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審決分類 審判 全部無効 特17条の2、3項新規事項追加の補正  H04N
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04N
審判 全部無効 2項進歩性  H04N
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  H04N
管理番号 1247771
審判番号 無効2011-800031  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-02-25 
確定日 2011-11-14 
事件の表示 上記当事者間の特許第4464453号発明「再送信装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

本件の特許第4464453号についての手続の経緯の概要は以下のとおりである。

出願日 平成20年10月22日
(国内優先権主張 平成20年3月5日、平成20年7月25日)
手続補正 平成21年12月11日
設定登録 平成22年 2月26日
本件無効審判請求 平成23年 2月25日
手続補正 平成23年 3月24日
審判事件答弁書 平成23年 5月31日
口頭審理陳述要領書(請求人) 平成23年 8月23日
口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成23年 9月 6日
口頭審理 平成23年 9月13日


第2 本件特許発明

1 特許第4464453号の請求項1ないし5に係る発明

特許第4464453号の請求項1ないし5に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次のとおりのものである(以下、請求項1、・・・、5に係る発明を「本件発明1」、・・・、「本件発明5」などという。)。

「【請求項1】
デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、
デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部と、
アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部と、
前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し、
前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とすることを特徴とする再送信装置。
【請求項2】
前記キャリア抽出部は、
映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の再送信装置。
【請求項3】
受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の再送信装置。
【請求項4】
前記デジタル放送復調部は、復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段を備え、
前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段を備えた
ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の再送信装置。
【請求項5】
受信したデジタル放送波を増幅して前記デジタル放送復調部に出力する第1の増幅器と、受信したアナログ放送波を増幅して前記キャリア抽出部に出力する第2の増幅器と、標準電波を受信する標準電波受信部と、前記標準電波受信部により受信された標準電波に基づいて計時動作し、タイマ時刻がアナログ放送停波日に設定されたタイマ回路と、前記第1の増幅器及び第2の増幅器に動作電源を供給し、前記アナログ放送停波日に前記タイマ回路から出力される信号により前記第2の増幅器の動作電源を遮断する電源制御回路とを具備することを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の再送信装置。」

2 分説

本件発明1ないし本件発明5は、それぞれ、上記した請求項1ないし請求項5記載のとおりの構成要件をその構成としたものと認められるところ、以下での検討の便宜上、本件発明1ないし5の構成要件を、審判請求書の7.(4)(4-1)(I)本件発明の構成 に記載された、次のとおりに分説する(以下、この分説に従って、「構成要件A」、・・・、「構成要件U」などという。)。

【請求項1】
A デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、
B デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部と、
C アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部と、
D 前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し、
E 前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とすることを特徴とする再送信装置。

【請求項2】
F 前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、
G 前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、
H アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、
I 前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする
J 請求項1に記載の再送信装置。

【請求項3】
K 受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段を備えたことを特徴とする
L 請求項1又は2に記載の再送信装置。

【請求項4】
M 前記デジタル放送復調部は、復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段を備え、
N 前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段を備えたことを特徴とする
O 請求項1、2又は3に記載の再送信装置。

【請求項5】
P 受信したデジタル放送波を増幅して前記デジタル放送復調部に出力する第1の増幅器と、
Q 受信したアナログ放送波を増幅して前記キャリア抽出部に出力する第2の増幅器と、
R 標準電波を受信する標準電波受信部と、
S 前記標準電波受信部により受信された標準電波に基づいて計時動作し、タイマ時刻がアナログ放送停波日に設定されたタイマ回路と、
T 前記第1の増幅器及び第2の増幅器に動作電源を供給し、前記アナログ放送停波日に前記タイマ回路から出力される信号により前記第2の増幅器の動作電源を遮断する電源制御回路とを具備することを特徴とする
U 請求項1、2、3又は4に記載の再送信装置。


第3 請求人の主張

請求人は、本件特許発明1ないし5に係る特許を無効とする、との審決を求め、次のような無効理由を主張している。

1 無効理由の概要

(1)無効理由3-1

特許第4464453号(以下、「本件特許」という)の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項5に係る発明は、甲第1号証乃至甲第7号証に記載される発明に基づいて、本件特許優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するもの(以下、「当業者」という)が容易に発明することができたものであって進歩性を有しないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号により無効とされるべきである。

(2)無効理由3-2

本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、甲第8号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件特許優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するもの(以下、「当業者」という)が容易に発明することができたものであって進歩性を有しないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号により無効とされるべきである。

(3)無効理由3-3

本件特許の[発明の詳細な説明]は、当業者が特許請求の範囲の請求項3に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないものであるため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第123条第1項第4号により無効とされるべきである。

(4)無効理由3-4

本件特許の請求項3に係る発明は、[発明の詳細な説明]に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第123条第1項第4号により無効とされるべきである。

(5)無効理由3-5

本件特許の請求項3に係る発明は、特許を受けようとする発明が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、同法第123条第1項第4号により無効とされるべきである。

(6)無効理由3-6

本件特許は、本件特許請求の範囲及び明細書における補正について、平成21年12月11日付けの手続補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲においてされたものではないから、本件特許は特許法第17条の2第3項の規定に違反して特許されたものであり、同法第123条第1項第1号により無効とされるべきである。

2 無効理由の要点

以上のような無効理由について、具体的には以下のような主張を要点としている。なお、請求人が審判請求書で引用した(a1)、・・・、(b1)・・・などを文頭に付加した記載は、以下「記載(a1)」・・・、「記載(b1)」・・・などといい、その記載内容は、後述の第5に、(a1)、・・・、(b1)・・・などの記号を文頭に付加して掲げた。

(1)無効理由3-1(要点)

ア 本件発明1について

(ア)甲第1号証(公開特許公報:特開2004-282484号)

甲第1号証はデジタル放送-アナログ放送変換用のヘッドエンド装置を開示している。
記載(a1)によれば、甲第1号証は、CATVにおける一般的なデジ-アナ変換用のヘッドエンド装置の技術分野の先行技術である。
記載(a2)によれば、甲第1号証は発明特定事項A「デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置」を開示している。
記載(a3)によれば、甲第1号証の「復変調部20」は発明特定事項B「デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」に相当する。
記載(a4)によれば、即ち、甲第1号証の「変調器24」は発明特定事項D「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」に相当する。

(イ)甲第2号証

a 甲第2号証の1(総務省、情報通信審議会 情報通信政策部会 地上デジタル放送推進に関する検討委員会(第35回)開催案内)

甲第2号証の1は、総務省開催の「情報通信審議会 情報通信政策部会 地上デジタル放送推進に関する検討委員会(第35回)」の会議資料であって、本件特許の優先日時点で、第三者が、この甲第2号証の1の添付資料であって次項において述べられている項甲第2号証の2の複写物を入手し得たことを立証するものである。

b 甲第2号証の2(社団法人日本ケーブルテレビ連盟「第34回提出資料(石橋委員の提出資料) 参考資料2」)

記載(b1)によれば、本件特許出願時の技術背景として、地上デジタル放送の導入に際して、アナログテレビの廃棄問題を回避するためにもケーブルテレビでのデジ-アナ変換対応を検討することが技術動向となっていた。

(ウ)甲第3号証(公開特許公報:特開平5-111003号)

甲第3号証は、CATVなどの共同受信施設のヘッドエンド装置において、再送信信号を受信放送波に同期させて同一周波数・位相とすることを開示している。

具体的には、甲第3号証は、CATVなどの共同受信施設のヘッドエンド装置において、再送信チャンネルは受信チャンネルと同一チャンネルとする必要があること、再送信信号を放送電波の受信周波数と同期させる際に両周波数間の僅かなずれが原因でビート障害が問題となること、及びこの問題を解決するために受信放送波のキャリア抽出部を設けて再送信周波数を受信放送波と位相同期させることを開示している。なお、甲第3号証でいう位相同期とは周波数及び位相を一致させることを示している。
記載(c1)によれば、甲第3号証は、CATVなどの共同受信施設のヘッドエンド装置の技術分野の先行技術であり、再送信信号が受信放送波と同一チャンネルで同期されることを開示している。
記載(c2)によれば、甲第3号証は、再送信信号と受信放送波を同一チャンネルとする場合に両周波数のずれがビート障害を与え、それを解消するために、周波数・位相の同期が必要であることを教示している。
記載(c3)によれば、甲第3号証は、再送信信号に対する同一チャンネル潜在電界(飛び込み電波)によるビート障害を解消するために 再送信装置の変調器が再送信信号を潜在電界に位相同期させることを教示している。
記載(c4)によれば、甲第3号証の「選局回路11」は発明特定事項Cの「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」に相当する。
記載(c5)によれば、甲第3号証は、上記(b3)と同様に、再送信信号を受信放送波に対して位相同期することを教示している。
従って、甲第3号証は、本件特許の請求項1の発明特定事項C「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」及び発明特定事項E「前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とすること」を開示している。

(エ)甲第4号証(公開特許公報:特開平8-65651号)

甲第4号証は、CATVヘッドエンド装置において、公知のPLL回路によって再送信信号を受信放送波に同期させて双方を同一周波数・位相とすることを開示している。
具体的には、甲第4号証は、CATVヘッドエンド装置において、CATV局が再送信するTVチャンネルと地元TV局の送信チャンネルが同じである場合に両TV信号の搬送周波数のずれによる妨害画像の問題が起こること、及びこの問題を軽減するためにPLLを設けて再送信信号を受信放送波に位相同期させることを開示している。
記載(d1)によれば、甲第4号証はCATVヘッドエンド装置の技術分野の先行技術である。
記載(d2)によれば、甲第4号証は、再送信信号と受信放送波の周波数のずれが妨害画像を与え、それを解消するためにPLL回路を用いて両周波数の周波数・位相を同期させることを教示している。
記載(d3)によれば、甲第4号証の「混合器4」は発明特定事項C「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」に相当する。
従って、甲第4号証は、本件特許の請求項1の発明特定事項C「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」及び発明特定事項E「前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とすること」を開示している。

(オ)本件特許発明と先行技術文献との対比

上記より、本件特許明細書の訴求事項、甲第1号証乃至甲第4号証を総括すると以下の通りである。

甲第1号証の発明と本件発明1とは、発明特定事項A「デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信するCATV用ヘッドエンド装置」、発明特定事項B「デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」及び発明特定事項D「デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調してアナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」で一致する。

一方、甲第1号証は発明特定事項C「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」及び発明特定事項E「前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とすること」を備えない点で本件発明1と相違する。

上記相違点について、甲第3号証又は甲第4号証は、本件発明1の発明特定事項C「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」及び発明特定事項E「前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とすること」を開示している。
そして、甲第3号証及び甲第4号証はともに、CATVの再送信を行うヘッドエンド装置に関するものであるから、本件発明1及び甲第1号証に記載された発明と技術分野が同一である。

従って、本件特許で被請求人が明細書中で認定する従来技術であって甲第1号証が開示する発明特定事項A、B及びDに、甲第3号証又は甲第4号証が開示する発明特定事項C及びEを組み合わせることには、(i)動機づけが充分にあり、これらの組合せは(ii)効果の観点からも周知技術の寄せ集めと認められる。

<口頭陳述要領書による主張>
(当審注:「再送信信号のチャンネルと受信放送波のチャンネルを同一のものとすること」の動機づけについて、請求人は、口頭陳述要領書において、以下のように主張している。)
甲第1号証には、地上波デジタル放送を受信してアナログ再送信信号を送出する際に、再送信信号のチャンネルをVHF帯等のいずれかのチャンネルとすることが開示されている。
ここで、デジ-アナサイマル放送時においては、同一の放送局からの同一の映像コンテンツが、地上デジタル放送波とアナログ放送波の双方によってブロードキャストされる。
甲第1号証においては、受信デジタル放送波を再送信アナログ信号に変換する際に、再送信アナログ信号のチャンネルをVHF帯のいずれのチャンネルにするかについて、或いは再送信アナログ信号のチャンネルと受信デジタル放送波のチャンネルとの関係については明記されていない。しかし、同一の放送局からブロードキャストされる同一のコンテンツについて、その伝送形式が異なるからといって、受信デジタル放送波をアナログ変換したアナログ再送信信号と受信アナログ放送波のチャンネルを、テレビ受信機(視聴者)においてわざわざ異ならせる理由は見出されない。仮に両チャンネルを異ならせてしまうと、当然に視聴者におけるチャンネルプリセットが必要となってしまう。

同一の放送局からブロードキャストされる同一の映像コンテンツについて、途中の伝送形態が何であれ、末端のテレビ受信機にはチャンネルを同一として再送信することは、技術的課題に対する解決手段というよりは、当然の前提ないしは単なる選択事項といえる。

即ち、同一の放送局からブロードキャストされる同一の映像コンテンツについて複数の形式の伝送経路が存在する場合でも、一方の経路からの受信放送波を処理した再送信信号のチャンネルと、他方の経路から受信される受信放送波のチャネルとを同一のものとすることが、ヘッドエンド装置の当然の前提として必然的に存在する。この前提は、甲第1号証において、地上デジタル放送波をアナログ再送信信号に変換する場合においても同じはずである。
従って、甲第1号証において、「再送信信号のチャンネルと受信放送波のチャンネルを同一のものとすること」の動機付けの記載ないし示唆は充分にあるといえる。

(当審注:審判請求書においては、甲第3号証、甲第4号証には、発明特定事項Eを開示していると主張していたが、「再変調」について「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調」とすることまでは開示がないため、口頭陳述要領書において、以下のように主張している。)

甲第3号証は、同期型テレビ再送信装置において、再送信用の映像コンテンツをアナログ放送波で受信し、その映像コンテンツを再送信する際に、再送信信号のチャンネルと受信放送波のチャンネルを同一にする技術を開示している。
甲第3号証の明細書段落【0002】には、従来技術として「このような再送信装置においては、一般的には、受信チャンネルと同一チャンネルで送信する必要があるが、放送電波の受信周波数と有線テレビ施設の送信周波数が僅かに異なると、テレビ放送波が有線テレビ施設の信号を干渉してビート妨害を与える。そのため、このビート妨害を軽減するためには、有線テレビ施設の送信周波数を放送電波の周波数と位相同期させる必要がある。」が記載されている(下線は請求人が付した)。
即ち、同証は、再送信信号のチャンネルと受信放送波のチャンネルを同一のものとする場合のビート妨害軽減の課題とその解決手段(周波数同期)を記載している。

甲第4号証も、CATVヘッドエンド装置において、再送信用の映像コンテンツをアナログ放送波(S1)で受信し、その映像コンテンツにおける視覚的な妨害を軽減する処理を行い再送信する際に、再送信信号(S9)のチャンネルと受信放送波(S4)のチャンネルを同一のものとする技術を開示している。
甲第4号証の明細書段落【0003】には、従来技術として「上述したように従来は、CATV局が再送信するTVチャンネルと地元TV局の送信チャンネルとが同じチャンネルである場合の視覚的妨害を軽減するために、再送信するTV信号の送信搬送波周波数を地元TV局の送信搬送波周波数に一致させ、妨害画像が上下左右に移動するのを抑えている(いる)。」及び「同じチャンネルの2つのTV信号の画像が同一であるならば視覚的妨害は軽減できるが、異なる画像のときには画像が互いに重なった状態となり、」と記載されている(下線及び括弧書きは請求人が付した)。
即ち、同証は、本件特許発明と同様に、同一の放送局から送信される同一の映像コンテンツについて、再送信信号のチャンネルと受信放送波のチャンネルを同一のものとすること、チャンネルを同一とする際に双方の周波数の僅かな差に起因して視覚的妨害の問題が起こること、及びその問題を解決する手段として双方の周波数を一致させることを従来技術として開示している。

以上より、甲第3号証又は甲第4号証には、同一の放送局からブロードキャストされる同一の映像コンテンツについて、その映像コンテンツの伝送中に種々の態様の処理がなされたとしても、最終的な再送信信号のチャンネルと、他の経路からの受信放送波のチャネルとを同一のものとすることが当然の前提として開示され、その前提は、同号証と同じ技術分野(ヘッドエンドによるテレビ放送の再送信)の甲第1号証においても同じはずである。従って、「再送信信号のチャンネルと受信放送波のチャンネルを同一のものとすること」ないしは発明特定事項Eにおける「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数(・位相)が等しい再送信信号とすること」は甲第3号証又は甲第4号証にも開示され、これを同じ技術分野で同じ技術的前提に立つ甲第1号証に適用することは当業者にとって容易である。

イ 本件発明2について

記載(e1)によれば、甲第5号証の「局部発振器21」は発明特定事項F「映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器」に相当する。
記載(e2)によれば、甲第5号証の「映像キャリア発振器41」は発明特定事項G「前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器」に相当する。
記載(e3)によれば、甲第5号証の「信号検出器39」及び「キャリア切換器40」はそれぞれ発明特定事項H「アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段」及び発明特定事項I「前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段」に相当する。
即ち、甲第5号証は本件発明2の発明特定事項F乃至Iを全て開示している。そして、本件発明2と甲第5号証はともにCATVの再送信装置に関するものであり、当業者が甲第5号証に記載される技術を本件発明1に適宜組み合わせることに何ら困難性は無い。従って、本件発明2は進歩性を欠如している。

ウ 本件発明3について

甲第6号証は、地上デジタル放送ケーブル再送信パススルー方式(以下、「デジタル放送パススルー運用方式」という)のうちの同一周波数デジタル放送パススルー方式の基本構成を説明するものである。
記載(f1)によれば、甲第6号証は発明特定事項F「受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段」の一形態を開示している。本件発明3と甲第6号証はともにCATVのデジタルアナログ変換に関するものであるから、当業者が甲第6号証に記載される技術を本件発明1乃至3に適宜組み合わせることに何ら困難性は無い。従って、本件発明3は進歩性を欠如している。

エ 本件発明4について

甲第1号証の記載(a5)によれば、甲第1号証の「コントローラ30」は発明特定事項J「復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段」に相当する。
記載(a6)によれば、甲第1号証の「変調器24」は発明特定事項K「前記デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段」に相当する。
以上のように、甲第1号証は本件発明4の発明特定事項J及びKを開示している。そして、本件発明4と甲第1号証はともにCATVの再送信装置に関するものであり、当業者が甲第1号証に記載される技術を本件発明1乃至4に適宜組み合わせることに何ら困難性は無い。従って、本件発明4は進歩性を欠如している。

オ 本件発明5について

甲第7号証の記載(g1)によれば、甲第7号証の「デジタル放送受信チューナ部4」及び「アナログ放送受信チューナ部2」はそれぞれ発明特定事項P「第1の増幅器」及び発明特定事項Q「第2の増幅器」に相当する。
記載(g2)によれば、甲第7号証の「時間管理部10」は発明特定事項R及びSの「標準電波受信部」及び「タイマ」に相当する。なお、甲第7号証には、時間管理部10が標準電波を受信するとは明記されていないが、時間管理部10は実時間に基づいて動作することが開示されており、かつ標準電波を受信する手段は周知であるので、実時間を生成する手段として標準電波受信部を設けることに困難性は無い。
記載(g3)によれば、甲第7号証は発明特定事項T「前記第1の増幅器及び第2の増幅器に動作電源を供給し、前記アナログ放送停波日に前記タイマ回路から出力される信号により前記第2の増幅器の動作電源を遮断する電源制御回路」を開示している。
以上のように、甲第7号証は本件発明5の発明特定事項P乃至Tを全て開示している。そして、甲第7号証はテレビ受信機に関し、本件発明5はCATV再送信装置に関するものであるが、両者がデジアナサイマル放送に関するものであることからも、甲第7号証の開示事項を本件発明1乃至4のCATVの再送信装置に適用して本件発明5とすることに格別の困難性は無い。従って、請求項5は進歩性を欠如している。

(2)無効理由3-2(要点)

ア 甲第8号証(公開特許公報:特開平10-304331号)

甲第8号証は、CATVシステムのヘッドエンドにおける予備系装置において、各チャンネルに対応する運用系のTVシグナルプロセッサのうちの一部のチャンネルのTVシグナルプロセッサが故障した場合に、予備系装置が、故障チャンネルについて運用系の代わりに同じチャンネルで放送を自動継続させる技術を開示している。
記載(h1)によれば、甲第8号証はCATVヘッドエンド装置の技術分野の先行技術である。
記載(h2)によれば、甲第8号証は「アナログ放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置」を開示する。
甲第8号証のTVチューナー3は「アナログ放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するアナログ放送復調部」であり、ユニバーサル変調回路4は「アナログ放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」である。
また、甲第8号証の「入力分波器11」、「TVシグナルプロセッサ1」、「異常判別ユニット5」及び「CPU6」は発明特定事項C「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」に相当する。
記載(h3)、(h4)には、予備系の再送信信号は受信放送波と同一のチャンネルであり、運用系から予備系に切り替わる際に、視聴者によるテレビ受信機でのチャンネルプリセット変更が不要であることが開示されている。この運用系と予備系を持つ再送信装置において、運用系と予備系との切替え時に視聴者側でチャンネルプリセットを変更する必要があると仮定すると、運用系故障時の予備系への切替え及び運用系回復時の予備系からの切替えの際にテレビ受信機のチャンネルプリセットの変更を視聴者に要求することになってしまう。しかし、テレビ受信機のチャンネルプリセットは一般的な視聴者が簡単に行えるものではなく、上記の仮定は現実的なものとはいえない。従って、甲第8号証は、予備系装置で変調された再送信信号のチャンネルは、当然に運用系で通常使用されている視聴チャンネルと同一であり、視聴者側のチャンネルプリセットの変更は不要であることを示している。
従って、上記記載(h3)及び(h4)は、「前記アナログ変調部は、前記アナログ放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数が等しい再送信信号とすること」を開示している。
まとめると、甲第8号証は、
「アナログ放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、
アナログ放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するアナログ放送復調部と、
アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部と、
前記アナログ放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し、
前記アナログ変調部は、前記アナログ放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数が等しい再送信信号とすることを特徴とする再送信装置。」
を開示している。

