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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1248551
審判番号 不服2009-18827  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-05 
確定日 2011-12-15 
事件の表示 特願2003-550057「装置機器内へのソフトウエアモジュールのインストール方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月12日国際公開、WO03/48932、平成17年 4月28日国内公表、特表2005-512189〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、
2002年9月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年11月30日、独国)を国際出願日とする出願であって、
平成16年5月31日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面、国際出願日における明細書、請求の範囲の翻訳文が提出され、
平成17年9月12日付けで審査請求がなされ、
平成19年10月26日付けで拒絶理由通知(同年11月2日発送)がなされ、
平成20年4月2日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
平成21年5月27日付けで拒絶査定(同年6月4日発送)がなされ、
同年10月5日付けで審判請求がされると共に、手続補正書が提出されたものである。
なお、平成22年2月4日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、
同年12月22日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(同年12月24日発送)がなされ、これに対して
平成23年6月24日付けで回答書が提出されている。


2.本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」と言う。)は、上記平成21年10月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「装置機器内へのソフトウエアモジュールのインストール方法であって、
前記装置機器はプロセッサ(4)と、メモリ(5)と、通信用インターフェース(1,2)を有し、当該装置機器内ではプロセッサ(4)上でオペレーションシステム(13)と、システムに依存しないソフトウエア環境(10)が動作しており、
前記メモリ(5)内には、オペレーションシステム(13)とソフトウエア環境(10)とインストレーションインターフェース(11)とインストレーションマネージャ(14)が格納されており、さらに
前記オペレーションシステム(13)へのソフトウエアモジュールのインストールが前記オペレーションシステム(13)上で構築されるソフトウエア環境(10)を介して達成される形式のインストール方法において、
前記インストレーションインターフェース(11)がソフトウエア環境(10)内に含まれ、前記インストレーションマネージャ(14)はオペレーションシステム(13)内に含まれており、
前記ソフトウエア環境(10)は、前記オペレーションシステム(13)内のインストレーションマネージャー(14)に対するインストレーションインターフェース(11)を、ソフトウエアモジュールのインストールのために利用し、その際には前記インストレーションインターフェース(11)がオペレーションシステム(13)内のインストレーションマネージャ(14)との接続を形成し、それによって当該インストレーションインターフェース(11)を介して、ソフトウエアモジュールと少なくとも1つのインストレーションコマンドを有するファイルが転送され、
それに続いてオペレーションシステム(13)内のインストレーションマネージャー(14)がソフトウエアモジュールのインストールを実行するようにしたことを特徴とする方法。」


3.先行文献

(1)引用文献
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由の一つである上記平成19年10月26日付けの拒絶理由通知書の理由1において引用された下記引用文献には、下記の引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<引用文献>特開平10-222349号公報(平成10年8月21日出願公開)

<引用文献記載事項1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】任意のオペレーティング・システムを有するコンピュータ・システムにホスト機械コードのアプリケーションをインストールする方法であって、
少なくとも一つのオペレーティング・システム・インストール関数について、複数のオペレーティング・システムのためのオペレーティング・システム依存性インストール・コマンドを提供するステップと、
オペレーティング・システムを判定するステップと、
前記判定されたオペレーティング・システムのオペレーティング・システム依存性インストール・コマンドを使用して、少なくとも一つのインストール関数を実行するステップと、
コンピュータが、選択されたインストール・コマンドを実行し、オペレーティング・システム・インストール関数を前記アプリケーションに対して実施することを可能にするステップと、を含むことを特徴とする方法。」

<引用文献記載事項2>
「【請求項2】コンピュータ上で動作する任意のオペレーティング・システムにホスト機械コードのアプリケーションをインストールするためのシステムであって、
前記コンピュータによって使用されるオペレーティング・システムを判定するための手段と、
共通のオペレーティング・システム・インストール関数を有する、それぞれが異なるオペレーティング・システムのための、オペレーティング・システム依存性インストール・コマンドのセットと、
判定された前記オペレーティング・システムに対応するコマンドを前記セットから選択するための手段と、を含み、前記コンピュータが前記選択されたコマンドを実行し、オペレーティング・システム・インストール関数を前記アプリケーションに対して実行することができることを特徴とするシステム。
<・・・中略・・・>
【請求項10】前記コンピュータがホスト機械環境を含む請求項2乃至9のいずれか1項記載のシステム。
【請求項11】前記ホスト機械環境がJAVA仮想機械である請求項10記載のシステム。
【請求項12】前記ホスト機械コードがJAVAである請求項2乃至11のいずれか1項記載のシステム。」


<引用文献記載事項3>
「【0002】
【従来の技術】コンピュータ・アプリケーションがより複雑になるにつれ、アプリケーションに伴うファイルの数が増し、インストールには、より多数のファイルをある場所から別の場所にコピーすることが必要になる。コンピュータ・オペレーティング・システムもまた、特にグラフィカル・ユーザ・インタフェース式のものは、より複雑になった。システム固有のインストールの際には、いくつかのディレクトリを更新したり、フォルダを作成したり、アイコンを作成したり、経路定義を変更したり、オペレーティング・システムのレジスタを編集したりして初めて、アプリケーションがオペレーティング・システムと完全に統合することができる。以前には、コンポーネントを手作業でインストールし、オペレーティング・システムの変数およびディレクトリをそれに応じて変更したものである。」

