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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N |
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管理番号 | 1249237 |
審判番号 | 不服2010-16800 |
総通号数 | 146 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-07-26 |
確定日 | 2012-01-17 |
事件の表示 | 特願2007-111787「撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月 9日出願公開、特開2007-202208、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
【第1】 経緯(手続き・査定) [1] 手続の概要 本願は、平成16年6月4日に出願した特願2004-167733号の一部を平成19年4月20日に新たな特許出願(分割出願、特願2007-111787号)としたものであり、手続きの概要は以下のとおりである。 補正書提出 :平成19年 6月 4日 拒絶理由の通知 :平成21年10月 8日(起案日) 意見書提出 :平成21年12月11日 補正書提出 :平成21年12月11日 拒絶理由の通知(最後):平成22年 1月14日(起案日) 意見書提出 :平成22年 3月23日 補正書提出 :平成22年 3月23日 補正却下の決定 :平成22年 4月21日(起案日) 拒絶査定 :平成22年 4月21日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成22年 7月26日 補正書提出 :平成22年 7月26日 前置報告 :平成22年12月24日 審尋 :平成23年 9月30日(起案日) [2] 査定 査定の理由は、概略、以下のとおりである。 〈査定の理由〉 本願各発明(請求項1?5までに係る各発明)は、下記1?6の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 記 刊行物1:特開平04-291581号公報 刊行物2:特開昭63-253707号公報 刊行物3:特開昭62-130006号公報 刊行物4:特開平02-287224号公報 刊行物5:特開平02-264467号公報 刊行物6:特開2004-055674号公報 [3]平成22年7月26日付け補正 この補正は、補正前請求項1を、下記請求項1の記載に変更するものである。(従属請求項2?5については補正なし) 記(特許請求の範囲:平成22年7月26日付け補正) 【請求項1】 複数の受光素子が配列した固体撮像素子と、 少なくとも1段の出力回路と、 前記出力回路の最後段の出力信号をインピーダンス変換して、画像情報を出力するバッファ回路とを備え、前記複数の受光素子から出力される輝度信号を処理して、前記画像情報を出力する撮像装置において、 前記出力回路の最後段は、ソースホロワ回路であり、 前記ソースホロワ回路の電流源は、前記複数の受光素子が形成された第1の半導体基板の外部に設けられ、 前記電流源は、ゲート電極とソース電極とが接地され、ドレイン電極が前記固体撮像素子の出力線に接続されているJ-FETを含み、 前記バッファ回路は、発振防止用の抵抗と、前記抵抗を介してベース電極に前記固体撮像素子の出力信号が入力されるPNPトランジスタとを備え、 前記第1の半導体基板は500μmよりも薄い厚みであること を特徴とする撮像装置。 【請求項2】 前記ソース電極は、ソース抵抗を介して接地されていること を特徴とする請求項1に記載の撮像装置。 【請求項3】 前記ソース抵抗は、 ゲート・ソース間電圧とドレイン電流との関係が、温度により影響されない値に設定されていること を特徴とする請求項2に記載の撮像装置。 【請求項4】 前記出力回路は、CCDの出力部であることを特徴とする請求項1?3の何れか1項に記載の撮像装置。 【請求項5】 前記出力回路は、MOSセンサーの出力部であることを特徴とする請求項1?3の何れか1項に記載の撮像装置。 [4]前置報告 前置報告は、概略、下記のとおりである。 記(前置報告) 請求項1についての補正は限定的減縮を目的としているが、 補正によって追加された事項である、バッファ回路にPNPトランジスタを用いることは、例えば特開2002-171448号公報の段落【0028】及び図1に記載されているように、周知技術に過ぎず、引用文献1に記載された発明に、同周知技術を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、補正後の請求項1に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。 