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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1247792
審判番号 不服2009-19937  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-16 
確定日 2011-11-29 
事件の表示 特願2003-576363「金属-セラミック基板、好ましくは銅-セラミック基板を製造するプロセス」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月25日国際公開、WO03/78353、平成17年 7月 7日国内公表、特表2005-520334〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2003年3月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年3月13日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成16年8月23日付けで特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成16年10月7日付けで特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出され、平成19年12月5日付けで拒絶理由が通知され、平成20年6月4日付けで意見書及び手続補正書並びに物件提出書が提出され、平成20年9月16日付けで再度の拒絶理由が通知され、平成21年1月30日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年6月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年10月16日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に、同日付けで明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成21年12月11日付けで請求の理由を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成22年11月12日付けで書面による審尋がなされ、これに対して平成23年5月9日付けで回答書が提出されたものである。


第2 平成21年10月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年10月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)平成21年10月16日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成21年1月30日付けの手続補正書によって補正された)特許請求の範囲の以下の(a)に示す請求項1ないし15を、(b)に示す請求項1ないし13に補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
金属-セラミック基板を形成するプロセスであって、
該基板は、
セラミック層と、
前記セラミック層の表面側に適用され、導電性トラック、接触面などを有する構造化金属層を形成するように構造化される、少なくとも1つの金属層、および
前記構造化金属層へ塗布されるブレージングレジストのコーティング(5)
とを備え;
該プロセスは、
(a)前記セラミック層(2)の少なくとも1つの表面側に、少なくとも1つの金属箔(3’、4’)を、650℃を超える温度にて実施させる高温結合プロセスを用いて適用して金属層を形成し;
(b)前記セラミック層(2)の前記少なくとも1つの表面側の前記金属層を、マスクエッチングプロセスにより、導電性トラック、接触面などを形成するために、パターン化し;
(c)前記金属層の形成直後若しくは前記パターン化の直後に、少なくとも1つの金属層の金属表面に少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)を塗布し;
(d)前記ろう付け用レジストコーティング(5)に接する表面区域の前記パターン化された金属層から、更なるエッチングプロセスにより金属を少なくとも除去する
ステップからなることを特徴とする、金属-セラミック基板を形成するプロセス。
【請求項2】
前記パターン化された金属層からの金属の除去が0.1?20ミクロンの厚さで行なわれる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
高温結合が直接結合(DCB)プロセスである、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
高温結合が活性ろう付けプロセスである、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
金属箔が銅箔であり、それらが前記DCBプロセスまたは前記活性ろう付けプロセスによってセラミック基板(2)上に供給される、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項6】
ろう付け用レジストの少なくとも1つのコーティング(5)がパターン化の直後に塗布される、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
除去が過酸化水素、過硫酸ナトリウム、塩化銅または塩化鉄を用いたエッチングによって行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
表面金属層(10)が少なくとも1つの金属層の少なくとも1つの表面区域(8)に適用され、その表面区域で、前記金属層のいくらかの金属が前記更なるエッチングによって除去され、および前記表面区域は少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)に接する、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
表面金属層(10)によって形成された表面が少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)の表面と水平またはほぼ水平であるか、あるいは少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)の下の未処理表面と水平またはほぼ水平であるように、表面金属層(10)が適用される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
表面金属層(10)によって形成された表面が少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)の表面レベル上に、または少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)の下の未処理表面の表面レベル上に突出するように、表面金属層(10)が適用される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
表面金属層(10)によって形成された表面が少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)の、または少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)の下の未処理表面の表面レベルよりやや低くなるように、表面金属層(10)が適用される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