<引用文献記載事項4>
「【0027】
【発明の実施の形態】本発明を実行することができる典型的なハードウェア環境は、中央処理装置(CPU)(10)を含み、このCPUは、出力システム(12)と、入力システム(14)と、記憶装置(16)と、通信システム(18)と、メモリ(20)とをそれに接続された状態で有している(図1)。出力システム(12)は通常、表示装置(VDU)またはモニタおよびプリンタを含み、入力システム(14)は通常、キーボードおよびマウス装置を含む(図示せず)。記憶装置(16)は通常、磁気ディスク・ドライブおよびCD-ROMディスク・ドライブを含み、メモリ(20)は通常、キャッシュ・メモリ、システム・メモリおよびディスプレー・メモリを含む。通信システム(18)は、モデムまたは直接接続を使用することにより、LAN、WANまたはインターネットを介して他のコンピュータのネットワークへの接続を提供する。」

<引用文献記載事項5>
「【0028】本発明を実行することができる典型的なシステム環境は、オペレーティング・システム層(22)と、JAVA仮想機械(24)と、アプリケーション(26)とを有するCPU(10)を含む(図2)。CPUは、その最下レベルの処理で機械コード命令を処理する。通常、起動時に、CPU(10)は、オペレーティング・システム・コードを記憶装置(16)からメモリ(20)にロードするよう指示する命令を処理する。オペレーティング・システムは、CPU(10)の機械コード言語を含み、そのオペレーティング・システムに固有のより高レベルのコードを解釈し、CPU(10)に機械コードで命令する。WINDOWS 95およびOS/2がオペレーティング・システムの例である。オペレーティング・システム(22)よりも上で動作するJAVA仮想機械(24)は、記憶装置からメモリにロードされる。JAVA仮想機械(24)はまた、CPU(10)の機械コードを含み、より高レベルのJAVAコードを解釈するためのものであり、オペレーティング・システム・コマンドを使用して特定のオペレーティング・システムに命令する。JAVAアプリケーション(26)は、記憶装置(16)からロードされるか、通信システム(18)によってCPU(10)に接続されたネットワーク(たとえばインターネット)上の遠隔コンピュータからロードされる。JAVAアプリケーション(26)は、通常は高レベル命令の形態にある、ユーザからの命令をキーボードまたはマウスでの対話を通じて受け取る。JAVAアプリケーションは、これらの命令を処理のためにJAVA仮想機械に渡し、JAVA仮想機械が命令をより低レベルのフォーマットでオペレーティング・システムに渡し、オペレーティング・システムがCPU(10)に機械コードで命令し、処理からの出力があるならばそれが通常モニタ上に表示される。」

<引用文献記載事項6>
「【0032】本発明の本実施態様は、JAVA動作可能オペレーティング・システム(24)(JAVA仮想機械)によって解釈することができるアプリケーション・コード(この例ではJAVA)と同じ機械コードを含むインストール・ソフトウェア(40)(JAVAインストーラ)を使用する(図5)。データはまた、コマンド関数ではなくオペレーティング・システムによってグループ分けすることもできる。JAVAインストーラ(40)は、命令またはコマンド(F1[OS/2]およびF1[Win95]、F2[OS/2]およびF2[Win95]、F3[OS/2]およびF3[Win95])のいくつかのグループを有するデータ・コンポーネント(50)を有している。各グループは、一つのオペレーティング・システム・インストール関数のための、それぞれが異なるオペレーティング・システムに対応する同等なコマンドを含む。この場合、関数ごとに、一つはOS/2用の、もう一つはWindows用の、二つのコマンドがある。このような手続きは、オペレーティング・システム・レジスタの編集(F1)、プログラム・グループおよびフォルダの作成(F2)ならびにデスクトップ・インストール(F3)を含むであろう。JAVAインストーラ(40)は、どのオペレーティング・システム(22)がCPU(10)上で動作しているのかを検出するディテクタ・コンポーネント(F2)を含む。この実施態様では、ディテクタ(52)は、オペレーティング・システムを判定するJAVAルーチンに対する呼び出しである。このようなルーチンは、大部分のプラットフォームに関してJAVA仮想機械(24)に含まれており、呼び出されると、使用中のオペレーティング・システム(10)の名称を返す。JAVAインストーラはまた、スクリプト・リーダ・コンポーネント(54)およびインストール・スクリプト(34)を含む。インストール・スクリプト(34)は、特定のインストール関数、たとえばF1、F2またはF3に対応する汎用インストール・コマンドを含む。図5に示すスクリプトは、関数のシーケンス(F1、F1、F3、F1、F2、F3)である。
【0033】JAVAインストーラ(40)はまた、ディテクタ・コンポーネント(52)、スクリプト・リーダ(54)およびデータ・コンポーネント(50)に接続されたプロセッサ・コンポーネント(56)を含む。JAVAインストーラはさらに、プロセッサに接続された、インストール関数をJAVA仮想機械(24)に通信するためのイネーブラ・コンポーネント(58)を含む。」

<引用文献記載事項7>
「【0034】JAVAインストーラの実行のための典型的なシステムは、486マイクロプロセッサベースのパーソナル・コンピュータに載せたOS/2オペレーティング・システム上で動作するJAVA仮想機械であることができる。JAVA仮想機械環境のユーザは、JAVAインストーラおよびアプリケーションを含むディスクまたはCDを装填し、通常は「setup.class」とラベルを付された実行可能ファイルを実行する。セットアップ・ファイルは、JAVAインストーラおよびアプリケーションを圧縮フォーマットで含む。実行すると、二つのファイルが解凍され、分けられ、ハード・ドライブに保存され、JAVAインストーラが起動する。あるいはまた、セットアップ・ファイルは、インストーラおよびアプリケーションを、圧縮されていない別々のファイルとして含んでもよい。」