【第2】補正の適否判断 (当審) 【結論】 平成22年7月26日付けの手続補正を認める。 【理由】 平成22年7月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、 平成18年改正前特許法(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法)第17条の2第3項及び第4項、並びに同条第5項(同項で準用する第126条第5項)の各規定に適合する。詳細は、以下のとおりである。 [1]補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1についてする次の補正を含む。 補正前(平成21年12月11日付け補正書)の「前記第1バッファ回路の入力には発振防止用の抵抗が接続されており、」を、 「前記バッファ回路は、発振防止用の抵抗と、前記抵抗を介してベース電極に前記固体撮像素子の出力信号が入力されるPNPトランジスタとを備え、」(補正後)とする補正。 [2]補正の適否 [2-1]補正の範囲(第17条の2第3項) 上記補正は、願書に最初に添付した明細書の段落0021、0026、0040、0047および図5に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。 [2-2]補正の目的(第17条の2第4項) また、上記補正は、補正前請求項1に記載のあった「バッファ回路」(補正前の「第1バッファ回路」の「第1」が誤記であることは明らかである。)を限定し減縮するものであり、補正の前後において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 [2-3]独立特許要件(第17条の2第5項) 上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるので、以下、補正後の特許請求の範囲の請求項により特定される発明の独立特許要件について検討する。 (1)補正後請求項1記載の発明(以下、「補正後発明」という) 補正後発明は、上記【第1】[3]のとおりの請求項1の記載事項によりれ特定される発明であり、分説すると以下の通りである。 記(補正後発明、分説) A :複数の受光素子が配列した固体撮像素子と、 B :少なくとも1段の出力回路と、 C :前記出力回路の最後段の出力信号をインピーダンス変換して、画像情報を出力するバッファ回路とを備え、前記複数の受光素子から出力される輝度信号を処理して、前記画像情報を出力する撮像装置において、 C1:前記出力回路の最後段は、ソースホロワ回路であり、 C2:前記ソースホロワ回路の電流源は、前記複数の受光素子が形成された第1の半導体基板の外部に設けられ、 C3:前記電流源は、ゲート電極とソース電極とが接地され、ドレイン電極が前記固体撮像素子の出力線に接続されているJ-FETを含み、 C4:前記バッファ回路は、発振防止用の抵抗と、前記抵抗を介してベース電極に前記固体撮像素子の出力信号が入力されるPNPトランジスタとを備え、 C5:前記第1の半導体基板は500μmよりも薄い厚みであること D: を特徴とする撮像装置。 (1.2)判断 ア 引用発明、一致点、相違点 〈刊行物1記載の発明(以下、「引用発明」という)、一致点〉 刊行物1は、本願が従来技術として挙げる(特許文献1)特許2982353号公報の公開特許公報であり、その請求項1,段落【0005】?【0011】、図1より明らかなように、 刊行物1記載の発明(引用発明)は、補正後発明の上記要件A、B,C,C1,C2,Dを備えるものであるから、 要件A、B,C,C1,C2,Dにおいて、補正後発明と一致する。(一致点) 〈相違点〉 もっとも、 ・引用発明の電流源は、NPNトランジスタで構成されているから、 C3「前記電流源は、ゲート電極とソース電極とが接地され、ドレイン電極が前記固体撮像素子の出力線に接続されているJ-FETを含み」とする補正後発明とは相違する。(相違点1) ・引用発明のバッファ回路は、NPNトランジスタであり、また、発振防止用の抵抗、を有していないから、 C4「前記バッファ回路は、発振防止用の抵抗と、前記抵抗を介してベース電極に前記固体撮像素子の出力信号が入力されるPNPトランジスタとを備え、」とする補正後発明とは相違する。(相違点2) ・引用発明の半導体基板は500μmよりも薄い厚みとはしていないから、 C5「前記第1の半導体基板は500μmよりも薄い厚みである」とする補正後発明とは相違する。