イ 本件特許発明と先行技術発明との対比

甲第8号証の発明と本件発明1とは、発明特定事項C「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を備える点で一致する。

甲第8号証の発明と本件発明1とは、
発明特定事項Aでは「デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置」であるのに対し、甲第8号証では「アナログ放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置」である点、
発明特定事項Bでは「デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」であるのに対し、甲第8号証では「アナログ放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するアナログ放送復調部」である点、
発明特定事項Dでは「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」であるのに対し、甲第8号証では「前記アナログ放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」である点、
発明特定事項Eでは「前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」であるのに対し、甲第8号証では「前記アナログ変調部は、前記アナログ放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数が等しい再送信信号とする」である点、で相違する。

上記相違点について、デジ-アナ変換の構成は周知であることから(例えば、甲第1号証参照)、当業者において、甲第8号証のアナログ放送波を復調してアナログ放送の周波数帯に再変調する構成を、デジタル放送波を復調してアナログ放送の周波数帯に再変調する構成とすることに困難性は無い。
また、2つの信号間の周波数同期をとる際に周知のPLL回路等を用いて周波数だけでなく位相も一致させることは周知であり(甲第3号証及び甲第4号証参照)、この点に困難性は無い。

従って、本件発明1は、甲第8号証に記載の発明に周知技術を適宜組み合わせることにより当業者が容易に想到し得たものである。

(3)無効理由3-3(要点)

「デジタル放送波パススルー」とは、いわゆるデジタル放送波パススルー運用方式を示す用語を意味し得る。デジタル放送波パススルー運用方式には、同一周波数パススルー運用方式と周波数変換パススルー運用方式があり、本件特許の【0023】の記載から本件特許の請求項3の「デジタル放送波パススルー手段」は同一周波数パススルー運用方式に関する構成を意図しようとしているものとも考えられる。
ここで、デジタル放送波パススルー回路とは、一般に、先述の甲第6号証第の記載(f1)(当審注:記載f1については第5に後述)に示すように、アンテナで受信した地上デジタルテレビジョン放送信号からそれぞれのチャンネルを選択しレベル調整等して放送波と同じ周波数でケーブルテレビ施設に流すものをいう。
しかし、本件特許公報の図1及び図2で1本の配線として図示される「デジタル放送波パススルー回路16」、あるいは「入力分配部11」、「デジタル放送波パススルー回路16」及び「出力混合部15」からなる構成において、選択されたチャンネルでのレベル調整等が行われていることは認定できない。

(4)無効理由3-4(要点)

一般的なデジタル放送波パススルー運用方式の構成は発明の詳細な説明には記載されていないから、本件特許の請求項3に記載される「デジタル放送波パススルー手段」は、それがいわゆるデジタル放送波パススルー運用方式のための構成を意味するのであれば、発明の詳細な説明には記載されていないことになる。

(5)無効理由3-5(要点)

アンテナで受信した地上デジタルテレビジョン放送信号から選択されたチャンネルのレベル調整をして放送波と同じ周波数でケーブルテレビ施設に流すためのいわゆる同一周波数パススルー運用方式のデジタル放送波パススルー運用方式のことなのか、それとも、受信したデジタル放送波を、信号処理を伴わない配線で単に通過させて再送信信号と混合する通過手段のことなのか、いずれを意味するのか不明である。

(6)無効理由3-6(要点)

手続補正で「デジタルパススルー」が「デジタル放送波パススルー」に補正されたことにより、中間にレベル調整回路等の信号処理回路を含む、いわゆるデジタル放送波パススルー運用方式(特に、同一周波数パススルー運用方式)のための回路を含む概念となった。そして、一般的なデジタル放送波パススルー運用方式のための回路は、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面には一切記載されていない。

7 証拠方法

請求人は、証拠方法として、以下の甲第1号証ないし甲第8号証を提出している。

甲第1号証(公開特許公報:特開2004-282484号)
甲第2号証の1(総務省、情報通信審議会 情報通信政策部会 地上デジタル放送推進に関する検討委員会(第35回)開催案内)
甲第2号証の2(社団法人日本ケーブルテレビ連盟「第34回提出資料(石橋委員の提出資料) 参考資料2」)
甲第3号証(公開特許公報:特開平5-111003号)
甲第4号証(公開特許公報:特開平8-65651号)
甲第5号証(公開特許公報:特開平9-271005号)
甲第6号証(JEITA 地上デジタル放送ケーブル再送信パススルー方式に関する報告書、第9乃至12ページ)
甲第7号証(公開特許公報:特開2007-96846号)
甲第8号証(公開特許公報:特開平10-304331号)


第4 被請求人の主張

これに対して、被請求人は、平成23年5月31日付け審判事件答弁書、及び平成23年9月6日付け口頭陳述要領書において、概略以下のとおり主張している。

1 無効理由3-1に対して

<甲第3号証について>
周波数変換回路が周波数変換して得られる中間周波信号及び局部発信回路から出力される局部発信信号は、映像キャリア信号とは異なるものである。
つまり、甲第3号証の「選局回路11」は、本件発明1の発明特定事項Cのようにアナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するものではない。
また、請求人が主張する甲第3号証段落【0002】及び【0003】には、ビート妨害を軽減するために送信周波数を放送電波の周波数と位相同期させることについての記載はあるが、本件発明1の発明特定事項Eを開示していない。

<甲第4号証について>
甲第4号証の「混合器4」は、TV信号を発振出力信号と混合して中間周波信号に変換するものであり、本件発明1の発明特定事項Cのようにアナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するものではない。従って、当該甲第4号証の「混合器4」は、本件発明1の発明特定事項C「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」に相当しない。
また、請求人が主張する甲第4号証段落【0002】には、再送信TV信号の搬送波周波数が地元TV局の送信搬送波周波数と一致するように、公知のPLLを設けて位相同期させることについては記載があるが、本件発明の発明特定事項Eを開示していない。

<動機づけについて>
本件特許公報段落【0007】の記載を根拠に「再送信信号のチャンネルと受信放送波のチャンネルを同一のものとすること自体、即ち、デジ-アナ変換による再送信において受信機でのチャンネルプリセット変更を不要とすること自体には十分な動機づけが優先日前から存在していた」との請求人の主張について、
本件特許公報段落【0007】の「現用のアナログテレビジョン受信機にプリセットされているチャンネルに再送信装置の出力チャンネルを設定した場合」との記載、本件特許公報【0009】の「上記のように従来の再送信装置では、現用のアナログテレビジョン受信機にプリセットされているチャンネルに再送信装置の出力チャンネルを設定した場合、」との記載が示すように、これらは出願当時の被請求人が想定した課題を示しているにすぎない。

甲第1号証には、所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、当該生成したテレビ放送信号を他のテレビ放送信号と一緒に送出することが記載されている(甲第1号証段落【0022】)。
しかしながら、甲第1号証には、この送出されるアナログテレビ放送信号と受信放送波のチャンネルを同一のものとすること、即ち、チャンネルプリセットの変更を不要とすることについては記載も示唆もない。つまり、甲第1号証においては送出されるアナログテレビ放送信号と受信放送波とのチャンネルの関係が明確でない。

更に、甲第6号証第9頁に「既存の222MHzや250MHz帯域の再送信のみを行っている狭帯域のCATV施設や集合住宅では、一般のVHF/UHF放送の再送信に使用されていないチャンネルで伝送しようという考えが、デジタル化計画のはじめから検討されていた。」との記載があるように、使用されているチャンネルで再送信信号を伝送しようとするとビート障害の発生が懸念されることから、当該再送信信号は使用されていないチャンネルに伝送することが一般的であったものと考えられる。
このような事情を考慮すると、甲第1号証においても、アナログ放送波によって使用されているチャンネルではなく使用されていないチャンネルに再送信信号を伝送することが通常であるから、甲第1号証におけるデジ-アナ変換による再送信において受信放送波のチャンネルと同一のものとすること、即ち、チャンネルプリセット変更を不要とすることに動機づけが充分あるとはいえない。

<再送信信号と受信放送波を同一チャンネルとする際のビート障害解消のために再送信信号と受信放送波の間で周波数・位相同期をとることの動機づけについて>
現用のアナログテレビジョン受信機にプリセットされているチャンネルに再送信信号のチャンネルを設定し、更には、強電界地域でなければビート障害の発生がないということを鑑みると、甲第1号証には強電界地域においてビート障害が現れるとの記載も示唆もない以上、このような甲第1号証において「ビート障害の解消」のために再送信信号と受信放送波の間で周波数・位相同期をとる必要性はない。
つまり、強電界地域でなければビート障害は発生しないのであるから、このような記載も示唆もない甲第1号証においてビート障害解消のために周波数・位相同期をとることの動機づけが充分あるということはできない。

また、本件発明1を当業者が容易に想到することができるとするためには、請求人が主張する「(1)再送信信号のチャンネルと受信放送波のチャンネルを同一のものとすること、即ち、デジ-アナ変換による再送信において受信機でのチャンネルプリセットの変更を不要とすることの動機づけ」及び「(2)再送信信号と受信放送波を同一チャンネルとする際のビート障害解消のために再送信信号と受信放送波の間で周波数・位相同期をとることの動機づけ」の双方が関連して生じる必要がある。
請求人は、上記(1)及び(2)の動機づけが個別に存在していることを主張しているのみである。本件発明1は、(1)再送信信号のチャンネルと受信放送波のチャンネルを同一のものとすること、(2)再送信信号と受信放送波を同一チャンネルとする際のビート障害解消のために再送信信号と受信放送波の間で周波数・位相同期をとること、とは密接不可分の関係を有するものであり、仮に、上記(1)及び(2)の動機づけが個別に存在していたしても、このような個別の動機づけが存在するからといって、本件発明1の進歩性を否定することができるとする請求人の主張はまさしく後知恵にすぎず、請求人の主張は失当である。
更に、請求人は、「再送信信号のチャンネルと受信放送波のチャンネルを同一のものとすることの動機づけ」及び「ビート障害解消のために周波数・位相同期をとることの動機づけ」について主張しているのみである。
即ち、請求人は、本件発明1の「デジタル放送を受信して復調された映像信号を、アナログ放送波を受信して抽出された映像キャリア信号に同期して再変調する」点については何ら主張していない。
従って、請求人が主張しているような甲第3号証又は甲第4号証における「周波数・位相同期」の構成を甲第1号証における「従来のデジ-アナ変換再送信」の構成に付加したとしても、本件発明1の構成を実現し得ないことは明らかであり、請求人の主張は失当である。

<効果について>
本件発明1の発明特定事項A、B及びDと発明特定事項C及びEとは、機能的又は作用的に関連している。具体的には、本件発明1においては、発明特定事項A、B及びDによって「再送信信号を得る」際に、発明特定事項C及びEによって「映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」のであるから、発明特定事項A、B及びDと発明特定事項C及びEとが機能的又は作用的に関連していることは明らかである。
甲第1号証の奏する作用効果と甲第3号証及び甲第4号証の奏する作用効果とには、少なくとも「デジタル放送を受信して復調された映像信号を、アナログ放送波を受信して抽出された映像キャリア信号に同期して再変調することにより、アナログ放送波と同じチャンネルにテレビジョン受信機の受信チャンネルを合わせることができる」点はない。従って、本件発明1の奏する作用効果は、公知技術の奏する作用効果の総和を超えた格別のものである。

<甲第1号証に対する甲第3号証の適用について>
甲第3号証には、「局部発振回路からの局部発信信号を用いて周波数変換して得られる中間周波数から搬送波信号を抽出する搬送波再生回路」が記載されている。ここで、本件発明1の発明特定事項C及び甲第3号証の「搬送波再生回路」を比較すると、本件発明1ではアナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出し、デジタル放送を受信して復調された映像信号を再変調する際に当該映像キャリア信号を用いるのに対して、甲第3号証ではテレビ放送信号を周波数変換して得られる中間周波数から搬送波信号を抽出し、中間周波信号から復調された映像信号と音声信号とでAM変調する際に当該搬送波信号を用いる。従って、その機能、作用、その具体的技術において少なからぬ差異があるものというべきである。
また、甲第1号証から出発して、本件発明1の特徴点に到達するためには、当該甲第1号証のデジ-アナ変換による再送信において、デジタル放送及びアナログ放送波を受信する環境であり、再送信信号のチャンネルと受信放送波のチャンネルと同一のものとし、かつ、強電界地域であってビート障害が発生する状態において当該ビート障害解消のために再送信信号と受信放送波の間で周波数・位相同期をとらなければならない。このように甲第1号証から出発して本件発明1の特徴点に到達するためにはこれらの段階を経なければならず、たとえ甲第3号証を考慮したとしても、甲第1号証から出発して、本件発明1の先行技術に対する特徴点に到達することが容易であったいうことはできない。

<甲第1号証に対する甲第4号証の適用について>
本件発明1が目的とする課題は「強電界地域においてもアナログテレビジョン受信機に障害を生じる恐れがなく、アナログ放送波と同じチャンネルにテレビジョン受信機の受信チャンネルを合わせることができるようにする」ことであり、甲第1号証が目的とする課題は「デジタルチューナからデジタルテレビ放送の音声モードを表す情報を出力することなく、変調器側にてその音声モードに対応するアナログテレビ放送信号を生成できるようにする」ことである。ここで、甲第1号証には、上記したようにアナログテレビ放送による干渉については記載がない上、格別、強電界地域においてビート障害が現れるとの記載も示唆もない。従って、このような甲第1号証に「CATV局が再送信するTV信号の送信チャンネルと地元TV局の送信チャンネルとが同じ場合でも、視覚的妨害を軽減できる」という効果を得るためのものである甲第4号証を適用することが当業者にとって容易想到であるということはできず、甲第1号証から出発して、本件発明1の特徴点に到達することは困難である。更に、本件発明1の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等も存在しない。
甲第1号証では「デジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調する(甲第1号証段落【0022】)」のに対して、甲第4号証では受信されたTV信号の復調及び再変調は行われない。このような甲第1号証に甲第4号証を適用しようとしたとしても、甲第1号証のどの段階で甲第4号証のように位相同期させるかについては記載も示唆もない。従って、甲第4号証を考慮したとしても、甲第1号証から出発して、本件発明1の特徴点に到達することは困難である。

2 無効理由3-2に対して

<発明特定事項Cについて>
甲第8号証には「ON信号」及び「チャンネル情報」や「送信信号の一部を分岐して取り出すこと」等が記載されているが、本件発明1の発明特定事項Cにおける「映像キャリア信号」は、これらとは異なるものである。
従って、甲第8号証の発明は、本件発明1の発明特定事項C「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を備えていない。

<放送の継続(チャンネルプリセット不要)>
仮に「運用系に代わり放送を継続させること」が「チャンネルプリセット変更が不要であること」に相当するとしても、当該「チャンネルプリセット変更が不要であること」と「周波数が等しい再送信信号とすること」とは異なるものである。
また、甲第8号証は、上記したように映像キャリア抽出部を備えていないのであるから、「前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数が等しい再送信信号とすること」を開示していない。

<周知技術>
特許・実用新案審査基準によれば、甲第1号証のみを提示した上で「デジ-アナ変換の構成は周知である」ということはできない。同様に、甲第3号証及び甲第4号証のみを提示した上で「2つの信号間の周波数同期をとる際に周知のPLL回路等を用いて周波数だけでなく位相も一致させることは周知である」ということはできない。
「デジ-アナ変換の構成」及び「2つの信号間の周波数同期をとる際に周知のPLL回路等を用いて周波数だけでなく位相も一致させること」が仮に周知であるとしても、本件発明1の「デジタル放送及びアナログ放送波の両方を受信して、当該デジタル放送を受信して復調された映像信号を再変調する際、当該アナログ放送波を受信して抽出された映像キャリア信号に同期して再変調する」という点については甲第8号証には記載も示唆もない。従って、このような甲第8号証から出発して、本件発明1の特徴点(先行技術と相違する構成)に到達することは困難であり、更には、本件発明1の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等も存在しない。

<前提とする環境(サイマル放送)>
本件発明1は、アナログ放送波の停波を前提とするサイマル放送という特殊事情においてデジタル放送及びアナログ放送波を受信する環境であることを前提とした上で、デジタル放送をアナログ放送に変換して再送信する際に「デジタル放送を受信して復調された映像信号を再変調する際に、アナログ放送波を受信して抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」ものである。言い換えれば、本件発明1は、アナログ放送波とデジタル放送波とのいわば異なる信号形式の信号間の同期をとるという技術的思想を有するものであり、このような技術的思想さえも甲第8号証には記載も示唆もない。

<課題の不存在>
本件特許の「デジタル放送がアナログ放送に変換されて再送信が行われる際に、現用のアナログテレビジョン受信機にプリセットされているチャンネルに再送信装置の出力チャンネルを設定した場合、ビート障害が現れる」ことについては甲第8号証には記載も示唆もないのであるから、甲第8号証が、本件発明1と共通する課題を意識したものとはいえない。更に、甲第8号証には、上記したデジタル放送及びアナログ放送波を受信する環境であることについての記載も示唆もない。
従って、このような甲第8号証に周知技術を適用したとしても、「強電界地域においてもアナログテレビジョン受信機に障害を生じる恐れがなく、アナログ放送波と同じチャンネルにテレビジョン受信機の受信チャンネルを合わせることができるようにする」ことを目的とする本件発明1を当業者が容易に想到することができたということはできず、請求人の主張は、本件発明1を前提とし、単に、本件発明1の各構成要件について証拠を割り当てたに過ぎず、まさしく後知恵である。

3 無効理由3-3に対して

本件発明3の「デジタル放送波パススルー手段」とは、本件特許の明細書段落【0023】の「地上デジタル放送電波をデジタル放送波パススルー回路16によりそのまま出力混合部15へ出力する。」の記載から明らかなように、そのままの周波数で再送信する同一周波数パススルー方式に関する構成を意図している。
しかしながら、本件発明3の「デジタル放送波パススルー手段」においては、本件特許の明細書段落【0023】の記載から明らかなように、請求人が主張する「選択されたチャンネルでのレベル調整等」が必ずしも行われる必要はない。
なお、平成15年6月20日に発行された乙第1号証第267頁及び2004年10月11日に発行された乙第2号証第315頁に記載されているように、同一周波数パススルー方式が地上デジタル放送波をそのまま伝送するものであることは一般的に知られている。
従って、本件特許の明細書段落【0023】には、当業者が本件発明3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている。

4 無効理由3-4に対して

上記したように本件発明3の「デジタル放送波パススルー手段」は、地上デジタルテレビ放送の周波数のままで再送信する同一周波数パススルー方式のための構成を意味している。このことは、本件特許の明細書段落【0023】の記載から明らかである。従って、本件発明3は、本件特許の明細書段落【0023】に記載したものである。

5 無効理由3-5に対して

本件発明3の「デジタル放送波パススルー手段」は、請求人が想定するような「アンテナで受信した地上デジタルテレビジョン放送信号から選択されたチャンネルのレベル調整」を必ずしも必要とするものではなく、上記したように地上デジタルテレビ放送の周波数のままで通過させて再送信信号と混合するものであればよい。このことは、本件特許の請求項3の「受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合する」との記載から明確である。従って、本件発明3は明確である。

6 無効理由3-6に対して

上記した乙第1号証及び乙第2号証からも明らかなように、地上デジタル放送の伝送方式として「パススルー方式」が一般的に知られており、本件特許の出願当初の明細書段落【0023】の「地上デジタル放送電波をデジタルパススルー回路16によりそのまま出力混合部15へ出力する。」の記載によれば本件特許において同一周波数パススルー方式が採用されていることは当業者にとって自明な事項である。
つまり、本件特許の出願当初の「デジタルパススルー手段」及び「デジタルパススルー回路」の記載が同一周波数パススルー方式を含む概念を有していたことは明らかである。
従って、本件特許において「デジタルパススルー手段」及び「デジタルパススルー回路」をそれぞれ「デジタル放送波パススルー手段」及び「デジタル放送波パススルー回路」にした補正(以下、本件補正と表記)によって付加された事項の内容は、本件特許の出願当初の明細書において既に開示されていると同視して差し支えないといえる。よって、本件補正は、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入した場合であるとはいえない。

7 証拠方法

乙第1号証(山田 宰監修/映像情報メディア学会編「デジタル放送ガイドブック」平成15年6月20日 第1版第1刷発行)
乙第2号証(亀山 渉、花村 剛【監修】「改訂版 デジタル放送教科書(上)」2004年10月11日 初版第1刷発行)


第5 各証拠およびその内容

各証拠には以下の記載がある。なお、請求人が審判請求書で引用した記載は、審判請求書のとおり、文頭に(a1)ないし(h4)の記号を付し、それ以外の記載は、当合議体が(k1-1)ないし(k8-4)の記号を付した。後述の第6では、(a1)や(k1-1)といった記号により記載を引用する。

1 甲第1号証の記載

甲第1号証(特開2004-282484号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

<発明の属する技術分野>
(a1)「本発明は、受信アンテナから入力された受信信号の中から所定放送チャンネルのデジタルテレビ放送を選局して映像及び音声信号を復調し、その復調した映像及び音声信号から伝送用のアナログテレビ放送信号を生成して、CATVシステムの伝送線上に送出するヘッドエンド装置、及び、このヘッドエンド装置を備えたCATVシステムに関する。」(段落【0001】)

<従来の技術>
(k1-1)「従来より、テレビ放送としては、地上局を利用した地上波放送、放送衛星(BS)を利用したBS放送、通信衛星(CS)を利用したCS放送等が知られている。そして、これらのテレビ放送を再送信するCATVシステムにおいては、ヘッドエンド装置側で、各放送電波を受信し、その受信信号をそのまま周波数変換したり、或いは、受信信号に含まれるテレビ放送信号を個々に周波数変換することにより、複数のテレビ放送信号を、CATVシステムで伝送可能な周波数帯域内に納め、伝送線上に送出するようにしている。
ところで、近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる。
そこで、近年では、こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。」(段落【0002】-【0004】)

