形態素を分析する形態素辞書プログラム手段と、文法規則が格納される文法規則データベース手段と、助詞と語尾を共に統語の単位として取り扱う標識理論に基づいて用言語尾の統語的地位を認定し、語彙間の統合関係が完全に文法的に規定され得るように、文章の各構成成分の語幹及び語尾など中心語が有する下位範疇の内訳が格納される下位範疇化データベース手段と、を少なくとも具備してなるコンピュータ」と、明細書段落番号0054との記載が対応していない。
2.請求項1における「入力された文章の形態素を分析する形態素辞書プログラム手段」は、辞書とプログラムの関係及びその構成が明確でないため、請求項1に記載された発明が明確でない。また、明細書の記載(例えば、段落番号0038)においても、同様であるため、実施可能要件を満たしていない。
3.請求項1における「助詞と語尾を共に統語の単位として取り扱う標識理論に基づいて用言語尾の統語的地位を認定し、語彙間の統合関係が完全に文法的に規定され得るように、文章の各構成成分の語幹及び語尾など中心語が有する下位範疇の内訳が格納される下位範疇化データベース手段」で、「助詞と語尾を共に統語の単位として取り扱う標識理論」の内容が不明であるため、請求項1に記載された発明が明確でない。また、明細書の記載においても、同様であるため、実施可能要件を満たしていない。
4.請求項1における「前記分析された形態素を、前記文法規則データベース手段に格納された文法的規則によって文章の部分的な構造を確立し、前記下位範疇化データベース手段を用いて全体的な構造を確立し、各構造の加重値を計算して、最も適した最適例を確定して出力する構文分析段階と、」において、各「確立」、「計算」、「確定」の(基本的)アルゴリズムが不明であるため、請求項1に記載された発明が明確でない。また、明細書の記載においても、同様であるため、実施可能要件を満たしていない。
5.請求項1における「モビール形状概念を基礎にした」の技術的意味が不明であるため、請求項1に記載された発明が明確でない。また、明細書の記載においても、同様であるため、実施可能要件を満たしていない。
6.明細書の段落番号、0038、0040、0043、0046、0048の内容についての説明が欠如しているため、その意味することが不明である。
7.図面図4、図6、図7、図8、図9、図10、図11、図12の記載内容について、自明ではなく、また、具体的説明が明細書中で、開示されていないため、その意味することが、不明である。(それぞれの記号、数値、文字が何を意味するの不明であり、それらと図全体との関係が、不明である。)」


4.請求人の意見書における主張
上記当審拒絶理由の通知に対し、請求人が平成23年5月9日付けの手続補正書(上記2.で摘記した特許請求の範囲の請求項1を補正したのみ)とともに提出した同日付け意見書における主張の概要は、以下のとおりのものである。
「拒絶の理由2によれば、本件出願は特許法第36条第4項および第6項の規定をみたさないとのことですが、そのようなことはないと考えます。
(4.1)拒絶の理由2の1.および2.について
また、請求項1における「入力された文章の形態素を分析する形態素辞書プログラム手段と、文法規則が格納される文法規則データベース手段と、助詞と語尾を共に統語の単位として取り扱う標識理論に基づいて用言語尾の統語的地位を認定し、語彙間の統合関係が完全に文法的に規定され得るように、文章の各構成成分の語幹及び語尾など中心語が有する下位範疇の内訳が格納される下位範疇化データベース手段と、を少なくとも具備してなるコンピュータ」は第0054段落の「・・・前記制御部は、図1の前記形態素辞書プログラム1と、意味属性辞書プログラム2と、多重形態素目録プログラム3とを含み、前記格納装置は、文法的規則が格納される文法規則データベース4と、前記下位範疇化データベース5と、前記付加詞類型データベース6とを含む。」という記載と、「手段」の有無において相違し、実施可能要件を満たさないとのことですが、第0054段落の「形態素辞書プログラム」、「文法規則データベース」等はコンピュータのハードウェア資源とソフトウェアが協働して構成される具体的な手段であることは明らかであり、そのような手段であることを明瞭にするために請求項1では「形態素辞書プログラム手段」、「文法規則データベース手段」等と記載しているのに過ぎず、両者は実質的に同一です。したがって、実施可能要件を満たします。
(4.2)拒絶の理由2の3.および2.について
請求項1中の「助辞と語尾を共に統語の単位として取り扱う標識理論」が不明瞭であるとのことですが、これは助辞(例えば格助辞)を語尾とを同様に取り扱い、助辞を「subject_marker」と表すのに準じて語尾(動詞の語尾)を「verbal_marker」と表示して統一的に扱うことです。
(4.3)拒絶の理由2の4.について
請求項1中の「前記分析された形態素を、前記文法規則データベース手段に格納された文法的規則によって文章の部分的な構造を確立し、前記下位範疇化データベース手段を用いて全体的な構造を確立し、各構造の加重値を計算して、最も適した最適例を確定して出力する構文分析段階」中の「確立」、「計算」、「確定」のアルゴリズムが不明であるから実施可能要件を満たしていないとのことですが、この点は、通常の言語処理であり、不明瞭でないと考えます。
(4.4)拒絶の理由2の5.について
請求項1中の「モビール形状概念を基礎にした」の技術的な意味合いが不明瞭であるとのことですので、図5に示されるモビール形状概念を利用した構文解析の結果を示す図から明らかなように「ツリー形状に解析を行う」という表現に改めました。
(4.5)拒絶の理由2の6.および7.について
明細書の第0038段落、第0040段落。第0043段落、第0046段落、第0048段落の内容および図4、図6?図12の記載が不明であるとのことですが、上述の本件発明の内容の範囲では、充分に理解可能と考えます。」


