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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29C
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29C
管理番号 1248313
審判番号 不服2008-10206  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-23 
確定日 2011-07-28 
事件の表示 特願2002-526575「ポリオレフィン延伸シートの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月21日国際公開、WO2002/22343〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成13年8月31日(優先権主張 平成12年9月11日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成14年7月11日に手続補正書が提出され、平成19年4月26日付けで拒絶理由が通知され、同年7月4日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月7日付けで拒絶理由が通知され、同年9月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成20年3月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月23日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、同年8月27日に前置報告がなされ、当審において平成22年9月6日付けで審尋がなされ、同年11月10日に回答書が提出され、平成23年1月21日付けで拒絶理由が通知され、同年3月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明の認定
本願の請求項1?2に係る発明は、平成23年3月24日提出の手続補正書によって補正された明細書及び図面(以下、「本願明細書等」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載されたとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は次のとおりである。

「エチレン・α-オレフィン共重合体からなり、重量平均分子量が10万?50万の範囲にあり、融点がTm℃であるポリオレフィンを押出成形し、シート状の原反シートを得る工程と、
厚みtmmの前記原反シートを圧延倍率x倍(但し、xは少なくとも5)で圧延して圧延シートを得る工程であって、(Tm-60)℃?(Tm-5)℃の温度かつ厚みtmmの前記原反シートを、(Tm-40)℃以上、Tm℃未満の温度とされた一対の圧延ロール間に挿入し、10kgf/mm?300kgf/mmの範囲の加圧力で圧延すると共に、圧延前の原反シートにx/5tMPa?20MPaの範囲の引張応力を与えながら圧延し、かつ圧延されたシートをxt/50MPa以上の引張応力が与えられるようにして引取って圧延シートを得る工程と、
前記圧延シートを少なくとも1つのロールを用いて、(Tm-60)℃以上、Tm℃未満の温度で、該ロールと延伸シートとの延伸方向の連続的接触長Lが500mm以下となるように、かつ延伸倍率が1.3倍以上となるように引張延伸し、前記圧延倍率と該引張延伸による延伸倍率の積である総延伸倍率が15倍以上となるように延伸する工程とを備える、ポリオレフィン延伸シートの製造方法。」

第3.当審において通知した拒絶理由の概要
当審において通知した平成23年1月21日付け拒絶理由通知書に記載した拒絶の理由2及び3の概要は、以下のとおりである。

「2)本件出願は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
3)本件出願は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

・・・・
2.理由2)特許法第36条第6項第1号について
本願発明1並びにそれを引用する本願発明2?22は、「押出等の成形性に劣り、かつ高価である超高分子量ポリオレフィンを用いることなく得られ、耐クリープ性に優れ、強度及び弾性率においても優れており、更に生産性に優れたポリオレフィン延伸シート及びその製造方法を提供すること」(本願明細書段落【0009】)をその発明の目的とするものであり、請求項1に記載の「エチレン・α-オレフィン共重合体からなり、重量平均分子量が10万?50万の範囲にあり、融点がTm/℃であるポリオレフィン」(以下、「ポリオレフィン条件」という。)を満足する樹脂を「押出成形し、シート状の原反シートを得る工程と、厚みtmmの前記原反シートが圧延倍率x倍(但し、xは少なくとも5)で圧延され、かつ圧延前の原反シートにx/5tMPa?20MPaの範囲の引張応力が与えられながら圧延され、かつ圧延されたシートがxt/50MPa以上の引張応力が与えられるようにして引取られて圧延シートを得る工程と、前記圧延シートを少なくとも1つのロールを用いて引張延伸し、前記圧延倍率と該引張延伸による延伸倍率の積である総延伸倍率が15倍以上となるように延伸する工程」(以下、「加工条件」という。)を備えた製造方法に係る発明であり、前記「ポリオレフィン条件」及び「加工条件」を発明を特定するための必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)として備えるものである。
しかるに、本願明細書等の発明の詳細な説明において、上記目的が達成されることが具体的に確認されているのは、実施例1?18において、前記「ポリオレフィン条件」の樹脂において、圧延前の3mmの原反シートを3MPaの引張応力で圧延し、圧延されたシートが60MPaの引張応力が与えられるように引き取られている製造方法のみである。(本願明細書段落【0054】?【0067】、表1。なお、下記理由3に記載のように、実施例1、2、8-18については、実際に達成されているかどうか疑義がある。)。
また、上記加工条件に係る圧延前の原反シートの引張応力の下限が圧延倍率xと原反シートの厚みtとの関係で規定されている「圧延前の原反シートにx/5tMPa?20MPaの範囲の引張応力を与えること」である点、及び圧延されたシートの引張応力を圧延倍率xと原反シートの厚みtとの関係で規定さている「圧延されたシートがxt/50MPa以上の引張応力が与えられること」である点について、本願明細書等には、その導出された理論等の記載はない。さらに、本願出願時の当業者において、本願発明1において規定する総延伸倍率が15以上のポリオレフィンシートの製造においては、圧延時の温度条件、延伸時の温度条件、圧延倍率及び延伸倍率により成形性が大きく影響を受けることが技術常識といえる。(本願明細書等に記載の実施例3?7においてのシート温度及び圧延倍率の変化と成形性への影響を参照のこと)
そうすると、本願発明特定事項の「加工条件」については、実施例として記載されている特定の温度条件、圧延前の3mmの原反シートを3MPaの引張応力で圧延し、圧延されたシートが60MPaの引張応力である場合においては、本願発明の所期の効果を奏するものと認められるものの、加工条件のすべての範囲において、実施例1?18と同様な物性のものが得られ、上記本願発明1の課題を解決できるものと認めることはできない。
以上のとおりであるから、本願発明1は、出願時の技術常識を参酌したとしても、上記「加工条件」の全範囲において、発明の課題を解決できることが発明の詳細な説明に裏付けられて記載されているとはいえないから、発明の詳細な説明に記載された発明とすることはできない。
また、本願発明2?22についても、同様のことが該当する。

