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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E05D
管理番号 1248393
審判番号 無効2010-800175  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-09-30 
確定日 2011-08-15 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4281040号発明「蝶番」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4281040号は、平成13年9月25日(優先権主張 平成12年10月19日)の出願であって、平成21年3月27日にその発明についての特許権の設定登録がされたものである。

以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。

平成22年 9月30日 本件無効審判請求
平成23年 1月12日 答弁書提出(被請求人)
平成23年 1月12日 訂正請求(被請求人)
平成23年 3月10日 弁駁書提出(請求人)
平成23年 6月 8日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成23年 6月 9日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成23年 6月23日 口頭審理

第2 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、審判請求書において、「特許第4281040号の請求項1ないし請求項13に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」旨の審決を求めており、平成23年3月10日付けの弁駁書、平成23年6月9日付けの口頭審理陳述要領書も併せると、請求人の主張は、概略次のとおりである。なお、平成23年6月23日の口頭審理において、請求人は周知例4?6の提出及びこれらに基づく主張を撤回し、被請求人はこれに同意した。

(1)訂正後の請求項1、請求項2、請求項3、請求項6、請求項7、請求項9、請求項11及び請求項12に係る発明は、下記証拠方法に示す甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に基づいて、その発明の属する分野において通常の知識を有する者が出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(2)訂正後の請求項4、請求項5及び請求項8に係る発明は、下記証拠方法に示す甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び周知例1?3に基づいて、その発明の属する分野において通常の知識を有する者が出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(3)訂正後の請求項10に係る発明は、下記証拠方法に示す甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証に基づいて、その発明の属する分野において通常の知識を有する者が出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

そして、請求人は、上記(1)の具体的理由として下記(4)ないし(15)を主張し、上記(2)に関して下記(16)及び(17)を主張し、上記(3)に関して下記(18)を主張している。

(4)甲第2号証では、ピストン44(本願発明のスライダーに相当)先端が、ドアに接触して配置された突出棒21端(第2ヒンジ片20〔本願発明の蝶番カップに相当し、ドアに固定状態〕に連続した部位)に接触しつつも回転可能に構成されており、ドアに接触するように配置されているという示唆は存在している。作用効果としては、本願発明と同様にドアの閉動作が減衰される。

(5)甲第3号証では、閉まるときに、スライダーとしての、つっかえ棒が、ドアに接続された蝶番アームを押している。機能的には、スライダー端でドア又は蝶番カップの、つっかえ棒の作用と同じである。

(6)甲第1号証における制動装置10は、ヒンジアーム7に対して直交するように設けられているが、この方向は長手方向と考えることができる。また、甲第2号証では、ドア閉め緩衝器具40のピストン44(本願発明のスライダーに相当)は、第1ヒンジ片10(本願発明の蝶番アームに相当)の長手方向に沿って配置されていると共に、第1ヒンジ片10の長手方向にスライド可能に構成されている。

(7)請求項1において、「外側から取り付けられる」とは、実質的には「外側に取り付けられている」と解される。

(8)甲第2号証において、シリンダー41は、蝶番としての一対の一方の第1ヒンジ片10に外側から取り付けられている。さらに、甲第1号証においては、液圧シリンダーとしての制動装置10の部位であるカップ13はヒンジアーム7(蝶番アームに相当)の表面側に突出して構成されており、外部から取り付けられていると認定されても間違いとはいえない。

(9)したがって、請求項1に記載された発明は、甲第1号証に記載された制動装置10に、甲第2号証のシリンダー又は甲第3号証のスタッド部材10を、或いは甲第1号証に記載された制動装置10に、甲第2号証のシリンダー及び甲第3号証のスタッド部材10を適用することで、スライダー端が蝶番カップに接触するように配置することは、当業者が容易に想到可能である。

(10)甲第1号証のヒンジアーム7(本願発明の蝶番アームに相当)は、中央板及び2つの側面板によりU字型断面をなしている。また、甲第1号証の制動装置10は、上辺16の上に取り付けられている。

(11)甲第1号証の「制動装置10」(本願発明の「流体ダンパー」に相当)における、「シリンダー12の上端部」が、本願発明の「流体ダンパーの固定用突起」に相当する。

(12)甲第3号証におけるハウジング25の一部でもあり、ドア7に固定される部位である、第2ハウジング26は、本願発明の「継手」に相当する。また、甲第3号証のスタッグ部材の接触構成、甲第2号証のピストンロッドの回転接触構成が公知である。

(13)甲第1号証には、制動装置10として、シリンダー12内にピストンロッド9が備えられており、制動流体が蛇腹型エンドキャップとピストンによって抑制されている構成が開示されている。流体にて可動するピストンロッド9は、正比例状態で可動するものであり、これが線形と称するものである。