<引用文献記載事項8>
「【0035】JAVAインストーラ(40)が起動すると、ディテクタ(52)が、どのオペレーティング・システム(22)がCPU(10)上で動作しているかを判定し、その結果(この場合はOS/2)をプロセッサ・コンポーネント(56)に渡す。スクリプト・リーダ(54)がインストール・スクリプト(34)から第一の関数(この場合はF1「レジスタを編集」)を読み、それをプロセッサ・コンポーネント(56)に渡す。プロセッサ・コンポーネント(56)は、スクリプト・リーダ(54)およびディテクタ(52)から渡された結果を使用し、データ・コンポーネント(50)の中から、対応するオペレーティング・システム依存性コマンド(F1(OS/2)→)を選択し、それをイネーブラ・コンポーネント(58)に渡す。イネーブラ・コンポーネント(58)は、オペレーティング・システム依存性コマンドをJAVA仮想機械に渡し、この機械がそのコマンドをオペレーティング・システム(22)に渡す。すると、オペレーティング・システム(22)中のオペレーティング・システム・インストール・ルーチン(→F1(OS/2))が起動して、オペレーティング・システム・レジスタを編集する。」

<引用文献記載事項9>
「【0036】インストール・スクリプト(34)中のその後の関数についても同様な手続きが採用されて、最終的にすべてのインストール関数が処理され、種々のインストール関数、たとえば「フォルダを開く」、「プログラム・グループを作成する」、「レジスタを編集する」がアプリケーション(26)上でオペレーティング・システム(22)によって実行される。」


(2)参考文献
本願の優先日より前に頒布された刊行物である下記参考文献には、下記参考文献記載事項が記載されている。

<参考文献>
特開平07-325709号公報(平成7年12月12日出願公開)

<参考文献記載事項10>「【請求項1】 複数のパッケージから構成されているオペレーティングシステムをディスク装置にインストールするインストール方式において、
対話形式でインストールを行うか非対話形式でインストールを行うかをユーザに問い合わせるとともに各パッケージのインストールに必要となるパラメータをユーザに一括して問い合わせるパラメータ問合せ手段と、このパラメータ問合せ手段により問い合わされたパラメータを格納するパラメータファイルを作成するパラメータファイル作成手段と、パッケージのインストールコマンドを発行するパッケージインストール手段とを含むインストールツールと、
前記パラメータファイルを取り込んでパラメータを設定するパラメータファイル取込み手段と、このパラメータファイル取込み手段により設定されたパラメータ中の対話形式パラメータを参照して対話形式でインストールを行うか非対話形式でインストールを行うかを判定する対話形式/非対話形式判定手段と、この対話形式/非対話形式判定手段により対話形式でインストールを行うと判定された場合にユーザにパラメータを問い合わせて設定するパラメータ問合せ手段とを含むパラメータ設定処理部と、
前記パラメータファイル取込み手段あるいは前記パラメータ問合せ手段により設定されたパラメータに基づいてパッケージをディスク装置に転送するファイル転送手段を含むファイル転送処理部とを有することを特徴とするオペレーティングシステムの非対話形式インストール方式。
【請求項2】 前記パラメータファイルがパラメータに値を代入する形式を有していて、複数のパッケージで共通するパラメータについては1パッケージ分のパラメータだけを格納している請求項1記載のオペレーティングシステムの非対話形式インストール方式。
【請求項3】 前記インストールツールのパラメータ問合せ手段が、各パッケージのインストールで必要となるパラメータ以外のパラメータも問い合わせる請求項1記載のオペレーティングシステムの非対話形式インストール方式。」


4.引用発明

(1)引用文献には上記引例記載事項1のとおりの
「任意のオペレーティング・システムを有するコンピュータ・システムにホスト機械コードのアプリケーションをインストールする方法であって、
少なくとも一つのオペレーティング・システム・インストール関数について、複数のオペレーティング・システムのためのオペレーティング・システム依存性インストール・コマンドを提供するステップと、
オペレーティング・システムを判定するステップと、
前記判定されたオペレーティング・システムのオペレーティング・システム依存性インストール・コマンドを使用して、少なくとも一つのインストール関数を実行するステップと、
コンピュータが、選択されたインストール・コマンドを実行し、オペレーティング・システム・インストール関数を前記アプリケーションに対して実施することを可能にするステップと、を含」む方法が記載されている。

(2)さらに、上記引用文献記載事項2の「前記コンピュータがホスト機械環境を含む」「前記ホスト機械環境がJAVA仮想機械である」「前記ホスト機械コードがJAVAである」との記載等からみて、
「前記コンピュータ・システムがホスト機械環境を含み、該ホスト機械環境がJAVA仮想機械であり、前記ホスト機械コードがJAVAであ」ることも記載されていると言える、

(3)上記引用文献記載事項4にあるように、「本発明を実行することができる典型的なハードウェア環境」(すなわち上記「コンピュータ・システム」の「ハードウェア環境」)は、「中央処理装置(CPU)(10)を含み、このCPUは、出力システム(12)と、入力システム(14)と、記憶装置(16)と、通信システム(18)と、メモリ(20)とをそれに接続された状態で有している」ものである。
すなわち、「前記コンピュータ・システムのハードウェア環境は、CPUを含み、このCPUは、出力システムと、入力システムと、記憶装置と、通信システムと、メモリとをそれに接続されて」いると言える。