(相違点3) イ 容易想到性の判断 イ-1[相違点の克服] 引用発明を起点として、 [相違点1の克服] 引用発明の、NPNトランジスタで構成されている電流源を、 C3の「ゲート電極とソース電極とが接地され、ドレイン電極が前記固体撮像素子の出力線に接続されているJ-FETを含み」とすることで、上記相違点1は克服され、 [相違点2の克服] 引用発明の、NPNトランジスタで構成されているバッファ回路を、 C4の「発振防止用の抵抗と、前記抵抗を介してベース電極に前記固体撮像素子の出力信号が入力されるPNPトランジスタとを備え、」とすることで、上記相違点2は克服され、 [相違点3の克服] 引用発明の半導体基板を、C5の「前記第1の半導体基板は500μmよりも薄い厚みである」とすることで、上記相違点3は克服され、 補正後発明に到達する。 イ-2[相違点2の克服]について 〈刊行物2?4について〉 これら刊行物には、ソースフォロア回路の定電流源としてJ-FETを用いることが示されていて、一般に、「ソースフォロア回路の定電流源としてJ-FETを用いること」は周知技術と認められるものの、当該技術は、(上記相違点1の技術に関するものであって、)上記相違点2の技術に関するものではない。 〈刊行物5について〉 刊行物5(特に、第1頁右欄第4?11行、第2頁左下欄第5?9行、第2図を参照。)には、CCDリニアイメージセンサの出力信号を、発振防止用の抵抗を介して(インピーダンス変換する)バッファ回路の入力であるNPNトランジスタのベース電極に入力することが示されていて、 このことから、引用発明の、バッファ回路を、発振防止用の抵抗を介してバッファ回路を構成する(NPN)トランジスタのベース電極に前記固体撮像素子の出力信号が入力されるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである、と言うことができる。 もっとも、刊行物5のトランジスタもNPNトランジスタであって、「PNPトランジスタ」とすることは示していない。 〈刊行物6について〉 刊行物6(特に段落【0005】)には、固体撮像装置の半導体基板の厚みを500μm以下とすることが示されていて、 このことから、引用発明の、「半導体基板は500μmよりも薄い厚みである」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである、ということができる。 もっとも、刊行物6は上記要件C4の「PNPトランジスタ」とすることは示していない。 〈特開2002-171448号公報(刊行物7)について〉 前置報告で挙げられた刊行物7(特開2002-171448号公報、特に段落【0028】、【0044】、図1)には、 固体撮像素子の出力回路の最後段の出力信号をインピーダンス変換して、画像情報を出力するバッファ回路としてのエミッタフォロワ増幅回路50に、ベース電極に前記固体撮像素子の出力信号が入力されるPNPトランジスタを用いることが記載されている(図1の50のトランジスタは、抵抗側に矢印がなくエミッタフォロワになっていないが、矢印の付ける位置を誤ったものであることは明らかである。)。 しかしながら、刊行物7がPNPトランジスタを採用した理由は、 段落【0044】「次に、エミッタフォロワ増幅回路50がPNPトランジスタを用いて構成されている理由を述べる。本装置は、出力制御回路62が負荷トランジスタのゲートバイアス電圧を制御することにより、出力アンプ46の消費電力を低減する場合には、負荷トランジスタのチャネル抵抗を増加させ、又はチャネルを遮断する。これにより、出力アンプ46の最終段のソースフォロワ出力であるCCD出力のバイアス電圧は、電源VD側にシフトする。ここで、ソースフォロワ回路の電流を低減、又は遮断して、出力アンプ46の周波数特性の確保よりもその消費電力の抑制を選択する場合に、エミッタフォロワ増幅回路50においても電流量を抑制して消費電力の低減を図る構成を選択することができる。そこで、本装置では負荷トランジスタのチャネル抵抗の増加に伴うCCD出力の電圧の変化に連動して、電流量が低下するトランジスタを用いてエミッタフォロワ増幅回路50を構成する。具体的には、ここでは電源VDが正電圧であることから、CCD出力の電圧は正側にシフトする。このときエミッタフォロワ増幅回路50に流れる電流が低減するようにPNPトランジスタが採用されている。」 のとおりであり、これを、他の記載{特許請求の範囲、段落【0005】?【0023】等}も併せて参酌すれば、 周波数特性(応答の速さ)を消費電力より優先させる撮影モード(前者)とは異なる、消費電力を周波数特性(応答の速さ)より優先させる撮影モード(後者)があり、 消費電力を優先する後者のモードでは、負荷トランジスタのチャネル抵抗が増加して電流が低下し電源VDが正電圧の場合、CCD出力の電圧は正側にシフトすることになり、このように正側にシフトした場合に、正側にシフトしない前者のモードよりエミッタフォロワ増幅回路50に流れる電流が低減するようにするために、PNPトランジスタを採用したものと理解される。 