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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B21J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B21J
管理番号 1249291
審判番号 不服2007-26817  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-01 
確定日 2011-12-14 
事件の表示 特願2001-392644「一又は二以上の貫通穴を備えた軽合金部品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月 3日出願公開、特開2002-248540〕についてされた平成21年1月5日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決〔平成21年(行ケ)10132号、平成21年12月25日判決言渡し〕があったので、さらに審理の上、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
平成12年12月27日 フランス国出願
平成13年12月25日 出願(パリ条約による優先権主張)
平成18年11月24日 拒絶理由通知
平成19年 2月28日 意見書
平成19年 6月28日 拒絶査定
平成19年10月 1日 審判請求
平成19年10月31日 補正書
平成21年 1月 5日 審決
平成21年 5月20日 審決取消訴訟提起
平成21年12月25日 判決(審決取消)
平成22年 1月27日 拒絶理由通知
平成22年 7月30日 意見書・補正書
平成22年 8月17日 拒絶理由通知
平成23年 2月23日 意見書・補正書
平成23年 3月 8日 拒絶理由通知
平成23年 6月15日 意見書

第2.拒絶理由通知
平成23年3月8日付けで通知した拒絶理由は、以下のとおりである。

「1)本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。
2)本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


(36条)
1.鋳造段階で導入されたロッドを、トンネル炉への移動前に取り外し、鍛造前に再度導入することの技術的意義、有利な効果が不明確である。ロッドを導入したままでも、何ら不都合はないのではないか。平成23年2月23日の意見書で主張する「通常、トンネル炉は、ロッドを装着したままの状態の鋳造プレフォームを受容するようには設計されておりません」という「炉」の大きさ上の都合なのか。
2.(略)

(29条)
1.特開平5-146841号公報
2.特開平8-155589号公報

刊行物1には、請求項1発明に照らすと、以下が記載されている。なお、かっこ内は、請求項1発明の対応部分である。
「鋳造され、次いで鍛造される、一又は二以上の貫通穴22,24を備えたアルミニウム合金製のサスペンションアーム10(軽合金部品)の製造方法であって:
- 得られる前記サスペンションアーム10に、中子50(ロッド)を用いて前記貫通穴を含む鋳造品60(鋳造プレフォーム)を形成する段階と;
- 鋳造品60を鍛造装置(プレス)上に配備された下型44(下部鍛造ダイ)に位置づける段階と;
- 形作られた貫通穴22,24の中に中子50が一時的に位置付けられている間に中子50を受ける鋳造品60を鍛造作業により、最終的に必要とされる形状にする段階と;
- 上型42(上部鍛造ダイ)を持ち上げて鍛造された鍛造品72(プレフォーム)を自由にする段階と;
- 貫通穴22,24に位置付けられた中子50を引き出す段階と;
- 鍛造された鍛造品72を取り外す段階と;
をこの順序で実施する方法。」

請求項1発明と刊行物1発明を対比すると、以下を除き一致する。
相違点1:ロッドについて、請求項1発明では、トンネル炉に移動する前に「ロッドを取り外し」、「鋳造作業の後、鍛造作業の前に、制御手段からのコマンドにより、前記ロッドを前記鋳造プレフォームの前記貫通穴に導入する」が、刊行物1発明では、ロッドが鍛造作業前に取り外さることがない点。

相違点2:鋳造プレフォーム形成段階が、請求項1発明では、「ロッドが、鋳造された時点で既に最終部品に必要な形状とされた貫通穴を、鍛造段階においてそのまま維持するためのものである」が、刊行物1発明では明らかでない点。

相違点3:請求項1発明は、鋳造段階と鍛造段階の間に「鋳造プレフォームを、該鋳造プレフォームの温度を一様に保持するトンネル炉に移動する段階」を有するが、刊行物1発明は明らかでない点。

