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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01D
管理番号 1247491
審判番号 不服2009-14296  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-07 
確定日 2011-11-24 
事件の表示 特願2003-174211「光学位置感知装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年1月29日出願公開、特開2004-29019〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1 手続経緯の概要】
本件審判請求及び本願出願手続きの概要は、次のとおりである。

平成15年 6月19日:特許出願
(優先日:平成14年6月25日、マレーシア
PI 2002 2390、MY)
平成18年 6月19日:審査請求・補正
平成20年12月16日:拒絶理由の通知
平成21年 3月16日:意見・補正
平成21年 4月 7日:拒絶査定の謄本の送達
平成21年 8月 7日:審判請求
平成21年10月22日:審判請求理由の補正
平成23年 3月 1日:当審拒絶理由の通知
平成23年 5月30日:意見・補正

【第2 本願発明】
本願の請求項1?15に係る発明は、平成23年5月30日付け補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、本願発明という)は、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
2次元変位を感知するための光学位置感知装置であって、
第1の軸に対して平行に配置された少なくとも4つの光検出器からなり、該少なくとも4つの光検出器が、光検出器の第1の対及び光検出器の第2の対を形成するように構成される、第1の光センサと、
第2の軸に対して平行に配置された少なくとも4つの光検出器からなり、該少なくとも4つの光検出器が、光検出器の第3の対及び光検出器の第4の対を形成するように構成される、第2の光センサと、
前記第1の軸に対して平行に配置された第1の平行なバーのセットと、前記第2の軸に対して平行に配置された第2の平行なバーのセットとからなるエンコード手段であって、前記第2の平行なバーのセットが、前記第1の平行なバーのセットに交差し、十字形構造を形成するように構成されるエンコード手段と、
前記エンコード手段を通して前記光センサに光を放出し、光と影からなるパターンを前記光センサに投影する光源と
を含み、前記エンコード手段と前記光センサは互いに相対的に移動させることができ、その結果、前記光センサによって受信される光が変調され、
前記エンコード手段及び前記光センサは、前記エンコード手段が前記第1の軸に対して平行な方向に相対的に移動する場合、前記第2の光センサによって受信される光の変調が、前記第1の光センサによって受信される光の変調よりも大きくなり、前記エンコード手段が前記第2の軸に対して平行な方向に相対的に移動する場合、前記第1の光センサによって受信される光の変調が、前記第2の光センサによって受信される光の変調よりも大きくなるように配置され、
前記エンコード手段及び前記光検出器対は、光検出器の各対によって受信される光の総量が実質的に変化せず、前記エンコード手段の移動によって或る光検出器対の一方の光検出器によって受信される光が増加するときに、その光検出器対の他方の光検出器によって受信される光がそれを補償する態様で減少するように配置され、
前記光検出器のそれぞれの幅は、前記エンコード手段を形成する平行なバーのセットの幅の半分である、光学位置感知装置。」

【第3 当審拒絶理由の概要】
平成23年3月1日に通知された当審の拒絶理由は、平成21年3月16日付け補正により補正された特許請求の範囲に記載された発明の進歩性欠如を指摘するもので、その請求項1に係る発明についての拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。

本件出願の平成21年3月16日付け手続補正により補正された請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内において頒布された刊行物である実願平3-75237号(実開平5-19981号)のCD-ROM(以下、刊行物Aという)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【第4 刊行物に記載された事項・引用発明】
(刊行物Aに記載された事項:抜粋)
刊行物Aには、次のことが記載されている。