5.当審の判断
当審拒絶理由に対して、請求人が提出した上記平成23年5月9日付けの手続補正書及び同日付けの意見書の内容を検討した結果、当審は、以下のとおり判断する。
上記3.で示した当審拒絶理由において、発明が不明確であり、また、実施可能要件を満たしていないと指摘した項番3.及び4.については、以下の5-1及び5-2で述べるとおり、依然として、発明が不明確であり、また、実施可能要件を満たしていないから、通知した拒絶理由は解消していない。
なお、項番5.で指摘した点については、上記手続補正書で補正された請求項1の記載内容、及び、関係する明細書の記載内容から拒絶理由の解消が図られたと判断する(また、項番2.で指摘した点については、形態素分析(解析)の技術背景を勘案すれば、必ずしも当を得たものとはいえなかったものと判断する。)。

5-1.項番3.で指摘した点について
ア 請求項1は、「助詞と語尾を共に統語の単位として取り扱う標識理論に基づいて用言語尾の統語的地位を認定し、語彙間の統合関係が完全に文法的に規定され得るように、文章の各構成成分の語幹及び語尾など中心語が有する下位範疇の内訳が格納される下位範疇化データベース手段」と特定するが、「助詞と語尾を共に統語の単位として取り扱う標識理論」の内容が不明であるため、単に「標識理論に基づいて」の記載のみでは、それにより、用語語尾の統語的地位をどのように認定し、語彙間の統合関係が完全に文法的に規定され得るためにどのような寄与(機能)が果たされるのか、把握できず、発明特定事項が明確でない。また、以下のイ及びウのとおり、発明の詳細な説明を参酌しても、それらの点を明確に把握することはできず、併せて実施可能要件を満足するものともいえない。