相違点1について検討する。
ロッドを導入したままとするか、途中で一度抜くかは、取扱い上の便(炉の大きさ)、中間製品の検査等、必要に応じて選択すべき事項にすぎず、刊行物1発明において、途中で一度抜くことを妨げる事情はない。
また、ロッドの導入には、何らかの指示、契機が必要であるから、「制御手段からのコマンドにより」とすることに困難性は認められない。

相違点2について検討する。
鋳造プレフォーム形成段階における貫通穴を「鋳造された時点で既に最終部品に必要な形状」とする点は、刊行物2の段落0008、0013、0019に記載されており、必要に応じてなしうる事項にすぎない。
そして、相違点1、2を踏まえた刊行物1発明は、鋳造段階、鍛造段階ともに、ロッドが導入されているから、「ロッドが、鋳造された時点で既に最終部品に必要な形状とされた貫通穴を、鍛造段階においてそのまま維持するためのものである」ことは明らかである。

相違点3について検討する。
温度が異なると、熱変形に伴う誤差が生じる可能性があるから、「鋳造プレフォームの温度を一様に保持する」ことは必要に応じてなしうる事項にすぎない。
また、そのための手段としてトンネル炉は周知である。

補正の際は、新規事項の追加とならないよう留意願いたい。
意見書、補正書提出に際しては、主張、補正の根拠となる当初明細書、図面上の根拠を、具体的記載部分の特定とともに「必ず」明らかにしていただきたい。
仮に外国語証拠を添付する場合、必要な箇所の翻訳を付すこと(特許法施行規則第2条)。

以上、特許法第159条第2項で準用する同法第50条の規定により、通知する。なお、「請求人は、口頭審理の希望はありません」とのことであった。」

第3.意見書
平成23年6月15日付け意見書における請求人の主張は、以下のとおりである。

「2.拒絶理由に対する反論
(1) 拒絶理由1(特許法第36条)について
(i) ご指摘1.について
合議体は、「鋳造段階で導入されたロッドを、トンネル炉への移動前に取り外し、鍛造前に再度導入することの技術的意義、有利な効果が不明確である」と指摘されております。
この点、トンネル炉内での全工程に亘り、作製された鋳造プリフォームは剛体の状態を維持しているので、ロッドを鋳造プリフォームに導入する必要性はありません。
更に、もしロッドがトンネル炉内で保持されるとなると、トンネル炉からの熱を捕捉してしまうため、部品を加熱するためにより多くの熱量が必要となります。
またロッドをトンネル炉内で保持するためには、保持のための追加的な機構をトンネル炉に設ける必要が生じ、トンネル炉の構造が複雑化してしまいます。
以上の観点から、本願発明においては、ロッドは鋳造工程及び鍛造工程において装置に取り付けられています。

(ii) ご指摘2.について
(略)

(2) 拒絶理由2(特許法第29条第2項)について
本願請求項1に係る発明における、「鋳造プレフォームを形成した後に、ロッドを一旦取り外して前記鋳造プレフォームをトンネル炉に移動させ、その後、再度前記ロッドを鋳造プレフォームの貫通穴に導入して鍛造作業に供する」との特徴については、引用文献1及び引用文献2のいずれにも何らの記載も示唆もありません。
そしてかかる特徴の技術的意義につきましては、上述した(1)-(i)においてご説明申し上げた通りであり、引用文献1及び引用文献2を如何に組合せたとしても、当業者が本願請求項1に係る発明を容易に為し得たとは言えないものと思料致します。」