「【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、X方向検出用ストライプとY方向検出用ストライプとが格子状に設けてあるパッド上で移動させて用いるマウス等の光学式走査器用光電センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図3の(A) ?(D) は、従来の4個の受光素子1a?1dからなるセンサユニット2を用いる光学式走査器用光電センサ3のパッドM上での動作例を示したものである。該パッドM上には、暗ゾーン4a,4c…と明ゾーン4b,4dがX方向に平行する向きでY方向に交互に配置したY方向検出用ストライプが設けられている。
光学式走査器用光電センサ3は、受光素子1a?1dのほかに、受光素子1a,1cの出力を比較する第1の比較器5aと、受光素子1b,1dの出力を比較する第2の比較器5bとを備えている。
【0003】
パッドMは、実際にはX方向検出用ストライプとY方向検出用ストライプとを格子状に設けた構造になっているが、この図3ではY方向検出用ストライプ4のみを示している。
このY方向検出用ストライプ4は、X方向に沿って連続した暗ゾーン4a,明ゾーン4b,暗ゾーン4c,明ゾーン4d…を所定の幅で交互に配置して構成されている。
【0004】
各受光素子1a?1dは、その受光面に結像されるY方向検出用ストライプ4の各ゾーン4a,4b,4c…における像の各幅の1/2の幅の受光面を有し、2個の受光素子の受光面の幅が各ゾーン4a,4b,4c…における像の各幅と同じになっている。
【0005】
上記の如き光学式走査器用光電センサ3は、例えば矢印で示すY方向に走査される。このとき、Y方向検出用ストライプ4の各ゾーン4a,4b,4c…における像がセンサユニット2の受光面に結像され、各受光素子1a?1dで検出され、その出力が第1、第2の比較器5a,5bで比較され、ハイレベル信号H又はローレベル信号Lが出力される。
【0006】
光学式走査器用光電センサ3の移動により第1、第2の比較器5a,5bの出力H,Lが図示のように変化するが、その変化の仕方により光学式走査器用光電センサ3の移動方向(この場合には、上向きか、下向きか)が検出でき、またその変化の回数により移動量が分かる。実際には、図4に示すように、Y方向検出用として並設された4個の受光素子1a?1dからなるY方向センサユニット2と、これに対し直交する方向にX方向検出用として並設された4個の受光素子6a?6dからなるX方向センサユニット7とを組み合わせたものが光学式走査器用光電センサ3である。
【0007】
しかしながら、このような光学式走査器用光電センサ3では、例えばY方向の検出をしようとして、図4に示すようにX方向検出用ストライプ8の暗ゾーン8c上をY方向に移動した場合、Y方向センサユニット2の各受光素子1a?1dが暗ゾーン8cの像の中に全体的に入ってしまってY方向検出用ストライプ4の各ゾーン4b,4c,4d…の変化が検出できないという問題点がある。
・・・
【0008】
・・・
【0009】
・・・
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本考案は、X方向検出用ストライプとY方向検出用ストライプとが格子状に設けられているパッド上で、直線上に並べて配置した複数の受光素子からなるセンサユニットを該パッドに対して相対的に移動させ検出すべき方向に対し直交する方向のストライプを検出する光学式走査器用光電センサにおいて、前記各受光素子の受光面の幅が、少なくとも検出すべき方向に平行する方向のストライプの暗ゾーンによって該各受光素子の受光面に投影される像の幅よりも大きい値に設定されていることを特徴とする。
【0011】
【作用】
このように各受光素子の受光面の幅を、センサユニットの受光面に投影される検出すべき方向に平行する方向のストライプの暗ゾーンによる像の幅よりも大きい値にすると、該センサユニットが該検出すべき方向に平行する方向のストライプの暗ゾーン上をその長手方向に沿って移動しても、各受光素子が該暗ゾーンの像の外に必ず一部が出るようになり、この暗ゾーンの像の外に出た各受光素子の受光面の部分で検出すべき方向に対し直交する方向のストライプを検出できるようになる。
【0012】
【実施例】
以下、本考案の実施例につき、図1を参照して説明する。
パッドMは、Y方向検出用ストライプ4が横であるX方向に平行な暗ゾーン4a,4c,4e及び明ゾーン4b,4dを交互に配置して形成され、X方向検出用ストライプ8が縦であるY方向に平行な暗ゾーン8a,8c,8e及び明ゾーン8b,8dを交互に配置して形成され、X方向及びY方向とも同じ種類のインクで且つ各ゾーンの幅を同じにして印刷されている。
図示のように本実施例のセンサユニット2は、その受光面に投影される検出すべき方向即ちY方向に平行に連続するストライプ8における暗ゾーン8a,8c,8e…の像の幅より大きい幅の受光面をそれぞれもつ各受光素子11a?11dで構成されており、この実施例の場合、当該受光面の幅を当該像の幅の約1.5倍に設定してある。各受光素子11a?11dの長さは従来と同様にストライプ4における各ゾーンの幅の1/2である。
【0013】
この実施例では、Y方向検出用ストライプ4を検出するセンサユニット2に本考案を適用した例について示したが、X方向検出用ストライプ8を検出するセンサユニットにも同様に適用し、X方向検出用についても、その受光面に投影される検出すべき方向即ちX方向に平行に連続するストライプ4における暗ゾーン4a,4c,4e…の像の幅よりも大きい幅の受光面をそれぞれもつ同じ各受光素子で構成した図示しないセンサユニットを用い、このようなセンサユニットを前述のセンサユニット2に対し90度だけ向きを変えて配置すればよい。
【0014】
図2は本考案に係る光学式走査器用光電センサを矢印で示すY方向に走査させた場合における、パッド上の位置と出力との関係を示す説明図であり、(A)?(D)は位置の変化と出力の関係を示している。
上述のようなセンサユニット12を用いた本考案に係る光学式走査器用光電センサ13は、受光素子11a?11dのほかに、受光素子11a,11cの出力を比較する第1の比較器5aと、受光素子11b,11dの出力を比較する第2の比較器5bとを備えている。光学式走査器用光電センサ31は、Y方向検出用ストライプ4の各ゾーン4a,4b,4c…における像がセンサユニット12の受光面に結像され、各受光素子11a?11dで検出され、その出力が第1の比較器5a及び第2の比較器5bで比較され、ハイレベル信号H又はローレベル信号Lが出力される。
【0015】
かかるセンサユニット12を用いると、当該センサユニット12が、例えば、図2(A)に示すように検出すべき方向に平行する方向のストライプ8における暗ゾーン8c上をその長手方向に沿って移動しても、各受光素子11cと11dが該暗ゾーン8cの像の外に必ず一部が出るようになり、この暗ゾーン8cの外に出た各受光素子11cと11dの部分でハイレベル信号Hが出力され、検出すべき方向に対し直交する方向のストライプ、即ちY方向検出用ストライプ4を検出できるようになる。実際には、図2(D)に示すように、Y方向検出用として並設された4個の受光素子11a?11dからなるY方向センサユニット12と、これに対し直交する方向にX方向検出用として並設された4個の受光素子16a?16dからなるX方向センサユニット17とを組み合わせたものを備えているのがこの光学式走査器用光電センサ13であり、X方向についてもY方向と同様に検出できる。
【0016】
【考案の効果】
以上説明したように本考案に係る光学式走査器用光電センサでは、検出すべき方向に平行する方向のストライプの暗ゾーンによる像の幅より大きい幅の受光面を各受光素子がもつ構造としたので、該センサユニットが検出すべき方向に平行する方向のストライプにおける暗ゾーン上をその長手方向に沿って移動しても、各受光素子が該暗ゾーンの像の外に必ず一部が出るようになる。このため、このとき暗ゾーンの像の外に出た各受光素子の受光面の部分で、検出すべき方向に対し直交する方向のストライプを検出することができる。・・・」