ろう付け用レジストコーティングにエポキシドベースレジストが使用され、ろう付け用レジストコーティング(5)が熱によって硬化する、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)が0.5?100ミクロンの厚さを持つ、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)が、光学読取式コードを形成するために、区域(5')で構成される、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記金属箔(3´、4´)は銅箔である、請求項1から14のいずれか一項に記載のプロセス。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
金属-セラミック基板を形成するプロセスであって、
該基板は、
セラミック層と、
前記セラミック層の表面側に適用され、導電性トラック、接触面などを有するパターン化金属コーティング(3、4)を形成するようにパターン化される、少なくとも1つの金属コーティング、および
前記パターン化金属コーティング(3、4)へ塗布されるろう付け用レジストのコーティング(5)
とを備え;
該プロセスは、
(a)前記セラミック層(2)の少なくとも1つの表面側に、少なくとも1つの金属箔(3’、4’)を、1025℃?1083℃の範囲内の温度にて実施させる直接結合(DCB)プロセスを用いて適用して金属コーティングを形成し;
(b)前記セラミック層(2)の前記少なくとも1つの表面側の前記金属コーティングを、マスクエッチングプロセスにより、導電性トラック、接触面などを形成するために、パターン化し;
(c)前記金属コーティングの形成直後若しくは前記パターン化の直後に、少なくとも1つの前記パターン化金属コーティング(3、4)の金属表面の一部区域(5’)に少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)を塗布して前記区域(5’)をパターン化し;
(d)前記ろう付け用レジストコーティング(5)に接する表面区域の前記パターン化された金属コーティング(3、4)から、更なるエッチングプロセスにより前記ろう付け用レジストコーティング(5)に接する表面区域の金属を少なくとも除去する
ステップからなることを特徴とする、金属-セラミック基板を形成するプロセス。
【請求項2】
金属-セラミック基板を形成するプロセスであって、
該基板は、
セラミック層と、
前記セラミック層の表面側に適用され、導電性トラック、接触面などを有するパターン化金属コーティング(3、4)を形成するようにパターン化される、少なくとも1つの金属コーティング、および
前記パターン化金属コーティング(3、4)へ塗布されるろう付け用レジストのコーティング(5)
とを備え;
該プロセスは、
(a)前記セラミック層(2)の少なくとも1つの表面側に、少なくとも1つの金属箔(3’、4’)を、800℃?1000℃の範囲内の温度にて実施させる活性ろう付けプロセスを用いて適用して金属コーティングを形成し;
(b)前記セラミック層(2)の前記少なくとも1つの表面側の前記金属コーティングを、マスクエッチングプロセスにより、導電性トラック、接触面などを形成するために、パターン化し;
(c)前記金属コーティングの形成直後若しくは前記パターン化の直後に、少なくとも1つの前記パターン化金属コーティング層(3、4)の金属表面の一部区域(5’)に少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)を塗布して前記区域(5’)をパターン化し;
(d)前記ろう付け用レジストコーティング(5)に接する表面区域の前記パターン化された金属コーティング(3、4)から、更なるエッチングプロセスにより前記ろう付け用レジストコーティング(5)に接する表面区域の金属を少なくとも除去する
ステップからなることを特徴とする、金属-セラミック基板を形成するプロセス。
【請求項3】
前記パターン化された金属コーティングからの金属の除去が0.1?20ミクロンの厚さで行なわれる、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
金属箔が銅箔である、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
ろう付け用レジストの少なくとも1つのコーティング(5)がパターン化の直後に塗布される、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
除去が過酸化水素、過硫酸ナトリウム、塩化銅または塩化鉄を用いたエッチングによって行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
表面金属コーティング(10)が少なくとも1つの金属コーティング層の少なくとも1つの表面区域(8)に適用され、その表面区域で、前記金属コーティングのいくらかの金属が前記更なるエッチングによって除去され、且つ前記表面区域は少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)に接する、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
表面金属コーティング(10)によって形成された表面が少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)の表面と同じレベルまたはほぼ同じレベルであるか、あるいは少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)の下の除去されていない金属コーティングの元の表面と同じレベルまたはほぼ同じレベルであるように、表面金属コーティング(10)が適用される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
表面金属コーティング(10)によって形成された表面が少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)の表面レベル上に、または少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)の下の除去されていない金属コーティングの元の表面の表面レベル上に突出するように、表面金属コーティング層(10)が適用される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
表面金属コーティング層(10)によって形成された表面が少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)の、または少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)の下の除去されていない金属コーティングの元の表面の表面レベルよりやや低くなるように、表面金属コーティング層(10)が適用される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
ろう付け用レジストコーティングにエポキシドベースレジストが使用され、ろう付け用レジストコーティング(5)が熱によって硬化する、請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)が0.5?100ミクロンの厚さを持つ、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)が、光学読取式コードを形成するための区域(5’)でパターン化される、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。」(なお、下線部は当審で付したものであり、補正箇所を示す。)