(14)甲第1号証において、液圧シリンダーが開示されている場合には、気圧シリンダーにて構成される空気圧ダンパーも示唆される。

(15)甲第1号証には、制動流体が流れる液圧シリンダーが開示されている。

(16)弾性変形可能なフックは、周知技術である(周知例1?3を参照)。

(17)甲第1号証において、制動装置10は、ヒンジストラップ1(本願発明の蝶番アームに相当)に工具を使用することなく取り付けられている。

(18)甲第4号証には、流体ダンパー装置として、回転運動を直線運動に変えるラック22が内蔵された回転式オイルダンパー4、すなわち、回転式ダンパーが開示されている。

<証拠方法>
甲第1号証:米国特許第5012551号明細書
甲第2号証:実願平5-30007号(実開平6-8662号)のCD-ROM
甲第3号証:米国特許第3975791号明細書
甲第4号証:特開平5-163867号公報
甲第5号証:本件特許公報
甲第6号証:大阪地裁昭和44年10月31日判決(昭和42年(ワ)第6681号)
甲第7号証:大阪高裁平成8年5月31日判決(平成7年(ネ)第318号)
周知例1:実願昭61-60191号(実開昭62-172808号)のマイクロフィルム
周知例2:特開平9-210025号公報
周知例3:特開2000-134759号公報

なお、甲第1号証ないし甲第4号証及び周知例1ないし周知例3は審判請求書とともに、甲第5号証ないし甲第7号証は平成23年6月9日付け口頭審理陳述要領書とともに、それぞれ提出されたものである。

2.被請求人の主張
被請求人は、明細書の訂正を請求するとともに、答弁書において、「請求人の請求を棄却する、審判費用は請求人の負担とする」旨の審決を求めており、平成23年6月8日付けの口頭審理陳述要領書も併せると、被請求人の主張は、概略次のとおりである。

(1)請求項1、請求項2及び請求項13の訂正はいずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(2)訂正後の請求項1、請求項2、請求項3、請求項6、請求項7、請求項9、請求項11及び請求項12に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に基づいて、その発明の属する分野において通常の知識を有する者が出願前に容易に発明をすることができたものではなく、無効理由は存在しない。

(3)訂正後の請求項4、請求項5及び請求項8に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び周知例1?3に基づいて、その発明の属する分野において通常の知識を有する者が出願前に容易に発明をすることができたものではなく、無効理由は存在しない。

(4)訂正後の請求項10に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証に基づいて、その発明の属する分野において通常の知識を有する者が出願前に容易に発明をすることができたものではなく、無効理由は存在しない。

そして、被請求人は、上記(2)の具体的理由として下記(5)ないし(9)を主張し、上記(3)に関して下記(10)ないし(12)を主張し、上記(4)に関して下記(13)を主張している。

(5)甲第1号証においては、制動装置10はヒンジアーム7に対しその中央板部分を垂直に貫通するように設けられており、制動装置10を構成するシリンダー12の大部分はヒンジアーム7の中央板部分の下側(内側)に存在している。本発明において流体ダンパーのハウジングが「蝶番アームの外側から取り付けられる」とは、文字通りダンパーハウジングが蝶番アームの外側に位置するということであって、蝶番アームの内側には位置しないということである。

(6)甲第1号証においては、制動装置10はヒンジアーム7の長手方向に沿っているとは言えず、ヒンジアーム7の長手方向に対して直交する方向に延びている。

(7)甲第2号証においては、シリンダー41及びそこから突出したピストン44は、第1及び第2ヒンジ片10、20の双方に対して傾斜しており、ピストン44は、これらのヒンジ片に対して回動しながらシリンダー41に対してスライドする、つまりピストン44は第1ヒンジ片10の長手方向に沿ってスライドするものではない。

(8)甲第2号証においては、緩衝器具のピストン44の先端は、第2ヒンジ片20から延設された突出棒21の先端に対し関節手段22を介して(回動可能に)恒常的に連結されており、ドアが閉じ状態にあるときも開き状態にあるときも常にピストン44と突出棒21とは連結状態を維持している。これに対し、本発明における流体ダンパーのスライダーは、蝶番カップが閉じた位置に配置されるときに蝶番カップ又は蝶番カップに接続したドアに接触するものであり(「連結」ではなく単に「接触」するに過ぎない)、蝶番カップが開いた位置にあるときに当該スライダーが蝶番カップやドアに対し非接触でもかまわない。

(9)甲第3号証は、ドアを特定位置に保持するためのスタッド部材を開示するに過ぎず、減衰目的の流体ダンパーを開示するものではないから、甲第1号証と甲第3号証とを組み合わせることには無理がある。

(10)周知例1?3はいずれも、止め構造に関する一般技術として説明しているに過ぎず、特に、家具用の蝶番や蝶番用ダンパーへの適用を謳っているわけではない。

(11)甲第1号証における制動装置10のシリンダー12が「流体ダンパーのハウジング」に相当するものであることを考慮すると、甲第1号証における制動装置10には「ホゾ」に相当するものが存在しないと見るべきである。

(12)甲第1号証において、制動装置10の取り付けに際して工具が必要か否かについては言及されていない。

(13)甲第4号証には、回転式オイルダンパー4からなるダンパー装置が開示されているが、その用途として、家具用の蝶番への適用や蝶番用ダンパーでの使用を謳っているわけではない。

