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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1249283
審判番号 不服2010-17579  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-05 
確定日 2011-12-28 
事件の表示 特願2006-519757「プログラム制御される機器の遠隔プログラミング」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月27日国際公開、WO2005/008612、平成19年 8月23日国内公表、特表2007-524149〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は、平成16年7月8日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2003年7月14日、DE)を国際出願日とする出願であって、平成21年6月8日付けの拒絶理由通知に対して同年10月13日付けで手続補正がなされ、同年11月9日付けの最後の拒絶理由通知に対して平成22年3月15日付けで手続補正がなされたが、同年5月26日付けで前記平成22年3月15日付けの手続補正が却下されるとともに、同日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年8月5日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正がなされた。
その後、平成23年3月25日付けで前置報告書(特許法第164条第3項)に基づく審尋がなされたが、回答書は提出されなかったものである。


2.補正後の本願請求項1ないし10に係る発明

本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成22年8月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項によって特定される、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
プログラム制御される機器(3)にプログラムデータを伝送する方法であって、
制御局(9)が遠隔接続を介して、前記機器(3)と接続されたインターフェイス(4
)へプログラムデータを遠隔伝送するステップと、
前記インターフェイス(4)が前記プログラムデータを一時記憶するステップと、
前記制御局(9)が前記インターフェイス(4)へ資格証明を遠隔伝送するステップと、
前記インターフェイス(4)が前記資格証明を一時記憶せずに前記機器(3)へ転送するステップと、
前記機器(3)が前記資格証明自体の有効性を検査するステップと、
前記資格証明自体の有効性が確認された場合に、前記インターフェイス(4)が前記プログラムデータを前記機器(3)のプログラムメモリ(8)へ入力するステップと、
を含み、
前記機器(3)には、前記資格証明の有効性の決定に必要な期間以上に前記資格証明が記憶されていないことを特徴とする、プログラムデータを伝送する方法。
【請求項2】
前記資格証明および前記プログラムデータのうち少なくとも一方が、前記遠隔接続を介してワイヤレス伝送されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ワイヤレス伝送に障害が発生した場合に、前記資格証明および前記プログラムデータが繰り返し伝送されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プログラムデータおよび前記資格証明のうち少なくとも一方が、配線接続(6)を介して前記インターフェイス(4)から前記機器(3)へ転送されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
プログラムデータおよび資格証明を受信するためのインターフェイス(4)と、伝送されるプログラムデータを用いてプログラミング可能なプログラムにより制御される機器(3)とを有し、前記機器(3)がプロセッサ(12)とプログラムメモリ(8)を有し、
前記機器(3)が前記インターフェイス(4)に接続可能なシステムであって、
前記インターフェイス(4)は、受信されたプログラムデータを一時記憶し、受信された前記資格証明を一時記憶せずに前記機器(3)へ転送し、前記機器(3)が前記資格証明自体の有効性を確認した後に、前記一時記憶されたプログラムデータを前記機器(3)へ伝送するように構成され、
前記機器(3)には、前記資格証明の有効性の決定に必要な期間以上に前記資格証明が記憶されていないことを特徴とするシステム。
【請求項6】
前記プログラムメモリ(8)が、フラッシュメモリまたはEEPROMであることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記インターフェイス(4)が、ワイヤレスの遠隔接続を介して前記制御局(9)と接続可能であることを特徴とする請求項5または6に記載のシステム。
【請求項8】
前記機器(3)が、関連装置(2)を制御する制御ユニットであることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記関連装置(2)が、自動車、自動車の一部、または、エンジンのように自動車の一部として使用可能な装置であることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
請求項5から9のいずれか1項に記載のシステムを有する自動車。」

3.平成22年11月9日付けで通知した拒絶の理由について

原査定の拒絶の理由である、平成21年11月9日付けで通知した拒絶の理由のうち、理由「A.」「B.」「C.」は、本願は、特許請求の範囲及び明細書が不備のため、特許法第36条6項2号、同条6項1号、同条4項1号に規定する要件を満たしていない、というものであって、その中で次の点を指摘している。

「(2)請求項1には「資格証明の有効性を検査する」と記載されているが、資格証明の有効性を具体的にどのように検査しているのかが不明である。
意見書において、出願人は、「資格証明は、段落0004に記載するように、制御ユニットがプログラムデータを受け入れるための前提条件となる証明(認証)キーに相当します。資格証明は、一般的に、チェックサム、公開鍵認証システム等により検査されます。また、一実施形態では、資格証明は、有効期間を用いて検査されます。」下線部は、発明の詳細にサポートされていない(第6項第1号)。また、仮に、「資格証明の有効性」の「検査」が、チェックサム等による検査だとしても、何のチェックサムであるのか(証明書自身のチェックサムであるのか、プログラムのチェックサムであるのか)が不明確である。
くわえて、「有効性」の検査が、「プログラムデータ」の有効性を検査しているのか、証明書の有効性を検査しているのかが、発明の詳細な説明を参酌しても、不明確である。(中略)
よって、請求項1-12は明確でない。
また、請求項1-12は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
また、この出願の発明の詳細な説明は、請求項1-12に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。」

4.当審の判断
(特許法第36条第4項に規定する要件(実施可能要件)について)

前記2.において摘示したように、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1(以下、本願発明という。)には、次の記載がある。

「前記制御局(9)が前記インターフェイス(4)へ資格証明を遠隔伝送するステップと、
前記インターフェイス(4)が前記資格証明を一時記憶せずに前記機器(3)へ転送するステップと、
前記機器(3)が前記資格証明自体の有効性を検査するステップと、
前記資格証明自体の有効性が確認された場合に、前記インターフェイス(4)が前記プログラムデータを前記機器(3)のプログラムメモリ(8)へ入力するステップと、
を含み、」

そして、「前記機器(3)が前記資格証明自体の有効性を検査するステップと、」について、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0002】、段落【0023】には、「【0002】(前略)その場合に制御ユニットは,直接的な操作に対して保護されているので,制御ユニットへの不当なアクセスによって,資格証明のためのその認識アルゴリズムに達して,そこから資格証明を導き出すことも不可能である。(後略)」、「【0023】(前略)資格証明を得た後に,制御ユニット3のプロセッサ12は,ステップ23において資格証明の有効性をチェックする。(後略)」と記載されている。しかしながら、このような記載からは、資格証明が具体的にどのような認識アルゴリズムに従ってその有効性を判断しているのか不明である。

なお、請求人は、審判請求書の請求の理由において、資格証明の有効性の確認について、「同様に、段落0023の記載に基づく上記補正によって、資格証明の有効性は、資格証明自体の検査により検査されることが明確となった。なお、資格証明の有効性は、機器側に設けられている認識アルゴリズムに従って、各種の検査手法により検査される(段落0002)。」と主張しているが、前記主張を考慮しても、依然として、資格証明が具体的にどのような認識アルゴリズムに従ってその有効性を判断しているのか不明である。

また、本願発明の方法発明と同様の発明特定事項を有する本願請求項5に係る発明についても、同様の点が依然として不明であるから、結局、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明、及び請求項5に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。


5.むすび

以上のとおりであるから、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-27 
結審通知日 2011-08-02 
審決日 2011-08-16 
出願番号 特願2006-519757(P2006-519757)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩崎 志保深沢 正志  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 石井 茂和
赤川 誠一
発明の名称 プログラム制御される機器の遠隔プログラミング  
代理人 亀谷 美明  

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