(2)本件補正の目的
本件補正後の特許請求の範囲の請求項2についての本件補正は、本件補正前の請求項1を引用する請求項4を独立形式とするとともに、「構造化」を「パターン化」とし、「金属層」及び「金属箔」を「金属コーティング」とし、「ブレージングレジスト」を「ろう付け用レジスト」とし、「650℃を超える温度」を「800℃?1000℃の範囲内の温度」と限定し、「高温結合プロセス」を「活性ろう付けプロセス」と限定し、「少なくとも1つの金属層の金属表面に少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)を塗布し」を「少なくとも1つの前記パターン化金属コーティング層(3、4)の金属表面の一部区域(5’)に少なくとも1つのろう付け用レジストコーティング(5)を塗布して前記区域(5’)をパターン化し」とし、「更なるエッチングプロセスにより金属を少なくとも除去する」を「更なるエッチングプロセスにより前記ろう付け用レジストコーティング(5)に接する表面区域の金属を少なくとも除去する」と限定するものである。
したがって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項2についての本件補正は、全体としてみれば、平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 本件補正の適否についての判断
本件補正後の特許請求の範囲の請求項2についての本件補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項2に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2-1 特開2001-185664号公報(以下、「引用文献1」という。)
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1には、例えば、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付した。)

(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 セラミックス基板上に金属回路板を接合し、前記金属回路板に半導体ペレットをハンダ付けしてなるセラミックス回路基板において、前記金属回路板の半導体ペレット搭載面のうちハンダが塗布されない部位に、ソルダーレジスト層を設けたことを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項2】 請求項1記載のセラミックス回路基板において、ソルダーレジスト層の厚さは、5?100μmであることを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項3】 請求項1または2記載のセラミックス回路基板において、ソルダーレジスト層は、UV硬化性樹脂、熱硬化性樹脂または耐熱性樹脂からなることを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項4】 請求項1から3までのいずれかに記載のセラミックス回路基板において、ソルダーレジスト層は、ハンダ塗布面を囲む配置で設けられていることを特徴とするセラミックス回路基板。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項4】)

(b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パワートランジスタモジュール用基板等に好適なセラミックス回路基板に係り、特にセラミックス基板上に金属回路板を接合して構成される回路基板において、その金属回路板上に半導体ペレットをハンダにより実装する場合にハンダの流動による不都合を防止したセラミックス名回路基板に関する。」(段落【0001】)

(c)「【0002】
【従来の技術】近年、パワートランジスターモジュール用基板などの回路基板として、セラミックス基板上に銅板やアルミニウム板、クラッド材等の金属板を接合させたものが用いられている。
【0003】このようなセラミックス基板の製造には種々の方法が知られており、例えばDBC法(ダイレクト・ボンディング・カッパー法)、DBA法(ダイレクト・ボンド・アルミニウム法)、活性金属法等がある。DBC法は、所定形状に打ち抜いた銅回路基板をセラミックス基板上に接触配置させて加熱し、接合界面にCu-O共晶液層を生成させ、この液層によりセラミックス基板を濡らし、次いで冷却固化させてセラミックス基板と銅回路基板とを直接接合させる方法である。
【0004】また、DBA法は、アルミニウム板をDBC法と同様に加熱し、接合界面にAl-Si共晶液層を生成させ、この液層によりセラミックス基板を濡らし、次いで冷却固化させて、セラミックス基板とアルミニウム板とを直接接合させ、あるいはアルミニウム溶湯をセラミックス基板と接触させ、凝固させて直接接合させる方法である。
【0005】さらに活性金属法は、例えば銅回路基板とセラミックス基板とをロー材であるCu,Agおよび活性な金属であるTi,Hf,Zrの寄与により接合させる方法である。
【0006】なお、セラミックス基板の材質としては、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム(AlN)等が適用される。
【0007】図2は、このようにして構成されるセラミックス回路基板の構成を例示したものである。
【0008】この図2の例では、セラミックス基板1の両面に前記の方法を用いて金属回路板2a,2bが接合されており、一方の金属回路板2aには半導体ペレット3がハンダ4により接合されている。また、他方の金属回路板2bには例えば銅等からなるヒートシンク5がハンダ6により接合されている。
【0009】このようなセラミックス回路基板は、セラミックス基板1と金属回路基板2a,2bとの接合が強固であり、かつ単純な構造となるため小型、高実装化が可能であり、また作業工程も短縮できる等の利点が得られている。」(段落【0002】ないし【0009】)