(刊行物Aに記載された発明の認定)
刊行物Aの【図3】【図4】に関する箇所に記載された技術を前提にし、【図1】【図2】に関する箇所に記載された技術的事項を認定すると、次のとおりである。

(1)
刊行物Aの段落【0001】【0006】【0012】【0015】から、次の技術的事項が読み取れる。
「パッドM上を移動する光学式走査器用光電センサ13のX方向及びY方向の移動方向や移動量を検出するための装置」

(2)
刊行物Aの段落【0012】【0014】、【図1】【図2】から、次の技術的事項が読み取れる。
「X方向に平行に配置された4つの受光素子11a?11dからなり、4つの受光素子11a?11dの出力のうち、受光素子11a、11cの出力が比較され、受光素子11b、11cの出力が比較されるように、受光素子11a、11cの第1の対、及び受光素子11b、11cの第2の対を形成する、Y方向センサユニット12」

(3)
刊行物Aの段落【0012】【0014】【0015】、【図1】【図2】から、次の技術的事項が読み取れる。
「Y方向に平行に配置された4つの受光素子16a?16dからなり、4つの受光素子16a?16dの出力のうち、受光素子16a、16cの出力が比較され、受光素子16b、16dの出力が比較されるように、受光素子16a、16cの第1の対、及び受光素子16b、16dの第2の対を形成する、X方向センサユニット17」