イ 当該「標識理論」について、発明の詳細な説明の記載を参酌すると、上記アで摘記した請求項1の記載と同趣旨の記載内容(【0020】、【0023】、【0026】)を除けば、以下の記載を摘記することができる。
(ア)「このような標識理論の核心文法モデルは、助詞と語尾を共に統語の単位、すなわち1つの単語として取り扱うものである。例えば、前述した活用概念において、「Youngheeneun haggyoe ganda (英姫は学校に行く)」と、「Cheolsooneun haggyoe ganeun Youngheereul boatta (哲秀は学校に行く英姫を見た)」という文章がある時、標識理論は、
2A. [Younghee - neun haggyo - e ga] - n - da.
2B. [Cheolsoo - neun [haggyo - e ga] - neun Younghee - reul bo] -
at - ta .
のように、「ganeun」の「-neun」又は「ganda」の「-n-」と「-da」は、いずれも標識であり、統語的単位に区分される。そして、各々の標識が担当する機能は互いに異なる。
すなわち、「ganeun」の「-neun」は、動詞句を名詞と統合させる役目をするが、「ganda」の「-n-」は、現在(進行)形を、そして「-da」は、叙述の書法を示す。このようにすることによって、語彙間の統合関係が完全に文法で規定されることができ、これにより、文法と分析エンジン間の独立性が向上することによって、誤分析資料の発見や修正も容易になる。」(【0027】?【0030】)
(イ)「このような標識理論に基づく本発明の本発明の好ましい一実施例に係るモビール形状概念を基礎にした構文分析方法は、図1に示すように、構文を分析して構文の文法的機能を明示するための構文分析方法であって、語順が倒置された文章の分析が可能なように、助詞及び語尾を独立した単語として判断し、形態素の文法的機能と特徴をデータベースに予め格納し、分析が必要な構文が入力されれば、各成分の中心語が有する厳密な下位範疇化内訳を基盤にして、これに含まれた意味属性(semantic feature)及び助詞形態、そして範疇情報(categorial identity)に基づいて構文分析を試みることによって、過度生成を抑制し、下位範疇化情報に予め規定されている文法的機能(grammatical role)情報を基準にして各形態素間の関係を特定記号で明記して、構文の文法的関係を明示するものであって、大きく、形態素分析段階S1、S2、S3及び構文分析段階S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10から構成される。」(【0032】)
(ウ)「ここで、前記下位範疇化データベース5は、助詞と語尾を共に統語の単位として取り扱う標識理論に基づいて用言語尾の統語的地位を認定し、語彙間の統合関係が完全に文法的に規定され得るように、文章の各構成成分の語幹及び語尾など中心語が有する下位範疇の内訳が格納されるものであって、下記に例示するように、例えば、中心語「meogda(食べる)」において「meog-」の変形可能な用言語尾の形態に関する情報を格納するものである。
<下位範疇化データベースの適用例>
meog NP(subtype ~= [human|animal]; jcval *= < i >)[c_sbj]
NP(type ~= [concrete]; subtype~= [food|medicine|abstract|fuel];
jcval *= < eul >)[c_obj]
{A_Type1}
pv
......
meogi NP(jcval *= < i >; !!(nbval); type ~= [alive])[c_sbj]
NP(jcval *= < ege >; type ~= [alive])[c_dat]
NP(jcval *= < eul>; subtype ~= [food|liquid])[c_obj]
{A_Type1}
pv
......」(【0045】、【0046】)

ウ 上記イの(ア)の記載によると、標識理論は、「『ganeun』の『-neun』又は『ganda』の『-n-』と『-da』は、いずれも標識であり、統語的単位に区分される。そして、各々の標識が担当する機能は互いに異なる。すなわち、『ganeun』の『-neun』は、動詞句を名詞と統合させる役目をするが、『ganda』の『-n-』は、現在(進行)形を、そして『-da』は、叙述の書法を示す。」ように機能するものと把握される。しかし、一般に文章(構文)が助詞抜きで構成されるものとして捉えることは困難であるところ、標識理論が語尾と共に統語の単位として取り扱うもう一方の「助詞」については、上記イの(ア)で摘記した記載において全く触れられておらず、それは、上記イの(イ)及び(ウ)を含めたその他の発明の詳細な説明においても同様である。結局、発明の詳細な説明は、標識理論が取り扱う統語の単位の内、語尾のみに着目した分析を説明したことにとどまり、助詞については記載も示唆もないから片手落ちといわざるを得ない。
してみると、標準理論において、上記のとおり語尾に対する役割(機能)はある程度把握できるとしても、助詞に対する役割(機能)については、発明の詳細の説明には記載も示唆もないから(勿論、当該技術分野において自明な事項ではない。)、用語語尾の統語的地位を認定し、語彙間の統合関係が完全に文法的に規定され得る効果を奏するために、助詞に対する役割(機能)がどのように寄与するのか、それとも、それに関係なく該語尾に対する役割(機能)のみで十分対処できるものであるのか、本願明細書の発明の詳細の説明から理解することは困難である。

エ 請求人は、上記4.で示したとおり、先の意見書の「(4.2)」において、「請求項1中の『助辞と語尾を共に統語の単位として取り扱う標識理論』が不明瞭であるとのことですが、これは助辞(例えば格助辞)を語尾とを同様に取り扱い、助辞を『subject_marker』と表すのに準じて語尾(動詞の語尾)を『verbal_marker』と表示して統一的に扱うことです。」と主張するが、「助辞を『subject_marker』と表すのに準じて語尾(動詞の語尾)を『verbal_marker』と表示して統一的に扱うこと」は、特許請求の範囲又は明細書の発明の詳細な説明に記載も示唆もない事項であり、かつ、当該技術分野において自明といえる事項でもないから、当該主張は、何ら根拠を伴うものではなく失当であり、採用することはできない。