(4)さらに、上記引用文献記載事項4の「記憶装置(16)は通常、磁気ディスク・ドライブおよびCD-ROMディスク・ドライブを含み」との記載から、「該記憶装置は、磁気ディスク・ドライブおよびCD-ROMディスク・ドライブを含」むと言える。

(5)そして、上記引用文献記載事項5の「通常、起動時に、CPU(10)は、オペレーティング・システム・コードを記憶装置(16)からメモリ(20)にロードするよう指示する命令を処理する。オペレーティング・システムは、CPU(10)の機械コード言語を含み、そのオペレーティング・システムに固有のより高レベルのコードを解釈し、CPU(10)に機械コードで命令する。」との記載から、上記「コンピュータ・システム」は
「前記CPUが、オペレーティング・システム・コードを前記記憶装置から前記メモリにロードするよう指示する命令を処理し、前記オペレーティング・システムが、前記CPUの機械コード言語を含み、そのオペレーティング・システムに固有のより高レベルのコードを解釈し、前記CPUに機械コードで命令」するものであると言える。

(6)さらに、上記引用文献記載事項5の「オペレーティング・システム(22)よりも上で動作するJAVA仮想機械(24)は、記憶装置からメモリにロードされる。JAVA仮想機械(24)はまた、CPU(10)の機械コードを含み、より高レベルのJAVAコードを解釈するためのものであり、オペレーティング・システム・コマンドを使用して特定のオペレーティング・システムに命令する。」との記載から、上記「コンピュータ・システム」は、
「前記オペレーティング・システム上で動作する前記JAVA仮想機械が、前記記憶装置からメモリにロードされ、前記JAVA仮想機械は前記オペレーティング・システム・コマンドを使用して特定のオペレーティング・システムに命令する」ものであると言える。

(7)上記引用文献記載事項6の「JAVA動作可能オペレーティング・システム(24)(JAVA仮想機械)によって解釈することができるアプリケーション・コード(この例ではJAVA)と同じ機械コードを含むインストール・ソフトウェア(40)(JAVAインストーラ)を使用する(図5)。」との記載から、上記「コンピュータ・システム」は、
「前記JAVA仮想機械によって解釈することができるJAVAの機械コードを含むインストール・ソフトウェアであるJAVAインストーラを使用するもので」あると言える。

(8)また、上記引用文献記載事項6の
「JAVAインストーラ(40)は、命令またはコマンド(F1[OS/2]およびF1[Win95]、F2[OS/2]およびF2[Win95]、F3[OS/2]およびF3[Win95])のいくつかのグループを有するデータ・コンポーネント(50)を有している。」
「JAVAインストーラ(40)は、どのオペレーティング・システム(22)がCPU(10)上で動作しているのかを検出するディテクタ・コンポーネント(F2)を含む。」
「JAVAインストーラはまた、スクリプト・リーダ・コンポーネント(54)およびインストール・スクリプト(34)を含む。インストール・スクリプト(34)は、特定のインストール関数、たとえばF1、F2またはF3に対応する汎用インストール・コマンドを含む。」
「JAVAインストーラ(40)はまた、ディテクタ・コンポーネント(52)、スクリプト・リーダ(54)およびデータ・コンポーネント(50)に接続されたプロセッサ・コンポーネント(56)を含む。JAVAインストーラはさらに、プロセッサに接続された、インストール関数をJAVA仮想機械(24)に通信するためのイネーブラ・コンポーネント(58)を含む。」
との記載から、
「前記JAVAインストーラは、命令またはコマンドのいくつかのグループを有するデータ・コンポーネントと、どのオペレーティング・システムが前記CPU上で動作しているのかを検出するディテクタ・コンポーネントと、スクリプト・リーダ・コンポーネントと、プロセッサ・コンポーネントと、インストール関数をJAVA仮想機械に通信するためのイネーブラ・コンポーネントとインストール・スクリプトを含」むものであると言える。

(9)上記引用文献記載事項6の「このような手続きは、オペレーティング・システム・レジスタの編集(F1)、プログラム・グループおよびフォルダの作成(F2)ならびにデスクトップ・インストール(F3)を含むであろう。」「インストール・スクリプト(34)は、特定のインストール関数、たとえばF1、F2またはF3に対応する汎用インストール・コマンドを含む。」との記載から、「前記インストール・スクリプトは、特定のインストール関数、たとえばオペレーティング・システム・レジスタの編集、フォルダの作成またはデスクトップ・インストール等に対応する汎用インストール・コマンドを含」ものであると言える。

(10)上記引用文献記載事項7の「JAVA仮想機械環境のユーザは、JAVAインストーラおよびアプリケーションを含むディスクまたはCDを装填し、通常は「setup.class」とラベルを付された実行可能ファイルを実行する。セットアップ・ファイルは、JAVAインストーラおよびアプリケーションを圧縮フォーマットで含む。実行すると、二つのファイルが解凍され、分けられ、ハード・ドライブに保存され、JAVAインストーラが起動する。あるいはまた、セットアップ・ファイルは、インストーラおよびアプリケーションを、圧縮されていない別々のファイルとして含んでもよい。」との記載から、上記「コンピュータ・システム」は、
「ユーザが、前記JAVAインストーラおよび前記アプリケーションを含むディスクまたはCDを装填し、セットアップ・ファイルを実行すると、前記JAVAインストーラのファイルおよび前記アプリケーションのファイルがハード・ドライブに保存され、このJAVAインストーラが起動」するものであると言える。