(k1-2)「つまり、このようにすれば、CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる。」(段落【0005】。請求人の口頭陳述要領書摘示箇所。下線は請求人の口頭審理陳述要領書に従い合議体が付した。)

<発明が解決しようとする課題>
(k1-3)「ところで、上記のように、ヘッドエンド装置にBSデジタルチューナと変調器を設けた場合、変調器が生成するアナログテレビ放送信号の音声モードを、BSデジタル放送の音声モードに対応させる必要がある。
つまり、テレビ放送の音声モードとしては、周知のように、モノラル、ステレオ、多音声、といった3種類の音声モードがあり、BSデジタル放送でも、音声モードがこの3種類の音声モードの一つに適宜切り換えられて放送されることから、CATVシステムの端末側でBSデジタル放送にて提供されている所望の音声を再生できるようにするには、変調器がアナログテレビ放送信号を生成する際の音声信号の変調方式を、BSデジタル放送の音声モードに対応させる必要があるのである。
そして、このためには、BSデジタルチューナ側にて音声信号を復調した際に識別した音声モードを表す情報を、BSデジタルチューナから変調器に出力するよう構成すればよいが、このためには、BSデジタルチューナの改良が必要となり、BSデジタルチューナに既存のものを使用することができなくなってしまう。
つまり、一般に市販されているBSデジタルチューナは、音声信号として、アナログ音声信号とデジタル音声信号との2種類の音声信号を出力するようになっているが、その音声信号の種別(モノラル・ステレオ・多音声)を表す情報は出力できないことから、BSデジタルチューナから変調器に音声信号の種別を表す情報を出力して、変調器側でBSデジタル放送の音声モードに対応したアナログテレビ放送信号を生成させるには、音声信号の種別を表す情報を出力可能な専用のデジタルチューナを使用しなければならず、ヘッドエンド装置のコストアップを招く、といった問題が生じるのである。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、デジタルテレビ放送を選局・復調するデジタルチューナと、その復調した映像及び音声信号からアナログテレビ放送信号を生成する変調器とを備えたヘッドエンド装置において、デジタルチューナからデジタルテレビ放送の音声モードを表す情報を出力することなく、変調器側にてその音声モードに対応するアナログテレビ放送信号を生成できるようにすることを目的とする。」(段落【0007】-【0011】)

<課題を解決するための手段>
(k1-4)「係る目的を達するためになされた請求項1記載のヘッドエンド装置は、受信アンテナから入力された受信信号の中から所定放送チャンネルのデジタルテレビ放送を選局し、映像信号及び音声信号を復調するデジタルチューナと、該デジタルチューナにて復調された映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成する変調器とを備え、該変調器にて生成されたアナログテレビ放送信号をCATVシステムの伝送線に送出するヘッドエンド装置であって、前記デジタルチューナは、前記音声信号として、前記デジタルテレビ放送の音声モードに対応したアナログ音声信号、及び、該音声モードを表すステータス情報を含むデジタル音声信号、を夫々復調して出力するよう構成され、前記変調器は、前記デジタルチューナから出力されるアナログ音声信号を、前記デジタルテレビ放送の音声モードに対応して変調することにより、前記デジタルテレビ放送の音声モードに対応したアナログテレビ放送信号を生成するよう構成され、更に、前記デジタルチューナから出力されるデジタル音声信号を取り込み、該デジタル音声信号に含まれるステータス情報から前記デジタルテレビ放送の音声モードを判定し、該判定結果を前記変調器に出力することで、前記変調器で生成されるアナログテレビ放送信号の音声モードを前記デジタルテレビ放送の音声モードに対応させる音声判定手段、を備えたことを特徴とする。
このように、本発明のヘッドエンド装置には、デジタルチューナから出力されるデジタル音声信号に含まれるステータス情報からデジタルテレビ放送の音声モードを判定する音声判定手段が備えられ、変調器は、この音声判定手段からの出力(判定結果)に基づきアナログ音声信号を変調することで、デジタルテレビ放送の音声モードに対応したアナログテレビ放送信号を生成する。
従って、本発明のヘッドエンド装置によれば、デジタルチューナとして、復調したアナログ音声信号の音声モードを表す情報を出力可能な専用(所謂業務用)のデジタルチューナを使用する必要がなく、一般に市販されている安価なデジタルチューナを使用できることになり、ヘッドエンド装置のコストアップを招くのを防止できる。
また、変調器は、デジタルテレビ放送と同じ音声モードのアナログテレビ放送信号を生成することから、本発明のヘッドエンド装置を用いてCATVシステムを構築すれば、その端末側で、デジタルテレビ放送にて提供されている所望の音声(モノラル音声、ステレオ音声、若しくは多音声の内の主音声又は副音声)を再生できるようになり、加入者に対するサービスを向上できる。」(段落【0012】-【0015】)

(k1-5)「尚、本発明のヘッドエンド装置は、従来技術の項にて説明したBSデジタル放送を再送信するCATVシステムは勿論のこと、CSデジタル放送或いは地上波デジタル放送を再送信するCATVシステムに適用することもできる。つまり、本発明のヘッドエンド装置においては、デジタルチューナとして、BSデジタル放送を受信するBSデジタルチューナを設けるようにすれば、BSデジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号に変換して再送信することができ、デジタルチューナとして、CSデジタル放送を受信するCSデジタルチューナを設けるようにすれば、CSデジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号として再送信することができ、デジタルチューナとして、地上波デジタル放送を受信する地上波デジタルチューナを設けるようにすれば、地上波デジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号として再送信することができる。」(段落【0016】。請求人の口頭陳述要領書摘示箇所を含む。下線は請求人の口頭審理陳述要領書に従い合議体が付した。)

(k1-6)「そして、この再送信されるアナログテレビ放送信号は、何れも、音声判定手段を用いて元のデジタルテレビ放送と同じ音声モードにすることができることから、CATVシステムの端末側では、元のデジタルテレビ放送により提供される所望の音声を再生することが可能となる。
一方、請求項2記載のCATVシステムは、請求項1に記載のヘッドエンド装置を備え、該ヘッドエンド装置から伝送線上に送出されたアナログテレビ放送信号を、該伝送線を介して複数の端末まで伝送することを特徴とする。
よって、このCATVシステムによれば、デジタルテレビ放送を、その音声モードと同じ音声モードのアナログテレビ放送として再送信することができるようになり、しかも、ヘッドエンド装置に、デジタルテレビ放送の音声モードを表す情報を出力可能な専用(所謂業務用)のデジタルチューナを設ける必要がないことから、CATVシステムのコストを抑制できる。」(段落【0017】-【0018】)

<発明の実施の形態>
(k1-7)「以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用された実施例のCATVシステム全体の構成を表す構成図である。
図1に示すように、本実施例のCATVシステムは、VHFテレビ放送(アナログ)を行う地上局からの放送電波を受信するVHFアンテナ2、UHFテレビ放送(アナログ放送)を行う地上局からの放送電波を受信するUHFアンテナ4、CS放送用の通信衛星(CS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のCS受信信号に周波数変換して出力するCSアンテナ6、及び、BSデジタル放送を行う放送衛星(BS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のBS受信信号に周波数変換して出力するBSアンテナ8を備えたヘッドエンド装置10と、ヘッドエンド装置10から送出される多数のテレビ放送信号を端末側に伝送する伝送線(同軸ケーブル)Lと、伝送線L上に設けられて伝送線Lを流れる伝送信号(ヘッドエンド装置10から送出されたテレビ放送信号等)を増幅する増幅器14,16と、分岐或いは分配用の各種伝送機器(図示せず)とから構成されている。
ここで、ヘッドエンド装置10においては、VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされている。」(段落【0019】-【0021】)

(a2)「また、BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされている。」(段落【0022】)

(a3)「ヘッドエンド装置10には、BSアンテナ8からのBS受信信号を分配する分配器11が設けられており、この分配器11にて分配されたBS受信信号を、夫々、各復変調部20の受信信号入力端子20aに入力するようにされている。」(段落【0023】)

(k1-8)「また、各復変調部20には、受信信号入力端子20aに入力されたBS受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調するBSデジタルチューナ22と、」(段落【0024】)

(a4)「BSデジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24とが設けられている。」(段落【0024】)

(k1-9)「そして、この変調器24にて生成されたテレビ放送信号は、放送信号出力端子20bから送出装置12に出力され、送出装置12にて他のテレビ放送信号と混合されて、伝送線L上に送出される。
また、各復変調部20に設けられたBSデジタルチューナ22には、ヘッドエンド装置10のコストを抑えるために、システム専用(所謂業務用)のデジタルチューナではなく、市販(所謂民生用)のデジタルチューナが用いられている。
そして、本実施例のBSデジタルチューナ22は、BSアンテナ8から分配器11を介して受信信号入力端子20aに入力されたBS受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのBSデジタル放送信号を選局し、その選局したBSデジタル放送信号からアナログ映像信号及びアナログ音声信号を復調して映像出力端子(S端子若しくはコンポジット端子)及び音声出力端子から出力すると共に、アナログ音声信号を復調する前のデジタル音声信号を光信号に変換して光出力端子から光音声信号として出力するようにされている。
尚、BSデジタル放送では、モノラル、ステレオ、多音声(二カ国語若しくは主・副)の何れかの音声モードで放送していることから、BSデジタルチューナ22は、この音声モードに対応して音声信号を復調し、その復調したアナログ音声信号を、ステレオ、多音声の音声信号を出力可能な2つの音声出力端子(R・L)から出力する。
一方、各復変調部20に設けられた変調器24は、映像入力端子Tvi、音声入力端子Tar、Talを介して、BSデジタルチューナ22から、アナログ映像信号及びアナログ音声信号を取り込み、これら各信号から所定周波数帯(例えば、45MHz帯)のアナログテレビ信号(NTSC)を生成する変調部24aと、この変調部24aにて生成されたアナログテレビ信号を、予め設定された伝送チャンネル(換言すればその伝送チャンネルに対応した周波数帯)のアナログテレビ放送信号に周波数変換する周波数変換部24bと、この周波数変換部24bにて周波数変換されたアナログテレビ放送信号を増幅する増幅部24cとから構成され、この増幅部24cにて増幅されたアナログテレビ放送信号を出力端子Tout から出力するようにされている。
また、変調部24aは、アナログテレビ信号(NTSC)を生成する際、アナログ音声信号を変調するが、この変調時には、アナログ音声信号の音声モードに対応して変調方式を切り換える。そして、このために、変調器24には、アナログ音声信号の音声モードを表す制御信号「MO」、「BI」を外部から入力するための制御信号入力端子Ti0、Ti1が設けられ、変調部24aは、この制御信号入力端子Ti0、Ti1に入力された制御信号「MO」、「BI」の信号レベルから、アナログ音声信号の音声モードを識別して、アナログ音声信号の変調方式を切り換える。
尚、図2(b)に示すように、制御信号「MO」は、アナログ音声信号がモノラルであるときにHighレベルとなり、制御信号「BI」は、アナログ音声信号が多音声であるときにHighレベルとなるように設定されており、変調部24aは、この制御信号「MO」、「BI」の信号レベルの組み合わせから、アナログ音声信号の音声モードが、モノラル(MO:High,BI:Low )、ステレオ(MO:Low ,BI:Low )、多音声(MO:Low ,BI:High)の何れであるかを識別する。
このように、本実施例では、変調器24の変調部24aが、制御信号入力端子Ti0、Ti1に入力された制御信号「MO」、「BI」の信号レベルから、アナログ音声信号の音声モードを識別して、アナログ音声信号の変調方式を切り換えることから、この制御信号入力端子Ti0、Ti1に、BSデジタルチューナ22が選局したBSデジタル放送の音声モード(換言すればアナログ音声信号の音声モード)を表す制御信号「MO」、「BI」を入力すれば、各復変調部20から出力されるアナログテレビ放送信号の音声モードを元のBSデジタル放送の音声モードに対応させることができるのであるが、各変調部20には、コスト低減のために民生用のBSデジタルチューナ22が使用され、このBSデジタルチューナ22から、BSデジタル放送の音声モードを表す制御信号「MO」、「BI」を出力させることができない。
そこで、本実施例では、図1に示すように、各復変調部20に、BSデジタルチューナ22から出力される光音声信号に基づきBSデジタルチューナ22が選局したBSデジタル放送の音声モードを識別するコントローラ30を設け、このコントローラ30から変調器24の制御信号入力端子Ti0、Ti1に制御信号「MO」、「BI」を入力するようにしている。
このコントローラ30は、本発明の音声判定手段に相当するものであり、図3(a)に示すように構成されている。」(段落【0025】-【0033】)

(a5)「即ち、コントローラ30は、BSデジタルチューナ22から光信号入力端子Topを介して光音声信号(換言すればデジタル音声信号)を取り込み、光音声信号に含まれる各種データを復号化するデコーダ(デジタルオーディオインターフェイス)30aと、このデコーダ30aにて復号されたデータの内、音声モードを表すチャネルステータス情報(具体的には、チャネルステータスビット、又はユーザビット)を選択するデータ選択部30bと、データ選択部30bで選択されたチャネルステータス情報に基づきBSデジタルチューナ22が選局しているBSデジタル放送の音声モードを識別し、その識別した音声モードに対応した制御信号「MO」、「BI」を制御信号出力端子Tc0、Tc1を介して変調器24に出力するマイクロコンピュータ(以下、単にマイコンという)30cと、から構成されている。」(段落【0033】。下線は請求人の審判請求書に従い合議体が付した。)

(a6)「そして、マイコン30cは、図3(b)に示すように、S110(Sはステップを表す)にて、データ選択部30bで選択されたチャネルステータス情報から、BSデジタルチューナ22が選局しているBSデジタル放送の音声モードを判定し、その判定した音声モードがモノラルであれば(S120:YES)、制御信号出力端子Tc0から出力する制御信号「MO」をHighレベルに設定し、制御信号出力端子Tc1から出力する制御信号「BI」をLow レベルに設定することにより、音声モードがモノラルであることを表す制御信号を変調器24に出力し(S130)、S110にて判定した音声モードがモノラルでなく(S120:NO)、ステレオであれば(S140:YES)、制御信号出力端子Tc0及びTc1から出力する制御信号「MO」、「BI」を共にLow レベルに設定することにより、音声モードがステレオであることを表す制御信号を変調器24に出力し(S150)、S110にて判定した音声モードがモノラルでもステレオでもなく(S120:NO,S140:NO)、多音声であれば、制御信号出力端子Tc0から出力する制御信号「MO」をLow レベルに設定し、制御信号出力端子Tc1から出力する制御信号「BI」をHighレベルに設定することにより、音声モードが多音声であることを表す制御信号を変調器24に出力する(S160)、といった手順で、音声モードの切換処理を実行する。」(段落【0034】。下線は請求人の審判請求書に従い合議体が付した。)

(k1-10)「以上説明したように、本実施例のCATVシステムにおいては、ヘッドエンド装置10内に、BSデジタル放送の各放送チャンネル毎に、BSデジタル放送信号を選局・復調してアナログテレビ放送信号に変換する複数の復変調部20を設け、BSデジタル放送にて提供される映像及び音声信号を端末側で再生できるようにしている。また、各復変調部20には、BSデジタルチューナ22から出力される光音声信号(デジタル音声信号)に含まれるチャネルステータス情報から、BSデジタル放送の音声モードを判定して、その音声モードを表す制御信号「MO」、「BI」を出力するコントローラ30を設け、変調器24側では、コントローラ30から出力される制御信号に基づき、アナログ音声信号を変調するようにされている。
従って、本実施例のCATVシステムにおいては、ヘッドエンド装置10に、選局したBSデジタル放送の音声モードを表す制御信号を出力可能な業務用の高価なBSデジタルチューナを設ける必要がなく、BSデジタル放送をアナログテレビ放送として再送信可能なCATVシステムを安価に構築できることになる。
また、変調器24は、BSデジタル放送と同じ音声モードのアナログテレビ放送信号を生成することから、端末側では、BSデジタル放送にて提供されている所望の音声(モノラル音声、ステレオ音声、若しくは多音声の内の主音声又は副音声)を再生できるようになり、加入者に対するサービスを向上できる。
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施例では、ヘッドエンド装置10内にBSデジタルチューナ22を備えた複数の復変調部20を設け、この復変調部20で所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調して、アナログテレビ放送信号に変換することで、端末側でBSデジタル放送を視聴できるようにしたが、ヘッドエンド装置10に、復変調部20に、BSデジタルチューナ22に代えて、CSデジタル放送若しくは地上波デジタル放送を選局・復調するデジタルチューナを設けるようにするか、或いは、そのデジタルチューナと変調器24とコントローラ30とからなる復変調部を別途設けるようにすれば、CSデジタル放送や地上波デジタル放送にて提供される映像及び音声信号からなるアナログテレビ放送信号を端末側に再送信できることになる。」(段落【0035】-【0038】)

2 甲第2号証の2の記載

甲第2号証の2が公知であることを示す証拠として甲第2号証の1(総務省、情報通信審議会 情報通信政策部会 地上デジタル放送推進に関する検討委員会(第35回)開催案内)が示された。
そして、甲第2号証の2(社団法人日本ケーブルテレビ連盟「第34回提出資料(石橋委員の提出資料)参考資料2」)には、「5 アナログ放送終了のための体制と計画」として、「全国地上デジタル放送推進協議会で検討を行っているところではあるが、検討にあたり、特に留意すべき点は何か。」として、以下の記載がある。

(b1)「現在、一世帯に2台のテレビがあるとされているが、期間内に全てのテレビの完全デジタル対応を急ぐとアナログテレビの廃棄問題が生じ、一方で受信機の完全デジタル対応化も不可能と予想されるので、一定期間はケーブルテレビでのデジ-アナ変換対応を検討すべきと考える。」

3 甲第3号証の記載

甲第3号証(公開特許公報:特開平5-111003号)には、図面とともに次の事項が記載されている。

<産業上の利用分野>
(c1)「本発明はCATVなどの共同受信施設のヘッドエンド装置、テレビジョン放送中継局等に利用される受信したテレビ放送波信号の搬送波周波数と全く同一の周波数で再送信すると共に、その再送信に際してゴースト除去等の各種映像信号処理が行われる同期型テレビ再送信装置に関する。」(段落【0001】。下線は請求人の審判請求書に従い合議体が付した。)

<従来の技術>
(c2)「テレビ共同受信施設では、受信点の装置においてゴースト障害により良好な受信点を選定することが困難な状況になってきている。そこで、ゴースト障害があってもテレビ放送波信号中のゴースト信号を除去してから、有線テレビ施設に信号を送り出すことにより、施設の受信者に良好なテレビ放送波信号を提供できる。このためには、安定でしかも安価な再送信装置が提供されることをCATV事業者および施工業者などの関係業界から望まれている。このような再送信装置においては、一般的には、受信チャンネルと同一チャンネルで送信する必要があるが、放送電波の受信周波数と有線テレビ施設の送信周波数が僅かに異なると、テレビ放送波が有線テレビ施設の信号を干渉してビート妨害を与える。そのため、このビート妨害を軽減するためには、有線テレビ施設の送信周波数を放送電波の周波数と位相同期させる必要がある。また、ゴースト除去以外でも受信した信号に他の映像信号を重畳したり、他の映像信号との信号処理をするなど各種の映像信号処理をして、再度同一チャンネルで送信する場合には、同様に位相同期を行う必要がある。」(段落【0002】。下線は請求人の審判請求書および口頭審理陳述要領書に従い合議体が付した。)

(k3-1)「従来、ゴースト信号を除去してCATVにテレビ放送波信号を伝送する場合などは、CATV施設のヘッドエンドにおいて、受信したテレビ放送波信号を復調して映像信号と音声信号とし、ゴースト除去回路で映像信号中のゴースト信号を除去し、音声信号と共にテレビ変調器でAM変調してテレビ信号とする。この際、」(段落【0003】)

(c3)「受信チャンネルと同じチャンネルで再送信したり、また受信したチャンネルを周波数変換し潜在電界が高いテレビチャンネルと同じチャンネルで再送信する場合、加入者での潜在電界による同一チャンネルビート妨害を軽減するために高周波位相を同期させる機能を有した変調器を用いている。」(段落【0003】。下線は請求人の審判請求書に従い合議体が付した。)

(k3-2)「図5及び図6はこの種のゴースト除去等映像信号処理を行う同期型テレビ再送信装置の概要ブロックを示す。図5に示すように、受信したテレビ放送波信号を周波数変換回路C46で周波数変換して中間周波信号とする。この信号と搬送波発振回路48からの搬送波信号とを位相比較器47で位相比較してその出力信号で局部発振回路49を制御する。搬送波発振回路48からの搬送波信号を映像信号と音声信号とでAM変調器44でAM変調する。変調されたこの変調波信号を局部発振回路49からの局部発振信号を用いて周波数変換器B45で周波数変換することによって、再送信するチャンネルの高周波位相を入力信号と同期をとっている。
また、図6に示すように、受信したテレビ放送波信号を周波数変換回路C46で周波数変換して中間周波信号とし、この信号の中からリミッタ回路50によって搬送波を抽出し、この搬送波信号を映像信号と音声信号とでAM変調器44でAM変調する。変調されたこの変調波信号を局部発振回路49からの局部発振信号を用いて周波数変換器B45で周波数変換することによって、再送信するチャンネルの高周波位相を入力信号と同期をとっている。」(段落【0004】-【0005】)