第4.第36条の拒絶理由についての当審の判断
発明の詳細な説明の記載は、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること」が求められる(特許法第36条第4項)。
経済産業省令には「経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」(特許法施行規則第24条の2)と規定されている。
すなわち、発明の詳細な説明には、「発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」の記載が求められる。
そこで、当審は、第36条の拒絶理由の「1.」として、「鋳造段階で導入されたロッドを、トンネル炉への移動前に取り外し、鍛造前に再度導入することの技術的意義、有利な効果が不明確である」と指摘するとともに、「意見書、補正書提出に際しては、主張、補正の根拠となる当初明細書、図面上の根拠を、具体的記載部分の特定とともに「必ず」明らかにしていただきたい」と記した。
請求人は意見書で、ロッドを保持したままだと、「多くの熱量が必要となる」、「ロッド保持のための追加的な機構が必要となる」問題がある旨、主張している。
しかし、かかる主張の根拠は、発明の詳細な説明に何ら記載されておらず、自明であるとも認められない。また、請求人は、当審の指摘にもかかわらず、主張の根拠を明らかにしていない。
よって、「鋳造段階で導入されたロッドを、トンネル炉への移動前に取り外し、鍛造前に再度導入することの技術的意義」は、発明の詳細な説明に何ら記載がなく、請求項1に係る発明は、依然として不明確であるから、本願は拒絶されるべきものである。

第5.第29条の拒絶理由についての当審の判断
上記第4.のとおり、本件審判請求は成り立たないから、第29条の拒絶理由について検討するまでもないが、請求人の主張が自明であるとして、第29条の拒絶理由について検討する。

1.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年2月23日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりと認められる。

「鋳造され、次いで鍛造される、一又は二以上の貫通穴を備えた軽合金部品の製造方法であって:
- 得られる前記部品に、ロッドを用いて前記貫通穴を含む鋳造プレフォームを形成する段階であって、前記ロッドが、鋳造された時点で既に最終部品に必要な形状とされた貫通穴を、鍛造段階においてそのまま維持するためのものである、段階と;
- 前記ロッドを取り外し、前記鋳造プレフォームを、該鋳造プレフォームの温度を一様に保持するトンネル炉に移動する段階と;
- 前記鋳造プレフォームを、プレス上に配備された下部鍛造ダイに位置付ける段階と;
- 鋳造作業の後、鍛造作業の前に、制御手段からのコマンドにより、前記ロッドを前記鋳造プレフォームの前記貫通穴に導入する段階と;
- 形作られた前記貫通穴の中に前記ロッドが一時的に位置付けられている間に、前記ロッドを受ける前記鋳造プレフォームを、鍛造作業により、最終的に必要とされる形状にする段階と;
- 上部鍛造ダイを持ち上げて、鍛造されたプレフォームを自由にする段階と;
- 前記貫通穴に位置付けられた前記ロッドを引き出す段階と;
- 前記鍛造されたプレフォームを取り外す段階と;
をこの順序で実施することを特徴とする方法。」

2.刊行物記載の発明
(1)刊行物1
これに対し、本願の優先日前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に引用された特開平5-146841号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

ア.段落0001?0002
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は鍛造方法に関するものであり、特に、金属材料を鋳造した後鍛造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鍛造方法の一種に、金属材料をほぼ鍛造品形状に鋳造した後その鋳造品を鍛造する方法がある。(略)」

イ.段落0009
「【0009】
【実施例】以下、本発明をアルミニウム合金製のA形サスペンションアームの鍛造方法に適用した場合の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。(略)」