第3 訂正について
1.訂正の内容
平成23年1月12日にされた訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、特許第4281040号の特許時の明細書(以下「本件明細書」という。)を、平成23年1月12日付け訂正請求書に添付した訂正明細書(以下「訂正明細書」という。)のとおりに訂正しようとするものであり、以下の訂正事項を含む。

(1)訂正事項a
本件明細書の特許請求の範囲の請求項1に
「【請求項1】
蝶番カップと、
前記蝶番カップが、開いた位置と閉じた位置間で蝶番アームに対して旋回動作するように、前記蝶番カップに枢動可能に接続される前記蝶番アームと、
前記蝶番アームの外側から取り付けられる流体ダンパーのハウジングと、前記蝶番カップ又は前記蝶番カップに接続したドアに接触するように配置される前記流体ダンパーのスライダーとを含む流体ダンパーと、
からなることを特徴とする蝶番。」
とあるのを次のとおりにする訂正(アンダーラインは被請求人による)。
「【請求項1】
蝶番カップと、
前記蝶番カップが、開いた位置と閉じた位置間で蝶番アームに対して旋回動作するように、前記蝶番カップに枢動可能に接続される前記蝶番アームと、
前記蝶番アームの外側から取り付けられる流体ダンパーのハウジングと、前記蝶番カップが前記閉じた位置に配置されるときに前記蝶番カップ又は前記蝶番カップに接続したドアに接触するように配置される前記流体ダンパーのスライダーとを含む流体ダンパーと、
からなり、前記流体ダンパーのスライダーは、前記蝶番アームの長手方向に沿って配置されていると共に前記蝶番アームの長手方向に沿ってスライド可能である、ことを特徴とする蝶番。」

(2)訂正事項b
本件明細書の特許請求の範囲の請求項2に
「【請求項2】
前記蝶番アームは、中央板及び2つの側面板によりU字型断面をなし、
前記流体ダンパーのハウジングは、前記中央板の上に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の蝶番。」
とあるのを次のとおりにする訂正(アンダーラインは被請求人による)。
「【請求項2】
前記蝶番アームは、中央板及び2つの側面板によりU字型断面をなし、
前記流体ダンパーのハウジングは、前記中央板の外面の上に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の蝶番。」

(3)訂正事項c
本件明細書の特許請求の範囲の請求項13を削除する訂正。

ここで、請求項3ないし請求項12については、記載自体に変更はないが、これらは請求項1又は2を直接あるいは間接に引用するから、訂正事項a及びbと同じ内容の訂正がされたといえる。

以下、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項13に係る発明を「本件発明1」ないし「本件発明13」といい、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項12に係る発明を「訂正発明1」ないし「訂正発明12」という。また、特許時の明細書及び図面を「本件明細書等」という。

2.訂正の適否についての検討
(1)目的要件
訂正事項aは、「前記蝶番カップが前記閉じた位置に配置されるとき」との発明特定事項及び「前記流体ダンパーのスライダーは、前記蝶番アームの長手方向に沿って配置されていると共に前記蝶番アームの長手方向に沿ってスライド可能である」との発明特定事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項bは、流体ダンパーのハウジングの取り付け位置に関して、「中央板の上に」とあったのを、「中央板の外面の上に」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項cは、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)新規事項の有無
本件明細書等には、以下の事項が記載されている。
(イ)「ドア12が閉じられると、蝶番カップ1の継手18がスライダー15を押し、これによりスライダーはハウジング13に差し込まれる。」(段落【0020】)
(ロ)「前記流体ダンパーのスライダーは、前記蝶番アームの長手方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の蝶番。」(【請求項13】)
(ハ)図6、図7を参照すると、スライダー15が蝶番アーム2の長手方向に沿って配置されており、スライダー15が蝶番アーム2の長手方向に沿ってスライド可能であることが看て取れる。
(ニ)「蝶番アーム2は、1つの中央板2′と2つの側面板2″により、U字形の断面に作られている。」(段落【0014】)
(ホ)図2を参照すると、流体ダンパー20のハウジングは、中央板2′の外面の上に取り付けられていることが看て取れる。

訂正事項aにおける、「前記蝶番カップが前記閉じた位置に配置されるとき」との発明特定事項及び「前記流体ダンパーのスライダーは、前記蝶番アームの長手方向に沿って配置されていると共に前記蝶番アームの長手方向に沿ってスライド可能である」との発明特定事項は、上記記載事項(イ)、(ロ)及び(ハ)から明らかなように、本件明細書等に記載されていたものであり、訂正事項bにおける、流体ダンパーのハウジングの取り付け位置を、「中央板の外面の上」とすることは、上記記載事項(ニ)及び(ホ)から明らかなように、本件明細書等に記載されていたものといえる。また、請求項を削除する訂正事項cが本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
したがって、訂正事項a、訂正事項b及び訂正事項cは、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
本件発明1は、「流体ダンパーのスライダー」との要件を備えた蝶番に係る発明であって、訂正事項aの「前記蝶番カップが前記閉じた位置に配置されるとき」との発明特定事項は、本件発明1における流体ダンパーのスライダーが、蝶番カップ又は蝶番カップに接続したドアに接触するタイミングを限定したものといえ、訂正事項aの「前記流体ダンパーのスライダーは、前記蝶番アームの長手方向に沿って配置されていると共に前記蝶番アームの長手方向に沿ってスライド可能である」との発明特定事項は、本件発明1における流体ダンパーのスライダーの配置態様を限定したものといえる。
本件発明2は、「流体ダンパーのハウジング」との要件を備えた蝶番に係る発明であって、訂正事項bは、流体ダンパーのハウジングの取り付け位置を本件発明2においては「中央板の上」であったところ、「中央板の外面の上」と限定したものである。
また、請求項を削除する訂正事項cが実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。
したがって、訂正事項a、訂正事項b及び訂正事項cは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。