<発明が解決しようとする課題>
(k3-3)「しかし、従来の同期型テレビ再送信装置では、位相同期をとるために、同期制御回路(位相比較器、リミッタ)及び局部発振回路が専用チャンネル用となり、自由に任意のチャンネルに設定できない。
中間周波信号を取出すための周波数変換回路、変調用中間周波信号発振器(搬送波発振回路)、局部発振器及び周期制御回路が必要であり、回路点数が多く、コスト高である。
位相同期回路にリミッタによる搬送波信号抽出を行っており、映像信号処理がゴースト除去の場合にはゴーストによる位相ひずみの影響によって、抽出した搬送波信号(中間周波)の位相誤差による位相同期の性能が劣化する。
等の課題がある。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、すべてのチャンネルに対応した同一チャンネルの再変調のチャンネルが設定でき、専用回路を不要とし、すべてのチャンネルが全く同一の回路で構成でき、映像信号処理用のチューナ内で同期検波のために使用されている位相ひずみの少ない搬送波を用いた同期型テレビ再送信装置を提供することを目的とする。」(段落【0006】-【0007】)

<実施例>
(k3-4)「以下、本発明の一実施例として映像信号処理がゴースト除去の場合であると仮定して図面に基づいて説明する。図1は本発明による同期型テレビ再送信装置の基本ブロック図である。図に示すように、ゴースト除去チューナ10と同期型テレビ変調器20とで構成されている。」(段落【0010】)

(c4)「従来からゴースト除去チューナ10の選局回路11は、周波数変換回路A12と局部発振回路13で構成されている。そこで、周波数変換回路B22用の局部発振信号を局部発振回路13からの出力信号を用いる。」(段落【0010】)

(k3-5)「また、一般の検波回路14は、同期検波回路15及び搬送波再生回路16で構成されているので、AM変調器21用の搬送波信号を搬送波再生回路16からの出力信号を用いる。そこで、」(段落【0010】)

(c5)「周波数変換回路B22からの出力信号の周波数は、受信したテレビ放送波信号のなかで、選局回路11で選局した信号に位相同期し、かつゴースト除去回路17でゴーストを除去したテレビ放送波信号を得ることができる。」(段落【0010】。下線は請求人の審判請求書に従い合議体が付した。)

(k3-6)「このように、同期型テレビ変調器20として位相同期をとるために、ゴースト除去チューナ10の中間周波信号と局部発振信号を用いた構成とすることで、容易に再変調と周波数変換を行うことができ、特別に同期制御回路を用いる必要がなく、回路構成が簡素である。」(段落【0010】)

4 甲第4号証の記載

甲第4号証(公開特許公報:特開平8-65651号)には、図面とともに次の事項が記載されている。

<発明の名称>
(d1)「【発明の名称】CATVヘッドエンド装置」

<産業上の利用分野>
(k4-1)「本発明はCATVヘッドエンド装置に関し、特に地域外からのTV信号を受信しチャンネル変換して再送信するCATVヘッドエンド装置に関する。」(段落【0001】)

<従来の技術>
(k4-2)「地方のCATV局では、例えば、東京民放局の微弱なTV電波を受信しチャンネル変換した後、同軸ケーブルを介して加入者へ再送信している。ところで、CATV加入者の居住する地域の地元TV局が、再送信するTV信号の送信チャンネルと同じチャンネルによりTV電波を送信している場合には、加入者のテレビ画面上に視覚的な妨害が生じることになる。」(段落【0002】)

(d2)「この場合、両TV信号の搬送波周波数のずれに応じて、妨害画像が上下左右に移動するので非常に見苦しい。このような視覚的な妨害を軽減するために、CATV局側では、再送信TV信号の搬送波周波数が地元TV局の送信搬送波周波数と一致するように、公知のPLLを設けて位相同期させて妨害画像が上下左右に移動するのを抑えている。」(段落【0002】。下線は請求人の審判請求書に従い合議体が付した。)

<発明が解決しようとする課題>
(k4-3)「上述したように従来は、CATV局が再送信するTVチャンネルと地元TV局の送信チャンネルとが同じチャンネルである場合の視覚的妨害を軽減するために、再送信するTV信号の送信搬送波周波数を地元TV局の送信搬送波周波数に一致させ、妨害画像が上下左右に移動するのを抑えているいる。しかし、同じチャンネルの2つのTV信号の画像が同一であるならば視覚的妨害は軽減できるが、異なる画像のときには画像が互いに重なった状態となり、視覚的妨害を十分に軽減できないという問題点を有している。
本発明の目的は、CATV局が再送信するTV信号の送信チャンネルと地元TV局の送信チャンネルとが同じ場合でも、視覚的妨害を軽減できるCATVヘッドエンド装置を提供することにある。」(段落【0003】-【0005】。請求人の口頭陳述要領書摘示箇所を含む。下線は請求人の口頭審理陳述要領書に従い合議体が付した。)

<実施例>
(k4-4)「次に本発明について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施例を示すブロック図である。ここで、混合器1は、CATV局が再送信のために受信するTV信号S1を受け、局部発振器2からの局発信号S2と混合して中間周波信号S3に変換する。一方、」(段落【0006】-【0007】)

(d3)「混合器4は、CATV局が再送信するTV信号の送信チャンネルと同じチャンネルの地元TV局のTV信号S4を受け、VCO(電圧制御発振器)8の発振出力信号S8と混合して中間周波信号S5に変換する。」(段落【0007】。下線は請求人の口頭審理陳述要領書に従い合議体が付した。)

(k4-5)「可変分周器5は、外部から供給される分周比制御信号Sdの指定により分周比を変化させて、中間周波信号S3を分周する。同様に分周器6は、中間周波信号S5を所定の分周比で分周する。位相比較器7は、可変分周器5および分周器6の出力信号S6,S7の位相を比較し、制御信号ScをVCO8へ出力して位相同期するように発振出力信号S8の周波数f8を制御する。混合器3は、VCO8の発振出力信号S8と中間周波信号S3とを混合して再送信TV信号S9として出力する。」(段落【0008】)

5 甲第5号証の記載

甲第5号証(公開特許公報:特開平9-271005号)には、図面とともに次の事項が記載されている。

<従来の技術>
(k5-1)「CATV(ケーブルテレビジョン)等のTV共同受信は、UHFチャンネルのテレビジョン放送電波を受信して、受信したUHFチャンネルをVHFのチャンネルに変換したり、VHFチャンネルのテレビジョン放送電波を、異なるVHFチャンネルに変換したりしてケーブルを利用して伝送するようにしている。特に、VHFのテレビジョン放送波がある地域で電界強度が弱く、外界からのノイズの影響や反射波の影響で放送波の画質が低下している場合には、同じ番組の放送サービスを行う必要がある。」(段落【0002】)

(e1)「21はミキサ15およびミキサ19に局発信号を共通に供給する局部発振器、22はミキサ15から出力される中間周波数信号から搬送波を再生する同期キャリア再生器」(段落【0017】)

(k5-2)「次に、本発明の多方向受信用CATV伝送装置の第2の実施の形態の構成を示すブロック図を図3に示す。図3に示す多方向受信用CATV伝送装置は、再放送番組がUHF放送のチャンネルで伝送される例であり、図2に示す多方向受信用CATV伝送装置と比較して、再送信装置1の構成だけが異なっているので、以下、再送信装置1について説明する。図3において、30はUHFテレビジョン放送を受信するUHFアンテナ、31は所望の周波数帯域を抽出するバンドパスフィルタ(BPF)、32は再放送するテレビジョン放送の所定のチャンネルを選局して中間周波数信号に変換するミキサ(MIX3)、33はミキサ32に供給する局発信号を発振する局部発振器、34はミキサ32から出力される中間周波数信号を復調してベースバンドの映像信号と音声信号とを得る復調器、35は復調された映像信号からゴースト成分を除去するゴーストキャンセラ回路、36はゴースト除去された映像信号と音声信号とにより搬送波を変調することによりコンポジット信号を生成する変調器、37は変調器36から出力されるコンポジット信号を再放送するテレビジョン放送の所定のチャンネルに周波数変換するためのミキサ(MIX4)、38は不要波成分を除去するバンドパスフィルタ(BPF)である。
このように構成された多方向受信用CATV装置は、VHF放送波の電界が弱い地域に設置されており、多方向受信用CATV装置に向けてVHF放送番組がUHF放送のチャンネルにより送信されている。そこで、UHFテレビジョン放送電波はアンテナ30において受信されてBPF31において所定周波数帯域のみが抽出されて、ミキサ32に入力される。ミキサ32には、局部発振器33からの局発信号が供給されて、ミキサ32に入力されたUHFテレビジョン放送の所定のチャンネルの信号が中間周波数信号に変換される。変換された中間周波数信号は、復調器34に入力される。
この復調器34では、再放送する番組の映像信号と音声信号とがベースバンドに復調される。この場合、復調器34において図示しない同期キャリア再生器で再生した映像搬送波を用いて同期検波するようにしてもよい。そして、映像信号はゴーストキャンセラ回路35を介して変調器36に入力され、音声信号は直接変調器36に入力される。ゴーストキャンセラ回路35では、前記GCR信号により映像信号中に含まれるゴースト成分を除去するようにしている。
この変調器36では再送信装置2の同期キャリア再生器22において再生された映像搬送波が、ゴースト除去された映像信号および音声信号により変調されることにより、コンポジット信号が生成される。生成されたコンポジット信号はミキサ37において、再送信装置2の局部発振器21からの局発信号により所定のチャンネルに周波数変換されて、BPF38により不要波成分が除去されてアンテナ切換器23へ向けて出力される。この場合、変調器36においては再送信装置2で再生された映像搬送波を変調していると共に、ミキサ15とミキサ37とに共通の局発信号が局部発振器21から供給されているので、再送信装置2に入力されるテレビジョン放送信号と、再送信装置1から出力されるテレビジョン放送信号とは同期するようになる。したがって、ケーブル伝送された再放送番組を受信しても、同一チャンネルビート妨害が生じることはない。
また、VHFアンテナ13と再送信装置2との間が切断される等の再送信装置2の受信系に障害が発生した場合は、再送信装置2にはVHFテレビジョン放送信号が入力されないため、同期キャリア再生器22は映像搬送波を再生することができないことになる。すると、再送信装置1には映像搬送波が供給されないことになるので、変調器36らコンポジット信号が出力されず、再放送番組のテレビジョン放送ができないことになる。」(段落【0032】-【0036】)

(e3)「そこで、信号検出器39において、再送信装置2から映像搬送波が供給されているか否かを検出し、供給されていないと判断した場合には、キャリア切換器40を同期キャリア再生器22側から映像キャリア発振器41側へ切り換えるようにする。」(段落【0036】)

(e2)「これにより、変調器36には映像キャリア発振器41からの映像搬送波が供給されるため、コンポジット信号が生成されて出力されるようになる。この場合、映像キャリア発振器41が発振する映像搬送波の周波数は、テレビジョン放送の映像搬送波の周波数と理想的には同一の周波数が望ましいが、現実的にはほぼ等しい周波数であればよい。」(段落【0037】)

(k5-3)「また、再送信装置2の局部発振器21の発振が停止される事故が生じる恐れもあり、局部発振器21の発振が停止されると、ミキサ15、ミキサ19、およびミキサ37において周波数変換が行えなくなる。この場合、再送信装置1および再送信装置2からはテレビジョン放送信号が出力されず、ケーブル放送することができない。
そこで、再送信装置1に局部発振器21からの局発信号が供給されているか否かを、信号検出器42において検出し、供給されていないと判断した場合には、ローカル切換器43を局部発振器21側から局部発振器44側へ切り換えるようにする。これにより、ミキサ37には局部発振器44からの局発信号が供給されて、所定のチャンネルに変換されたテレビジョン信号をミキサ37から出力することができる。この場合、局部発振器44が発振する映像搬送波の周波数は、局部発振器21の局発信号の周波数と理想的には同一の周波数が望ましいが、現実的にはほぼ等しい周波数であればよい。
また、降雨や降雪のためUHFテレビジョン放送の電界強度が劣化したり、障害が発生した場合は、アンテナ切換器23は再送信装置2から出力されるテレビジョン放送信号を選択して出力するようになるため、ケーブルにテレビジョン放送が伝送されなくなることを防止することができる。このように、図3に示す多方向受信用CATV伝送装置においては、再送信装置2の受信系に障害が発生して再送信装置2が動作しなくなっても、再送信装置1からはVHFテレビジョン放送の再放送番組をケーブルを利用して放送することができるようになる。」(段落【0037】-【0039】)

6 甲第6号証の記載

甲第6号証(JEITA 地上デジタル放送ケーブル再送信パススルー方式に関する報告書、第9乃至12頁)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(f1)「パススルーの1つの方式は、アンテナで受信した地上デジタルテレビジョン放送信号からそれぞれのチャンネルを選択し(帯域抽出という)レベル調整をして、放送波と同じ周波数でケーブルテレビ施設に流す方式で、同一周波数パススルーと呼ぶ。全てのチャンネルをこの方式で送出されたCATVパススルー伝送信号の周波数配列は、図2-6のように放送信号(電波)と同じ配列となる。また、この方式に使用する機器の基本部分を図2-7に示す。受信は地上デジタル放送受信機でよい。」(第10頁)

(k6-1)「現在検討されているUHF帯以外で受信可能な受信機は、伝送されるチャンネルの周波数情報の告知を前提にして、加入者側でのチャンネルプリセット(初期設定)が必要であるため施設管理者の存在が前提条件となっている。また通常のケーブルテレビ施設においても、伝送する周波数を変更して再送信する場合は、周波数情報を加入者に告知する必要がある。つまりCATV施設管理者が不在の場合は、問い合わせ先が不明のため加入者に対して周波数変更情報の周知ができず、また伝送系・宅内系設備の改修もできない。結果的にUHF帯以外で受信可能な受信機も使用できない場合が発生する。」(第36頁。請求人の口頭審理陳述要領書摘示箇所。下線は請求人の口頭審理陳述要領書に従い合議体が付した。)

7 甲第7号証の記載

甲第7号証(公開特許公報:特開2007-96846号)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(g1)「アナログ放送受信チューナ部2は、入力が共用アンテナ1に接続され、出力がアナログ映像・音声信号処理部3の入力に接続される。デジタル放送受信チューナ部4は、入力が共用アンテナ1に接続され、出力がデジタル映像・音声信号処理部5の入力に接続される。」(段落【0024】)

(g2)「この時間管理部10は、実時間に基づいて動作し、予め決められた時期に時間設定されているもので、第二例のテレビ受信機は、制御部9の制御によって別途次のような動作が行われる。」(段落【0032】)

(g3)「テレビの地上波アナログ放送は、2011年7月24日に放送終了することが予定されている。そこで、時間管理部10の時間設定を、アナログ放送が終了する2011年7月24日に設定したとすれば、その設定時間が到来したことを制御部9が検知すると、制御部9は、それ以降、テレビ受信機に電源が投入された際に、アナログ放送受信チューナ部2とアナログ映像・音声処理部3からなるアナログ放送受信系統への電源供給を絶つように制御する。なお、制御部9は、アナログ放送受信系統への電源供給を絶っても、デジタル放送受信系統やアナログ・デジタル共通の受信系統に対しては、以前と同じように電源供給を続行するように制御する。」(段落【0036】)

8 甲第8号証の記載

甲第8号証(特開平10-304331号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(h1)「【発明の名称】CATVシステムのヘッドエンドにおける予備系装置」(【発明の名称】)

<発明の属する技術分野>
(k8-1)「本発明はCATVシステムのヘッドエンドにおいて通常使われる運用系に異常が発生すると運用系に代わって自動的に信号の送信を行う予備系装置に関するものであり、運用系内の複数チャンネルをそれより少ない送信機器でバックアップできるようにしたものである。」(段落【0001】)

<従来の技術>
(k8-2)「CATVシステムにおいて送信信号の停波は地上波のTV放送と同様に最大限に防止されなければならない。しかも近年は、CATVシステムが単なるTV放送等の再送信からデータ通信にも用途の拡大がなされ、コンピュータ通信網、さらには公専公の解禁による電話通信網としての利用も期待されており、これまでに増して回線の安全性が求められている。
図3は従来の一般的なCATVシステムのヘッドエンドの概略構成を示したものであり、平常時に使われる運用系と、運用系の回線(チャンネル)に異常があった場合に、その異常のあったチャンネルを運用系に代わり代行送信するための予備系とを備えている。運用系は、受信した地上波等、高周波のソース信号(RF信号)を送信する再送信系と、BS、CSチューナやVTR装置の出力等、ベースバンドのソース信号(ビデオ信号)を送信する自主放送系とで少し異なり、再送信系には入力チャンネルと出力チャンネルとを夫々別々に設定することができるTVシグナルプロセッサAが取り付けられ、自主放送系には出力チャンネルのみを設定することができるTV変調器Bが取り付けられているが、これらTVシグナルプロセッサAやTV変調器Bから出力される送信信号はすべて出力混合器Cにより混合されてヘッドエンドから幹線へと出力されるようになっている。一方、予備系は(この例は再送信系のみ対応)、複数あるTVシグナルプロセッサAで受信可能な全てのRF信号を受信できるようにした(ON AIR信号を受信できる)TVチューナDと、その出力を送信チャンネル用の信号に変換して出力混合器Cへ出力できるようにしたユニバーサル変調器Eとからなり、TVチューナDは図示されていないコントロールスイッチ等で任意の所望チャンネルのRF信号を受信することができ、またユニバーサル変調器Eは図示されていないコントロールスイッチ等により任意の所望の送信チャンネルに変換して信号を出力することができるようになっている。」(段落【0002】-【0003】)

<発明が解決しようとする課題>
(k8-3)「図3に示したCATVシステムは平常時に信号を送信する運用系に加えて予備系を備えているが、送信信号の停波を自動監視する機能は備えておらず、CATVのセンタにおいて信号の停波を見逃すか或いは確認に遅れが生じる恐れがあり、視聴者や通信ユーザに多大な迷惑をかけることがあった。また、予備系があっても停波したチャンネルを復旧するため、予備系のTVチューナやユニバーサル変調器の受信チャンネルや出力チャンネルを手動で設定するひつようから、対応に遅れが生じる問題があった。さらにこれはCATVのセンタとヘッドエンドが遠く離れている場合、大きな問題となる。」(段落【0004】)

<発明の実施の形態1>
(k8-4)「図1は本発明のCATVシステムのヘッドエンドにおける予備系装置を取り入れて構成したヘッドエンドであり、受信アンテナ10で受信した地上波(VHF放送波、UHF放送波、FM放送波等)を必要によりチャンネルを変更して幹線に送出する再送信系のシステム構成である。このヘッドエンドは、受信アンテナ10で受信されたON AIR信号が入力分波器11を介して運用系と予備系とに出力されるようになっており、運用系ではチャンネル毎にある複数のTVシグナルプロセッサ1に放送波毎が分波されて出力され、予備系では1つのTVチューナ3にON AIR信号がそのまま出力されるようになっている。
前記運用系はチャンネル毎のTVシグナルプロセッサ1で構成されており、各TVシグナルプロセッサ1には夫々入力チャンネルと出力チャンネルとがセットされている。そして夫々、入力チャンネルでセットされたRF信号(ソース信号)を受信し、受信したRF信号を出力チャンネルでセットされたRF信号(送信信号)に変換して出力するようにしてある。例えば図中最も上のTVシグナルプロセッサ1は第1チャンネルのRF信号を受信し、これを再び第1チャンネルのRF信号として出力し、上から4番目のTVシグナルプロセッサ1は第42チャンネルのRF信号を受信して、これを第5チャンネルのRF信号として出力する。各TVシグナルプロセッサ1の出力は出力混合器2により混合されてヘッドエンド出力となり、幹線へ送出される。
前記運用系に対する予備系は、TVチューナ回路3とユニバーサル変調回路4とからなり、本件発明の予備系装置は、これらに加えて異常判別ユニット5とCPU回路6とからなる運用系を予備系に自動切り替えするための予備系切替手段が加えられる。
前記TVチューナ回路3は、前記入力分波器11を通じて受信アンテナ10のON AIR信号(全チャンネルの信号を含む)が入力されるようにしてあり、CPU回路6の制御信号で、運用系のTVシグナルプロセッサ1で受信可能な全てのチャンネルから任意の所望の1チャンネルを受信して、これをビデオ信号として出力することができる。
前記ユニバーサル変調回路4は、TVチューナ回路3のビデオ信号が入力されるようにしてあり、このビデオ信号をCPU回路6の制御信号で任意の所望の1チャンネルの送信信号に変換して出力することができるようにしてある。この例ではTVチューナ回路3とユニバーサル変調回路4との間にSW回路12が挿入されており、このSW回路12によりTVチューナ回路3からのビデオ信号と図示されていない自主放送用装置のビデオ信号のどちらか一方を切り替えてユニバーサル変調回路12に入力できるようにしてある。このSW回路12はCPU回路6により切り替え制御可能とし、運用系に異常があると自動的にTVチューナ回路3からのビデオ信号が入力されるようになっている。またユニバーサル変調回路4と出力混合器2との間にも第2のSW回路13が挿入されており、平常時はその回線が遮断されてユニバーサル変調回路4の出力が出力混合器2へ出力されないが、運用系に異常があると自動的にその回線が接続されてユニバーサル変調回路4の出力が出力混合器2へ出力されるようになっている。即ち、不要な雑音等がユニバーサル変調回路4から出力混合器2へ出力されないようにしてある。
前記異常判別ユニット5は、運用系のTVシグナルプロセッサ1の送信信号(RF信号)の一部を放送に支障がない程度に分岐して取り出し、その分岐信号をモニタできるようにしてあり、この分岐したRF信号のレベルをチェックしてRF信号が停波しているか否かを判別できるようにしてある。そしてRF信号に信号停波があると判断された場合、例えばON信号を出力するようにしてある。」(段落【0007】-【0012】)