オ 以上のとおりであるから、当審拒絶理由において項番3.で指摘した点に係る拒絶理由は解消していない。

5-2.項番4.で指摘した点について
ア 請求項1は、「構文分析段階」について、「前記分析された形態素を、前記文法規則データベース手段に格納された文法的規則によって文章の部分的な構造を確立し、前記下位範疇化データベース手段を用いて全体的な構造を確立し、各構造の加重値を計算して、最も適した最適例を確定して出力する」ものとして特定するが、当該特定のみでは、各「確立」、「計算」、「確定」の(基本的)アルゴリズムが不明、敷衍すれば、以下の(a)?(d)のとおり、請求項1の記載事項では不明であるから、請求項1に記載された発明は明確でない。
(a)文章の部分的な構造の確立について
文章の部分的な構造とは、文章構造、すなわち構文上のどのような観点に着目したものであるのか、そして、「文法規則データベース手段に格納された文法的規則によって」どのような手順により確立されるのか、
(b)全体的な構造の確立について
全体的な構造とは、文章構造、すなわち構文上のどのような観点又は構成要素に対するものであるのか、そして、「下位範疇化データベース手段を用いて」どのような手順により確立されるのか、
(c)加重値の計算について
「各構造の加重値」とは、どのような基準を用いてどのような手順により計算されるのか、
(d)最適例の確定について
最も適した最適例とは、何に着目してどのような手順により確定されるのか、

また、以下のイ?カで説示のとおり、発明の詳細な説明を参酌しても、それらの点を明確に把握することはできず、また、併せて実施可能要件を満足するものともいえない。

イ この「構文分析段階」について、発明の詳細な説明の記載を参酌すると、上記アで摘記した請求項1の記載と同趣旨の記載内容(【0020】)を除けば、以下の記載を摘記することができる。
(ア)「次いで、本発明の構文分析段階S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10は、区分された形態素を文法規則によって文章の部分的な構造をまず確立し、修飾の形態によって全体的な構造を確立し、各構造の加重値を計算して最適例を確定し、各形態素間の関係を特定記号で明記し、構文の文法的関係を明示するものであって、図1に示すように、前処理段階S4と、部分構造形成段階S5と、全体構造形成段階S6、S7及び全体構造確定段階S7、S8、S9、S10から構成される。」(【0035】)
(イ)「次いで、前記部分構造形成段階S5は、図3に示すように、前記意味属性品詞付着形態素が入力されれば(S51)、個別形態素を処理し(S52)、文法規則データベース4に格納された文法的規則によって局部構造が存在するか否かを判断して(S53)、局部構造を形成し(S54)、後続処理対象を参照して(S55)、再帰的局部構造を形成する(S56)。このような再帰的局部構造は、さらに部分的な局部構造を確立して、局部構造を確立する内部ループ稼働段階S53、S54、S55、S56と、他の局部構造がなければ、次の形態素を選択して反復する内部ループ反復段階S57とを備えてなる。」(【0041】)
(ウ)「次いで、図1に示すように、前記全体構造形成段階S6、S7は、下位範疇化データベース5と付加詞類型データベース6を基準にして構文のカテゴリーと修飾形態によって全体的な構造を形成する段階(S6)と、他の形態の有効マトリクスの検査可否を判断して(S7)、次のマトリクスの部分構造形成段階(S5)を反復する段階からなる。」(【0044】)
(エ)「次いで、図1に示すように、全体構造確定段階S7、S8、S9、S10は、構文の位置又は構文の性格を基準にして各構造の重要度に基づいて加重値を計算し(S7)、最も最適の最適例を選択し(S8)、選択された最適例を出力する段階(S10)を備えてなる。」(【0049】)
(オ)「すなわち、前記制御部は、分析すべき文章が入力されれば、前記形態素辞書プログラム1により、構文の最小単位である形態素を分析し、区分された形態素を前記文法規則データベース4に格納された文法的規則によって文章の部分構造をまず確立し、前記下位範疇化データベース5に格納された下位範疇化情報を基準にして全体的な構造を確立し、各構造の加重値を計算し、最適例を選択して各形態素間の関係を特定記号で明記し、構文の文法的関係を明示するようにプログラムされる。」(【0055】)
(カ)「また、各々の下位範疇化フレーム(subcategorization frame)は、各々許容可能な修飾語類型(adjunct type)を要求する。したがって、これを修飾形態によって全体的な外部構造を確立する段階S6で記述することによって、不必要な重意的構造が生成されるのを遮断し、適切な構文分析がなされるようにする。」(【0058】)