(4)
刊行物Aの段落【0012】【0014】【0015】、【図1】【図2】から、次の技術的事項が読み取れる。
「Y方向検出用ストライプ4が、X方向に平行な暗ゾーン4a、4c、4e及び明ゾーン4b、4dを交互に配置して形成され、X方向検出用ストライプ8が、Y方向に平行な暗ゾーン8a、8c、8e及び明ゾーン8b、8dを交互に配置して形成され、Y方向検出用ストライプ4とX方向検出用ストライプ8とが十字形構造を形成するように印刷された、パッドM」

(5)
刊行物Aに「【考案の詳細な説明】【0001】【産業上の利用分野】本考案は、X方向検出用ストライプとY方向検出用ストライプとが格子状に設けてあるパッド上で移動させて用いるマウス等の光学式走査器用光電センサに関するものである。」と記載されているように、光学式マウス等に応用されることが前提となっている。そして、一般的に、光学式マウスは、マウス内に設けた光源から発せられた光をマウスパッドによる反射光としてマウス内に設けた光検出器により検出するものである。
よって、刊行物Aに記載されたパッドMは、明示の限定は無いものの、光源からの光を反射することにより、Y方向検出用ストライプ4とX方向検出用ストライプ8による明暗のパターンを、光学式走査器用光電センサ13を構成するY方向センサユニット12及びX方向センサユニット17に投影する機能を有するものである推測されから、刊行物Aの記載を総合すると、次の技術的事項が読み取れる。
「パッドMによって光を反射させることにより、光学式走査器用光電センサ13に明暗のパターンを投影する光源」

(6)
刊行物Aに記載された、パッドMと、光学式走査器用光電センサ13を構成するY方向センサユニット12及びX方向センサユニット17とは、互いに相対的に移動させることができるのは明らかで、その結果、光学式走査器用光電センサ13を構成するY方向センサユニット12及びX方向センサユニット17に明暗のパターンが投影されて、各受光素子11a?11d、16a?16dの受光量が変化させられるから、刊行物Aの記載を総合すると、次の技術的事項が読み取れる。
「パッドMと光学式走査器用光電センサ13とは、互いに相対的に移動させることができ、その結果、光学式走査器用光電センサ13よって受信される光が変調されること」

(7)
刊行物Aの【図2】において、X方向に平行に配置された4つの受光素子11a?11dの出力のうち、受光素子11a、11cの出力が比較され、受光素子11b、11cの出力が比較されるように、受光素子11a、11cの第1の対、及び受光素子11b、11cの第2の対を形成するように、Y方向センサユニット12が構成されている。
ここで、4つの受光素子11a?11dの各受光量は、パッドMとY方向センサユニット12とのX方向の相対的移動により変動するものの、受光素子11a、11cの出力が比較され、受光素子11b、11cの出力が比較されるように信号処理されるから、上記X方向の相対的移動による受光量の変動は打ち消し合って、受光素子対11aと11cの比較出力や、受光素子対11bと11dの比較出力としては変化が大きくはない。一方、4つの受光素子11a?11dの各受光量も、パッドMとY方向センサユニット12とのY方向の相対的移動により変動し、受光素子11a、11cの出力が比較され、受光素子11b、11cの出力が比較されるように信号処理されるから、上記Y方向の相対的移動による受光量の変動は、受光素子対11aと11cの比較出力や、受光素子対11bと11dの比較出力として、ハイレベルHとローレベルLの大きな出力変動を生じる。

刊行物Aの【図2】において、Y方向に平行に配置された4つの受光素子16a?16dの出力のうち、受光素子16a、16cの出力が比較され、受光素子16b、16cの出力が比較されるように、受光素子16a、16cの第1の対、及び受光素子16b、16cの第2の対を形成するように、X方向センサユニット17が構成されている。
ここで、4つの受光素子16a?16dの各受光量は、パッドMとX方向センサユニット17とのY方向の相対的移動により変動するものの、受光素子16a、16cの出力が比較され、受光素子16b、16cの出力が比較されるように信号処理されるから、上記Y方向の相対的移動による受光量の変動は打ち消し合って、受光素子対16aと16cの比較出力や、受光素子対16bと16dの比較出力としては変化が大きくはない。一方、4つの受光素子16a?16dの各受光量も、パッドMとX方向センサユニット17とのX方向の相対的移動により変動し、受光素子16a、16cの出力が比較され、受光素子16b、16cの出力が比較されるように信号処理されるから、上記X方向の相対的移動による受光量の変動は、受光素子対16aと16cの比較出力や、受光素子対16bと16dの比較出力として、ハイレベルHとローレベルLの大きな出力変動を生じる。