(h2)(h3)「前記CPU回路6は、入力チャンネル判別ポートと出力チャンネル判別ポートを夫々複数づつ備えており、入力チャンネルポート及び出力チャンネルポートには夫々左から順に異なるチャンネル番号が設定されている。これらポートは、異常判別ユニット5がRF信号の停波を検出して例えばON信号を出力したときに、それはどのTVシグナルプロセッサ1であり、且つ当該TVシグナルプロセッサ1は何チャンネルの信号を受信し、それを何チャンネルの信号として出力しているのかをCPU内部で判別できるようにするため設けられている。例えば、ある異常判別ユニット5でRF信号の停波が検出されてON信号が出力されると、そのON信号が入力チャンネルポートと出力チャンネルポートとに入力され、ON信号の入力された入力チャンネルポートのチャンネル番号と出力チャンネル番号とから、異常が生じたTVシグナルプロセッサ1の入力チャンネルと出力チャンネルとがわかるようになっている。CPU回路6はこのチャンネル情報を基に前記TVチューナ回路3とユニバーサル変調回路4に制御信号を出力し、停波したチャンネルの信号をTVチューナ回路3に代行受信させ、その出力をユニバーサル変調回路4で停波したチャンネルの送信信号に変換させて、運用系に代わり放送を継続させるようにしてある。」(段落【0013】。下線は請求人の審判請求書に従い合議体が付した。)

<発明の効果>
(h4)「本発明のうち請求項1記載のCATVシステムのヘッドエンドにおける予備系装置を採用すれば、地上波等を受信して再送信するヘッドエンドにおいて、その送信チャンネルの一つがTVシグナルプロセッサの故障等で停波しても、すぐにその送信チャンネルが予備送信系で自動復旧されるため、信号停波による被害を防止することができる。」(段落【0017】。下線は請求人の審判請求書に従い合議体が付した。)

9 乙第号証の記載

乙第1号証(山田 宰監修/映像情報メディア学会編「デジタル放送ガイドブック」)には、以下の記載がある。

「OFDM波をそのまま伝送(以下,「同一周波数によるパススルー」)あるいは周波数変換を行って伝送(以下「周波数変換によるパススルー」)する」(267頁左欄下から6?4行)

「同一周波数によるパススルー伝送の場合においては、そのまま増幅し伝送され、受信者端子において地上デジタルテレビジョン放送受信機で受信する.」(267頁右欄6?8行)

10 乙第2号証の記載

乙第2号証(亀山 渉、花村 剛【監修】「改訂版 デジタル放送教科書(上)」)には、以下の記載がある。

「また、デジタル放送方式についても、そのまま、あるいは周波数を変換してCATV伝送路に伝送する「パス・スルー方式」と、変調方式変換(OFDM→QPSK)を行う「トランス・モジュレーション方式」の2方式が規定されました。」(315頁4?6行)


第6 当審の判断

本件特許明細書の補正および記載要件についての無効理由3-6および無効理由3-3ないし3-5について判断してから、無効理由3-1および無効理由3-2の判断を行う。

1 無効理由3-6(特許法第17条の2第3項)について

請求人は、無効理由3-6(上述第3 1(6)および第3 2(6))において、本件特許の平成21年12月11日付けの手続補正書による補正により、「デジタルパススルー」が「デジタル放送波パススルー」に補正されたことにより、中間にレベル調整回路等の信号処理回路を含む、いわゆるデジタル放送波パススルー運用方式(特に、同一周波数パススルー運用方式)のための回路を含む概念となり、そして、一般的なデジタル放送波パススルー運用方式のための回路は、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面には一切記載されていないから、
該補正は、本件の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲においてされたものではないから、本件特許は特許法第17条の2第3項の規定に違反して特許されたものであり、同法第123条第1項第1号により無効とされるべきである旨主張しているので判断する。

(1)補正の内容(平成21年12月11日付けの手続補正書による)

平成21年12月11日付けの手続補正書による補正は、
本件特許の請求項3および段落【0014】の「デジタルパススルー手段」を「デジタル放送波パススルー手段」とする補正、ならびに、
段落【0023】、【0029】、【0035】、【0039】、【0064】、【0072】および【0082】の「デジタルパススルー回路」を「デジタル放送波パススルー回路」とする補正が含まれる。

(2)本件の当初明細書および特許請求の範囲の記載事項

本件の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書」という。)の記載事項は、本件特許公開公報に記載されたとおりのものであり、以下の記載事項aないしfを含むものである。

a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、
デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部と、
アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部と、
前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し、
前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とすることを特徴とする再送信装置。
【請求項2】
前記キャリア抽出部は、
映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の再送信装置。
【請求項3】
受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と合成するデジタルパススルー手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の再送信装置。」(特許請求の範囲)

b 「上記入力分配部11は、例えばアンテナにより受信された地上デジタル放送電波をデジタル放送復調部12a?に入力すると共に、アンテナにより受信された現用のアナログ放送電波をアナログ変調部13a?に入力する。また、入力分配部11は、上記受信した地上デジタル放送電波をデジタルパススルー回路16によりそのまま出力混合部15へ出力する。」(段落【0023】)

c 「出力混合部15は、アナログ変調部13a?で変調された各チャンネルのアナログ信号と入力分配部11からデジタルパススルー回路16を介して送られてくるデジタル放送波とを混合し、再送信信号として外部に出力する。」(段落【0029】)

d 「出力混合部15は、上記各アナログ変調部13a?13jで変調された各チャンネルのアナログ放送波を混合器51、52で混合した後、混合器53に入力する。また、出力混合部15は、デジタルパススルー回路16の端子18から出力されるデジタル放送波をU/V混合器54により取り出し、混合器53に入力する。この場合、U/V混合器54は、UHF帯のデジタル放送波を取り出すために用いているので、VHF側の端子は負荷抵抗Rを介して接地する。上記負荷抵抗Rの値は、線路のインピーダンスに合わせて例えば75Ωに設定される。」(段落【0039】)

e 「上記混合器53は、混合器51、52で混合されたアナログ放送波とU/V混合器54を介して取り出されたデジタル放送波とを混合し、分岐回路55を介して出力端子56より再送信信号として出力する。また、混合器53から出力されるアナログ放送波とデジタル放送波の混合信号は、分岐回路55を介して出力モニタ端子57へ出力される。」(段落【0040】)

f (図1および図2に記載されていると認められる事項)
図1によれば、「デジタルパススルー回路16」は、「入力分配部」から「出力混合部」へ、何ら信号処理を施さずに信号を送る信号線である。
図2によれば、図1と同じように、「デジタルパススルー回路16」は、「入力分配部」から「出力混合部」へ、何ら信号処理を施さずに信号を送る信号線であり、入力の端子17および出力の端子18によりそれぞれ、「入力分配部」および「出力混合部」と接続される。

(3)新規事項の判断

記載事項bによれば「デジタルパススルー回路16」により「受信した地上デジタル放送電波」を「そのまま出力混合部15へ出力する」ものである。
また、記載事項cによれば、「デジタルパススルー回路16」は、「入力分配部11」からの「デジタル放送波」が介されるものと理解され、
該「介して送られてるデジタル放送波」は「アナログ変調部13a?で変調された各チャンネルのアナログ信号」と混合され、
その混合された信号(混合信号)は、記載事項eによれば「分岐回路55を介して出力端子56より再送信信号として出力」される。
そして、記載事項fによれば、「デジタルパススルー回路16」では何ら信号処理は施されない。
よって、「デジタルパススルー回路16」とは、
「デジタル放送波が入力され、何ら信号処理が施されることなくそのまま出力され、各チャンネルのアナログ信号と混合されるための回路」であると認められる。
そして、信号が「入力され、何ら信号処理が施されることなくそのまま出力」される回路を「パススルー回路」と呼ぶことは普通のことである。
してみれば、信号を「デジタル放送波」に特化した「パススルー回路」を「デジタル放送波パススルー回路」と称することができることは明らかである。
また、「パススルー回路」を「パススルー手段」を称してもよいことは明らかであるから、「デジタル放送波パススルー手段」とも称することができることは明らかである。
よって、「デジタルパススルー回路」を「デジタル放送波パススルー回路」とする補正および「デジタルパススルー手段」を「デジタル放送波パススルー手段」とする本件補正は、新たな技術事項を導入するものではなく、当初明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。

また、請求人は「中間にレベル調整回路等の信号処理回路を含む、いわゆるデジタル放送波パススルー運用方式(特に、同一周波数パススルー運用方式)のための回路を含む概念となった」と主張するが、本件当初明細書には「デジタル放送波パススルー運用方式」についての言及はなく、上述のように「デジタル放送波」に特化した「パススルー回路」を「デジタル放送波パススルー回路」と称していることは明らかであるから、請求人の当該主張は採用できない。

以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものではなく、
「本件特許は特許法第17条の2第3項の規定に違反して特許されたものであり、同法第123条第1項第1号により無効とされるべき」ということはできない。

2 無効理由3-3(特許法第36条第4項第1号)について

請求人は、無効理由3-3(上述第3 1(3)および第3 2(3))において、本件特許の請求項3に記載の「デジタル放送波パススルー手段」がいわゆるデジタル放送波パススルー運用方式の同一周波数パススルー運用方式を意味するものとすると、本件特許の[発明の詳細な説明]は、当業者が特許請求の範囲の請求項3に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないものであるため、特許法第36条第4項第1項に規定する要件を満たしておらず、同法第123条第1項第4号により無効とされるべきである旨主張しているので判断する。

本件特許の請求項3に記載の「デジタル放送波パススルー手段」は、本件明細書の発明の詳細な説明(段落【0023】、【0029】および【0035】等)に記載されている「デジタル放送波パススルー回路16」に対応することは明らかである。
そして、この「デジタル放送波パススルー回路16」の動作は、上述の段落【0023】、【0029】および【0035】等に説明されており、当業者が実施できる程度に記載されていると認められるから、当業者が特許請求の範囲の請求項3に係る発明の実施ができないとはいえない。

なお、本件明細書には、請求人が主張するような「デジタル放送波パススルー運用方式の同一周波数パススルー運用方式」についての記載はなく、
本件明細書において「デジタル放送波パススルー回路」の構成および動作は上述のように段落【0023】、【0029】および【0035】等に説明されており、当業者が実施できる程度に記載されていると認められ、
該運用方式に基づく実施の形態が示されていないことを理由に当業者が特許請求の範囲の請求項3に係る発明の実施ができないとはいえない。

したがって、「本件特許の[発明の詳細な説明]は、当業者が特許請求の範囲の請求項3に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないものであるため、特許法第36条第4項第1項に規定する要件を満たしておらず、同法第123条第1項第4号により無効とされるべきである」ということはできない。

3 無効理由3-4(特許法第36条第6項第1号)について

請求人は、無効理由3-4(上述第3 1(4)および第3 2(4))において、「一般的なデジタル放送波パススルー運用方式の構成は発明の詳細な説明には記載されていないから、本件特許の請求項3に記載される「デジタル放送波パススルー手段」は、それがいわゆるデジタル放送波パススルー運用方式のための構成を意味するのであれば、発明の詳細な説明には記載されていないことにな」り、「本件特許の請求項3に係る発明は、[発明の詳細な説明]に記載されたものではないから特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第123条第1項第4号により無効とされるべきである」旨主張しているので判断する。

本件特許の請求項3に記載の「デジタル放送波パススルー手段」は、本件明細書の発明の詳細な説明(段落【0023】、【0029】および【0035】等)に記載されている「デジタル放送波パススルー回路16」に対応することは明らかであり、この「デジタル放送波パススルー回路16」の動作は、上述の段落【0023】、【0029】および【0035】等に説明されており、発明の詳細な説明に記載されたものである。
そして、この明細書に記載された「デジタル放送波パススルー回路16」が、「デジタル放送波が入力され、何ら信号処理が施されることなくそのまま出力され、各チャンネルのアナログ信号と混合されるための回路」であることは、上述1(3)で検討したとおりであり、「デジタル放送波が入力され、何ら信号処理が施されることなくそのまま出力され、各チャンネルのアナログ信号と混合されるため」の手段であればよい、つまり、「回路」以外の概念を含む、「デジタル放送波パススルー手段」という表現に一般化できることは明らかである。

なお,本件明細書には、請求人が主張するような「デジタル放送波パススルー運用方式の同一周波数パススルー運用方式」についての記載はなく、「デジタル放送波パススルー手段」は、いわゆる「デジタル放送波パススルー運用方式のための構成」に特化したものとはいえない。

したがって、「本件特許の請求項3に係る発明は、[発明の詳細な説明]に記載されたものではないから特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第123条第1項第4号により無効とされるべきである」ということはできない。

4 無効理由3-5(特許法第36条第6項第2号)について

請求人は、無効理由3-5(上述第3 1(5)および第3 2(5))において、「アンテナで受信した地上デジタルテレビジョン放送信号から選択されたチャンネルのレベル調整をして放送波と同じ周波数でケーブルテレビ施設に流すためのいわゆる同一周波数パススルー運用方式のデジタル放送波パススルー運用方式のことなのか、それとも、受信したデジタル放送波を、信号処理を伴わない配線で単に通過させて再送信信号と混合する通過手段のことなのか、いずれを意味するのか不明である」から、
本件特許の請求項3に係る発明は、特許を受けようとする発明が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、同法第123条第1項第4号により無効とされるべきである旨主張しているので判断する。

本件明細書には「デジタル放送波パススルー運用方式の同一周波数パススルー運用方式」についての記載はなく、本件特許の請求項3に係る発明における「デジタル放送波パススルー手段」は、「デジタル放送波パススルー運用方式」に特化されたパススルー手段ではなく、
上述3で検討したとおり、「デジタル放送波が入力され、何ら信号処理が施されることなく出力され、各チャンネルのアナログ信号と混合されるため」の手段であることは明らかである。
よって、「デジタル放送波パススルー手段」が、「アンテナで受信した地上デジタルテレビジョン放送信号から選択されたチャンネルのレベル調整をして放送波と同じ周波数でケーブルテレビ施設に流すためのいわゆる同一周波数パススルー運用方式のデジタル放送波パススルー運用方式のことなのか、それとも、受信したデジタル放送波を、信号処理を伴わない配線で単に通過させて再送信信号と混合する通過手段のことなのか、いずれを意味するのか不明である」ということはできない。
したがって、「本件特許の請求項3に係る発明は、特許を受けようとする発明が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、同法第123条第1項第4号により無効とされるべきである」ということはできない。

5 無効理由3-1(特許法第29条第2項)について

(1)本件特許発明1について

ア 甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明・事項・技術

(ア)甲第1号証に記載された発明

以下、甲第1号証の上述第5 1に挙げた記載に基づき、甲第1号証に記載された発明(以下「甲1発明」という。)を認定する。

a 「ヘッドエンド装置10」

記載(k1-7)によれば、「ヘッドエンド装置10」は、「VHFテレビ放送(アナログ)を行う地上局からの放送電波を受信するVHFアンテナ2、UHFテレビ放送(アナログ放送)を行う地上局からの放送電波を受信するUHFアンテナ4、CS放送用の通信衛星(CS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のCS受信信号に周波数変換して出力するCSアンテナ6、及び、BSデジタル放送を行う放送衛星(BS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のBS受信信号に周波数変換して出力するBSアンテナ8を備えた」ものであり、記載(k1-7)によれば、「ヘッドエンド装置10においては、VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされている」。
よって、「VHFテレビ放送(アナログ)を行う地上局からの放送電波を受信するVHFアンテナ2、UHFテレビ放送(アナログ放送)を行う地上局からの放送電波を受信するUHFアンテナ4、CS放送用の通信衛星(CS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のCS受信信号に周波数変換して出力するCSアンテナ6、及び、BSデジタル放送を行う放送衛星(BS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のBS受信信号に周波数変換して出力するBSアンテナ8を備え、VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10」を認めることができる。

b 「BSアンテナ8からのBS受信信号」

記載(a2)によれば「BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされている」。
そして、「復変調部20」については、記載(k1-8)および記載(a4)によれば、「各復変調部20には、受信信号入力端子20aに入力されたBS受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調するBSデジタルチューナ22と、BSデジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24とが設けられている。」
また、記載(k1-2)によれば、「端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できる」。
よって、「ヘッドエンド装置10」は、
「BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされており、各復変調部20には、受信信号入力端子20aに入力されたBS受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調するBSデジタルチューナ22と、BSデジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24とが設けられており、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できる」ものである。

c 「所定伝送チャンネル」

「所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)」とは、記載(k1-1)および記載(k1-2)によれば、「地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号」のことである。

d 「地上波デジタル放送」

記載(k1-5)、記載(k1-10)によれば、「本発明のヘッドエンド装置」は、「地上波デジタル放送を再送信するCATVシステムに適用することもできる」ものであり、「デジタルチューナとして、地上波デジタル放送を受信する地上波デジタルチューナを設けるようにすれば、地上波デジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号として再送信することができる」。

e まとめ

以上、まとめると、甲1発明として以下の発明を認めることができる。

VHFテレビ放送(アナログ)を行う地上局からの放送電波を受信するVHFアンテナ2、UHFテレビ放送(アナログ放送)を行う地上局からの放送電波を受信するUHFアンテナ4、CS放送用の通信衛星(CS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のCS受信信号に周波数変換して出力するCSアンテナ6、及び、BSデジタル放送を行う放送衛星(BS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のBS受信信号に周波数変換して出力するBSアンテナ8を備え、VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされており、各復変調部20には、受信信号入力端子20aに入力されたBS受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調するBSデジタルチューナ22と、BSデジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24とが設けられており、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴でき、
所定伝送チャンネルとは、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)であり、
地上波デジタル放送を再送信するCATVシステムに適用することもできるものであり、デジタルチューナとして、地上波デジタル放送を受信する地上波デジタルチューナを設けるようにすれば、地上波デジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号として再送信することができる
ヘッドエンド装置。

(イ)甲第2号証の2に記載された事項

「アナログ放送終了のための体制と計画」の検討にあたり、特に留意すべき点として、「現在、一世帯に2台のテレビがあるとされているが、期間内に全てのテレビの完全デジタル対応を急ぐとアナログテレビの廃棄問題が生じ、一方で受信機の完全デジタル対応化も不可能と予想されるので、一定期間はケーブルテレビでのデジ-アナ変換対応を検討すべきと考える。」と記載されている。

すなわち、甲第2号証の2には、アナログテレビの廃棄問題、受信機の完全デジタル対応化が不可能と予想されることから、アナログ放送終了の後、一定期間はケーブルテレビでデジ-アナ変換対応を検討すべきということがアナログ放送終了のための体制と計画を検討するにあたり、特に留意すべき事項であることが記載されている。

(ウ)甲第3号証記載技術

甲第3号証には、本件発明1に関連する技術として、以下に示すように、従来技術である甲第3号証記載技術1と、実施例に記載された甲第3号証記載技術2が認められる。

a 従来技術に記載された技術(甲第3号証記載技術1)

記載(c3)によれば、「受信したチャンネルを周波数変換し潜在電界が高いテレビチャンネルと同じチャンネルで再送信する場合、加入者での潜在電界による同一チャンネルビート妨害を軽減するために高周波位相を同期させる機能を有した変調器を用いて」おり、
記載(k3-2)によれば、「受信したテレビ放送波信号を周波数変換回路C46で周波数変換して中間周波信号とし、この信号の中からリミッタ回路50によって搬送波を抽出し、この搬送波信号を映像信号と音声信号とでAM変調器44でAM変調」し、「変調されたこの変調波信号を局部発振回路49からの局部発振信号を用いて周波数変換器B45で周波数変換することによって、再送信するチャンネルの高周波位相を入力信号と同期をとっている。」というものである。

つまり、甲第3号証記載技術1として、
受信したチャンネルを周波数変換し潜在電界が高いテレビチャンネルと同じチャンネルで再送信する場合、加入者での潜在電界による同一チャンネルビート妨害を軽減するために、
受信したテレビ放送波信号を周波数変換回路C46で周波数変換して中間周波信号とし、この信号の中からリミッタ回路50によって搬送波を抽出し、
この搬送波信号を映像信号と音声信号とでAM変調器44でAM変調し、変調されたこの変調波信号を局部発振回路49からの局部発振信号を用いて周波数変換器B45で周波数変換することによって、再送信するチャンネルの高周波位相を入力信号と同期をとる技術が認められる。

b 実施例に記載された技術(甲第3号証記載技術2)

記載(c1)によれば、甲第3号証に記載された技術は、「CATVなどの共同受信施設のヘッドエンド装置」「等に利用される受信したテレビ放送波信号の搬送波周波数と全く同一の周波数で再送信すると共に、その再送信に際して」「各種映像信号処理が行われる同期型テレビ再送信装置に関する」ものである。
記載(c2)によれば、「一般的には、受信チャンネルと同一チャンネルで送信する必要があるが、放送電波の受信周波数と有線テレビ施設の送信周波数が僅かに異なると、テレビ放送波が有線テレビ施設の信号を干渉してビート妨害を与える」「ため、このビート妨害を軽減するためには、有線テレビ施設の送信周波数を放送電波の周波数と位相同期させる必要があ」り、「また、ゴースト除去以外でも受信した信号に他の映像信号を重畳したり、他の映像信号との信号処理をするなど各種の映像信号処理をして、再度同一チャンネルで送信する場合には、同様に位相同期を行う必要がある」。
その際、記載(c3)によれば、「加入者での潜在電界による同一チャンネルビート妨害を軽減するために高周波位相を同期させる機能を有した変調器を用い」る。
そして、記載(k3-3)のように、「従来の同期型テレビ再送信装置」では、「位相同期をとるために、同期制御回路(位相比較器、リミッタ)及び局部発振回路が専用チャンネル用となり、自由に任意のチャンネルに設定できない。」、「中間周波信号を取出すための周波数変換回路、変調用中間周波信号発振器(搬送波発振回路)、局部発振器及び周期制御回路が必要であり、回路点数が多く、コスト高である。」、「位相同期回路にリミッタによる搬送波信号抽出を行っており、映像信号処理がゴースト除去の場合にはゴーストによる位相ひずみの影響によって、抽出した搬送波信号(中間周波)の位相誤差による位相同期の性能が劣化する。」等の課題を克服するために、
「すべてのチャンネルに対応した同一チャンネルの再変調のチャンネルが設定でき、専用回路を不要とし、すべてのチャンネルが全く同一の回路で構成でき、映像信号処理用のチューナ内で同期検波のために使用されている位相ひずみの少ない搬送波を用いた同期型テレビ再送信装置を提供する」ものであって、
記載(c4)、記載(k3-5)および記載(c5)のような、「従来からゴースト除去チューナ10の」「周波数変換回路A12と局部発振回路13で構成され」る「選局回路11」の「局部発振回路13からの出力信号を用い」、「周波数変換回路B22用の局部発振信号」とし、
「同期検波回路15及び搬送波再生回路16で構成されている」「一般の検波回路14」の「搬送波再生回路16からの出力信号を用い」、「AM変調器21用の搬送波信号」とすることにより、
「周波数変換回路B22からの出力信号の周波数は、受信したテレビ放送波信号のなかで、選局回路11で選局した信号に位相同期し、かつゴースト除去回路17でゴーストを除去したテレビ放送波信号を得ることができる」ようにする技術が記載されている。