(d)「【0019】図2は、本実施形態によるセラミックス回路基板の構成を示す図である。なお、説明を容易にするため、全体構成については図2に示した従来のものと同様のものを適用する。したがって、従来の構成部分と同一部分については、図1に図2と同符号を用いて説明する。
【0020】このセラミックス回路基板は、セラミックス基板1の両面に金属回路板2a,2bを接合した構成とされている。セラミックス基板1としては、例えば窒化アルミニウム、窒化珪素、アルミナ、ジルコニア等が適用されている。金属回路板2a,2bとしては、銅、アルミニウム、クラッド材等が適用されている。これらは、上述したDBC法、DBA法、活性金属法等によって接合されている。
【0021】そして、一方の金属回路板2aには例えばSiペレット等の半導体ペレット3がハンダ4により接合されている。また、他方の金属回路板2bには例えば銅等からなるヒートシンク5がハンダ6により接合されている。
【0022】このようなセラミックス回路基板において、本実施形態では、一方の金属回路板2aの半導体ペレット搭載面のうちハンダ6が塗布されない部位に、ソルダーレジスト層7がハンダ塗布面を囲む配置で設けられている。
【0023】このソルダーレジスト層7は、例えばUV硬化性樹脂、熱硬化性樹脂または耐熱性樹脂により枠状に構成されており、耐熱性は250℃程度のものとされている。また、ソルダーレジスト層7の厚さは、5?100μmの範囲に設定され、ソルダーレジスト層7の幅は0.1mm?2mmとされている。
【0024】このような構成によると、半導体接合のためのハンダ4が金属回路板2a上に塗布された場合、そのハンダ4が金属回路板2aの表面の一定範囲内に常時保持された。したがって、図1に示すように、半導体ペレット3は定位置に安定して保持され、位置ずれが生じることがなく、また図2に示したようなハンダブリッジが生じることもなかった。
【0025】なお、ソルダーレジスト層7の形成方法は特に限定されるものではないが、例えば下記のような方法がある。金属回路板の所定の位置にレジストインク(レジスト含有溶液)を塗布できるようマスク材を配置しスクリーン印刷等の方法により印刷する。この後、例えば、レジスト材がUV硬化型インクであれば印刷直後にUV乾燥によりインクを乾燥させてソルダーレジスト層を形成する。また、熱硬化型インクであれば、同様の方法でインクを塗布した後、熱処理により乾燥させる方法などが挙げられる。」(段落【0019】ないし【0025】)

(e)「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るセラミックス基板の実施形態を示す構成図。
【図2】従来例を示す構成図。
【符号の説明】
1 セラミックス基板
2a,2b 金属回路板
3 半導体ペレット
4,6 ハンダ
5 ヒートシンク
7 ハンダレジスト層」(【図面の簡単な説明】及び【符号の説明】)

(2)上記(1)(a)ないし(e)及び図面の記載から分かること

(ア)上記(1)(a)ないし(e)及び図面の記載から、引用文献1には、セラミックス基板1と、セラミックス基板1の表面側に適用される金属回路板2a,2b及び前記金属回路板2a,2bへ塗布されるソルダーレジスト層7とを備えるセラミックス回路基板が記載されていることが分かる。

(イ)上記(1)(a)ないし(e)及び図面の記載から、引用文献1に記載されたセラミックス回路基板を形成するプロセスにおいて、セラミックス基板1の少なくとも1つの表面側に、少なくとも1つの金属回路板が、DBC法、DBA法、活性金属法等の方法により接合されることが分かる。

(ウ)上記(1)(a)ないし(e)及び図面の記載から、引用文献1に記載されたセラミックス回路基板を形成するプロセスにおいて、接合された金属回路板の表面の一部の部位に、レジストインクを塗布してソルダーレジスト層を形成することが分かる。

(3)引用発明1
上記(1)及び(2)並びに図面の記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「セラミックス回路基板を形成するプロセスであって、
該セラミックス回路基板は、
セラミックス基板1と、
前記セラミックス基板1の表面側に適用される金属回路板2a,2b、及び
前記金属回路板2a,2bへ塗布されるレジストインクからなるソルダーレジスト層7
とを備え;
該プロセスは、
前記セラミックス基板1の少なくとも1つの表面側に、少なくとも1つの金属回路板2a,2bを、活性金属法を用いて金属回路板層を形成し、
少なくとも1つの前記金属回路板層の一部の部位に少なくとも1つのレジストインクを塗布して前記部位にソルダーレジスト層を設ける、
ステップからなる、セラミックス回路基板を形成するプロセス。」

