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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) B60C
管理番号 1247896
判定請求番号 判定2011-600029  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2012-01-27 
種別 判定 
判定請求日 2011-06-24 
確定日 2011-12-15 
事件の表示 上記当事者間の特許第3987978号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 「イ号物件の説明書」に示す締め付けロックは,特許第3987978号の請求項1に係る特許発明の技術的範囲に属さない。 
理由 第1.請求の趣旨と手続の経緯
本判定請求は,請求人ピアレスチェーンカンパニーが,「イ号物件の説明書」に示す締め付けロック(以下,「イ号物件」という。)は特許第3987978号の請求項1に係る特許発明の技術的範囲に属さない,との判定を求めたものである。
その後,被請求人バイセンフェルストラクションエッセ.ピ.アに対し,平成23年8月1日付けで判定請求書の副本を送達し,期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが,被請求人から何ら応答がなかった。

第2.本件特許発明
本判定請求に係る特許発明は,特許第3987978号の請求項1に係る発明であり,特許第3987978号公報の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである(以下,「本件特許発明」という。)。本件特許発明については,その構成要件をAからLに分説して記載し,以下,「構成要件A」などという。

A:ハウジング(2a,2b)を備えた滑り止めチェーンのための締め付けロック(1)であって,
B:締め付けを行うためにハウジングの開口(4)を通じて前記ハウジング(2a,2b)内に引き込まれることが可能な締め付けロープ(3)が締め付け方向とは反対にロックされる係止位置と,前記締め付けロープ(3)がロックから解除される解除位置とを有する作動レバー(20)が前記ハウジング(2a,2b)に対して取り付けられた前記締め付けロック(1)において,
C:前記締め付けロープ(3)が前記ハウジング(2a,2b)の内部において巻き取り方向に予め付勢された巻き取り装置(6,9,12)に連結され,
D:前記巻き取り装置(6)に隣接して歯列(10)が配置され,
E:その歯列(10)は,前記作動レバー(20)上に配置された係合部分(29)と噛み合うか,または,前記作動レバー(20)の係止位置で同作動レバー(20)により制御されることが可能であり,
F:前記締め付けロープ(3)が両方の移動方向に対してロックされる第3の位置に前記作動レバー(20)を動かすことも可能であり,
G:前記作動レバー(20)は,作動レバーに対して移動可能であるロックレバー(21)と協働し,
H:前記両レバー(20,21)は,それぞれ回動可能に前記ハウジング(2a,2b)に対して取り付けられ,
I:前記ロックレバー(21)は,前記係止位置において前記歯列(10)と噛み合う前記係合部分(29)を有し,
J:前記作動レバー(20)は,使用者によりハウジングの外側から3つの位置に動かすことが可能であり,
K:前記作動レバー(20)は,ハウジングの外側より見た場合にくびき式に前記ロックレバー(21)に対して重なる
L:ことを特徴とする締め付けロック。

第3.イ号物件
判定請求書に添付された「イ号物件の説明書」及び図面(図1ないし図11)によれば,イ号物件は,判定請求書に「イ号物件の説明」として記載された,次のとおりのものと認める。イ号物件については,その構成をaからnに分説して記載し,以下,「構成a」などという。

a:滑り止めチェーンを締め付ける締め付けロープを牽引するための締め付けロック(100)であって,
b:前記締め付けロープを巻き取るための円筒状のスプール(102)と,
c:前記スプール(102)内に配設され,前記締め付けロープを巻き取る向きに前記スプール(102)を回転させるための弾性力を前記スプール(102)に作用させるゼンマイバネ(103)と,
d:前記スプール(102)の軸方向一端側に配設された第1ハウジング(104A),及び前記スプール(102)の軸方向他端側に配設された第2ハウジング(104B)を有し,前記スプールを収納するハウジング(104)と,
e:前記第1ハウジング(104A)に対して変位可能に組み付けられ,使用者によって操作されることにより,前記軸方向と略平行な方向に起立した起立ポジションと前記軸方向と略直交する方向に着座した着座ポジションとの間で揺動可能な作動レバー(105)と,
f:前記スプール(102)の軸方向一端側に設けられ,前記第1ハウジング(104A)の内壁に向けて突出するとともに,前記スプール(102)の軸線周りに円周状に配置された複数の第1スプールラチェット歯(102A)と,
g:前記第1ハウジング(104A)の内壁に設けられ,前記第1スプールラチェット歯(102A)に向けて突出するとともに,前記軸線周りに円周状に配置された第1ハウジングラチェット歯(104C)と,
h:前記第2ハウジング(104B)の内壁と前記スプール(102)の軸方向他端側との間に配設され,前記スプール(102)を前記第1ハウジングラチェット歯(104C)側に押圧する波形バネ座(106)と,
i:前記スプール(102)の軸方向他端側に設けられ,前記第2ハウジング(104B)の内壁に向けて突出するとともに,前記軸線周りに円周状に配置された複数の第2スプールラチェット歯(102B)と,
j:前記第2ハウジング(104B)に配設され,前記第2スプールラチェット歯(102B)に向けて突出するとともに,前記第2スプールラチェット歯(102B)と係合する係合部材(107)と,
k:前記第1ハウジング(104A)と前記スプール(102)の軸方向一端側との間に配設され,少なくとも前記作動レバー(105)が前記起立ポジションにあるときに,前記作動レバー(105)及び前記スプール(102)の軸方向一端側に接触するプッシュスペーサ(108)とを備え,
l:前記作動レバー(105)が前記起立ポジションにあるときには,前記スプール(102)は,前記プッシュスペーサ(108)を介して前記作動レバー(105)により押圧されて前記第2ハウジング(104B)側に変位し,前記第1スプールラチェット歯(102A)と第1ハウジングラチェット歯(104C)との係合が解除されるとともに,前記波形バネ座(106)が圧縮変形して前記第2スプールラチェット歯(102B)と前記係合部材(107)とが係合するため,前記スプール(102)は,前記締め付けロープを巻き取るための向き(巻き取りの向き)に回転することが規制され,かつ,前記巻き取りの向きと逆向き(伸張の向き)に回転することが許容され,
m:さらに,前記作動レバー(105)が前記着座ポジションにあるときには,前記スプール(102)は,前記波形バネ座(106)の弾性力により前記第1ハウジング(104A)側に押圧され,前記第1スプールラチェット歯(102A)と第1ハウジングラチェット歯(104C)とが係合するとともに,前記第2スプールラチェット歯(102B)と前記係合部材(107)との係合が解除されるため,前記スプール(102)は,前記巻き取りの向きに回転することが許容され,かつ,前記伸張の向きに回転することが規制される
n:ことを特徴とする締め付けロック。