つまり、「CATVなどの共同受信施設のヘッドエンド装置等に利用される受信したテレビ放送波信号の搬送波周波数と全く同一の周波数で再送信すると共に、その再送信に際して各種映像信号処理が行われる同期型テレビ再送信装置に関する技術であって、
従来の同期型テレビ再送信装置では、「位相同期をとるために、同期制御回路(位相比較器、リミッタ)及び局部発振回路が専用チャンネル用となり、自由に任意のチャンネルに設定できない。」、「中間周波信号を取出すための周波数変換回路、変調用中間周波信号発振器(搬送波発振回路)、局部発振器及び周期制御回路が必要であり、回路点数が多く、コスト高である。」、「位相同期回路にリミッタによる搬送波信号抽出を行っており、映像信号処理がゴースト除去の場合にはゴーストによる位相ひずみの影響によって、抽出した搬送波信号(中間周波)の位相誤差による位相同期の性能が劣化する。」等の課題を克服するために、
すべてのチャンネルに対応した同一チャンネルの再変調のチャンネルが設定でき、専用回路を不要とし、すべてのチャンネルが全く同一の回路で構成でき、映像信号処理用のチューナ内で同期検波のために使用されている位相ひずみの少ない搬送波を用いた同期型テレビ再送信装置を提供するものであって、
加入者での潜在電界による同一チャンネルビート妨害を軽減するために高周波位相を同期させる機能を有した変調器を用いる構成として、
周波数変換回路A12と局部発振回路13で構成される選局回路11の局部発振回路13からの出力信号を用い、周波数変換回路B22用の局部発振信号とするとともに、
同期検波回路15及び搬送波再生回路16で構成されている一般の検波回路14の搬送波再生回路16からの出力信号を用い、AM変調器21用の搬送波信号とすることにより、
周波数変換回路B22からの出力信号の周波数は、受信したテレビ放送波信号のなかで、選局回路11で選局した信号に位相同期し、かつゴースト除去回路17でゴーストを除去したテレビ放送波信号を得ることができるようにする」技術が認められる。

(エ)甲第4号証に記載された技術

記載(k4-2)によると、「CATV加入者の居住する地域の地元TV局が、再送信するTV信号の送信チャンネルと同じチャンネルによりTV電波を送信している場合には、」加入者のテレビ画面上に視覚的な妨害が生じることになり、
その妨害について、記載(d2)によれば、「両TV信号の搬送波周波数のずれに応じて、妨害画像が上下左右に移動するので非常に見苦しい」から、「このような視覚的な妨害を軽減するために、CATV局側では、再送信TV信号の搬送波周波数が地元TV局の送信搬送波周波数と一致するように、公知のPLLを設けて位相同期させて妨害画像が上下左右に移動するのを抑えて」おり、
記載(k4-3)によれば、「同じチャンネルの2つのTV信号の画像が同一であるならば視覚的妨害は軽減できる」。

つまり、甲第4号証記載技術として、
CATV加入者の居住する地域の地元TV局が、再送信するTV信号の送信チャンネルと同じチャンネルによりTV電波を送信している場合には、
両TV信号の搬送波周波数のずれに応じて、妨害画像が上下左右に移動するので非常に見苦しく、
同じチャンネルの2つのTV信号の画像が同一であるならば、
このような視覚的な妨害を軽減するために、CATV局側では、再送信TV信号の搬送波周波数が地元TV局の送信搬送波周波数と一致するように、公知のPLLを設けて位相同期させて妨害画像が上下左右に移動するのを抑えており、視覚的妨害は軽減できる
という技術が認められる。

<請求人の主張の検討>
請求人は、審判請求書(22?24頁。前記第3 2(1)ア(エ)参照)において、「記載(d3)によれば、甲第4号証の「混合器4」は発明特定事項C「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」に相当する。」と主張しているが、
「混合器4」は、甲第4号証の実施例に記載されたものであり、
その目的は、記載(k4-3)によれば、「CATV局が再送信するTV信号の送信チャンネルと地元TV局の送信チャンネルとが同じ場合で」、「同じチャンネルの2つのTV信号の画像」が「異なる画像のときは画像が互いに重なった状態となり、視覚的妨害を十分に軽減できないという問題点」を克服するための「視覚的妨害を軽減できるCATVヘッドエンド装置を提供すること」であり、そのための構成も、本件発明のような「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」ものではない。
また、「混合器4」は、「中間周波信号S5」を出力するが、記載(k4-4)、記載(d3)および記載(k4-5)によれば、「中間周波信号S5」は、「中間周波信号S3」と同様に、「混合器」により「混合」を行うものであり、周波数の違いはあるものの同じ「混合」処理を行うものと認められ、「中間周波信号S3」は「混合器3」により、「再送信TV信号S9」になるのであるから、該「混合」は、「映像キャリア」を抽出、つまり、「映像キャリア」以外は通さないような処理をするものではない。

イ 対比(本件発明1と甲1発明との対比)

(ア)構成要件A「デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、」について

甲1発明は「地上波デジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号として再送信することができる」ものであり、
「再送信装置」ということができ、
「地上波デジタル放送」を「再送信」する場合は、「BSアンテナ8からのBS受信信号について」の処理が、「地上波デジタル放送を受信するアンテナ(UHFアンテナ4)からの地上デジタル受信信号について」の処理となり、「BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出する」における「BSデジタル放送」は「地上波デジタル放送」となり、
「所定伝送チャンネル」は「地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)」であるから、
「地上波デジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎に地上波デジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出する」というものである。
そして、該処理内容は、最終的に「再送信」するものであり、
また、「選局・復調して」、「再度変調すること」は、「変換」といえるから、
該処理内容は、「地上波デジタル放送」を「地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号」に「変換」して「再送信」することといえる。
さらに、「地上波デジタル放送」は「デジタル放送」といえ、
「地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号」に「変換」することは、「アナログ放送の周波数帯に変換」することといえるから、
該処理内容は、「デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する」といえる。
よって、甲1発明は「デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置」といえる点で本件発明1と一致する。

(イ)構成要件B「デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」について

甲1発明は、上述(ア)のとおり「地上波デジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎に地上波デジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生」するものであり、
その「復変調部20」には、「受信信号入力端子20aに入力されたBS受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調するBSデジタルチューナ22と、BSデジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24とが設けられ」ており、
「地上波デジタル放送」の場合は、「受信信号入力端子20aに入力された地上波デジタル受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調する地上波デジタルチューナ22と、地上波デジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24とが設けられ」ているものである。
そして、この設けられたうちの、「受信信号入力端子20aに入力された地上波デジタル受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調する地上波デジタルチューナ22」は、
「受信信号入力端子20aに入力された地上波デジタル受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し」ており、
「入力された」地上波デジタル受信信号から「予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局」することは、「デジタル放送を受信」といえ、
また、(テレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局した)「そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調する」ことは、「映像信号及び音声信号を復調する」といえることは明らかであり、
そのような「地上波デジタルチューナ」を「デジタル放送復調部」と称してよいことも明らかである。
よって、甲1発明における「受信信号入力端子20aに入力された地上波デジタル受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調する地上波デジタルチューナ22」は、本件発明1における「デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」と一致する。

(ウ)構成要件C「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」について

本件発明1は「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を具備するのに対し、
甲1発明は具備しない点で相違する。(→相違点1:キャリア抽出部)

(エ)構成要件D「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し」について

上述(イ)でも検討したように、甲1発明における「復変調部20」は、「地上波デジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24」を設けたものであり、
「地上波デジタルチューナ22」を「デジタル放送復調部」と称してよいことは、上述(イ)のとおりであり、
該「変調器24」は、甲1発明の「その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調する」ための構成であるから、「変調器24」における変調は、再変調ということができ、また、その変調により得られた信号は、上述(ア)のように「再送信」されるものであるから、「再送信信号」と称しても差し支えなく、
「変調器24」は「アナログテレビ放送」に変換するものであるから、「アナログ変調部」と称しても差し支えない。
また、上述(ア)からもわかるように「地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号」は、「アナログ放送の周波数帯」といえるから、
「地上波デジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24」は、「デジタル放送復調部で復調された映像信号および音声信号を、再変調し、アナログ放送波の周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」ということができ、甲1発明は、該「アナログ変調部」を具備しているといえる。

また、本件発明1における「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」も「デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波の周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」ということができる。
よって、本件発明1と甲1発明は、「デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波の周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し」とする点で一致する。
もっとも、「アナログ変調部」において、「周波数帯」を、本件発明1は「アナログ放送波と同じ周波数帯」、つまり、構成要件Cにより受信される「アナログ放送波」と「同じ周波数帯」とするのに対し、
甲1発明は、そうとはしない点で相違する。(→相違点2:アナログ放送波と同じ周波数帯)

(オ)構成要件E「前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」について

甲1発明の「地上波デジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24」は、「デジタル放送復調部で復調された映像信号および音声信号を再変調し、アナログ放送波の周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」ということができることは、上述(エ)のとおりであるから、
「アナログ変調部は、デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、再変調し、再送信信号とする」ということができる。
また、本件発明1も「アナログ変調部は、デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、再変調し、再送信信号とする」から、
両者は、「アナログ変調部は、デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、再変調し、再送信信号とすることを特徴とする再送信装置」である点で一致する。
もっとも、「再変調」し、「再送信信号とする」ことを、本件発明1は、「前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して」再変調し、「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい」再送信信号とするのに対し、
甲1発明は、そうとはしない点で相違する。(→相違点3:アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい)

(カ)まとめ

以上の結果によれば、本件発明1と甲1発明は、
「デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、
デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部と、
デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波の周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し、
アナログ変調部は、デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、再変調し、再送信信号とすることを特徴とする再送信装置。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:キャリア抽出部
本件発明1は「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を具備するのに対し、
甲1発明は具備しない点

相違点2:アナログ放送波と同じ周波数帯
「アナログ変調部」において、「周波数帯」を、本件発明1は「アナログ放送波と同じ周波数帯」、つまり、構成要件Cにより受信される「アナログ放送波」と「同じ周波数帯」とするのに対し、
甲1発明は、そうとはしない点

相違点3:アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい
「再変調」し、「再送信信号とする」ことを、
本件発明1は、「前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して」再変調し、「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい」再送信信号とするのに対し、
甲1発明は、そうとはしない点

ウ 判断

本件発明1と甲1発明との上記相違点について、以下検討する。

(ア)相違点1ないし相違点3の関係について

本件発明1は、本件特許明細書の段落【0001】によれば、「地上デジタル放送の番組内容」を「アナログ放送のチャンネルと同じチャンネルにて」「アナログ放送方式で変調」して「再送信」を行うことを前提としており、
その前提の場合に生じる課題「ビート障害」(段落【0007】)を克服するために、「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、
「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」について、「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」という構成を採用したものであるから、
前提となる(デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯が)「アナログ放送波と同じ周波数帯」であることと(相違点2)、
そのために設けられた「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」(相違点1)と、
その「キャリア抽出部」から抽出された映像キャリア信号により達成される「キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して」再変調し、「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい」再送信信号とすること(相違点3)は、
密接に関連しており、それぞれを区別して容易想到性は判断できない。
よって、以下では、相違点1ないし相違点3をまとめて検討する。

(イ) 甲1発明について

甲1発明は、
「近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる」(記載(k1-1))という事項を解決しようとする課題とし、
「CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる」(記載(k1-2))ようにするため、
「こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法」(記載(k1-1))を採用したというものであり、
すなわち、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するように」したものである。

(ウ) 甲第2号証の2記載事項について

甲第2号証の2に記載の事項は、「アナログ放送終了の後、一定期間はケーブルテレビでデジ-アナ変換対応を検討すべき」であることを開示しているに過ぎず、かかる甲第2号証の2の開示が、およそ、本件発明1の再送信装置における、上記相違点1ないし3に係る構成である「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「前記キャリア抽出部で抽出したアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」ことを開示もしくは示唆するものではないことは明らかである。

また、上述(イ)のとおり、甲1発明は、
「近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる」という事項を解決しようとする課題とし、
「CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる」ようにするため、
「こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法」を採用したというものであり、
すなわち、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するように」したものであり、
デジタル放送をアナログテレビ放送信号に変換した信号を他のアナログテレビ放送信号と一緒に送出することにより、従来の一般的なテレビ受信機を用いて視聴できるのであるから、アナログ放送終了の後に新たに「一定期間はケーブルテレビでのデジ-アナ変換対応」をすることなく、デジタル放送をアナログテレビ放送信号に変換した信号を視聴できることは明らかであり、
そうすると、甲1発明においてアナログ放送終了後に新たに「一定期間はケーブルテレビでのデジ-アナ変換対応」をすることは全く想定しておらず、甲1発明に甲第2号証の2に記載の事項を適用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえず、
したがって、甲1発明に甲第2号証の2に記載の事項を適用することにより、上記相違点1ないし3に係る構成である「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「前記キャリア抽出部で抽出したアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」構成に至らせることは当業者が容易に想到し得たということはできない。

<請求人の主張の検討>
請求人は、口頭審理陳述要領書(3頁2?10行。上述第3 2(1)ア)において、『甲第1号証においては、受信デジタル放送波を再送信アナログ信号に変換する際に、再送信アナログ信号のチャンネルをVHF帯のいずれのチャンネルにするかについて、或いは再送信アナログ信号のチャンネルと受信デジタル放送波のチャンネルとの関係については明記されていない。しかし、同一の放送局からブロードキャストされる同一のコンテンツについて、その伝送形式が異なるからといって、受信デジタル放送波をアナログ変換したアナログ再送信信号と受信アナログ放送波のチャンネルを、テレビ受信機(視聴者)においてわざわざ異ならせる理由は見出されない。仮に両チャンネルを異ならせてしまうと、当然に視聴者におけるチャンネルプリセットが必要となってしまう。』と主張するが、

上述(イ)のとおり、甲1発明は、
「近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる」という事項を解決しようとする課題とし、
「CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる」ようにするため、
「こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法」を採用したというものであり、
すなわち、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するように」したものであり、
甲1発明においては、「アナログ放送」も再送信することが前提となっているのであるから、再放送されるアナログ放送のチャンネルプリセットの必要がないように、「そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換」とされているうちの「そのまま」「アナログ放送」の再送信をする構成とするのが普通であって、
「アナログ放送」を「そのまま」でなく「周波数変換」させてまで「デジタル放送」から生成した「アナログテレビ放送信号」を、その周波数帯(チャンネル)とすること、
つまり、(地上アナログ放送されているアナログ放送と地上波デジタル放送を変換した再放送の)「チャンネル」を「同一のものとする」ことが当業者が容易に想到し得たことということはできない。

(エ)甲第3号証記載技術について

<甲第3号証記載技術1について>
甲第3号証記載技術1は「受信したチャンネルを周波数変換し潜在電界が高いテレビチャンネルと同じチャンネルで再送信する場合、加入者での潜在電界による同一チャンネルビート妨害を軽減する」ことを課題とし、
受信したテレビ放送波信号を周波数変換回路C46で周波数変換して中間周波信号とし、この信号の中からリミッタ回路50によって搬送波を抽出し、
この搬送波信号を映像信号と音声信号とでAM変調器44でAM変調し、変調されたこの変調波信号を局部発振回路49からの局部発振信号を用いて周波数変換器B45で周波数変換することによって、再送信するチャンネルの高周波位相を入力信号と同期をとるというものである。
一方、上述(イ)のとおり、甲1発明は、
「近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる」という事項を解決しようとする課題とし、
「CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる」ようにするため、
「こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法」を採用したというものであり、
すなわち、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するように」したものであることから、
デジタル放送をアナログテレビ放送信号に変換した信号を「潜在電界が高いテレビチャンネルと同じチャンネルで再送信する」ことを開示もしくは示唆するものではない。
よって、甲1発明に甲第3号証記載技術1を適用することにより、本件発明1と甲1発明との相違点1ないし3に係る「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「前記キャリア抽出部で抽出したアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」構成とすることが容易に想到し得たことということはできない。

<甲第3号証記載技術2について>
甲第3号証記載技術2は、
従来の同期型テレビ再送信装置では、「位相同期をとるために、同期制御回路(位相比較器、リミッタ)及び局部発振回路が専用チャンネル用となり、自由に任意のチャンネルに設定できない。」、「中間周波信号を取出すための周波数変換回路、変調用中間周波信号発振器(搬送波発振回路)、局部発振器及び周期制御回路が必要であり、回路点数が多く、コスト高である。」、「位相同期回路にリミッタによる搬送波信号抽出を行っており、映像信号処理がゴースト除去の場合にはゴーストによる位相ひずみの影響によって、抽出した搬送波信号(中間周波)の位相誤差による位相同期の性能が劣化する。」等の課題を克服するために、
すべてのチャンネルに対応した同一チャンネルの再変調のチャンネルが設定でき、専用回路を不要とし、すべてのチャンネルが全く同一の回路で構成でき、映像信号処理用のチューナ内で同期検波のために使用されている位相ひずみの少ない搬送波を用いた同期型テレビ再送信装置を提供することを目的として、
「加入者での潜在電界による同一チャンネルビート妨害を軽減するために高周波位相を同期させる機能を有した変調器を用いる構成として、
周波数変換回路A12と局部発振回路13で構成される選局回路11の局部発振回路13からの出力信号を用い、周波数変換回路B22用の局部発振信号とするとともに、
同期検波回路15及び搬送波再生回路16で構成されている一般の検波回路14の搬送波再生回路16からの出力信号を用い、AM変調器21用の搬送波信号とすることにより、
周波数変換回路B22からの出力信号の周波数は、受信したテレビ放送波信号のなかで、選局回路11で選局した信号に位相同期し、かつゴースト除去回路17でゴーストを除去したテレビ放送波信号を得ることができるようにする」という構成をとるものである。
一方、上述(イ)のとおり、甲1発明は、
「近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる」という事項を解決しようとする課題とし、
「CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる」ようにするため、
「こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法」を採用したというものであり、
すなわち、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するように」したものであり、
デジタル放送をアナログテレビ放送信号に変換した信号について、「同一チャンネルの再変調のチャンネルが設定でき」るようにするものではないし、
また、「デジタル放送」を受信したチャンネルを「デジタル放送をアナログテレビ放送信号に変換した信号」の「再変調のチャンネル」に「設定」することは想定されておらず、甲1発明に甲第3号証記載技術2を適用することが、当業者が容易に想到し得たということはできない。
さらに、仮に甲1発明に甲第3号証記載技術2を適用したとしても、本件発明1と甲1発明との相違点1ないし3の「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「前記キャリア抽出部で抽出したアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」構成に至らない。

よって、甲第3号証記載技術2に接した当業者が、甲1発明に甲第3号証記載技術2を適用することにより、「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「前記キャリア抽出部で抽出したアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」構成とすることは、容易に想到し得たということはできない。

<請求人の主張の検討>
請求人は口頭審理陳述要領書のIII-1(6?7頁。上述第3 2(1)ア)において、甲第3号証は、「再送信信号のチャンネルと受信放送波のチャンネルを同一のものとする場合のビート妨害軽減の課題とその解決手段(周波数同期)を記載している」から『甲第3号証又は甲第4号証には、同一の放送局からブロードキャストされる同一の映像コンテンツについて、その映像コンテンツの伝送中に種々の態様の処理がなされたとしても、最終的な再送信信号のチャンネルと、他の経路からの受信放送波のチャネルとを同一のものとすることが当然の前提として開示され、その前提は、同号証と同じ技術分野(ヘッドエンドによるテレビ放送の再送信)の甲第1号証においても同じはずである。従って、「再送信信号のチャンネルと受信放送波のチャンネルを同一のものとすること」ないしは発明特定事項Eにおける「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数(・位相)が等しい再送信信号とすること」は甲第3号証又は甲第4号証にも開示され、これを同じ技術分野で同じ技術的前提に立つ甲第1号証に適用することは当業者にとって容易である。』(下線は、合議体は付与した。)と主張しているが、
甲第3号証記載技術1は「受信したチャンネルを周波数変換し潜在電界が高いテレビチャンネルと同じチャンネルで再送信する場合」を前提とするものであり、
また、甲第3号証記載技術2は、「すべてのチャンネルに対応した同一チャンネルの再変調のチャンネルが設定でき、専用回路を不要とし、すべてのチャンネルが全く同一の回路で構成でき、映像信号処理用のチューナ内で同期検波のために使用されている位相ひずみの少ない搬送波を用いた同期型テレビ再送信装置を提供すること」を目的とするものであり、送信するチャンネルは、受信したチャンネルと同一チャンネルとすることが開示されているものであり、
「同一の放送局からブロードキャストされる同一の映像コンテンツについて、その映像コンテンツの伝送中に種々の態様の処理がなされたとしても、最終的な再送信信号のチャンネルと、他の経路からの受信放送波のチャネルとを同一のものとすることが当然の前提として開示され」ているとは認められず、請求人の上記主張は採用できない。