そうすると、刊行物Aに記載された、Y方向検出用ストライプ4を検出するY方向センサユニット12とX方向検出用ストライプ8を検出するX方向センサユニット17とは、各々ほぼ独立してY方向とX方向についてパッドM上での光学式走査器用光電センサ13の相対的な移動方向や移動量を検出するように配置されていると言えるから、刊行物Aの記載を総合すると、次の技術的事項が読み取れる。
「パッドM及び光学式走査器用光電センサ13は、パッドMがX方向に対して平行な方向に相対的に移動する場合、X方向センサユニット17によって受信される光の変調が、Y方向センサユニット12によって受信される光の変調よりも大きくなり、パッドMがY方向に対して平行な方向に相対的に移動する場合、Y方向センサユニット12によって受信される光の変調が、X方向センサユニット17によって受信される光の変調よりも大きくなるように配置されているもの」

(8)
刊行物Aの段落【0012】の記載によると、各受光素子11a?11dの長さは、X方向に平行な明暗ゾーン4a、4b、4c、4d、4eの幅の1/2であって、刊行物Aの段落【0014】の記載によると、各受光素子11a、11b、11c、11dに関し、受光素子11a、11c、及び、受光素子11b、11dが各々対にされて信号処理される。
ここで、【図2】(A)?(D)を参照しながら考察すると、受光素子11aと受光素子11cとに投影される、Y方向検出用ストライプ4の相対移動による明暗のパターンは、受光素子11aが明の場合は、受光素子11cが暗である(【図2】(C))、あるいは、受光素子11aが暗の場合は、受光素子11cが明である(【図2】(A))というように、受光素子11aの受光量と受光素子11cの受光量とは相補的で、受光素子11aと受光素子11cの総受光量は、センサユニット12のY方向の移動によって実質的な変化が無く、また、受光素子11bの受光量と受光素子11dの受光量とは相補的で、受光素子11bと受光素子11dの総受光量は、センサユニット12のY方向の移動によって実質的な変化が無い。
そして、刊行物Aの段落【0013】【0015】の記載によると、センサユニット17を構成する受光素子16a?16dによるX方向の移動についても同様である。
よって、刊行物Aの記載を総合すると、次の技術的事項が読み取れる。
「パッドM及び受光素子の対(11a、11c)(11b、11d)(16a、16c)(16b、16d)は、受光素子の各対によって受信される光の総量が実質的に変化せず、パッドMの移動によって或る受光素子の対の一方の受光素子によって受信される光が増加するときに、その受光素子の対の他方の受光素子によって受信される光がそれを補償する態様で減少するように配置されているもの」

(9)
刊行物Aの段落【0012】の記載によると「各受光素子11a?11dの長さは従来と同様にストライプ4における各ゾーンの幅の1/2である。」そして、刊行物Aの段落【0013】【0015】から、各受光素子16a?16dについても同様のことが言えるから、刊行物Aの記載を総合すると、次の技術的事項が読み取れる。
「受光素子11a?11dのそれぞれの長さは、パッドMのY方向用検出ストライプ4の明暗ゾーン4a、4b、4c、4d、4eの幅の1/2であり、受光素子16a?16dのそれぞれの長さは、パッドMのX方向用検出ストライプ8の明暗ゾーン8a、8b、8c、8d、8eの幅の1/2であること」