2-2 特開2001-284782号公報(以下、「引用文献2」という。)
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献2には、例えば、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付した。)

(a)「【0031】図6?10はこの発明のはんだ接合構造における接合層の製造工程を示す断面図であり、プリント配線板9側の接合層の製造工程を示している。図において、11はパターニング前のプリント配線板9表面上に形成されている薄膜銅層、12は薄膜銅層11をパターンニングするためのエッチングレジスト、13は後述するソフトエッチングによって薄膜銅層11の周囲に形成されたソルダレジスト8aの下方部分がエッチングされることによって生じるソルダレジスト8aのオーバハング(エッチングレジスト)、14は後述する湿式めっきによって形成されるNiめっき層(接合層)、15はNiめっき層14の表面に形成した金めっき層である。なお、図1と同一構成要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0032】次に概要について説明する。先ず、プリント配線板9に形成されたベタの薄膜銅層11をパターンニングするために、図6に示すように薄膜銅層11上にエッチングレジスト12を塗布する。このとき、例えばはんだボール接合部のランドや配線パターンなどを形成する領域をマスクする。
【0033】次に、銅に対する通常のエッチング処理を施して図7に示すようにはんだボール接合部のランドや配線パターンなどを形成する。
【0034】パターン形成されたプリント配線板9のエッチングレジスト12を剥離し、図8に示すようにソルダレジスト8aを塗布して、はんだと接合する箇所のみを開口して薄膜銅層11を露出させておく(マスク工程)。
【0035】次に、図9に示すように、薄膜銅層11の露出箇所に対してソフトエッチングを施し、薄膜銅層11の露出部分を軽くエッチングする。その際、エッチング液がエッチングレジストとなるソルダレジスト8aの下まで入り込むようにする。具体的には、例えば、通常の銅をエッチングするのに使用する過硫酸ソーダなどのエッチング液に浸漬させ、時間及び温度を適切に制御することで、薄膜銅層11の表面を深さ5?20μm程度エッチングする。これにより、薄膜銅層11の露出箇所、及び、この露出箇所周囲に形成されたソルダレジスト8aの下方における薄膜銅層11がエッチングされて、薄膜銅層11のアンダーカットをソルダレジスト8aがマスクするオーバハング13が形成される(アンダーカット形成工程)。なお、上記エッチングの時間及び温度については、使用する薬液、装置などにより異なるため、これらの仕様を考慮して最適な条件を求めておく。」(段落【0031】ないし【0035】)

(2)上記(1)(a)及び図面の記載から分かること
(ア)上記(1)(a)及び図面の記載から、引用文献2には、プリント配線板9表面上に形成されている薄膜銅層11上にエッチングレジスト12を塗布し、銅に対する通常のエッチング処理を施してランドや配線パターンなどを形成し、パターン形成されたプリント配線板9のエッチングレジスト12を剥離し、ソルダレジスト8aを塗布し、薄膜銅層11の露出箇所に対してソフトエッチングを施し、薄膜銅層11の表面の露出箇所を深さ5?20μm程度エッチングする技術が記載されていることが分かる。

(イ)引用文献2に記載されたものにおいて、ソルダレジスト8aを塗布する際には、露出箇所を残していることから、ソルダレジスト8aは、パターン形成されたプリント配線板9の表面の一部に塗布されていることが分かる。また、このようにパターン形成されたプリント配線板9の表面の一部にソルダレジスト8aが塗布されている状態は、パターン化されているといえる。

(3)引用文献2記載の技術
上記(1)(a)、(2)(ア)及び(イ)並びに図面の記載から、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「プリント配線板9表面上に形成されている薄膜銅層11上にエッチングレジスト12を塗布し、銅に対する通常のエッチング処理を施してランドや配線パターンなどを形成し、パターン形成されたプリント配線板9のエッチングレジスト12を剥離し、パターン形成されたプリント配線板9の金属表面の一部区域にソルダレジスト8aを塗布して一部区域をパターン化し、薄膜銅層11の表面の露出箇所に対してソフトエッチングを施し、薄膜銅層11の表面の露出箇所を深さ5?20μm程度エッチングする技術。」