(オ)甲第4号証記載技術について
甲第4号証記載技術は「CATV加入者の居住する地域の地元TV局が、再送信するTV信号の送信チャンネルと同じチャンネルによりTV電波を送信している場合には、両TV信号の搬送波周波数のずれに応じて、妨害画像が上下左右に移動するので非常に見苦し」いという課題を有し、
「同じチャンネルの2つのTV信号の画像が同一である」ことを前提として、
「再送信TV信号の搬送波周波数が地元TV局の送信搬送波周波数と一致するように、公知のPLLを設けて位相同期させて妨害画像が上下左右に移動するのを抑えており、視覚的妨害は軽減できる」とするものであり、
甲第4号証記載技術が、本件発明1の再送信装置における、上記相違点1ないし3に係る構成である
「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」ための「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設けること
を開示もしくは示唆するものではない。
一方、甲1発明は、
「近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる」という事項を解決しようとする課題とし、
「CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる」ようにするため、
「こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法」を採用したというものであり、
すなわち、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するよう」にされているものであり、
「CATV加入者の居住する地域の地元TV局が、再送信するTV信号の送信チャンネルと同じチャンネルによりTV電波を送信している場合」であり、かつ、「同じチャンネルの2つのTV信号の画像が同一である」ということを開示もしくは示唆するものではないから、
甲1発明において、「CATV加入者の居住する地域の地元TV局」と「「同じチャンネル」で「2つのTV信号の画像が同一である」ようにして、甲1発明に甲第4号証記載技術を適用することが当業者が容易に想到し得たということはできないし、
上述のように、甲第4号証記載技術が、相違点1ないし3の構成を開示するものとも認められない。

よって、甲第4号証に接した当業者が、甲1発明に甲第4号証記載技術を適用することにより、「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」構成とすることは、容易に想到し得たということはできない。

<請求人の主張の検討>
請求人は口頭審理陳述要領書のIII-1(6?7頁。上述第3 2(1)ア)において、甲第4号証には、「本件特許発明と同様に、同一の放送局から送信される同一の映像コンテンツについて、再送信信号のチャンネルと受信放送波のチャンネルを同一のものとすること、チャンネルを同一とする際に双方の周波数の僅かな差に起因して視覚的妨害の問題が起こること、及びその問題を解決する手段として双方の周波数を一致させることを従来技術として開示している」から、『甲第3号証又は甲第4号証には、同一の放送局からブロードキャストされる同一の映像コンテンツについて、その映像コンテンツの伝送中に種々の態様の処理がなされたとしても、最終的な再送信信号のチャンネルと、他の経路からの受信放送波のチャネルとを同一のものとすることが当然の前提として開示され、その前提は、同号証と同じ技術分野(ヘッドエンドによるテレビ放送の再送信)の甲第1号証においても同じはずである。従って、「再送信信号のチャンネルと受信放送波のチャンネルを同一のものとすること」ないしは発明特定事項Eにおける「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数(・位相)が等しい再送信信号とすること」は甲第3号証又は甲第4号証にも開示され、これを同じ技術分野で同じ技術的前提に立つ甲第1号証に適用することは当業者にとって容易である。』(下線は、合議体は付与した。)と主張しているが、
甲第4号証記載技術は、「CATV加入者の居住する地域の地元TV局が、再送信するTV信号の送信チャンネルと同じチャンネルによりTV電波を送信している場合」に、「同じチャンネルの2つのTV信号の画像が同一であるならば視覚的妨害は軽減」されるというものであり、
「放送局からブロードキャストされる同一の映像コンテンツについて、その映像コンテンツの伝送中に種々の態様の処理がなされたとしても、最終的な再送信信号のチャンネルと、他の経路からの受信放送波のチャネルとを同一のもの」となったことを前提としているが、「同一の放送局からブロードキャストされる同一の映像コンテンツについて、その映像コンテンツの伝送中に種々の態様の処理がなされたとしても、最終的な再送信信号のチャンネルと、他の経路からの受信放送波のチャネルとを同一のものとする」という、積極的に「チャンネル」を「同一のものとする」ことを前提とする技術とは認められず、
上述(ウ)のように、「チャンネル」を「同一のものとする」ことが動機付けられない甲1発明に、甲第4号証記載技術を適用することが当業者が容易に想到し得たことということはできない。

(カ)まとめ

上述のように、甲第2号証の2、甲第3号証、甲第4号証についていずれの記載事項・技術を検討しても、甲1発明において、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」ための「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設けることが当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

よって、本件発明1は、上記甲第1ないし甲第4号証に記載された発明および記載事項・技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるということはできない。

(2)本件発明2について

請求人は、本件発明2について、上記第3 2(1)イの無効理由を主張しているので、この点について検討する。

ア 甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明・事項・技術

(ア)甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明・事項・技術

甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明・事項・技術は、上述(1)アを援用する。

(イ)甲第5号証記載技術

記載(k5-1)によれば、「VHFのテレビジョン放送波がある地域で電界強度が弱く、外界からのノイズの影響や反射波の影響で放送波の画質が低下している場合には、同じ番組の放送サービスを行う必要がある」ことを前提とすることが記載されている。
記載(e1)によれば、「ミキサ15およびミキサ19に局発信号を共通に供給する局部発振器」および「ミキサ15から出力される中間周波数信号から搬送波を再生する同期キャリア再生器」を有する。
記載(e2)によれば、「変調器36に映像搬送波」を「供給」し、「発振する映像搬送波の周波数は、テレビジョン放送の映像搬送波の周波数と理想的には同一の周波数が望ましいが、現実的にはほぼ等しい周波数であればよい」「映像キャリア発振器41」を有する。
記載(e3)によれば、「再送信装置2から映像搬送波が供給されているか否かを検出」する「信号検出器39」および
「供給されていないと判断した場合」には、「同期キャリア再生器22側から映像キャリア発振器41側へ切り換えるように」される「キャリア切換器40」を有している。
上記構成は、記載(k5-2)によれば、「多方向受信用CATV伝送装置」において、「再送信装置2の受信系に障害が発生した場合は、再送信装置2にはVHFテレビジョン放送信号が入力されないため、同期キャリア再生器22は映像搬送波を再生することができないことにな」り、「再送信装置1には映像搬送波が供給されないことになるので、変調器36からコンポジット信号が出力されず、再放送番組のテレビジョン放送ができないことになる」という課題を克服するために設けた構成と認められる。
よって、甲第5号証記載技術として、
VHFのテレビジョン放送波がある地域で電界強度が弱く、外界からのノイズの影響や反射波の影響で放送波の画質が低下している場合には、同じ番組の放送サービスを行う必要があることを前提とし、
再送信装置2の受信系に障害が発生した場合は、再送信装置2にはVHFテレビジョン放送信号が入力されないため、同期キャリア再生器22は映像搬送波を再生することができないことになり、再送信装置1には映像搬送波が供給されないことになるので、変調器36からコンポジット信号が出力されず、再放送番組のテレビジョン放送ができないことになるという課題を克服するために、
多方向受信用CATV伝送装置において、
再送信装置2のミキサ15および再送信装置1のミキサ19に局発信号を共通に供給する局部発振器21、
前記ミキサ15から出力される中間周波数信号から搬送波を再生する同期キャリア再生器22、
再送信装置1の変調器36に映像搬送波を供給し、発振する映像搬送波の周波数は、テレビジョン放送の映像搬送波の周波数と理想的には同一の周波数が望ましいが、現実的にはほぼ等しい周波数であればよい映像キャリア発振器41、
再送信装置2から映像搬送波が供給されているか否かを検出する信号検出器39および
供給されていないと判断した場合には、同期キャリア再生器22側から映像キャリア発振器41側へ切り換えるようにされるキャリア切換器40を設ける技術
が記載されていると認められる。

イ 対比

(ア)構成要件Fないし構成要件I「前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする」について

本件発明2は、「前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする」のに対して、甲1発明はそのようにしない点で相違する。

(イ)構成要件J「請求項1に記載の再送信装置。」について

本件発明2が引用する「請求項1に記載の再送信装置」である本件発明1の構成の対比は、上述(1)イ(ア)ないし(オ)を援用する。

(ウ)一致点・相違点

本件発明2と甲1発明の一致点および相違点のうち、本件発明1の構成については、(1)イ(カ)を援用し、それ以外に以下の相違点がある。

相違点4:本件発明2は、「前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする」のに対して、甲1発明はそのようにしない点

ウ 判断

(ア)相違点1ないし相違点3の関係について

相違点1ないし相違点3の関係についての検討は、上述(1)ウ(ア)を援用する。

(イ)甲1発明について

甲1発明についての検討は、上述(1)ウ(イ)を援用する。

(ウ)甲第2号証記載事項、甲第3号証記載技術1,2および甲第4号証記載技術について

甲第2号証記載事項、甲第3号証記載技術1,2および甲第4号証記載技術については、上述の(1)ウ(ウ)ないし(オ)を援用する。

(エ)甲第5号証記載技術について

本件発明1と甲1発明との相違点1ないし相違点3の構成は、甲第2号証ないし甲第4号証いずれの記載事項・技術に基づいても当業者が容易に想到し得たことでないことは上述のとおりであるから、
甲第5号証記載技術が、構成要件Fないし構成要件Iを開示するものであったとしても、
甲第2号証ないし甲第4号証の記載事項・技術に接した当業者が、甲1発明に、甲第2号証ないし甲第4号証いずれの記載事項・技術を適用することによって「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設ける構成とすることが、容易に想到し得たということができない以上、
「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」に係る構成要件である
構成要件Fないし構成要件Iの「前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする」構成
とすることが、当業者が容易に想到し得たということはできない。

また、甲1発明は、上述(1)ウ(イ)のように、
「近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる」という事項を解決しようとする課題とし、
「CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる」ようにするため、
「こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法」を採用したというものであり、
すなわち、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するように」したものであり、
甲1発明が、
アナログ放送も、デジタル放送をアナログテレビ放送信号に変換した信号も一緒に送信する構成であるにもかかわらず、
再送信するアナログ放送のチャンネルが「VHFのテレビジョン放送波がある地域で電界強度が弱く、外界からのノイズの影響や反射波の影響で放送波の画質が低下している」ことを想定して、デジタル放送をアナログテレビ放送信号に変換した信号を、再送信するアナログ放送のチャンネルで送信する構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、甲1発明に甲第5号証記載技術を適用することにより、本件発明2と甲1発明との相違点1ないし相違点3に係る「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「前記キャリア抽出部で抽出したアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」構成に至らせることも当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(ウ)まとめ

以上のように、甲第2号証ないし甲第5号証についていずれの記載事項・技術を検討しても、甲1発明において、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」ための「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、
「前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする」構成とすることが当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

よって、本件発明2は、上記甲1ないし甲第5号証に記載された発明および記載事項・技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたとすることはできず、
特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるということはできない。

(3)本件発明3について

請求人は、本件発明3について、上記第3 2(1)ウの無効理由を主張しているので、この点について検討する。

ア 甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明・事項・技術

(ア)甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明・事項・技術

甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明・事項・技術は、上述(2)アを援用する。

(イ)甲第6号証記載技術

記載(f1)によれば、「パススルーの1つの方式」として、「アンテナで受信した地上デジタルテレビジョン放送信号からそれぞれのチャンネルを選択し(帯域抽出という)レベル調整をして、放送波と同じ周波数でケーブルテレビ施設に流す方式で、同一周波数パススルーと呼ぶ」方式が記載されている。

イ 対比

(ア)構成要件K「受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段を備えたことを特徴とする」について

本件発明3は、「受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段を備えたことを特徴とする」のに対し、
甲1発明はそうしない点で相違する。

(イ)構成要件L「請求項1又は2に記載の再送信装置。」について

本件発明3が引用する「請求項1又は2に記載の再送信装置。」である本件発明1または2の構成の対比は、上述(2)イ(ア)および(イ)を援用する。

(ウ)一致点・相違点

本件発明3と甲1発明の一致点および相違点のうち、本件発明2の構成については、上述(2)イ(ウ)を援用し、それ以外に以下の相違点がある。

相違点5:本件発明3は「受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段を備えたことを特徴とする」のに対し、甲1発明はそうしない点

ウ 判断

(ア)相違点1ないし相違点3の関係について

相違点1ないし相違点3の関係についての検討は、上述(2)ウ(ア)を援用する。

(イ)甲1発明について

甲1発明についての検討は、上述(2)ウ(イ)を援用する。

(ウ)甲第2号証記載事項、甲第3号証記載技術1,2、甲第4号証記載技術および甲第5号証記載技術について

甲第2号証記載事項、甲第3号証記載技術1,2、甲第4号証記載技術および甲第5号証記載技術については、上述の(2)ウ(ウ)および(エ)を援用する。

(エ)甲第6号証記載技術について

甲1発明および甲第6号証記載技術とも、デジタル放送のサービスを端末側に提供するためのものであり、上述のような甲第6号証記載の「同一周波数パススルー」方式により、デジタル放送専用の受信機にも該サービスを提供できるようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、甲1発明に甲第6号証記載技術を適用して相違点5の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(オ)まとめ

上述(エ)のように相違点5の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことと認められるものの、
上述(ウ)のように、甲第2ないし第5号証についていずれの記載事項・技術を検討しても、甲1発明において、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」ための「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設けることが当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

よって本件発明3は、上記甲1ないし甲第6号証に記載された発明および記載事項・技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたとすることはできず、
特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるということはできない。

(4)本件発明4について

請求人は、本件発明4について、上記第3 2(1)エの無効理由を主張しているので、この点について検討する。

ア 甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明・事項・技術

(ア)甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明・事項・技術

甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明・事項・技術は、上述(3)アを援用する。

(イ)甲第1号証にさらに記載された事項

甲第1号証の記載(a5)によれば、甲第1号証の「コントローラ30」は発明特定事項J「復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段」に相当する。
記載(a6)によれば、甲第1号証の「変調器24」は発明特定事項K「前記デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段」に相当する。

記載(k1-9)によれば、「変調器24」は、「復調」した「音声信号」を「音声入力端子Tar、Tal」を介して取り込み、「アナログ音声信号を変調する」際に、「アナログ音声信号の音声モードを表す制御信号」から「アナログ音声信号の音声モードを識別して、アナログ音声信号の変調方式を切り換える」ものである。
また、記載(a5)、(a6)によれば、「BSデジタルチューナ22から光信号入力端子Topを介して光音声信号(換言すればデジタル音声信号)を取り込み、光音声信号に含まれる各種データを復号化するデコーダ(デジタルオーディオインターフェイス)30aと、このデコーダ30aにて復号されたデータの内、音声モードを表すチャネルステータス情報(具体的には、チャネルステータスビット、又はユーザビット)を選択するデータ選択部30bと、データ選択部30bで選択されたチャネルステータス情報に基づきBSデジタルチューナ22が選局しているBSデジタル放送の音声モードを識別し、その識別した音声モードに対応した制御信号「MO」、「BI」を制御信号出力端子Tc0、Tc1を介して変調器24に出力するマイクロコンピュータ30cと、から構成されている」「コントローラ30」を設け、
「マイコン30c」は、
「データ選択部30bで選択されたチャネルステータス情報から、BSデジタルチューナ22が選局しているBSデジタル放送の音声モードを判定し」、
「その判定した音声モードがモノラルであれば」、「音声モードがモノラルであることを表す制御信号を変調器24に出力し」、
「判定した音声モードがモノラルでなく(S120:NO)、ステレオであれば」、「音声モードがステレオであることを表す制御信号を変調器24に出力し」、
「判定した音声モードがモノラルでもステレオでもなく(S120:NO,S140:NO)、多音声であれば、」「音声モードが多音声であることを表す制御信号を変調器24に出力する」
「といった手順で、音声モードの切換処理を実行する」技術が記載されている。
つまり、甲第1号証には、
「BSデジタルチューナ22」が、「音声モードを表すチャネルステータス情報」を含むデータを出力する手段を有し、
「復調」した「音声信号」を「音声入力端子Tar、Tal」を介して取り込み、「アナログ音声信号を変調する」際に、該データに含まれる「音声モードを表すチャネルステータス情報」に基づき、「アナログ音声信号の音声モードを識別して」、「モノラル」、「ステレオ」、「多音声」といった「音声モードの切換処理を実行する」「コントローラ30」を有することが記載されている。

(ウ)甲1発明2

よって、甲1発明にさらに上述の構成を有する以下の甲1発明2を認めることができる。

VHFテレビ放送(アナログ)を行う地上局からの放送電波を受信するVHFアンテナ2、UHFテレビ放送(アナログ放送)を行う地上局からの放送電波を受信するUHFアンテナ4、CS放送用の通信衛星(CS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のCS受信信号に周波数変換して出力するCSアンテナ6、及び、BSデジタル放送を行う放送衛星(BS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のBS受信信号に周波数変換して出力するBSアンテナ8を備え、VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされており、各復変調部20には、受信信号入力端子20aに入力されたBS受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調するBSデジタルチューナ22と、BSデジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24とが設けられており、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴でき、
所定伝送チャンネルとは、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)であり、
BSデジタルチューナ22が、音声モードを表すチャネルステータス情報を含むデータを出力する手段を有し、
復調した音声信号を音声入力端子Tar、Talを介して取り込み、アナログ音声信号を変調する際に、該データに含まれる音声モードを表すチャネルステータス情報に基づき、アナログ音声信号の音声モードを識別して、モノラル、ステレオ、多音声といった音声モードの切換処理を実行するコントローラ30を有し、
地上波デジタル放送を再送信するCATVシステムに適用することもできるものであり、デジタルチューナとして、地上波デジタル放送を受信する地上波デジタルチューナを設けるようにすれば、地上波デジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号として再送信することができる
ヘッドエンド装置。

イ 対比

(ア)構成要件M「前記デジタル放送復調部は、復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段を備え、」について

甲1発明2において「地上波デジタル放送」を「再送信」する場合を検討するに、
「地上波デジタルチューナ」が「復調」された「音声信号」を出力することは明らかであり、また「音声モードを表すチャネルステータス情報を含むデータを出力する手段を有し」ているから、
「復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段を備え」ているといえ、
「地上波デジタルチューナ」が「デジタル放送復調部」といえることも明らかであるから、
甲1発明2と本件特許4は、「デジタル放送復調部は、復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段を備え」る点で一致する。

(イ)構成要件N「前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段を備えたことを特徴とする」について」

甲1発明2は、
「復調した音声信号を音声入力端子Tar、Talを介して取り込み、アナログ音声信号を変調する際に、該データに含まれる音声モードを表すチャネルステータス情報に基づき、アナログ音声信号の音声モードを識別して、モノラル、ステレオ、多音声といった音声モードの切換処理を実行するコントローラ30を有し」を有しており、
該「コントローラ30」は、「モノラル、ステレオ、多音声といった音声モード」の「切換処理を実行する」ものであるから「音声方式切替手段」と称しても差し支えなく、
「音声モードを表すチャネルステータス情報」は「デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号」と称しても差し支えなく、
「復調した音声信号を音声入力端子Tar、Talを介して取り込み」「アナログ音声信号の音声モードを識別して、モノラル、ステレオ、多音声といった音声モードの切換処理を実行する」から、「音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う」といえる。
また、「コントローラ30」は、「変調する際に」実行するコントローラであるから、「変調器24」と併せて「アナログ変調部」と称しても差し支えない。
よって、甲1発明2と本件発明4は、「アナログ変調部は、デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段を備えたことを特徴とする」点で一致する。


(ウ)構成O「請求項1、2又は3に記載の再送信装置。」について

本件発明4が引用する「請求項1、2又は3に記載の再送信装置。」である本件発明1、2または3の構成の対比は、上述(3)イ(ア)および(イ)を援用する。

(エ)一致点・相違点

本件発明4と甲1発明2の一致点および相違点のうち、本件発明1、2または3の構成については、上述(3)イ(ウ)を援用し、それ以外の構成要件Mおよび構成要件Nは、上述(ア)および(イ)のように甲1発明2と本件発明4は一致する。

ウ 判断

(ア)相違点1ないし相違点3の関係について

相違点1ないし相違点3の関係についての検討は、上述(3)ウ(ア)を援用する。

(イ)甲1発明2について

甲1発明2についての検討は、上述(3)ウ(イ)を援用する。

(ウ)甲第2号証記載事項、甲第3号証記載技術1,2、甲第4号証記載技術、甲第5号証記載技術、甲第6号証記載技術について

甲第2号証記載事項、甲第3号証記載技術1,2、甲第4号証記載技術、甲第5号証記載技術および甲第6号証記載技術についての検討は、上述の(3)ウ(ウ)および(エ)を援用する。

(エ)まとめ
以上のように、甲第2号証ないし甲第6号証についていずれの記載事項・技術を検討しても、甲1発明2において、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」ための「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設けることが当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

よって、本件発明4は、上記甲1ないし甲第6号証に記載された発明および記載事項・技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたとすることはできず、
特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるということはできない。

(5)本件発明5について

請求人は、本件発明5について、上記第3 2(1)オの無効理由を主張しているので、この点について検討する。

ア 甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明・事項・技術

(ア)甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明・事項・技術
甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明・事項・技術は、上述(4)アを援用する。

(イ)甲第7号証記載技術

記載(g1)によれば、「アナログ放送受信チューナ部2」、「アナログ映像・音声信号処理部3」、「デジタル放送受信チューナ部4」および「デジタル映像・音声信号処理部5」を有している。
記載(g2)によれば、「実時間に基づいて動作し、予め決められた時期に時間設定されている」「時間管理部10」を設けている。
記載(g3)によれば、「テレビの地上波アナログ放送は、2011年7月24日に放送終了することが予定されている」ので、「時間管理部10の時間設定を、アナログ放送が終了する2011年7月24日に設定したとすれば、その設定時間が到来したことを制御部9が検知すると、制御部9は、それ以降、テレビ受信機に電源が投入された際に、アナログ放送受信チューナ部2とアナログ映像・音声処理部3からなるアナログ放送受信系統への電源供給を絶つように制御」し、「制御部9は、アナログ放送受信系統への電源供給を絶っても、デジタル放送受信系統やアナログ・デジタル共通の受信系統に対しては、以前と同じように電源供給を続行するように制御する」技術が記載されている。