3.訂正の許否の結論
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第5項で準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。
したがって、本件訂正を認めることとする。
なお、本件訂正の適否について、両当事者間に争いはない。

第4 本件特許に係る発明
訂正発明1ないし訂正発明12は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項12に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
蝶番カップと、
前記蝶番カップが、開いた位置と閉じた位置間で蝶番アームに対して旋回動作するように、前記蝶番カップに枢動可能に接続される前記蝶番アームと、
前記蝶番アームの外側から取り付けられる流体ダンパーのハウジングと、前記蝶番カップが前記閉じた位置に配置されるときに前記蝶番カップ又は前記蝶番カップに接続したドアに接触するように配置される前記流体ダンパーのスライダーとを含む流体ダンパーと、
からなり、前記流体ダンパーのスライダーは、前記蝶番アームの長手方向に沿って配置されていると共に前記蝶番アームの長手方向に沿ってスライド可能である、ことを特徴とする蝶番。
【請求項2】
前記蝶番アームは、中央板及び2つの側面板によりU字型断面をなし、
前記流体ダンパーのハウジングは、前記中央板の外面の上に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の蝶番。
【請求項3】
前記蝶番アームは、開口部を有し、前記流体ダンパーは、前記蝶番アームの前記開口部に延長する固定用突起を有することを特徴とする請求項1又は2記載の蝶番。
【請求項4】
前記固定用突起は、弾性変形可能なフックであることを特徴とする請求項3記載の蝶番
【請求項5】
前記固定用突起は、弾性変形可能なホゾであることを特徴とする請求項3記載の蝶番。
【請求項6】
前記スライダーは、前記蝶番カップが閉じた位置のとき、前記蝶番カップに接触するように作動することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の蝶番。
【請求項7】
前記蝶番カップは、継手を備えており、前記蝶番カップが閉じた位置のとき、スライダーが前記継手に接触するように作動することを特徴とする請求項6記載の蝶番。
【請求項8】
前記流体ダンパーは、工具を使用することなく、前記蝶番アームに固定可能であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の蝶番。
【請求項9】
前記流体ダンパーは、線形ダンパーを備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の蝶番。
【請求項10】
前記流体ダンパーは、回転式ダンパーであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の蝶番。
【請求項11】
前記流体ダンパーは、空気式ダンパーであることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の蝶番。
【請求項12】
前記流体ダンパーは、液圧式ダンパーであることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の蝶番。」

第5 進歩性(特許法第29条第2項)
1.刊行物及び刊行物に記載された発明
(1)甲第1号証
請求人が甲第1号証として提出した、本願の優先日よりも前に頒布された刊行物である、米国特許第5012551号明細書には、図面とともに次の事項が記載されている(和訳は当審による)。
(1-a)「The furniture hinge of FIGS.1 and 2 has a pot-like housing 4 which is arranged and fixed in a recess 2 of a furniture door 3 and is articulately connected via levers 5 and 6 to a hinge arm 7 secured to the body of the furniture.
The lever 6 is constructed as a two-armed lever and has a lever arm 8 which is articulately connected to a piston rod 9 of a damping device 10.」(第2欄第53?60行;図1及び図2の家具用ヒンジは、家具のドア3のくぼみ2に固定配置された深い容器状のハウジング4を有し、家具の本体に固定されたヒンジアーム7にレバー5及び6が関節的に連結されている。該レバー6は2つのアーム部を有するレバーとして構成されており、制動装置10のピストンロッド9と関節的に連結しているレバーアーム8を有している。)
(1-b)「The cylinder is equipped with an annular flange 14 and projects through a bore 15 (see FIG.6) in a wall 16 of the hinge arm 7. The annular flange 14 lies against the inner side of the wall 16 of the hinge arm 7 while the cap 13 extends to the vicinity of the hinge arm.
FIGS.1 and 2 show that the damping device10 is integrated in the structure of the furniture hinge and requires no significant redesign of the functional components of this hinge.」(第2欄第66行?第3欄第6行;シリンダー12は環状フランジ14を備え、ヒンジアーム7の上辺16の内径15(図6参照)を通じて突出している。前記環状フランジ14は、前記ヒンジアーム7の上辺16の内側に対して位置している。一方、キャップ13はヒンジアームの近傍に伸びている。図1及び2に図示されているように、制動装置10は家具用ヒンジの構成と一体となっており、このヒンジの機能的部品のデザインを改める際でも、いかなる重要性も要求されない。)
(1-c)上記記載事項(1-a)、(1-b)及び図1、2から、ハウジング4が開いた位置と閉じた位置間でヒンジアーム7に対して旋回動作するように、ヒンジアーム7がハウジング4に枢動可能に接続されていることが、看て取れる。