3.理由3)特許法第36条第4項(実施可能要件違反)について
a)本願明細書等の発明の詳細な説明における実施例1において、延伸時のシート温度が記載されておらず、しかもそれが出願時の技術常識に基づいても当業者に理解できないため、当業者が実施例1を実施できない。実施例1の条件を引用している実施例2,8-18及び比較例1、2、9?12についても同様である。」

第4.当審において通知した拒絶の理由の妥当性についての検討
1.本願明細書等の記載事項
本願明細書等には、以下のとおり記載されている。
ア.「本発明は、耐クリープ性に優れ、高強度及び高弾性率を有するポリオレフィン延伸シート及びその製造方法に関する。」(段落 【0001】)

イ.「本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、押出等の成形性に劣り、かつ高価である超高分子量ポリオレフィンを用いることなく得られ、耐クリープ性に優れ、強度及び弾性率においても優れており、更に生産性に優れたポリオレフィン延伸シート及びその製造方法を提供することにある。」(段落 【0009】)

ウ.「本発明に係るポリオレフィン延伸シートの製造方法の広い局面によれば、エチレン・α-オレフィン共重合体からなり、重量平均分子量が10万?50万の範囲にあり、融点がTm℃であるポリオレフィンを押出成形し、シート状の原反シートを得る工程と、厚みtmmの前記原反シートを圧延倍率x倍(但し、xは少なくとも5)で圧延して圧延シートを得る工程であって、(Tm-60)℃?(Tm-5)℃の温度かつ厚みtmmの前記原反シートを、(Tm-40)℃以上、Tm℃未満の温度とされた一対の圧延ロール間に挿入し、10kgf/mm?300kgf/mmの範囲の加圧力で圧延すると共に、圧延前の原反シートにx/5tMPa?20MPaの範囲の引張応力を与えながら圧延し、かつ圧延されたシートをxt/50MPa以上の引張応力が与えられるようにして引取って圧延シートを得る工程と、前記圧延シートを少なくとも1つのロールを用いて、(Tm-60)℃以上、Tm℃未満の温度で、該ロールと延伸シートとの延伸方向の連続的接触長Lが500mm以下となるように、かつ延伸倍率が1.3倍以上となるように引張延伸し、前記圧延倍率と該引張延伸による延伸倍率の積である総延伸倍率が15倍以上となるように延伸する工程とを備える方法が提供される。
本発明の更に他の特定の局面では、前記延伸工程が、複数の延伸ゾーンを用いた多段延伸工程であり、各延伸ゾーンにおける延伸倍率が後段にいくほど低くされている。複数の延伸ゾーンが設けられているので、圧延シートの寸法ばらつき、圧延倍率のばらつき、加熱むら、繰出ロール及び引取ロールの回転数の変動などによるネッキングを抑制することが出来る。
本発明の他の特定の局面では、前記多段延伸工程において、前記ロールとして、繰出ロールと引取ロールと、繰出ロールと引取ロールとの間に、一定速度で回転する複数の接触ロールとが用いられ、前記繰出ロール、前記引取ロール及び前記複数の接触ロールにより、シートに延伸方向の摩擦力が与えられながら延伸が行われる。
本発明に係る製造方法では、前記延伸工程において、延伸に用いられる各ロールと、シートとの延伸方向の連続的接触長Lが500mm以下とされている。延伸ゾーンにおける、各ロールとシートとの接触長Lが500mm以下とされるので、延伸シートにおける亀裂や割れが生じ難く、安定に延伸成形を行うことが出来る。
本発明に係る製造方法では、前記圧延工程において、厚みtmmの原反シートが圧延倍率x倍で圧延され、かつ圧延前の原反シートにx/5tMPa?20MPaの範囲の引張応力が与えられながら圧延が行われる。原反シートに一定の引張応力が与えられるので、原反シートに波打ちや皺などが生じ難く、安定に圧延を行うことが出来る。
本発明に係る製造方法では、前記圧延工程において、厚みtmmの原反シートが圧延倍率x倍で圧延され、かつ圧延シートにxt/50MPa以上の引張応力が与えられるようにして圧延シートが引取られる。圧延シートが上記一定の引張応力が与えられて引取られることにより、圧延工程におけるロールとシートとの間のすべりが低減され、安定に圧延を行うことが出来、かつ生産性も高められる。」(段落 【0010】?【0017】)