つまり、甲第7号証記載技術として、
アナログ放送受信チューナ部2、アナログ映像・音声信号処理部3、デジタル放送受信チューナ部4およびデジタル映像・音声信号処理部5を有している装置において、
実時間に基づいて動作し、予め決められた時期に時間設定されている時間管理部10を設け、
テレビの地上波アナログ放送は、2011年7月24日に放送終了することが予定されているので、時間管理部10の時間設定を、アナログ放送が終了する2011年7月24日に設定したとすれば、その設定時間が到来したことを制御部9が検知すると、制御部9は、それ以降、テレビ受信機に電源が投入された際に、アナログ放送受信チューナ部2とアナログ映像・音声処理部3からなるアナログ放送受信系統への電源供給を絶つように制御し、制御部9は、アナログ放送受信系統への電源供給を絶っても、デジタル放送受信系統やアナログ・デジタル共通の受信系統に対しては、以前と同じように電源供給を続行するように制御する技術が認められる。

イ 対比

(ア)構成要件Pないし構成要件T「受信したデジタル放送波を増幅して前記デジタル放送復調部に出力する第1の増幅器と、受信したアナログ放送波を増幅して前記キャリア抽出部に出力する第2の増幅器と、標準電波を受信する標準電波受信部と、前記標準電波受信部により受信された標準電波に基づいて計時動作し、タイマ時刻がアナログ放送停波日に設定されたタイマ回路と、前記第1の増幅器及び第2の増幅器に動作電源を供給し、前記アナログ放送停波日に前記タイマ回路から出力される信号により前記第2の増幅器の動作電源を遮断する電源制御回路とを具備することを特徴とする」について

本件発明5は「受信したデジタル放送波を増幅して前記デジタル放送復調部に出力する第1の増幅器と、受信したアナログ放送波を増幅して前記キャリア抽出部に出力する第2の増幅器と、標準電波を受信する標準電波受信部と、前記標準電波受信部により受信された標準電波に基づいて計時動作し、タイマ時刻がアナログ放送停波日に設定されたタイマ回路と、前記第1の増幅器及び第2の増幅器に動作電源を供給し、前記アナログ放送停波日に前記タイマ回路から出力される信号により前記第2の増幅器の動作電源を遮断する電源制御回路とを具備することを特徴とする」のに対し、
甲1発明2は、そのようにしない点で相違する。

(イ)構成U「請求項1、2、3又は4に記載の再送信装置。」について

本件発明5が引用する「請求項1、2、3又は4に記載の再送信装置。」である本件発明1、2、3または4の構成の対比は、上述(4)イ(ア)ないし(ウ)を援用する。

(ウ)一致点・相違点

本件発明5と甲1発明2の一致点および相違点のうち、本件発明1、2、3または4の構成については、上述(4)イ(エ)を援用し、それ以外に以下の相違点がある。

相違点6:本件発明5は「受信したデジタル放送波を増幅して前記デジタル放送復調部に出力する第1の増幅器と、受信したアナログ放送波を増幅して前記キャリア抽出部に出力する第2の増幅器と、標準電波を受信する標準電波受信部と、前記標準電波受信部により受信された標準電波に基づいて計時動作し、タイマ時刻がアナログ放送停波日に設定されたタイマ回路と、前記第1の増幅器及び第2の増幅器に動作電源を供給し、前記アナログ放送停波日に前記タイマ回路から出力される信号により前記第2の増幅器の動作電源を遮断する電源制御回路とを具備することを特徴とする」のに対し、
甲1発明2は、そのようにしない点

ウ 判断

(ア)相違点1ないし相違点3の関係について

相違点1ないし相違点3の関係についての検討は、上述(4)ウ(ア)を援用する。

(イ)甲1発明2について

甲1発明2についての検討は、上述(4)ウ(イ)を援用する。

(ウ)甲第2号証記載事項、甲第3号証記載技術1,2、甲第4号証記載技術、甲第5号証記載技術、甲第6号証記載技術について

甲第2号証記載事項、甲第3号証記載技術1,2、甲第4号証記載技術、甲第5号証記載技術および甲第6号証記載技術についての検討は、上述の(4)ウ(ウ)を援用する。

(エ)甲第7号証記載技術について

甲1発明2および甲第7号証記載技術とも、デジタル放送およびアナログ放送が混在する環境を前提としており、上述のような甲第7号証記載技術を適用することは当業者が容易に想到し得たことと認められる。
しかしながら、上述(ア)で検討したように「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設けることは当業者が容易に想到し得たことではなく、
甲1発明2に甲第7号証記載技術を適用しても、
本件発明特定事項Q「受信したアナログ放送波を増幅して前記キャリア抽出部に出力する第2の増幅器」を設けることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、甲1発明2に甲第7号証記載技術を適用しても相違点6の構成とすることが当業者が容易になし得たことということはできない。

(オ)まとめ

以上のように、甲第2号証ないし甲第7号証についていずれの記載事項・技術を検討しても、甲1発明2において、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」ための「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設けることが当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

よって、本件発明5は、上記甲1ないし甲第7号証に記載された発明および記載事項・技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたとすることはできず、
特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるということはできない。

6 無効理由3-2(特許法第29条第2項)について

(1)甲第8号証に記載された発明

以下、甲第8号証の上記第5 8に挙げた記載に基づき、甲第8号証に記載された発明(以下「甲8発明」という。)を認定する。

ア 「ヘッドエンド」

記載(k8-4)によれば、「ヘッドエンド」は「受信アンテナ10で受信した地上波(VHF放送波、UHF放送波、FM放送波等)を必要によりチャンネルを変更して幹線に送出する再送信系のシステム構成」であり、
「入力分波器11を介して運用系と予備系とに出力されるように」なっており、
「運用系」は、記載(k8-4)によれば、「チャンネル毎のTVシグナルプロセッサ1」で構成され、
「予備系」は、記載(k8-4)によれば、「TVチューナ3とユニバーサル変調回路4とからなり」、これらに加えて、「異常判別ユニット5とCPU回路6とからなる引用系と予備系に自動切り替えするための予備切替手段」を有している。
つまり、該「ヘッドエンド」は、
「再送信系のシステム構成」の「ヘッドエンド」であって、
「入力分波器11」、
「TVシグナルプロセッサ1」、
「TVチューナ3」、「ユニバーサル変調回路4」、
「異常判別ユニット5」および「CPU6」
を有する「ヘッドエンド」
といえ、これを、本件発明1と対比する、甲8発明とし、
該「ヘッドエンド」の構成の詳細は以下のとおり認める。

イ 「TVチューナ3」

記載(k8-4)によると、「TVチューナ回路3」は、
「前記入力分波器11を通じて受信アンテナ10のON AIR信号(全チャンネルの信号を含む)が入力されるようにしてあり、CPU回路6の制御信号で、運用系のTVシグナルプロセッサ1で受信可能な全てのチャンネルから任意の所望の1チャンネルを受信して、これをビデオ信号として出力することができる」ものである。

ウ 「ユニバーサル変調回路4」

記載(k8-4)によると、「ユニバーサル変調回路4」は、
「TVチューナ回路3のビデオ信号が入力されるようにしてあり、このビデオ信号をCPU回路6の制御信号で任意の所望の1チャンネルの送信信号に変換して出力することができるようにしてある」ものである。

エ 「入力分波器11」、「TVシグナルプロセッサ1」、「異常判別ユニット5」および「CPU6」

記載(k8-4)によれば、「受信アンテナ10で受信されたON AIR信号」は、
「入力分波器11を介して運用系と予備系とに出力されるようになっており、運用系ではチャンネル毎にある複数のTVシグナルプロセッサ1に放送波毎が分波されて出力され」、
記載(k8-4)によれば、「前記運用系はチャンネル毎のTVシグナルプロセッサ1で構成されており、各TVシグナルプロセッサ1には夫々入力チャンネルと出力チャンネルとがセットされている。そして夫々、入力チャンネルでセットされたRF信号(ソース信号)を受信し、受信したRF信号を出力チャンネルでセットされたRF信号(送信信号)に変換して出力するようにしてある」ものであり、
記載(k8-4)によれば、「異常判別ユニット5」は、
「運用系のTVシグナルプロセッサ1の送信信号(RF信号)の一部を放送に支障がない程度に分岐して取り出し、その分岐信号をモニタできるようにしてあり、この分岐したRF信号のレベルをチェックしてRF信号が停波しているか否かを判別できるようにしてある。そしてRF信号に信号停波があると判断された場合、例えばON信号を出力するようにしてある。」というものであり、
記載(h2)によれば、「CPU回路6」は、
「入力チャンネル判別ポートと出力チャンネル判別ポートを夫々複数づつ備えており、入力チャンネルポート及び出力チャンネルポートには夫々左から順に異なるチャンネル番号が設定されている。これらポートは、異常判別ユニット5がRF信号の停波を検出して例えばON信号を出力したときに、それはどのTVシグナルプロセッサ1であり、且つ当該TVシグナルプロセッサ1は何チャンネルの信号を受信し、それを何チャンネルの信号として出力しているのかをCPU内部で判別できるようにするため設けられている。例えば、ある異常判別ユニット5でRF信号の停波が検出されてON信号が出力されると、そのON信号が入力チャンネルポートと出力チャンネルポートとに入力され、ON信号の入力された入力チャンネルポートのチャンネル番号と出力チャンネル番号とから、異常が生じたTVシグナルプロセッサ1の入力チャンネルと出力チャンネルとがわかるようになっている。CPU回路6はこのチャンネル情報を基に前記TVチューナ回路3とユニバーサル変調回路4に制御信号を出力し、停波したチャンネルの信号をTVチューナ回路3に代行受信させ、その出力をユニバーサル変調回路4で停波したチャンネルの送信信号に変換させて、運用系に代わり放送を継続させるようにしてある。」というものである。

オ 甲8発明

まとめると、甲8発明として以下のものが認められる。

再送信系のシステム構成のヘッドエンドであって、
入力分波器11を通じて受信アンテナ10のON AIR信号(全チャンネルの信号を含む)が入力されるようにしてあり、CPU回路6の制御信号で、運用系のTVシグナルプロセッサ1で受信可能な全てのチャンネルから任意の所望の1チャンネルを受信して、これをビデオ信号として出力することができるTVチューナ回路3、
TVチューナ回路3のビデオ信号が入力されるようにしてあり、このビデオ信号をCPU回路6の制御信号で任意の所望の1チャンネルの送信信号に変換して出力することができるようにしてあるユニバーサル変調回路4、
受信アンテナ10で受信されたON AIR信号を出力する入力分波器11、
夫々入力チャンネルと出力チャンネルとがセットされ、入力チャンネルでセットされたRF信号(ソース信号)を受信し、受信したRF信号を出力チャンネルでセットされたRF信号(送信信号)に変換して出力するようにしてあるTVシグナルプロセッサ1、
運用系のTVシグナルプロセッサ1の送信信号(RF信号)の一部を放送に支障がない程度に分岐して取り出し、その分岐信号をモニタできるようにしてあり、この分岐したRF信号のレベルをチェックしてRF信号が停波しているか否かを判別できるようにしてあり、そしてRF信号に信号停波があると判断された場合、例えばON信号を出力するようにしてある異常判別ユニット5、
入力チャンネル判別ポートと出力チャンネル判別ポートを夫々複数づつ備えており、入力チャンネルポート及び出力チャンネルポートには夫々左から順に異なるチャンネル番号が設定されている。これらポートは、異常判別ユニット5がRF信号の停波を検出して例えばON信号を出力したときに、それはどのTVシグナルプロセッサ1であり、且つ当該TVシグナルプロセッサ1は何チャンネルの信号を受信し、それを何チャンネルの信号として出力しているのかをCPU内部で判別できるようにするため設けられ、例えば、ある異常判別ユニット5でRF信号の停波が検出されてON信号が出力されると、そのON信号が入力チャンネルポートと出力チャンネルポートとに入力され、ON信号の入力された入力チャンネルポートのチャンネル番号と出力チャンネル番号とから、異常が生じたTVシグナルプロセッサ1の入力チャンネルと出力チャンネルとがわかるようになっており、このチャンネル情報を基に前記TVチューナ回路3とユニバーサル変調回路4に制御信号を出力し、停波したチャンネルの信号をTVチューナ回路3に代行受信させ、その出力をユニバーサル変調回路4で停波したチャンネルの送信信号に変換させて、運用系に代わり放送を継続させるようにしてあるCPU回路6
を有するヘッドエンド。

(2)対比、判断

ア 本件発明1と甲8発明との対比

(ア)構成要件A「デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、」について

甲8発明は、「TVチューナ回路3のビデオ信号が入力されるようにしてあり、このビデオ信号をCPU回路6の制御信号で任意の所望の1チャンネルの送信信号に変換して出力することができるようにしてある」ものであり、
また、放送は、「TVチュナ-回路3」は、受信した1チャンネルをビデオ信号として出力することから、「アナログ放送」であるといえる。
よって、「アナログ放送を、アナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置」といえ、「アナログ放送」は「放送」といえ、
そして、本件発明1の「デジタル放送」も「放送」といえるから、
両者は「放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置」である点で一致する。
もっとも、「放送」が、本件発明1は「デジタル放送」であるのに対し、甲8発明は「アナログ放送」である点で相違する。

(イ)構成要件B「デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」について

甲8発明は、「受信可能な全てのチャンネルから任意の所望の1チャンネルを受信して、これをビデオ信号として出力することができるTVチューナ回路3」を有しており、
「TVチューナ回路」から出力する「ビデオ信号」として「映像信号及び音声信号」は普通に知られたことであり、
このような信号は、「復調」により得られることも普通に知られており、
「TVチューナ回路3」を「放送復調部」と称しても差し支えなく、
「受信可能な全てのチャンネルから任意の所望の1チャンネルを受信」は「放送を受信」といえるから、
甲8発明は「放送を受信して映像信号及び音声信号を復調する放送復調部」を有しているといえる。
また、本件発明1における「デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」も「放送を受信して映像信号及び音声信号を復調する放送復調部」といえるから、
両者は「放送を受信して映像信号及び音声信号を復調する放送復調部」といえる点で一致する。
もっとも、「放送」および「放送復調部」が、本件発明1は「デジタル放送」および「デジタル放送復調部」であるのに対し、
甲8発明は、「アナログ放送」および「放送復調部」である点で相違する。(→相違点1:デジタル放送)

(ウ)構成要件C「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」について

甲8発明は「TVシグナルプロセッサ1」、「異常判別ユニット5」および「CPU6」を有している。
「TVシグナルプロセッサ1」は、「入力チャンネルでセットされたRF信号(ソース信号)を受信し」ているから、「アナログ放送波を受信し」といえる。
また、「異常判別ユニット5」は、「TVシグナルプロセッサ1の送信信号(RF信号)の一部を放送に支障がない程度に分岐して取り出し」、「RF信号のレベルをチェックしてRF信号が停波しているか否かを判別できるようにしてあり、そしてRF信号に信号停波があると判断された場合、例えばON信号を出力するようにしてあ」り、
「CPU6」は、「異常判別ユニット5でRF信号の停波が検出されてON信号が出力されると、そのON信号が入力チャンネルポートと出力チャンネルポートとに入力され、ON信号の入力された入力チャンネルポートのチャンネル番号と出力チャンネル番号とから、異常が生じたTVシグナルプロセッサ1の入力チャンネルと出力チャンネルとがわかるようになっており、このチャンネル情報を基に前記TVチューナ回路3とユニバーサル変調回路4に制御信号を出力し、停波したチャンネルの信号をTVチューナ回路3に代行受信させ、その出力をユニバーサル変調回路4で停波したチャンネルの送信信号に変換させて、運用系に代わり放送を継続させるようにしてある」から、
「異常判別ユニット5」および「CPU6」は、「送信信号(RF信号)」を「取り出し」、それに基づき、「TVチューナ回路3とユニバーサル変調回路4に制御信号を出力」するものと理解される。
つまり、「TVシグナルプロセッサ1」、「異常判別ユニット5」および「CPU6」は、
「アナログ放送波を受信し」て「制御信号を出力する」手段といえる。
一方、本件発明1における構成要件Cも「アナログ放送波を受信して信号を出力する手段」といえるものである。
よって、両者は「アナログ放送波を受信して信号を出力する手段」である点で一致する。
もっとも、「アナログ放送波を受信して信号を出力する手段」が、本件発明1は「映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」であるのに対し、
甲8発明は「制御信号を出力する手段」である点で相違する。(→相違点2:キャリア抽出)

(エ)構成要件D「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し」について

上述(イ)のとおり甲8発明における「TVチューナ回路3」は「放送を受信して映像信号及び音声信号を復調する放送復調部」といえ、
甲8発明は「TVチューナ回路3のビデオ信号が入力されるようにしてあり、このビデオ信号をCPU回路6の制御信号で任意の所望の1チャンネルの送信信号に変換して出力することができるようにしてあるユニバーサル変調回路4」を有しており、
「復調」した信号を「変調」することは「再変調」といえ、
その信号を「再送信信号」と称しても差し支えなく
この「変調」は「アナログ変調」といえるから、「ユニバーサル変調回路4」を「アナログ変調部」と称しても差し支えない。
また、「所望の1チャンネル」は、上述(ウ)で検討した「アナログ放送波」と同じ周波数帯ということができ、
該「ユニバーサル変調回路4」への入力は、「放送復調部」で「復調」された「映像信号及び音声信号」といえるから、
甲8発明は、「放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し」ているといえる。
そして、本件発明1も「放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し」ているといえるから、
両者は、「放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し」とする点で一致する。
もっとも、上述(イ)と同様に、「放送復調部」が、本件発明1は「デジタル放送復調部」とするのに対し、
甲8発明は、そうとはしない点で相違する。(→相違点1:デジタル放送)

(オ)構成要件E「前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とすることを特徴とする再送信装置」について

上述(エ)のとおり、甲8発明における「ユニバーサル変調回路4」は「放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調」するものであり、その際の「再送信信号」は、「アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号」である。
そして、「アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号」であれば、「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数が等しい」といえ、
「放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調」する際の「再送信信号」は、「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数が等しい再送信信号」といえるから、
甲8発明は、「アナログ変調部は、デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数が等しい再送信信号とすることを特徴とする再送信装置」といえる。
また、本件発明1も「アナログ変調部は、デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数が等しい再送信信号とすることを特徴とする再送信装置」といえるから、
両者は、「アナログ変調部は、前記放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数が等しい再送信信号とすることを特徴とする再送信装置」である点で一致する。
もっとも、「再変調」を、
本件発明1は、「前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して」行い、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数だけでなく「位相」が等しい再送信信号とするのに対し、
甲8発明は、そうとはしない点で相違する。(→相違点2:キャリア抽出)

(カ)まとめ

以上の結果によれば、本件発明1と甲8発明は、
「放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、
放送を受信して映像信号及び音声信号を復調する放送復調部と、
アナログ放送波を受信して信号を出力する手段と、
放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し、
アナログ変調部は、前記放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数が等しい再送信信号とすることを特徴とする再送信装置」である点て一致し、以下の点で相違する。

相違点1:デジタル放送
「放送」および「放送復調部」が、
本件発明1は「デジタル放送」および「デジタル放送復調部」であるのに対し、
甲8発明は、「アナログ放送」および「放送復調部」である点

相違点2:キャリア抽出
「アナログ放送波を受信して信号を出力する手段」が、
本件発明1は、「映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」であるのに対し、
甲8発明は「制御信号を出力する手段」であり、
「再変調」を、
本件発明1は、「前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して」行い、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数だけでなく「位相」が等しい再送信信号とするのに対し、
甲8発明は、そうとはしない点

イ 判断

[相違点1について]
甲8発明は、「TVチューナ回路3」で受信する「チャンネル」と、「TVシグナルプロセッサ1」で受信する「チャンネル」は同じであり、
甲8発明における「TVチューナ回路3」で受信する「チャンネル」を「TVシグナルプロセッサ1」が受信する信号と異なる「デジタル放送」とする記載、示唆または動機づけが、甲第8号証、甲第1号証、甲第3号証または甲第4号証に開示されていない。
よって、甲8発明において、「放送」および「放送復調部」を、
「デジタル放送」および「デジタル放送復調部」とすることが、当業者が容易に想到し得たということはできない。

[相違点2について]
甲8発明における「制御信号を出力する手段」(「TVシグナルプロセッサ1」、「異常判別ユニット5」および「CPU6」)は、「停波」等の異常が検出された場合に制御信号を出力するものであり、これに代えて、
「映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「再変調」を、「前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して」行い、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数だけでなく「位相」が等しい再送信信号とすることの記載、示唆または動機づけが、甲第8号証、甲第1号証、甲第3号証または甲第4号証に開示されていない。
よって、甲8発明における「制御信号を出力する手段」を、「映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」とし、「再変調」を、「前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して」行い、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数だけでなく「位相」が等しい再送信信号とすることが当業者が容易に想到し得たということはできない。

ウ まとめ

よって、甲8発明において、甲第1号証、甲第3号証および甲第4号証に記載の事項を適用して、上記相違点1および相違点2の構成とすることが当業者が容易になし得たということはできない。
したがって、本件発明1が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるということはできない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由および提出した証拠方法によっては、本件の請求項1ないし5に係る発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2011-10-11 
出願番号 特願2008-272385(P2008-272385)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (H04N)
P 1 113・ 537- Y (H04N)
P 1 113・ 561- Y (H04N)
P 1 113・ 536- Y (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古川 哲也  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 梅本 達雄
渡邊 聡
登録日 2010-02-26 
登録番号 特許第4464453号(P4464453)
発明の名称 再送信装置  
代理人 野河 信久  
復代理人 吉澤 弘司  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 岡部 正夫  
代理人 佐藤 立志  
代理人 河野 哲  
代理人 濱口 岳久  
代理人 岡部 讓  
代理人 坂井 慎  
代理人 三山 勝巳  
代理人 朝日 伸光  
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