2-3 本願補正発明と引用発明1との対比
本願補正発明と引用発明1とを対比するに、引用発明1における「セラミックス回路基板」及び「該基板」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、本願補正発明における「金属-セラミック基板」に相当し、以下同様に、「セラミックス基板1」は「セラミック層」に、「活性金属法」は「活性ろう付けプロセス」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1における「レジストインク」は、ハンダ4,6を塗布するためのソルダーレジスト層7を形成するために塗布されるものであるから、本願補正発明における「ろう付け用レジストのコーティング」及び「ろう付け用レジストコーティング」に相当し、その結果形成された「ソルダーレジスト層7」は、本願補正発明における塗布後の「ろう付け用レジストコーティング」に相当する。
また、引用発明1における「金属回路板2a,2b」は、「金属板」である限りにおいて、本願補正発明における「金属コーティング」及び「パターン化金属コーティング」に相当する。
また、引用発明1における「(金属表面の)一部の部位」は、「(金属表面の)一部の区域」でもあるから、本願補正発明における「(金属表面の)一部区域」に相当する。

してみると、本願補正発明と引用発明1は、
「金属-セラミック基板を形成するプロセスであって、
該基板は、
セラミック層と、
前記セラミック層の表面側に適用される、少なくとも1つの金属板、および
前記金属回路板へ塗布されるろう付け用レジストのコーティング
とを備え;
該プロセスは、
前記セラミック層の少なくとも1つの表面側に、少なくとも1つの金属板を、活性ろう付けプロセスを用いて適用して金属板層を形成し;
少なくとも1つの前記金属板の金属表面の一部区域に少なくとも1つのろう付け用レジストコーティングを塗布して前記部位をパターン化する
ステップからなる、金属-セラミック基板を形成するプロセス。」
である点で一致し、次の(1)ないし(4)の点で相違又は一応相違する。

<相違点>
(1)「セラミック層の表面側に適用される金属板」に関して、本願補正発明においては、「セラミック層の表面側に適用され、導電性トラック、接触面などを有するパターン化金属コーティングを形成するようにパターン化される、少なくとも1つの金属コーティング」であるのに対し、引用発明1においては、「セラミックス基板1の表面側に適用される金属回路板」であるが、「導電性トラック、接触面などを有するパターン化金属コーティングを形成するようにパターン化される」ものであるかどうか明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。
(2)「活性ろう付けプロセス」に関して、本願補正発明においては、「前記セラミック層の少なくとも1つの表面側に、少なくとも1つの金属箔を、800℃?1000℃の範囲内の温度にて実施させる活性ろう付けプロセス」であるのに対し、引用発明1においては、「セラミックス基板1の少なくとも1つの表面側に、少なくとも1つの金属回路板を、活性金属法を用いて金属回路板層を形成する活性金属法」であり、「活性ろう付けプロセス」を実施する温度範囲が明らかでない点(以下、「相違点2」という。)。
(3)「マスクエッチングプロセス」に関して、本願補正発明においては、「セラミック層の少なくとも1つの表面側の金属コーティングを、マスクエッチングプロセスにより、導電性トラック、接触面などを形成するために、パターン化」するのに対し、引用発明1においては、どのようにしてパターン化するのか明らかでない点(以下、「相違点3」という。)。
(4)「ろう付け用レジストコーティング」に関して、本願補正発明においては、「金属コーティングの形成直後若しくはパターン化の直後に、少なくとも1つの前記パターン化金属コーティング層の金属表面の一部区域に少なくとも1つのろう付け用レジストコーティングを塗布して前記区域をパターン化し;前記ろう付け用レジストコーティングに接する表面区域の前記パターン化された金属コーティングから、更なるエッチングプロセスにより前記ろう付け用レジストコーティングに接する表面区域の金属を少なくとも除去する」のに対し、引用発明1においては、「少なくとも1つの前記金属回路板層の一部の部位に少なくとも1つのレジストインクを塗布して前記部位にソルダーレジスト層を設ける」ものの、「金属コーティングの形成直後若しくはパターン化の直後に」パターン化するかどうか、また、「前記ろう付け用レジストコーティングに接する表面区域の前記パターン化された金属コーティングから、更なるエッチングプロセスにより前記ろう付け用レジストコーティングに接する表面区域の金属を少なくとも除去する」かどうか明らかでない点(以下、「相違点4」という。)。