エ.「好ましくは、圧延される原反シートに一定の張力を与えつつ圧延が行われる。この場合には、原反シートが蛇行せず、安定に圧延が行われる。このような一定の張力とは、原反シートの厚みに依存し、原反シートが薄いほど圧延に際して安定し難いため、大きな張力を与えればよい。もっとも、原反シートに大き過ぎる張力を与えると、圧延前に原反シートが延伸され、ネッキング等の問題を生じる恐れがある。
従って、好ましくは、厚みtmmの原反シートを圧延倍率x倍で圧延する場合、原反シートにx/5tMPa?20MPaの引張張力を与えつつ圧延することが望ましい。
また、圧延成型時に原反シートと圧延ロールとの間にすべりが生じることがあり、このすべりが大き過ぎると生産性が低下するだけでなく、安定に圧延することが困難となる。従って、すべりが生じないように、またはすべりを低減するために、圧延機の後方に引取ロール等を設置して圧延シートを引取ることが好ましい。この場合、厚みtmmの原反シート圧延倍率x倍で圧延する場合、引取ロールによる引張応力をxt/50MPa以上とすることが好ましい。」(段落 【0060】?【0062】)

オ.「(実施例)
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示す装置を用いてポリオレフィン延伸シートを得た。原材料として、エチレン・1-ブテン共重合体(融点135℃、重量平均分子量34万、メルトインデックスMI=0.16g/10分、共重合体分子1モル当たりに共重合されている1-ブテン含有量0.4モル)を用いた。この原材料を押出機1A内において溶融混練し、成形機1Bにて厚さ3mm及び幅270mmの原反シートを成形し、1m/分の速度で引取ロール1C_(1),1C_(2)で引取り、かつ一対の圧延ロール1D_(1),1D_(2)間に供給した。
圧延ロール1D_(1),1D_(2)間においては、原反シートの温度を110℃、圧延ロールの温度を125℃、加圧力を100kgf/mmとして圧延倍率が10倍となるように、さらにシートに3MPaの引張り応力を加えつつ圧延を行った。得られた圧延シートの厚みは0.3mmであった。また、圧延に際してのシートの搬送速度は10m/分とし、圧延シートは、シートに60MPaの引張り応力が与えられるように繰出しロール1E_(1),1E_(2)で引取った。
次に、上記のようにして得られた圧延シートを、次の繰出ロール1E_(1),1E_(2)と一対の引取ロール1G_(1),1G_(2)との間に複数の接触ロール1Fが配置された多段延伸装置を用いて、延伸を行った。なお、各ロール1E_(1),1E_(2),1G_(1),1G_(2),1Fは各々、独立のモータで駆動した。この多段延伸装置では、延伸ゾーンは9段とされており延伸工程における延伸倍率が2倍となるように延伸を行った。なお、延伸工程における各ロールとシートの連続接触長さLは250mmとした。また、延伸工程におけるシート搬送速度は20m/分である。
上記のようにして総延伸倍率が20倍のポリオレフィン延伸シートを得た。
(実施例2)
図2に示す装置を用いた。ここでは、延伸工程が、1段の延伸装置2Fを用いて行われている。すなわち、延伸装置2Fでは、一対の繰出ロール2E_(1),2E_(2)と一対の引取ロール2G_(1),2G_(2)のみが用いられ、延伸ゾーンは1段とされている。この延伸装置を用い、その他の点については実施例1と同様にして、総延伸倍率が20倍のポリオレフィン延伸シートを作製した。得られたポリオレフィン延伸シートでは、ネッキングが若干みられた。
(実施例3)
延伸工程におけるシートの温度を85℃としたことを除いては、実施例1と同様にして総延伸倍率が20倍のポリオレフィン延伸シートを得た。
(参考例4)実施例4は欠番とする
延伸工程におけるシートの温度を70℃とし、かつ総延伸倍率を18倍としたことを除いては、実施例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。得られたポリオレフィン延伸シートでは白化がみられた。
なお、総延伸倍率を更に高めようとした場合には、シートが破断した。
(参考例5)実施例5は欠番とする
延伸工程におけるシートの温度を40℃とし、総延伸倍率を16倍としたことを除いては、実施例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。なお、得られたポリオレフィン延伸シートでは白化が認められた。
なお、参考例5において、総延伸倍率を更に高めようとした場合にはシートが破断した。
(実施例6)
圧延工程における原反シートの温度を80℃としたこと、並びに圧延倍率を9倍としたこと、総延伸倍率を18倍としたことを除いては、実施例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。なお、実施例6において、総延伸倍率を更に高めようとした場合にはシートは破断した。
(参考例7)実施例7は欠番とする
圧延工程における原反シートの温度を60℃としたこと、並びに圧延倍率を8.5倍としたことを除いては、実施例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。従って、総延伸倍率は17倍である。
なお、実施例6における圧延の加圧力を180mm/kgに高めたが、圧延倍率はほとんど変わらなかった。
(参考例8)実施例8は欠番とする
圧延工程において、圧延されたシートに引張応力0.5MPaが加えられるように、圧延シートを引取り、シート速度を3.6?4.5m/分(圧延ロールの速度設定は10m/分とした)としたことを除いては、実施例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。圧延工程においてシートがすべり、設定速度に達しなかった。また、シート速度が安定しなかった。
(参考例9)実施例9は欠番とする
圧延工程において、原反シートに引張応力0.5MPaが与えられるように圧延を行ったことを除いては、実施例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートを作製した。
なお、圧延工程前に原反シートが波打ち、ポリオレフィン延伸シートが当初は得られたが、約10分後にシートが破断した。
(参考例10)実施例10は欠番とする
延伸工程における接触ロールのロール径を350mm、シートとの連続的接触長Lの長さを550mmとしたことを除いては、実施例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートを作製した。得られたポリオレフィン延伸シートでは、部分的にシート中央付近に縦割れが生じた。
(参考例11)実施例11は欠番とする
延伸工程において、繰出ロール1E_(1),1E_(2)、引取ロール1G_(1),1G_(2)及び接触ロール1Fを相互にギア及びチェーンにより連結し、一つのモーターで駆動させたことを除いては、実施例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートを作製した。得られたポリオレフィン延伸シートでは、ネッキングがひどく、所々シートが白化し、ポリオレフィン延伸シートを作製し始めてから10分後に延伸工程においてシートの破断が認められた。
(実施例12)
図3に示す装置を用いた。図3に示す装置は、図1に示した装置の後段に架橋処理を行うための4つの水銀灯3Hが付加されていることを除いては、実施例1の装置と同様である。
実施例12においては、原材料として、実施例1で用いたエチレン・1-ブテン共重合体100重量部に対し、光開始剤としてベンゾフェノン0.6重量部と、多官能不飽和化合物としてトリアリルイソシアヌレート1.2重量部とを配合したものを用いた。また、延伸工程後に120W/cm^(2)の出力の高圧水銀灯3Hを4灯用意し、シートの上下に2灯ずつ配置し、シート搬送速度を20m/分とし、架橋処理を行った。なお、この水銀灯からの紫外線の照射に際しての延伸シートの全光線透過率は80%であった。その他の点については実施例1と同様とした。
(実施例13)
延伸工程における延伸温度を90℃としたこと、並びに実施例12と同様にして延伸工程後に架橋処理を施したことを除いては、実施例12と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。なお、紫外線照射時のシートの全光線透過率は55%であった。
