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審判番号(事件番号) データベース 権利
判定200460099 審決 特許

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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B60Q
管理番号 1247894
判定請求番号 判定2011-600040  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2012-01-27 
種別 判定 
判定請求日 2011-09-14 
確定日 2011-12-12 
事件の表示 上記当事者間の特許第4630249号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真並びに説明書に示す「自動車用補助灯」は、特許第4630249号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定請求は,イ号写真並びに説明書に示す製品名:「LED24 SUPERダウンライトZ 12V専用」及び「LED24 SUPERダウンライトZ 24V専用」の自動車用補助灯は,特許第4630249号の技術的範囲に属する,との判定を求めたものである。

2.本件特許発明
本件判定請求に係る特許発明は,特許第4630249号の請求項1に係る発明(以下,「本件特許発明」という。)であり,特許第4630249号公報(甲第1号証)の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。なお,本件特許発明については,その構成要件をAからHに分設して記載し,以下「構成要件A」などという。

A:水平方向に延びる細長矩形のハウジングと,
B:前記ハウジング内に収容され,下方に向けて光を照射する光源ユニットと,
C:前記ハウジングの背面部より垂直方向に突出した係止片と,
D:前記係止片に穿設されたビス挿通孔とを備え,
E:前記ビス挿通孔にマーカーランプの取り付けビスを挿入し,マーカーランプと共締して自動車の車体に取り付ける自動車用補助灯であって,
F:前記ハウジングの長さが前記マーカーランプの背面の幅と略等しくなるよう形成されると共に,
G:前記係止片が,前記ハウジングの長手方向両端部から上方に突出した一対の上部係止片と,前記ハウジングの長手方向中央部から下方に突出した下部係止片とで構成されている
H:ことを特徴とする自動車用補助灯。

3.イ号物件
判定請求書には,イ号物件の説明として,以下の事項が記載されている。

「a マーカーランプ(L)の取付用ビス(18)に挿入できる左右一対のビス挿通孔(2)(2)を穿った一方の係止部(3)(3)と前記係止部(3)(3)と反対方向に伸びるマーカーランプ(L)の取付用ビス(18)に挿入できる単一のビス挿通孔(4)を穿った他方の係止部(5)とを側部上下に備えた細長状の支持枠(1)と,
b 多数の光源を配設した長方形の光源ハウジング(8)とより成り,
c 該光源ハウジング(8)の突出部(11)に設けた挿通孔(10)を,前記支持枠(1)に設けた突部(1a)の一対の折曲部(6)(6)の枢支孔(7)(7)と一致させ,
d 枢支ビス(12)を挿通させて絡み止め[「緩み止め」の誤り?」]ナット(13)で緊締させて光源ハウジング(8)を支持枠(1)に対して可傾変位可動させることができるようにした
e ことを特徴とする自動車用補助灯(A)。」
「イ号物件は,(1)マーカーランプの取付用ビスを利用して一対のビス挿通孔を穿った一方の係止部又は反対方向に伸びる単一の他方の係止部によって細長状の支持枠を介して装着でき,(2)光源ハウジングは,挿通孔を介して支持枠の一対の折曲部の枢支孔とを一致させて枢支ビスを挿通させて緩み止めナットで緊締させて,光源ハウジングは路面上への照射のみならず,車体下面全域への照射を可能として異物の発見を可能とする(甲第7号証の段落【0010】参照)という効果を生じるものである。」

イ号写真並びに説明書(甲第3号証)のイ号写真及び図1乃至図3の記載からみて,イ号物件に関して,以下の事項が認められる。

(a)光源ハウジング(8)は水平方向に延びる長方形である。
(b)光源ハウジング(8)には多数のLED(9)が収容されている。
(c)光源ハウジング(8)の水平方向の長さは,マーカーランプ(L)の背面の幅より短く形成されている。
(d)一方の係止部(3)及び他方の係止部(5)は,支持枠(1)の側部から垂直方向に突出している。