ウ.段落0012?0018
「【0012】以下、サスペンションアーム10の鍛造方法について説明する。ボス部12,14の貫通穴22,24はアンダカット部であるため、まず、図2に示すように、金型30のキャビティ36に2個の中子50を配置する。これら中子50は合金工具鋼材SKD61等の金属から成り、外周面がわずかにテーパ状とされた成形部52を備えている。中子50の成形部52の外周面に黒鉛系の離型剤を塗布した後、サスペンションアーム10の貫通穴22,24に対応する部分に成形部52をそれぞれ位置させ、大径の幅木54(図1,図3参照)により保持させる。
【0013】次に、図示しない給湯装置から湯道38を経てキャビティ36内へアルミニウム合金の溶湯を流し込み、鋳造を行う。
【0014】鋳造後、上型32および下型34を離間させて鋳造品60を取り出し、方案部を除去する。図3に示すように、鋳造品60のボス部62,64にはそれぞれ中子50の成形部52が鋳ぐるまれている。この状態ではボス部66には凹部は形成されておらず、連結部66,68にも溝は形成されていない。
【0015】次に、図4に示す鍛造装置の下型44上に中子50を鋳ぐるんだ鋳造品60を載置し、駆動装置により上型42を上下動させて鍛造を行う。鍛造に伴って、両型面46,48により、ボス部66に貫通穴26が形成されるとともに、連結部66,68にそれぞれ溝28が形成される。
【0016】鍛造直後のサスペンションアーム素材(鍛造品)72を図1に示す。図から明らかなように、鍛造によってサスペンションアーム素材72の周囲に余肉によるバリ70が生じる。このバリ70により一時的に中子50の成形部52が覆われるが、差し支えない。
【0017】鍛造後のサスペンションアーム素材72を鍛造装置から取り出した後、ボス部12,14からそれぞれ中子50を引き抜く。中子50の成形部52はわずかにテーパ状とされており、しかも離型剤が塗布されているため、容易に引き抜くことができる。中子50が引き抜かれた後に貫通穴22,24が形成される。中子50は耐熱性,耐久性等に優れているため、サスペンションアーム素材72から引き抜かれた後、次の鍛造時に再利用可能である。
【0018】その後、図示しないプレス装置によりバリ70を除去し、機械加工で仕上げることによって、図5に示すサスペンションアーム10が得られる。」

これらを、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。
なお、請求人は、刊行物1発明の認定について、特段の主張はない。

「鋳造され、次いで鍛造される、一又は二以上の貫通穴22,24を備えたアルミニウム合金製のサスペンションアーム10の製造方法であって:
- 得られる前記サスペンションアーム10に、中子50を用いて前記貫通穴を含む鋳造品60を形成する段階と;
- 鋳造品60を鍛造装置上に配備された下型44に位置づける段階と;
- 形作られた貫通穴22,24の中に中子50が一時的に位置付けられている間に中子50を受ける鋳造品60を鍛造作業により、最終的に必要とされる形状にする段階と;
- 上型42を持ち上げて鍛造された鍛造品72を自由にする段階と;
- 鍛造された鍛造品72を取り外す段階と;
- 貫通穴22,24に位置付けられた中子50を引き出す段階と;
をこの順序で実施する方法。」

(2)刊行物2
同じく、特開平8-155589号公報(以下「刊行物2」という。)には、次のように記載されている。

ア.段落0001
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車用の鋳鉄製サスペンションアームを砂型鋳造法によって鋳造するための鋳型の改良に関する。」

イ.段落0008
「【0008】
【作用】請求項1に記載の構造によると、砂型よりなる鋳型について、サスペンションアームのうち相手側部品との結合部となる軸部もしくは軸孔の成形を司る部分にセラミック製の筒状の中子を配置したものであるから、例えば軸部の成形を司る部分にセラミック製の中子を配置した場合には、その軸部の外周面形状は中子の内周面形状が転写されたものとなる一方、軸孔の成形を司る部分にセラミック製の中子を配置した場合には、その軸孔の内周面形状は中子の外周面形状が転写されたものとなる。したがって、その軸部もしくは軸孔の寸法精度および鋳肌面精度が大幅に向上し、いずれの場合にもそれらの軸部もしくは軸孔の寸法精度および鋳肌面精度について後工程での機械加工が不要な程度にまで鋳造段階で高精度に仕上げることができる。」

ウ.段落0013
「【0013】また、上記二つの中子9,10はいずれも同一寸法の共通仕様のものが使用されていて、それらの中子9,10の内径寸法はピン8の最終製品形状として必要なそのピン8の外径寸法に合わせて設定されている一方、中子9,10の外径寸法は前記筒状部7の内周面7aの最終製品形状として必要なその内周面7aの内径寸法に合わせて設定されている。」