(実施例14)
多官能不飽和化合物を配合しなかったことを除いては、実施例12と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。
(実施例15)
図4に示した装置を用いてポリオレフィン延伸シートを製造した。図4に示す装置は、図1に示す装置の後段に架橋処理装置として、電子線照射装置4Hが付加されていることを除いては、実施例1の装置と同様である。
実施例15においては、多官能不飽和化合物をエチレン・1-ブテン共重合体100重量部に対し、1.2重量部添加したこと、並びに紫外線照射に代えて電子線照射装置4Hから100Mradの電子線を照射し、架橋処理を行ったことを除いては、実施例12と同様にしてポリオレフィン延伸シートを作製した。
(実施例16)
多官能不飽和化合物を配合しなかったことを除いては、実施例15と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。
(実施例17)
原材料としてエチレン・プロピレン共重合体(融点134℃、重量平均分子量28万、メルトインデックスMI=0.33g/10分、共重合体分子1モル当たりに共重合されているプロピレン含有量0.8モル)を用いたことを除いては、実施例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。なお、総延伸倍率は20倍である。
(実施例18)
光開始剤としてベンゾフェノン0.6重量部と、多官能不飽和化合物としてトリアリルイソシアヌレート1.2重量部とを、エチレン・プロピレン共重合体100重量部に対して添加したこと、実施例12と同様に水銀灯を用いて紫外線照射を行い架橋処理を行ったことを除いては、実施例17と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。なお、紫外線照射時のシートの全光線透過率は92%であった。
(比較例1)
原材料として、ポリエチレン(融点135℃、重量平均分子量29万、メルトインデックスMI=0.4g/10分、α-オレフィン含有量測定出来ず)を用いたことを除いては、実施例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。
(比較例2)
光架橋剤としてベンゾフェノン0.6重量部と、多官能不飽和化合物としてトリアリルイソシアヌレート1.2重量部とを、ポリエチレン100重量部に対して添加したこと、並びに実施例12と同様に紫外線照射を行ったことを除いては、比較例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。なお、紫外線照射時のシートの全光線透過率は93%である。
(比較例3)
原材料として、ホモポリプロピレン(融点167℃、重量平均分子量32万、メルトインデックスMI=0.33g/10分)を用いたこと、圧延工程における原反シートの温度を120℃とし、圧延ロール温度を150℃としたこと、加圧力を100kgf/mmとしたこと、圧延倍率を6倍、シート速度を6m/分としたこと、並びに延伸工程におけるシート温度を145℃、延伸ゾーンを9段、延伸倍率2.8倍、シート速度17m/分としたことを除いては、実施例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。なお、圧延工程により得られた圧延シートの厚みは0.5mmであった。また、総延伸倍率は17倍である。
(比較例4)
光開始剤としてベンゾフェノン0.6重量部と、多官能不飽和化合物としてトリアリルイソシアヌレート1.2重量部とを、比較例3で用いたホモポリプロピレン100重量部に配合したこと、並びに実施例12と同様にして紫外線架橋を行ったことを除いては、実施例21と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。なお、紫外線照射時のシートの全光線透過率は88%である。
(比較例5)
原材料として、ランダムポリプロピレン(融点141℃、重量平均分子量32万、メルトインデックスMI=0.8g/10分)を用いた。また、圧延工程における原反シートの温度を120℃、圧延ロール温度を130℃、加圧力を100kgf/mm、圧延倍率を6倍、圧延シートの厚みを0.5mm、シート速度を6m/分とした。
延伸工程におけるシート温度を130℃、延伸ゾーンを9段、延伸倍率2.8倍、シート速度17m/分とした。
上記の点以外については実施例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。なお、総延伸倍率は17倍である。
(比較例6)
ランダムポリプロピレン100重量部に対し、光開始剤としてベンゾフェノン0.6重量部と、多官能不飽和化合物としてトリアリルイソシアヌレート1.2重量部とを添加したこと、並びに実施例12と同様にして紫外線照射による架橋処理を行ったことを除いては、比較例5と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。なお、紫外線照射時のシートの全光線透過率は88%であった。
(比較例7)
原材料として、ポリ1-ブテン(融点127℃、重量平均分子量38万、メルトインデックスMI=0.5g/10分)を用いた。
圧延工程において、原反シートの温度を100℃、圧延ロール温度を120℃、加圧力を100kgf/mm、圧延倍率を6倍、圧延シートの厚み0.5mm、シート速度を6m/分とした。
延伸工程において、シート温度を115℃、延伸ゾーンを9段、延伸倍率を2.8倍、シート速度を17m/分とした。
上記の以外については、実施例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。なお、総延伸倍率は17倍である。
(比較例8)
ポリ1-ブテン100重量部に対し、光架橋剤としてベンゾフェノン0.6重量部と、多官能不飽和化合物としてトリアリルイソシアヌレート1.2重量部とを添加したこと、並びに実施例12と同様にして紫外線照射により架橋処理を施したことを除いては比較例7と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。なお、紫外線照射時のシートの全光線透過率は85%であった。
(比較例9)
原材料として、ポリエチレン(融点134℃、重量平均分子量105万、α-オレフィン含有量測定出来ず)を用いたことを除いては実施例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートの作製を試みたが、圧延工程において、シートが破断し、延伸シートは得られなかった。
(比較例10)
原材料として、エチレン・1-ブテン共重合体(融点133℃、重量平均分子量102万、共重合体分子1モル当たりに共重合されている1-ブテン含有量0.5モル)を用いたことを除いては実施例1と同様にしてポリオレフィン延伸シートの作製を試みたが、圧延工程においてシートが破断し、延伸シートは得られなかった。
(比較例11)
延伸工程における延伸倍率を1.3倍及びシート速度を13m/分としたことを除いては、実施例12と同様にしてポリオレフィン延伸シートを得た。なお、総延伸倍率は13倍である。
(比較例12)
圧延工程を行わなかったこと、並びに延伸工程におけるシート温度を120℃、延伸ゾーンを9段、延伸倍率を15倍、シート速度を15m/分としたことを除いては、実施例12と同様にしてポリオレフィン延伸シートを作製した。総延伸倍率は15倍である。ネッキングがひどく現れ、シート作製開始5分後にシートが破断した。
(比較例13)
圧延工程における圧延倍率を4倍、シート速度を4m/分としたこと、延伸工程におけるシート温度を120℃、延伸ゾーンを9段、延伸倍率を4倍、シート速度を16m/分としたことを除いては、実施例12と同様にしてポリオレフィン延伸シートを作製した。総延伸倍率は16倍である。得られたポリオレフィン延伸シートではネッキングがひどく現れ、シート製造を開始してから約8分後にシートが破断した。
(実施例、参考例及び比較例の評価)
上記のようにして得られた各ポリオレフィン延伸シートにおける総延伸倍率及びゲル分率を下記の表1に示す。」(段落 【0113】?【0158】)