ウ 上記アの(a)「文章の部分的な構造の確立について」に関して
上記イの(ア)及び(オ)で摘記した記載は、いずれも請求項1の記載と大差なくそれ以上の説明をもたらすものではない。また、上記イの(イ)で摘記した記載は、部分構造形成段階が、詳細には再帰的局部構造による部分的な局部構造を確立する内部ループ稼働段階を構成していることを説明しているところ、この再帰的局部構造を含め該内部ループ稼働段階についての説明は明確とはいえないことから、大枠として捉えたとしても、文章の部分的な構造が、文章構造、すなわち構文上のどのような観点に着目したものであるのか、そしてどのような手順により確立されるのか、明確に理解することはできない。

エ 上記アの(b)「全体的な構造の確立について」に関して
上記イの(ア)及び(オ)で摘記した記載は、いずれも請求項1の記載と大差なくそれ以上の説明をもたらすものではない。また、上記イの(ウ)及び(カ)で摘記した記載は、「構文のカテゴリーと修飾形態によって全体的な構造を形成する」旨を説明するが、全体的な構造が、文章構造、すなわち構文上のどのような観点又は構成要素に対するものであるのか、そして、「構文のカテゴリーと修飾形態」に着目したといえども、それからどのような手順により全体的な構造が確立されるのかを説明するものではない。

オ 上記アの(c)「加重値の計算について」に関して
上記イの(ア)及び(オ)で摘記した記載は、いずれも請求項1の記載と大差なくそれ以上の説明をもたらすものではない。また、上記イの(エ)で摘記した記載において、「構文の位置又は構文の性格を基準にして各構造の重要度に基づいて加重値を計算し」との説明から、加重値の計算に当たって基準にする項目は示されているところ、基準にする項目「構文の位置又は構文の性格」と、基づく項目「各構造の重要度」と、計算される項目「加重値」の3者が、どのような関係にあって、前者の2者からどのような手順により加重値が計算されるのかについては説明がなく不明といわざるを得ず、それは当該技術分野において自明な事項でもない。
上記イの(ア)及び(オ)で摘記した記載は、いずれも請求項1の記載と大差なくそれ以上の説明をもたらすものではない。また、上記イの(エ)で摘記した記載は、「構文の位置又は構文の性格を基準にして各構造の重要度に基づいて加重値を計算し」と説明するが、この説明のみでは、基準にする対象「構文の位置又は構文の性格」と、基づく対象「各構造の重要度」と、計算される「加重値」の3者が、どのような関係にあって、前者の2者からどのような手順により加重値が計算されるのか不明といわざるを得ず、それは当該技術分野において自明な事項でもない。

カ 上記アの(d)「最適例の確定について」に関して
上記イの(ア)、(エ)及び(オ)で摘記した記載は、いずれも請求項1の記載と大差なくそれ以上の説明をもたらすものではないから、最適例とは、何に着目してどのような手順により確定されるのか、不明である。

キ 請求人は、上記4.で示したとおり、先の意見書の(4.3)において、「 ・・・ 『確立』、『計算』、『確定』のアルゴリズムが不明であるから実施可能要件を満たしていないとのことですが、この点は、通常の言語処理であり、不明瞭でないと考えます。」と主張するが、各「確立」、「計算」、「確定」の処理対象となるそれぞれの事象内容を含めた形で釈明したものではなく、単に、「確立」、「計算」、「確定」の処理自体を捉えた主張にすぎないから、当該主張は失当であり採用することはできない。

ク 以上のとおりであるから、当審拒絶理由において項番4.で指摘した点に係る拒絶理由は解消していない。


6.むすび
以上のとおり、本願特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、同法第36条第4項第1号の規定を満たしていないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-16 
結審通知日 2011-06-21 
審決日 2011-07-04 
出願番号 特願2006-500677(P2006-500677)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G06F)
P 1 8・ 536- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 岩崎 伸二
特許庁審判官 飯田 清司
本郷 彰
発明の名称 モビール形状概念を基礎にした構文分析方法及びこれを用いた自然語検索方法  
代理人 澤田 俊夫  
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