(引用発明)
以上の技術的事項(1)?(9)を総合勘案すると、刊行物Aには、次の発明(以下、引用発明という) が記載されていると認められる。

「パッドM上を移動する光学式走査器用光電センサ13のX方向及びY方向の移動方向や移動量を検出するための装置であって、
X方向に平行に配置された4つの受光素子11a?11dからなり、4つの受光素子11a?11dの出力のうち、受光素子11a、11cの出力が比較され、受光素子11b、11cの出力が比較されるように、受光素子11a、11cの第1の対、及び受光素子11b、11cの第2の対を形成する、Y方向センサユニット12と、
Y方向に平行に配置された4つの受光素子16a?16dからなり、4つの受光素子16a?16dの出力のうち、受光素子16a、16cの出力が比較され、受光素子16b、16dの出力が比較されるように、受光素子16a、16cの第1の対、及び受光素子16b、16dの第2の対を形成する、X方向センサユニット17と、
Y方向検出用ストライプ4が、X方向に平行な暗ゾーン4a、4c、4e及び明ゾーン4b、4dを交互に配置して形成され、X方向検出用ストライプ8が、Y方向に平行な暗ゾーン8a、8c、8e及び明ゾーン8b、8dを交互に配置して形成され、Y方向検出用ストライプ4とX方向検出用ストライプ8とが十字形構造を形成するように印刷された、パッドMと、
前記パッドMによって光を反射させることにより、前記光学式走査器用光電センサ13に明暗のパターンを投影する光源と
を含み、
前記パッドMと前記光学式走査器用光電センサ13とは、互いに相対的に移動させることができ、その結果、前記光学式走査器用光電センサ13によって受信される光が変調され、
前記パッドM及び前記光学式走査器用光電センサ13は、前記パッドMがX方向に対して平行な方向に相対的に移動する場合、前記X方向センサユニット17によって受信される光の変調が、前記Y方向センサユニット12によって受信される光の変調よりも大きくなり、前記パッドMがY方向に対して平行な方向に相対的に移動する場合、前記Y方向センサユニット12によって受信される光の変調が、前記X方向センサユニット17によって受信される光の変調よりも大きくなるように配置され、
前記パッドM及び前記受光素子の対(11a、11c)(11b、11d)(16a、16c)(16b、16d)は、受光素子の各対によって受信される光の総量が実質的に変化せず、前記パッドMの移動によって或る受光素子の対の一方の受光素子によって受信される光が増加するときに、その受光素子の対の他方の受光素子によって受信される光がそれを補償する態様で減少するように配置され、
前記受光素子11a?11dのそれぞれの長さは、前記パッドMのY方向用検出ストライプ4の明暗ゾーン4a、4b、4c、4d、4eの幅の1/2であり、前記受光素子16a?16dのそれぞれの長さは、前記パッドMのX方向用検出ストライプ8の明暗ゾーン8a、8b、8c、8d、8eの幅の1/2である、
前記パッドM上を移動する前記光学式走査器用光電センサ13のX方向及びY方向の移動方向や移動量を検出するための装置。」

【第5 対比】
本願発明と引用発明とを対比する。

まず、本願発明と引用発明の主たる構成要素についての対比をすると、次のとおりである。
引用発明の「受光素子11a?11d」及び「受光素子16a?16d」は、本願発明の「光検出器」に相当する。
引用発明の「Y方向センサユニット12」は、本願発明の「第1の光センサ」に相当し、同様に、引用発明の「X方向センサユニット17」は、本願発明の「第2の光センサ」に相当する。
引用発明の「パッドM」は、本願発明の「エンコード手段」に相当する。

上記の主たる構成要素の相当関係を前提に、本願発明と引用発明における各構成要素の相当関係を対比すると、次のとおりである。

(1)
引用発明の「パッドM上を移動する光学式走査器用光電センサ13のX方向及びY方向の移動方向や移動量を検出するための装置」は、本願発明の「2次元変位を感知するための光学位置感知装置」に相当する。

(2)
引用発明の「X方向に平行に配置された4つの受光素子11a?11d」は、本願発明の「第1の軸に対して平行に配置された少なくとも4つの光検出器」に相当する。
引用発明の「受光素子11a、11cの第1の対、及び受光素子11b、11cの第2の対を形成する、Y方向センサユニット12」は、本願発明の「少なくとも4つの光検出器が、光検出器の第1の対及び光検出器の第2の対を形成するように構成される、第1の光センサ」に相当する。

(3)
引用発明の「Y方向に平行に配置された4つの受光素子16a?16d」は本願発明の「第2の軸に対して平行に配置された少なくとも4つの光検出器」に相当する。
引用発明の「受光素子16a、16cの第1の対、及び受光素子16b、16dの第2の対を形成する、X方向センサユニット17」は、本願発明の「少なくとも4つの光検出器が、光検出器の第3の対及び光検出器の第4の対を形成するように構成される、第2の光センサ」に相当する。