カ.「

」(段落 【0162】の表1)

キ.「

」(図1)

2.本願明細書等の実施例の記載について
本願明細書等における上記摘示事項オの実施例1の記載においては、本願発明1において「(Tm-60)℃以上、Tm℃未満の温度で、・・・引張延伸し」と規定されている引張延伸時の圧延シートの温度について全く記載されていない。
上記摘示事項オの実施例1の記載においては、「図1に示す装置を用いて」と記載されており、上記摘示事項キの図1をみると、インラインによりシートが製造されていると理解できるが、上記摘示事項オ及びキを含めた本願明細書等の記載からは、圧延ロール1D_(1),1D_(2) と繰出しロール1E_(1),1E_(2)間の距離、雰囲気温度、延伸に用いた具体的な装置等は不明である。
そして実施例3においては、上記摘示事項オで「実施例1と同様にして」と記載されていることから、同じ図1の装置を利用していると認められるが、引張延伸工程における圧延シートの温度は85℃とされていることから、図1の装置においては引張延伸工程における圧延シートの温度を圧延時の温度とは異なる温度に制御可能となっていることが理解できる。
そうすると、実施例1がインラインによる製造方法であって、引張延伸工程の前の工程に係る「原反シートの温度を110℃、圧延ロールの温度を125℃」とするとの記載はあるが、圧延後に特段の冷却などの温度制御をしたような記載がないことのみをもって、引張延伸時の圧延シートの温度が110℃から125℃程度であるということはできず、実施例1における引張延伸時の圧延シートの温度は不明といわざるをえない。
引張延伸時の圧延シートの温度は、特許請求の範囲に発明を特定するために必要な事項として特定され、本願の解決すべき課題に大きな影響を与える事項であることを踏まえれば、本願明細書等の記載からは、この発明の技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が、実施例1を再現することはできないものと認められる。
また、実施例1と同様な条件で行うととされる実施例2、12?18、参考例8-11、比較例1、2、9?12についても再現することができないものである。

