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審決分類 審判 判定 利用 属する(申立て不成立) B67C
管理番号 1247893
判定請求番号 判定2011-600023  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2012-01-27 
種別 判定 
判定請求日 2011-05-31 
確定日 2011-12-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第3668240号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号方法の説明書で特定される「方法」は、特許第3668240号発明の技術的範囲に属する。 
理由 1.手続の経緯
本件判定に係る出願は、平成14年6月5日に国際出願したもの(特願2003-532366号)であって、その特許権の設定登録は平成17年4月15日になされ、その後の平成23年5月31日に、請求人アサヒビール株式会社から本件判定が請求されたもので、被請求人バロークス プロプライアタリー リミテッドから同年9月2日付け答弁書が提出されている。

2.請求の趣旨
判定請求書の、特に、その「6 請求の理由」の「(3)本件特許発明の説明」の記載に注目すると、本件判定の請求の趣旨は、イ号方法の説明書で特定される「方法」(以下、「イ号方法」という。)は、特許第3668240号に係る、特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的範囲に属さない、との判定を求めているものと認める。
そして、請求人は、イ号方法の説明書の他、以下の甲第1?11号証を提出している。

甲第1号証;特許第3668240号公報(本件特許公報)
甲第2号証;「参考実施品に関する資料」と主張する書面、9葉
甲第3号証;「参考実施品に関する資料」と主張する書面、4葉
甲第4号証;「参考実施品に関する資料」と主張する書面、5葉
甲第5号証;「参考実施品に関する資料」と主張する書面、4葉
甲第6号証;「参考外国出願情報に関する資料」と主張する書面、14葉
甲第7号証;「参考外国出願情報に関する資料」と主張する書面、2葉
甲第8号証;「参考外国出願情報に関する資料」と主張する書面、25葉
甲第9号証;「参考外国出願情報に関する資料」と主張する書面、61葉
甲第10号証;「参考外国出願情報に関する資料」と主張する書面、11葉
甲第11号証;本件判定に係る出願における、平成17年1月6日付け意見書

3.答弁の趣旨
答弁の趣旨は、イ号方法は、特許第3668240号に係る、特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する、との判定を求めているものと認める。
そして、被請求人は、以下の乙第1?2号証を提出している。

乙第1号証;「バロークス社の缶入りワインに対し競合品となるのは相変わらずビン入りワインだけであり、競合品となり得るような缶入りワインは存在しないこと、他を示す書面の謄本及びその部分翻訳」と主張する書面、4葉
乙第2号証;「バロークス社が本特許の主題であるプロトコルを開発するまで、缶入りワインがどのように失敗の繰り返しがされてきたかの歴史を説明する2004年の雑誌の記事及び部分翻訳」と主張する書面、6葉

4.本件に係る特許発明

1)特許第3668240号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、甲第1号証によれば、本件特許発明に係る出願の願書に添付した明細書又は図面(以下「本件明細書等」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものであると認める。なお、本件特許発明については、便宜上、その構成をAからDに分説して記載している。(以下、「構成要件A」などという。)

本件特許発明;
A アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって、該方法が:
B 35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを製造するステップと;
C アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツーピースアルミニウム缶の本体に、前記ワインを充填し、缶内の圧力が最小25psiとなるように、前記缶をアルミニウムクロージャでシーリングするステップと
D を含む、アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法。

5.イ号方法

1)イ号方法の説明書には、以下のとおりに記載されている。

「イ号方法

35ppm未満の遊離SO_(2)、
300ppm(未満)の塩化物、
800ppm(未満)のスルフェート、
を含有するワインを製造し、

アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツーピースアルミニウム缶の本体に、前記ワインを充填し、

缶内の圧力が最小25psiとなるように、前記缶をアルミニウムクロージャでシーリングし、

前記缶に充填後に前記缶ごと微生物対策としての加熱処理が実施される。」

2)そこで、この記載を検討すると、イ号方法が、アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法に係るものであることは明らかであるから、これは、次のとおりのものと認められる。
なお、イ号方法については、便宜上、その構成をaからdに分説して記載している。(以下、「構成a」などという。)

a アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって、該方法が:
b 35ppm未満の遊離SO_(2)、300ppm未満の塩化物、800ppm未満のスルフェート、を含有するワインを製造し、
c アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツーピースアルミニウム缶の本体に、前記ワインを充填し、缶内の圧力が最小25psiとなるように、前記缶をアルミニウムクロージャでシーリングし、
前記缶に充填後に前記缶ごと微生物対策としての加熱処理を実施する、
d アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法。