以上のことを総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「ハウジング4と、
前記ハウジング4が、開いた位置と閉じた位置間でヒンジアーム7に対して旋回動作するように、前記ハウジング4に枢動可能に接続される前記ヒンジアーム7と、
前記ヒンジアーム7に取り付けられる制動装置10のシリンダー12と、
制動装置10のピストンロッド9とを含む制動装置10と、からなる家具用ヒンジ。」

(2)甲第2号証
請求人が甲第2号証として提出した、本願の優先日よりも前に頒布された刊行物である、実願平5-30007号(実開平6-8662号)のCD-ROMには、図面とともに次の事項が記載されている。
(2-a)「ドア閉め緩衝器具40は、ドアDの閉まる速度を調整するためのものであり、図2及び図3に示すように、内部空間42を有するシリンダー41と、内部空間42において往復運動するピストン44とを備えている。シリンダー41の後端(左端)は軸50を介して第1ヒンジ片10に回動可能に連結され、ピストン44の先端(右端)は第2ヒンジ片20の突出棒21に関節手段22により連結されており、これにより、ピストン44の行程距離を十分に確保することができるとともに、ドア閉め緩衝器具40の正確な動作を期することができ、また、ピストン44の往復運動を円滑に行うことができる。」(段落【0012】)

(3)甲第3号証
請求人が甲第3号証として提出した、本願の優先日よりも前に頒布された刊行物である、米国特許第3975791号明細書には、図面とともに次の事項が記載されている(和訳は当審による)。
(3-a)「A piece of furniture has a door or panel swingably mounted by means of a hinge. An elongated biased stud is mounted on a wall of the furniture piece pivotable in such manner that its free end engages the hinge and urges the door to closed position only during the initial increment of the door's movement to open position and the final increment of the door's movement to closed position.」(要約;家具の一片は、ヒンジによって揺動可能に設置されたドアまたはパネルを有している。延設されバイアスされるスタッドは、その自由端が、ドアの開き位置への動作の初期段階およびドアの閉じ位置への動作の最終段階の間だけヒンジに係合してドアを閉じ位置に付勢するような態様で旋回可能に、家具片の壁上に設置されている。)
(3-b)「As FIGS.1 and 2 show, the hinge strap 1 is provided with a depression 19 in which the head of screw 18 can become lodged. FIG.1 shows clearly that as the door 7 is moved from closed towards open positon, the movement will be resisted in its initial phase by the fact that the head of screw 18 is lodged in recess 19, with the result that member 10 urges door 7 to closed position.」(第2欄第58?64行;図1及び2に図示されているように、ヒンジストラップ1は、ネジ18の頭を引っ掛けることが可能なくぼみ19に備え付けられている。図1から明らかなように、ドア7は閉じた位置から開いた位置へ動く時に、その動きは、ネジ18の頭がくぼみ19に引っ掛かっているという事実により、第1位相において抵抗するその結果、部材10はドア7を閉じた位置に推し進める。)

2.対比・判断
(1)訂正発明1について
訂正発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明でいう「ハウジング4」は、訂正発明1でいう「蝶番カップ」に相当し、以下同様に、「ヒンジアーム7」は「蝶番アーム」に、「制動装置10」は「流体ダンパー」に、「シリンダー12」は「流体ダンパーのハウジング」に、「ピストンロッド9」は「流体ダンパーのスライダー」に、「家具用ヒンジ」は「蝶番」に、それぞれ相当する。
したがって、訂正発明1と甲1発明は、訂正発明1の表記にしたがえば、
「蝶番カップと、
前記蝶番カップが、開いた位置と閉じた位置間で蝶番アームに対して旋回動作するように、前記蝶番カップに枢動可能に接続される前記蝶番アームと、
前記蝶番アームに取り付けられる流体ダンパーのハウジングと、
流体ダンパーのスライダーとを含む流体ダンパーと、からなる蝶番。」である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
訂正発明1では、流体ダンパーのハウジングが「蝶番アームの外側から取り付けられ」、さらに、流体ダンパーのスライダーが「蝶番アームの長手方向に沿って配置されている」と共に「蝶番アームの長手方向に沿ってスライド可能である」のに対して、甲1発明では、そのように取り付けられていない点。

[相違点2]
訂正発明1では、流体ダンパーのスライダーが「蝶番カップが前記閉じた位置に配置されるときに前記蝶番カップ又は前記蝶番カップに接続したドアに接触するように配置される」のに対して、甲1発明では、そのように配置されていない点。