なお、審判請求人は、平成23年3月24日提出の意見書において「しかしながら、図1からも理解できるように、実施例1では、圧延工程と延伸工程とはインラインで行われております。この場合に、実施例1では特段に冷却などの温度を制御したような記載がないことから、圧延時のシート温度がほぼ延伸温度となることは明らかです。実施例1では、「原反シートの温度を110℃、圧延ロールの温度を125℃」旨の記載があることから、延伸時のシート温度は110?125℃程度であることは、当然に理解できることであります。従って、当業者であれば、実施例1、並びに実施例1を引用している実施例2,8-18及び比較例1、2、9-12を実施することに何の困難性も要しません。なお、出願人は、必要であれば、図1に示す製造装置を用いて実施例1の記載の通りポリオレフィン延伸シートを製造した場合に、どのような延伸温度となるのかを具体的に実験した実験成績証明書を提出する用意があります。従って、出願人は、実施例1に延伸時のシート温度が記載されていないことがご指摘の拒絶理由に到底結びつくものではないと考えておりますが、仮に審判官殿が延伸時のシート温度が記載されていないことのみを理由として本願を拒絶しようとする場合には、出願人には実験成績証明書の提出等の用意もあるので、拒絶理由を再度通知して頂きますよう何卒お願い申し上げます。」と主張している。
しかし、本願明細書等の記載からは、実施例1における引張延伸時の圧延シートの温度が特定できないことは上記検討のとおりであり、本願明細書等においては実施例において利用している具体的な製造装置が特定されていないことから、実験成績証明書のデータが提出されたとしても、実施例1に対応するデータであることを確定することができず、上記不備は治癒され得ないものである。
したがって、審判請求人の前記主張は採用できない。

3.理由2)特許法第36条第6項第1号について
(3-1)本願発明1について
本願発明1は、押出等の成形性に劣り、かつ高価である超高分子量ポリオレフィンを用いることなく得られ、耐クリープ性に優れ、強度及び弾性率においても優れており、更に生産性に優れたポリオレフィン延伸シートの製造方法を提供すること(上記摘示事項イ)をその発明の目的とするものであり、本願発明1の「エチレン・α-オレフィン共重合体からなり、重量平均分子量が10万?50万の範囲にあり、融点がTm℃であるポリオレフィン」(以下、「ポリオレフィン条件」という。)を満足する樹脂を「押出成形し、シート状の原反シートを得る工程と、厚みtmmの前記原反シートが圧延倍率x倍(但し、xは少なくとも5)で圧延して圧延シートを得る工程であって、(Tm-60)℃?(Tm-5)℃の温度かつ厚みtmmの前記原反シートを、(Tm-40)℃以上、Tm℃未満の温度とされた一対の圧延ロール間に挿入し、10kgf/mm?300kgf/mmの範囲の加圧力で圧延すると共に、圧延前の原反シートにx/5tMPa?20MPaの範囲の引張応力を与えながら圧延し、かつ圧延されたシートをxt/50MPa以上の引張応力が与えられるようにして引取って圧延シートを得る工程と、前記圧延シートを少なくとも1つのロールを用いて、(Tm-60)℃以上、Tm℃未満の温度で、該ロールと延伸シートとの延伸方向の連続的接触長Lが500mm以下となるように、かつ延伸倍率が1.3倍以上となるように引張延伸し、前記圧延倍率と該引張延伸による延伸倍率の積である総延伸倍率が15倍以上となるように延伸する工程」(以下、「加工条件」という。)を備えた製造方法に係る発明であり、前記「ポリオレフィン条件」及び「加工条件」を発明を特定するための必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)として備えるものである。