2-4 相違点についての検討及び判断
(1)相違点1について
「セラミックス基板1の表面側に適用される金属回路板」が、「導電性トラック、接触面などを有するパターン化金属コーティングを形成するようにパターン化される」ことは、周知技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開平10-152384号公報の段落【0024】、特開2001-127224号公報の段落【0038】及び【0046】、特開2001-284796号公報の段落【0034】、特開平4-322491号公報の段落【0029】及び【0033】、特開平4-343287号公報の段落【0023】、特開平5-102620号公報の段落【0021】等の記載を参照。)にすぎない。
したがって、引用発明1において、周知技術1を適用することにより、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到できたことである。
(2)相違点2について
「活性ろう付けプロセス」を、「少なくとも1つの金属箔を、800℃?1000℃の範囲内の温度にて実施させる」ことは、周知技術(以下、「周知技術2」という。例えば、特開平10-152384号公報の段落【0004】及び【0005】、特開2001-127224号公報の段落【0038】、特開平4-322491号公報の段落【0032】、特開平4-343287号公報の段落【0022】等の記載を参照。)にすぎない。
したがって、引用発明1において、周知技術2を適用することにより、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到できたことである。
(3)相違点3について
「マスクエッチングプロセス」に関して、「セラミック層の少なくとも1つの表面側の金属コーティングを、マスクエッチングプロセスにより、導電性トラック、接触面などを形成するために、パターン化」することは、周知技術(以下、「周知技術3」という。例えば、特開平10-152384号公報の段落【0024】、特開2001-127224号公報の段落【0038】及び【0046】、特開2001-284796号公報の段落【0034】、特開平4-322491号公報の段落【0029】及び【0033】、特開平4-343287号公報の段落【0023】、特開平5-102620号公報の段落【0021】等の記載を参照。)にすぎない。
したがって、引用発明1において、周知技術3を適用することにより、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到できたことである。
(4)相違点4について
引用文献2記載の技術は、「プリント配線板9表面上に形成されている薄膜銅層11上にエッチングレジスト12を塗布し、銅に対する通常のエッチング処理を施してランドや配線パターンなどを形成し、パターン形成されたプリント配線板9のエッチングレジスト12を剥離し、パターン形成されたプリント配線板9の金属表面の一部区域にソルダレジスト8aを塗布して一部区域をパターン化し、薄膜銅層11の表面の露出箇所に対してソフトエッチングを施し、薄膜銅層11の表面の露出箇所を深さ5?20μm程度エッチングする技術。」というものである。
ここで、引用文献2記載の技術における「薄膜銅層11」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、本願補正発明における「金属コーティング」に相当し、以下同様に、「エッチングレジスト12を塗布し、銅に対する通常のエッチング処理を施してランドや配線パターンなどを形成し、パターン形成されたプリント配線板9のエッチングレジスト12を剥離し」は「マスクエッチングプロセス」に、「ランドや配線パターンなどを形成し」は「導電性トラック、接触面などを形成するためにパターン化し」に、「パターン形成されたプリント配線板9」は「パターン化の直後に、パターン化金属コーティング」に、「ソルダレジスト8a」は「ろう付け用レジストコーティング」に、「ソフトエッチング」は「更なるエッチングプロセス」に、「薄膜銅層11の表面の露出箇所」は「ろう付け用レジストコーティングに接する表面区域のパターン化された金属コーティング」に、「薄膜銅層11の表面の露出箇所を深さ5?20μm程度エッチングする」は、「ろう付け用レジストコーティングに接する表面区域の金属を除去する」に、それぞれ、相当する。
また、引用文献2記載の技術における「プリント配線板9」は、「プリント配線板」である限りにおいて本願補正発明における「セラミック層」に相当する。
してみると、引用文献2記載の技術は、本願補正発明の用語を用いて、
「プリント配線板表面上に形成されている金属コーティングを、マスクエッチングプロセスにより、導電性トラック、接触面などを形成するためにパターン化し、パターン化の直後に、パターン化金属コーティングの金属表面の一部区域にろう付け用レジストコーティングを塗布して一部区域をパターン化し、ろう付け用レジストコーティングに接する表面区域の金属コーティングから、更なるエッチングプロセスにより、ろう付け用レジストコーティングに接する表面区域の金属を除去する技術。」と言い換えることができる。
また、「パターン化の直後に、パターン化金属コーティング層の金属表面の一部区域にろう付け用レジストコーティングを塗布し、更なるエッチングプロセスにより前記ろう付け用レジストコーティングに接する表面区域の金属を除去する技術」は、周知技術(以下、「周知技術4」という。例えば、特開2000-323612号公報の段落【0008】ないし【0011】並びに【0015】及び【0016】、特開平8-88459号公報の段落【0020】ないし【0026】、特開2001-168147号公報の段落【0057】ないし【0059】、特開2001-329378号公報の段落【0002】等の記載を参照。)である。
そして、引用発明1と引用文献2記載の技術及び周知技術4は、ともに、回路基板の銅箔部分に回路パターンを形成する技術であるから、引用発明1において、周知技術4を勘案しつつ引用文献2記載の技術を適用することにより、相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到できたことである。
なお、請求人は、平成23年5月9日付け回答書において、本願補正発明は、「(A)パターン化金属層(3、4)の金属表面の一部区域(5’)をレジストコーティングを塗布しマスクし、(B)工程(b)の「パターン化」に加えて工程(c)において前記区域(パターン化されている金属コーティングの金属表面の一部区域)を更にパターン化する(パターン形状が元のパターン化金属コーティングのパターンを更に細かくパターン化する)こと、及び(C)「前記ろう付けレジストコーティング(5)は除去により形成された表面(8)に突出する突出部(9)に位置する」(すなわち「中間スペース6」が「突出部9」よりも低くなるように)除去することを必須の要件とする」(回答書第12ページ第13行ないし第21行)旨主張している。
しかしながら、上記引用文献2記載の技術及び周知技術4においても、パターン化金属層の金属表面の一部区域(金属表面の一部の区域)にレジストコーティングを塗布しマスクするものであるし、さらなるエッチング(ソフトエッチング)の結果、ろう付けレジストコーティングが、除去により形成された表面に突出する突出部に位置することは自明といえる。
また、請求人は、上記回答書において、「本願発明に係る技術思想とは、(A)レジストコーティングを塗布しマスクするのが、「パターン化金属層(3、4)の金属表面の一部区域(5’)」のみである」(回答書第8ページ第8行ないし第10行)旨主張する。
しかしながら、本願明細書の段落【0024】によれば、「区域5’のパターン化はたとえば、レーザを用いて、構造またはコードをろう付け用レジストコーティング5内に焼き付けることによって、または構造用にコーティング5を部分的に焼き払うことによって行う。」と記載されているように、区域5’のパターン化はたとえば、レーザを用いてコーティング5を部分的に焼き払うことによって行うものであり、請求人が主張するように”(図5及び図6に示されるような)一部区域5’のみにレジストコーティングを塗布する”ようなものは願書に最初に添付した明細書には記載されておらず、また、発明の詳細な説明によってサポートされていない事項であるから、請求人の上記主張は採用できない。
なお、レジストの塗布とエッチングにより、バーコードのようなパターンを形成することも周知技術(例、特開平4-139788号公報の特許請求の範囲及び第2ページ左下欄第12行ないし右下欄第3行並びに図面、特開平6-259586号公報の特許請求の範囲の請求項1及び段落【0008】ないし【0010】並びに図面等の記載を参照。)にすぎない。