まず、相違点1について検討する。甲第2号証には、ドア閉め緩衝器具40のシリンダー41の後端が第1ヒンジ片10に回動可能に連結されている点が記載されている(記載事項(2-a)参照)。甲第2号証における「ドア閉め緩衝器具40」は、訂正発明1でいう「流体ダンパー」に相当し、以下同様に、「第1ヒンジ片10」は「蝶番アーム」に、「シリンダー41」は「流体ダンパーのハウジング」に、「ピストン44」は「流体ダンパーのスライダー」に、それぞれ相当するから、甲第2号証には、流体ダンパーのハウジングが蝶番アームに取り付けられている点が記載されているといえる。しかし、シリンダー41は、軸50を介して第1ヒンジ片10に回動可能に連結される構成であることから、ピストン44が往復運動を行う際には、シリンダー41が回動することとなるため、ピストン44(流体ダンパーのスライダー)が第1ヒンジ片10(蝶番アーム)の長手方向に沿って配置されているとはいえず、また、ピストン44(流体ダンパーのスライダー)が第1ヒンジ片10(蝶番アーム)の長手方向に沿ってスライド可能であるともいえない。
また、甲第3号証には、スタッド部材10について記載されており、このスタッド部材はドアのヒンジ部分に設けられた付勢手段であることから、訂正発明1でいう「流体ダンパー」に一応相当している。しかし、上記記載事項(3-a)、(3-b)及び図1、2を参照すれば、甲第3号証のスタッド部材は、ドアを閉じた位置に付勢するものであり、ドアを閉じ位置に保持することを目的とするものである。これに対して、訂正発明1の「流体ダンパー」及び甲1発明の「制動装置」は、ドアを閉じた位置に付勢するものではなく、ドアの閉じ動作を減衰するものである。特に、訂正発明1の「流体ダンパー」は、図4を参照すれば、ドアを閉じた位置ではなく開いた位置へと付勢するものとなっており、その付勢方向は、甲第3号証のスタッド部材とは反対方向といえる。したがって、訂正発明1の「流体ダンパー」及び甲1発明の「制動装置」は、その目的も機能も甲第3号証のスタッド部材とは異なるものであるから、甲第3号証に記載された技術を甲1発明に適用する動機付けが存在するものとはいえない。なお、仮に甲第3号証に記載された技術を甲1発明に適用できたとしても、甲第3号証のスタッド部材の伸縮方向は、ヒンジストラップ1(訂正発明1でいう「蝶番アーム」に相当)の長手方向とは異なっていることから、相違点1にかかる訂正発明1の構成が得られるものではない。

次に、相違点2について検討する。甲第2号証には、ドア閉め緩衝器具40のピストン44の先端が第2ヒンジ片20の突出棒21に関節手段22により連結されている点が記載されている(記載事項(2-a)参照)。訂正発明1では、流体ダンパーのスライダーが「蝶番カップが前記閉じた位置に配置されるときに前記蝶番カップ又は前記蝶番カップに接続したドアに接触する」のに対して、甲第2号証におけるドア閉め緩衝器具40のピストン44(訂正発明1でいう「流体ダンパーのスライダー」に相当)は、その先端が第2ヒンジ片20の突出棒21に関節手段22により連結されていることから、ドアの開閉状態に関わらず常に連結されているものであり、訂正発明1でいう「接触」とは異なるものである。特に、本件特許の課題が、「そのときどきの選択により、そしてまた後付けとして、蝶番にダンパー装置を設けることができるようにすること」(段落【0008】参照)である点を踏まえれば、ダンパー装置の取り付け取り外しの利便性からみて、「連結」と「接触」とは、相当程度の差異があるといえる。
また、甲第3号証については、上記のとおり、甲第3号証に記載された技術を甲1発明に適用する動機付けが存在するものとはいえない。

したがって、相違点1及び相違点2について当業者が容易に想到し得たということができないから、訂正発明1は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)訂正発明2ないし訂正発明12について
訂正発明2ないし訂正発明12は、訂正発明1の下位概念にあたるものであるから、上記(1)と同様の理由により、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
上記(1)において検討した相違点1及び相違点2に係る構成については、甲第4号証及び周知例1?3にも記載されておらず、甲第1号証ないし甲第4号証及び周知例1?3に記載の発明から当業者が容易に発明できたものであるともいえない。