エ.段落0019
「【0019】
【発明の効果】以上のように請求項1に記載の発明によれば、砂型よりなる鋳型について、サスペンションアームのうち比較的寸法精度および面粗度精度を必要とする軸部もしくは軸孔の成形を司る部分にセラミック製の筒状の中子を配設したことにより、その中子形状が転写されることにより成形された部分については寸法精度および面粗度精度ともに大幅に向上することから、その部分についての後工程での機械加工工数を大幅に削減もしくは省略できる。その結果、鋳型のコストひいては製品であるサスペンションアームのコストを大幅に低減できる。」

上記記載を、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ整理すると、刊行物2には、以下の事項(以下「刊行物2事項」という。)が記載されていると認める。

「鋳造するための鋳型において、軸孔の成形を司る部分に、最終製品形状として必要な寸法に合わせた筒状の中子を配置し、軸孔の内周面形状は中子の外周面形状が転写されたものとすることで、寸法精度を大幅に向上させ、後工程での機械加工工数を大幅に削減もしくは省略するもの。」

3.対比・判断
刊行物1発明の「アルミニウム合金製のサスペンションアーム10」は本願発明の「軽合金部品」に相当し、同様に、「中子50」は「ロッド」に、「鋳造品60」は「鋳造プレフォーム」に、「鍛造装置」は「プレス」に、「下型44」は「下部鍛造ダイ」に、「上型42」は「上部鍛造ダイ」に、「鍛造品72」は「プレフォーム」に、それぞれ相当する。
また、「前記貫通穴に位置付けられた前記ロッドを引き出す段階」と「前記鍛造されたプレフォームを取り外す段階」の順序が、刊行物1発明と本願発明とで逆であるが、両者は、両段階を有する限りにおいて一致する。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「鋳造され、次いで鍛造される、一又は二以上の貫通穴を備えた軽合金部品の製造方法であって:
- 得られる前記部品に、ロッドを用いて前記貫通穴を含む鋳造プレフォームを形成する段階と;
- 前記鋳造プレフォームを、プレス上に配備された下部鍛造ダイに位置付ける段階と;
- 形作られた前記貫通穴の中に前記ロッドが一時的に位置付けられている間に、前記ロッドを受ける前記鋳造プレフォームを、鍛造作業により、最終的に必要とされる形状にする段階と;
- 上部鍛造ダイを持ち上げて、鍛造されたプレフォームを自由にする段階と;
をこの順序で実施し、その後、
- 前記貫通穴に位置付けられた前記ロッドを引き出す段階と;
- 前記鍛造されたプレフォームを取り外す段階と;
を有する方法。」

そして、以下の点で相違する。

相違点1:請求項1発明では、鋳造段階と鍛造段階の間に「鋳造プレフォームを、該鋳造プレフォームの温度を一様に保持するトンネル炉に移動する段階」を有し、トンネル炉に移動する前に「ロッドを取り外し」、「鋳造作業の後、鍛造作業の前に、制御手段からのコマンドにより、前記ロッドを前記鋳造プレフォームの前記貫通穴に導入する」が、刊行物1発明では、トンネル炉に移動するか明らかでなく、ロッドを鍛造作業前に取り外し、再導入することがない点。

相違点2:鋳造プレフォーム形成段階が、請求項1発明では、「ロッドが、鋳造された時点で既に最終部品に必要な形状とされた貫通穴を、鍛造段階においてそのまま維持するためのものである」が、刊行物1発明では明らかでない点。

相違点3:請求項1発明は、「貫通穴に位置付けられた前記ロッドを引き出す段階」と、「鍛造されたプレフォームを取り外す段階」とがこの順であるが、刊行物1発明は逆順である点。