(11)上記引用文献記載事項8の「JAVAインストーラ(40)が起動すると、・・・スクリプト・リーダ(54)がインストール・スクリプト(34)から第一の関数(この場合はF1「レジスタを編集」)を読み、それをプロセッサ・コンポーネント(56)に渡す。プロセッサ・コンポーネント(56)は、スクリプト・リーダ(54)およびディテクタ(52)から渡された結果を使用し、データ・コンポーネント(50)の中から、対応するオペレーティング・システム依存性コマンド(F1(OS/2)→)を選択し、それをイネーブラ・コンポーネント(58)に渡す。イネーブラ・コンポーネント(58)は、オペレーティング・システム依存性コマンドをJAVA仮想機械に渡し、この機械がそのコマンドをオペレーティング・システム(22)に渡す。すると、オペレーティング・システム(22)中のオペレーティング・システム・インストール・ルーチン(→F1(OS/2))が起動して、オペレーティング・システム・レジスタを編集する。」との記載から、上記「コンピュータ・システム」は、
「前記JAVAインストーラが起動すると、前記スクリプト・リーダ・コンポーネントが前記インストール・スクリプトから第一のインストール関数を読み、それを前記プロセッサ・コンポーネントに渡し、前記プロセッサ・コンポーネントが前記スクリプト・リーダおよび前記ディテクタから渡された結果を使用し、前記データ・コンポーネントの中から、対応するオペレーティング・システム依存性コマンドを選択し、それを前記イネーブラ・コンポーネントに渡し、前記イネーブラ・コンポーネントが、前記オペレーティング・システム依存性コマンドを前記JAVA仮想機械に渡し、このJAVA仮想機械がそのコマンドを前記オペレーティング・システムに渡すと、前記オペレーティング・システム中のオペレーティング・システム・インストール・ルーチンが起動して、例えば第一のインストール関数が「レジスタを編集」の場合は、オペレーティング・システム・レジスタを編集」するものであると言える。

(12)上記引用文献記載事項9の「インストール・スクリプト(34)中のその後の関数についても同様な手続きが採用されて、最終的にすべてのインストール関数が処理され、種々のインストール関数、たとえば「フォルダを開く」、「プログラム・グループを作成する」、「レジスタを編集する」がアプリケーション(26)上でオペレーティング・システム(22)によって実行される。」との記載から、上記「コンピュータ・システム」は、
「前記インストール・スクリプト中のその後のインストール関数についても同様な手続きが採用されて、最終的にすべてのインストール関数が処理され、「フォルダを開く」、「プログラム・グループを作成する」、「レジスタを編集する」等のコマンドが前記オペレーティング・システムによって実行される」ものであると言える。

(13)以上をまとめると、引用文献には下記の引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「任意のオペレーティング・システムを有するコンピュータ・システムにホスト機械コードのアプリケーションをインストールする方法であって、
少なくとも一つのオペレーティング・システム・インストール関数について、複数のオペレーティング・システムのためのオペレーティング・システム依存性インストール・コマンドを提供するステップと、
オペレーティング・システムを判定するステップと、
前記判定されたオペレーティング・システムのオペレーティング・システム依存性インストール・コマンドを使用して、少なくとも一つのインストール関数を実行するステップと、
コンピュータが、選択されたインストール・コマンドを実行し、オペレーティング・システム・インストール関数を前記アプリケーションに対して実施することを可能にするステップと、を含み(上記(1)より)、
前記コンピュータ・システムがホスト機械環境を含み、該ホスト機械環境がJAVA仮想機械であり、前記ホスト機械コードがJAVAであり(上記(2)より)、
前記コンピュータ・システムのハードウェア環境は、CPUを含み、このCPUは、出力システムと、入力システムと、記憶装置と、通信システムと、メモリとをそれに接続されており(上記(3)より)、
該記憶装置は、磁気ディスク・ドライブおよびCD-ROMディスク・ドライブを含み(上記(4)より)、
前記CPUが、オペレーティング・システム・コードを前記記憶装置から前記メモリにロードするよう指示する命令を処理し、前記オペレーティング・システムが、前記CPUの機械コード言語を含み、そのオペレーティング・システムに固有のより高レベルのコードを解釈し、前記CPUに機械コードで命令し(上記(5)より)、
前記オペレーティング・システム上で動作する前記JAVA仮想機械が、前記記憶装置からメモリにロードされ、前記JAVA仮想機械は前記オペレーティング・システム・コマンドを使用して特定のオペレーティング・システムに命令するものであり(上記(6)より)、
前記JAVA仮想機械によって解釈することができるJAVAの機械コードを含むインストール・ソフトウェアであるJAVAインストーラを使用するものであって(上記(7)より)、
前記JAVAインストーラは、命令またはコマンドのいくつかのグループを有するデータ・コンポーネントと、どのオペレーティング・システムが前記CPU上で動作しているのかを検出するディテクタ・コンポーネントと、スクリプト・リーダ・コンポーネントと、プロセッサ・コンポーネントと、インストール関数をJAVA仮想機械に通信するためのイネーブラ・コンポーネントとインストール・スクリプトを含み(上記(8)より)、
前記インストール・スクリプトは、特定のインストール関数、たとえばオペレーティング・システム・レジスタの編集、フォルダの作成またはデスクトップ・インストール等に対応する汎用インストール・コマンドを含み(上記(9)より)、
ユーザが、前記JAVAインストーラおよび前記アプリケーションを含むディスクまたはCDを装填し、セットアップ・ファイルを実行すると、前記JAVAインストーラのファイルおよび前記アプリケーションのファイルがハード・ドライブに保存され、このJAVAインストーラが起動し(上記(10)より)、
前記JAVAインストーラが起動すると、前記スクリプト・リーダ・コンポーネントが前記インストール・スクリプトから第一のインストール関数を読み、それを前記プロセッサ・コンポーネントに渡し、前記プロセッサ・コンポーネントが前記スクリプト・リーダおよび前記ディテクタから渡された結果を使用し、前記データ・コンポーネントの中から、対応するオペレーティング・システム依存性コマンドを選択し、それを前記イネーブラ・コンポーネントに渡し、前記イネーブラ・コンポーネントが、前記オペレーティング・システム依存性コマンドを前記JAVA仮想機械に渡し、このJAVA仮想機械がそのコマンドを前記オペレーティング・システムに渡すと、前記オペレーティング・システム中のオペレーティング・システム・インストール・ルーチンが起動して、例えば第一のインストール関数が「レジスタを編集」の場合は、オペレーティング・システム・レジスタを編集し(上記(11)より)、
前記インストール・スクリプト中のその後のインストール関数についても同様な手続きが採用されて、最終的にすべてのインストール関数が処理され、「フォルダを開く」、「プログラム・グループを作成する」、「レジスタを編集する」等のコマンドが前記オペレーティング・システムによって実行される(上記(12)より)
方法。」