6.イ号方法の構成と本件特許発明の構成要件の対比・判断
イ号方法の構成a?dは、それぞれ、本件特許発明の構成要件A?Dを充足し、イ号方法は、本件特許発明の全ての構成要件を充足するから、本件特許発明の技術的範囲に属するといえる。
これに対し、請求人は、要すれば、以下の理由A及びBから、イ号方法は、本件特許発明の技術的範囲に属さないと主張するので、これらの理由について、順次、検討する。

理由A;特許権者は、本件特許発明の構成要件Cは、ツーピースアルミニウム缶の本体にワインを充填し、前記缶をアルミニウムクロージャでシーリングするものであるが、該シーリングをした後に、缶ごと微生物対策としての加熱処理を実施するものではない旨の主張を特許審査の段階でしており(甲第11号証、参照。)、イ号方法の構成cは、本件特許発明の構成要件Cを充足していない。
理由B;本件特許発明は、その特許出願(優先権主張日)前に日本国内又は外国において公然知られたイ号方法、すなわち、甲第2?5号証を根拠とした参考実施品1?4の発明であって、イ号方法は、本件特許発明の技術的範囲から除外されている。

6-1.理由Aに基づく主張について
請求人の主張は、以下に述べることから、妥当な主張とはいえない。

1)請求人の主張は、本件明細書等の記載を根拠にするものではなく、そして、本件明細書等を詳細に検討しても、本件特許発明の構成要件Cが、ツーピースアルミニウム缶の本体にワインを充填し、前記缶をアルミニウムクロージャでシーリングし、該シーリングをした後に、缶ごと微生物対策としての加熱処理を実施するものではないことを窺い知る記載は見当たらない。

2)また、先に「5.」の「2)」では、イ号方法の構成を、便宜上、構成aから構成dに分説しているが、「アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法」としては、構成a、構成b、及び、構成cの「アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツーピースアルミニウム缶の本体に、前記ワインを充填し、缶内の圧力が最小25psiとなるように、前記缶をアルミニウムクロージャでシーリング」との工程で、既に、成立しており、言い換えれば、構成cの「前記缶に充填後に前記缶ごと微生物対策としての加熱処理を実施する」との工程は、この工程を経なければ、アルミニウム缶内にワインをパッケージングしたことにならないわけではなく、該工程は、上記「アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法」を適用した後に、付加的になされる工程と認められ、イ号方法は、本件特許発明との関係で言えば、利用関係にあるといえる。

6-2.理由Bに基づく主張について
請求人の主張は、実質的には、本件特許発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当するとの、いわゆる、無効理由の存在を主張するものであるが、特許法は、上記第1項において、「特許が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる。」と規定し、特許無効審判を請求できることを規定している。
そして、本件に係る判定は、特許法第71条第1項の「特許発明の技術的範囲については、特許庁に対し、判定を求めることができる。」との規定に基づくものであるが、特許法は、上述したように、特許無効審判を請求できることを、別途、規定しているのであるから、判定において、無効理由の存在を実質的に主張することは、特許法において特許無効審判を請求できると規定されている趣旨を無意にするもので、判定の規定の趣旨を逸脱し、妥当な主張とはいえない。

7.むすび
イ号方法は、本件特許発明の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2011-11-30 
出願番号 特願2003-532366(P2003-532366)
審決分類 P 1 2・ 2- YB (B67C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 嘉章  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 ▲高▼辻 将人
瀬良 聡機
登録日 2005-04-15 
登録番号 特許第3668240号(P3668240)
発明の名称 アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法  
代理人 武居 良太郎  
代理人 中島 勝  
代理人 福本 積  
代理人 青木 篤  
代理人 古賀 哲次  
代理人 大上 寛  
代理人 渡邉 陽一  
代理人 石田 敬  

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