(4)
引用発明の「X方向に平行な暗ゾーン4a、4c、4e及び明ゾーン4b、4dを交互に配置して形成」された「Y方向検出用ストライプ4」は、本願発明の「第1の軸に対して平行に配置された第1の平行なバーのセット」に相当する。
同様に、引用発明の「Y方向に平行な暗ゾーン8a、8c、8e及び明ゾーン8b、8dを交互に配置して形成」された「X方向検出用ストライプ8」は、本願発明の「第2の軸に対して平行に配置された第2の平行なバーのセット」に相当する。
また、引用発明の「Y方向検出用ストライプ4とX方向検出用ストライプ8とが十字形構造を形成するように印刷された、パッドM]は、本願発明の「前記第2の平行なバーのセットが、前記第1の平行なバーのセットに交差し、十字形構造を形成するように構成されるエンコード手段」に相当する。

(5)
引用発明の「前記パッドMによって光を反射させることにより、前記光学式走査器用光電センサ13に明暗のパターンを投影する光源」も、本願発明の「前記エンコード手段を通して前記光センサに光を放出し、光と影からなるパターンを前記光センサに投影する光源」も共に、「前記光センサに光を放出し、光と影からなるパターンを前記光センサに投影する光源」である点で共通する。

(6)
引用発明の「前記パッドMと前記光学式走査器用光電センサ13とは、互いに相対的に移動させることができ、その結果、前記光学式走査器用光電センサ13によって受信される光が変調され」ることは、本願発明の「前記エンコード手段と前記光センサは互いに相対的に移動させることができ、その結果、前記光センサによって受信される光が変調され」ることに相当する。

(7)
引用発明の「前記パッドM及び前記光学式走査器用光電センサ13は、パッドMがX方向に対して平行な方向に相対的に移動する場合、前記X方向センサユニット17によって受信される光の変調が、前記Y方向センサユニット12によって受信される光の変調よりも大きくなり、前記パッドMがY方向に対して平行な方向に相対的に移動する場合、前記Y方向センサユニット12によって受信される光の変調が、前記X方向センサユニット17によって受信される光の変調よりも大きくなるように配置され」ることは、本願発明の「前記エンコード手段及び前記光センサは、前記エンコード手段が前記第1の軸に対して平行な方向に相対的に移動する場合、前記第2の光センサによって受信される光の変調が、前記第1の光センサによって受信される光の変調よりも大きくなり、前記エンコード手段が前記第2の軸に対して平行な方向に相対的に移動する場合、前記第1の光センサによって受信される光の変調が、前記第2の光センサによって受信される光の変調よりも大きくなるように配置され」ることに相当する。

(8)
引用発明の「前記パッドM及び前記受光素子の対(11a、11c)(11b、11d)(16a、16c)(16b、16d)は、受光素子の各対によって受信される光の総量が実質的に変化せず、前記パッドMの移動によって或る受光素子の対の一方の受光素子によって受信される光が増加するときに、その受光素子の対の他方の受光素子によって受信される光がそれを補償する態様で減少するように配置され」ることは、本願発明の「前記エンコード手段及び前記光検出器対は、光検出器の各対によって受信される光の総量が実質的に変化せず、前記エンコード手段の移動によって或る光検出器対の一方の光検出器によって受信される光が増加するときに、その光検出器対の他方の光検出器によって受信される光がそれを補償する態様で減少するように配置され」ることに相当する。

(9)
引用発明の「前記受光素子11a?11dのそれぞれの長さは、前記パッドMのY方向用検出ストライプ4の明暗ゾーン4a、4b、4c、4d、4eの幅の1/2であり、前記受光素子16a?16dのそれぞれの長さは、前記パッドMのX方向用検出ストライプ8の明暗ゾーン8a、8b、8c、8d、8eの幅の1/2である」ことは、本願発明の「前記光検出器のそれぞれの幅は、前記エンコード手段を形成する平行なバーのセットの幅の半分である」ことに相当する。

(総合対比)
以上の対比を総合すると、上記(5)の構成要素を除けば、上記(1)?(4)及び(6)?(9)の構成要素は相当関係がある。
よって、本願発明と引用発明との実質的な一致点及び相違点を、本願発明の表現に統一して記述すると、次のとおりである。