以上のことから,判定請求書,イ号写真並びに説明書(甲第3号証)を参照すると,イ号物件の構成は,次のとおりのものということができる。なお,イ号物件については,その構成をaからiに分設して記載し,以下「構成a」などという。

a:マーカーランプ(L)の取付用ビス(18)に挿入できる左右一対のビス挿通孔(2)(2)を穿った一方の係止部(3)(3)と前記係止部(3)(3)と反対方向に伸びるマーカーランプ(L)の取付用ビス(18)に挿入できる単一のビス挿通孔(4)を穿った他方の係止部(5)とを側部上下に備えた細長状の支持枠(1)と,
b:多数のLED(9)を収容した水平方向に延びる長方形の光源ハウジング(8)とより成り,
c:前記光源ハウジング(8)の水平方向の長さが,前記マーカーランプ(L)の背面の幅より短くなるように形成され,
d:前記一方の係止部(3)(3)及び他方の係止部(5)は,前記細長状の支持枠(1)の側部から垂直方向に突出し,
e:該光源ハウジング(8)の突出部(11)に設けた挿通孔(10)を,前記支持枠(1)に設けた突部(1a)の一対の折曲部(6)(6)の枢支孔(7)(7)と一致させ,
f:枢支ビス(12)を挿通させてナット(13)で緊締させて光源ハウジング(8)を支持枠(1)に対して可傾変位可動させることができるようにし,
g:マーカーランプ(L)の取付用ビス(18)を利用して一対のビス挿通孔(2)(2)を穿った一方の係止部(3)(3)又は反対方向に伸びる単一の他方の係止部(5)によって細長状の支持枠(1)を介して装着でき,
h:光源ハウジング(8)は,路面上への照射のみならず,車体下面全域への照射を可能とした
i:ことを特徴とする自動車用補助灯。

4.対比・判断
(1)構成要件Aについて
イ号物件の「水平方向に延びる長方形の光源ハウジング」は,本件特許発明の「水平方向に延びる細長矩形のハウジング」に相当するから,イ号物件は本件特許発明の構成要件Aを充足する。

(2)構成要件Bについて
イ号物件の構成hの「光源ハウジング(8)は,路面上への照射のみならず,車体下面全域への照射を可能とした」とする構成から,光源ハウジングに収容される多数のLED(9)が下方に向けて光を照射することは明らかである。してみると,イ号物件の「LED」は,光源ハウジング内に収容され,下方に向けて光を照射するものであるから,本件特許発明の「光源ユニット」に相当する。
したがって,イ号物件は本件特許発明の構成要件Bを充足する。

(3)構成要件C及びGについて
本件特許の明細書の段落【0020】の「このハウジング12の背面部(ステー36と対向する面側の部分)には,垂直方向に突出した係止片16が設けられており」との記載及び図1乃至3の記載から,本件特許発明における係止片は,ハウジングの背面部を起点として垂直方向に突出するものであると認められる。また,本件特許の明細書及び図面には,ハウジングの背面側であってハウジングの背面部とは離れた部分を起点として垂直方向に突出する突出片は記載されておらず,このような突出片が,本件特許発明における係止片に含まれると解すべき理由があるとも認められない。そうすると,構成要件Cの「ハウジングの背面部より垂直方向に突出した係止片」は,ハウジングの背面部を起点として垂直方向に突出した係止片であると解するのが相当である。
これに対して,イ号物件の「一方の係止部(3)」及び「他方の係止部(5)」は,支持枠(1)の側部から垂直方向に突出したものであって,支持枠(1)の側部を起点とするものであり,光源ハウジング(8)の背面部を起点として垂直方向に突出したものではない。
したがって,イ号物件の「一方の係止部(3)」及び「他方の係止部(5)」と,本件特許発明の「係止片」とは相違するから,イ号物件は本件特許発明の構成要件C及びGを充足しない。