5.対比
以下に、本願発明と引用発明とを比較する。

(1)引用発明は「任意のオペレーティング・システムを有するコンピュータ・システムにホスト機械コードのアプリケーションをインストールする方法」であるところ、「コンピュータ・システム」は「装置機器」とも言えるものであり、引用発明における「アプリケーション」は「ソフトウエアモジュール」とも言えるものであるから、引用発明も本願発明と同様に「装置機器内へのソフトウエアモジュールのインストール方法」と言えるものである。

(2)上記の如く、引用発明における「コンピュータ・システム」は、本願発明における「装置機器」に対応付けられるものであるところ、前者の「CPU」は後者の「プロセッサ」に相当するものであり、「記憶装置」及び「メモリ」(以下ではこれらをまとめて「記憶手段」と記す。)は後者の「メモリ」に相当すると言える。また、前者の「通信システム」が「インタフェース」を有することは明らかであり、これは後者の「通信用インターフェース」に相当する。
したがって、両者は「プロセッサと、メモリと、通信用インターフェースを有し」ている点で一致すると言える。

(3)引用発明における「オペレーティング・システム」は本願発明における「オペレーションシステム」に対応付けられるものであるところ、前者は「ディテクタ・コンポーネント」によって「前記CPU上で動作しているのかを検出」されると表現されているように、「CPU」上で動作していると言えるものである。
また、引用発明における「JAVA仮想機械」は「ホスト機械環境」に他ならないものであり、本願発明における「ソフトウエア環境」に対応付けられるものである。そして、前者が「システムに依存しない」ものであることもは明らかであり、さらに「オペレーティング・システム上で動作する」ものであるから、これも「CPU」上で動作していると言えるものである。
したがって、引用発明と本願発明とは「当該装置機器内ではプロセッサ上でオペレーションシステムと、システムに依存しないソフトウエア環境が動作して」いる点でも一致すると言える。

(4)引用発明においては、「前記CPUが、オペレーティング・システム・コードを前記記憶装置から前記メモリにロードするよう指示する命令を処理」するとともに、「前記オペレーティング・システム上で動作する前記JAVA仮想機械が、前記記憶装置からメモリにロードされ」るのであるから、引用発明における「オペレーティング・システム」及び「JAVA仮想機械」は、本願発明における「記憶手段」に格納されていると言える。
また、引用発明における「JAVAインストーラ」中の「データ・コンポーネント」「ディテクタ・コンポーネント」「スクリプト・リーダ・コンポーネント」「プロセッサ・コンポーネント」及び「イネーブラ・コンポーネント」(以下、これらをまとめて単に「コンポーネント」と記す。)は、本願発明における「インストレーションインターフェース」(これは、「オペレーションシステム」等と同様に「メモリ」に「格納」されるものであるから、「インタフェース」そのものを意味するのではなく「インタフェース」を実現するためのソフトウェア部品を意味すると解される。)に対応付けられるものであるところ、引用発明においては「ユーザが、前記JAVAインストーラおよび前記アプリケーションを含むディスクまたはCDを装填し、セットアップ・ファイルを実行すると、前記JAVAインストーラのファイルおよび前記アプリケーションのファイルがハード・ドライブに保存され、このJAVAインストーラが起動」するのであるから、引用発明における「コンポーネント」もまた、上記「記憶手段」に格納されていると言える。
また、引用発明における「オペレーティング・システム・インストール・ルーチン」は、本願発明における「インストレーションマネージャ」に対応付けられるものであるところ、前者は「前記オペレーティング・システム中の」ものなのであるから、これも上記「記憶手段」に格納されていると言える。
してみると、引用発明と本願発明とは「前記メモリ内には、オペレーションシステムとソフトウエア環境とインストレーションインターフェースとインストレーションマネージャが格納されて」いる点でも一致すると言える。