(3-2)本願明細書等の記載の検討
本願明細書等の発明の詳細な説明において、上記目的が達成されることが具体的に確認されているのは、上記2.で検討したとおり、上記摘示事項オ、カに記載の実施例3のみであって、前記「ポリオレフィン条件」の樹脂として「エチレン・1-ブテン共重合体(融点135℃、重量平均分子量が34万)」を用いて、圧延前に3mmの厚みで110℃の原反シートを125℃の圧延ロール間に挿入し、100kgf/mmの加圧力で、かつ、3MPaの引張応力で圧延し、圧延されたシートが60MPaの引張応力が与えられるように引き取られ、延伸工程のシート温度を85℃とし、延伸ロールと延伸シートとの延伸方向の連続接触長Lが250mmである製造方法のみである。(上記摘示事項オ、カ)
なお、実施例1及びその加工条件を用いている実施例2、12?18が本願の実施例として認められるとしても、加工条件に係る圧延前の原反シートの引張応力の下限が圧延倍率xと原反シートの厚みtとの関係で規定されている「圧延前の原反シートにx/5tMPa?20MPaの範囲の引張応力を与えること」である点(以下、「圧延前引張応力条件」という。)、及び圧延されたシートの引張応力を圧延倍率xと原反シートの厚みtとの関係で規定さている「圧延されたシートがxt/50MPa以上の引張応力が与えられること」である点(以下、「圧延後引張応力条件」という。)については、本願明細書等に記載の全ての実施例が全て同1条件(圧延前引張応力条件が3MPa、圧延後引張応力条件が60MPa)となっている。
また、前記「圧延前引張応力条件」及び「圧延後引張応力条件」について、本願明細書等には、上記摘示事項ウ及びエに関連する記載がなされているが、これらの記載から原反シートの厚みと圧延されたシートの張力との関係について理解できても、前記各条件に用いられている具体的な数式算出の根拠を記載しているとは認められず、どのようにしてこれらの数式を導出したのか、具体的には「圧延前引張応力条件」の最小値である「x/5t」はどのように導出されたのかや、最大値はなぜxやtに無関係となるのか、また、「圧延後引張応力条件」の最小値である「xt/50」はどのようにして導出されたのかや、なぜ最大値は限定する必要がないのかの理論等の記載は全くなされていない。

(3-3) 判断
本願出願時の当業者において、本願発明1において規定する総延伸倍率が15以上の「ポリオレフィン条件」を満足するポリオレフィンシートの製造においては、圧延時の温度条件、延伸時の温度条件、圧延倍率、及び延伸倍率により成形性が大きく影響を受けることが技術常識といえる。(本願明細書等に記載の実施例3?7においてのシート温度及び圧延倍率の変化と成形性への影響を参照のこと)
また、ポリオレフィンシートの製造において、成形条件は求めるシートの厚みに大きく影響されることも本願出願時の技術常識である。
そうすると、本願発明特定事項の「加工条件」については、実施例3として記載されている特定の温度条件、圧延前の3mmの原反シートを「2/3Pa?20MPa」の範囲にある3MPaの引張応力で圧延し、圧延されたシートが「3/5MPa以上」の範囲にある60MPaの引張応力が与えられるように引き取られる場合においては、本願発明1の所期の効果を奏するものと認められるものの、だからといって、加工条件のすべての範囲において、一例として圧延前引張条件である「x/5tMPa?20MPa」、圧延後引張応力条件である「xt/50MPa以上」の全ての範囲で、実施例3と同様な物性のものが得られ、上記本願発明1の課題を解決できるものと認めることはできない。
さらに、本願出願時に、上記「加工条件」を満たす製造方法が、上記「ポリオレフィン条件」を満足するポリオレフィンシートの製造において、耐クリープ性に優れ、強度及び弾性率においても優れており、更に生産性に優れたフィルムが得られるとの、技術常識が存したものとも認められない。

以上のとおりであるから、本願発明1は、本願出願時の技術常識を参酌したとしても、上記「加工条件」の全範囲において、発明の課題を解決できることが発明の詳細な説明に裏付けられて記載されているとはいえないから、発明の詳細な説明に記載された発明とすることはできない。