相違点1について検討する。
鍛造加工においては、適切な温度で行う必要があることは、特開平11-77214号公報の請求項5、特開平8-90141号公報の段落0004?0005、特開平7-178500号公報の段落0006、0010、特開平3-285051号公報の請求項1、実施例1にみられるごとく周知であるから、「鋳造プレフォームの温度を一様に保持する」ことは、必要に応じてなしうる事項にすぎない。
また、そのための手段としてトンネル炉は周知である。
ロッドを導入したままトンネル炉に移動する点について検討する。
トンネル炉が小さい場合、ロッドを導入したままだと、物理的に入らないことがありうる等、取扱い上不便である。また、ロッドを一旦取り外すことで、中間製品の検査も可能となる。
よって、この点は、適宜なしうる設計的事項にすぎない。

請求人は、技術的意義に関し、意見書のみにおいて、トンネル炉からの熱を捕捉してしまい、部品を加熱するためにより多くの熱量が必要となる、ロッドをトンネル炉内で保持するための追加的な機構をトンネル炉に設ける必要が生じ、トンネル炉の構造が複雑化する、なる点を主張している。
上記「第4.」で検討したとおり、この点は発明の詳細な説明に基づくものでないが、自明の前提によれば、同様な理由によっても、刊行物1発明において、ロッドを一旦取り外すものとすることは、必要に応じてなしうる設計的事項にすぎない。
その際、ロッドの導入には、何らかの指示、契機が必要であるから、「制御手段からのコマンドにより」とすることに困難性は認められない。

また、請求人は、意見書で、「請求項1に係る発明における、「鋳造プレフォームを形成した後に、ロッドを一旦取り外して前記鋳造プレフォームをトンネル炉に移動させ、その後、再度前記ロッドを鋳造プレフォームの貫通穴に導入して鍛造作業に供する」との特徴については、引用文献1及び引用文献2のいずれにも何らの記載も示唆もありません」と主張するが、上記のとおり、格別なものではない。

相違点2について検討する。
刊行物2事項は、上記のとおり、刊行物1発明同様、鋳造に関するものである。
そして、「最終製品形状として必要な寸法に合わせた筒状の中子」により、軸孔の内周面に「中子の外周面形状が転写」されることから、「鋳造された時点で既に最終部品に必要な形状」とされるものである。
また、刊行物2事項により、「寸法精度を大幅に向上させ、後工程での機械加工工数を大幅に削減もしくは省略する」こととなり、生産効率の向上という効果を生じる。
生産効率の向上は、刊行物1発明においても、望ましいことであるから、刊行物1発明に刊行物2事項を適用することは、必要に応じてなしうる設計的事項である。
そして、相違点1、2を踏まえた刊行物1発明は、鋳造段階、鍛造段階ともに、ロッドが導入されているから、「ロッドが、鋳造された時点で既に最終部品に必要な形状とされた貫通穴を、鍛造段階においてそのまま維持する
ためのものである」ことは明らかである。
なお、相違点2については、請求人から特段の主張はない。

相違点3について検討する。
最終製品にするためには、「貫通穴に位置付けられた前記ロッドを引き出す段階」、「鍛造されたプレフォームを取り外す段階」は、いずれも必要であるが、両段階のいずれを先に行うかによって、格別な技術的意義が生じるものではない。
よって、この点は、適宜選択すべき事項にすぎない。
なお、相違点3については、請求人から特段の主張はない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

4.小括
本願発明は、刊行物1発明、刊行物2事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。

第6.むすび
以上、本願は、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-10 
結審通知日 2011-07-19 
審決日 2009-01-05 
出願番号 特願2001-392644(P2001-392644)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (B21J)
P 1 8・ 121- WZ (B21J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横山 幸弘塩澤 正和高山 芳之  
特許庁審判長 豊原 邦雄
特許庁審判官 刈間 宏信
千葉 成就
発明の名称 一又は二以上の貫通穴を備えた軽合金部品の製造方法  
代理人 渡邊 隆  
代理人 実広 信哉  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
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