(5)引用発明は「任意のオペレーティング・システムを有するコンピュータ・システムにホスト機械コードのアプリケーションをインストールする方法」であり、該「インストール」は「JAVA仮想機械によって解釈することができるJAVAの機械コードを含むインストール・ソフトウェアであるJAVAインストーラを使用するもの」であり、該「JAVA仮想機械」は、「オペレーティング・システム上で動作する」ものであるから、引用発明も本願発明と同様に「前記オペレーションシステムへのソフトウエアモジュールのインストールが前記オペレーションシステム上で構築されるソフトウエア環境を介して達成される形式のインストール方法」と言えるものである。

(6)引用発明における「JAVAインストーラ」は「JAVA仮想機械によって解釈することができるJAVAの機械コードを含むインストール・ソフトウェア」であり、引用発明における「インストール」は、この「JAVAインストーラのファイル」「がハード・ドライブに保存され、このJAVAインストーラが起動」してなされるものであるから、上記「コンポーネント」も「JAVA仮想機械」という「ホスト機械環境」内で動作していると捉えることができる。
また、引用発明における「オペレーティング・システム・インストール・ルーチン」は「前記オペレーティング・システム中の」ものに他ならない。
したがって、引用発明と本願発明とは「前記インストレーションインターフェースがソフトウエア環境内に含まれ、前記インストレーションマネージャはオペレーションシステム内に含まれて」いる点でも一致する。

(7)引用発明においては「前記スクリプト・リーダ・コンポーネントが前記インストール・スクリプトから第一のインストール関数を読み、それを前記プロセッサ・コンポーネントに渡し、前記プロセッサ・コンポーネントが前記スクリプト・リーダおよび前記ディテクタから渡された結果を使用し、前記データ・コンポーネントの中から、対応するオペレーティング・システム依存性コマンドを選択し、それを前記イネーブラ・コンポーネントに渡し、前記イネーブラ・コンポーネントが、前記オペレーティング・システム依存性コマンドを前記JAVA仮想機械に渡し、このJAVA仮想機械がそのコマンドを前記オペレーティング・システムに渡すと、前記オペレーティング・システム中のオペレーティング・システム・インストール・ルーチンが起動し」「コマンドが前記オペレーティング・システムによって実行され」「アプリケーションをインストールする」のであり、これは「JAVA仮想機械」が「オペレーティング・システム中のオペレーティング・システム・インストール・ルーチン」に対する「コンポーネント」を、「アプリケーション」のインストールのために利用しているとも言える。
してみると、引用発明と本願発明とは「前記ソフトウエア環境は、前記オペレーションシステム内のインストレーションマネージャーに対するインストレーションインターフェースを、ソフトウエアモジュールのインストールのために利用し」ている点でも一致する。

(8)引用発明においては、「インストール」時には「イネーブラ・コンポーネントが、前記オペレーティング・システム依存性コマンドを前記JAVA仮想機械に渡し」「このJAVA仮想機械がそのコマンドを前記オペレーティング・システムに渡す」のであるから、「インストール」の際には「コンポーネント」と「オペレーティング・システム・インストール・ルーチン」との間は何らかの形で「接続」がなされていることは明らかである。
してみると、引用発明と本願発明とは「その際には前記インストレーションインターフェースがオペレーションシステム内のインストレーションマネージャとの接続を形成し」ている点でも一致する。

(9)引用発明における「インストール・コマンド」は、本願発明における「インストレーションコマンド」に対応付けられるものであるところ、前者は「イネーブラ・コンポーネントが」「JAVA仮想機械に渡し」「このJAVA仮想機械が」「オペレーティング・システムに渡す」ものであるから、引用発明においては、上記の「接続」により「JAVAインストーラ」を介して少なくとも1つの「インストール・コマンド」が転送されると言える。
してみると、引用発明における「インストール・コマンド」の渡し方は、本願発明の如く「ソフトウエアモジュール」を含む「ファイル」を転送するものではないものの、引用発明と本願発明とは、「それによって当該インストレーションインターフェースを介して、」「少なくとも1つのインストレーションコマンドを有する」情報「が転送され」る点では一致すると言える。

(10)引用発明においては、「コマンドを前記オペレーティング・システムに渡すと、前記オペレーティング・システム中のオペレーティング・システム・インストール・ルーチンが起動して」「コマンドが前記オペレーティング・システムによって実行され」、これによって「アプリケーションをインストールする」のであるから、上記「転送」に続いて、「オペレーティング・システム中のオペレーティング・システム・インストール・ルーチン」が「アプリケーション」のインストールを実行すると言える。
したがって、引用発明と本願発明とは「それに続いてオペレーションシステム内のインストレーションマネージャーがソフトウエアモジュールのインストールを実行する」点でも一致する。

(11)よって、本願発明は、下記一致点で引用発明と一致し、下記相違点で引用発明と相違する。

<一致点>
「装置機器内へのソフトウエアモジュールのインストール方法であって、
前記装置機器はプロセッサと、メモリと、通信用インターフェースを有し、当該装置機器内ではプロセッサ上でオペレーションシステムと、システムに依存しないソフトウエア環境が動作しており、
前記メモリ内には、オペレーションシステムとソフトウエア環境とインストレーションインターフェースとインストレーションマネージャが格納されており、さらに
前記オペレーションシステムへのソフトウエアモジュールのインストールが前記オペレーションシステム上で構築されるソフトウエア環境を介して達成される形式のインストール方法において、
前記インストレーションインターフェースがソフトウエア環境内に含まれ、前記インストレーションマネージャはオペレーションシステム内に含まれており、
前記ソフトウエア環境は、前記オペレーションシステム内のインストレーションマネージャーに対するインストレーションインターフェースを、ソフトウエアモジュールのインストールのために利用し、その際には前記インストレーションインターフェースがオペレーションシステム内のインストレーションマネージャとの接続を形成し、それによって当該インストレーションインターフェースを介して、」「少なくとも1つのインストレーションコマンドを有する」情報「が転送され、
それに続いてオペレーションシステム内のインストレーションマネージャーがソフトウエアモジュールのインストールを実行するようにした」「方法。」