(4)構成要件Dについて
イ号物件のビス挿通孔(2)(4)は,本件特許発明の「ビス挿通孔」に相当するから,イ号物件は本件特許発明の構成要件Dを充足する。

(5)構成要件E及びHについて
イ号物件の構成h,iから,イ号物件が自動車の車体に取り付けて使用されることは明らかである。また,イ号物件は,マーカーランプ(L)の取付用ビス(18)を利用して装着できるのであるから,マーカーランプ(L)の取付用ビス(18)を締めたときにマーカーランプ(L)と同時に車体に装着されると解するのが相当である。してみれば,イ号物件は,ビス挿通孔(2)(4)にマーカーランプ(L)の取付用ビス(18)を挿入し,マーカーランプ(L)と共締して取り付けられるものであるといえる。
したがって,イ号物件は,本件特許発明の構成要件E及びHを充足する。

(6)構成要件Fについて
イ号物件において,光源ハウジング(8)の水平方向の長さは,マーカーランプ(L)の背面の幅より短く形成されているから,本件特許発明の構成要件Fと相違する。
したがって,イ号物件は,本件特許発明の構成要件Fを充足しない。

5.均等の主張について
請求人は,判定請求書において,「本件特許発明の各係止片16a,16bに相当する各係止部(3)(3)(5)が「ハウジング(8)」とは別体の「支持枠(1)」に設けられたイ号物件が本件特許発明の構成要件を充足しないとしても,イ号物件は,均等論の適用により,本件特許発明の技術的範囲に属する」旨主張する。

最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成10年2月24日判決言渡)は,特許請求の範囲に記載された構成中にイ号と異なる部分が存在する場合であっても,以下の5つの要件を満たす場合には,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,イ号は特許発明の技術的範囲に属するものとするのが相当であると判示している。
・特許請求の範囲に記載された構成中のイ号と異なる部分が発明の本質的部分ではない(発明の本質的な部分)。
・前記異なる部分をイ号のものと置き換えても特許発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏する(置換可能性)。
・前記異なる部分をイ号のものと置き換えることが,イ号の実施の時点において当業者が容易に想到することができたものである(置換容易性)。
・イ号が特許発明の出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に推考できたものではない(自由技術の除外)。
・イ号が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外される等の特段の事情がない(禁反言)。

そこで,本件特許発明の構成要件Cの「ハウジングより突出した係止片」と,イ号物件の「支持枠(1)から突出した係止部(3)(3)(5)」に関して,置換容易性の要件を満たすか否かについて検討する。

イ号物件の構成e,fから,支持枠(1)が光源ハウジング(8)を可傾変位可動に支持するためのものであることは明らかであるので,支持枠(1)は,単に各係止部(3)(3)(5)を光源ハウジング(8)とは別体に形成するために設けられたものではないと認められる。
したがって,本件特許発明における「ハウジングより突出した係止片」を備える構成を,イ号物件のように,ハウジングを可傾変位可動に支持するための支持枠と,前記支持枠より突出した突出片とを備える構成に置き換えることが,イ号物件の実施の時点において当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。
よって,上記置換容易性の要件を満たさないから,他の要件について判断するまでもなく,イ号物件が本件特許発明の構成と均等なものとして本件特許発明の技術的範囲に属するとはいえない。

6.まとめ
以上のとおり,イ号物件は,本件特許発明の構成要件C,F及びGを充足しているとはいえず,また,均等なものとして本件特許発明の技術的範囲に属するものともいえないから,イ号物件は,本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2011-12-02 
出願番号 特願2006-237796(P2006-237796)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (B60Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島田 信一  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 小関 峰夫
杉浦 貴之
登録日 2010-11-19 
登録番号 特許第4630249号(P4630249)
発明の名称 自動車用補助灯  
代理人 森 義明  
代理人 丹羽 宏之  
代理人 西尾 美良  

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