すなわち、消費電力を優先する後者の場合に、PNPトランジスタではなくNPNトランジスタとするならば、逆に電流が増加して消費電力低減に反するという課題が生じてしまう。 しかるに、引用発明のものは、そもそも、電流源(負荷トランジスタ)の電流を変更設定することをしないものであるから、電流源の電流の変更設定を前提とする刊行物7の上記課題が生じないものである。 また、一般的には、PNPトランジスタは、NPNトランジスタよりも移動度が低く応答特性が悪いことは技術常識であり、応答特性を重んじる場合に使用するものとはいえないものである。 そして、上記要件Cの構成は、本願明細書の段落【0047】「PNPトランジスタを用いてもよい。一般的に、CCDの出力応答性は立ち下がりの応答特性に大きく依存するので、最終段バッファ部6にPNPトランジスタを用いると、エミッタ電流を必要以上に増やすことなく立下りのスルーレートを高めることができる。従って、CCDの出力部である最終段バッファ部6には、PNPトランジスタを用いた方が、応答特性の面からみて有利である。」からすれば、 CCDの出力応答性にとって重要である“立ち下がりの応答特性”を良好として「立下りのスルーレートを高める」ために、「バッファ回路は、・・・ベース電極に前記固体撮像素子の出力信号が入力されるPNPトランジスタ」としたものであるところ、 刊行物7がそのような知見を示唆するものでもない。 以上からすれば、刊行物7は、引用発明のNPNトランジスタで構成されているバッファ回路を、PNPトランジスタからなるバッファ回路と変更するに足りる動機付けを与えるものとは言えない。 よって、上記[相違点2の克服]は、刊行物7記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることである、とはいえない。 また、他に、上記[相違点2の克服]が当業者容易想到であるとする理由を発見しない。 (1.2)まとめ(補正後発明) したがって、補正後発明は、刊行物記載発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである、とはいえない。 (2)補正後請求項2?5記載の発明 補正後請求項2?5は、いずれも、補正後請求項1を引用する請求項である。したがって、補正後請求項1記載の発明が当業者容易想到であるとはいえないのであるから、補正後請求項1を引用する補正後請求項2?5記載のいずれの発明も当業者容易想到であるとはいえない。 (3)まとめ(独立特許要件) また、他に、補正後各発明(補正後請求項1?5記載の発明)が特許を受けることができないとする理由を発見しない。 補正後各発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 [2-4]まとめ(補正の適否) 以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法)第17条の2第3項及び第4項、並びに同条第5項(同項で準用する第126条第5項)の各規定に適合する。 【第3】 本願発明および本願発明についての判断 前記【第2】で認定、判断したとおり、平成22年7月26日付けの手続補正を認めるから、本件出願に係る各発明(以下、本願各発明という)は、上記手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項5に係る各発明(本願各発明、前記の「補正後各発明」に同じ。)であるところ、当該本願各発明が前記刊行物1?刊行物7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは、前記【第2】[2-3]で既に判断したとおりである。 【第4】むすび 以上、本願の請求項1?請求項5に係る発明は、上記刊行物1?刊行物6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、という原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2012-01-05 |
出願番号 | 特願2007-111787(P2007-111787) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04N)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松田 岳士 |
特許庁審判長 |
乾 雅浩 |
特許庁審判官 |
▲徳▼田 賢二 小池 正彦 |
発明の名称 | 撮像装置 |
代理人 | 中島 司朗 |
代理人 | 木村 公一 |
代理人 | 川畑 孝二 |
代理人 | 小林 国人 |