3.請求人の主張に対して
請求人は口頭審理において、「蝶番アームの外側から取り付けられる流体ダンパーのハウジング」との訂正発明1における要件について、実質的には「外側に取り付けられている」と同意語と解され、一部分が外側に取り付けられている構成も含めて広い概念の構成が包含されている旨を主張し、さらに「外側に、どのような手段によるか否かは別として、容易に取り外せない状態」となっていることが必要かつ十分条件である旨も主張している。しかし、訂正発明1における「外側から取り付けられる」は、語句そのままの意味で捉えるべきであり、さらに、本件特許の課題が、「そのときどきの選択により、そしてまた後付けとして、蝶番にダンパー装置を設けることができるようにすること」(段落【0008】参照)である点を踏まえれば、ダンパー装置の取り付け取り外しの利便性からみて、「容易に取り外せない状態」という意味に解釈することは適当とは認められないから、請求人の上記主張は採用できない。
また、請求人は口頭審理において、訂正発明1における流体ダンパーのスライダーが蝶番アームの長手方向に沿って配置されていると共に蝶番アームの長手方向に沿ってスライド可能である点及び、流体ダンパーのスライダーが蝶番カップが閉じた位置に配置されるときに蝶番カップに接続したドアに接触するように配置される点について、従来周知の構成である旨を主張し、本件明細書の段落【0007】の記載をその根拠とし、当該記載にない構成については設計的事項である旨を主張している。しかし、この主張は、請求の理由の要旨を変更するものであって、かつ、上記の点は訂正前の請求項6及び13に実質的に記載されており訂正請求に起因して必要となったものとも認められないから、請求人の上記主張は採用できない。なお、本件明細書の段落【0007】の記載を参照しても、ダンパー装置が蝶番と別個独立のものとして取り付けられることが従来周知であったことが記載されているだけであって、この記載と甲第1号証ないし甲第3号証をあわせて考慮したとしても、訂正発明1は当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、訂正発明1ないし訂正発明12は、甲第1号証ないし甲第4号証及び周知例1?3に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。また、他に、本件特許が特許法第29条第2項の規定に違反してなされたとする理由も見あたらない。したがって、本件特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
蝶番
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蝶番カップと、
前記蝶番カップが、開いた位置と閉じた位置間で蝶番アームに対して旋回動作するように、前記蝶番カップに枢動可能に接続される前記蝶番アームと、
前記蝶番アームの外側から取り付けられる流体ダンパーのハウジングと、前記蝶番カップが前記閉じた位置に配置されるときに前記蝶番カップ又は前記蝶番カップに接続したドアに接触するように配置される前記流体ダンパーのスライダーとを含む流体ダンパーと、
からなり、前記流体ダンパーのスライダーは、前記蝶番アームの長手方向に沿って配置されていると共に前記蝶番アームの長手方向に沿ってスライド可能である、ことを特徴とする蝶番。
【請求項2】
前記蝶番アームは、中央板及び2つの側面板によりU字型断面をなし、
前記流体ダンパーのハウジングは、前記中央板の外面の上に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の蝶番。
【請求項3】
前記蝶番アームは、開口部を有し、前記流体ダンパーは、前記蝶番アームの前記開口部に延長する固定用突起を有することを特徴とする請求項1又は2記載の蝶番。
【請求項4】
前記固定用突起は、弾性変形可能なフックであることを特徴とする請求項3記載の蝶番
【請求項5】
前記固定用突起は、弾性変形可能なホゾであることを特徴とする請求項3記載の蝶番。
【請求項6】
前記スライダーは、前記蝶番カップが閉じた位置のとき、前記蝶番カップに接触するように作動することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の蝶番。
【請求項7】
前記蝶番カップは、継手を備えており、前記蝶番カップが閉じた位置のとき、スライダーが前記継手に接触するように作動することを特徴とする請求項6記載の蝶番。
【請求項8】
前記流体ダンパーは、工具を使用することなく、前記蝶番アームに固定可能であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の蝶番。
【請求項9】
前記流体ダンパーは、線形ダンパーを備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の蝶番。
【請求項10】
前記流体ダンパーは、回転式ダンパーであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の蝶番。
【請求項11】
前記流体ダンパーは、空気式ダンパーであることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の蝶番。
【請求項12】
前記流体ダンパーは、液圧式ダンパーであることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の蝶番。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家具のための次のような蝶番、すなわち、蝶番レバーなどを介してドア側の蝶番部品たとえば蝶番カップと連結された蝶番アームと、ハウジングおよび作動部品を備える流体式ダンパーとを持つ蝶番に関する。
【0002】
本発明はさらに、この種の蝶番とともに使用するためのダンパーにも関する。
【0003】
【従来の技術】
家具のドアまたは抽斗が激しい勢いで閉まるのを防止するダンパー装置を、家具のドアまたは抽斗に取り付けることが知られている。
【0004】
DE2539954からは、蝶番部品に弾性変形可能なダンパーエレメントを取り付けることが知られている。この種の弾性エレメントの減衰作用は非常にわずかしかない。
【0005】
従って最近では流体式ダンパーが使用されている。空気圧式または液圧式ダンパーとして作ることができる線形ダンパーのほかに、いわゆる回転式ダンパーまたは回転ピストンダンパーを備えるダンパー装置も知られるようになった。
【0006】