第4.対比・判断
イ号物件の「ハウジング(104)」,「作動レバー(105)」,「スプール(102)」,「第1スプールラチェット歯(102A)」は,それぞれ本件特許発明の「ハウジング」,「作動レバー」,「巻き取り装置」,「歯列」に相当する。
イ号物件の構成a及びdによれば,イ号物件が構成要件Aを充足すること,イ号物件の構成bないしdによれば,イ号物件が構成要件Cを充足すること,イ号物件の構成fによれば,イ号物件が構成要件Dを充足することは,いずれも明らかである。
そこで,イ号物件が構成要件B,EないしKを充足するか否かについて検討する。

1.構成要件Bについて
構成要件Bの「締め付けロープ(3)が締め付け方向とは反対にロックされる係止位置」は,本件特許の明細書に添付された図3に示された締め付けロックの状態に対応するもので,締め付けロープ(3)を引き出す方向にはロックされるが,締め付け方向,すなわち,巻き取る方向にはロックされない作動レバーの位置をいうものと解される。また,構成要件Bの「締め付けロープ(3)がロックから解除される解除位置」における「ロックから解除される」は,上記係止位置でのロックが解除されることと解されるから,構成要件Bの「締め付けロープ(3)がロックから解除される解除位置」は,本件特許の明細書に添付された図4に示された締め付けロックの状態に対応するものであって,締め付けロープ(3)を引き出す方向にも,巻き取る方向にもロックされない作動レバーの位置をいうものと解される。
イ号物件は,構成l及びmによれば,作動レバー(105)が「起立ポジション」と「着座ポジション」の2つの作動位置をとるもので,作動レバー(105)が「着座ポジション」にあるとき,スプール(102)は,締め付けロープを伸張する向きに回転することは規制されるが,締め付けロープを巻き取る向きに回転することは許容される。したがって,イ号物件の作動レバー(105)がとる「着座ポジション」は,構成要件Bの「締め付けロープ(3)が締め付け方向とは反対にロックされる係止位置」に相当する。
一方,作動レバー(105)が「起立ポジション」にあるとき,スプール(102)は,締め付けロープを伸張する向きに回転することは許容されるが,締め付けロープを巻き取る向きに回転することは規制される。イ号物件の作動レバー(105)がとる「起立ポジション」は,構成要件Bの「締め付けロープ(3)がロックから解除される解除位置」とは異なる。
以上のことから,イ号物件の作動レバー(105)は,構成要件Bの「締め付けロープ(3)が締め付け方向とは反対にロックされる係止位置」に相当する位置をとるものではあるが,構成要件Bの「締め付けロープ(3)がロックから解除される解除位置」に相当する位置をとるものではないから,イ号物件は,構成要件Bを充足しない。

2.構成要件Eについて
構成要件Eは,「その歯列(10)は,前記作動レバー(20)上に配置された係合部分(29)と噛み合う」か,「その歯列(10)は,」「前記作動レバー(20)の係止位置で同作動レバー(20)により制御される」のいずれかの構成を備えることと解される。
イ号物件は,作動レバー(105)を着座ポジションに動かすと,スプール(102)は,作動レバー(105)による押圧力が解放されて,波形バネ座(106)の弾性力により第1ハウジング(104A)側に押圧され,第1スプールラチェット歯(102A)が第1ハウジングラチェット歯(104C)に係合するものである。
したがって,イ号物件の第1スプールラチェット歯(102A)は,作動レバー(105)を着座ポジションにすることで,第1ハウジングラチェット歯(104C)に係合するように制御されるということができるから,イ号物件は,構成要件Eを充足する。