<相違点1>
本願発明におけるインストレーションインターフェースを介して転送される情報は「ソフトウエアモジュール」も有している点。
(これに対し、JAVAインストーラを介して「アプリケーション」を渡す旨の記載は、引用文献には無い。)

<相違点2>
本願発明におけるインストレーションインターフェースを介して転送される情報は「ファイル」である点。
(これに対し、「コンポーネント」から「オペレーティング・システム・インストール・ルーチン」に渡される情報が、「ファイル」という形で渡される旨の記載は、引用文献には無い。)


6.判断
(1)上記相違点1について検討するに、上記引用文献記載事項3に「インストールには、より多数のファイルをある場所から別の場所にコピーすることが必要になる。」とあるように、アプリケーションのインストールに際しては、ファイルのコピーが適宜行われるものであるところ、その際には、当然に、コピー元のファイルが該コピー処理を実行するプログラムに引き渡されなければならないことは明らかである。
してみると、引用発明におけるJAVAインストーラがコマンドと共に「アプリケーション」(セットアップ・ファイルを実行することによって保存されたアプリケーションのファイル)も、オペレーティング・システム・インストール・ルーチンに渡すようにすること、すなわち、上記相違点1に係る構成を採用することも、当業者が必要に応じて適宜採用し得た設計的事項に過ぎない。

(2)上記相違点2について検討するに、情報処理手段間の情報の渡し方として、該情報をファイルとして渡すことは、上記参考文献を参照するまでもなく、従来から、当業者が適宜に採用している周知慣用技術であり、これを引用発明におけるJAVAインストーラを介した情報の転送手段として採用する事、すなわち、上記相違点2に係る構成を採用することも、適宜採用し得た設計的事項に過ぎない。

(3)したがって、本願発明の構成は引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、当該構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
よって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


7.付記
(1)なお、本願の特許請求の範囲中には明示されてはいないものの、審査経緯などから見て、本願発明の「前記インストレーションインターフェース(11)がソフトウエア環境(10)内に含まれ」との記載は、「インストレーションインターフェース」が「ソフトウエア環境」内にインストールの時だけ一時的にロードされるのではなく、「ソフトウエア環境」の一部としてあらかじめ頒布・インストールされている旨を表現しようとしているとも推測でき、その場合にはこの点が相違点となり得る。
しかしながら、ソフトウエアの頒布に際し、汎用的なモジュールをバンドルすることや、汎用的なモジュールをプラットホームの標準機能として追加することは、従来から適宜に採用されている手法であり、また、かかる汎用的なモジュールをプラットホームの一部としてインストールしておくことも、ユーザーが適宜採用している事項に過ぎないものであるから、引用発明における「コンポーネント」を「JAVA仮想機械」内にあらかじめ含めておくことも、当業者が適宜なし得る設計変更に過ぎないものである。
したがって、仮にこの相違点が特許請求の範囲中で明示されていたとしても、本審決の結論に影響を与えるものではない。

(2)また、本願の特許請求の範囲では明確に限定されてはいないものの、本願発明の「当該インストレーションインターフェース(11)を介して、ソフトウエアモジュールと少なくとも1つのインストレーションコマンドを有するファイルが転送され」との記載は、「インストレーションインターフェース(11)」と「インストレーションマネージャー(14)」間で「ソフトウエアモジュールと少なくとも1つのインストレーションコマンドを有するファイル」が転送されるのではなく、「インストレーションインターフェース(11)」に「ソフトウエアモジュールと少なくとも1つのインストレーションコマンドを有するファイル」が入力され、その内容が「インストレーションマネージャー(14)」に転送される旨を表現しようとしているとも推測可能であり(これは、発明の詳細な説明の記載(特に段落【0017】の記載)とは矛盾するものの、特許請求の範囲の記載は、これをも含むものと解釈可能である。)、その場合には、この点も相違点となり得る。
しかしながら、上記引用文献記載事項7に「あるいはまた、セットアップ・ファイルは、インストーラおよびアプリケーションを、圧縮されていない別々のファイルとして含んでもよい。」とあるように、複数のソフトウエア部品を提供する際に、一つのファイルにまとめて提供するか複数のファイルとして提供するかも、当業者がその使用形態等に応じて適宜に決定し得る設計的事項に過ぎないものであり、例えば、上記(1)の如く「コンポーネント」を「JAVA仮想機械」内にあらかじめ含めておく構成を採用した場合には、残る「アプリケーション」と「インストール・スクリプト」のみをファイルとして提供することも、半ば必然的に採用される構成に過ぎない。
したがって、仮にこの相違点が特許請求の範囲中で明確に限定されたとしても、本審決の結論に影響を与えるものではない。


8.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-14 
結審通知日 2011-07-20 
審決日 2011-08-03 
出願番号 特願2003-550057(P2003-550057)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北川 純次  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 石井 茂和
吉田 美彦
発明の名称 装置機器内へのソフトウエアモジュールのインストール方法  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 二宮 浩康  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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