この種の回転式ダンパーは一般に、回転しないように固定された外側のハウジングを備え、その中に回転子を取り付けている。ハウジングの中には、ダンパー液たとえばシリコン油が入っている。家具部品の運動が激しすぎるとき、ダンパー液またはダンパー流体によって、この運動に対する非常に良好な減衰作用が得られる。
【0007】
従来の技術では、この種のダンパー装置は、別個に独立した補助的な装置として家具に取り付けられているか、蝶番に内蔵されているかのどちらかであった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、冒頭に挙げた種類の蝶番と、その種の蝶番のためのダンパーとを改善して、そのときどきの選択により、そしてまた後付けとして、蝶番にダンパー装置を設けることができるようにすることである。
【0009】
本発明の上記の課題は、流体式ダンパーのハウジングを外部から蝶番アームに載せ、ドアの作動部品、またはドア側蝶番部品の作動部品が作用することによって解決される。
【0010】
この蝶番に、その閉動作の力がダンパーの作用よりも大きいような閉動作機構を設ければ有利である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の1つの実施形態は、その流体式ダンパーのハウジングに保持用突起を少なくとも1つ設け、この突起を蝶番アームの開口部に噛み込ませることを意図する。この保持用突起は、弾性的なフックまたは弾性変形可能なホゾとして作られている。
【0013】
下記に本発明の1つの実施形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0014】
本発明の蝶番は、在来型の場合と同様、第一の蝶番部品をなす蝶番カップ1と、第二の蝶番部品をなす蝶番アーム2を備える。蝶番カップ1と蝶番アーム2は、外側の蝶番レバー3と内側の蝶番レバー4を介してたがいに連結され、これらの蝶番レバーは蝶番軸5および6に取り付けられている。蝶番アーム2は、1つの中央板2’と2つの側面板2”により、U字形の断面に作られている。
【0015】
蝶番アーム2は、すき間調節ネジによりスペーサーに取り付けられている。蝶番アーム2とスペーサーの間にはもう1つ、蝶番アーム3を奥行き方向に調節する調節ディスクまたは調節ネジが設けられている。
【0016】
蝶番カップ1は家具ドア12の穴に挿入でき、他方で蝶番アーム2はスペーサーとともに、ベースプレート10に取り付けられ、このベースプレートは家具側壁11に固定され、好ましくはネジ止めされている。
【0017】
蝶番アーム2の中央板2’は1つの開口部7を備え、この開口部からたとえばドライバーを、スペーサーまたはベースプレート10の調節ネジに噛み込ませることができる。
【0018】
ここまで説明した蝶番の部品は、従来の技術に対応するものである。この種の蝶番は、本出願者のたとえばUSPS6032333に詳細に説明されている。
【0019】
ここでこの種の蝶番に、本発明による流体式ダンパー20を追加装備することができる。この流体式ダンパー20は、1つの固定用突起8を持つハウジング13を備える。流体式ダンパー20は蝶番2の中央板2’に載せられるが、その際ホゾ状の固定用突起8が蝶番2の開口部7に押し込まれる。固定用突起8は弾性変形可能なものであれば有利であり、それにより開口部7に挟み込まれて保持される。固定用突起は、1つまたは2つの弾性フック21として作ることもでき、これらは開口部7に差し込まれ、中央板2’にパチンと噛み込む。
【0020】
ここに示す実施形態では、ハウジング13にピニオンつきの回転式ダンパー14を備え、このピニオンは作動部品をなすスライダー15のラック面16と噛み合う。スライダー15はハウジング13内にスライド可能な状態で取り付けられ、スプリング17の作用を受け、このスプリングはスライダー15をスタンバイポジションに押しつけている。ドア12が閉じられると、蝶番カップ1の継手18がスライダー15を押し、これによりスライダーはハウジング13に差し込まれる。その際回転式ダンパー14が回転し、ドア12の閉動作が減衰される。
【0021】
ドア12を開けると、スプリング17はスライダー15をふたたび図7に示したスタンバイポジションに押しつける。
【0022】
しかし回転式ダンパーの代わりに、線形にスライドするピストンを持つ流体式ダンパーを用いることができる。この流体式ダンパーは、空気圧式ダンパーでも液圧式ダンパーでもどちらでもよい。
【0023】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蝶番の見取り図である。
【図2】本発明の蝶番からダンパーを取り外した見取り図である。
【図3】図3aおよび3bは、ダンパーの側面図である。
【図4】図3のダンパーをI-I線で切った断面図である。
【図5】図3のダンパーをII-II線で切った断面図である。
【図6】本発明の蝶番が閉じた位置にあるときの側面図である。
【図7】蝶番が一部開いたときの側面図である。
【符号の説明】
1 蝶番カップ
2 蝶番アーム
2’ 中央板
2” 側面板
3 蝶番レバー
4 蝶番レバー
5,6 蝶番軸
7 開口部
8 固定用突起
10 ベースプレート
11 家具側壁
12 家具ドア
13 ハウジング
14 回転式ダンパー
15 スライダー
16 ラック面
17 スプリング
18 継手
20 流体式ダンパー
21 弾性フック
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2011-07-05 
出願番号 特願2001-291244(P2001-291244)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (E05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 引地 麻由子  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 田口 傑
小関 峰夫
登録日 2009-03-27 
登録番号 特許第4281040号(P4281040)
発明の名称 蝶番  
代理人 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所  
代理人 岩堀 邦男  
代理人 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所  
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