(一致点)
「2次元変位を感知するための光学位置感知装置であって、
第1の軸に対して平行に配置された少なくとも4つの光検出器からなり、該少なくとも4つの光検出器が、光検出器の第1の対及び光検出器の第2の対を形成するように構成される、第1の光センサと、
第2の軸に対して平行に配置された少なくとも4つの光検出器からなり、該少なくとも4つの光検出器が、光検出器の第3の対及び光検出器の第4の対を形成するように構成される、第2の光センサと、
前記第1の軸に対して平行に配置された第1の平行なバーのセットと、前記第2の軸に対して平行に配置された第2の平行なバーのセットとからなるエンコード手段であって、前記第2の平行なバーのセットが、前記第1の平行なバーのセットに交差し、十字形構造を形成するように構成されるエンコード手段と、
前記光センサに光を放出し、光と影からなるパターンを前記光センサに投影する光源と
を含み、前記エンコード手段と前記光センサは互いに相対的に移動させることができ、その結果、前記光センサによって受信される光が変調され、
前記エンコード手段及び前記光センサは、前記エンコード手段が前記第1の軸に対して平行な方向に相対的に移動する場合、前記第2の光センサによって受信される光の変調が、前記第1の光センサによって受信される光の変調よりも大きくなり、前記エンコード手段が前記第2の軸に対して平行な方向に相対的に移動する場合、前記第1の光センサによって受信される光の変調が、前記第2の光センサによって受信される光の変調よりも大きくなるように配置され、
前記エンコード手段及び前記光検出器対は、光検出器の各対によって受信される光の総量が実質的に変化せず、前記エンコード手段の移動によって或る光検出器対の一方の光検出器によって受信される光が増加するときに、その光検出器対の他方の光検出器によって受信される光がそれを補償する態様で減少するように配置され、
前記光検出器のそれぞれの幅は、前記エンコード手段を形成する平行なバーのセットの幅の半分である光学位置感知装置。」

(相違点)
検出方式が、本願発明においては「前記エンコード手段を通して前記光センサに光を放出し、」とあるように、いわゆる「透過型」であるのに対し、引用発明では「前記パッドMによって光を反射させることにより、前記光学式走査器用光電センサ13に明暗のパターンを投影する」とあるように、いわゆる「反射型」である点。

【第6 判断】
上記相違点について、検討する。

この相違点の判断は、端的には、光エンコード手段と光センサの関係を反射型から、透過型に変更することが容易かどうかに尽きる。
そして、この種の光学位置感知装置において、検出方式として反射型も透過型も、いずれも、周知なものであり、慣用されている技術である。例えば、本願明細書の従来技術として段落【0011】に挙げられた【特許文献3】特開平6-221874号公報に記載の光学式エンコーダは、反射型であり、【特許文献4】特開平5-187890号公報に記載の光エンコーダは、透過型である。
よって、引用発明の検出方式を反射型から、本願発明の透過型とすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。

(相違点についての総合的見解)
そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び上記周知慣用技術から当業者が予測可能なものであって、格別のものではない。
結局、本願発明は、引用発明及び上記周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。

【第7 審判請求人の主張について】
審判請求人は、当審拒絶理由に対する意見書において、概略、以下のように主張しているので、検討する。

(審判請求人の主張の概要)
「引用文献Aは特に、ストライプ(本願発明における「エンコード手段」に対応)をパッドに「印刷」している点(0007、0012)、及び「光源」の使用を明記しておらず、装置は恐らく「反射型」に構成される点で、本願発明とは相違します。」
という主張に代表されるように、結局、引用発明において、エンコード手段と光センサの関係を反射型から、透過型に変更することは容易でないという主張である。

(審判請求人の主張に対する当審の見解)
しかしながら、この点については、前記【第6 判断】で説示したように、【特許文献3】【特許文献4】に開示されるような周知慣用技術からみて、当業者が容易に成し得ることである。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。

【第8 むすび】
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-22 
結審通知日 2011-06-28 
審決日 2011-07-11 
出願番号 特願2003-174211(P2003-174211)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 昌宏  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 森 雅之
越川 康弘
発明の名称 光学位置感知装置  
代理人 西山 清春  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 古谷 聡  

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