3.構成要件F及びJについて
イ号物件の作動レバー(105)は,締め付けロープを伸張する向きにスプール(102)が回転することは規制されるが,その反対の向きにスプール(102)が回転することは許容される「着座ポジション」と,締め付けロープを巻き取る向きにスプール(102)が回転することは規制されるが,その反対の向きにスプール(102)が回転することは許容される「起立ポジション」の2つの作動位置をとり,それ以外の作動位置はとらない。
したがって,イ号物件の作動レバー(105)は,構成要件Fでいう「締め付けロープ(3)が両方の移動方向に対してロックされる第3の位置に動かすこと」ができないものであるから,イ号物件は,構成要件Fを充足しない。
また,構成要件Jの「3つの位置」は,構成要件Bの「締め付けロープ(3)が締め付け方向とは反対にロックされる係止位置」と「締め付けロープ(3)がロックから解除される解除位置」,そして構成要件Fの「締め付けロープ(3)が両方の移動方向に対してロックされる第3の位置」をいうものと解されるところ,イ号物件の作動レバー(105)は,上記1.に記載したとおり,構成要件Bの「締め付けロープ(3)がロックから解除される解除位置」に相当する位置をとるものではなく,また,上記のとおり,構成要件Fの「締め付けロープ(3)が両方の移動方向に対してロックされる第3の位置」をとるものでもない。
したがって,イ号物件は,構成要件Jを充足しない。

4.構成要件G,H,I及びKについて
構成要件Gによれば,本件特許発明は,「作動レバーに対して移動可能」であって,「作動レバーと協働」する「ロックレバー」を備えるが,イ号物件がそのような「ロックレバー」を備えていないことは明らかである。
したがって,イ号物件は,構成要件Gを充足しない。
構成要件H,I及びKは,構成要件Gの「ロックレバー」についてさらに構成を限定するものであるから,イ号物件は,これらの構成要件も充足しない。

5.均等論について
本件特許の明細書には,締め付けロープが両方の移動方向に対してロックされる第3の位置に作動レバーを動かすことも可能とすることの技術的意義について,下記(イ)の記載があり,また,ロックレバーを設けることの技術的意義について,下記(ロ)の記載がある。したがって,少なくとも構成要件FないしKは,本件特許発明の本質的部分というべきであるから,イ号物件が,これらの構成要件と均等な構成を備えているとはいえない。

(イ)「本発明に基づいた締め付けロックにおいては,締め付けロープが両方の方向にロックされる第3の位置に作動レバーを動かすことも可能である。この位置は使用者が締め付けロープをハウジングから引き出してしまったが,まず締め付けロープを適正な引っ掛け位置に動かさなければならないなどの理由により,直ちには締め付けロープを受け部分に引っ掛けない場合などに特に有利である。これは,使用者が,付勢された巻き取り装置によって締め付けロープが自動的にハウジング内に巻き戻されないように,締め付けロープが引き出された位置で作動レバーによりロープをロックするうえで有利である。この場合,使用者は他の動作を行うために引き出されたロープから一時的に手を放すことが可能であり,この後の適当な時に締め付けロープを引っ掛け,この後に作動レバーを第3の位置から外して締め付けロープを自動的に緊締することが可能である。」(第5頁第38?47行)

(ロ)「本発明に基づく締め付けロックの好ましい別の一構成においては,作動レバーが巻き取り装置に対して直接作用することはなく,作動レバーに対して動くことが可能であると共に回動可能にハウジングの内部に配置される掛かり爪レバーまたはロックレバーが介在する。このロックレバーは係合部分を備え,これによりロックレバーは作動レバーの係止位置において歯列と噛み合う。作動レバーはハウジングの外部から使用者によって3つの位置に動かされることが可能である。ここで作動レバーは係止位置においてロックレバーが歯列と噛み合うようにロックレバーを押し込む。これにより実際の係合部分が形成されたロックレバーは2つの位置(係止位置と解除位置)に動かされるだけであるが,作動レバーを3つの位置に調整することが可能である。この構成において,2個のレバーの相対的な配置を力学的に適切に構成することにより,比較的短い切換え経路で作動レバーを3つの位置の間で切り換えることが可能である。ここで,ロックレバーは作動レバーの切換え経路とは関係なく,歯列に対して噛み合う,または歯列から外れる運動を行うためにのみ形成されている。」(第5頁第48行?第6頁第10行)

第5.むすび
以上のとおり,イ号物件は,本件特許発明の構成要件B,FないしKを充足しないから,イ号物件は本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2011-12-07 
出願番号 特願平10-538113
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (B60C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 栗山 卓也
小関 峰夫
登録日 2007-07-27 
登録番号 特許第3987978号(P3987978)
発明の名称 締め付けロック  
代理人 恩田 博宣  
代理人 名古屋国際特許業務法人  
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