(3-4)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成23年3月24日提出の意見書において、
「(4)本願の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たす理由
審判官殿は、理由2)において、「上記加工条件に係る圧延前の原反シートの引張応力の下限が圧延倍率xと原反シートの厚みtとの関係で規定されている『圧延前の原反シートにx/5tMPa?20MPaの範囲の引張応力を与えること』である点、及び圧延されたシートの引張応力を圧延倍率xと原反シートの厚みtとの関係で規定されている『圧延されたシートがxt/50MPa以上の引張応力が与えられること』である点について、本願明細書等には、その導き出された理論等の記載はない。」旨を述べられております。 しかしながら、実施例を含む明細書全体の記載や、下記の段落[0051]?[0064]の記載から、上記の点について十分な説明がされていると思料致します。具体的には、段落[0060]に「好ましくは、圧延される原反シートに一定の張力を与えつつ圧延が行われる。この場合には、原反シートが蛇行せず、安定に圧延が行われる。このような一定の張力とは、原反シートの厚みに依存し、原反シートが薄いほど圧延に際して安定し難いため、大きな張力を与えればよい。もっとも、原反シートに大き過ぎる張力を与えると、圧延前に原反シートが延伸され、ネッキング等の問題を生じる恐れがある。」旨、段落[0061]に「従って、好ましくは、厚みtmmの原反シートを圧延倍率x倍で圧延する場合、原反シートにx/5tMPa?20MPaの引張張力を与えつつ圧延することが望ましい。」旨、並びに段落[0062]に「また、圧延成型時に原反シートと圧延ロールとの間にすべりが生じることがあり、このすべりが大き過ぎると生産性が低下するだけでなく、安定に圧延することが困難となる。従って、すべりが生じないように、またはすべりを低減するために、圧延機の後方に引取ロール等を設置して圧延シートを引取ることが好ましい。この場合、厚みtmmの原反シート圧延倍率x倍で圧延する場合、引取ロールによる引張応力をxt/50MPa以上とすることが好ましい。」旨が明確に記載されております。
・・・
そこで、別紙提出の手続補正書では、請求項1において、加工条件を限定致しました。すなわち、圧延シートを得る工程を、「厚みtmmの前記原反シートを圧延倍率x倍(但し、xは少なくとも5)で圧延して圧延シートを得る工程であって、(Tm-60)℃?(Tm-5)℃の温度かつ厚みtmmの前記原反シートを、(Tm-40)℃以上、Tm℃未満の温度とされた一対の圧延ロール間に挿入し、10kgf/mm?300kgf/mmの範囲の加圧力で圧延すると共に、圧延前の原反シートにx/5tMPa?20MPaの範囲の引張応力を与えながら圧延し、かつ圧延されたシートをxt/50MPa以上の引張応力が与えられるようにして引取って圧延シートを得る工程」に限定し、さらに延伸する工程を、「前記圧延シートを少なくとも1つのロールを用いて、(Tm-60)℃以上、Tm℃未満の温度で、該ロールと延伸シートとの延伸方向の連続的接触長Lが500mm以下となるように、かつ延伸倍率が1.3倍以上となるように引張延伸し、前記圧延倍率と該引張延伸による延伸倍率の積である総延伸倍率が15倍以上となるように延伸する工程」に限定致しました。
上記のように限定された加工条件においては、明細書全体の記載から、さらに実施例の記載から、その加工条件の全範囲において、発明の課題を解決できることが発明の詳細な説明により十分に裏付けられていると思料致します。
従って、補正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていると思料致します。」と主張する。

しかし、「圧延前引張応力条件」及び「圧延後引張応力条件」について審判請求人が本願明細書に具体的に記載されているとされる本願明細書段落[0051]?[0064]をみても、「圧延前引張応力条件」について「このような一定の張力とは、原反シートの厚みに依存し、原反シートが薄いほど圧延に際して安定し難いため、大きな張力を与えればよい。もっとも、原反シートに大き過ぎる張力を与えると、圧延前に原反シートが延伸され、ネッキング等の問題を生じる恐れがある」(上記摘示事項エ)ため上限下限が設定されていることは理解できても、下限である「x/5t」という数式がどのように導出されたのかについては記載されておらず、本願明細書等において「圧延前引張応力条件」の具体的な値としては、圧延倍率10倍で、厚みtが3mmでの引張応力3MPaが示されているだけであるから、実施例に基いての数式ということもできないものである。
また、「圧延後引張応力条件」については、「圧延成型時に原反シートと圧延ロールとの間にすべりが生じることがあり、このすべりが大き過ぎると生産性が低下するだけでなく、安定に圧延することが困難となる。従って、すべりが生じないように、またはすべりを低減するために」(上記摘示事項エ)この条件が設けられていることは理解できても、下限となる「xt/50」という数式がどのように導出されたのかについては記載されておらず、本願明細書等において「圧延後引張応力条件」の具体的な値としては、圧延倍率10倍で、厚みtが3mmでの引張応力60MPaが示されているだけであるから、実施例に基いての数式ということもできないものである。
そうすると、上記「圧延前引張応力条件」及び「圧延後引張応力条件」についての、本願明細書等の審判請求人が提示する箇所及びその他の記載を参酌しても、その数式及び範囲について本願明細書等において裏付けられているといえないから、上記審判請求人の前半の主張は採用できない。

また、後半の主張については、補正後の本願発明1においても加工条件には、「圧延前引張応力条件」及び「圧延後引張応力条件」が補正前の本願発明1と同様に発明特定事項となっており、その範囲についての発明の詳細な説明においての裏付けは、上記検討したように、実施例3として記載されているただ1つの条件であることは何ら変わりないのであり、他の成形条件を限定したとしても、補正前の「圧延前引張応力条件」及び「圧延後引張応力条件」を含む加工条件に関して、本願明細書等に裏付けがないことには変わりなく、上記審判請求人の主張は採用できない。
なお、原審における平成19年4月26日付け拒絶理由における理由2,3(新規性及び進歩性)に対する平成19年7月4日提出の意見書において、審判請求人は上記「圧延前引張応力条件」及び「圧延後引張応力条件」により従来技術に比して特有の効果が奏されることを主張していることからみても、これらの条件についての本願明細書等の裏付けは重要な記載要件事項であるといえるが、上記検討のとおり十分な裏付けはなされていないものである。

4.まとめ
よって、本願明細書等の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第5.むすび
以上のとおりであるから、当審において通知した平成23年1月21日付け拒絶理由通知書に記載した拒絶の理由2は妥当なものであり、他の理由について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-24 
結審通知日 2011-05-31 
審決日 2011-06-15 
出願番号 特願2002-526575(P2002-526575)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (B29C)
P 1 8・ 536- WZ (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川端 康之  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 大島 祥吾
▲吉▼澤 英一
発明の名称 ポリオレフィン延伸シートの製造方法  
代理人 宮▲崎▼ 主税  
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