(5)小括
以上のように、本願補正発明は、引用発明1及び引用文献2記載の技術並びに周知技術1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-5 まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成21年10月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 の[理由]の1(1)(a)の請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 引用文献
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1(特開2001-185664号公報)の記載事項及び引用発明1は、前記第2の[理由]の2 2-1(1)ないし(3)に記載したとおりである。
また、引用文献2(特開2001-284782号公報)の記載事項及び引用文献2に記載された技術は、前記第2の[理由]の2 2-2(1)ないし(3)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]の1(2)で検討したように、実質的に、本願補正発明を上位概念化したものに相当する。
そうすると、本願発明を減縮して下位概念化したものである本願補正発明が、前記第2の[理由]の2 2-1ないし2-4に記載したとおり、引用発明1及び引用文献2記載の技術並びに周知技術1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1及び引用文献2記載の技術並びに周知技術1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

また、本願発明は、全体としてみても、引用発明1及び引用文献2記載の技術並びに周知技術1ないし4から想定される以上の格別の作用効果を奏するものではない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用文献2記載の技術並びに周知技術1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-17 
結審通知日 2011-06-28 
審決日 2011-07-11 
出願番号 特願2003-576363(P2003-576363)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 一雄貞光 大樹  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 金澤 俊郎
中川 隆司
発明の名称 金属-セラミック基板、好ましくは銅-セラミック基板を製造するプロセス  
代理人 ▲吉▼川 俊雄  

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